説明

肝細胞の維持、増殖及び/又は分化のためのヒアルロナン、他のマトリックス成分、ホルモン及び増殖因子の複合体

肝前駆細胞を含む肝細胞をエクスビボで、他の細胞外マトリックス成分(コラーゲン、基底膜接着分子、プロテオグリカン又はそれらのグリコサミノグリカンなど)を伴う又は伴わない、及びホルモン及び/又は増殖因子を伴う又は伴わないヒアルロナン上で、又はヒアルロナン中で増殖させる方法が提供される。マトリックスを含む組成物も開示される。また、複合体はエクスビボでの組織構築のために使用でき、又はインビボで移植される細胞の移植片のための足場としても使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連特許出願の相互参照]
本出願は、2007年3月6日出願の米国特許仮出願第60/893,277号の優先権を主張し、その開示の全体が参照することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0002】
本発明は、一般に、肝前駆細胞を含む肝細胞などの細胞の維持、増殖及び/又は分化に関する。より詳細には、本発明は、他の細胞外マトリックス成分、ホルモン及び増殖因子とヒアルロナンとの複合体であって、肝幹細胞、肝芽細胞、コミットされた前駆細胞及びそれらの子孫などの前駆細胞亜集団を含む細胞の維持、増殖及び分化のための足場として使用される複合体に関する。
【背景技術】
【0003】
エクスビボでの細胞の維持は、栄養素、特定細胞外マトリックス成分の基質、並びに、ホルモン及び増殖因子を含む可溶性シグナルの混合物の使用に依存する。栄養素、マトリックス成分及び可溶性シグナルの明確に定義された混合物は、細胞の生存、増殖及び分化を引き起こす。さらに、定義された混合物の組成物は系統依存性であり、幹細胞、系統内の中間体、成熟細胞に関して特定の組成物が必要とされる。ヒアルロナンと複合体を形成した混合物は、基礎マトリックス分子に加えて架橋の形態によって調節される程度の強固さを有する天然の三次元(3−D)シグナル伝達用足場を提供し、すべてがエクスビボでの組織構築及びインビボで動物(又はヒト)に再導入される細胞について移植片の形態に大きな利点を提供する。そのような複合体は、幹細胞、例えば肝幹細胞及びそれらの子孫(例えば肝芽細胞及びコミットされた前駆細胞)にも有用であり、劇的な3−D増殖を引き起こす成分の定義された混合物から構成される複合体において設けられ得、又は3−D分化を推進するものに接種され得る。幹細胞は、人工肝又は細胞の移植を含む細胞治療のための望ましい候補物質である。この技術は、特に、移植方法がインビボでの細胞の再導入に特に重要であると考えられる固形臓器の細胞に関して、そのような治療を容易にするはずである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
幹細胞の大幅な増殖を達成するための条件が求められている。これは、正常組織から単離することができる少数の幹細胞によって決定される。これに対し、エクスビボでの組織構築又は細胞治療の臨床プログラムは、所望のエンドポイントを達成するために非常に多数の細胞を必要とし得る。従って、幹細胞の自己再生及び/又は大幅な増殖とそれに続く分化を可能にする技術が強く望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施形態では、本発明は、前駆細胞を含む肝細胞をエクスビボで維持する、増殖させる及び/又は分化させる方法であって、(a)肝前駆細胞などの細胞の懸濁液を提供する工程と、(b)無血清培地中、並びに他の細胞外マトリックス成分を含む又は含まないヒアルロナンの複合体上であって、ホルモン又は増殖因子を含む又は含まないヒアルロナンの複合体上で前記細胞を培養する工程とを含み、マトリックス成分とホルモン/増殖因子との正確な混合物は、前駆細胞又は成熟細胞のいずれかであり得る細胞集団の1)維持、2)自己複製(自己再生とも呼ばれる)、3)増殖(自己再生を含まない)、及び/又は3)分化を促進する方法を提供する。前駆細胞は、幹細胞(例えば肝幹細胞)、一過性増幅細胞(例えば肝芽細胞、肝の候補一過性増幅細胞)、及び/又はコミットされた(分化単能の)前駆細胞(例えばコミットされた肝前駆細胞又は胆管前駆細胞)であり得る。
【0006】
細胞外マトリックスはさらに、コラーゲン(I型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、又はV型コラーゲンなど)、基底膜接着分子(ラミニン又はフィブロネクチンなど)、プロテオグリカン若しくはそれらのグリコサミノグリカン鎖(ヘパリンプロテオグリカン又はヘパリンなど)、及び/又はホルモン(例えばインスリン)若しくは増殖因子(上皮増殖因子など)と複合体を形成したヒアルロナンから成ってもよい。一部の実施形態では、ヒアルロナンは、例えばアルデヒド結合又はジスルフィド結合を介して、化学的に架橋されている。
【0007】
本発明の細胞は、胎児、新生児、小児又は成人の組織から得られる。無血清培地は、インスリン、トランスフェリン、他のホルモン(例えばトリヨードチロニン、成長ホルモン、グルカゴン、ヒドロコルチゾン)、微量元素(例えば亜鉛、銅、セレン)、増殖因子(例えば上皮増殖因子又はEGF、線維芽細胞増殖因子又はFGF、白血病阻害因子又はLIF)又は混合物を含むことができ、一部の実施形態では、実質的にインスリン、トランスフェリン、脂質及び微量元素から成るか、又は、実質的にインスリン、トランスフェリン及び脂質から成り得る。さらに、上皮のための培地中のカルシウム濃度は、増殖に適切な濃度(<0.5mM)から分化に適切な濃度(>0.5mM)まで多様であり得る。最後に、無血清培地は、インスリン及びトランスフェリン以外の増殖因子又はホルモンを含まなくてもよい。さらに、本発明のヒアルロナン複合体は、エクスビボでの組織構築に適用し得る。例えば、複合体はインビボでの細胞の移植のために移植片の足場として使用され得る。
【0008】
本発明のもう1つの実施形態では、幹細胞(例えば肝幹細胞)又は一過性増幅細胞(例えば肝芽細胞)又はそれらの混合物をエクスビボで増殖させるであって、(a)細胞を提供する工程と、(b)無血清培地中、並びにコミットされた前駆細胞への分化を誘導することなく前駆細胞の集団を増殖させるための他の細胞外マトリックス成分及び/又はホルモンと複合体を形成したヒアルロナン上/内で、前記細胞を培養する工程とを含む方法が提供される。細胞の系統の段階は抗原性から定義することができ、自己再生と分化を伴う増殖の認識を可能にする。例えば、肝幹細胞は、EpCAM+、NCAM+、アルブミン+、CK19+、クローディン3+AFP−と定義することができ、肝の一過性増幅細胞であり得る肝芽細胞は、EpCAM+、ICAM−1+、アルブミン+、AFP+、CK19+及びクローディン3−である。
【0009】
細胞外マトリックスは、1種以上のコラーゲン、1種以上の基底膜接着分子、1種以上のプロテオグリカン(又はその/それらのグリコサミノグリカン鎖)、及び1種以上のホルモン若しくは増殖因子、又はそれらの組合せと複合体を形成したヒアルロナンをさらに含み得る。さらに、一部の実施形態では、ヒアルロナンは、例えばアルデヒド結合又はジスルフィド結合を介して化学的に架橋されている。
【0010】
本発明のさらにもう1つの実施形態では、単離細胞の細胞培養物、無血清培地、及び他の成分と複合体を形成したヒアルロナン又は複合体を形成していないヒアルロナンを含む組成物が提供される。細胞外マトリックス成分は、多くのコラーゲン、基底膜接着分子、及び/又はプロテオグリカン若しくはそれらのグリコサミノグリカン鎖のいずれかをさらに含む。さらに、一部の実施形態では、ヒアルロナンは、例えばアルデヒド結合又はジスルフィド結合を介して化学的に架橋されている。
【0011】
もう1つの実施形態では、ヒアルロナン複合体は、上皮細胞(例えば肝実質細胞)及び一部の間葉細胞(例えば内皮)の混合物を接種され、インビボでの細胞の移植のための移植片として使用される。
【0012】
この特許又は出願のファイルは、カラーで作成された多数の図面を含む。カラー図面を含む特許公報又は特許出願公開の写しは、請求及び必要な費用の支払いを受けた場合、特許庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】肝前駆細胞上のヒアルロナン受容体を示す画像である。図1Aは、培養プラスチック上の間葉髄伴細胞(mesenchymal companion cells)に関連したヒト肝前駆細胞であって、ヒアルロナン受容体CD44(緑色)及びDapi(青色)について染色したヒト肝前駆細胞上に存在するヒアルロナン受容体を示す(倍率10倍)。図1B〜1Dは、CD44(緑色)及びAFP(赤色)についての受容体を示す新たに単離された肝前駆細胞の画像である(倍率60倍)。BのパネルはCD44、CのパネルはAFP、Dのパネルはオーバーレイを示す。図1Eは、関連する間葉髄伴細胞と比較した肝幹細胞コロニー上のヒアルロナン受容体の発現のコントラスト画像である。プレートをBodipyにコンジュゲートされたヒアルロナンで染色した(4倍)。図1F〜1Iは、培養プラスチック上に存在する様々な細胞型を示す合成画像である。ヒト肝幹細胞のコロニーをDNA(Dapi−青色)又はEpCAM(緑色)で染色した。デスミンを発現する肝星細胞が赤色で示されている(40倍、油浸)。AのパネルはDAPI、BのパネルはEpCAM、Cのパネルはデスミン、Dのパネルはオーバーレイを示す。
【図2】ヒアルロナンヒドロゲル中で増殖させた細胞の生存能力を示す。図2A及び図2Bは、ヒト肝芽細胞を接種し、20日間培養したヒアルロナンヒドロゲルの位相コントラスト画像である(20倍)。2Cは、ヒアルロナンヒドロゲル中で11日間培養し、その後リソトラッカー(緑色、488nm)及びマイトトラッカー(赤色、543nm)で染色し、細胞生存能力を示すヒト肝前駆細胞の集合体(球体)を示す。示された画像は、40倍/1.3 油浸 DIC、スケーリングが0.06μm×0.06μmでの球体の共焦点切片である。2Dは、球体を通しての共焦点切片であり、培養11日目のヒアルロナンヒドロゲル中の球体の中心部内の細胞の生存能力を示す。フレーム1から始まってフレーム6まで、画像は球体を「スライス」して中心部内の生細胞を示す。スタックサイズは1024×1024×45、921.4μm×921.4μm×132.0μmである。スケーリングは0.9μm×0.9μm×3.0μmである。対物レンズはPlan−Neofluar 10倍/0.3である。波長は543nmである。(Zeiss 510)。
【図3】ヒアルロナンヒドロゲル中で培養したヒト肝芽細胞の特定の抗原発現を示す。ヒアルロナンヒドロゲル中で培養したヒト肝芽細胞の集合体を様々なマーカーで染色した。写真はすべて、Zeiss 510、Leica及びOlympus Flow View共焦点顕微鏡で撮影した。図3Aは、サイトケラチン19(CK19)の発現を示す。波長488nm、40倍(対物)/1.3油浸 DIC、スケーリング0.11μm×0.11μmを使用した。図3Bは、40倍(対物)/1.3油浸 DICを使用したヒアルロナンヒドロゲル中の肝前駆細胞の球体の位相差顕微鏡写真である。3Cは、3Aと3Bとのオーバーレイ画像である。3Dは、3Bにおけるものと同じ細胞の球体の培養物でのアルブミン発現を示す。対物レンズは、Plan−Neofluar 40倍/1.3油浸 DICである。波長は543nmである。スタックサイズは230.3μm×230.3μmである。スケーリングは0.22μm×0.22μmである。ヒアルロナンヒドロゲル中のヒト肝芽細胞におけるアルブミン発現を赤色で示す。図3Eは、ヒドロゲル中の肝芽細胞の位相差顕微鏡写真である。図3Fは、3Dと3Eのオーバーレイ画像である。図3Gは、サイトケラチン(CK)8及び18の発現(緑色はAlexa 488)を示す。核をDapi(青色)で染色した。ヒアルロナンヒドロゲルは染まらず、バックグラウンド中の「波状」画像として現れる。60倍の油浸レンズ(Leica)を使用した。図3Hは、ヒアルロナンヒドロゲル中の細胞の球体内の細胞におけるI−CAM/1(Alexa 488は緑色)の発現を示す。核をDAPI(青色)で染色している。60倍の油浸レンズ(Leica)。図3I〜3Lは、ヒドロゲル培養物中に維持した細胞における上皮細胞接着分子(EpCAM)、α-フェトプロテイン(AFP)及びアルブミンの発現を示す。6倍と20倍のズーム。(Olympus FV500)。図3I.DIC(白黒)。図3J.上皮細胞接着分子(緑色)。図3K.α-フェトプロテイン(赤色)、6倍と20の倍ズーム。図3L.アルブミン(黄色)。6倍と20倍のズーム。
【図4】ヒアルロナン(HA)ヒドロゲル中で培養した肝芽細胞によるアルブミンと尿素の合成の証拠を示す。図4Aは、培養下で30日間にわたって測定した、プラスチック基質上の細胞と比較したときのHAゲル内の細胞におけるアルブミン生産を示す。HAヒドロゲルにプレートされた肝前駆細胞の標準化したアルブミン生産(白く色分けされた円)は、収集した培養物において変動があり、8日後及び9日後にアルブミン生産のピークが認められる(黄色に色分けされている)。プラスチックについてのアルブミンデータ(黒く塗りつぶされた円)はヒドロゲル条件に関するデータの下に示され、すべての点がヒドロゲルについて検出された最小の濃度よりも下にある。いずれのデータのラインもアルブミン生産に適していない。図4Bは、HAゲル内および他の基質上の細胞中における尿素生産を示す。ヒアルロナンヒドロゲル中の肝前駆細胞によって生産された、標準化したmg/dl尿素(白い逆三角形)を、プラスチック(黒い円)、I型コラーゲンゲル(白い円)又はコラーゲンゲルのサンドイッチ(黒い三角形)での培養物と比較する。グラフに示した点の日にちごとの追跡を容易にするために点と点を結んだ曲線を付け加えている。
【図5】CK19、アルブミン及びAFPのRNA発現を示す(GAPDHに標準化されている)。CK19(A)、アルブミン(B)及びAFP(C)をコードするRNAを、HAヒドロゲル中で培養された新たに単離した肝芽細胞、肝幹細胞及び肝前駆細胞の培養物から単離した。すべての値はハウスキーピング遺伝子であるGAPDHに標準化され、試料について全RNA30ng当たりに存在する鎖の数として表されている。
【図6】プラスチックから採取され、関連コラーゲンを伴う又は伴わない、ジスルフィド結合で架橋されたヒアルロナンヒドロゲルの表面に移されるか継代接種された肝幹細胞のコロニーを示す A.ヒアルロナンヒドロゲル B.I型コラーゲンとヒアルロナンヒドロゲル C.III型コラーゲンとヒアルロナンヒドロゲル D.IV型コラーゲンとヒアルロナンヒドロゲル。
【図7】組織培養プラスチック上の培養物から採取され、ジスルフィド結合で架橋され、以下と複合体を形成したヒアルロナンヒドロゲルの表面に移された肝幹細胞のコロニーを示す。 A.ラミニン B.I型コラーゲンと混合されたラミニン。
【図8】ジスルフィド結合によって架橋されたヒアルロナンヒドロゲルに包埋した肝幹細胞を示す。ヒドロゲル全体にわたって細胞が集合体又は球体を形成していることに留意すべきである。 A.包埋された肝幹細胞とヒアルロナンヒドロゲル。4倍。 B.包埋された肝幹細胞とヒアルロナンヒドロゲル。20倍。
【発明を実施するための形態】
【0014】
インビボで、幹細胞は、可溶性因子(例えば栄養素、ガス、増殖因子)及び細胞外マトリックス成分などの不溶性因子の両方と相互作用する。これらの因子との相互作用、特に細胞間相互作用、増殖因子のアベイラビリティー、及び成熟肝組織において認められる特定細胞外マトリックス成分の存在又は不在が検討されてきた。しかし、主として胚組織及び胎児組織で認められるマトリックス化学の影響についてはこれまであまり検討されていない。
【0015】
ヒアルロナン(HA)は、N−アセチル−D−グルコサミン部分とグルクロン酸部分の間がそれぞれβ−1−4、β−1−3結合で連結された二糖単位から成るグリコサミノグリカン(GAG)である。HAは、マトリックス構造の安定化と完全性、水分及びタンパク質ホメオスタシス、組織の保護、分離及び潤滑化、細胞運動/移動の促進、輸送の調節(立体排除を含む)、貯蔵所としてのホルモンのアンカリング及び免疫炎症応答の統合に寄与する。
【0016】
HAは、胚組織において、及び細胞の成長と増殖、創傷修復及び再生を経験している成人組織において有意の量で認められる。肝臓において、HAは、胚組織及び胎児組織のマトリックス内及び成人肝のゾーン1に位置する、推定上の幹細胞画分であるヘーリング管の近くに存在する。しかし、HAは成熟実質細胞に関連していないと考えられる。それ故、本発明者らは、HAが細胞、特に前駆細胞のエクスビボ培養のための3−D足場として、又は宿主への細胞の再導入のための移植片の足場としての候補マトリックス成分であり得ると推測した。
【0017】
ヒアルロナンはインビボで高い代謝回転速度を有し、脆弱で不安定な足場を生じ、バイオリアクターシステム又は移植のための移植片において、組織構築のためにエクスビボ培養に必要な実際的方法で使用される足場の能力に影響を及ぼしている。それ故、本発明のHA足場は、化学的架橋によって「安定化」される。一部の実施形態では、HAはアルデヒド結合を通して架橋され、他の実施形態では、HAはジスルフィド結合を通して架橋される。
【0018】
本発明者らは、HAヒドロゲルの足場を水に不溶性にするが、それらの生物学的機能に必須であると予想される特性をまだ維持する、架橋を介して化学修飾されたヒアルロナンの生物学的作用を試験した。HAヒドロゲルに接種されたヒト肝芽細胞は、培養プラスチック上の細胞で可能であったよりも3倍より長い4週間以上にわたってそれらの生存能力及び分裂能力を保持することが認められた。驚くべきことに、(他の成分と複合体を形成していない)純粋なヒアルロナン、及び幹細胞/前駆細胞のために設計され、基礎培地、インスリン、トランスフェリン/鉄、脂質及び2つの微量元素(セレン、亜鉛)のみから成る培地、すなわちクボタ培地に接種した細胞は、安定なままであり(すなわち分化しなかった)、培養期間を通じて幹細胞のまま又は非常に早期段階の肝芽細胞のままであることを発見した。他の培養条件は肝幹細胞の生存と自己複製に対して許容性であるが(例えばIII型コラーゲンとクボタ培地)、ヒアルロナンは、幹細胞と肝芽細胞の両方の生存と自己複製を促進すると同定された最初の培養条件であり、三次元形式での維持と自己複製を許容する最初の培養条件であった。単層形式では、肝芽細胞は生存のために様々な供給物を必要とし、これまでに同定された供給条件では限られた増殖能を示す。実際に、肝芽細胞はヒアルロナン上でのみ自己複製し、試験した他のいずれの条件下でも自己複製しないことが認められた。
【0019】
肝臓は、造血細胞、間葉細胞及び肝前駆細胞から構成される。肝臓内の肝前駆細胞亜集団は、2つの多能性細胞集団、すなわち肝幹細胞と肝芽細胞、及び2つの単能性集団、すなわちコミットされた肝細胞前駆細胞とコミットされた胆管前駆細胞から成る。
【0020】
肝幹細胞と肝芽細胞は表現型に広汎な重複を有しており、アルブミン、上皮特異的サイトケラチン(CK)8及び18、胆管特異的サイトケラチンCK19、上皮細胞接着分子EpCAM(CD326又はHEA125)、CD133/1(プロミニン)、テロメラーゼ、ソニックヘッジホッグ及びインディアンヘッジホッグを発現し、造血マーカー(CD45、CD34、CD38、CD14及びグリコホリンA)、内皮マーカー(CD31、VEGFr又はKDR、フォンビルブラント因子)、及び他の間葉マーカー(CD146、デスミン、α平滑筋アクチン又はSMA)に対して陰性である。肝幹細胞がNCAM及びクローディン3を発現するのに対し、肝芽細胞はICAM−1(CD54)、α−フェトプロテイン(AFP)及び胎児P450類(例えばP450A7)を発現する点で、それらは区別できる(表1参照)。インビボで、多能性肝前駆細胞は、妊娠第11週から第13週までの間に肝細胞系統及び胆管系統を生じさせる。
【0021】
【表1】

【0022】
本発明は、前駆細胞を含む細胞を、長期間にわたって維持する、増殖させる及び/又は分化させる方法を提供する。細胞は、ヒアルロナンと複合体を形成した成分及び無血清規定培地の精密な組成物と複合体を形成した成分の正確な混合物に依存する生存、増殖又は分化条件の下で樹立され得る。1つの実施形態では、肝前駆細胞、肝芽細胞又は肝幹細胞は、ヒト肝から入手され、「クボタ・ヒロシ培地(Hiroshi Kubota’s Medium)」(HK)を伴うヒアルロナンヒドロゲル上/内で増殖される。この「クボタ・ヒロシ培地」は、低濃度の銅を含むか又は含まず、低濃度のカルシウム(<0.5mM)を含み、インスリン、トランスフェリン/鉄、脂質(高密度リポタンパク質及び精製アルブミンに結合した遊離脂肪酸)及び特定微量元素(亜鉛、セレン)だけを添加した無血清基礎培地である。この方法はまた、これらの条件下で、幹細胞と肝芽細胞の中間にあたる表現型を有する細胞の安定な増殖のための手段を提供する。このようにして、肝前駆細胞に合わせて調製された無血清培地(例えばHK培地)と組み合わせたHAヒドロゲルは、ヒト肝前駆細胞、この場合は幹細胞及び初期段階の肝芽細胞ための適切な三次元足場を提供することができる。また、ヒドロゲルに培地を加えたものは、増殖能力、長期的な培養期間を通しての表現型安定性、及び存在する場合は、胆管又は肝細胞の運命のいずれかへの最小限の系統限定と共に、細胞の生存能力の観点から、細胞を初期肝芽細胞として維持することを可能にする。
【0023】
理論にとらわれること又は拘束されることなく、現在、例えばHAのカルボキシル基によって、アルデヒド架橋されているHAは、肝幹細胞の髄伴細胞である細胞(例えば血管芽細胞又は内皮細胞)からの酵素活性によってほとんど修飾されず、HA上での肝前駆細胞の緩やかな成長を生じさせると考えられる。ヒアルロナンの代謝回転を含む細胞外マトリックスの代謝回転は、典型的には、細胞による酵素消化、すなわち組織又は器官を形成するための細胞の増殖と樹立における内因性過程によってインビボで達成される。従って、現在、エクスビボでの前駆細胞は、増殖するためにはHAを消化する能力を必要とすると考えられる。HA足場の強固さも、ヒドロゲル内には大きな流体容積が含まれ得るので、細胞の成熟に影響を及ぼし得る。それ故、HAヒドロゲルの物理化学的性質(柔軟性及び架橋密度など)は、細胞増殖過程を最適化するように調節すべきである。
【実施例】
【0024】
[ヒト肝の調達]
胎児肝。肝組織は、正式認可を受けた代理店(Advanced Biological Resources,San Francisco,CA)により、妊娠の選択的終結によって得られた妊娠18〜22週齢の胎児から提供された。研究プロトコールは、UNCのIRB for Human Research Studiesによって審査され、承認された。
【0025】
生後肝。新生児、小児及び成人の死体ドナーからの無傷肝を、UNOSによる臓器提供プログラムを通して入手した。これらの試験に使用したものは、疾患過程の証拠を有さず、正常とみなされた。研究のための肝の使用に関して最近親者からインフォームドコンセントを得、プロトコールは施設内倫理委員会の承認を受け、工程は医薬品適正製造基準に準拠した。
【0026】
[細胞の単離]
胎児肝。ヒト胎児肝組織を処理するための方法は、以前に、例えばSchmelzer E.et al.2006(Stem Cells)において報告されている。すべての処理及び細胞増殖手順は、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA Fraction V、0.1%、Sigma,St.Louis,Mo.)を添加した基礎培地(RPMI 1640)、それぞれ5μg/mlのインスリンと鉄飽和トランスフェリン(Sigma,St.Louis,MO.)、微量元素(亜セレン酸、300pM、及びZnSO、50pM)、及び抗生物質(AAS,Gibco BRL/Invitrogen Corporation,Carlsbad,California)から構成される細胞洗浄緩衝液中で実施した。肝組織を3mLフラグメントに再分割し(総容量は2−12mLの範囲であった)、IV型コラゲナーゼ及びデオキシリボヌクレアーゼ(Sigma Chemical Co.St Louis,どちらも6mg/mL)を含む細胞洗浄緩衝液25mL中、32ECで頻繁に撹拌しながら15〜20分間消化した。これは細胞凝集物の均質な懸濁液を生じさせ、それを40ゲージのメッシュに通して、1200RPMで5分間遠心した後、細胞洗浄液に再懸濁した。赤血球を、低速遠心分離によって又は懸濁液を抗ヒト赤血球(RBC)抗体(Rockland,No.109−4139)(1:5000希釈)で15分間、37℃で処理し、続いてLowToxモルモット補体(Cedarlane Labs,No.CL4051)(1:3000希釈)で10分間、37℃で処理することによって除去した。トリパンブルー排除法による推定細胞生存能力は常に95%超であった。さらなる詳細については補足データ参照。
【0027】
出生後肝。肝臓を、34℃にてEGTA含有緩衝液で15分間、次に600mg/Lのコラゲナーゼ(Sigma)で30分間、門脈及び肝動脈を通してかん流させた。その後臓器を回収用緩衝液中で機械的に分離させた。細胞懸濁液を1,000ミクロン、500ミクロン及び150ミクロンの細孔径のフィルターに通した。単一細胞を収集し、次にCobe 2991細胞洗浄機においてOptiprepを添加した緩衝液中での密度勾配遠心分離(室温にて500×gで15分間)を用いて生細胞を死細胞及びデブリから分別した。OptiPrep/細胞溶液と、フェノールレッドを含まないRPMI−1640との間の界面に存在する、生じた肝細胞バンドを回収した。
【0028】
他の実験では、生存能力を、いくつかの生体染色色素、すなわちリソトラッカー グリーン、マイトトラッカー レッド及びリソトラッカー レッド(Molecular Probes)の1つを使用して培養物において評価した。好ましくは、色素は、共染色したときの他の蛍光プローブに対するそのコントラストに基づいて選択された。生体染色色素をHK培地において以下の濃度、すなわち75nMのリソトラッカー グリーン、75 nMのリソトラッカー レッド及び250nMのマイトトラッカー レッドで30分間インキュベートした。
【0029】
[組織培養プラスチック]
肝芽細胞について増殖させたヒト肝前駆細胞の懸濁液を、2.5%ウシ胎児血清(FBS)を添加したHK培地を含むプラスチック上に接種した。37℃、5%COで16時間のインキュベーション後、試験の残りの期間中、培地を無血清HK培地に交換した。プラスチック上の細胞を、実験の終了時まで3日ごとに培地を交換して培養した。培養の最初の16時間以内に付着しなかった細胞を、培地交換の時点で吸引した。実験終了時に、HK培地の吸引後にプレートに4%パラホルムアルデヒドを添加して細胞を固定した。
【0030】
[ヒト肝幹細胞及び肝芽細胞はヒアルロナンに対する受容体を有する]
関連蛍光プローブで直接標識した一次抗体を使用して、又は一次抗体の後に蛍光プローブに結合した二次抗体を用いる2段階染色を用いて、細胞を免疫蛍光で染色した(下記の表2参照)。染色の前に、デブリを全て洗い流すために、対象とする部位にリン酸緩衝液(PBS)約1mlをかけた。組織内の非特異的結合部位をブロックするためにヤギ血清(PBS液中10%)を1時間添加した。ブロッキングを取り除き、この部位を1×PBSで洗浄した。モノクローナル抗体を添加し、一晩インキュベートした。4℃で一晩(例えば18時間)インキュベートした後、一次モノクローナル抗体溶液を取り除き、試料を1×PBSで各々10分間ずつ3回洗浄した。二次抗体(Alexa 488又はAlexa 594,Molecular Probes)を1:750又は1:1000の希釈で添加した。試料を遮光し、室温で1時間放置してインキュベートした。試料を1×PBSで3回洗浄し、顕微鏡用のDPX封入剤(Electron Microscopy Sciences) 又はDAPI封入剤を含むVector Shield(Vector Laboratories)のいずれかを用いてカバーガラスで調製した。
【0031】
DAPI濃度は1.5μg/mlであった。10日間の培養後、肝胎児幹細胞コロニーをPBS中の4%パラホルムアルデヒドを用いて固定し、PBS 0.1%Triton−X100中の10%ヤギ血清で室温にて1時間ブロックした。一次抗体としてウサギIgG抗デスミン(Abcam)及びマウスIgG1抗EpCAM(Labvision)をブロッキング緩衝液中で室温にて1時間適用し、二次抗体である抗ウサギAlexaFluor 568、AlexaFluor 488にコンジュゲートされた(Molecular Probes/Invitrogen)抗マウスIgG1、及び核染色のためのDAPI(Sigma)をブロッキング緩衝液中で室温にて1時間適用した。Leica SP2 TCSソフトウエア(Leica Microsystems)によって制御されるLeica SP2レーザー走査型共焦点顕微鏡を用いて蛍光を解析した。
【0032】
蛍光色素標識に結合した細胞質抗原(例えばアルブミン、AFP)の分析のため、LeicaSP2 AOBS直立レーザー走査型顕微鏡、Zeiss 510メタ倒立レーザー走査型共焦点顕微鏡、及びLeica DMIRB倒立蛍光/DIC顕微鏡を白黒及びカラーのデジタルカメラと共に使用して、細胞を画像化した。
【0033】
【表2】

【0034】
結果は、図1Aに示す、CD44に対する蛍光抗体を用いたヒト肝幹細胞の密集した25日齢のコロニーの免疫染色によって証明されるように、ヒト肝幹細胞及びヒト肝芽細胞がヒアルロナン受容体に関して陽性であることを示す。AFP陽性である新たに単離された肝芽細胞も、図1B〜Dにおいて、CD44受容体に関して陽性であることが示されている。細胞表面糖タンパク質であるCD44は、HA結合のための受容体を強調する緑色で示されている。受容体は、図1Aにおいて幹細胞コロニー内の細胞のほぼ100%をカバーしており、一部の細胞における強い染色と他の細胞におけるより明るく弱い染色として見られるように、個々の細胞は様々な量の受容体を含む。個々の細胞を、それらの核のDAPI染色(青色)の使用によって対比させている。
【0035】
図に示されるように、染色は、各々のヒト肝前駆細胞がHA結合能力を有することを示唆する。図1Eでは、ヒト胎児肝から単離し、プラスチック上で4週間培養したヒト肝前駆細胞の一次培養物を4倍の倍率で画像化し、HA−BODIPYコンジュゲートについて蛍光染色している。肝前駆細胞は、培養物において明らかであり、ストロマ細胞及び内皮細胞を含む他の細胞よりも高い割合でHAに対する受容体を発現する。コンジュゲートされたHAの取込みにより強いBODIPY染色を有する肝前駆細胞は、左下四半部に位置する。
【0036】
比較すると、右下及び上の四半部にそれぞれ示す線維芽細胞及び非実質細胞は、HAを媒介した結合及び取込みにおける活性がより低い。特異的な亜集団を同定するために他の研究者達によって定義されたマーカーを利用して、非実質細胞の免疫組織化学染色を実施した。間葉細胞は、血管芽細胞(KDR+/CD133−1+/CD117+)、成熟内皮細胞(CD31+)、肝星細胞(デスミン+、アルファ−平滑筋アクチン+)、赤血球(グリコホリンA+)を含む造血細胞(CD45+)を含む多くの亜集団を含む。これらの細胞亜集団の代表を図1F〜Iに示す(デスミン発現に関して陽性の肝星細胞はEpCAM陽性幹細胞に隣接して位置する)。
【0037】
[ヒト肝前駆細胞はHAヒドロゲル中で生存可能であり、三次元的に増殖する]
ヒアルロナン(平均分子量は、1,500,000)をKraeber GMBH and Co.(Waldhofstr,Germany)より入手した。アジピン酸ジヒドラジド(ADH)及びエチル−3−[3−ジメチルアミノ]プロピルカルボジイミド(EDCI)をSigma−Aldrich(St.Louis,MO)より購入した。これら及び本明細書において開示する他の試薬は多数の供給業者より入手可能であり、それらはすべて本発明に関する実施に適した試薬を供給する。細胞培養用に構成したヒアルロナンマトリックスを、以前に公表されたプロトコールから修正された方法を用いてアルデヒド架橋によって調製した。例えば、Vercruysse KP,et al.,Synthesis and In Vitro Degradation of New Polyvalent Hydrazide Cross−Linked Hydrogels of Hyaluronic Acid.Bioconjugate Chemistry 1997;8:686−694、及びKim A.et al.,Characterization of DNA−hyaluronan matrix for sustained gene transfer.Journal of Controlled Release 2003;90:81−95を参照されたい。これらの開示全体が参照することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0038】
簡潔に述べると、1%のヒアルロナン水溶液を調製し、測定し、適切な大きさのアルミニウム鋳型内に付着させ、ドライアイス上で瞬間凍結し、凍結乾燥して固体のスポンジ状ウエハを形成した。ウエハを0.1%ADH溶液(90%イソプロパノール/10%水)中で30分間インキュベートし、ADH溶液を完全に浸透させた。EDCI(120mg)をADH溶液に添加し、撹拌して速やかに溶解させた。試薬混合物に1NのHClを添加してpHを約4.5に調整することにより、部分的に水和したHAスポンジ状ウエハの架橋を開始させた。
【0039】
試薬混合物を静かに移し、90%イソプロパノール100mlと交換することによって反応を終了させた。回収された架橋HAマトリックスを、その後、一晩インキュベートすることによって90%イソプロパノール100mlで少なくとも5回抽出した。次にHAマトリックスを純粋なイソプロパノールに移し、すべての残存水分を除去し、空気乾燥した。架橋HAマトリックスの直径は、それぞれ0.7cm又は3.5cmであった。再水和に際し、HAマトリックスは容易に水を吸収し、高度に多孔性のHAスポンジ状ヒドロゲルを形成した。培養における使用の前に、HAヒドロゲルを、40グレイ(40ジュール/kg)の送達可能線量で10分間にわたってセシウム源(JL Shepard Mark I Model 68 Cesium Irradiator−Department of Radiation Oncology,UNC)に暴露することによって滅菌した。
【0040】
[ヒアルロナンヒドロゲルにおける肝芽細胞培養]
HAヒドロゲルを、培養ウエル、すなわち6穴培養処理ポリスチレン、又はより小さいサイズのヒドロゲルマトリックスについては、チャンバー型カバーグラス培養用スライド (Lab−Tek−Nunc,Napersville,IL)のいずれかに入れた。より小さなヒドロゲルは、あらかじめHK培地に浸す以外は、新たに単離した細胞の接種前に何の操作(プライミング)も必要としなかった。より大きなヒドロゲルについては、ヒドロゲルから気泡を確実に除去するためのわずかな操作が有用であった。ほとんどの場合、ヒドロゲルへHK培地を3ml添加することによって気泡を捕え、ヒドロゲルのわずかな圧縮−弛緩が側面から空気を押し出すことによって、機械的に気泡を除去することができる。
【0041】
プライミング後、肝芽細胞が増殖されたヒト肝前駆細胞の懸濁液を、2.5%FBSを含むHK培地中のヒドロゲル1つ当たり2×10細胞で大型HAヒドロゲルに接種し、小型ヒドロゲル1つ当たり2×10細胞で接種した。COインキュベーター中、37℃で16時間の初期インキュベーション後、FBSを含む培地を無血清HKと交換した。6穴プレートについての作業容量は3mlであり、2チャンバー型のウエルについては2mlであった。培地を2〜3日ごとに交換して、これらの同じ条件下で細胞を4週間培養した。
【0042】
本明細書で論じるように、HK培地は、銅を含まず、低濃度カルシウム(<0.5mM)を含み、インスリン(5μg/ml)、トランスフェリン/鉄(5μg/ml)、高密度リポタンパク質(10μg/ml)、セレン(10〜10M)、亜鉛(10〜12M)及び精製アルブミンに結合した遊離脂肪酸の混合物7.6μEを添加した無血清基礎培地(例えばRPMI 1640、Gibco−Invitrogen)を含んでいた。この培地の調製のための詳細な方法は、別のところで、例えば、Kubota H,Reid LM.Clonogenic hepatoblasts,common precursors for hepatocytic and biliary lineages,are lacking classical major histocompatiblity complex class I antigen.Proceedings of the National Academy of Sciences(USA)2000;97:12132−12137において公表されており、それらの開示全体が参照することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0043】
新たに分離されたヒト胎児肝から単離した細胞は、ヒドロゲル中で集合/増殖に対する親和性を示す。単細胞及び4個までの細胞/集合を有する集合体を、最初にHAヒドロゲル中に接種した。図2A、2B、2C及び2Dに示す、3週間の培養期間終了時の細胞集合体は、はるかに大きな細胞集合体を示す。図2Bのサンプリングされた集合体は、集合体当たり63〜2595細胞の範囲の細胞数を有する。図2A及び2Bは、HAヒドロゲル中の目に見える集合体の球体を示す。
【0044】
さらに、図2C及び2Dにおける集合体は、マイトトラッカー及びリソトラッカーの蛍光補足活性を用いて細胞生存能力を示す。蛍光補足では、蛍光プローブは能動的取り込みの後に可視成分に切断される。図2Dはまた、内側の(マイトトラッカー−レッド、染色)フレーム2−5において、集合球体が中空でもなく壊死してもいないことを示す共焦点平面を表す。DNA測定は、プラスチック上の細胞の死と、14日間のインキュベーション期間にわたって約2%の平均1日増加でのHAヒドロゲル中でのそれらの増殖から収集された定量可能な細胞DNAの完全な逆転を示す。
【0045】
[肝芽細胞は、培養プラスチック上の肝芽細胞と比較してヒアルロナンヒドロゲル内でより長く生存する]
肝芽細胞について増殖させたヒト肝前駆細胞の懸濁液を、2.5%ウシ胎児血清(FBS)を添加したHK培地を含むプラスチック上に接種した。37℃、5%COで16時間のインキュベーション後、試験の残りの期間中、培地を無血清HK培地に交換した。プラスチック上の細胞を、実験の終了時まで3日ごとに培地を交換して培養した。培養の最初の16時間以内に付着しなかった細胞は培地交換の時点で吸引した。実験終了時に、細胞を4%パラホルムアルデヒドを用いて固定した。
【0046】
ヒアルロナンヒドロゲル中及びHK培地中の細胞は、4週間を超える培養期間を通して肝幹細胞と肝芽細胞の間の安定な表現型中間体を維持し、胆管細胞運命又は幹細胞運命のいずれかに系統限定しなかった。代表的なデータを、図3に提示する免疫組織化学染色によって示す。細胞は、胆管系統マーカーであるCK19とアルブミンとの共発現に証明されるように肝実質前駆細胞であり(図3A〜3F)、CK8/18についての染色によって証明されるように上皮細胞である(図3G)。細胞の大部分で認められたI−CAM染色(図3H)及びAFPの低レベルの発現は、細胞が肝芽細胞に近い分化状態に保持されていることを示す。実際に、十分に分化した肝芽細胞は、機能に関する生化学的アッセイによって裏付けられた結論として、非常に高レベルのアルファ−フェトプロテインを有すると予想される(下記参照)。最後に、肝芽細胞は3つのマーカー、すなわちEpCAM、AFP及びアルブミンの共発現を特徴としている(図3I〜L)。
【0047】
[細胞はHAヒドロゲル中で4週間超にわたって初期肝芽細胞の表現型を維持する]
アルブミンの生産を酵素結合免疫検定法(ELISA)によって測定した。培地上清を、対照(プラスチック)培養物及びHAヒドロゲルから、4週間の培養期間の間、1日1回又は1日おきに回収した。培養物からの培地を凍結し、分析時まで−20℃で保存した。精製ヒトアルブミンを標準として使用し、ペルオキシダーゼがコンジュゲートされた抗体をアルブミンに対する蛍光プローブとして使用した。測定はSpectromax 250マルチウエルプレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)で行った。
【0048】
同様に、尿素生産を、ジアセチルモノオキシムと尿素の直接相互作用に基づき、尿素窒素感受性アッセイを用いて分析した。尿素濃度は、cytofluor Spectromax 250マルチウエルプレートリーダーと分光光度計を用いて515〜540nmで測定した。30日の培養期間にわたって、HAヒドロゲル中で培養した肝前駆細胞のアルブミン生産を、プラスチック上で培養した肝前駆細胞のアルブミン生産と比較した。アルブミンの濃度(体積当たり)は、すべての培養物について7日目から10日目までの間にピークに達した。プラスチック上の培養物では肝芽細胞は7〜10日間存続し、有意のレベルのアルブミンを確実に発現した。これに対し、HAヒドロゲル中の培養物では肝前駆細胞が4週間より長い間存続した。
【0049】
図4Aは、HAヒドロゲルにプレートされた肝前駆細胞の標準化したアルブミン生産である(白く色分けされた円)。アルブミンレベルは、培養プラスチック及びI型コラーゲン基質にプレートされた細胞と同様に、8日目から10日目までの間に急上昇して低下する。標準化したアルブミンの量は顕著により高く、4.0×10−5mg/mlに近い傾向で変化したが、プラスチック上で培養した肝芽細胞は2.5×10−5mg/mlの基線よりかなり下である。プラスチック上の細胞に関するアルブミンデータ(黒い円)を、ヒドロゲル中の細胞に関するアルブミンデータと比較してプロットしたとき、その標準化したデータはHAヒドロゲル中で培養した同じ細胞よりも一貫して低い。
【0050】
この試験においてコラーゲンゲルを利用する場合は、ラットの尾のI型コラーゲンを用いる。コラーゲンマトリックスは、特に指定がない限り、1.5mg/mlの密度濃度を有する。この試験の平板培養のために、I型コラーゲン0.4mlを直径35mmの培養表面上にプレートし、37℃、95%O−5%COで1時間インキュベートしてゲル化させる。その後、100万個の生肝細胞を、10%FBSを添加した培地を用いてゲル化した層に接種する。8時間の細胞インキュベーション後、培地を取り出し、無血清培地0.5mlを培養物の上に添加して、毎日交換する。
【0051】
この研究のサンドイッチ培養試験のために、培養は35mm組織培養皿を含む。簡潔に述べると、100万個の生細胞を平板コラーゲンマトリックスにプレートし、10%FBSを添加した培地において37℃、5%COで8時間付着させた。その後培地を取り出し、さらに0.4mlのコラーゲンを細胞の上に適用して、37℃で1時間ゲル化させる。次に無血清培地0.5mlを培養物の上に添加して、毎日交換した。
【0052】
成熟肝細胞の一般的な機能である尿素生産を図4Bにグラフで示す。このアッセイについては尿素の濃度をmg/dlで表している。ヒアルロナンヒドロゲル中の肝芽細胞による標準化した尿素生産mg/dl(逆三角)を、プラスチック上の細胞(黒い丸)、単層I型コラーゲン培養物上の細胞(白い丸)、及びI型コラーゲンの2つの層の間で培養した細胞(陰影を付けた三角)のものと比較する。やはり、すべての培養物において生産の低下が存在し、HAヒドロゲルはプラスチックよりわずかに良好であり、より緩やかな減少を成した。
【0053】
Invitrogenによって提供されたTRIzol単離を用いてHAヒドロゲルで培養したRNA細胞の単離を実施した。ヒドロゲルを培養プレートから取り出し、2mlエッペンドルフチューブに入れ、微量遠心機にて4℃、12,000rcf(11,953.34g)で遠心した。上清を吸引によって除去し、TRIzolを1ml添加した。細胞が培養プレートに付着した、比較用のプラスチック対照培養物では、TRIzolをプレートに直接添加し、その後遠心せず、培地の吸引後にチューブに回収した。
【0054】
0.2mlのクロロホルムを添加して相分離によってRNAを回収した。水相の回収後、イソプロピルアルコールによってRNAを沈殿させ、その後70%エタノールで洗浄した。RNAの最終調製物を空気乾燥し、RNaseを含まない水100μlに再懸濁した。DU7400分光光度計(Becker)で定量化を実施した。
【0055】
残存するTRIzolの各々のチューブに100%エタノール0.3mlを添加してDNAを単離した。チューブを室温で2分間インキュベートし、その後4℃、1000gで5分間遠心分離した。フェノール/エタノールの水相をタンパク質のさらなる分析のために取り出した。DNAペレットをクエン酸ナトリウム溶液、次に75%エタノールで2回洗浄し、毎回4℃、5000gで遠心分離した。2回目のエタノール遠心後、上清を吸引によって取り出し、試料を15分間空気乾燥した。ペレットを8mMのNaOH 100μlに再溶解し、最終的にpH7.0になるように1MのHepes(Mediatech)3.2μlで中和した。試料を12000gで10分間遠心し、上清を新しいチューブに移した。Beckman分光光度計でDNA定量化を実施した。
【0056】
[定量的リアルタイムRT−PCRによって分析した遺伝子発現]
遺伝子特異的mRNAを以下のように作製した。肝からの全RNAをRNeasyキット(Qiagen, Valencia,CA)を用いて抽出し、Superscript II逆転写酵素(Invitrogen)及びオリゴ−dT(12−18)プライマーによって逆転写した。cDNAを従来のPCRにおける鋳型として遺伝子特異的プライマー(配列については下記の表3参照)と共に使用し、そのうち順方向プライマーはT7プロモーター配列に対する5’オーバーハング(5’gac tcg taa tac gac tca cta tag gg)を有していた。この増幅された遺伝子特異的DNAをT7−RNAポリメラーゼ(Promega)を用いたインビトロでの転写のために使用し、遺伝子特異的RNA(T7−RNAポリメラーゼによって加えられた付加的な5’gggを有する)を作製した。この遺伝子特異的RNAを、5’オーバーハングを持たない遺伝子特異的プライマーを用いた定量的RT−PCRにおける標準として使用‘した。標準の範囲は、1〜108鋳型の線状であった。定量的RT−PCRを、LightCycler RNA Master SYBR Green I kitを用いてLightCycler装置(Roche)において実施した。試料からのRNAを、RNeasyミニキット(Qiagen)を用いて抽出した。
【0057】
図5A〜Cは、HAヒドロゲル中で培養した肝前駆細胞、プラスチック上で培養した肝幹細胞及び胎児肝細胞懸濁液から新たに単離した肝芽細胞における、GAPDHハウスキーピング遺伝子に対して標準化したCK19、アルブミン及びAFPのRNAレベルの比較グラフである。新たに単離した肝芽細胞からの全RNAの各々30ngについて、高レベルのAFP(130鎖)、アルブミン(7000鎖)、及び比較的低レベルのCK19(1.2鎖)が存在した。これに対し、肝幹細胞から単離したRNAは、AFPを全く示さず、低レベルのアルブミン(2.6鎖)及び高レベルのCK19(100鎖)を示した。HAヒドロゲルに接種した肝前駆細胞は、低レベルのCK19(1.66鎖)、低いが検出可能なレベルのAFP(0.33鎖)、及び肝幹細胞におけるよりも高いが、新たに単離された肝芽細胞で認められたよりは著しく低いレベルのアルブミン(5.77鎖)を示した。成熟肝細胞で認められるP450シトクロム、Cyp3A4は、肝幹細胞及びHAヒドロゲル中に維持された肝前駆細胞のいずれにおいても検出できなかった。それ故、HAヒドロゲル中の肝前駆細胞は幹細胞ではない。なぜならそれらはAFP及びICAM−1を発現するが、それらの機能の定量的レベルは新たに単離された肝芽細胞よりも幹細胞により近いからである。事実上、これらの細胞は初期肝芽細胞である。
【0058】
【表3】

【0059】
本発明をその特定実施形態に関連して説明したが、さらなる変更が可能であり、本出願は、今後の本発明の変形、使用又は変更をカバーすることが意図されていることは理解される。一般に、本発明の原理は、本発明が属する技術分野における公知の又は通常の慣例に含まれる、及び本明細書で述べた及び付属の特許請求の範囲に従った基本的特徴に適用され得る本開示からの逸脱を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)細胞を提供する工程と、
(b)無血清培地中、並びに他の細胞外マトリックス成分を含む又は含まないヒアルロナンの複合体上であって、及び細胞集団を維持する、増殖させる及び/又は分化させるためのホルモン又は増殖因子を含む又は含まないヒアルロナンの複合体上で前記細胞を培養する工程と
を含む、三次元(3−D)であり、長期的な維持、増殖及び/又は分化を許容する条件下で、細胞をエクスビボで維持する方法。
【請求項2】
前記細胞が肝幹細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞が肝芽細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞がコミットされた前駆細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞が成熟細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒアルロナンが、他の細胞外マトリックス成分及び/又はホルモン若しくは増殖因子と複合体を形成している、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞外マトリックス成分が、1種以上のコラーゲン(例えばIII型コラーゲン)、1種以上の基底膜接着分子(例えばラミニン)、1種以上のプロテオグリカン若しくはそれらのグリコサミノグリカン鎖(例えばヘパリンプロテオグリカン)、又はそれらの混合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
1種以上のホルモンをさらに含む請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記ホルモンが、インスリン、トランスフェリン/鉄、トリヨードチロニン、T3、成長ホルモン、グルカゴン、又はそれらの組合せである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
1種以上の増殖因子をさらに含む請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記増殖因子が、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、インターロイキン、白血病阻害因子(LIF)、トランスフォーミング増殖因子β(TGF−β)、又はそれらの組合せである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記インターロイキンが、IL−6、IL−11、IL−13、又はそれらの組合せである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ヒアルロナンが化学的に架橋されている、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ヒアルロナンがアルデヒド結合を介して化学的に架橋されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ヒアルロナンがジスルフィド結合を介して化学的に架橋されている、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ジスルフィド結合を介して架橋されたヒアルロナンを含む細胞外マトリックスが、Etracell−LGTMと呼ばれる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞外マトリックスが、1種以上の特定のコラーゲン、基底膜接着分子の1種以上の特定のアイソフォーム、1種以上の種特異的又は組織特異的プロテオグリカン若しくはそれらのグリコサミノグリカン鎖、1種以上のホルモン、及び/又は1種以上の増殖因子、又はそれらの混合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞が肝から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞が成人肝細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記肝が胎児肝である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記肝が新生児肝である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記肝が小児肝である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記肝が成人肝である、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
無血清培地がインスリン、トランスフェリン又はその両方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記無血清培地が、実質的にインスリン、トランスフェリン、脂質、カルシウム、亜鉛及びセレンから成る、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記無血清培地が、実質的にインスリン、トランスフェリン、脂質、カルシウム、亜鉛及びセレンから成る、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記無血清培地が、インスリン及びトランスフェリン以外のいかなる増殖因子又はホルモンもさらに含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
(a)細胞を提供する工程と、
(b)無血清培地中、並びに細胞集団の長期的生存、増殖及び/又は分化を可能にするヒアルロナン上で前記細胞を培養する工程と
を含む、エクスビボで細胞を増殖させる方法。
【請求項29】
前記細胞が幹細胞である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞が肝芽細胞である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞がコミットされた前駆細胞である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記細胞が成熟肝細胞又は成熟胆管細胞である、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞外マトリックスが、1種以上のコラーゲン、1種以上の基底膜接着分子、1種以上のプロテオグリカン若しくはそれらのグリコサミノグリカン(GAG)鎖、1種以上のホルモン、1種以上の増殖因子、又はそれらの組合せをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記コラーゲンが、I型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン又はV型コラーゲンである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記基底膜接着分子が、ラミニン又はフィブロネクチン又はその両方のアイソフォームである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記プロテオグリカン/GAGが、ヘパリン、ヘパリンプロテオグリカン、コンドロイチン硫酸/コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、デルマタン硫酸/デルマタン硫酸プロテオグリカン、ヘパラン硫酸/ヘパラン硫酸プロテオグリカン、又はそれらの組合せである、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記ヒアルロナンが化学的に架橋されている、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
前記ヒアルロナンがアルデヒド結合を介して化学的に架橋されている、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ヒアルロナンがジスルフィド結合を介して化学的に架橋されている、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
細胞の細胞培養物、無血清培地、及びヒアルロナンを含む細胞外マトリックス複合体を含む組成物。
【請求項41】
前記細胞が幹細胞である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞が肝芽細胞である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記細胞がコミットされた前駆細胞である、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記細胞が成熟肝細胞又は成熟胆管上皮細胞である、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記細胞外マトリックスが、1種以上のコラーゲン、1種以上の基底膜接着分子、1種以上のプロテオグリカン若しくはその/それらのGAG鎖、1種以上のホルモン、1種以上の増殖因子、又はそれらの組合せをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記コラーゲンがIII型コラーゲンである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記基底膜接着分子がラミニンである、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記プロテオグリカン/GAGが、ヘパリン又はヘパリンプロテオグリカンである、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記ヒアルロナンが化学的に架橋されている、請求項40に記載の方法。
【請求項50】
前記ヒアルロナンがアルデヒド結合を介して化学的に架橋されている、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ヒアルロナンがジスルフィド結合を介して化学的に架橋されている、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
(a)容器と、
(b)ヒアルロナン並びに、コラーゲン、基底膜接着タンパク質、プロテオグリカン又はそれらのグリコサミノグリカン鎖、ホルモン、及び増殖因子から成る群より選択される少なくとも1つの他の細胞外マトリックス成分を含む不溶性物質と
を含み、前記不溶性物質が前記容器内の懸濁液中に存在するか、前記容器の少なくとも1つの表面を実質的に被覆する、肝前駆細胞の増殖のための容器。
【請求項53】
前記容器が、組織培養プレート、バイオリアクター、ラボセル(a lab cell)又はラボチップである、請求項52に記載の容器。
【請求項54】
前記コラーゲンが、I型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、VIII型コラーゲン、XII型コラーゲン、XIII型コラーゲン、又はそれらの組合せである、請求項52に記載の容器。
【請求項55】
前記基底膜接着タンパク質が、ラミニン又はフィブロネクチンのアイソフォームである、請求項52に記載の容器。
【請求項56】
前記グリコサミノグリカンが、ヘパリン硫酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、又はそれらの組合せである、請求項52に記載の容器。
【請求項57】
プロテオグリカンの前記グリコサミノグリカン鎖が、ヘパリン硫酸−PG、ヘパリン−PG、コンドロイチン硫酸−PG、デルマタン硫酸−PG、又はそれらの組合せである、請求項52に記載の容器。
【請求項58】
前記ホルモンが、インスリン、トランスフェリン/鉄、成長ホルモン、トリヨードチロニン、グルカゴン、又はそれらの組合せである、請求項52に記載の容器。
【請求項59】
前記増殖因子が、上皮増殖因子(EGF)のアイソフォーム、線維芽細胞増殖因子(FGF)のアイソフォーム、トランスフォーミング増殖因子β(TGF−β)のアイソフォーム、肝細胞増殖因子(HGF)のアイソフォーム、白血病阻害因子(LIF)のアイソフォーム、インターロイキン6(IL6)、インターロイキン11(IL11)、インターロイキン13(IL13)、オンコスタチンM、又はそれらの組合せである、請求項52に記載の容器。
【請求項60】
グルココルチコイドがヒドロコルチゾンである、請求項58に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−519934(P2010−519934A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552854(P2009−552854)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/055881
【国際公開番号】WO2008/109659
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(500459410)ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (16)
【Fターム(参考)】