説明

肝細胞成長因子活性化物質のモジュレータ

【課題】肝細胞成長因子活性化物質機能を調節するための方法及び組成物を提供する。
【解決手段】ヒト肝細胞成長因子活性化物質(HGFA)に結合する単離された抗体。肝細胞成長因子活性化物質(HGFA)機能を調節することによってHGFA活性の生理学的効果を調節するための方法、組成物、キット及び製造品。HGFA機能を調節するために使用できるモジュレータ分子。HGF/c-metシグナル伝達経路を破壊するアンタゴニスト。CDR-H1領域を含んでなる抗体。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願)
本出願は、米国特許法規則1.53(b)(1)に基づき出願した非仮出願であり、2004年10月4日出願の米国特許仮出願番号60/615657号の優先権を主張し、その内容が出典明記によりそのままここに組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は一般に分子生物学及び成長因子調節の分野に関する。より具体的には、本発明は肝細胞成長因子活性化物質機能のモジュレータと該モジュレータの使用に関する。
【0003】
(発明の背景)
肝細胞成長因子(HGF)は、レセプタチロシンキナーゼMet(8、9に概説)を活性化することによって、細胞増殖、移動、血管形成、生存および形態形成を促進する。正常な生理機能におけるその重要性に加えて、HGF/Met経路は、浸潤性腫瘍成長および腫瘍転移に関係している(8)。HGFは、セリンプロテアーゼプラスミノーゲンに高い類似性があり、Nドメインを含有するα鎖および4つのクリングルドメインおよびキモトリプシン様プロテアーゼに相同性を有するβ鎖から成る。それは、不活性単鎖前駆体(プロHGF)として細胞外基質に分泌されて、生物学的に適確なジスルフィド結合α/β二量体を形成するためにArg494-Val495での切断が活性化されることが必要である(10-13)。この工程は、プロHGF変換セリンプロテアーゼ、例として、肝細胞成長因子活性化物質(HGFA)(14)に媒介される。HGFAは、細胞表面に発現されるKunitz型インヒビター、例として、2つの肝細胞成長因子活性化物質インヒビタースプライス変異体HAI-1(16-17)およびHAI-1B(15)、及び、HAI-2(18)により阻害される。また、HAI-2(胎盤bikunin)(19)は強力に第XIa因子および血漿カリクレインを阻害する(20)のに対して、HAI-1Bはほとんど又は全く阻害活性を有しない(15)。したがって、細胞外基質のプロHGFプールの生物学的有効性は、プロHGF転換酵素、例えばHGFAおよびそのインヒビターの活性により制御される。
プロHGFの活性化にはHGFAなどの転換酵素による切断が必要であるので、HGFA機能の調節および/またはその基質との相互作用は効果的な治療的方法であることが明らかであろう。この点に関して、活性を調節しうるおよび/またはHGFAと特異的に相互作用しうる、臨床的に関連する試薬を同定することが明らかに必要である。本発明はこの必要性を果たして、他の利点を提供するものである。
本明細書中に挙げる特許出願及び文献を含むすべての参考文献は、出典明記によりその全体が組み込まれる。
【0004】
(本発明の開示)
本発明は、肝細胞成長因子活性化物質(HGFA)機能を調節することによってHGFA活性の生理学的効果を調節するための方法、組成物、キット及び製造品を提供する。HGFA機能の調節は本明細書中に記載する抗体の使用によって行うことができる。
本発明は、HGFA機能を調節するために使用できるモジュレータ分子を提供する。一実施態様では、HGFA機能はHGFA活性(例えば、タンパク質分解活性)の阻害を介して調節される。一般的に、モジュレータ分子は本明細書中に記載の抗体を含有する。モジュレータ分子は、直接的(HGFAに結合させる、HGFAタンパク質分解活性を阻害することによって)又は間接的(例えば組織又は細胞においてHGFAタンパク質分解活性を阻害することができる活性剤をHGFAに狙わせる/仕向けることによって)に調節をもたらすことができる。一実施態様では、本発明はHGFAに結合する抗体を含有するアンタゴニスト分子を提供する。一実施態様では、HGFAに対するアンタゴニストの結合によりHGFAタンパク質分解活性が阻害される。一実施態様では、HGFAに対するアンタゴニストの結合によりHGFAによるHGFの活性が阻害される。一実施態様では、抗体はHGFAの活性部位に結合する。一実施態様では、抗体はHGFA活性部位以外の位置(例えば非活性部位)でHGFAに結合する。一実施態様では、HGFA活性部位以外の位置でのHGFAに対する抗体の結合によりその基質分子とHGFAの相互作用が阻害される。一実施態様では、HGFA活性部位以外の位置でのHGFAへの抗体の結合によりHGFAタンパク質分解活性が阻害される。
【0005】
一態様では、本発明は、HGF/c-metシグナル伝達経路を破壊するアンタゴニストを提供する。例えば、本発明は、プロHGFのHGFA切断(例えばR494-V495位置での切断)を阻害する分子を提供する。当該分子は、プロHGFのHGFA切断が阻害される活性部位以外の部位(例えば、非活性部位)及び/又は活性部位でのHGFAへの結合を含むがこれに限定されるものではない多くの様式で阻害機能を働かせることができる。当該分子は複合体型又は非複合体型でHGFAに結合することができる。また、当該分子は、HGF活性化過程の一又は複数の態様を阻害することによってその阻害機能を働かせることができる。例えば、一実施態様では、本発明のアンタゴニスト分子は、プロHGFの切断が阻害されるようにHGFA-プロHGF複合体に結合する。一実施態様では、プロHGF又はHGFAへの分子の(単独又は複合しての)結合によりHGFAによる切断後のHGFの放出が阻害される。一実施態様では、本発明のアンタゴニスト分子はc-metへのHGF結合を阻害しない。例えば、一実施態様では、本発明のアンタゴニスト分子は、アメリカ培養細胞系統保存機関にATCC HB-11894 (ハイブリドーマ1A3.3.13)又はHB-11895 (ハイブリドーマ5D5.11.6)で寄託されるハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体と同じ阻害活性及び/又は結合活性を有する抗体ないしはその断片である。一実施態様では、本発明のアンタゴニスト分子はHGF/c-met活性化に関与する生物学的活性を阻害する。
【0006】
一態様では、本発明は、配列番号3,6,9,12,15,18,21,24,27,30,33,36,39又は42の配列を含有するCDR-H1領域を含んでなる抗体を提供する。一態様では、本発明は、配列番号4、7、10、13、16、19、22、25、28、31、34、37、40又は43の配列を含有するCDR-H2領域を含んでなる抗体を提供する。一態様では、本発明は、配列番号5、8、11、14、17、20、23、26、29、32、35、38、41又は44の配列を含有するCDR-H3領域を含んでなる抗体を提供する。一実施態様では、本発明は、配列番号3、6、9、12、15、18、21、24、27、30、33、36、39又は42の配列を含有するCDR-H1領域および配列番号4、7、10、13、16、19、22、25、28、31、34、37、40又は43の配列を含有するCDR-H2領域を含んでなる抗体を提供する。一実施態様では、本発明は、配列番号3、6、9、12、15、18、21、24、27、30、33、36、39又は42の配列を含有するCDR-H1領域および配列番号5、8、11、14、17、20、23、26、29、32、35、38、41又は44の配列を含有するCDR-H3領域を含んでなる抗体を提供する。一実施態様では、本発明は、配列番号4、7、10、13、16、19、22、25、28、31、34、37、40又は43の配列を含有するCDR-H2領域および配列番号5、8、11、14、17、20、23、26、29、32、35、38、41又は44の配列を含有するCDR-H3領域を含んでなる抗体を提供する。一実施態様では、本発明は、配列番号3、6、9、12、15、18、21、24、27、30、33、36、39又は42の配列を含有するCDR-H1領域、配列番号4、7、10、13、16、19、22、25、28、31、34、37、40又は43の配列を含有するCDR-H2領域および配列番号5、8、11、14、17、20、23、26、29、32、35、38、41又は44の配列を含有するCDR-H3領域を含んでなる抗体を提供する。
【0007】
一態様では、本発明は、以下に挙げるうちの少なくとも1、少なくとも2又は3つすべてを含んでなる抗体を提供する。
(i) 配列番号3の配列を含有するCDR-H1配列;
(ii) 配列番号4の配列を含有するCDR-H2配列;
(iii) 配列番号5の配列を含有するCDR-H3配列。
一態様では、本発明は、以下に挙げるうちの少なくとも1、少なくとも2又は3つすべてを含んでなる抗体を提供する。
(i) 配列番号6の配列を含有するCDR-H1配列;
(ii) 配列番号7の配列を含有するCDR-H2配列;
(iii) 配列番号8の配列を含有するCDR-H3配列。
一態様では、本発明は、以下に挙げるうちの少なくとも1、少なくとも2又は3つすべてを含んでなる抗体を提供する。
(i) 配列番号9の配列を含有するCDR-H1配列;
(ii) 配列番号10の配列を含有するCDR-H2配列;
(iii) 配列番号11の配列を含有するCDR-H3配列。
一態様では、本発明は、以下に挙げるうちの少なくとも1、少なくとも2又は3つすべてを含んでなる抗体を提供する。
(i) 配列番号12の配列を含有するCDR-H1配列;
(ii) 配列番号13の配列を含有するCDR-H2配列;
(iii) 配列番号14の配列を含有するCDR-H3配列。
【0008】
一態様では、本発明は、以下に挙げるうちの少なくとも1、少なくとも2又は3つすべてを含んでなる抗体を提供する。
(i) 配列番号15の配列を含有するCDR-H1配列;
(ii) 配列番号16の配列を含有するCDR-H2配列;
(iii) 配列番号17の配列を含有するCDR-H3配列。
一態様では、本発明は、以下に挙げるうちの少なくとも1、少なくとも2又は3つすべてを含んでなる抗体を提供する。
(i) 配列番号18の配列を含有するCDR-H1配列;
(ii) 配列番号19の配列を含有するCDR-H2配列;
(iii) 配列番号20の配列を含有するCDR-H3配列。
一態様では、本発明は、以下に挙げるうちの少なくとも1、少なくとも2又は3つすべてを含んでなる抗体を提供する。
(i) 配列番号21の配列を含有するCDR-H1配列;
(ii) 配列番号22の配列を含有するCDR-H2配列;
(iii) 配列番号23の配列を含有するCDR-H3配列。
一態様では、本発明は、以下に挙げるうちの少なくとも1、少なくとも2又は3つすべてを含んでなる抗体を提供する。
(i) 配列番号24の配列を含有するCDR-H1配列;
(ii) 配列番号25の配列を含有するCDR-H2配列;
(iii) 配列番号26の配列を含有するCDR-H3配列。
【0009】
一態様では、本発明は、以下に挙げるうちの少なくとも1、少なくとも2又は3つすべてを含んでなる抗体を提供する。
(i) 配列番号27の配列を含有するCDR-H1配列;
(ii) 配列番号28の配列を含有するCDR-H2配列;
(iii) 配列番号29の配列を含有するCDR-H3配列。
一態様では、本発明は、以下に挙げるうちの少なくとも1、少なくとも2又は3つすべてを含んでなる抗体を提供する。
(i) 配列番号30の配列を含有するCDR-H1配列;
(ii) 配列番号31の配列を含有するCDR-H2配列;
(iii) 配列番号32の配列を含有するCDR-H3配列。
一態様では、本発明は、以下に挙げるうちの少なくとも1、少なくとも2又は3つすべてを含んでなる抗体を提供する。
(i) 配列番号33の配列を含有するCDR-H1配列;
(ii) 配列番号34の配列を含有するCDR-H2配列;
(iii) 配列番号35の配列を含有するCDR-H3配列。
【0010】
一態様では、本発明は、以下に挙げるうちの少なくとも1、少なくとも2又は3つすべてを含んでなる抗体を提供する。
(i) 配列番号36の配列を含有するCDR-H1配列;
(ii) 配列番号37の配列を含有するCDR-H2配列;
(iii) 配列番号38の配列を含有するCDR-H3配列。
一態様では、本発明は、以下に挙げるうちの少なくとも1、少なくとも2又は3つすべてを含んでなる抗体を提供する。
(i) 配列番号39の配列を含有するCDR-H1配列;
(ii) 配列番号40の配列を含有するCDR-H2配列;
(iii) 配列番号41の配列を含有するCDR-H3配列。
一態様では、本発明は、以下に挙げるうちの少なくとも1、少なくとも2又は3つすべてを含んでなる抗体を提供する。
(i) 配列番号42の配列を含有するCDR-H1配列;
(ii) 配列番号43の配列を含有するCDR-H2配列;
(iii) 配列番号44の配列を含有するCDR-H3配列。
【0011】
配列番号3−44のアミノ酸配列は図1に示すようにそれぞれのCDR(すなわちH1、H2又はH3)について番号付けした。この番号付けは以下に示すようにカバット番号付けシステムに合わせた。
一実施態様では、本発明の抗体は、図1B、図1C及び図1Dに示す各クローンのH1配列(配列番号71−84)、H2配列(配列番号85−98)及び/又はH3配列(配列番号99−112)のうちの少なくとも1、少なくとも2又は3つすべての配列を含有する重鎖可変ドメインCDR配列を含んでなる。
一態様では、本発明は図1A、B、C及びDに示す重鎖CDR配列を含んでなる抗体を提供する。いくつかの実施態様では、これらの抗体は、以下の配列番号45に示すヒト化4D5抗体(huMAb4D5-8) (HERCEPTIN(登録商標)、Genentech, Inc., South San Francisco, CA, USA) (また米国特許第6,407,213号及びLee 等, J. Mol. Biol. (2004), 340(5):1073-93も参照のこと)の軽鎖可変ドメインをさらに含んでなる。

【0012】
一実施態様では、huMAb4D5-8軽鎖可変ドメイン配列が位置30、66及び91の一又は複数で修飾されている(それぞれ上記に示すAsn、Arg及びHis)。一実施態様では、修飾されたhuMAb4D5-8配列は位置30のSer、位置66のGly及び/又は位置91のSerを含有する。したがって、一実施態様では、本発明の抗体は以下の配列番号54に示す配列を含有する軽鎖可変ドメインを含んでなる。

(CDR残基を下線で示す)
huMAb4D5-8に関する置換された残基を上記の太字/斜体で示す。
【0013】
さらに、本発明の抗体は、任意の適切なフレームワーク配列および/または軽鎖可変ドメイン配列を含んでなり、提供されるHGFA結合活性は実質的に保持されている。例えば、ある実施態様では、これらの抗体は、ヒトサブグループIII重鎖フレームワークコンセンサス配列を更に含んでなる。これらの抗体の一実施態様では、フレームワークコンセンサス配列は、位置71、73および/または78に置換を含有する。これらの抗体のいくつかの実施態様では、位置71がAであり、位置73がTであり、および/または、位置78がAである。一実施態様では、これらの抗体はヒト化4D5抗体(huMAb 4D5-8)(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech, Inc., South San Francisco, CA, USA)(また米国特許第6,407,213号およびLee 等, J. Mol. Biol. (2004), 340(5): 1073-93も参照のこと)の重鎖可変ドメインフレームワーク配列を含んでなる。一実施態様では、ヒト化4D5-8抗体は米国特許第6,407,213号に記載されるものである。一実施態様では、これらの抗体は、ヒトκI軽鎖フレームワークコンセンサス配列を更に含んでなる。一実施態様では、これらの抗体は、配列番号54に示す、ヒト化4D5抗体(huMAb 4D5-8)(配列番号:45) (HERCEPTIN(登録商標), Genentech, Inc., South San Francisco, CA, USA)(また米国特許第6,407,213号およびLee 等, J. Mol. Biol. (2004), 340(5): 1073-93も参照のこと)の軽鎖可変ドメイン配列、又はその修飾変異体を含んでなる。
【0014】
一実施態様では、本発明の抗体は重鎖可変ドメインを含んでなり、そのフレームワーク配列は、配列番号46、47、48および49の配列(それぞれFR1、2、3および4)及び、図1A、B、Cおよび/またはDに示すCDRH1、H2およびH3配列を含有するものである。一実施態様では、本発明の抗体は軽鎖可変ドメインを含んでなり、そのフレームワーク配列は、配列番号50、51、52および53の配列(それぞれFR1、2、3および4)および、配列番号54に示すCDRL1、L2およびL3を含有するものである。
一実施態様では、本発明の抗体は重鎖可変ドメインを含んでなり、そのフレームワーク配列は、配列番号59、60、61および62の配列(それぞれFR1、2、3および4)(図1E)及び、図1に示すCDRH1、H2およびH3配列を含有するものである。一実施態様では、本発明の抗体は軽鎖可変ドメインを含んでなり、そのフレームワーク配列は、配列番号55、56、57および58の配列(それぞれFR1、2、3および4)(図1E)および、配列番号54に示すCDRL1、L2およびL3を含有するものである。
一実施態様では、本発明の抗体は重鎖可変ドメインを含んでなり、そのフレームワーク配列は、配列番号67、68、69および70の配列(それぞれFR1、2、3および4)(図1F)及び、図1A、B、Cおよび/またはDに示すCDRH1、H2およびH3配列を含有するものである。一実施態様では、本発明の抗体は軽鎖可変ドメインを含んでなり、そのフレームワーク配列は、配列番号63、64、65および66の配列(それぞれFR1、2、3および4)(図1F)および、配列番号54に示すCDRL1、L2およびL3を含有するものである。
【0015】
一態様では、本発明は、HGFAへの結合について上記の何れかの抗体と競合する抗体を提供する。一態様では、本発明は、上記の何れかの抗体と同じHGFA上のエピトープに結合する抗体を提供する。一実施態様では、本発明の抗体は親和性成熟抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体又はヒト抗体である。一実施態様では、本発明の抗体は、抗体断片(本明細書中に記載のもの)又は実質的な完全長抗体である。一実施態様では、本発明の抗体は野生型のFc領域ないしはその変異体を含んでなる。一実施態様では、本発明の抗体はIgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgE又はIgDである。
一態様では、本発明のアンタゴニスト分子は細胞障害性剤などの毒素に結合されている。これらの分子/物質は、添加剤/促進剤、例えば放射線同位体薬剤及び/又は化学療法剤と組み合わせて製剤化ないしは投与されうる。
【0016】
また、本発明は、HGF/c-metシグナル伝達系の調節不全が関連する疾患を調節するために有用な方法及び組成物を提供する。したがって、一態様では、本発明は、被検体のc-met活性化を調節するための方法であって、プロHGFのHGFA切断を阻害する本発明のモジュレータ分子を被検体に投与することによってc-met活性化が調節されることを含む方法を提供する。一態様では、本発明は、被検体のc-metの活性化が関連する病理学的な症状の治療方法であって、プロHGFのHGFA切断を阻害する本発明のモジュレータ分子を被検体に投与することによってc-met活性化が調節されることを含む方法を提供する。一実施態様では、本発明のモジュレータ分子はHGFAに結合する抗体である。
HGF/c-metシグナル伝達経路は、複数の生物学的機能及び生理学的機能、例えば細胞成長刺激(例えば細胞増殖、細胞生存、細胞移動、細胞形態形成)及び血管形成を含むものに関与する。したがって、他の態様では、本発明は、c-met活性化細胞成長(例えば増殖及び/又は生存)を阻害する方法であって、本発明のアンタゴニストと細胞ないしは組織を接触させることによってc-met活性化が関与する細胞増殖が阻害される方法を提供する。更なる他の態様では、本発明は、血管形成を阻害する方法であって、異常な血管形成が関連する症状を有する被検体、細胞及び/又は組織に、本発明のアンタゴニストを投与することによって血管形成を阻害する方法を提供する。
【0017】
一態様では、本発明は、疾患、例えば癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫性(例えば自己免疫性)疾患及び/又は血管形成関連疾患の治療的及び/又は予防的処置のための医薬の調製における本発明のモジュレータ分子の使用を提供する。
一態様では、本発明は、疾患、例えば癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫性(例えば自己免疫性)疾患及び/又は血管形成関連疾患の治療的及び/又は予防的処置のための医薬の調製における本発明の核酸の使用を提供する。
一態様では、本発明は、疾患、例えば癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫性(例えば自己免疫性)疾患及び/又は血管形成関連疾患の治療的及び/又は予防的処置のための医薬の調製における本発明の発現ベクターの使用を提供する。
一態様では、本発明は、疾患、例えば癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫性(例えば自己免疫性)疾患及び/又は血管形成関連疾患の治療的及び/又は予防的処置のための医薬の調製における本発明の宿主細胞の使用を提供する。
【0018】
一態様では、本発明は、疾患、例えば癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫性(例えば自己免疫性)疾患及び/又は血管形成関連疾患の治療的及び/又は予防的処置のための医薬の調製における本発明の製造品の使用を提供する。
一態様では、本発明は、疾患、例えば癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫性(例えば自己免疫性)疾患及び/又は血管形成関連疾患の治療的及び/又は予防的処置のための医薬の調製における本発明のキットの使用を提供する。
一態様では、本発明は、c-met活性化細胞増殖を阻害する方法であり、本発明のモジュレータ分子の有効量と細胞又は組織とが接触することを含み、それによってc-met活性化が関連する細胞増殖が阻害される方法を提供するものである。
一態様では、本発明は、被検体のc-met活性化の調節不全が関与する病的状態の治療方法であり、本発明のモジュレータ分子の有効量が被検体に投与されることを含み、それによって該症状を治療する方法を提供するものである。
【0019】
一態様では、本発明は、c-met又は肝細胞成長因子ないしはその両方を発現する細胞の成長を阻害する方法であり、本発明のモジュレータ分子と該細胞とが接触することを含み、これによって該細胞の成長が阻害される方法を提供するものである。一実施態様では、細胞は異なる細胞によって発現されるHGFに(例えば、傍分泌効果を介して)接触する。
一態様では、本発明は、c-met又は肝細胞成長因子ないしはその両方を発現する細胞を含有する癌性腫瘍を有する哺乳動物を治療的に処置する方法であり、該哺乳動物に本発明のモジュレータ分子の有効量が投与されることを含み、それによって、該哺乳動物が効果的に治療される方法を提供するものである。一実施態様では、細胞は異なる細胞によって発現されるHGFに(例えば、傍分泌効果を介して)接触する。
一態様では、本発明は、HGFAの発現増加又は活性増強を伴う細胞増殖性疾患を治療ないしは予防するための方法であり、このような治療を必要とする被検体に本発明のモジュレータ分子の有効量が投与されることを含み、このことにより該細胞増殖性疾患が効果的に治療ないしは予防される方法を提供するものである。一実施態様では、前記増殖性疾患は癌である。
一態様では、本発明は、c-met又は肝細胞成長因子ないしはその両方の発現増加又は活性増強を伴う細胞増殖性疾患を治療ないしは予防するための方法であり、このような治療を必要とする被検体に本発明のモジュレータ分子の有効量が投与されることを含み、このことにより該細胞増殖性疾患が効果的に治療ないしは予防される方法を提供するものである。一実施態様では、前記増殖性疾患は癌である。
【0020】
一態様では、本発明は、細胞の成長を阻害する方法であり、該細胞の成長がHGFAの成長潜在的効果に少なくとも部分的に依存しており、該方法は本発明のモジュレータ分子の有効量と該細胞とが接触することを含んでなり、このことにより該細胞の成長が阻害される方法を提供するものである。一実施態様では、前記細胞は異なる細胞によって発現されるHGFに(例えば、傍分泌効果を介して)接触する。
一態様では、本発明は、細胞の成長を阻害する方法であり、該細胞の成長がc-met又は肝細胞成長因子ないしはその両方の成長潜在的効果に少なくとも部分的に依存しており、該方法は本発明のモジュレータ分子の有効量と該細胞とが接触することを含んでなり、このことにより該細胞の成長が阻害される方法を提供するものである。一実施態様では、前記細胞は異なる細胞によって発現されるHGFに(例えば、傍分泌効果を介して)接触する。
一態様では、本発明は、哺乳動物の腫瘍を治療的に処置する方法であり、該腫瘍の成長がHGFAの成長潜在的効果に少なくとも部分的に依存しており、該方法は本発明のモジュレータ分子の有効量と該腫瘍とが接触することを含んでなり、このことにより該腫瘍が効果的に治療される方法を提供するものである。一実施態様では、前記細胞は異なる細胞によって発現されるHGFに(例えば、傍分泌効果を介して)接触する。
一態様では、本発明は、哺乳動物の腫瘍を治療的に処置する方法であり、該腫瘍の成長がc-met又は肝細胞成長因子ないしはその両方の成長潜在的効果に少なくとも部分的に依存しており、該方法は本発明のモジュレータ分子の有効量と該腫瘍とが接触することを含んでなり、このことにより該腫瘍が効果的に治療される方法を提供するものである。一実施態様では、前記細胞は異なる細胞によって発現されるHGFに(例えば、傍分泌効果を介して)接触する。
【0021】
本発明の方法は、例えばHGFのHGFA活性化が関与するHGF活性の増大を介して、任意の適切な病理学的状態、例えばHGF/c-metシグナル伝達経路の調節不全を伴う細胞及び/又は組織に作用するために用いられうる。一実施態様では、本発明の方法で標的とされる細胞は癌細胞である。例えば、癌細胞は、乳癌細胞、結腸直腸癌細胞、肺癌細胞、乳頭カルシノーマ細胞(例えば、甲状腺のもの)、大腸癌細胞、膵臓癌細胞、卵巣癌細胞、頸癌細胞、中枢神経系癌細胞、骨原性肉種細胞、腎臓カルシノーマ細胞、肝細胞癌細胞、膀胱癌細胞、前立腺癌細胞、胃カルシノーマ細胞、頭頸部扁平上皮癌細胞、メラノーマ細胞及び白血病細胞からなる群から選択されたものである。一実施態様では、本発明の方法で標的とされる細胞は、過剰増殖性細胞及び/又は過形成性細胞である。一実施態様では、本発明の方法で標的とされる細胞は形成異常細胞である。さらに他の実施態様では、本発明の方法で標的とされる細胞は転移性細胞である。
本発明の方法は更に付加的処置工程を含むことができる。例えば、一実施態様では、方法は更に、標的細胞及び/又は組織(例えば癌細胞)が放射線治療又は化学療法剤にさらされる工程を含む。
【0022】
本明細書中に記載のように、HGF/c-metの活性化は、その調節不全により数多くの病的状態に至る重要な生物学的過程である。したがって、本発明の方法の一実施態様では、標的とされる細胞(例えば癌細胞)は、同じ組織起源の正常細胞と比較して、HGF/c-metの活性化が亢進されるものである。一実施態様では、本発明の方法によって標的細胞が死に至る。例えば、本発明のモジュレータ分子との接触により細胞はc-met経路を介してシグナル伝達ができなくなり、細胞死に至る。
c-met活性化(及びその後のシグナル伝達)の調節不全は、例えば、HGF(c-metの同系リガンド)及び/又はHGFAの過剰発現、及び/又はHGFAによるHGFの活性化の増大を含む多くの細胞性変化から生じうる。したがって、いくつかの実施態様では、本発明の方法は、HGFA、c-met及び肝細胞成長因子の一又は複数が、同じ起源の正常組織と比較して、(例えば癌細胞)より多く発現される及び/又は多く存在する組織を標的とすることを含む。HGF又はc-met発現細胞は様々な起源からのHGFAによって、すなわち自己分泌又は傍分泌方法で、調整されうる。例えば、本発明の方法の一実施態様では、標的細胞は、異なる細胞において発現されるHGFAにより活性化された肝細胞成長因子に(例えば、傍分泌を介して)接触/結合する。前記の異なる細胞は、同じ組織起源のもの又は異なる組織起源のものでありうる。一実施態様では、標的細胞は、標的細胞自体によって発現されるHGFAにより活性化されたHGFに(例えば、自己分泌効果/ループを介して)接触/結合する。
【0023】
一態様では、本発明は、本発明の一又は複数のモジュレータ分子と担体を含んでなる組成物を提供する。一実施態様では、前記の担体は製薬的に受容可能なものである。
一態様では、本発明は本発明のモジュレータ分子をコードする核酸を提供する。一実施態様では、本発明の核酸は、抗体ないしはその断片であるか又は抗体ないしはその断片を含むモジュレータ分子をコードする。
一態様では、本発明は本発明の核酸を含有するベクターを提供する。
一態様では、本発明は、本発明の核酸ないしはベクターを含む宿主細胞を提供する。ベクターは、任意の形式、例えば発現ベクターなどの組み換えベクターであってもよい。任意の様々な宿主細胞を使用することができる。一実施態様では、宿主細胞は原核細胞、例えば大腸菌である。一実施態様では、宿主細胞は真核細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞である。
一態様では、本発明は、本発明のモジュレータ分子を作製する方法を提供する。例えば、本発明は、抗体であるか抗体を含むモジュレータ分子を作製する方法であり、好適な宿主細胞において、該抗体(又はその断片)をコードする本発明の組み換えベクターを発現させ、該抗体を回収することを含む方法を提供する。
【0024】
一態様では、本発明は、容器と、容器内に内包される組成物を具備する製造品であり、該組成物が本発明の一又は複数のモジュレータ分子を含有する製造品を提供する。一実施態様では、前記組成物は本発明の核酸を含有する。一実施態様では、モジュレータ分子を含有する組成物は担体をさらに含有し、いくつかの実施態様ではその担体は製薬的に受容可能なものである。一実施態様では、本発明の製造品はさらに、被検体への前記組成物(例えばモジュレータ分子)の投与についての指示書を含有する。
一態様では、本発明は、本発明の一又は複数のモジュレータ分子を含有する組成物を具備する第一容器と、バッファーを具備する第二容器を含むキットを提供する。一実施態様では、バッファーは製薬的に受容可能なものである。一実施態様では、モジュレータ分子を含有する組成物は担体をさらに含有し、いくつかの実施態様ではその担体は製薬的に受容可能なものである。一実施態様では、キットはさらに、被検体への前記組成物(例えばモジュレータ分子)の投与についての指示書を含有する。
一態様では、本発明は、組織細胞の試験試料と本発明の抗体を接触させることにより該試料中のHGFAのレベルを測定することを含み、このとき、抗体に結合したHGFAにより該試料中のHGFAの存在及び/又は量が示される、疾患の診断方法を提供する。他の態様では、本発明は、個体が疾患のリスクにあるかどうかを決定する方法であって、組織細胞の試験試料と本発明の抗体を接触させることにより該試料中のHGFAのレベルを測定することによって該試料中に存在するHGFAの量を測定することを含み、このとき、試験試料と同じ元の細胞の正常組織を含有するコントロール試料と比較して、該試料中のHGFAのレベルが高い場合に、該個体が疾患のリスクにあることが示される方法を提供する。本発明の方法の一実施態様では、HGFAのレベルは、試験試料中の抗体が結合するHGFAの量によって示されるHGFAポリペプチドの量に基づいて測定される。本方法に用いる抗体は、場合によっては、検出可能に標識されているか、固体支持体に付着されているかしていてよい。
【0025】
一態様では、本発明は、体液、例えば血液中に存在するHGFAへの本発明の抗体の結合方法を提供する。
更なる他の態様では、本発明は、HGFAを発現する、及び/又はHGFAに応答する細胞に、本発明の抗体を結合させる方法であって、HGFAへの抗体の結合に適しておりそれらが結合する条件下で該細胞と該抗体を接触させることを含む方法に関する。一実施態様では、細胞上のHGFAへの前記抗体の結合によりHGFAの生物学的機能が阻害される。一実施態様では、前記抗体は、HGFAとその基質分子との相互作用を阻害しない。一実施態様では、前記抗体は、細胞上のHGFAに結合し、HGFA分子への他の分子(プロHGFなど)の結合を阻害する。
一態様では、本発明は、宿主内のHGFA関連組織を治療薬剤の標的とする方法であって、本発明の抗体に結合する形態で該治療薬剤を宿主に投与することを含み、これによって該薬剤が該宿主内のHGFA関連組織を狙う方法を提供する。一実施態様では、HGFAに結合する抗体は、細胞上に位置するHGFA、例えば細胞表面上に存在するHGFAに(インビトロないしはインビボの何れかで)特異的に結合することができる。
【0026】
(本発明の実施形態)
本発明は、肝細胞成長因子活性化物質機能のモジュレータの使用方法を含む方法、該モジュレータを含む組成物、キット及び製造品を提供する。
本発明の方法、組成物、キット及び製造品の詳細は本願明細書において記載する。
【0027】
典型的技術
本発明の実施は、特に明記しない限り、当業者の技術範囲内の分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来技術を使用して行う。このような技術は、例えば以下のような文献に完全に明記されている。「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」, 第2版(Sambrookら, 1989);「Oligonucleotide Synthesis」(M. J. Gait, 編, 1984);「Animal Cell Culture」(R. I. Freshney, 編, 1987);「Methods in Enzymology」(Academic Press, Inc.);「Current Protocols in Molecular Biology」(F. M. Ausubelら, 編., 1987, and periodic updates);「PCR: The Polymerase Chain Reaction」, (Mullisら, 編, 1994);「A Practical Guide to Molecular Cloning」(Perbal Bernard V., 1988); 「Phage Display: A Laboratory Manual」(Barbas ら, 2001)。
【0028】
定義
本明細書中で用いる「肝細胞成長因子活性化物質」又は「HGFA」なる用語は、野生型HGFAと同じ様式でプロHGFを切断することができる、天然配列のポリペプチド、ポリペプチド変異体(さらに本明細書中で定義される)、と天然配列ポリペプチド及びポリペプチド変異体の断片を包含する。本明細書中に記載のHGFAポリペプチドは、様々な供給源、例えばヒト組織種類や他の供給源から単離されるものでも、組み換え法や合成法によって調整されるものでもよい。また、「HGFA」、「HGFAポリペプチド」、「HGFA酵素」及び「HGFAタンパク質」には、本明細書中に記載のHGFAポリペプチドの変異体などがある。
「天然配列HGFAポリペプチド」は、天然由来の対応するHGFAポリペプチドと同じアミノ酸配列(例えば図7に示す配列)を有するポリペプチドを含む。一実施態様では、天然配列HGFAポリペプチドは配列番号1のアミノ酸配列(図7を参照;上の配列)を含む。このような天然配列HGFAポリペプチドは天然より単離することも、組み換え方法ないしは合成方法によって産生することができる。具体的には、「天然配列HGFAポリペプチド」なる用語は、特定のHGFAポリペプチドの天然に生じる切断型ないしは分泌型(例えば細胞外ドメイン配列)、天然に生じる変異形(例えば選択的スプライシング型)及び該ポリペプチドの天然に生じる対立遺伝子変異形を包含する。
【0029】
「HGFAポリペプチド変異体」又はその変異体とは、HGFAポリペプチド、好ましくは、ここに開示するような天然配列HGFAポリペプチド配列のいずれかと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有するここで定義するような活性なHGFAポリペプチドを意味する。このようなHGFAポリペプチド変異体には、例えば、完全長天然アミノ酸配列のN末端又はC末端において一又は複数のアミノ酸残基が付加、もしくは欠失されたHGFAポリペプチドが含まれる。通常、HGFAポリペプチド変異体は、ここに開示する天然配列HGFAポリペプチド配列に対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸配列同一性を有している。通常、HGFA変異体ポリペプチドは、少なくとも約10アミノ酸長、あるいは少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600アミノ酸長、又はそれ以上である。場合によっては、HGFA変異体ポリペプチドは、天然HGFAポリペプチド配列に比較して一つ以下の保存的アミノ酸置換、あるいは天然HGFAポリペプチド配列に比較して2、3、4、5、6、7、8、9、又は10以下の同類アミノ酸置換を有するにすぎない。
【0030】
ペプチド又はポリペプチド配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、特定のペプチド又はポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2プログラム用の完全なソースコードが以下の表Aに与えられている配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテク社によって作成され、表Aに示したソースコードは米国著作権庁, Washington D.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムはジェネンテク社、South San Francisco, Californiaを通して公的に入手可能であり、また表Aに与えたソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
【0031】
アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、与えられたアミノ酸配列Bと、又はそれに対して或る程度の%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む与えられたアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは、A及びBのプログラムアラインメントにおいて、配列アラインメントプログラムALIGN-2によって同一であると一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基の全数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと一致しない場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは一致しないと評価されるであろう。
特に断らない限りは、ここで使用されるの全ての%アミノ酸配列同一性値は、直前のパラグラフに記載したように、ALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られる。
【0032】
表A



























【0033】
ここで使用される場合、「ベクター」なる用語は、それが結合している他の核酸を輸送可能な核酸分子を称することを意図している。ベクターの一タイプは、付加的なDNAセグメントが結合していてもよい、環状の二重鎖DNAループと称される「プラスミド」である。他のタイプのベクターはファージベクターである。さらに他のタイプのベクターは、付加的なDNAセグメントがウイルスゲノムに結合していてもよいウイルスベクターである。ある種のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自律増殖可能である(例えば、複製の細菌起源を有する細菌性ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞へ導入されると、宿主細胞のゲノムに結合可能で、それにより宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある種のベクターは、それらが操作的に結合している遺伝子の発現に指向可能である。ここでは、このようなベクターは「組換え発現ベクター」(又は単に、「組換えベクター」)と称される。一般的に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、多くの場合プラスミドの形態をしている。本明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」は、最も一般的には、プラスミドがベクターの形態で使用される場合に、交換可能に使用され得る。
【0034】
ここで交換可能に使用される場合、「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドポリマーを称し、DNA及びRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらの類似体、又はDNAもしくはRNAポリメラーゼにより、もしくは合成反応によりポリマー中に取り込み可能な任意の基質とすることができる。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。もし存在するならば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの組み立ての前後になされ得る。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断されてもよい。ポリヌクレオチドは合成後に、例えば標識と結合することによりさらに修飾されてもよい。他のタイプの修飾には、例えば「キャップ」、類似体による自然に生じたヌクレオチドの一又は複数の置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電性結合(例えばホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミダーゼ、カルバマート等)及び荷電性結合(ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート等)を有するもの、ペンダント部分、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply-L-リジン等)を含むもの、介入物を有するもの(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤を含むもの(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属等)、アルキル化剤を含むもの、修飾された結合を含むもの(例えばアルファアノマー核酸等)、並びにポリヌクレオチド(類)の未修飾形態が含まれる。さらに、糖類に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えばホスホナート基、ホスファート基で置き換えられてもよく、標準的な保護基で保護されてもよく、又は付加的なヌクレオチドへのさらなる結合を調製するために活性化されてもよく、もしくは固体状又は半固体状支持体に結合していてもよい。5'及び3'末端のOHはホスホリル化可能であり、又は1〜20の炭素原子を有するアミン又は有機キャッピング基部分で置換することもできる。また他のヒドロキシル類は標準的な保護基に誘導されてもよい。さらにポリヌクレオチドは当該技術で一般的に知られているリボース又はデオキシリボース糖類の類似形態のものをさらに含み、これらには例えば2'-O-メチル-、2'-O-アリル、2'-フルオロ-又は2'-アジド-リボース、炭素環式糖の類似体、アルファ-アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロース類又はリキソース類、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及び脱塩基性ヌクレオチド類似体、例えばメチルリボシドが含まれる。一又は複数のホスホジエステル結合は代替の結合基で置き換えてもよい。これらの代替の結合基には、限定されるものではないが、ホスファートがP(O)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、「(O)NR.sub.2(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR'、CO又はCH.sub.2(「ホルムアセタール」)と置き換えられた実施態様のものが含まれ、ここでそれぞれのRまたはR'は独立して、H又は、エーテル(-O-)結合を含んでいてもよい置換もしくは未置換のアルキル(1-20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルジル(araldyl)である。ポリヌクレオチド中の全ての架橋が同一である必要はない。先の記述において、RNA及びDNAを含む、ここで引用された全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0035】
ここで使用される場合、「オリゴヌクレオチド」とは、短く、一般的に単鎖であり、また必ずしもそうではないが、一般的に約200未満のヌクレオチド長さの合成のポリヌクレオチドを称する。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」なる用語は、相互に排他的なものではない。ポリヌクレオチドについての上述した記載はオリゴヌクレオチドと等しく、十分に適用可能である。
「単離された」抗体とは、自然環境の成分から同定され及び分離及び/又は回収されたものを意味する。その自然環境の汚染成分は、抗体の診断又は治療への使用を妨害しうる物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様においては、抗体は、(1)ローリー(Lowry)法により定量して、抗体が95重量%より多くなるまで、最も好ましくは99重量%より多くなるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端あるいは内部アミノ酸配列の少なくとも15の残基を得るのに充分な程度まで、あるいは、(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性が得られるように充分な程度まで精製される。抗体の自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、単離された抗体には、組換え細胞内のインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により調製される。
【0036】
「カバット(Kabat)による可変ドメイン残基番号付け」又は「カバットに記載のアミノ酸位番号付け」なる用語およびその異なる言い回しは、Kabat 等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)の抗体の編集の軽鎖可変ドメイン又は重鎖可変ドメインに用いられる番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを用いると、実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はCDR内の短縮又は挿入に相当する2、3のアミノ酸又は付加的なアミノ酸を含みうる。例えば、重鎖可変ドメインには、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えばカバットによる残基82a、82bおよび82cなど)と、H2の残基52の後に単一アミノ酸の挿入(Kabatによる残基52a)を含んでもよい。残基のKabat番号は、「標準の」カバット番号付け配列によって抗体の配列の相同領域でアライメントすることによって与えられる抗体について決定してもよい。特に記載しない限り、本明細書中のすべてのアミノ酸位置の番号付けはカバット番号付けシステムに従った。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選別において、最も共通して生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。通常、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列は、可変ドメイン配列のサブグループから選別する。通常、Kabat等によると、配列のサブグループはサブグループである。一実施態様では、VLについて、Kabat等によると、前記サブグループはサブグループκIである。一実施態様では、VHについて、Kabat等によると、前記サブグループはサブグループIIIである。
【0037】
「VHサブグループIIIコンセンサスフレームワーク」は、Kabat等の可変重鎖サブグループIIIのアミノ酸配列から得られるコンセンサス配列を含有する。一実施態様では、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークアミノ酸配列は、以下の配列の各々の少なくとも一部又は配列の全てを含んでなる:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号46)-H1-WVRQAPGKGLEWV(配列番号47)-H2-RFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYC(配列番号48)-H3-WGQGTLVTVSS(配列番号49)。
「VLサブグループIコンセンサスフレームワーク」は、Kabat等の可変軽鎖κサブグループIのアミノ酸配列から得られたコンセンサス配列を含んでなる。一実施態様では、VHサブグループIコンセンサスフレームワークアミノ酸配列は、以下の配列の各々の少なくとも一部又は配列の全てを含んでなる:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC (配列番号50)-L1-WYQQKPGKAPKLLIY (配列番号51)-L2-GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC (配列番号52)-L3-FGQGTKVEIK (配列番号53)。
【0038】
本願明細書において用いられるように、「肝細胞成長因子」又は「HGF」なる用語は、特別に又は文脈上別途示されない限り、HGF/c-metシグナル伝達過程を起こす条件下においてこの経路を活性化しうる任意の(天然に生じるもの又は合成のもののいずれにせよ)天然の又は変異形のHGFポリペプチドを指す。「野生型HGF」なる用語は、一般に、天然に生じるHGFタンパク質のアミノ酸配列を含有してなるポリペプチドを指す。「野生型HGF配列」なる用語は、一般に、天然に生じるHGFにおいてみられるアミノ酸配列を指す。
「抗体」及び「免疫グロブリン」なる用語は互換性をもって広義な意味で使われ、モノクローナル抗体(例えば完全長又は無傷のモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、単価抗体、多価抗体、多特異性抗体(例えば所望の生物学的活性を示す限りの二重特異性抗体)を含み、(本明細書中で詳細に記載される)特定の抗体断片も含まれうる。抗体はヒト、ヒト化及び/又は親和性成熟したものであり得る。
【0039】
「抗体断片」は、完全抗体の一部のみを含有するものであり、該部分は完全な抗体として存在する場合、その部分に通常伴う機能の少なくとも一、好ましくはほとんど又はすべてを保持する。一実施態様では、抗体断片は完全な抗体の抗原結合部位を含有しているため、抗原に結合する能力を保持する。他の実施態様では、抗体断片、例えばFc領域を含有するものは、完全抗体に存在する場合にFc領域に通常伴う少なくとも一の生物学的機能、例えばFcRn結合、抗体半減期調節、ADCC機能及び補体結合を保持する。一実施態様では、抗体断片は、完全な抗体と実質的に類似のインビボ半減期を有する一価性抗体である。例えばそのような抗体断片は、該断片にインビボ安定性を与えることができるFc配列に結合される抗原結合アームを含有してもよい。
【0040】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、少量で存在しうる自然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原に対している。さらに、典型的に異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物と比べて、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。
ここで、モノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種由来の抗体、あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同性があり、鎖の残りの部分が他の種由来の抗体、あるいは他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同である「キメラ」抗体、並びにそれが所望の生物的活性を有する限りこのような抗体の断片を特に含む(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855(1984))。
【0041】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形とは、非ヒト免疫グロブリンから得られた最小配列を含むキメラ抗体である。多くの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、全て又はほとんど全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに一致し、全て又はほとんど全てのFRがヒト免疫グロブリン配列である、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、状況に応じて免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。さらなる詳細は、Jones等, Nature 321, 522-525(1986);Riechmann等, Nature 332, 323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992)を参照のこと。また、以下の概説文献及びここに挙げる引用文献も参照のこと:Vaswani及びHamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995);Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994)。
【0042】
「ヒト抗体」は、ヒトにより生成される抗体のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を有するもの、及び/又は本明細書中に開示したヒト抗体をつくるためのいずれかの技術を使用して、つくられたものである。この定義におけるヒト抗体は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特別に除く。
「親和性成熟」抗体は、その1つ以上のCDRに1つ以上の変更を有する抗体であって、そのような変更を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性を向上させる。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対して、ナノモル単位の、さらにはピコモル単位の親和性を有する。親和成熟抗体は、当技術分野において既知の方法により生産できる。Marks他は、Bio/Technology, 10:779-783(1992年)において、VHドメインとVLドメインのシャフリングによる親和成熟を開示している。CDRおよび/またはフレームワーク残基のランダムな突然変異誘発が、Barbas他、Proc Nat. Acad. Sci, USA 91:3809-3813(1994); Schier他、Gene, 169:147-155 (1995); Yelton他、J. Immunol., 155:1994-2004 (1995); Jackson他, J. Immunol., 154(7):3310-9 (1995); およびHawkins他, J. Mol. Biol., 226:889-896 (1992)に開示されている。
【0043】
「阻止(ブロック)」抗体(blocking antibody)又は「アンタゴニスト」抗体は、結合する抗原の生物学的活性を阻害するか、減弱するものである。好適なブロッキング抗体又はアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的にないしは完全に阻害する。
本明細書中で用いられる「アゴニスト抗体」は、対象のポリペプチドの機能的な活性の少なくとも一を擬態する抗体である。
「疾病」は、本発明の物質/分子又は方法を用いた治療によって利益を得る任意の症状である。これには、問題とする疾患に哺乳動物がかかりやすくなる病理学的症状を含む慢性及び急性の疾病又は疾患を含む。限定的なものではなく、ここで治療する疾患の例には、悪性及び良性の腫瘍;非白血病性及びリンパ球性悪性腫瘍;神経系、神経膠系、星状性、視床下部系及び他の腺性、マクロファージ性、上皮性、間質性及び胚盤胞性疾患;及び炎症性、免疫性及び他の血管形成性関連疾患が含まれる。
「細胞増殖性疾患(障害)」及び「増殖性疾患(障害)」なる用語は、異常な細胞増殖にある程度関連している疾患を意味する。一実施態様では、細胞増殖性疾患は癌である。
【0044】
本明細書中の「腫瘍」とは、悪性か良性かにかかわらず、すべての腫瘍性細胞成長及び増殖と、すべての前癌性及び癌性細胞及び組織を意味する。「癌」」「癌性」「細胞増殖性疾患」、「増殖性疾患」及び「腫瘍」なる用語は、本明細書に参照されるように相互に限定的なものでない。
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長/増殖を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか記述する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。このような癌のより具体的な例には、扁平細胞癌(squamous cell cancer)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平癌腫(squamous carcinoma)、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸管癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝臓性癌、並びに様々な頭頸部の癌が含まれる。
【0045】
血管形成調節不全により、本発明の組成物及び方法によって治療される多くの疾患が引き起こされうる。これらの疾患には、非腫瘍性又は腫瘍性症状の両方が含まれる。腫瘍性のものは上記に記載のものに限らない。非腫瘍性疾患には、限定するものではないが、望ましくない又は異常な肥大、関節炎、慢性関節リウマチ(RA)、乾癬、乾癬の斑、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化、アテローム動脈硬化性斑、未熟児の網膜症を含む糖尿病性及び他の増殖性の網膜症、水晶体後繊維増殖、血管新生緑内障、年齢関連性黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、角膜血管新生、角膜移植片血管新生、角膜移植片拒絶、網膜/脈絡叢血管新生、虹彩(angle)(ルベオーシス)の血管新生、眼性新生血管疾患、脈管再狭窄、動静脈奇形(AVM)、髄膜腫、血管腫、血管線維腫、甲状腺の過形成(グレーブズ病を含む)、角膜及び他の組織移植、慢性炎症、肺炎症、急性肺損傷/ARDS、敗血症、原発性肺高血圧症、悪性の肺滲出、大脳浮腫(例えば、急性脳卒中/非開放性頭部損傷/外傷と関連している)、滑液炎症、RAのパンヌス形成、筋炎骨化、高親和性骨形成、骨関節炎(OA)、抵抗性腹水、多嚢胞性卵巣の疾患、子宮内膜症、液体性疾患の第3の間隔(3rd spacing)(膵炎、コンパートメント症候群、熱傷、腸疾患)、子宮類線維腫、早産、慢性炎症、例えばIBD(クローン病および潰瘍性大腸炎)、腎臓同種異系移植片拒絶反応、炎症性腸疾患、ネフローゼ症候群、望ましくない又は異常な組織塊成長(癌以外)、血友病関節、肥大した瘢痕、体毛成長の抑制、Osler-Weber症候群、化膿性肉芽腫水晶体後繊維増殖、強皮症、トラコーマ、脈管粘着力、関節滑膜炎、皮膚炎、子癇前症、腹水、心嚢貯留液(例えば心外膜炎と関連しているもの)および胸水が含まれる。
【0046】
ここで言う「自己免疫性疾患」は個体自身の組織に由来する又はその組織に対して生じる非悪性疾患又は疾病である。ここでは、自己免疫性疾患は、特にB細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病及び慢性骨髄芽球性白血病を除く悪性腫瘍又は癌性疾患ないし症状を明確に除く。自己免疫性疾患ないし疾病の例には、限定するものではないが、炎症反応、例えば乾癬および皮膚炎(例えば過敏性皮膚炎)を含む炎症性皮膚病;全身強皮症及び硬化症;炎症性腸疾患関連の反応(例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎);呼吸窮迫症候群(成人呼吸窮迫症候群;ARDSを含む);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;アレルギー性症状、例えばT細胞の浸潤ないし慢性炎症反応を伴う湿疹及び喘息及び他の症状;アテローム性動脈硬化;白血球癒着不全;慢性関節リウマチ;全身性エリテマトーデス(SLE);真正糖尿病(例えばI型糖尿病又はインシュリン依存性糖尿病);多発性硬化症;レイノー症候群;自己免疫性甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;シェーグレン症候群;若年型糖尿病;及び、一般的に結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症及び脈管炎でみられるサイトカイン及びTリンパ球に媒介される急性及び遅発性過敏症と関連する免疫応答;悪性貧血(アジソン病);白血球血管外遊出を伴う疾患;中枢神経系(CNS)炎症性疾患;多器官損傷症候群;溶血性貧血(限定するものではなく、クリオグロブリン血症又はクームズ陽性貧血症を含む);重症筋無力症;抗原-抗体複合体媒介性疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;ランバート-イートン筋無力症症候群;水疱性類天ぽうそう;ペンフィグス;自己免疫多腺性内分泌障害;ライター症候群;全身強直性症候群;ベーチェット疾患;巨細胞動脈炎;免疫複合体腎炎;IgAネフロパシ;IgM多発性神経炎;免疫血小板減少性紫斑病(ITP)又は自己免疫血小板減少などが含まれる。
【0047】
ここで使用されるところの「治療」は、治療されている個体又は細胞の天然の過程を改変するための臨床的介入を意味し、予防のため又は臨床的病理の過程中に実施することができる。治療の望ましい効果には、疾病の発生又は再発の防止、症状の寛解、疾病の任意の直接的又は間接的病理的結果の低減、転移の防止、疾病の進行速度の低減、疾病状態の回復又は緩和、及び寛解又は改善された予後が含まれる。ある実施態様では、本発明の抗体は疾患又は疾病の進行を遅らせるために用いられる。
「有効量」とは所望の治療又は予防結果を達成するために必要な用量及び時間での効果的な量を意味する。
本発明の抗体の「治療的有効量」は、例えば個体の疾病ステージ、年齢、性別、及び個体の体重、並びに個体に所望の応答を誘発する抗体の能力のような因子に従って変わりうる。また、治療的有効量は抗体の任意の毒性又は有害な効果よりも治療的に恩恵のある効果が上回るものである。「予防的有効量」とは所望の予防結果を達成するために必要な用量及び時間での効果的な量を意味する。典型的には、予防的量は疾患の初期ステージ又はその前の患者に用いるので、予防的有効量は治療的有効量よりも少ないであろう。
【0048】
ここで用いられる「細胞障害性剤」という用語は、細胞の機能を阻害又は阻止し及び/又は細胞破壊を生ずる物質を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体)、化学治療薬、例えばメトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロランブシル、ダウノルビシン又はその他インターカレート剤、酵素及びその断片、例えば核溶解性酵素、抗生物質、及び毒素、例えばその断片及び/又は変異体を含む小分子毒素又は細菌、糸状菌、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素、そして下記に開示する種々の抗腫瘍又は抗癌剤を含むように意図されている。他の細胞障害性薬が下記に記載されている。殺腫瘍性剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
【0049】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミドのようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ−9−テトラヒドロカナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標);βラパチョーネ;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトセシン(合成アナログトポテカン(HYCAMTIN(登録商標)、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)及び9−アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;ドゥオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エロイテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンギスタチン;クロランブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロスレアス(nitrosureas);抗生物質、例えばエネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンωI1(例えばAgnew Chem Intl. Ed. Engl. 33:183-186(1994)参照);ダイネマイシン(dynemicin)Aを含むダイネマイシン;エスペラマイシン;並びにネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素タンパクエネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorbicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHCIリポソーム注射剤(DOXIL(登録商標))及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCのようなマイトマイシン、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート、ゲムシタビン(gemcitabine) (GEMZAR(登録商標))、テガフル(tegafur) (UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(capecitabine) (XELODA(登録商標))、エポチロン(epothilone)、及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate);プリンアナログ、例えばフルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine);アンドロゲン類、例えばカルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone);抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー(replenisher)、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシノイド(maytansinoid)類、例えばメイタンシン(maytansine)及びアンサミトシン(ansamitocine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジン(roridine)A及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカーバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド類、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのクレモフォー無添加アルブミン操作ナノ粒子製剤(ABRAXANETM)、及びドキセタキセル(TAXOTERE(登録商標));クロランブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;プラチナアナログ、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボビン(leucovovin);ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン(novantrone);エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロナート(ibandronate);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸のようなレチノイド;上述したもののいずれかの薬学的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体:並びに上記のうち2以上の組み合わせ、例えば、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニソロン併用療法の略称であるCHOP、及び5-FU及びロイコボビン(leucovovin)とオキサリプラチン(ELOXATINTM)を組み合わせた治療法の略称であるFOLFOXが含まれる。
【0050】
またこの定義に含まれるものには、癌の成長を助けるホルモンの作用を調節、低減、遮断又は阻害するように働き、多くの場合全身処置の形態で使用される抗ホルモン剤がある。それらはそれ自体がホルモンであってもよい。それらは例えば抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)を含み、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(raloxifene)(EVISTA(登録商標))、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びトレミフェン(FARESTON(登録商標));抗プロゲステロン;エストロゲンレセプター下方調節剤(ERD);エストロゲンレセプターアンタゴニスト、例えばフルベストラント(fulvestrant) (FASLODEX(登録商標));卵巣を抑止又は停止させる機能がある作用剤、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、例えば酢酸リュープロリド(LUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標))、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリン及びトリプテレリン(tripterelin);その他抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド;並びに副腎のエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール(MEGASE(登録商標))、エキセメスタン(AROMASIN(登録商標))、フォルメスタニー(formestanie)、ファドロゾール、ボロゾール(RIVISOR(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))、及びアナストロゾール(ARIMIDEX(登録商標))である。加えて、このような化学療法剤の定義には、クロドロネート(例えばBONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、エチドロン酸(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロン酸(AREDIA(登録商標))、チルドロン酸(SKELID(登録商標))、又はリセドロン酸(ACTONEL(登録商標))、並びにトロキサシタビン(troxacitabine)(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に接着細胞の増殖に結びつくシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えばPKC-α、Raf、及びH-Ras、及び上皮成長因子レセプター(EGF-R);THERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子治療ワクチン等のワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えばLURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えばABARELIX(登録商標));ラパチニブ(lapatinib ditosylate)(GW572016としても知られるErbB-2及びEGFR二重チロシンキナーゼ小分子阻害剤);セレコシブ(celecoxib)などのCOX-2阻害剤(CELEBREX(登録商標);4-(5-(4-メチルフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾル-1-イル)ベンゼンスルホンアミド;及び上記のもののいずれかの製薬的に許容される塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0051】
ここで用いられる際の「成長阻害剤」は、HGF/c-met活性化に依存する成長を有する細胞の成長をインビトロ又はインビボの何れかで阻害する化合物又は組成物を意味する。よって、成長阻害剤は、S期でHGF/c-met依存性細胞の割合を有意に減少させるものである。成長阻害剤の例は、細胞周期の進行を(S期以外の位置で)阻害する薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘発する薬剤を含む。古典的なM期ブロッカーは、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン類、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンを含む。またG1停止させるこれらの薬剤は、S期停止にも波及し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びアラ-Cである。更なる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn及びIsrael, 編, Chapter 1, 表題「Cell cycle regulation, oncogene, and antineoplastic drugs」, Murakami等, (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。タキサン類(パクリタキセル及びドセタキセル)は、共にイチイに由来する抗癌剤である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、ローン・プーラン ローラー)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、ブリストル-マイヤー スクウィブ)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体から微小管の集合を促進し、細胞の有糸分裂を阻害する結果となる脱重合を防ぐことによって微小管を安定化にする。
「ドキソルビシン」はアントラサイクリン抗生物質である。ドキソルビシンの完全な化学名は、(8S-シス)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リキソ-ヘキサピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオンである。
【0052】
ベクター、宿主細胞及び組換え方法
本発明の抗体の組み換え生成のために、コードする核酸を単離して、更なるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製ベクターに挿入する。抗体をコードするDNAは従来の手順で簡単に単離し、配列決定される(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)。多くのベクターが利用可能である。用いる宿主細胞にある程度依存してベクターを選択する。一般的に、好適な宿主細胞は原核生物又は真核生物(一般的に哺乳動物)由来の細胞である。
【0053】
原核生物の宿主細胞を用いた抗体生成
ベクターの構築
本発明の抗体のポリペプチド成分をコードしているポリヌクレオチド配列は標準的な組換え技術を使用して得ることができる。所望のポリヌクレオチド配列はハイブリドーマ細胞のような抗体産生細胞から単離し配列決定することができる。あるいは、ポリヌクレオチドはヌクレオチド合成機又はPCR法を使用して合成することができる。ひとたび得られると、ポリペプチドをコードしている配列は原核生物宿主中で異種ポリヌクレオチドを複製し、発現することが可能な組換えベクター中に挿入される。当該分野において入手でき知られている多くのベクターを本発明の目的のために使用することができる。適切なベクターの選択は、主として、ベクターに挿入される核酸のサイズとベクターで形質転換される特定の宿主に依存する。各ベクターは、機能(異種性ポリヌクレオチドの増幅又は発現ないしその両方)及び属する特定の宿主細胞への適合性に応じて、様々な成分を含む。一般的に、限定するものではないが、ベクター成分には複製起源、選択マーカー遺伝子、プロモータ、リボゾーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種性核酸挿入及び転写終末配列が含まれる。
一般には、レプリコン及び宿主細胞と適合性のある種に由来するコントロール配列を含んでいるプラスミドベクターが、宿主細胞と関連して使用される。そのベクターは、通常、複製開始点並びに形質転換細胞において表現型の選択を提供可能なマーキング配列を有する。例えば、一般的に大腸菌は、大腸菌種由来のプラスミドであるpBR322を用いて形質転換する。pBR322はアンピシリン(Amp)及びテトラサイクリン(Tet)耐性のコード遺伝子を含んでいるため、形質転換細胞を容易に同定することができる。pBR322、その誘導体又は他の微生物プラスミド又はバクテリオファージも外来性タンパク質を発現する微生物によって使用可能なプロモータを含むか、含むように変更される。特定の抗体の発現に使用されるpBR322誘導体の例はCarter等の米国特許第5648237号に詳細に記載されている。
【0054】
また、レプリコン及び宿主微生物と適合性のあるコントロール配列を含んでいるファージベクターを、これらの宿主との関連でトランスフォーミングベクターとして使用することができる。例えば、λGEM.TM.-11のようなバクテリオファージを、大腸菌LE392のような感受性の宿主細胞を形質転換するために使用できる組換えベクターを作製する際に利用することができる。
本発明の発現ベクターは各ポリペプチド成分をコードする2又はそれ以上のプロモータ−シストロン(翻訳単位)対を含みうる。プロモーターはその発現を調節するシストロンの上流(5')に位置している非翻訳配列である。原核生物のプロモーターは典型的には誘導性と構成的との二つのクラスのものがある。誘導性プロモーターは、例えば栄養分の有無又は温度の変化のような、培養条件の変化に応答してその調節下でシストロンの転写レベルを増大させるように誘導するプロモーターである。
様々な潜在的宿主細胞によって認識されるプロモータが非常にたくさん公知となっている。選択したプロモーターを、制限酵素消化によって供給源DNAからプロモータを除去し、本発明のベクター内に単離したプロモータを挿入することによって軽鎖又は重鎖をコードするシストロンDNAに作用可能に連結することができる。天然プロモーター配列と多くの異種プロモーターの双方を、標的遺伝子の増幅及び/又は発現を生じさせるために使用することができる。ある実施態様では、天然の標的ポリペプチドプロモーターと比較して、一般的に発現する標的遺伝子をより多く転写させ、効率をよくするので、異種プロモーターが有用である。
【0055】
原核生物宿主での使用に好適なプロモーターには、PhoAプロモーター、βガラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系及びハイブリッドプロモーター、例えばtac又はtrcプロモーターが含まれる。しかし、細菌中で機能性である他のプロモーター(例えば他の既知の細菌又はファージプロモーター)も好適である。そのヌクレオチド配列は発表されており、よって当業者は、任意の必要とされる制限部位を供給するリンカー又はアダプターを使用して標的軽鎖及び重鎖をコードするシストロンにそれらを作用可能に結合させることができる(Siebenlist等 (1980) Cell 20:269)。
本発明の一態様では、組換えベクター内の各シストロンは、膜を貫通して発現されるポリペプチドの転写を誘導する分泌シグナル配列成分を含む。一般に、シグナル配列はベクターの成分でありうるか、ベクター中に挿入される標的ポリペプチドDNAの一部でありうる。この発明の目的のために選択されるシグナル配列は宿主細胞によって認識されプロセシングされる(つまりシグナルペプチダーゼにより切断される)ものでなければならない。異種ポリペプチドに天然のシグナル配列を認識せずプロセシングする原核生物宿主細胞に対しては、シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ippあるいは熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA及びMBPからなる群から選択される原核生物シグナル配列によって置換される。一実施態様では、発現系の双方のシストロンに使用されるシグナル配列はSTIIシグナル配列又はその変異体である。
【0056】
他の態様では、本発明による免疫グロブリンは宿主細胞の細胞質内で産生されるので、各シストロン内に分泌シグナル配列の存在は必要でない。この点において、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖は発現され、折り畳まれ、集合して細胞質内に機能的免疫グロブリンを形成する。ジスルフィド結合形成に好適な細胞質条件を示し、発現したタンパク質サブユニットを好適に折り畳み、集合することができる宿主系が存在する(例として大腸菌trxB系)。Proba及びPluckthun Gene, 159:203 (1995)。
本発明は、発現されるポリペプチド成分の量的割合を本発明の抗体の分泌及び好適な集積効率が最大となるように調節することができる発現系を提供する。ポリペプチド成分の翻訳強度を同時に調節することによって少なくともある程度その調節が達成される。
【0057】
翻訳強度を調節する一つの方法は、Simmons等の米国特許第5840523号に開示されている。このアプローチはシストロン内の翻訳開始領域(TIR)の変異体を利用する。与えられたTIRに対して、ある範囲の翻訳強さを持つ一群のアミノ酸又は核酸配列変異体をつくり出すことができ、それによって、所望の発現レベルの特異的鎖に対してこの因子を調節するための簡便な手段を提供する。TIR変異体はアミノ酸配列を改変することができるコドン変化を生じる一般的な突然変異誘発法によって産生することができるが、ヌクレオチド配列のサイレント変化が好ましい。TIRの変異には、例えばシグナル配列の変更と共に、シャイン-ダルガーノ配列の数又は間隔の変更が含まれうる。変異体シグナル配列を作成するためのある方法はシグナル配列のアミノ酸配列を変化させない(つまり変化がサイレントである)コード配列の最初での「コドンバンク」の産生である。これは、各コドンの第三のヌクレオチド位置を変化させることによって、達成できる;加えて、幾つかのアミノ酸、例えばロイシン、セリン、及びアルギニンはバンクの作製に複雑さを付加し得る複数の第一及び第二の位置を有している。この突然変異誘発の方法はYansura等(1992) METHODS: A Companion to Methods in Enzymol. 4:151-158に詳細に記載されている。
好ましくは、そこの各シストロンに対してある範囲のTIR強さを有する一群のベクターが産生される。この制限された群は各鎖の発現レベルと様々なTIR強さの組合せ下で所望の抗体産物の収量の比較をもたらす。TIR強さはSimmons等の米国特許第5840523号に記載されているレポーター遺伝子の発現レベルを定量することによって決定することができる。翻訳強度を比較することによって、所望の個々のTIRsが選択されて、本発明の発現ベクターコンストラクト中で組み合わされる。
【0058】
本発明の抗体を発現するのに適した原核生物宿主細胞には、古細菌及び真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物が含まれる。有用な細菌の例には、エシェリキア属(例えば大腸菌)、バシラス属(例えば枯草菌)、エンテロバクター属、シュードモナス種(例えば緑膿菌)、ネズミチフス菌、霊菌(Serratia marcescans)、クレブシエラ属、プロテウス属、赤痢菌、根粒菌、ビトレオシラ(Vitreoscilla)又はパラコッカス(Paracoccus)が含まれる。一実施態様では、グラム陰性菌が使用される。一実施態様では、大腸菌細胞が本発明の宿主として使用される。大腸菌株の例として、遺伝子型W3110 ΔfhuA (ΔtonA) ptr3 lac Iq lacL8 ΔompTΔ(nmpc-fepE) degP41 kanR を有する33D3株(米国特許第5,639,635号)を含むW3110株 (Bachmann, Cellular and Molecular Biology, vol. 2 (Washington, D.C.: American Society for Microbiology, 1987), 1190-1219頁;ATCC寄託番号27,325)及びその誘導体が含まれる。また、大腸菌294 (ATCC 31,446), 大腸菌B, 大腸菌λ 1776 (ATCC 31,537)及び大腸菌RV308(ATCC 31,608) など、他の株及びその誘導体も好適である。この例は限定的なものでなく例示的なものである。定義した遺伝子型を有する上記の何れかの細菌の誘導体の構築方法は当業者に公知であり、例として, Bassら., Proteins, 8:309-314 (1990)に記載されている。一般的に、細菌細胞中でのレプリコンの複製能を考慮して適した細菌を選択することが必要である。pBR322、pBR325、pACYC177、又はpKN410のようなよく知られたプラスミドを使用してレプリコンを供給する場合、例えば、大腸菌、セラシア属、又はサルモネラ種を宿主として好適に用いることができる。典型的に、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌しなければならず、望ましくは更なるプロテアーゼインヒビターを細胞培養中に導入することができる。
【0059】
抗体産生
上述した発現ベクターで宿主細胞を形質転換又は形質移入し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適するように修飾された通常の栄養培地中で培養する。
形質転換とは、DNAを原核生物宿主中に導入し、そのDNAを染色体外要素として、又は染色体組込みによって複製可能にすることを意味する。使用される宿主細胞に応じて、形質転換はそのような細胞に適した標準的技術を使用してなされる。塩化カルシウムを用いるカルシウム処理は実質的な細胞壁障害を含む細菌細胞のために一般に使用される。形質転換のための他の方法はポリエチレングリコール/DMSOを用いる。さらに別の方法はエレクトロポレーションである。
本発明のポリペプチドを生産するために使用される原核生物細胞は当該分野で知られ、選択された宿主細胞の培養に適した培地中で増殖させられる。好適な培地の例には、ルリア培地(LB)プラス必須栄養分サプリメントが含まれる。ある実施態様では、培地は発現ベクターを含む原核生物細胞の増殖を選択的に可能にするために、発現ベクターの構成に基づいて選択される選択剤をまた含む。例えば、アンピシリンがアンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の増殖用培地に加えられる。
【0060】
炭素、窒素及び無機リン酸源の他に任意の必要なサプリメントを、単独で、又は複合窒素源のような他のサプリメント又は培地との混合物として導入される適切な濃度で含有させられうる。場合によっては、培養培地はグルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリトリトール及びジチオトレイトールからなる群から選択される一又は複数の還元剤を含みうる。
原核生物宿主細胞は適切な温度で培養される。例えば、大腸菌の増殖に対しては、好適な温度は約20℃から約39℃、より好ましくは約25℃から約37℃の範囲、更により好ましくは約30℃である。培地のpHは、主として宿主生物に応じて、約5から約9の範囲の任意のpHでありうる。大腸菌に対しては、pHは好ましくは約6.8から約7.4、より好ましくは約7.0である。
本発明の発現ベクターに誘導性プロモータが用いられる場合、プロモータの活性に適する条件下でタンパク質発現を誘導する。本発明の一態様では、ポリペプチドの転写制御のためにPhoAプロモータが用いられる。したがって、形質転換した宿主細胞を誘導のためにリン酸限定培地で培養する。好ましくは、リン酸限定培地はC.R.A.P培地である(例として、Simmonsら., J. Immunol. Methods (2002), 263:133-147を参照)。様々な他の誘導因子は用いるベクターコンストラクトに応じて当業者に知りうるように用いてよい。
【0061】
一実施態様では、発現された本発明のポリペプチドは宿主細胞の細胞膜周辺中に分泌され、そこから回収される。タンパク質の回収は、一般的には浸透圧ショック、超音波処理又は溶解のような手段によって典型的には微生物を破壊することを含む。ひとたび細胞が破壊されると、細胞片又は全細胞を遠心分離又は濾過によって除去することができる。タンパク質は、例えばアフィニティー樹脂クロマトグラフィーによって更に精製することができる。あるいは、タンパク質は培養培地に輸送しそこで分離することができる。細胞を培養物から除去することができ、培養上清は濾過され、生成したタンパク質の更なる精製のために濃縮される。発現されたポリペプチドを更に単離し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)及びウェスタンブロットアッセイ法のような一般的に知られている方法を使用して同定することができる。
本発明の一側面では、抗体産生は発酵法によって多量に受け継がれる。組換えタンパク質の生産には様々な大規模流加発酵法を利用することができる。大規模発酵は少なくとも1000リットルの容量、好ましくは約1000から100000リットルの容量である。これらの発酵槽は、酸素と栄養分、特にグルコース(好ましい炭素/エネルギー源)を分散させる撹拌翼を使用する。小規模発酵とは一般におよそ100リットル以下の容積で、約1リットルから約100リットルの範囲でありうる発酵槽での発酵を意味する。
【0062】
発酵法では、タンパク質の発現の誘導は、典型的には、細胞が適切な条件下にて、初期定常期に細胞があるステージで、所望の密度、例えば約180−220のOD550まで増殖したところで開始される。当該分野で知られ上述されているように、用いられるベクターコンストラクトに応じて、様々なインデューサーを用いることができる。細胞を誘導前の短い時間の間、増殖させてもよい。細胞は通常約12−50時間の間、誘導されるが、更に長い又は短い誘導時間としてもよい。
本発明のポリペプチドの生産収量と品質を改善するために、様々な発酵条件を変更することができる。例えば、分泌される抗体ポリペプチドの正しい組み立てとフォールディングを改善するために、例えばDsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD及び/又はDsbG)又はFkpA(シャペロン活性を持つペプチジルプロピルシス、トランス-イソメラーゼ)のようなシャペロンタンパク質を過剰発現する更なるベクターを用いて宿主原核細胞を同時形質転換させることができる。シャペロンタンパク質は細菌宿主細胞中で生産される異種性タンパク質の適切な折り畳みと溶解性を容易にすることが実証されている。Chen等 (1999) J Bio Chem 274:19601-19605;Georgiou等, 米国特許第6083715号;Georgiou等, 米国特許第6027888号;Bothmann及びPluckthun (2000) J. Biol. Chem. 275:17100-17105;Ramm及びPluckthun (2000) J. Biol. Chem. 275:17106-17113;Arie等 (2001) Mol. Microbiol. 39:199-210。
【0063】
発現された異種タンパク質(特にタンパク分解を受けやすいもの)のタンパク質分解を最小にするために、タンパク質分解酵素を欠くある種の宿主株を本発明に用いることができる。例えば、原核生物宿主細胞株を改変して、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVI及びその組合せのような既知の細菌プロテアーゼをコードしている遺伝子に遺伝子突然変異を生じさせることができる。幾つかの大腸菌プロテアーゼ欠損株が利用でき、例えば、上掲のJoly等 (1998);Georgiou等, 米国特許第5264365号;Georgiou等, 米国特許第5508192号;Hara等 (1996) Microbial Drug Resistance 2:63-72に記載されている。
ある実施態様では、タンパク質溶解性酵素を欠損した、一以上のシャペロンタンパク質を過剰発現するプラスミドで形質転換した大腸菌株を本発明の発現系の宿主細胞として用いる。
【0064】
抗体精製
ある実施態様では、本明細書に記載の生成した抗体タンパク質をさらに精製して、更なるアッセイ及び使用のために実質的に均一な調製物を得る。当分野で公知の標準的なタンパク質精製方法を用いることができる。以下の方法は好適な精製手順の例である:免疫親和性又はイオン交換カラムによる分画化、エタノール沈降法、逆相HPLC、シリカ又はDEAEなどの陽性交換樹脂によるクロマトグラフィ、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈降法及び、例えばSephadex G−75を用いたゲル濾過法。
一態様では、固形層に固定したプロテインAを本発明の完全長抗体産物の免疫親和性精製法に用いる。プロテインAは抗体のFc領域に高い親和性で結合する黄色ブドウ球菌から単離した41kDの細胞壁タンパク質である。Lindmark ら (1983) J. Immunol. Meth. 62:1-13。プロテインAを固定した固形層は、ガラス又はシリカ表面、より好ましくは孔を調節したガラスカラム又はケイ酸カラムを含むカラムが好ましい。ある方法では、カラムは非特異的な混入物の接着を防ぐためにグリセロールなどの試薬でコートされている。
精製の初めの工程では、上記に記載のように細胞培養物からの調製物をプロテインA固定固形層に適応し、プロテインAに対象とする抗体を特異的に結合させる。ついで、固形層を洗浄して、固形層に非特異的に結合した混入物を除去する。最後に、対象とする抗体を溶出により固形層から除去する。
【0065】
真核生物の宿主細胞を用いた抗体の生成
一般的に、ベクターは、限定するものではないが、以下の一以上を含む:シグナル配列、複製起点、一以上のマーカ遺伝子、エンハンサー因子、プロモータ及び転写終末因子。
(i) シグナル配列成分
真核生物の宿主細胞に用いるベクターは、シグナル配列あるいは成熟タンパク質あるいは対象とするポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドを含んでいてもよい。好ましく選択された異種シグナル配列は宿主細胞によって認識され加工される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。哺乳動物細胞での発現においては、哺乳動物のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが利用できる。
このような前駆体領域のDNAは、多価抗体をコードするDNAに読み取り枠を一致させて結合される。
【0066】
(ii) 複製開始点
一般には、哺乳動物の発現ベクターには複製開始点成分は不要である。例えば、SV40開始点は典型的にはただ初期プロモーターを有しているために用いられる。
(iii) 選択遺伝子成分
発現及びクローニングベクターは、選択可能マーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)必要があれば栄養要求性欠陥を補い、又は(c)複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
選択方法の一例では、宿主細胞の成長を抑止する薬物が用いられる。異種性遺伝子で首尾よく形質転換した細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を生産し、よって選択工程を生存する。このような優性選択の例は、薬剤ネオマイシン、ミコフェノール酸及びハイグロマイシンを使用する。
【0067】
哺乳動物細胞に適切な選択可能なマーカーの他の例は、抗体核酸を捕捉することのできる細胞成分を同定することを可能にするもの、例えばDHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネインI及びII、好ましくは、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等々である。
例えば、DHFR選択遺伝子によって形質転換された細胞は、先ず、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトリキセート(Mtx)を含む培地において形質転換物の全てを培養することで同定される。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、DHFR活性に欠陥のあるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)株化細胞である(例として、ATCC CRL-9096)。
あるいは、抗体をコードするDNA配列、野生型DHFRタンパク質、及びアミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH)のような他の選択可能マーカーで形質転換あるいは同時形質転換した宿主細胞(特に、内在性DHFRを含む野生型宿主)は、カナマイシン、ネオマイシンあるいはG418のようなアミノグリコシド抗生物質のような選択可能マーカーの選択剤を含む培地中での細胞増殖により選択することができる。米国特許第4965199号を参照のこと。
【0068】
(iv) プロモーター成分
発現及びクローニングベクターは通常は宿主生物体によって認識され抗体ポリペプチド核酸に作用可能に結合しているプロモーターを含む。真核生物のプロモーター配列が知られている。実質的に全ての真核生物の遺伝子が、転写開始部位からおよそ25ないし30塩基上流に見出されるATリッチ領域を有している。多数の遺伝子の転写開始位置から70ないし80塩基上流に見出される他の配列は、Nが任意のヌクレオチドであるCNCAAT領域である。大部分の真核生物遺伝子の3'末端には、コード配列の3'末端へのポリA尾部の付加に対するシグナルであるAATAAA配列がある。これらの配列は全て真核生物の発現ベクターに適切に挿入される。
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからの抗体ポリペプチドの転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及びサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り、調節される。
SV40ウィルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製起点を更に含むSV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウィルスの最初期プロモーターは、HindIIIE制限断片として簡便に得られる。ベクターとしてウシ乳頭腫ウィルスを用いて哺乳動物宿主中でDNAを発現させる系が、米国特許第4419446号に開示されている。この系の変形例は米国特許第4601978号に開示されている。また、単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの調節下でのマウス細胞中でのヒトβインターフェロンcDNAの発現について、Reyes等, Nature, 297:598-601(1982)を参照のこと。あるいは、ラウス肉腫ウィルス長末端反復をプロモーターとして使用することができる。
【0069】
(v) エンハンサーエレメント成分
より高等の真核生物によるこの発明の抗体ポリペプチドをコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによってしばしば増強される。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100−270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。真核生物プロモーターの活性化のための増強要素については、Yaniv, Nature, 297:17-18 (1982)もまた参照のこと。エンハンサーは、抗体ポリペプチドコード配列の5'又は3'位でベクター中にスプライシングされうるが、好ましくはプロモーターから5'位に位置している。
【0070】
(vi) 転写終末成分
また、真核生物宿主細胞に用いられる発現ベクターは、典型的には、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列を含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの5'、時には3'の非翻訳領域から一般に取得できる。これらの領域は、抗体をコードしているmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。一つの有用な転写終結成分はウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号とそこに開示された発現ベクターを参照のこと。
【0071】
(vii) 宿主細胞の選択及び形質転換
ここに記載のベクター中のDNAをクローニングあるいは発現させるために適切な宿主細胞は、脊椎動物の宿主細胞を含む本明細書中に記載の高等真核生物細胞を含む。培養(組織培養)中での脊椎動物細胞の増殖は常套的な手順になっている。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));ハムスター乳児腎細胞(BHK, ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サルの腎細胞 (CV1 ATCC CCL70); アフリカミドリザルの腎細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587); ヒト子宮頸癌細胞 (HELA, ATCC CCL2); イヌ腎細胞 (MDCK, ATCC CCL34); バッファローラット肝細胞 (BRL3A, ATCC CRL1442); ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL75); ヒト肝細胞 (Hep G2, HB8065); マウス乳房腫瘍細胞 (MMT060562, ATCC CCL51);TRI細胞(Mather等, Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌株(HepG2)である。
宿主細胞は、抗体生産のために上述の発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードしている遺伝子を増幅するために適切に修飾された常套的栄養培地で培養される。
【0072】
(viii) 宿主細胞の培養
本発明の抗体を産生するために用いられる宿主細胞は種々の培地において培養することができる。市販培地の例としては、ハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地((MEM),(シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM),シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。また、Ham等, Meth. Enz. 58:44 (1979), Barnes等, Anal. Biochem. 102:255 (1980), 米国特許第4767704号;同4657866号;同4927762号;同4560655号;又は同5122469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国再発行特許第30985号に記載された何れの培地も宿主細胞に対する培地として使用できる。これらの培地には何れもホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインシュリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCINTM薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は等価なエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について過去に用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0073】
(ix) 抗体の精製
組換え技術を用いる場合、抗体は細胞内で生成され、又は培地内に直接分泌される。抗体が細胞内に生成された場合、第1の工程として、宿主細胞か溶解された断片の何れにしても、粒子状の細片が、例えば遠心分離又は限外濾過によって除去される。抗体が培地に分泌された場合は、そのような発現系からの上清を、一般的には先ず市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はPelliconの限外濾過装置を用いて濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記の任意の工程に含めて、タンパク質分解を阻害してもよく、また抗生物質を含めて外来性の汚染物の成長を防止してもよい。
【0074】
細胞から調製した抗体組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製でき、アフィニティクロマトグラフィーが好ましい精製技術である。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する免疫グロブリンFc領域の種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に用いることができる(Lindmark等, J. immunol. Meth. 62: 1-13 (1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨されている(Guss等, EMBO J. 5: 16571575 (1986))。アフィニティーリガンドが結合されるマトリクスはアガロースであることが最も多いが、他の材料も使用可能である。孔制御ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリクスは、アガロースで達成できるものより早い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がC3ドメインを含む場合、Bakerbond ABXTM樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンでのクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂上でのSEPHAROSETMクロマトグラフィー(ポリアスパラギン酸カラム)、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿法も、回収される多価抗体に応じて利用可能である。
予備的精製工程に続いて、目的の抗体および混入物を含む混合液をpH約2.5−4.5、好ましくは低塩濃度(例として、約0−0.25M塩)の溶出緩衝液を用いて低pH疎水性作用クロマトグラフィを行う。
【0075】
活性のアッセイ
本発明の抗体は当該分野で知られている様々なアッセイによってその物理的/化学的性質及び生物学的機能について特徴付けることができる。
精製された免疫グロブリンは、限定されるものではないが、N末端シークエンシング、アミノ酸解析、非変性サイズ排除高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析、イオン交換クロマトグラフィー及びパパイン消化を含む一連のアッセイによって更に特徴付けることができる。
本発明の特定の実施態様では、ここで生産された免疫グロブリンはその生物学的活性について分析される。ある実施態様では、本発明の免疫グロブリンはその抗原結合活性について試験される。当該分野で知られ、ここで使用することができる抗原結合アッセイには、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、エライザ(酵素結合免疫吸着検定法)、「サンドウィッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、蛍光イムノアッセイ、及びプロテインAイムノアッセイのような技術を用いた任意の直接的又は競合的結合アッセイが制限なく含まれる。抗原結合アッセイは以下の実施例の項で解説する。
【0076】
一実施態様では、本発明はすべてではなくいくつかのエフェクター機能を有する変更した抗体を考慮し、このことによって抗体のインビボ半減期が重要なある種のエフェクター機能(補体又はADCCなど)が不要で有害である多くの手法の所望する候補となる。特定の実施態様では、生成した免疫グロブリンのFc活性を測定して、所望の特性が維持されていることを確認する。インビボ及び/又はインビトロ細胞障害アッセイを行って、CDC及び/又はADCC活性の減少/枯渇を確認することができる。例えば、Fcレセプター(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠損している(すなわちADCC活性をほとんど欠損している)が、FcRn結合能は維持していることを確認することができる。ADCCに関与している第一細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現しており、その一方で単核細胞はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現している。造血系細胞でのFcR発現については、Ravetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991)の464頁の表3に要約されている。対象とする分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの例は、米国特許第5,500,362号又は同第5,821,337号に記載されている。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、又は加えて、対象とする分子のADCC活性は、例えばClynes ら. PNAS (USA) 95:652-656 (1998)に開示されているような動物モデル内でインビボに評価することができる。また、C1q結合アッセイを行って、抗体がC1qに結合できない、つまりCDC活性を欠損していることを確認してもよい。補体活性化を評価するために、例えばGazzano-Santoro ら., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載のように、CDCアッセイを行ってもよい。また、FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期測定を、当分野で公知の方法、例えば実施例の項目で示す方法を用いて行うことができる。
【0077】
ヒト化抗体
本発明は、ヒト抗体を包含する。非ヒト抗体をヒト化する様々な方法は当分野でよく知られている。例えば、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれる。ヒト化は、本質的にはヒト抗体の該当する高頻度可変領域配列を置換することによりウィンターと共同研究者の方法(Jonesほか, Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmannほか, Nature, 332:323-327 (1988)、Verhoeyenほか, Science, 239:1534-1536(1988))を使用して実施することができる。よって、このような「ヒト化」抗体は、完全なヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の該当する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的にはいくらかの高頻度可変領域残基及び場合によってはいくらかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。いわゆる「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワークとして受け入れる(Simsほか, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothiaら, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。他の方法では、軽又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carterほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Prestaほか, J. Immunol., 151:2623(1993))。
【0078】
更に、抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、一方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、高頻度可変領域残基は、直接的かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
【0079】
抗体変異体
一態様では、本発明は、Fc領域を含むFcポリペプチドの作用面内に修飾を有する抗体を提供するものであり、ここでいう修飾によって異種性二量体化を容易にする及び/又は促進される。この修飾は、第一Fcポリペプチド内への隆起と第二Fcポリペプチド内への腔の導入を含むものであり、ここでいう隆起は第一Fcポリペプチドと第二Fcポリペプチドの複合体化を促進するために腔内に位置する。これらの修飾を有する抗体の生成方法は当分野で公知であり、例えば米国特許第5,731,168号に記載されている。
ある実施態様では、本明細書中に記載の抗体のアミノ酸配列の修飾を考える。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望まれうる。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体核酸中に適当なヌクレオチド変化を導入することにより、又はペプチド合成により調製される。そのような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失及び/又は挿入及び/又は置換を含む。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせをその最終コンストラクトに達するまでなされることによって最終コンストラクトが所望の特徴を有する。配列を作製すると同時に目的の抗体アミノ酸配列にアミノ酸修飾を導入するのがよい。
【0080】
突然変異誘発の好ましい位置である抗体の所定の残基又は領域の特定のために有用な方法は、Cunningham及びWells, Science 244: 1081-1085 (1989)に記載されているように「アラニンスキャンニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、標的残基の残基又は基が同定され(例えば、arg, asp, his, lys,及びglu等の荷電残基)、中性又は負荷電アミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリアラニン)に置換され、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を及ぼす。ついで置換に対する機能的感受性を示すこれらのアミノ酸の位置は、置換部位において又はそれに対して更なる又は他の変異体を導入することにより精製される。しかして、アミノ酸配列変異を導入する部位は予め決定されるが、変異自体の性質は予め決める必要はない。例えば、与えられた部位における変異の性能を分析するために、alaスキャンニング又はランダム突然変異誘発を標的コドン又は領域で実施し、発現された免疫グロブリンを所望の活性についてスクリーニングする。
【0081】
アミノ酸配列挿入は、1残基から100以上の残基を含むポリペプチドの長さの範囲のアミノ-及び/又はカルボキシル末端融合物、並びに一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入物を含む。末端挿入物の例には、N末端メチオニル残基を持つ抗体ないし細胞障害性ポリペプチドに融合した抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体は、抗体の血清半減期を向上させる酵素(例えばADEPT)又はポリペプチドへの、抗体のN又はC末端への融合物を含む。
他の型の変異体はアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、抗体分子において少なくとも一つのアミノ酸残基が異なる残基で置換されている。置換突然変異に対して最も興味深い部位は高頻度可変領域を含むが、FR変化も考えられる。保存的置換は、「好ましい置換」と題して表1に示す。このような置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、以下の表1に「例示的置換」と名前を付け、又はアミノ酸の分類に関して以下に更に記載するような、より実質的な変化を導入し、生成物をスクリーニングしてもよい。
【0082】
表1

【0083】
抗体の生物学的性質における実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又は螺旋配置、(b)標的部位の分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持するそれらの効果において実質的に異なる置換を選択することにより達成される。アミノ酸は、それらの側鎖特性の類似性に従ってグループ分けすることができる(A. L. Lehninger, in Biochemistry, second ed., pp.73-75, Worth Publisher, New York (1975)):
(1) 無極性: Ala (A), Val (V), Leu (L), Ile (I), Pro (P), Phe (F), Trp (W), Met (M)
(2)無電荷極性: Gly (G), Ser (S), Thr (T), Cys (C), Tyr (Y), Asn (N), Gln (Q)
(3)酸性: Asp (D), Glu (E)
(4)塩基性: Lys (K), Arg (R), His(H)
或いは、共通の側鎖特性に基づいて天然に発生する残基をグループ分けすることができる:
(1) 疎水性:ノルロイシン, Met, Ala, Val, Leu, Ile;
(2) 中性親水性:Cys, Ser, Thr;
(3) 酸性:Asp, Glu;
(4) 塩基性:Asn, Gln, His, Lys, Arg;
(5) 鎖配向に影響する残基:Gly, Pro;及び
(6) 芳香族:Trp, Tyr, Phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。また、このような置換された残基は、保存的置換部位又はより好ましくは残りの(非保存的)部位内に導入されてもよい。
【0084】
ある型の置換変異体は、親抗体(例えば、ヒト化又はヒト抗体)の一又は複数の高頻度可変領域残基の置換を含む。一般的に、さらなる発展のために選択され、得られた変異体は、それらが作製された親抗体と比較して向上した生物学的特性を有している。そのような置換変異体を作製する簡便な方法は、ファージディスプレイを使用する親和性突然変異を含む。簡潔に言えば、幾つかの高頻度可変領域部位(例えば6−7部位)を突然変異させて各部位における全ての可能なアミノ酸置換を生成させる。このように生成された多価抗体は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内に充填されたM13の遺伝子III産物への融合物としてディスプレイされる。ファージディスプレイ変異体は、ついで、ここに開示されるようなそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補となる高頻度可変領域部位を同定するために、アラニンスキャンニング突然変異誘発を実施し、抗原結合に有意に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。別法として、又はそれに加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して抗体と抗原の接点を特定するのが有利である場合もある。このような接触残基及び隣接残基は、ここに述べた技術に従う置換の候補である。そのような変異体が生成されると、変異体のパネルにここに記載するようなスクリーニングを施し、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ抗体を更なる開発のために選択する。
抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、この分野で知られた種々の方法によって調製される。これらの方法は、限定するものではないが、天然源からの単離(天然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)又は初期に調製された抗体の変異体又は非変異体のオリゴヌクレオチド媒介(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及びカセット突然変異誘発による調製を含む。
【0085】
本発明の免疫グロブリンポリペプチドのFc領域内に一以上のアミノ酸修飾を導入してFc領域変異型を生成することが望ましい。Fc領域変異体は、ヒンジシステイン修飾を含む、一以上のアミノ酸位置でのアミノ酸修飾(例えば、置換)を有するヒトFc領域配列(例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4 Fc領域)を含みうる。
当分野での記載や教示に従って、ある実施態様では、本発明の方法を用いた抗体が野生型の対応抗体と比較して例えばFc領域内に一以上の変異を有することを考慮する。にもかかわらず、この抗体はその野生型対応物と比較して治療的有用性を示す実質的に同じ特徴を維持している。例えば、WO99/51642などに記載のようにC1q結合及び/又は補体依存性細胞障害(CDC)を変更する(すなわち改良又は減少する)結果となるFc領域内に特定の変異を生じさせることが考えられる。また、Fc領域変異型の他の例に関するDuncan & Winter Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;及びWO94/29351を参照。
【0086】
免疫コンジュゲート
また、本発明は、化学療法剤、薬剤、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌、糸状菌、植物又は動物由来の酵素活性性毒素、又はその断片)、又は放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)などの細胞毒性剤にコンジュゲートした抗体を含む免疫コンジュゲート又は抗体−薬剤コンジュゲート(ADC)に関する。
細胞障害性又は細胞分裂停止性の薬剤、すなわち癌治療における腫瘍細胞を殺す又は阻害するための薬剤の局部運搬に抗体−薬剤コンジュゲートを用いると(Syrigos及びEpenetos (1999) Anticancer Research 19:605-614; Niculescu-Duvaz and Springer (1997) Adv. Drg Del. Rev. 26:151-172;米国特許第4,975,278号)、論理的に腫瘍への薬剤成分の標的とする運搬とそこでの細胞内集積が可能となるものであり、この非コンジュゲート薬物作用剤の全身性投与により正常細胞並びに除去しようとする腫瘍細胞への毒性が容認できないレベルとなりうる(Baldwinら., (1986) Lancet pp. (Mar. 15, 1986):603-05; Thorpe, (1985) 「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review,」 in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, A. Pincheraら. (ed.s), pp. 475-506)。これによって、最小限の毒性で最大限の効果を求める。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体はこの方策に有用であるとして報告されている(Rowlandら., (1986) Cancer Immunol. Immunother., 21:183-87)。この方法に用いる薬物には、ダウノマイシン、ドキソルビジン、メトトレキサート及びビンデジンが含まれる(Rowlandら., (1986)、上掲)。抗体−毒素コンジュゲートに用いる毒素には、ジフテリア毒素などの細菌性毒素、ゲルダナマイシン(Mandlerら(2000) Jour. of the Nat. Cancer Inst. 92(19):1573-1581;Mandlerら(2000) Bioorganic & Med. Chem. Letters 10:1025-1028;Mandlerら(2002) Bioconjugate Chem. 13:786-791)、メイタンシノイド(EP 1391213;Liuら., (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623)、及びカリケアマイシン(Lodeら (1998) Cancer Res. 58:2928;Hinmanら (1993) Cancer Res. 53:3336-3342)などのリシン、小分子毒素などの植物毒が含まれる。該毒素は、チューブリン結合、DNA結合又はトポイソメラーゼ阻害を含む機能によりその細胞障害性及び細胞分裂停止性の効果に影響しうる。ある種の細胞障害性剤は、大きな抗体又はタンパク質レセプターリガンドにコンジュゲートした場合に、不活性又は活性が低減する傾向がある。
【0087】
ゼバリン(ZEVALIN)(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン(ibritumomab tiuxetan), Biogen/Idec)は正常及び悪性のBリンパ球の細胞表面上にみられるCD20抗原に対するマウスIgG1κモノクローナル抗体と111In又は90Y放射性同位体とがチオウレアリンカーキレート剤にて結合した抗体−放射性同位体コンジュゲートである(Wisemanら (2000) Eur. Jour. Nucl. Med. 27(7):766-77;Wisemanら (2002) Blood 99(12):4336-42;Witzigら (2002) J. Clin. Oncol. 20(10):2453-63;Witzigら (2002) J. Clin. Oncol. 20(15):3262-69)。ゼバリンはB細胞非ホジキン性リンパ球(NHL)に対して活性を有するが、投与によってほとんどの患者に重症で長期の血球減少を引き起こす。カリケアマイシンに連結したhuCD33抗体からなる抗体薬剤コンジュゲートであるマイロターグ(MYLOTARG)(登録商標)(ゲムツズマブオゾガミシン(gemtuzumab ozogamicin), Wyeth Pharmaceuticals)は、急性骨髄性白血病の治療用注射剤として2000年に認可された(Drugs of the Future (2000) 25(7):686;米国特許第4970198号;同第5079233号;同第5585089号;同第5606040号;同第5693762号;同第5739116号;同第5767285号;同第5773001号)。ジスルフィドリンカーSPPを介してメイタンシノイド薬剤分子DM1と連結しているhuC242抗体からなる抗体薬剤コンジュゲートであるカンツズマブメルタンシン(Cantuzumab mertansine)(Immunogen, Inc.)は、CanAgを発現する癌、例として大腸、膵臓、胃などの治療用に第II相試験へと進んでいる。メイタンシノイド薬剤分子DM1と連結している抗前立腺特異的膜抗原(PSMA)モノクローナル抗体からなる抗体薬剤コンジュゲートであるMLN−2704(Millennium Pharm., BZL Biologics, Immunogen Inc.)は、前立腺癌の潜在的治療の開発段階にある。アウリスタチン(auristatin)ペプチド、アウリスタチンE(AE)及びモノメチルアウリスタチン(MMAE)、ドラスタチン(dolastatin)の合成類似体は、キメラモノクローナル抗体cBR96(癌細胞上のルイスYに特異的)及びcAC10(血液系悪性腫瘍上のCD30に特異的)(Doroninaら (2003) Nature Biotechnology 21(7):778-784)にコンジュゲートしており、治療的開発段階にある。
【0088】
このような免疫複合体(免疫コンジュゲート)の生成に有用な化学治療薬を上に記載した。用いることのできる酵素活性毒素及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)が含まれる。放射性コンジュゲート抗体の生成には、様々な放射性ヌクレオチドが利用可能である。例としては、212Bi、131I、131In、90Y及び186Reが含まれる。抗体及び細胞障害性薬の複合体は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トリエン2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて作成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238: 1098 (1987)に記載されているように調製することができる。カーボン-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への抱合のためのキレート剤の例である。国際公開94/11026参照。
抗体のコンジュゲートと一又は複数の小分子毒素、例えばカリケアマイシン、メイタンシノイド、トリコセン(trichothene)及びCC1065、及び毒性活性を有するこれらの毒素の誘導体が、ここで考察される。
【0089】
メイタンシン及びメイタンシノイド
一実施態様では、本発明の抗体(完全長又は断片)は一又は複数のメイタンシノイド分子と結合している。
メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害するように作用する分裂阻害剤である。メイタンシンは、最初、東アフリカシラブMaytenus serrataから単離されたものである(米国特許第3896111号)。その後、ある種の微生物がメイタンシノイド類、例えばメイタンシノール及びC-3メイタンシノールエステルを生成することが発見された(米国特許第4151042号)。合成メイタンシノール及びその誘導体及び類似体は、例えば米国特許第4137230号;同4248870号;同4256746号;同4260608号;同4265814号;同4294757号;同4307016号;同4308268号;同4308269号;同4309428号;同4313946号;同4315929号;同4317821号;同4322348号;同4331598号;同4361650号;同4364866号;同4424219号;同4450254号;同4362663号;及び同4371533号に開示されており、その開示は出典を明示してここに取り込まれる。
【0090】
メイタンシノイド-抗体コンジュゲート
治療指標を改善する試みにおいて、メイタンシン及びメイタンシノイドは、腫瘍細胞抗原に特異的に結合する抗体と結合している。メイタンシノイドを含有する免疫コンジュゲート及びそれらの治療用途は、例えば米国特許第5,208,020号、同5,416,064号、欧州特許第0425235B1号に開示されており、その開示は出典を明示してここに取り込まれる。Liu等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623(1996)には、ヒト結腸直腸癌に対するモノクローナル抗体C242に結合するDM1と命名されたメイタンシノイドを含有する免疫コンジュゲートが記載されている。前記コンジュゲートは培養された結腸癌細胞に対して高い細胞障害性を有することが見出されており、インビボ腫瘍成長アッセイにおいて抗腫瘍活性を示す。Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992)には、メイタンシノイドが、ジスルフィド結合を介して、ヒト結腸癌株化細胞の抗原に結合するマウス抗体A7、又はHER-2/neuオンコジーンに結合する他のマウスモノクローナル抗体TA.1に結合している免疫コンジュゲートが記載されている。TA.1-メイタンシノイドコンジュゲートの細胞障害性はヒト乳癌株化細胞SK-BR-3におけるインビトロで試験され、細胞当たり3×10HER-2表面抗原が発現した。薬剤コンジュゲートにより、遊離のメイタンシノイド剤に類似した細胞障害度が達成され、該細胞障害度は、抗体分子当たりのメイタンシノイド分子の数を増加させることにより増加する。A7-メイタンシノイドコンジュゲートはマウスにおいては低い全身性細胞障害性を示した。
【0091】
抗体-メイタンシノイドコンジュゲート(免疫コンジュゲート)
抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、抗体又はメイタンシノイド分子のいずれの生物学的活性もほとんど低減することなく、メイタンシノイド分子に抗体を化学的に結合させることにより調製される。1分子の毒素/抗体は、裸抗体の使用において細胞障害性を高めることが予期されているが、抗体分子当たり、平均3−4のメイタンシノイド分子が結合したものは、抗体の機能又は溶解性に悪影響を与えることなく、標的細胞に対する細胞障害性を向上させるといった効力を示す。メイタンシノイドは当該技術分野でよく知られており、公知の技術で合成することも、天然源から単離することもできる。適切なメイタンシノイドは、例えば米国特許第5208020号、及び他の特許、及び上述した特許ではない刊行物に開示されている。好ましいメイタンシノイドは、メイタンシノール、及び種々のメイタンシノールエステル等の、メイタンシノール分子の芳香環又は他の位置が修飾されたメイタンシノール類似体である。
例えば、米国特許第5208020号又は欧州特許第0425235B1号、及びChari等, Cancer Research, 52:127-131(1992)に開示されているもの等を含む、抗体-メイタンシノイドコンジュゲートを作製するために、当該技術で公知の多くの結合基がある。結合基には、上述した特許に開示されているようなジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチターゼ不安定性基、又はエステラーゼ不安定性基が含まれるが、ジスルフィド及びチオエーテル基が好ましい。
【0092】
抗体とメイタンシノイドとのコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。特に好ましいカップリング剤には、ジスルフィド結合により提供されるN-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノアート(SPP)及びN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)(Carlsson等, Biochem. J. 173:723-737[1978])が含まれる。
リンカーは結合の種類に応じて、種々の位置でメイタンシノイド分子に結合し得る。例えば、従来からのカップリング技術を使用してヒドロキシル基と反応させることによりエステル結合を形成することができる。反応はヒドロキシル基を有するC-3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC-14位、ヒドロキシル基で修飾されたC-15位、及びヒドロキシル基を有するC-20位で生じる。好ましい実施態様において、結合はメイタンシノール又はメイタンシノールの類似体のC-3位で形成される。
【0093】
カリケアマイシン
対象の他の免疫コンジュゲートには、一又は複数のカリケアマイシン分子と結合した抗体が含まれる。抗生物質のカリケアマイシンファミリーはサブ-ピコモルの濃度で二重鎖DNA破壊を生じることができる。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製については、米国特許第5712374号、同5714586号、同5739116号、同5767285号、同5770701号、同5770710号、同5773001号、同5877296号(全て、American Cyanamid Company)を参照のこと。使用可能なカリケアマイシンの構造類似体には、限定するものではないが、γ、α、α、N-アセチル-γ、PSAG及びθ(Hinman等, Cancer Research, 53:3336-3342(1993)、Lode等 Cancer Research, 58:2925-2928(1998)及び上述したAmerican Cyanamidの米国特許)が含まれる。抗体がコンジュゲート可能な他の抗腫瘍剤は、葉酸代謝拮抗薬であるQFAである。カリケアマイシン及びQFAは双方共、細胞内に作用部位を有し、原形質膜を容易に通過しない。よって抗体媒介性インターナリゼーションによるこれらの薬剤の細胞への取込により、細胞障害効果が大きく向上する。
【0094】
他の細胞障害剤
本発明の抗体とコンジュゲート可能な他の抗腫瘍剤には、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン及び5-フルオロウラシル、米国特許第5053394号、同5770710号に記載されており、集合的にLL-E33288複合体として公知の薬剤のファミリー、並びにエスペラマイシン(esperamicine)(米国特許第5877296号)が含まれる。
使用可能な酵素活性毒及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)より)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。
本発明は、抗体と核酸分解活性を有する化合物(例えばリボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNアーゼ)との間に形成される免疫コンジュゲートをさらに考察する。
【0095】
腫瘍を選択的に破壊するため、抗体は高い放射性を有する原子を含有してよい。放射性コンジュゲートした抗体を生成するために、種々の放射性同位体が利用される。例には、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体が含まれる。コンジュゲートが検出用に使用される場合、それはシンチグラフィー研究用の放射性原子、例えばtc99m又はI123、又は核磁気共鳴(NMR)映像(磁気共鳴映像、mriとしても公知)用のスピン標識、例えばヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含有し得る。
放射-又は他の標識が、公知の方法でコンジュゲートに導入される。例えば、ペプチドは生物合成されるか、又は水素の代わりにフッ素-19を含む適切なアミノ酸前駆体を使用する化学的なアミノ酸合成により合成される。標識、例えばtc99m又はI123、Re186、Re188及びIn111は、ペプチドのシステイン残基を介して結合可能である。イットリウム-90はリジン残基を介して結合可能である。IODOGEN法(Fraker等(1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80:49-57)は、ヨウ素-123の導入に使用することができる。他の方法の詳細は、「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal, CRC Press 1989)に記載されている。
【0096】
抗体と細胞障害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)が抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照されたい。リンカーは細胞中の細胞障害剤の放出を容易にするための「切断可能リンカー」であってよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ過敏性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカーが使用され得る(Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992);米国特許第5208020号)。
本発明の化合物は、限定するものではないが、架橋剤:市販されている(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aより)BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、及びSVSB (succinimidyl-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)にて調製したADCが特に考えられる。2003-2004 Applications Handbook and Catalogの467−498頁を参照。
【0097】
抗体薬剤コンジュゲートの調製
本発明の抗体薬剤コンジュゲート(ADC)において、抗体(Ab)を、リンカー(L)を介して、一つ以上の薬剤部分(D)、例えば抗体につき約1〜約20の薬剤部分にコンジュゲートする。式IのADCはいくつかの手段、当業者に公知の有機化学反応、状態および試薬を用いて調製されうる:(1)共有結合の後に薬剤部分Dと反応してAb-Lを形成するための、二価のリンカー試薬を用いた抗体の求核基の反応;及び(2)共有結合の後に抗体の求核基と反応してD-Lを形成するための、二価のリンカー試薬を用いた薬剤部分の求核基の反応、が含まれる。
Ab−(L−D)p I
抗体上の求核基には、限定するものでなく、以下のものを含む:(i)N末端アミン基、(ii)側鎖アミン基、例えばリシン、(iii)側鎖チオール基、例えばシステイン、および(iv)抗体がグリコシル化される糖水酸基又はアミノ基。アミン、チオールおよび水酸基は、求核であり、反応して、リンカー部分上の求電子性の群およびリンカー試薬により共有結合を形成することができる:(i)活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロギ酸および酸ハロゲン化物;(ii)アルキルおよびベンジルハライド、例えばハロアセトアミド;(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシルおよびマレイミド群、が含まれる。特定の抗体は、還元しうる鎖間ジスルフィド、すなわちシステイン架橋を有する。抗体は、還元剤、例えばDTT(ジチオトレイトール)による処置によって、リンカー試薬を用いたコンジュゲート反応を行ってもよい。ゆえに、各々のシステイン架橋は、理論的には、2の反応性のチオール求核基を形成する。チオールにアミンを転換させる2-イミノチオラン(トラウトの試薬)を用いてリシンを反応させることによって抗体に付加的な求核基を導入することができる。
【0098】
また、本発明の抗体薬剤コンジュゲートは、抗体を修飾して求電子性の部分を導入する(リンカー試薬又は薬剤上の求核置換基を用いて反応させることができる)ことによって生成してもよい。グリコシル化された抗体の糖質を、例えば過ヨウ素酸塩酸化剤を用いて酸化して、リンカー試薬又は薬剤部分のアミン基と反応するアルデヒド又はケトン基を形成させてもよい。生じたイミンシッフ塩基群が安定結合を形成するか、又は例えば安定アミン結合を形成させるホウ化水素試薬によって、還元してもよい。一実施態様では、ガラクトースオキシダーゼ又はナトリウムメタ過ヨウ素酸塩の何れかによるグリコシル化抗体の炭水化物部分の反応により、薬剤(Hermanson, Bioconjugate Techniques)上の適当な基と反応することができるタンパク質のカルボニル(アルデヒドおよびケトン)基が生じうる。他の実施態様では、N末端セリン又はスレオニン残基を含んでいるタンパク質はナトリウムメタ過ヨウ素酸塩と反応して、第一のアミノ酸の代わりにアルデヒドを生成する(Geoghegan & Stroh, (1992) Bioconjugate Chem. 3:138-146;US 5362852)。このようなアルデヒドは、薬剤部分又はリンカー求核基と反応することができる。
【0099】
同様に、薬剤部分上の求核基には、限定するものではないが、以下のものを含む:反応して、リンカー部分およびリンカー試薬上の求電子性の基と共有結合することができるアミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボン酸エステルおよびアリールヒドラジド基:(i)活性エステル(例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロギ酸および酸ハロゲン化物);(ii)アルキルおよびベンジルハライド、例えばハロアセトアミド;(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシルおよびマレイミド基、が含まれる。
別法として、抗体及び細胞障害剤を含有する融合タンパク質は、例えば組換え技術又はペプチド合成により作製される。DNAの長さは、コンジュゲートの所望する特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により離間しているか、又は互いに隣接しているコンジュゲートの2つの部分をコードする領域をそれぞれ含有する。
他の実施態様において、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)に抗体をコンジュゲートし、ここで抗体-レセプターコンジュゲートを患者に投与し、続いて清澄剤を使用し、循環から非結合コンジュゲートを除去し、細胞障害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0100】
抗体誘導体
本発明の抗体は当該分野において知られ直ぐに利用できる更なる非タンパク質性部分を含むように更に修飾することができる。好ましくは、抗体の誘導体化に適した部分は水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例には、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーかランダムコポリマー)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物が含まれる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは水中におけるその安定性のために製造の際に有利であろう。ポリマーは任意の分子量であってよく、分枝状でも非分枝状でもよい。抗体に結合するポリマーの数は変化してもよく、一を超えるポリマーが結合する場合、それらは同じでも異なった分子でもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又はタイプは、限定されるものではないが、その抗体誘導体が定まった条件下での治療に使用されるかどうか、改善される抗体の特定の性質又は機能を含む考慮事項に基づいて決定することができる。
【0101】
医薬製剤
本発明の抗体を含んでなる治療用製剤は、所望の純度を持つ抗体と、場合によっては生理学的に許容される担体、賦形剤又は安定化剤を混合することにより(Remington's Pharmaceutical Sciences 16版, Osol, A. 編 (1980))、水溶液、凍結乾燥又は他の乾燥製剤の形態に調製されて保存される。許容される担体、賦形剤又は安定化剤は、用いられる用量と濃度でレシピエントに非毒性であり、ホスフェート、シトレート、ヒスチジン及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;保存料(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンズエトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0102】
ここでの製剤は、治療される特定の徴候のために必要ならば一以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を与えない相補的活性を持つものも含んでよい。そのような分子は、好適には、意図する目的のために有効な量で組み合わされて存在する。
また活性成分は、例えばコアセルベーション技術あるいは界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに、コロイド状ドラッグデリバリー系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ-粒子及びナノカプセル)に、あるいはマクロエマルションに捕捉させてもよい。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16版, Osol, A.編 (1980)に開示されている。
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通して濾過することにより容易に達成される。
【0103】
徐放性調合物を調製してもよい。徐放性調合物の好ましい例は、本発明の免疫グロブリンを含む疎水性固体ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリクスは成形物、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフィア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシブチル酸が含まれる。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸等のポリマーは、分子を100日以上かけて放出することを可能にするが、ある種のヒドロゲルはタンパク質をより短い時間で放出する。カプセル化された抗体が体内に長時間残ると、37℃の水分に暴露された結果として変性又は凝集し、生物活性を喪失させ免疫原性を変化させるおそれがある。合理的な戦略を、関与するメカニズムに応じて安定化のために案出することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換による分子間S-S結合の形成であることが見いだされた場合、安定化はスルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥させ、水分含有量を制御し、適当な添加剤を使用し、また特定のポリマーマトリクス組成物を開発することによって達成されうる。
【0104】
ある実施態様では、細胞障害性剤とコンジュゲートした抗体を含んでなる免疫コンジュゲートを患者に投与する。いくつかの実施態様では、免疫コンジュゲート及び/又はそれが結合する抗原が細胞に内在化されていると、結合する標的細胞を殺す際の免疫コンジュゲートの治療効果が増す。一実施態様において、細胞障害性剤は標的細胞内の核酸を標的とするか又は妨げる。このような細胞障害性剤の例には、本明細書に記載の何れかの化学療法剤(例えばメイタンシノイド又はカリケアマイシン)、放射性同位元素、又はRNA分解酵素ないしDNAエンドヌクレアーゼが含まれる。
本発明の抗体は、単独で、または、他の組成物と組み合わせて治療に用いることができる。例えば、本発明の抗体は、他の抗体、化学療法剤(一又は複数)(化学療法剤の混合を含む)、他の細胞障害性剤(一又は複数)、抗血管形成剤(一又は複数)、サイトカインおよび/または増殖阻害性剤(一又は複数)と同時に投与してもよい。本発明の抗体が腫瘍成長を阻害する場合、腫瘍成長を阻害する一又は複数の他の治療薬と組み合わせることが特に望ましい。本発明の抗体は、例えば、転移性乳癌の治療に、VEGF活性を遮断する抗VEGF抗体及び/又は抗ErbB抗体(例えばハーセプチン(登録商標)抗HER2抗体)と組み合わせてもよい。あるいは又は加えて、放射線療法(例えば、外部光線照射、又は放射性標識した抗体などの作用剤を用いた治療)を患者に併用してもよい。上記の併用治療には、併用投与(2以上の作用剤が同じか又は別の製剤に包含される)及び別々の投与、別々の場合には、本発明の抗体は補助治療(一又は複数)の前及び/又はその後に投与することができる。
【0105】
本発明の抗体(及び補助治療薬)は、非経口的、皮下、腹膜内、肺内、鼻腔内、そして、必要に応じて局所の治療のために、病巣内投与を含む任意の好適な手段によって投与する。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹膜内、又は皮下的な投与を含む。加えて、抗体を、特に抗体の用量を減少して、パルス注入によって好適に投与する。投与が短期のものであるか長期のものであるかにある程度依存して、任意の好適な経路、例えば、静脈内又は皮下注射などの注射によって投与することができる。
本発明の抗体組成物は、医学的実用性に合わせた様式で調製し、1回分に分けて、投与する。ここで考慮する要因は、治療する特定の疾患、治療する特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、疾患の原因、薬剤の運搬部位、投与の方法、投与の日程計画、および医師が知る他の因子を含む。必要ではないが場合によっては、問題の疾患を予防するかまたは治療するために一般に用いられる一つ以上の作用剤と抗体とを調製する。そのような他の作用剤の有効量は、製剤中の本発明の抗体の量、疾患の型又は治療、及び上記の他の因子に依存する。一般的に、以前用いたのと同じ用量及び投与経路で、又は前回用いた用量の1〜99%で用いる。
【0106】
疾患の予防又は治療のために、本発明の抗体の好適な用量は(単独で用いる場合、又は化学療法剤などの他の作用剤と組み合わせて用いる場合)、治療する疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重症度及び経過、抗体を予防目的で投与するか治療目的で投与するか、以前の治療法、患者の病歴及び抗体への応答性、及び担当医師の判断に依存するであろう。抗体は一時的又は一連の治療にわたって好適に患者に投与される。疾患のタイプ及び重症度に応じて、約1μg/kg〜15mg/kg(例えば0.1mg/kg〜10mg/kg)の抗体が、例えば一以上の分割投与又は連続注入による患者投与の初期候補用量である。ある典型的な1日量は、上記の要因に応じて、約1μg/kg〜100mg/kg以上の範囲であろう。症状に応じて、数日間以上にわたる繰り返し投与は、所望の疾患症状の抑制が得られるまで持続する。抗体の用量の例は、約0.05mg/kg〜約10mg/kgの範囲であろう。ゆえに、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kgの一以上の用量を(又はそれらを組み合わせて)患者に投与してもよい。このような用量は、間欠的に、例えば週ごと又は3週ごとに投与してもよい(例えば患者に約2〜約20、例えば約6用量の抗体が投与される)。初期のより高い負荷投与量の後、一以上のより低い用量を投与してもよい。例示的用量療法は、約4mg/kgの初期負荷投与量の後、約2mg/kgの毎週の維持用量抗体を投与することを含む。しかしながら、他の投与計画が有効かもしれない。この治療の進行は、従来技術及びアッセイにより容易にモニターすることができる。
【0107】
製造品
本発明の他の態様では、上記の疾患の治療、予防及び/又は診断に有用な物質を含む製造品が提供される。該製造品は容器と該容器の又は該容器に付随するラベル又はパッケージ挿入物を具備する。好適な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジ等々が含まれる。容器は、様々な材料、例えばガラス又はプラスチックから形成されうる。容器は、それのみによって又は他の組成物と組み合わせて症状を治療、予防及び/又は診断するのに有効な組成物を収容し、滅菌アクセスポートを有しうる(例えば、容器は皮下注射針が貫通可能なストッパーを有するバイアル又は静脈内投与溶液バッグでありうる)。組成物中の少なくとも一つの活性剤は本発明の抗体である。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が癌のような選択した症状の治療に使用されることを示す。更に、製造品は、(a)組成物を中に収容し、その組成物が本発明の抗体を含む第一の容器と;(b)組成物を中に収容し、その組成物が更なる細胞毒性剤を含む第二の容器とを含みうる。本発明のこの実施態様における製造品は、第一及び第二の抗体組成物を癌などの特定の症状の治療に使用することができることを示しているパッケージ挿入物を更に含む。あるいは、もしくは付加的に、製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を含む第二の(又は第三の)容器を更に具備してもよい。更に、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジを含む、商業上及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
【0108】
以下に、本発明の方法及び組成物の実施例を示す。上記の概要的解説に示した様々な他の実施態様が実施しうる。
【実施例】
【0109】
材料及び方法
試薬
とうもろこしトリプシンインヒビターはHaematologic Technologies (Essex Junction, VT)から、そしてSpectrozyme(登録商標) fVIIaであるHGFAの色素生産性基質はAmerican Diagnostica (Stamford, CT)から入手した。可溶性HAI-1B(sHAI-1B)は、チャイニーズハムスター卵巣細胞内で発現させ、前述のように精製した(1)。クーニッツドメインインヒビターIV-49Cについては既に記載されている(2) (Genentech, Inc., South San Francisco)。既に記載されているように(1)、ヒト組換えHGFA(HGFA)をバキュロウイルス発現系にて発現させた。
【0110】
プロHGF活性化アッセイ
既に記載されているように(1, 3)、プロHGF活性化アッセイおよびIodogenを用いたプロHGF標識を行った。簡潔にいうと、抗HGFA抗体又はsHAI-1Bを含むHNCバッファー(20mM Hepes、pH 7.5、150mM NaCl、5mM CaCl)にてHGFAをプレインキュベートして、その後、125I-標識プロHGFを含むHNCバッファーを添加して37℃で4時間インキュベートした。最終的な混合物の反応物濃度は以下の通りであった:2nM HGFA、0.05mg/ml 125I標識プロHGF、0.1mg/ml 抗HGFA抗体、1μM sHAI-1B。4時間後、一定量を除去して、還元剤ジチオスレイトール(BIO-Rad)と共に試料バッファー(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)に添加した。しばらくの間加熱した後、試料(約10cpm/レーン)を、4−20%の勾配ポリアクリルアミドゲル(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)に流した。電気泳動後、乾燥させたゲルを、X線フィルム(X-OMAT AR, Eastman Kodak Company, Rochester, NY)に10−20分間露光した。フィルムを感光させ(Kodak M35A X-OMAT Processor)、スキャンして(Umax S-12, Umax Data Systems, Inc., Fremont, CA)、さらに、Adobe V.6.0フォトショップソフトウェア(Adobe Systems Inc., San Jose, CA)にて処理した。
【0111】
BIAcore実験
HGFAへの抗HGFA抗体の結合親和性を、BIAcore3000計測器(Biacore, Inc.)上の表面プラスモン共鳴測定値にて測定した。再フォーマットされた完全長抗HGFA IgG1を、パイオニアCM5センサチップのフローセル(flow cell)上に300共鳴単位(RU)の密度で固定した。製造者により提供されるプロトコールを使用して、アミノ基によるランダムな共役により固定される。2倍ずつ増加する1μMから8nMの範囲の一連の溶液を注入することによって、これらの表面へのHGFAの結合についてのSensorgramを記録した。対照セルのシグナルは、観察されたSensorgramから減算した。製造者により提供されるソフトウェアを用いた1:1ラングミュア(Languir)結合モデルに従って、データの非線形回帰分析法によって、反応速度定数を算出した。競合実験では、HGFA(70nM)を、様々な濃度の sHAI-1B(4nM−300nM)又はIV-49C(11nM−300nM)又は小分子HGFA活性部位結合物質(220nM−10uM)と共にプレインキュベートした。室温で60分間インキュベーションした後、酵素-インヒビター混合物をフローセル内に注入して、sensorgramを記録した。
【0112】
HGFA酵素阻害アッセイ
抗体又はsHAI-1Bを、HBSAバッファー(20mM Hepes、pH7.5、150mM NaCl、0.5mg/ml BSA、5mM CaCl)中でHGFA(終濃度5nM)と共に室温で20分間インキュベートした。Spectrozyme(登録商標) fVIIa(終濃度200μM、K=200μM)を添加し、動態学的マイクロプレート読み取り機(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)にて405nmの吸光度の直線的増加率を測定した。酵素活性の阻害は、阻害されない活性の部分的活性(v/v)として表される。
【0113】
結果及び考察
ファージディスプレイによる抗HGFA抗体の同定
抗体を同定する一つの方法は、ファージ抗体ライブラリの使用によるものである。例としてLee等(4)を参照のこと。HGFAに対する抗体を同定するために、我々は、既に報告されているヒトの合成ファジミド抗体ライブラリ(F(ab')ライブラリ)を用いて4ラウンドのパニングを実行した。5μg/ウェルのHGFAにてプレートをコートした。各ラウンドごとにストリンジェンシーを上げて、10−40回洗浄した。我々は、3ラウンドのパニングの後に濃縮を観察した。4ラウンドのパニングの後、ELISAアッセイのために95クローンを拾った。配列決定の後、HGFAに特異的に結合する67の異なるクローンが明らかとなった。スポット競合ELISAの後、IC50値を測定するために精製したファージを用いてさらに24のクローンが特徴付けされた。これは標準物質ファージ競合ELISAを使用して決定した。IC50値<100nMの14の異なるクローンをPRK-ヒトIgG1ベクターにサブクローニングした。これらのクローンのためのCDR配列を図1に挙げる。抗HGFAクローンの重鎖および軽鎖(Lee等(4)に記載されるヒト化4D5抗体からのもの)を、哺乳類の293細胞内に形質転換した。1週間後に、無血清上清を回収し、プロテインA親和性クロマトグラフィを用いて抗体を精製した。
【0114】
完全長抗HGFA抗体によるHGFA酵素活性の阻害
標準的な組換え技術によって、完全長抗体(IgG)として、選択された抗体を再フォーマットした。これらの完全長抗体は、125I標識プロHGFを用いた高分子基質活性化アッセイにて調べた。4時間の実験の間に、HGFAは完全にプロHGFを2-鎖HGFに変換し、既に報告されている通りに(1)、この反応は1μM sHAI-1B(図2A)により阻害された。抗体#49(図1)を除いて、試験した0.67μMの濃度の試験したすべての抗HGFA抗体は、有意にプロHGF変換を阻害した(図2)。付加的な実験により、#58が0.03μMと同じくらい低い濃度でプロHGF変換を阻害したことが示唆された(図3)。これらの結果と一致して、抗体#58は小合成基質であるSpectrozyme(登録商標) fVIIaに対してHGFA酵素活性を最も高い確率で阻害した(IC50 1.3nM)が、抗体#49は500nMで阻害しなかった(図8)。さらに、プロHGF活性化アッセイにおける相対的により弱い阻害活性と同様に、抗体#39、#86、#90および#95は色素生産性基質アッセイにおいて、相対的に弱い活性を有した(IC50>500nM)(図8)。また、3つの抗体#42、#61および#74も、0.67μMでプロHGF変換をほぼ完全に阻害したにもかかわらず、相対的に弱い阻害(IC50>500nM)を示した(図8)。興味深いことに、抗体#58(図4)により起こる完全な阻害と比較して、抗体#75の阻害活性がおよそ70%の阻害でプラトーに達した点で、抗体#75は異常な阻害反応速度を示した。
【0115】
抗体#75および#58の阻害機序
抗体#75による高分子基質プロセシングの完全な阻害を考慮して、小合成基質に対するHGFA酵素活性が完全に中和されないことから、抗体#75が活性部位の外ないしは活性部位付近に位置する機能的に重要なHGFA領域と結合することが示唆される。対照的に、抗体#58は、HGFAによる高分子及び小基質のプロセシングをともに強力に阻害した。抗体の阻害機序をより詳細に考察するために、様々な公知の活性部位インヒビターを用いて競合結合実験を行った。使用する3つのHGFA活性部位インヒビターは、先に述べた2クーニッツドメインインヒビターsHAI-1B(1)、単一のクーニッツドメインインヒビターIV-49C(2)および小分子HGFA活性部位結合物質とした。IV-49Cは、アルツハイマーのβプロテイン前駆体インヒビター(APPI)由来の62アミノ酸クーニッツドメインであって、組織因子/第VIIa因子複合体の特異的なインヒビターである(2)。また我々は、図5に示すように、IV-49CはHGFA酵素活性の強力なインヒビターであり、IC50が0.079μMであるのに対して、小分子HGFA活性部位結合物質は0.8μM(K=0.4μM)のIC50で阻害したことを発見した。
アミド分解アッセイにより測定された親和性と同様に(図8)、固定された抗体#58に対するHGFAのKは1.3nMであった(図9)。BIAcore測定値により、sHAI-1B、IV-49Cおよび小分子HGFA活性部位結合物質が#58へのHGFA結合を阻害することが示された。このことから、#58は、HGFAの活性部位に直接結合するか、ないしは活性部位にアロステリックな影響を及ぼすかの何れかであることが示唆された。
【0116】
抗体#75は、HGFAに#58より弱く結合する(図6E、図9)。さらに、小分子HGFA活性部位結合物質は抗体#75へのHGFA結合に作用しなかった。これは、抗体#75が活性部位の「コア」領域と結合しないことを示す。興味深いことに、抗体#75はHGFAアミド分解活性を部分的に阻害した。このことから、#75エピトープが活性部位の外側に位置する場合であっても、これら2つの部位間に分子結合がなければならないことが示唆される。これより、抗体#75結合にsHAI-1BおよびIV-49Cが部分的に作用することがいえる(図9、図6F、G)。
抗体#75と同様に、2つの抗体#74および#61も小分子活性部位結合物質の存在下でHGFAに結合したが(図9)、クーニッツドメインインヒビターによりHGFA結合が阻害された。これらの結果より、#74および#61のエピトープがHGFAの活性部位の外側に位置することが示唆された。抗体#61、#74および#75は、高分子基質相互作用にとって重要であるか、ないしはアロステリック的に活性部位領域の高次構造を左右するHGFAエキソサイト領域と結合すると考えられる。構造的に関連したセリンプロテアーゼ第VIIa因子において、重要なエキソサイトは、活性部位とカルシウム結合ループの間に位置する(5)。第VIIa因子エキソサイトに結合するペプチド並びに抗体は、高分子基質プロセシングの強力なインヒビターである(6,7)。例えば、ペプチドインヒビターE76の結合により一つの「活性化部位」ループに立体構造変化が影響を受け、これによって、基質相互作用部位が崩壊する(7)。加えて、これらの変化により、活性部位でのアロステリック効果が誘発される。これは、E-76ペプチドが活性部位領域の外側に結合するにもかかわらずアミド分解活性を阻害するという所見の根拠となる(7)。
【0117】
ビオチン化抗体#75および#58を用いた付加的な競合結合実験により、#75および#58がHGFA上にオーバーラップするエピトープを有することが示された(データは示さない)。さらに、酵素動態力学的研究により、#58が競合的インヒビターであること、及び#75が部分的な競合的インヒビター(すなわち、単一の交差している双曲線の競合的インヒビター)であることが示された(データは示さない)。まとめると、これらの結果から、両抗体がHGFA活性部位の外側で結合すること、及びそれらがHGFA酵素活性のアロステリックなインヒビターであることが示唆された。
【0118】
引用文献の一部
1. Kirchhofer D, Peek M, Li W, Stamos J, Eigenbrot C, Kadkhodayan S, Elliott JM, Corpuz RT, Lazarus RA, Moran P. Tissue expression, protease specificity, and Kunitz domain functions of hepatocyte growth factor activator inhibitor-1B (HAI-1B), a new splice variant of HAI-1. J. Biol. Chem. 2003;278:36341-36349.
2. Dennis MS, Lazarus RA. Kunitz domain inhibitors of tissue factor?factor VIIa II. Potent and specific inhibitors by competitive phage selection. J. Biol. Chem. 1994;269:22137-22144.
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【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1A】抗HGFA抗体の重鎖CDRループ配列。図は、重鎖CDR配列、H1、H2およびH3を示す。軽鎖配列はヒト化4D5配列である(上記のLee 等を参照のこと)。配列番号付けは以下の通りである:クローン33(CDRH1は配列番号:3であり、CDRH2は配列番号:4であり、CDRH3は配列番号:5である)、クローン35(CDRH1は配列番号:6であり、CDRH2は配列番号:7であり、CDRH3は配列番号:8である)、クローン37(CDRH1は配列番号:9であり、CDRH2は配列番号:10であり、CDRH3は配列番号:11である)、クローン39(CDRH1は配列番号:12であり、CDRH2は配列番号:13であり、CDRH3は配列番号:14である)、クローン42(CDRH1は配列番号:15であり、CDRH2は配列番号:16であり、CDRH3は配列番号:17である)、クローン49(CDRH1は配列番号:18であり、CDRH2は配列番号:19であり、CDRH3は配列番号:20である)、クローン58(CDRH1は配列番号:21であり、CDRH2は配列番号:22であり、CDRH3は配列番号:23である)、クローン61(CDRH1は配列番号:24であり、CDRH2は配列番号:25であり、CDRH3は配列番号:26である)、クローン74(CDRH1は配列番号:27であり、CDRH2は配列番号:28であり、CDRH3は配列番号:29である)、クローン75(CDRH1は配列番号:30であり、CDRH2は配列番号:31であり、CDRH3は配列番号:32である)、クローン86(CDRH1は配列番号:33であり、CDRH2は配列番号:34であり、CDRH3は配列番号:35である)、クローン90(CDRH1は配列番号:36であり、CDRH2は配列番号:37であり、CDRH3は配列番号:38である)、クローン91(CDRH1は配列番号:39であり、CDRH2は配列番号:40であり、CDRH3は配列番号:41である)、95(CDRH1は配列番号:42であり、CDRH2は配列番号:43であり、CDRH3は配列番号:44である)のクローンをつくる。アミノ酸位は、後述するカバット番号付けシステムに従って番号を付けた。また、IC50値は最後の(右側)縦列に示す。
【図1B】抗HGFA抗体の重鎖CDRループ配列。
【図1C】抗HGFA抗体の重鎖CDRループ配列。
【図1D】抗HGFA抗体の重鎖CDRループ配列。
【図1E】例示的なフレームワーク領域配列。HuMAb4D5-8フレームワーク領域配列。
【図1F】例示的なフレームワーク領域配列。修飾を含むHuMAb4D5-8フレームワーク領域配列。
【図2】抗HGFA抗体によるHGFA媒介性プロHGF活性化の阻害。HGFAは、125I標識プロHGFおよび抗HGFA抗体と共に37℃で4時間インキュベートした。反応物濃度は、50μg/ml プロHGF、2nM HGFAおよび0.1mg/ml(0.67μM)抗体であった。一定量を還元条件下のSDS-PAGEによって、分析した。コントロールインヒビターとして可溶性HAI-1B(sHAI-1B)を1μM終濃度で用いた。A.レーン1:反応の開始時に採取した一定量である(t=0)、レーン2:インヒビターなし、レーン3:sHAI-1B(1μM)、レーン4:#33、レーン5:#35、レーン6:#39、レーン7:#49、レーン8:#74、レーン9:#61。B.レーン1:#42、レーン2:#91、レーン3:58、レーン4:#37、レーン5:#75、レーン6:#90、レーン7:#86、レーン8:#95。
【図3】抗体#58によるHGFA媒介性プロHGF変換の強力な阻害。3つの異なる濃度の抗体#58および非阻止抗体#49を、図1に記載するように行われた125I標識プロHGF変換実験に用いた。レーン1:反応の開始時に採取した一定量である(t=0)、レーン2:インヒビターなし、レーン3:sHAI-1B(1μM)、レーン4:0.67μM Ab#49、レーン5:0.13μM Ab#49、レーン6:0.03μM Ab#49、レーン7:0.67μM Ab#58、レーン8:0.13μM Ab#58、レーン9:0.03μM Ab#58。
【図4】抗HGFA抗体58および75によるHGFAアミド分解活性の濃度依存的な阻害。様々な濃度の抗体を、HBSAバッファー中でHGFA(5nM終濃度)と共に室温で20分間インキュベートした。Spectrozyme(登録商標) fVIIa(200μM終濃度、KM=200μM)の添加の後、基質活性化の線形速度を、動態学的マイクロプレート読み取り機にて測定した。酵素活性の阻害は、阻害されない活性の部分的活性(vi/vo)として表された。
【図5】IV-49Cおよび小分子活性部位結合剤/インヒビターによるHGFAアミド分解活性の阻害。様々な濃度のインヒビターを、HBSAバッファー中でHGFA(それぞれ、IV-49Cは2.5nM、小分子は5nM)と共に室温で20分間インキュベートした。Spectrozyme(登録商標) fVIIa活性化の酵素阻害は、図4に記載のように測定した。A.特定の第XIIa因子インヒビターとうもろこしトリプシンインヒビター(○)と比較した場合のクーニッツドメインインヒビターIV-49C(●)による阻害。B.小分子インヒビターによる阻害(▲)。
【図6A】抗HGFA抗体#58および#75に対するHGFA結合の表面プラスモン共鳴測定値。抗HGFA抗体(完全長IgG1)をBIAcoreチップに固定し、様々な濃度のHGFAから結合データを集めた。競合結合実験のために、HGFA(70nM)を、様々な濃度のsHAI-1B、IV-49C又は小分子活性部位結合剤と共に予めインキュベートした。A−D:(A) インヒビターの非存在下、(B) sHAI-1Bの存在下、(C) IV-49Cの存在下、および(D) 小分子活性部位結合剤の存在下における、抗体#58に対するHGFAの結合。
【図6B】抗HGFA抗体#58および#75に対するHGFA結合の表面プラスモン共鳴測定値。抗HGFA抗体(完全長IgG1)をBIAcoreチップに固定し、様々な濃度のHGFAから結合データを集めた。競合結合実験のために、HGFA(70nM)を、様々な濃度のsHAI-1B、IV-49C又は小分子活性部位結合剤と共に予めインキュベートした。A−D:(A) インヒビターの非存在下、(B) sHAI-1Bの存在下、(C) IV-49Cの存在下、および(D) 小分子活性部位結合剤の存在下における、抗体#58に対するHGFAの結合。
【図6C】抗HGFA抗体#58および#75に対するHGFA結合の表面プラスモン共鳴測定値。抗HGFA抗体(完全長IgG1)をBIAcoreチップに固定し、様々な濃度のHGFAから結合データを集めた。競合結合実験のために、HGFA(70nM)を、様々な濃度のsHAI-1B、IV-49C又は小分子活性部位結合剤と共に予めインキュベートした。A−D:(A) インヒビターの非存在下、(B) sHAI-1Bの存在下、(C) IV-49Cの存在下、および(D) 小分子活性部位結合剤の存在下における、抗体#58に対するHGFAの結合。
【図6D】抗HGFA抗体#58および#75に対するHGFA結合の表面プラスモン共鳴測定値。抗HGFA抗体(完全長IgG1)をBIAcoreチップに固定し、様々な濃度のHGFAから結合データを集めた。競合結合実験のために、HGFA(70nM)を、様々な濃度のsHAI-1B、IV-49C又は小分子活性部位結合剤と共に予めインキュベートした。A−D:(A) インヒビターの非存在下、(B) sHAI-1Bの存在下、(C) IV-49Cの存在下、および(D) 小分子活性部位結合剤の存在下における、抗体#58に対するHGFAの結合。
【図6E】抗HGFA抗体#58および#75に対するHGFA結合の表面プラスモン共鳴測定値。抗HGFA抗体(完全長IgG1)をBIAcoreチップに固定し、様々な濃度のHGFAから結合データを集めた。競合結合実験のために、HGFA(70nM)を、様々な濃度のsHAI-1B、IV-49C又は小分子活性部位結合剤と共に予めインキュベートした。E−H:(E)インヒビターの非存在下、(F) sHAI-1Bの存在下、(G) IV-49Cの存在下、および(H)小分子活性部位結合剤の存在下における、抗体#75に対するHGFAの結合。
【図6F】抗HGFA抗体#58および#75に対するHGFA結合の表面プラスモン共鳴測定値。抗HGFA抗体(完全長IgG1)をBIAcoreチップに固定し、様々な濃度のHGFAから結合データを集めた。競合結合実験のために、HGFA(70nM)を、様々な濃度のsHAI-1B、IV-49C又は小分子活性部位結合剤と共に予めインキュベートした。E−H:(E)インヒビターの非存在下、(F) sHAI-1Bの存在下、(G) IV-49Cの存在下、および(H)小分子活性部位結合剤の存在下における、抗体#75に対するHGFAの結合。
【図6G】抗HGFA抗体#58および#75に対するHGFA結合の表面プラスモン共鳴測定値。抗HGFA抗体(完全長IgG1)をBIAcoreチップに固定し、様々な濃度のHGFAから結合データを集めた。競合結合実験のために、HGFA(70nM)を、様々な濃度のsHAI-1B、IV-49C又は小分子活性部位結合剤と共に予めインキュベートした。E−H:(E)インヒビターの非存在下、(F) sHAI-1Bの存在下、(G) IV-49Cの存在下、および(H)小分子活性部位結合剤の存在下における、抗体#75に対するHGFAの結合。
【図6H】抗HGFA抗体#58および#75に対するHGFA結合の表面プラスモン共鳴測定値。抗HGFA抗体(完全長IgG1)をBIAcoreチップに固定し、様々な濃度のHGFAから結合データを集めた。競合結合実験のために、HGFA(70nM)を、様々な濃度のsHAI-1B、IV-49C又は小分子活性部位結合剤と共に予めインキュベートした。E−H:(E)インヒビターの非存在下、(F) sHAI-1Bの存在下、(G) IV-49Cの存在下、および(H)小分子活性部位結合剤の存在下における、抗体#75に対するHGFAの結合。
【図7】ヒト(上段、配列番号:1)およびマウス(下段、配列番号:2) のHGFAタンパク質配列の配列。
【図8】様々な抗HGFA抗体によるHGFA酵素活性の阻害に関するデータを示す表。
【図9】抗HGFA抗体へのHGFAの結合に関するデータを示す表。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト肝細胞成長因子活性化物質(HGFA)に結合する単離された抗体。
【請求項2】
前記抗体がHGFAの活性部位に結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が、HGFAの活性部位以外の位置でHGFAに結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
阻止抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
HGFAタンパク分解性活性を阻止する、請求項4に記載の抗体。
【請求項6】
一本鎖HGFのHGFAタンパク質分解を阻止する、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
HGF/c-metシグナル伝達を阻害する、請求項1に記載の抗体。
【請求項8】
細胞増殖を阻害する、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
血管形成を阻害する、請求項7に記載の抗体。
【請求項10】
前記抗体がHGFA酵素活性のアロステリックインヒビターである、請求項1に記載の抗体。
【請求項11】
前記抗体がHGFA酵素活性の完全な又は部分的な競合的インヒビターである、請求項1に記載の抗体。
【請求項12】
被検体のHGF/c-metシグナル伝達の調節不全を伴う疾患の治療方法であって、被検体に請求項1ないし11の何れか一に記載のようにHGFAに結合する抗体の有効量を投与することを含む方法。
【請求項13】
前記疾患が癌である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記疾患が、血管形成の調節不全に関するものである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記疾患が免疫関連のものである、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
ヒト肝細胞成長因子活性化物質に特異的に結合する単離された抗体であって、該抗体が図1Aに記載のそれぞれのH1、H2及び/又はH3配列を含有してなる重鎖CDR配列を含むものである抗体。
【請求項17】
前記H1、H2及び/又はH3配列が図1B、図1C及び/又は図1Dに記載のものである、請求項16に記載の抗体。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図6H】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−25752(P2012−25752A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−177452(P2011−177452)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【分割の表示】特願2007−535866(P2007−535866)の分割
【原出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】