説明

肝臓繊維化レベルの識別方法及びその糖質医学イメージ分子造影剤

【課題】肝臓繊維化レベルを臨床的に精確に識別する方法を提供する。
【解決手段】肝臓標的糖質医学イメージ分子造影法において、
(a)ガラクトースペプチドを含む医学イメージ造影剤を静脈注射し、
(b)特定時間内に医学イメージ器具で単位肝臓体積が発生する医学イメージ信号を測定する。ここで、前記医学イメージ造影剤がTc-99m-SOCTA-galactopeptideまたはTc-99m-DTPA-galactopeptideであり、単光子放射コンピュータ断層測定機器で単位肝臓体積が放出するγ放射量を測定する。または、前記医学イメージ造影剤が磁性造影剤であり、核磁気共鳴機器で単位肝臓体積が発生する電磁信号を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓標的糖質医学イメージ分子造影方法及びその糖質造影剤に関し、特に、肝臓繊維化の程度を定量的且つ客観的に識別してクラス分けすることに適用する方法及びその糖質の医学イメージ分子造影剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の臨床肝臓繊維化の検査は、肝生検により肝臓組織切片を採取した後、病理専門家により肉眼で識別する(図9参照)。この種の侵略的な方法は、潜在する危険性があり、患者の多くに望まれない。また、診断は主観的判断に頼ることになり、また肝生検サンプリングは誤差が大きいので、これは現在唯一の方法であるが、正確性は決して高くない。
【0003】
Leeは、1983年に三鎖構造のガラクトースペプチドと肝臓細胞受容体の結合力は、単鎖のガラクトースペプチドの106倍であることを報告している。ガラクトースペプチドは受容体と結合後、飲み込まれて肝臓細胞に進入する。Kwonは、2004年局所貧血肝臓細胞膜上のガラクトースペプチド受容体と内部に飲み込まれるガラクトースペプチド量はいずれも減少し、且つ減少する量と局所貧血程度は正比例関係を有することを報告している。
【0004】
本発明は、肝臓繊維化検査方法のボトルネックを突破し、肝臓繊維化レベルを正確に識別する非侵略的検査方法及び糖質造影剤を提供し、該造影剤は肝臓標的糖質医学イメージ分子造影方法に合わせて、定量的且つ客観的に肝臓繊維化の程度を識別でき、肝臓繊維化のクラス分けを行う根拠とし、特に、治療後の効果追跡及び疾病をクラス分けする精密な診断に適用する。
【特許文献1】特表2007−526300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、肝臓繊維化レベルを臨床上正確に識別する方法を提供し、肝臓標的糖質医学イメージ分子造影方法を完成し、検査時、肝生検等の組織または体液のサンプリングを行う必要がないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施例中、本発明は、肝臓繊維化レベルを臨床上正確に識別することができる方法を提供し、肝臓標的糖質医学イメージ分子造影技術の完成によって、検査時、肝生検で組織または体液のサンプリングを行う必要がなく、以下のステップ:(a)ガラクトースペプチドを含む医学イメージイメージング剤を静脈注射し、(b)特定時間内に医学イメージ器具で単位肝臓体積が発生する医学イメージ信号を測定する。
【0007】
他の実施例中、本発明は、更に肝臓繊維化レベルの評価に適用する肝臓標的糖質医学イメージ分子造影剤を提供し、それは、双官能基結合剤によってガラクトースペプチドを結合した後、医学イメージ用金属と結合させて造影剤とし、その特徴は、該造影剤が必要な双官能基結合剤が室温保存で潮解し難く、保存期間が1年以上に達することである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、肝臓繊維化レベルを臨床上精確に識別する方法を提供し、肝臓標的糖質医学イメージ分子造影方法を完成し、検査時、肝生検等の組織または体液のサンプリングを行う必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の肝臓繊維化レベルを臨床上精確に識別することが可能な方法のフロー説明図である。図2は、本発明の肝臓標的糖質医学イメージ分子造影法の概念説明図である。本実施例中、該方法1は、肝臓標的糖質医学イメージ分子造影技術によって完成され、検査時、肝生検で組織または体液のサンプリングを行う必要がなく、それは、以下のステップからなる:先ず、ステップ10を行い、1つの生物体上でガラクトースペプチドを含む医学イメージ造影剤(Galactopeptide imaging agent for liver targeting)を静脈注射する。続いて、ステップ11を行い、特定時間内に医学イメージ機器で単位肝臓体積が発生する医学イメージ信号を測定する。そのうち、該医学イメージ造影剤は、放射性薬剤または磁性造影剤等の試剤を選択できる。1つの実施例中、該医学イメージ造影剤がTc-99m-SOCTA-galactopeptideまたはTc-99m-DTPA-galactopeptideである時、該医学イメージ機器は単光子放射コンピュータ断層測定機器で肝臓組織のγ放射量を収集し、その単位肝臓体積が放出するγ放射量を測定する。もう1つの実施例中、該医学イメージ造影剤が磁性造影剤である時、核磁気共振器で単位肝臓体積が発生する電磁信号を測定する。また、本実施例のステップ11中、該特定時間の長さは、6時間以内である。
【0010】
本発明が提示するTc-99m-SOCTA-galactopeptideは、肝臓繊維化レベルを識別するために用いられ、その基礎は、肝臓繊維化した肝臓が貧血状況にあり、局所貧血肝臓細胞が飲み込む医学イメージ造影剤剤量が貧血の程度に従い減少するので、図3のようなTc-99m-SOCTA-galactopeptide造影剤は図2の肝臓標的糖質の医学イメージ分子造影の概念に適合し、肝臓繊維化レベルの識別に用いることができる。医学イメージ分子造影の検査技術は従来技術に属するので、ここに記載しない。
【0011】
図3の実施例中、SOCTAは、succinimidyl-3,6-diaza-5-oxo-3- [2-((triphenylmethyl)thio)ethyl]-8-[(triphenylmethyl)-thio]octanoateの略記であり、その構造は、図4に示すとおりである。
【0012】
図2において、検査時、肝生検等で組織または体液のサンプリングを行う必要が無く、放射性薬剤Tc-99m-SOCTA-galactopeptideまたはTc-99m-DTPA-galactopeptideを人体に静脈注射し、Tc-99m-SOCTA-galactopeptideまたはTc-99m-DTPA-galactopeptideが標的として肝臓細胞受容体(Hepatic lectinまたはhepatic GalNAc receptorと証する)と結合し、中性子医学単光子放射コンピュータ断層測定機器で、肝臓細胞中Tc-99mが放射するγ射線と肝臓体積を測定し、単位肝臓体積が放出するγ射線量を算出し、この単位体積の医学イメージ数値が肝臓繊維化の程度を識別することに用い、肝臓繊維化程度のクラス分けの根拠することができる。磁性造影剤、例えば、Mn-DTPA-galactopeptideまたはGd-DTPA-galactopeptideを人体に静脈注射する場合、核磁気共鳴機器で単位肝臓体積が発生する電磁信号を測定することができる。同様に、この数値を肝臓繊維化の程度を識別することに用い、肝臓繊維化のクラス分けの根拠とすることができる。
【0013】
図3は、Tc-99m-SOCTA-galactopeptideの調合フローを説明し、第1ステップは、ガラクトースペプチドを凍晶SOCTA中に加え、SOCTAはimidazole ester bondでガラクトースペプチドとアミノ結合し、第2ステップは、SOCTAがN2S2構造を有するので直接Tc-99mを結合でき、従って、Tc-99m-SOCTA-galactopeptideの調合を完成することができる。該凍晶SOCTAは潮解し難く、室温保存が1年以上に達することができる。
【0014】
医学的な検討によると、肝臓繊維化は、コラーゲンが異常に増加し、コラーゲンが肝臓門脈から中央の静脈に向かって徐々に増加することによって、肝臓細胞に進入し血流量が減少し、肝臓細胞がこの箇所で貧血状態になる。予期できるのはコラーゲンの増加が酷くなると、貧血程度も酷くなることである。肝臓繊維化時、肝臓は局所貧血状況であり、従来技術「局所貧血肝臓細胞上のガラクトースペプチド受容体とその内に飲み込まれたガラクトースペプチド量はいずれも減少し、且つ減少する量と貧血程度は正比例関係を有する」に基づき、その肝臓繊維化時に細胞膜上のガラクトースペプチド受容体が減少することを推測できると同時に、飲み込む肝臓細胞のTc-99m-SOCTA-galactopeptideも少なく、図3のようなTc-99m-SOCTA-galactopeptideは図2の肝臓標的糖質の医学イメージ分子造影の概念と技術に適合しているので、肝臓繊維化の程度を識別することに用いることができる。
【0015】
実験結果について分析すると、貧血時、ヘモグロビンαchain(分子量15.1kD)とヘモグロビンβchain(分子量15.9kD)はいずれも減少する。15.1kD(ヘモグロビンαchain)と15.9kD(ヘモグロビンβchain)の2つの蛋白のピークを固定観察し、SELDI-TOF(質量分析表面によって高められるレーザーの脱着またはイオン化経過時間を用いて)技術によって正常人と、肝臓繊維化患者の血清蛋白質図の変化を分析し、結果として肝臓繊維化患者の15.1kDと15.9kDこの2つの蛋白ピークが確実に減少または消失することが実証される、図5、図6参照。
【0016】
図5からF0級の肝臓繊維化患者がその他のレベルの肝臓繊維化患者と15.1kDと15.9kDの2つの蛋白ピークが明らかに異なることが分かる。
【0017】
図6は、40人の肝臓繊維化患者の15.1kDと15.9kDの2つの蛋白ピークの数値の統計分析であり、F0級の肝臓繊維化患者とその他のレベルの肝臓繊維化患者が15.1kDと15.9kDの2つの蛋白ピークが明らかに異なることが分かる。
【0018】
正常人と肝臓繊維化患者の血清蛋白図の分析以外に、本発明は正常なマウスの肝臓と肝臓繊維化マウスの肝臓の組織蛋白図を分析した。マウスの肝臓は、冷凍した切片をガラス片に固定し、質量分析用のエネルギー量吸収物質を噴射し、同時に組織原位に組織蛋白を抽出し、エネルギー量吸収物質と混合させ、MALDI-TOF分析を行い、同様に15.1kD(ヘモグロビンαchain)と15.9kD(ヘモグロビンβchain)の変化を固定観察する。その結果、同様に繊維化マウスの肝臓の15.1kDと15.9kDの2つの蛋白ピークが大幅に減少することが実証される、図7、図8参照。
【0019】
図7から、正常なマウスの肝臓と繊維化マウスの肝臓の分子量15197.2蛋白の発現が明らかに異なり、繊維化マウス肝臓が明らかに減少していることが分かる。
【0020】
図8から、正常なマウスの肝臓と繊維化マウスの肝臓の分子量15858.3蛋白の発現が明らかに異なり、繊維化マウス肝臓の方が、明らかに減少が大きいことが分かる。
【0021】
ヘモグロビンの減少は、肝臓繊維化が、確かに貧血現象が存在していることを説明している。肝臓標的糖質分子イメージ技術はイメージ空間分布および量化データを提供し、ガラクトースペプチドをイメージ医学用の金属に接触させ、静脈注射すれば、肝臓繊維化の程度を精確に識別でき、肝臓繊維化クラス分け診断と治療後の効果追跡の検査方法とすることができる。
【0022】
肝臓繊維化を早期発見し、適切に投薬し、肝臓繊維化が完全に復原するまで好転させることができ、肝臓標的糖質医学イメージ分子造影は、イメージ空間分布と定量データを提供でき、肝臓繊維化レベルの精確な識別のための検査方法を提供できる。
【0023】
造影剤方面において、本発明の実施例は、Tc-99m-SOCTA-galactopeptideを定量且つ肝臓繊維化の程度を識別する肝臓標的糖質イメージ分子造影剤として採用する。Galactopeptideと肝臓細胞は強力な結合力を備え、SOCTAの保存安定性は明らかにDTPAより優れている。従来使用する双官能基結合剤の多くは、DTPA anhydride (DTPA:diethylene-triamine-penta-acetic acid)を用い、この双官能基結合剤は弱アルカリ水溶液中でアミノ基と反応が速く、2時間内に反応が完成するが、空気に触れると不安定になり、潮解しやすく、保存が困難である。それに対してSOCTAの安定性は好ましく、凍晶のSOCTAは室温に1年放置しても依然としてアミノ基との結合に用いることができ、それとアミノ基の結合反応が比較的時間がかかるが、通常16時間であり、潮解し難く、空気に触れても安定であり、1つの薬場の原料の1つとし、長期保存でき、有利である。
【0024】
図4は、SOCTAの化学構造であり、SOCTAは末端のimidazole ester bondでガラクトースペプチドとアミノ結合し、SOCTAがN2S2構造を有するのでTc-99mを結合し、肝臓標的糖質医学イメージ分子造影剤となることができる。
【0025】
なお、本発明では好ましい実施例を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と領域を脱しない均等の範囲内で各種の変動や潤色を加えることができることは勿論である。前記の実施例の説明中、Tc-99m-SOCTA-galactopeptideにより説明しているが、本発明はこれに制限するものではなく、潮解し難く、N2S2構造を有し、末端がester bondであれば、いずれもガラクトースペプチドとアミノ基結合でき、Tc-99mを結合し、肝臓標的糖質医学イメージ分子造影剤となることができる。DTPA anhydrideは、潮解し易いが、Mn-DTPA-galactopeptideとTc-99m-DTPA-galactopeptideの調合が可能であるため、本発明を実施でき、肝臓繊維化クラス分けの肝臓標的糖質医学イメージ分子造影剤とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の肝臓繊維化レベルを臨床精確識別することに適用可能な方法のフロー説明図である。
【図2】図2は、本発明の肝臓標的糖質医学イメージ分子造影概念の説明図である。
【図3】本発明のTc-99m-SOCTA-galactopeptide調合フロー図である。
【図4】本発明のSOCTAの構造説明図である。
【図5】本発明のSELDI-TOF分析による血清蛋白質の化学式の説明図である。
【図6】本発明のSELDI-TOF分析による血清蛋白質の化学式の化学式の統計分析図である。
【図7】本発明の組織蛋白質図であり、15.1kDの蛋白発現量を示す図である。
【図8】本発明の組織蛋白質図であり、15.9kDの蛋白発現量を示す図である。
【図9】現在臨床肝臓繊維化組織病理切片クラス分けの結果図である。
【符号の説明】
【0027】
1 肝臓繊維化レベルの識別方法
10〜11 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝臓標的糖質医学イメージ分子造影法において、
(a)ガラクトースペプチドを含む医学イメージ造影剤を静脈注射し、
(b)特定時間内に医学イメージ器具で単位肝臓体積が発生する医学イメージ信号を測定する
ことからなる肝臓繊維化レベルを臨床的に識別する方法。
【請求項2】
前記医学イメージ造影剤がTc-99m-SOCTA-galactopeptideまたはTc-99m-DTPA-galactopeptideであり、単光子放射コンピュータ断層測定機器で単位肝臓体積が放出するγ放射量を測定する請求項1記載の肝臓繊維化レベルを臨床的に識別する方法。
【請求項3】
前記医学イメージ造影剤が磁性造影剤であり、核磁気共鳴機器で単位肝臓体積が発生する電磁信号を測定する請求項1記載の肝臓繊維化レベルを臨床的に識別する方法。
【請求項4】
前記特定時間の長さが、6時間以内である請求項1記載の肝臓繊維化レベルを臨床的に識別する方法。
【請求項5】
双官能基結合剤によってガラクトースペプチドを結合した後、医学イメージ用金属と結合させて医学イメージ造影剤とし、該造影剤が必要な双官能基結合剤が室温保存で潮解し難く、保存期間が1年以上に達する肝臓繊維化レベルの評価に適用する肝臓標的糖質医学イメージ分子造影剤。
【請求項6】
前記双官能基結合剤がN2S2構造を有、Tc-99mを結合し、その末端にester bondを有し、ガラクトースペプチドとアミノ結合した請求項5記載の肝臓繊維化レベルの評価に適用する肝臓標的糖質医学イメージ分子造影剤。
【請求項7】
前記双官能基結合剤がSOCTA(succinimidyl-3,6-diaza-5-oxo-3- [2-((triphenylmethyl)thio)ethyl]-8-[(triphenylmethyl)-thio]octanoate)である請求項5記載の肝臓繊維化レベルの評価に適用する肝臓標的糖質医学イメージ分子造影剤。
【請求項8】
前記造影剤のガラクトースペプチドが三鎖型のペプチドである請求項5記載の肝臓繊維化レベルの評価に適用する肝臓標的糖質医学イメージ分子造影剤。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−133803(P2009−133803A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317959(P2007−317959)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(599171866)行政院原子能委員會核能研究所 (37)
【Fターム(参考)】