説明

肥料の製造方法

【課題】簡単な設備と製造工程とにより短時間で肥料を製造でき、製造後の肥料が作物の成長を著しく促進させ、取り扱いも容易である肥料の製造方法を提供する。
【解決手段】魚の肉、骨、内蔵等からなる魚類廃棄物を適宜の燃焼手段で燃焼させて灰化させ、この灰化物を肥料として製造するようにした肥料の製造方法である。この肥料の製造方法は、魚類廃棄物に燃し木、紙類、油類等の燃焼促進物を混合して燃焼させ、燃焼後の残渣から魚類廃棄物と燃焼促進物とからなる灰化物と不可避残渣物とを取出し、これらを混合し、かつ攪拌して肥料を製造するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥料の製造方法に関し、特に、魚類の廃棄物から肥料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、魚類の廃棄物から作物の肥料を製造する方法として、魚類の廃棄物に発酵処理を施す方法が知られている。このように魚類から肥料を製造した場合、この肥料は、魚類が有する動物性の栄養分を含んでいるため、この栄養分が作物の成長を促進させることが知られている。
【0003】
この種の魚類を用いた肥料の製造方法として、例えば、特許文献1の有機質肥料の製造方法がある。同文献1の肥料の製造方法は、処理工程で得られる魚の全体又は一部、残滓、内臓を粉砕し、これらを魚の煮汁、スティックウォーターとともに消化槽で消化させ、更に、消化物を固液分離して限外濾過器に移送して濾過することにより肥料を得ようとするものである。この製造方法は、魚から得られる液体ソリューブル、くず肉、内臓などからも肥効成分を取出して有機質肥料を製造しようとするものである。
【0004】
また、特許文献2は、魚介廃棄物から肥料を製造する方法であり、魚の内臓やアラ等の魚介廃棄物を材料とするものである。同文献2の製造方法は、魚介廃棄物に嫌気性菌等の菌並びに配合材を加えて攪拌混合する工程と、混合物を水切りする工程と、水切りした混合物を醗酵槽内に入れて分解と水分の蒸発とを行なう工程と、乾燥させる工程とを経るものであり、これにより粉状又は粒状の肥料を成形しようとするものである。
【0005】
【特許文献1】特公平6−62352号公報
【特許文献2】特開平10−114589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の有機質肥料の製造方法は、魚を、全体又は一部や残滓、内臓部分からなる固形部分と、煮汁・スティックウォーターとからなる液状部分とに分離し、固形部分に処理を施した後に、この固形部分と液状部分とを混合する処理を必要としている。このため、作業が面倒であり、余計な手間や時間がかかっていた。
【0007】
一方、特許文献2の肥料製造方法も、複数の工程を経て肥料を成形しているため、製造工程が複雑になり、また、各工程を実施するための大規模な設備を必要としていた。更に、同製造方法は、製造時に魚介廃棄物を腐敗・発酵させて堆肥化させるため、時間がかかっていた。
【0008】
また、これらの製造方法によって得られる肥料は、体積が大きくなり重量も増加していた。そのため、肥料として施肥する場合に多大な労力を有するばかりか、運搬や保管も不便になっていた。また、これらの施肥後には、水を加えた後に腐敗することによって肥料としての効力を失ったり悪臭が漂ったりし、鳥獣等による被害に合うおそれもあった。更に、この種の有機肥料は遅効性であり、含有される養分が流出するまでにある程度の時間を要していた。そのため、肥料としての機能が十分に発揮されないことがあった。
【0009】
本発明は、上記した実情に鑑み、鋭意検討の結果開発に至ったものであり、その目的とするところは、簡単な設備と製造工程とにより短時間で肥料を製造でき、製造後の肥料は作物の成長を著しく促進させ、取り扱いも容易である肥料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、魚の肉、骨、内蔵等からなる魚類廃棄物を適宜の燃焼手段で燃焼させて灰化させ、この灰化物を肥料として製造するようにした肥料の製造方法である。
【0011】
請求項2に係る発明は、魚類廃棄物に燃し木、紙類、油類等の燃焼促進物を混合して燃焼させ、燃焼後の残渣から魚類廃棄物と燃焼促進物とからなる灰化物と不可避残渣物とを取出し、これらを混合し、かつ攪拌して肥料を製造するようにした肥料の製造方法である。
【0012】
請求項3に係る発明は、肥料に木酢液や竹酢液等の酸性液を混入した肥料の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によると、簡単な設備と製造工程とにより短時間で肥料を製造でき、製造後の肥料は、作物の成長を著しく促進させることができる肥料の製造方法である。また、製造後の肥料は、魚の含有する成分により作物の成長を著しく促進させ、しかも、体積が小さく極軽量であるため取り扱いも容易である。しかも、魚の廃棄部分を利用していることにより肥料を製造できるためゴミを減らすこともでき、エコロジーにも寄与できる。
【0014】
請求項2に係る発明によると、魚類廃棄物を燃焼促進物により灰化させることにより、肥料として有用なカルシウムやカリウム、マグネシウム等を生成することができ、これらを施肥することで作物の栽培に適した土壌に改良することができる。
【0015】
請求項3に係る発明によると、土壌のペーハー値を調整して作物の栽培に土壌にでき、栄養価が高く、また、糖度も高い野菜や果物等を栽培することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明における肥料の製造方法の実施形態を詳細に説明する。
先ず、本発明の肥料の製造方法において、肥料となる材料を述べる。肥料となる材料は、魚類廃棄物と燃焼促進物とからなっている。また、製造後の肥料には、酸性液が混入される。
魚類廃棄物は、魚の肉や、頭部や背骨等の骨、内臓、又は尾部などのひれ等による、いわゆる、魚のアラと呼ばれる部分からなっている。この魚類廃棄物には、廃棄物以外の部分、例えば、食用の肉の部分が含まれていてもよく、また、魚全体を肥料の材料としてもよい。
【0017】
一方、燃焼促進物は、例えば、燃し木、紙類、油類等からなっている。燃し木は、例えば、魚類廃棄物を効率良く燃焼させるために乾燥した落葉樹とすることがよい。また、紙類は、燃焼した時の火の回りをよくするために、ダンボールとすることが好ましく、油類は、紙類への火の回りをよくするために灯油とすることが好ましい。
【0018】
また、酸性液は、土壌改良剤として肥料に混入され、例えば、木酢液や竹酢液等からなっている。木酢液は、木炭を作るときの煙を冷却して得られる液体であり、また、竹酢液は、竹炭を焼くときに出る煙を冷却して得られる液体である。これらの木酢液や竹酢液は、例えば、pH2.5〜3.5程度とすることがよく、この場合、強酸性の特性を有している。
【0019】
肥料を燃焼する場合には、適宜の燃焼手段によって行なえばよいが、本実施形態においては、燃焼手段として焼却炉を用い、また、燃焼後の設備としてふるい機を使用する。焼却炉は、適宜のものを用いればよいが、魚類廃棄物や燃焼促進物が燃焼しやすくなるような容積を有し、また、通風性に優れたものがよい。更に、この焼却炉は、燃焼中のダイオキシンの発生を防ぐ機能を有していることが望ましい。また、ふるい機は、焼却後に肥料として用いる部分とそれ以外の部分とを選別可能なものを用いるようにする。
【0020】
続いて、本発明における肥料の製造方法を説明する。図1においては、本発明の肥料の製造方法の一例を示している。
先ず、肥料を燃焼させる前に、火力を強めるための燃し木を焼却炉内に組むようにする。このときの燃し木の組み方は、通常の火燃し時と同様に通風を考慮した適宜の状態とする。そして、この上に魚類廃棄物を設置し、更に、魚類廃棄物の周りや内側に初期の火の回りを良くするためにダンボールを適宜の状態に配置し、また、必要に応じて更に燃し木を設置する(燃焼促進物の設置)。
【0021】
この状態で、少量の灯油を染み込ませたダンボールに点火し、これを種火として焼却炉内に投入して魚類廃棄物を燃焼させる。魚を燃焼させると、蛋白質、脂質、炭水化物が燃えてこれらが灰化する。この灰には、リン酸カルシウムや、カリウム、マグネシウム等の各種のミネラル成分が含まれている。
【0022】
燃焼後の魚類廃棄物は、ふるい機に掛けて選別し、燃焼後の残渣から燃え残った骨と明らかな燃し木等とを取り除いて、魚類廃棄物と燃焼促進物とからなる灰化物と不可避残渣物とを取出す。更に、これらを混合し、かつ攪拌することにより、施肥用の肥料が製造される。この肥料は、雨などの水分に濡れないように適宜の容器等に収納した状態で保管することがよく、例えば、適宜の袋に入れて圧縮してコンパクトな状態で保管するようにすればよい。
【0023】
なお、本実施形態では、魚類廃棄物に燃焼促進物を加えたもの燃焼させたが、例えば、大型焼却炉等の設備を用いることにより魚類廃棄物のみを材料として肥料を製造することも可能である。
また、この肥料を施肥する際には、後述するようにこの肥料に対して必要に応じて酸性液を混入するようにする。
【0024】
次に、本発明の肥料の製造方法の上記実施形態における作用を説明する。
本発明の肥料の製造方法は、魚類廃棄物を廃棄部分ごとに分離することなくそのまま適宜の燃焼手段によって燃焼させて灰化させ、この灰化物を肥料として製造しているので、簡単な製造工程により短時間でこの肥料を製造することができる。また、小規模の設備により製造することができる。
【0025】
製造後の肥料は、水分が蒸発しているため体積が小さく、極軽量であるため施肥時の取り扱いが容易であり、少量の施肥によって作物を栽培できるため施肥時の作業時間の短縮化も可能であり、また、運搬や保管も容易である。また、施肥後には腐敗が防がれるため栽培促進の効力を持続でき、悪臭も抑えることができる。更に、鳥獣等による被害も抑えられる。
【0026】
更に、この肥料は、動物性の栄養分である、リン酸カルシウムやカリウム、マグネシウム等の各種ミネラル成分を含んだ灰であるため、これらのミネラル成分が作物に作用して成長を促進することができる。このとき、灰の特性によって栄養分が流出しやすくなり、即効性が発揮される。更には、土壌質の違いなどによって必要に応じて食物繊維等を供給して保湿性を高めたり、繰り返しの施肥を実施したり、他の養分(例えば、植繊械で処理した竹等)を併用して加えるようにしてもよく、この場合、より一層の成長促進を図ることが可能である。
【0027】
このとき、作物の品質を向上させる肥料として一般的に用いられていた人糞・犬糞等の肥やしの問題である、1.良果を継続的に収穫することが難しい(肥料切れを起こす)こと、2.膨大な追肥を必要とし、多大な労力を必要とすること、3.追肥の繰り返しによる残留肥料により土壌のバランスが著しく崩れること、4.連作したときに著しく品質が低下すること、なども解決できる。すなわち、本発明の肥料の製造方法によって製造した肥料は、1.肥料の使用量を抑えつつ少ない施肥量で良果を継続的に収穫できる、2.追肥の必要が少ない、3.残留肥料が抑えられ、土壌バランスを保つことができる、4.作物の連作が可能であり、その作物を高品質に栽培できる、等の利点がある。
【0028】
更には、施肥時には、肥料に木酢液や竹酢液等からなる酸性液を混入することもできる。この場合、強酸性の特性である酸性液によって、肥料がアルカリ性であることによる土壌のアルカリ性への傾きを抑えて、土壌を弱酸性から中性に改良することができる。これにより、土中に存在する微生物が増殖して活発化し、作物の芽が出易くなったり、根の張りが良くなったりするなどの作物の成長が促進される。
【実施例】
【0029】
次に、本発明の肥料の製造方法により肥料を製造する場合の実施例を以下に示す。
本実施例においては、魚類廃棄物としてマグロの魚のアラ(頭部・尾部及び骨周辺)、燃焼促進物として乾燥した落葉樹からなる燃し木、ダンボール、灯油を表1の分量によって使用した。また、これらを燃焼させるための焼却炉として、「モキ製作所 たき火どんどん焼却炉 MP200L」を使用した。
【0030】
【表1】

【0031】
以上の条件下において、魚類廃棄物を燃焼させて肥料を製造した。このとき、魚のアラは含有水分が多く燃え難いため、2回に分けて燃焼を実施して灰化させた。この燃焼作業は、およそ2時間後に完了した。
【0032】
次いで、燃焼後の物質をふるい機に掛け、明確に魚のアラ(魚類廃棄物)が灰化したと判断できるもの、灰・ダンボール・燃し木の灰が混ざっているもの、明確に燃し木が炭化したと判断できるもの、明確に魚のアラの骨と判断できるものとに分別した。この燃焼後の残存物の重量を表2に示す。このうち、明確に魚のアラが灰化したと判断できるものと灰・ダンボール・燃し木の灰が混ざっているものとを取出し、これらを混合・攪拌して910gの肥料を得た。この際、燃焼具合や作業者の巧拙により、肥料の中に一部、灰化せずに炭化状の物質が混入していたが、この炭化状物質は、肥料全体のうちの2割(182g)以下の微少量であったため、粉砕によって粒状化した。その後、この肥料を密封性の高いピニール袋等に詰め込み、ドラム缶からなる容器に収納して保管可能に設けた。
【0033】
【表2】

【0034】
続いて、上記の実施例によって得られた肥料を施肥するときの作業例と、施肥後の作物の成長状況とを述べる。
肥料の施肥時期は、通常の化学肥料等を施肥する場合に準じた。また、施肥量は、栽培する作物によって変動はするが、おおよそ、一反(約991.7m)当り100〜150kg程度とした。更に、より品質を向上させるために450kg程度まで施肥量を増加させて施肥した場合もあった。また、それまで追肥として液肥を用いていた栽培期間の短い一般の栽培方法に対して、上記実施例によって得られた肥料を施肥して散水を実施した。
【0035】
また、何れの場合にも、栽培中には土壌のペーハー値を適宜測定し、必要に応じて木酢液や竹酢液等の酸性液を土壌に混入した。更に、水はけをよくするために本発明の製造方法によって得られた肥料以外の適宜の肥料を施肥して肥料のバランスを整えるようにした。以上の条件によって作物を栽培し、これらの作物は、以下のような結果が得られた。
【0036】
小蕪、大根、白菜、レタスは、旨みやコク、甘みが増し、瑞々しさ(含有水分)が多く、食味・口当たりが共に向上してジューシーな食感が得られた。更に、小蕪に対して一反当り450kg程度の施肥を実施した場合には、より甘み・旨みが強くなり、味に深みが出て果物のような瑞々しさが得られた。
また、これらの栽培を繰り返し、優良な種を再び種まきすることにより、2、3年経過後に一層の品質向上が図られた。
落合芋(ジャガイモ)は、旨みやコクが強くなり味が向上した。また、ジャガイモは、本来小型の芋であるが、灰化肥料を用いることで大型になった。
サトイモは、特有の臭みが抜け、上品かつ深みのある味わいになった。
桃太郎トマトは、樹勢が旺盛になると共に、旨みやコクが向上し、糖度も上昇した。
また、キュウリやナス、トマト等は、連作が実施可能になり品質も向上した。
【0037】
一方、果樹については、スモモ、桃、ブドウ、キウイ、リンゴは、渋味等の雑味が生じる成分が少なくなって旨みやコクが強くなり、糖度も上昇した。
ここで、一例として、桃の糖度の実測値を以下の表に示す。この表のように、サンプリングした全ての桃の全ての箇所が高糖度となった。
【0038】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明における肥料の製造方法の一例を示したフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚の肉、骨、内蔵等からなる魚類廃棄物を適宜の燃焼手段で燃焼させて灰化させ、この灰化物を肥料として製造するようにしたことを特徴とする肥料の製造方法。
【請求項2】
前記魚類廃棄物に燃し木、紙類、油類等の燃焼促進物を混合して燃焼させ、燃焼後の残渣から魚類廃棄物と燃焼促進物とからなる灰化物と不可避残渣物とを取出し、これらを混合し、かつ攪拌して肥料を製造するようにした請求項1に記載の肥料の製造方法。
【請求項3】
前記肥料に木酢液や竹酢液等の酸性液を混入した請求項1又は2に記載の肥料の製造方法。

【図1】
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