説明

肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤

【課題】メタボリックシンドロームの状態に対して、運動と併用することによって、メタボリックシンドロームの状態の十分な改善又は予防効果が、比較的短期間に得られる肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤を提供する。
【解決手段】肥満における内臓脂肪蓄積を有する人が、該内臓脂肪を減少させるための運動と共に服用することを特徴する、タウリンを有効成分として含有する、肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタボリックシンドロームの状態に対して、運動と併用することにより、安全で十分な改善又は予防効果を発揮する、タウリンを有効成分として含有する、肥満における内臓脂肪蓄積、これに伴う高血糖、脂質代謝異常の改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
日本人の食生活が動物性脂肪を多く含む欧米型に移行するに伴い、日常における摂取エネルギー量が増加する一方、パソコン等の普及によるデスクワークの増大、エレベータやエスカレータなどの普及に伴い、日常生活における運動量は不足し、消費エネルギー量が低下してきている。
【0003】
このようなエネルギー収支がプラスの状態は、肥満を引き起こし、内臓脂肪を蓄積させ、高血糖などの耐糖能異常、脂質代謝異常、高血圧などの様々な症状を招来する原因となっている(非特許文献1参照)。
【0004】
そして、肥満における内臓脂肪蓄積を伴い、高血糖、脂質代謝異常(高中性脂肪かつ/又は低HDL−コレステロール)及び高血圧の3つのうち、2つ以上が認められる状態を、特にメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)と称し、1つが認められる状態をメタボリックシンドローム予備群と称している(非特許文献2及び3参照)。
【0005】
このメタボリックシンドロームの状態が続くと、肥満症、糖尿病、高脂血症、高血圧症といった生活習慣病を引き起こし、動脈硬化を進展させ、これらの重症化若しくは併発によって心疾患(心筋梗塞、狭心症)、脳血管疾患(脳出血、脳梗塞)へと進展し、さらには糖尿病による腎機能障害や網膜症による失明の危険性を高めることになる。
【0006】
従って、メタボリックシンドロームの状態の改善又は状態悪化の予防をすることが、極めて重要となる。
【0007】
メタボリックシンドロームの診断基準(2005年4月策定)によると、肥満とはウエスト周囲径において男性が85cm以上、女性が90cm以上であるが、これは内臓脂肪面積において100cm2以上の内臓脂肪蓄積に相当する。また、特定検診検査では、BMI(ボディ・マス・インデックス:BMI=体重(kg)/(身長(m)2)の基準により判定することもあり、その値は25以上とされている。
【0008】
高血糖では、空腹時血糖値が110mg/dL以上を示し、高中性脂肪では150mg/dL以上であり、低HDL−コレステロールでは40mg/dL未満を示す。また、高血圧とは、収縮期血圧130mmHg以上かつ/又は拡張期血圧85mmHg以上を示す。
【0009】
また、動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2007年版)によると、脂質代謝異常では、HDL−コレステロールに対するLDL−コレステロールの比(LDL−コレステロール/HDL−コレステロール比:動脈硬化指数)は、2.5以上を示す(非特許文献10参照)。
【0010】
メタボリックシンドロームの状態を改善若しくは予防するための方法としては、生活習慣の改善が有効であり、運動による身体活動量の増加(非特許文献4参照)と食事リズムの改善や摂取カロリーの減少(非特許文献5参照)などが効果的である。特に運動は、エネルギー摂取量と消費量のバランスが改善されることによる減量効果があり、インスリン抵抗性を改善する効果も期待でき、体力の維持・増強も図れることから極めて効果的である(非特許文献6参照)。絶食や極端な食事療法だけで減量しても、体脂肪は減少せず除脂肪体重が減少し、インスリン抵抗性は改善しないとされている。
【0011】
しかしながら、「運動をすること自体が苦痛である」、「運動をするための十分な時間が取れない」などの理由により、特定保健指導における運動指導や医師による指導などによっても、メタボリックシンドローム該当者又はその予備群の人が十分な改善効果を上げうるような運動を継続的に実施することは難しく、「(運動の必要性は十分に)認識しているが、(継続することが)できない」という状況に陥りやすい。
【0012】
さらに、性急な運動による改善効果を求めるあまり負荷をかけすぎると、けがや心血管イベントに遭遇するリスクを高める可能性もある。特に、肥満であれば運動時の骨や関節への加重負荷が大きく、運動を始めた途端に膝などに関節障害を起こすなどの問題もある。既に整形外科的疾患や明らかな末梢及び自律神経障害、進行した細小血管障害がある場合などは、肥満における内臓脂肪を減少させるための運動を実施すること自体も困難である。このように、メタボリックシンドロームの状態に対して、運動を長期に亘って継続することは難しいというのが実情である。
【0013】
ここで、タウリン(2−アミノエタンスルホン酸)は、魚介類に多く含まれる含硫アミノ酸で、ヒトでは心筋、筋肉、脾臓、脳、肺、骨髄などに存在しており、医療用医薬品、OTC医薬品、特別用途食品、その他の食品に広く使用されている。
【0014】
動物レベルの研究において、タウリンを投与することにより高中性脂肪を改善し(非特許文献7参照)、高血糖や肥満を軽減することが確認されている(特許文献1参照)。また、肥満の人においても、7週間のタウリン投与により、体重減少及び中性脂肪の低下が確認されている(非特許文献8参照)。
【0015】
しかしながら、高血糖などの耐糖能異常、脂質代謝異常、高血圧などの様々な症状を引き起こす原因となる内臓脂肪蓄積を、タウリンを投与することによって減少させたとする報告はないし、上述したように食物からのタウリンの摂取は比較的容易であるにも拘わらず、様々なタイプのメタボリックシンドローム状態が蔓延していることを考えると、タウリンの摂取(投与)のみでは、様々なタイプのメタボリックシンドロームの症状に対して十分な改善または予防効果が得られていないと解さざるを得ない。
【0016】
さらに、メタボリックシンドロームの状態に対して、運動のみでは十分な改善効果が認められない場合に、タウリンの経口投与を併用することによって、内臓脂肪蓄積に対して十分な改善効果が短期間に得られたことを示す報告もない。
【0017】
また、タウリンと運動とを組み合わせて、体重及び体脂肪に及ぼす影響を検討した報告があるが、これらは正常動物の体重をさらに減少させる結果であり、内臓脂肪蓄積に対する改善作用は確認されていない(非特許文献9参照)。すなわち、高脂肪食の摂取によって内臓脂肪が蓄積し、インスリン抵抗性が増悪した状態での肥満や、それに伴う高血糖及び高中性脂肪などのメタボリックシンドロームの状態に対しての改善効果は不明であり、その示唆もなされていない。
【0018】
加えて、アミノ酸を含有する組成物の摂取によりメタボリックシンドロームの状態などに対しての改善剤が提案されているが、これらアミノ酸のみでは十分な効果を得ることが難しく、運動とアミノ酸を組み合わせることにより肥満における内臓脂肪蓄積を改善させたことを示す報告もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2000−119179号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】門脇 孝ら編集「メタボリックシンドロームリスク管理のための健診・保健指導ガイドライン」41−50頁、南山堂、2008年3月31日刊行
【非特許文献2】下村 伊一郎ら編「メタボリックシンドローム病態の分子生物学」3−12頁、南山堂、2005年5月18日刊行
【非特許文献3】門脇 孝ら編集「メタボリックシンドロームリスク管理のための健診・保健指導ガイドライン」29−35頁、南山堂、2008年3月31日刊行
【非特許文献4】門脇 孝ら編集「メタボリックシンドロームリスク管理のための健診・保健指導ガイドライン」136−148頁、南山堂、2008年3月31日刊行
【非特許文献5】門脇 孝ら編集「メタボリックシンドロームリスク管理のための健診・保健指導ガイドライン」149−158頁、南山堂、2008年3月31日刊行
【非特許文献6】日本糖尿病学会編集「糖尿病治療ガイド2008−2009」41−43頁、文光堂、2008年2月11日刊行
【非特許文献7】Nakaya.YらAm.J.Clin.Nutr、71 (1):54-58(2000)
【非特許文献8】Zhang.MらAmino Acids、26 (3):267-271(2004)
【非特許文献9】Manabe.SらJ.Nutr.Sci.Vitaminol、49 (6):375-380(2003)
【非特許文献10】日本動脈硬化学会編集「動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2007年版)」、協和企画、2007年4月25日刊行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、メタボリックシンドロームの状態に対して、運動と併用することによって、メタボリックシンドロームの状態の十分な改善又は予防効果が、比較的短期間に得られる肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、肥満における内臓脂肪蓄積に対して、十分な改善効果が認められる量の運動を実施できない場合においても、タウリンを有効成分として含有する経口用組成物を投与することによって、肥満における内臓脂肪蓄積が改善し、メタボリックシンドローム状態の顕著な改善又は予防効果を奏することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0023】
かかる知見により得られた本発明の態様は、次の通りである。
(1)肥満における内臓脂肪蓄積を有する人が、該内臓脂肪を減少させるための運動と共に服用することを特徴する、タウリンを有効成分として含有する、肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤。
(2)肥満における内臓脂肪蓄積、これに伴う高血糖又は脂質代謝異常を有する人を対象とする(1)に記載のタウリンを有効成分として含有する、肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤。
(3)肥満における内臓脂肪蓄積、これに伴う高血糖及び脂質代謝異常を有する人を対象とする(1)に記載のタウリンを有効成分として含有する、肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤。
(4)肥満における内臓脂肪蓄積、これに伴う高LDL−コレステロール/HDL−コレステロール比が2.5以上の人を対象とする(1)に記載のタウリンを有効成分として含有する、肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤。
(5)メタボリックシンドローム状態の改善又は予防剤である(1)に記載のタウリンを有効成分として含有する、肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤。
(6)メタボリックシンドローム予備群の状態の改善剤である(1)に記載のタウリンを有効成分として含有する、肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤。
(7)内臓脂肪を減少させるための運動が、4.5〜10.5エクササイズの運動である、(1)〜(6)の何れかに記載のタウリンを有効成分として含有する、肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤。
(8)内臓脂肪を減少させるための運動が、3〜7メッツの運動を1日に30分以上かつ1週間に3日以上である(1)〜(6)の何れかに記載のタウリンを有効成分として含有する、肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤。
(9)タウリンの有効量が1日当たり3000〜6000mgである(1)〜(8)の何れかに記載のタウリンを有効成分として含有する、肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、メタボリックシンドローム又はその予備群の状態に対して、十分な改善又は予防効果が認められる量の肥満における内臓脂肪を減少させるための運動を実施・継続できない場合においても、実施・継続できる強度及び量の内臓脂肪を減少させるための運動とタウリンを有効成分として含有する経口用組成物の投与によって、肥満における内臓脂肪蓄積が有意に改善し、これに伴う高血糖、脂質代謝異常が顕著に改善されることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】肥満モデルマウスの体重増加量における運動負荷とタウリン投与による併用効果を示すグラフである(●:肥満群、■:肥満運動群、▲:肥満タウリン群、◇:肥満タウリン運動群;平均値及び標準誤差、例数8匹/群;*P<0.05、**P<0.01対 肥満群、#P<0.05、##P<0.01対 肥満運動群、$$P<0.01対 肥満タウリン群(Tukey型多重比較検定))。
【図2】肥満モデルマウスの体重あたりの肝臓重量における運動負荷とタウリン投与による併用効果を示すグラフである(平均値及び標準誤差、例数8匹/群;*P<0.05、**P<0.01対 肥満群、$$P<0.01対 肥満タウリン群(Tukey型多重比較検定))。
【図3】肥満モデルマウスの体重あたりの皮下脂肪量における運動負荷とタウリン投与による併用効果を示すグラフである(平均値及び標準誤差、例数8匹/群;**P<0.01対 肥満群(Tukey型多重比較検定))。
【図4】肥満モデルマウスの体重あたりの内臓脂肪量における運動負荷とタウリン投与による併用効果を示すグラフである(平均値及び標準誤差、例数8匹/群;**P<0.01対 肥満群、#P<0.05対 肥満運動群、$$P<0.01対 肥満タウリン群(Tukey型多重比較検定))。
【図5】肥満モデルマウスの血清血糖値における運動負荷とタウリン投与による併用効果を示すグラフである(平均値及び標準誤差、例数8匹/群;*P<0.05、**P<0.01対 肥満群、$$P<0.01対 肥満タウリン群(Tukey型多重比較検定))。
【図6】肥満モデルマウスの血清中性脂肪値における運動負荷とタウリン投与による併用効果を示すグラフである(平均値及び標準誤差、例数8匹/群;*P<0.05、**P<0.01対 肥満群、$$P<0.01対 肥満タウリン群(Tukey型多重比較検定))。
【図7】肥満モデルマウスの体重増加量3週目における運動負荷とタウリン投与による併用効果を示すグラフである(■:媒体 、□:タウリン;平均値及び標準誤差、例数7〜8匹/群;*P<0.05、**P<0.01対 肥満群、(#)P<0.1、#P<0.05対 対照とするそれぞれの肥満運動群、$P<0.05、$$P<0.01対 肥満タウリン群(Studentのt検定))。
【図8】肥満モデルマウスの体重増加量6週目における運動負荷とタウリン投与による併用効果を示すグラフである(■:媒体 、□:タウリン;平均値及び標準誤差、例数7〜8匹/群;(*)P<0.1、*P<0.05対 肥満群、$P<0.05、$$P<0.01対 肥満タウリン群(Studentのt検定))。
【図9】肥満モデルマウスの内臓脂肪量における運動負荷とタウリン投与による併用効果を示すグラフである(■:媒体 、□:タウリン;平均値及び標準誤差、例数7〜8匹/群;(*)P<0.1対 肥満群(Studentのt検定))。
【図10】肥満モデルマウスの血清LDL−C(コレステロール)/HDL−C(コレステロール)比(動脈硬化指標)おける運動負荷とタウリン投与による影響を示すグラフである(■:媒体 、□:タウリン;平均値及び標準誤差、例数7〜8匹/群;(*)P<0.1、**P<0.01対 肥満群、($)P<0.1、$$P<0.01対 肥満タウリン群(Studentのt検定))。
【発明を実施するための形態】
【0026】
「肥満における内臓脂肪蓄積」とは、前述したように、メタボリックシンドロームの診断基準(2005年4月策定)による内臓脂肪面積において100cm2以上の場合であり、簡便には、ウエスト周囲径が、男性において85cm以上、女性において90cm以上であることが目安となる。
【0027】
そして、肥満における内臓脂肪蓄積を伴い、高血糖、脂質代謝異常(高中性脂肪かつ/又は低HDL−コレステロール)及び高血圧の3つのうち、2つ以上が認められる状態をメタボリックシンドロームと称し、肥満における内臓脂肪蓄積を伴い、高血糖、脂質代謝異常(高中性脂肪かつ/又は低HDL−コレステロール)及び高血圧のうちの1つが認められる状態をメタボリックシンドローム予備群と称している。
【0028】
本発明における「内臓脂肪を減少させるための運動」とは、メタボリックシンドローム該当者及びその予備群の人が肥満における内臓脂肪を減少させるため運動、又は内臓脂肪蓄積に伴う高血糖、脂質代謝異常(高中性脂肪かつ/又は低HDL−コレステロール)及び高血圧を改善または予防するための運動である。
【0029】
そして、運動の実施時に遭遇する整形外科的障害や心血管イベント発生などの問題を引き起こし難い運動であり、中強度(3メッツ)以上かつ「ややきつい」と感じる強度以下の運動であり、多くのメタボリックシンドローム該当者が継続して実施しやすい運動である。
【0030】
本発明における「運動」とは身体活動を示し、計画的・意図的に実施する運動、労働、家事、通勤・通学、趣味などの日常の生活活動を含む。
【0031】
「運動」の強さと量を表す単位としては、運動所要量・運動指針の策定検討会が平成18年7月に示した「健康づくりのための運動指針2006」によると、強さについては「メッツ」を用い、量については「エクササイズ(メッツ・時)」が用いられている。
【0032】
「メッツ」とは、安静時の何倍に相当するかで表す単位で、座って安静にしている状態が1メッツ、普通の歩行が3メッツに相当し、3メッツの強度を中強度とする。
【0033】
「エクササイズ」とは、身体活動の強度(メッツ)に活動時間(時)をかけたものであり、より強い強度の身体活動ほど短い時間で1エクササイズとなる。
【0034】
ここで、3メッツの「運動」としては、50ワットでの自転車エルゴメータ、ボーリング、バレーボールなどが挙げられる。
【0035】
4メッツの「運動」としては、速歩(ウォーキング)、水中運動、卓球などが挙げられる。
【0036】
5メッツの「運動」としては、ソフトボール、野球などが挙げられる。
【0037】
6メッツの「運動」としては、ウエイトトレーニング、美容体操、軽いジョギング(ジョギングと歩行の組み合わせ)、ゆっくりしたスイミング、バスケットボールなどが挙げられる。
【0038】
7メッツの「運動」としては、ジョギング、サッカー、テニス、スケートなどが挙げられる。
【0039】
8メッツ「運動」としては、ランニング、サイクリングなどが挙げられる。
【0040】
これらは、目安であり、継続して実施しやすい運動を選択することが望ましく、どのような運動を採択するかは、医師等の専門家と相談して、適宜に設定することができる。
【0041】
一般的に、健康な人がメタボリックシンドロームの状態を予防するための運動量としては、週に身体活動量として23エクササイズが必要であり、身体活動における運動量として4エクササイズが必要であるが、メタボリックシンドローム該当者及びその予備群の人が肥満における内臓脂肪を減少させるためには運動量を増やしてエネルギー収支をマイナスにする必要があり、週に身体活動における運動量として10エクササイズ程度か、それ以上の運動が必要である(非特許文献1参照)。これは、4メッツの速歩を1回30分間で週5回(10エクササイズ)、又は8メッツのランニングを1回30分間で週3回(12エクササイズ)実施することに相当する。
【0042】
因みに、食事摂取量を変えずに週10エクササイズ程度の運動量を増加させた場合、体重80kgの人がおよそ1〜2%の内臓脂肪を減少させるのに、3カ月間の継続的な運動が必要であると言われている。
【0043】
「内臓脂肪を減少させるための運動」の時間は、1日当たりの総実施時間として、60分間以上が好ましく、少なくとも30分間は必要であり、その上、1回当たり10分間が必要である。
【0044】
「内臓脂肪を減少させるための運動」の頻度としては、毎日の実施が好ましいが、5日/週であれば良好であり、少なくとも3日/週は必要である。
【0045】
「内臓脂肪を減少させるための運動」における強度は、3メッツ以上であり、多くのメタボリックシンドローム該当者が「ややきつい」と感じる強度以下であり、けがや心血管イベントに遭遇するリスクが少ない強度であり、上述の時間、頻度での運動を実施・継続できる強度であるという観点からは、3メッツ〜7メッツであり、好ましは3.3〜6.3メッツである。
【0046】
「内臓脂肪を減少させるための運動」の量は、4.5エクササイズ以上であり、上述の時間、頻度、強度より、多くのメタボリックシンドローム該当者が実施・継続しやすい量であるという観点からは、4.5〜10.5エクササイズであり、好ましくは5〜9.5エクササイズである。
【0047】
例えば、4.5エクササイズとは、[強度3メッツの運動]×[30分間/日]×[3回/週]に相当し、10.5エクササイズとは、[強度7メッツの運動]×[30分間/日]×[3回/週]に相当する。
【0048】
同様に、5エクササイズとは、[強度3.3メッツの運動]×[30分間/日]×[3回/週]に相当し、9.5エクササイズとは、[強度6.3メッツの運動]×[30分間/日]×[3回/週]に相当する。
【0049】
なお、運動だけでは十分な肥満における内臓脂肪蓄積の改善効果が認められない人とは、メタボリックシンドローム該当者又はその予備群の人で、内臓脂肪を減少させるための運動を実施しても、肥満における内臓脂肪蓄積、これに伴う高血糖、脂質代謝異常(高中性脂肪かつ/又は低HDL−コレステロール)及び高血圧の改善が認められない人を指し、運動だけでは十分な肥満における内臓脂肪蓄積の予防効果が認められない人とは、メタボリックシンドローム該当者又はその予備群の人で、内臓脂肪を減少させるための運動を実施しても、肥満における内臓脂肪蓄積、これに伴う高血糖、脂質代謝異常(高中性脂肪かつ/又は低HDL−コレステロール)及び高血圧が増悪又は併発する人を指す。
【0050】
本発明の肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤は、タウリンを有効成分として含有する他、内臓脂肪を減少させるための運動と併用することによってはじめて肥満における内臓脂肪蓄積を改善させることができ、その結果、メタボリックシンドローム状態を有効に改善又は予防し、あるいは、メタボリックシンドローム予備群の状態を有効に改善することができる。
【0051】
「メタボリックシンドローム状態の改善」とは、メタボリックシンドローム状態を軽減させたり、それによって、メタボリックシンドロームの状態が糖尿病等の生活習慣病へ移行するリスクを低減させたり、さらには、メタボリックシンドローム予備群や健康な人の状態にまで回復させることをいう。
【0052】
「メタボリックシンドローム状態の予防」とは、メタボリックシンドローム予備群の状態がメタボリックシンドローム状態に移行することを防止することをいう。
【0053】
「メタボリックシンドローム予備群の状態の改善」とは、メタボリックシンドローム予備群の状態を軽減させて、メタボリックシンドローム状態への移行を未然に防止し、さらには、健康な人の状態にまで回復させることをいう。
【0054】
「タウリン」としては、化学合成品のみでなく、魚の血合い部分、牡蠣や蜆などの貝類、イカ、タコなどの魚介類から抽出したタウリンを用いることができる。
【0055】
タウリンの投与量は、年齢、性別、体重などを考慮して適宜増減できるが、通常、肥満における内臓脂肪を減少させるための運動との併用によって、肥満における内臓脂肪蓄積を改善させ、メタボリックシンドローム状態を有効に改善又は予防するという観点からは、成人で1日あたり、1000mg〜8000mgであり、3000mg〜6000mgが好ましく、3000mg〜4000mgがより好ましい。1日量のタウリンを1日1回又は数回に分けて経口投与することができる。
【0056】
本発明の「肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤」は、タウリンを配合した経口用組成物として提供することができる。例えば、タウリンの他、本発明の効果を損なわない範囲で、ビタミン、タウリン以外のアミノ酸、ミネラル、生薬及びそのエキス等を配合することができる。そして、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤などを配合し、さらに必要に応じてpH調整剤、清涼化剤、懸濁化剤、消泡剤、粘稠剤、溶解補助剤、界面活性剤、香料などを配合して、常法により、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、ドライシロップ剤などの経口用固形製剤又はドリンク剤などの内服液剤・飲料として提供することができる。
【0057】
本発明の「肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤」は、通常、効能・効果を標榜できる医薬品、医薬部外品として提供され、例えば、「内臓脂肪の低減」、「メタボリックシンドロームの状態・症状の軽減・緩和」、「血清高LDLコレステロール/HDLコレステロール比の改善」などの表記を付して提供することも可能である。
【0058】
さらには、特定保健用食品(健康増進法(平成14年法律第103号)第26条第1項の許可又は第29条第1項の承認を受け、「食生活において特定の保健の目的で摂取する者に対し、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をする食品」)として、例えば、「肥満が気になる方に」、「内臓脂肪が気になる方に」、「血糖値が気になる方に」、「中性脂肪が高めの方に」、「脂質代謝異常が気になる方に」、「脂肪を消費しやすくする」、「血清LDLコレステロール/HDLコレステロール比が気になる方に」などの表記を付して提供することも可能である。
【実施例】
【0059】
以下に試験例を挙げ、本発明について具体的に説明する。
【0060】
試験例1 マウスを用いた肥満における内臓脂肪蓄積、これに伴う高血糖及び脂質代謝異常に対する運動負荷、タウリン投与並びに併用による改善作用の評価(ランニングホイールチャンバーによる自発運動とタウリンとの併用)
試験には、メタボリックシンドロームあるいは生活習慣病における肥満2型糖尿病モデルとして汎用されているKK−Ay/Ta(試験開始時6週齢、32匹)を用いた。
最初に、マウスの平均体重の差が小さくなるように2群(16匹/群)に分け、標準飼料(CRF−1、オリエンタル酵母工業株式会社)で飼育した。
1群のマウス(16匹)は、ランニングホイールチャンバー(周囲約50cm)を取り付けた特殊ケージで飼育し、自発的な運動を継続的に負荷できるよう、装置に順化させた。もう1群のマウス(16匹)は通常の飼育ケージで飼育した。
1週間の順化後、マウスの平均体重の差が小さくなるよう、表1に示す群構成に従い4群に分けた。4群の平均体重に有意な差は認められなかった。
【0061】
【表1】

【0062】
4群に分けた後、市販されている高脂肪飼料(HFD−60、オリエンタル酵母工業株式会社)を自由に摂取させ、6週間負荷した。
肥満タウリン群及び肥満タウリン運動群へのタウリン投与は、高脂肪飼料のセルロース(媒体)をタウリンに変更したタウリン含有高脂肪飼料(タウリン含有量:5w/w%、オリエンタル酵母工業株式会社)を摂食させることにより、6週間行った。
高脂肪飼料負荷及びタウリン投与の期間中における、体重、飼料摂食量、ランニングホイールチャンバー回転数は、毎週測定した。
さらに、6週間の自発運動の翌日において、約4時間の絶食後、イソフルラン麻酔下で後大静脈から全採血により安楽死させた。その後、血清を得たのち、内臓脂肪(腹部脂肪:腎臓周囲及び腸管膜周囲)、皮下脂肪(鼠径部及び肩甲骨付近)並びに肝臓を採取し、採取部位ごとに重量を測定し、体重あたりの重量を算出した。得られた血清を用いて、血糖及び中性脂肪をドライケム3030(富士メディカルシステム株式会社)にて測定した。
【0063】
(1)併用効果1:肥満モデルマウスの体重増加量に及ぼす運動負荷、タウリン投与並びに併用による効果
肥満モデルマウスの体重増加量に及ぼす運動負荷、タウリン投与及び併用による効果を図1に示した。
図1より、高脂肪飼料負荷後からの肥満群の体重増加量は、試験期間を通じて著しく増加した。肥満運動群の体重増加量は、肥満群と比較して緩やかに減少し、試験開始2、4及び5週目に有意な差が認められた。肥満タウリン群の体重増加量も肥満群と比較して減少したが、有意な差ではなかった。肥満タウリン運動群の体重増加量は肥満群と比較して著しく少なく、肥満群との有意差は1週目より認められた。また、肥満タウリン運動群の体重増加量は肥満運動群と比較しても1週目より有意に減少していた。
各群における体重あたりの平均餌消費重量には、有意差が認められなかった。
これらの結果より、肥満に対して運動による十分な改善効果が認められない場合に、タウリンの経口投与を併用することにより、十分な改善効果が短期間で得られることを確認した。
【0064】
(2)併用効果2:肥満モデルマウスの体重あたりの肝臓重量、内臓脂肪量及び皮下脂肪量に及ぼす運動負荷、タウリン投与並びに併用による効果
肥満モデルマウスの体重あたりの肝臓重量、内臓脂肪量及び皮下脂肪量に及ぼす効果について図2〜図4に示した。
図2〜図4より、肥満群の体重あたりの肝臓重量、内臓脂肪量及び皮下脂肪量は、 C57BL/6J又はKK−Ay/Taマウスの既報の数値と比較して高値であり、内臓脂肪蓄積モデルであることを確認した。
肥満運動群の肝臓重量及び皮下脂肪量は肥満群と比較して有意に減少した。しかし、内臓脂肪量の減少は有意でなかった。これに対し、肥満タウリン運動群の肝臓重量、皮下脂肪量及び内臓脂肪量は有意に減少し、特に、内臓脂肪量は肥満運動群よりも有意に少なかった。
これらの結果より、肥満における内臓脂肪蓄積に対して運動による十分な改善効果が認められない場合に、タウリンの経口投与を併用することにより、十分な改善効果が得られることを確認した。
【0065】
(3)併用効果3:肥満モデルマウスの高血糖及び高中性脂肪に及ぼす運動負荷、タウリン投与並びに併用による効果
肥満モデルマウスの血清血糖値及び血清中性脂肪値に及ぼす効果について図5及び図6に示した。
図5及び図6より、肥満群の血糖値及び中性脂肪値は、C57BL/6J又はKK−Ay/Taマウスの数値と比較して高値であり、メタボリックシンドロームモデルであることを確認できた。
肥満運動群の血糖値及び中性脂肪値は肥満群と比較して低値であった。肥満タウリン運動群の血糖値及び中性脂肪値は著しく減少し、肥満運動群と比較しても少なかった。
これらの結果より、高血糖及び高中性脂肪に対して運動による十分な改善効果が認められない場合に、タウリンの経口投与と併用することにより、十分な改善効果を得ることができた。
以上より、肥満における内臓脂肪蓄積に対して運動によって十分な改善効果が認められない場合においても、運動に加えてタウリンを経口投与することにより、十分な改善効果を短期間で得ることができた。
【0066】
試験例2 マウスを用いた肥満における内臓脂肪蓄積、これに伴う脂質代謝異常に対する運動負荷、タウリン投与並びに併用による改善作用の評価(トレッドミル装置による一定走行とタウリンとの併用)
試験には、KK−Ay/Ta(試験開始時6週齢、64匹)を用い、通常の飼育ケージで飼育した。
最初に、標準飼料(CE−2、日本クレア株式会社)で飼育し、トレッドミル装置(室町機械株式会社製)に対する約30分間の走行馴化を2回行った。
1週間の順化後、マウスの平均体重の差が小さくなるよう、表2に示す群構成に従い8群に分けた。8群の平均体重に有意な差は認められなかった。
【0067】
【表2】

【0068】
8群に分けた後、市販されている高脂肪飼料(HFD−60、オリエンタル酵母工業株式会社)を自由に摂取させ、6週間負荷した。
肥満タウリン群及び肥満タウリン運動群(計4群)へのタウリン投与は、高脂肪飼料のセルロース(媒体)をタウリンに変更したタウリン含有高脂肪飼料(タウリン含有量:5w/w%、オリエンタル酵母工業株式会社)を摂食させることにより、6週間行った。
肥満運動群及び肥満タウリン運動群(計6群)へは、次の一定量のトレッドミル走行を6週間負荷した。
肥満運動(少)群及び肥満タウリン運動(少)群には、速度10メートル/分にて30分間の走行を、週あたり隔日で3回負荷した。
肥満運動(中)群及び肥満タウリン運動(中)群には、2分間の馴化歩行の後に、速度15メートル/分にて30分間の走行を、週あたり隔日で3回負荷した。
肥満運動(多)群及び肥満タウリン運動(多)群には、2分間の馴化歩行の後に、速度15メートル/分にて60分間の走行を、週あたり連続で5回負荷した。
肥満群の走行状態の観察より、速度10メートル/分における走行の強度はヒトにおける徒歩(およそ80m/分:3メッツ以上4メッツ以下)に相当し、速度15メートル/分の強度は軽いジョギング(およそ120m/分:6メッツ以上7メッツ以下)に相当することが、容易に判断できた。
高脂肪飼料負荷及びタウリン投与の期間中における体重は、3週間および6週間の運動を負荷した翌日に測定し、群分け時の体重からの増加量(体重増加量)を算出し、運動負荷、タウリン投与並びに併用による効果を評価した。
さらに、6週間のトレッドミル走行の翌日において、約4時間の絶食後、イソフルラン麻酔下で後大静脈から全採血により安楽死させ、血清を得た。また、内臓脂肪(腹部脂肪:腎臓周囲及び腸管膜周囲)を採取し、内臓脂肪量を測定し、運動負荷、タウリン投与並びに併用による効果を評価した。
そして、血清中の総コレステロール値およびHDL−コレステロール値は酵素法(CE−COD−POD系)にて測定し、LDL−コレステロール値は総コレステロール値からHDL−コレステロール値を差し引いて算出し、LDL−コレステロール/HDL−コレステロール比(動脈硬化指数)は、LDL−コレステロール値およびHDL−コレステロール値より算出し、運動負荷、タウリン投与並びに併用による効果を評価した。
【0069】
(1)併用効果1:肥満モデルマウスの体重増加量に及ぼす一定量の運動負荷、タウリン投与並びに併用による効果
肥満モデルマウスの試験開始3週目における体重増加量に及ぼす運動負荷、タウリン投与及び併用による効果を図7に、試験開始6週目における効果を図8に示した。
図7及び図8より、試験例1と同様に、肥満群の体重増加量は試験期間を通じて著しく増加した。
いずれの肥満運動群の体重増加量は肥満群と比較して緩やかに減少し、肥満運動(多)群のみに、試験開始3週目及び6週目において体重増加量の有意な減少が認められた。
肥満タウリン群の体重増加量は肥満群と比較して僅かな差であった。
これに対し、いずれの肥満タウリン運動群の体重増加量は肥満群と比較して著しく少なく、肥満群との有意差は3週目より認められた。さらに、肥満タウリン運動(少)群および肥満タウリン運動(中)群においては、肥満運動(少)群および肥満運動(中)
群それぞれと比較して、3週目における体重増加量は減少していた。
これらの結果より、肥満に対して運動による十分な改善効果が認められない場合に、タウリンの経口投与を併用することにより、十分な改善効果が短期間で得られることを確認した。
【0070】
(2)併用効果2:肥満モデルマウスの内臓脂肪量に及ぼす運動負荷、タウリン投与並びに併用による効果
肥満モデルマウスの内臓脂肪量に及ぼす効果について図9に示した。
図9より、いずれの肥満運動群および肥満タウリン群の内臓脂肪量は肥満群と比較して僅かに減少していた。
これに対し、いずれの肥満タウリン運動群の内臓脂肪量は肥満群と比較して著しく減少していた。
これらの結果より、肥満における内臓脂肪蓄積に対して運動による十分な改善効果が認められない場合に、タウリンの経口投与を併用することにより、十分な改善効果が得られることを確認した。
【0071】
(3)併用効果3:肥満モデルマウスの血清中のLDL−コレステロール/HDL−コレステロール比(動脈硬化指数)に及ぼす運動負荷、タウリン投与並びに併用による効果
肥満モデルマウスの血清LDL−コレステロール/HDL−コレステロール比に及ぼす効果について図10に示した。
肥満群の血清LDL−コレステロール/HDL−コレステロール比と比較して、いずれの肥満運動群にも有意な変化は認められなかった。
これに対して、肥満タウリン運動(中)群の血清LDL−コレステロール/HDL−コレステロール比は、肥満群と比較して有意に減少していた。
なお、肥満群の総コレステロール値は、C57BL/6J又はKK−Ay/Taマウスの数値と比較して高値であったが、いずれの肥満運動群および肥満タウリン運動群にも有意な変化は認められなかった。
以上より、内臓脂肪蓄積における脂質代謝異常に伴う高LDL−コレステロール/HDL−コレステロール比(動脈硬化指数)に対して運動によって十分な改善効果が認められない場合においても、運動に加えてタウリンを経口投与することにより十分な改善効果を得ることができた。
【0072】
[総括]
以上の結果を総括すると、肥満における内臓脂肪蓄積、高血糖、脂質代謝異常などのメタボリックシンドロームの状態に対して、運動のみでは内臓脂肪減少が認められない場合においても、運動に加えてタウリンを経口投与することにより、肥満における内臓脂肪蓄積を改善させ、肥満における内臓脂肪蓄積に伴う高血糖及び高中性脂肪、高LDL―コレステロール/HDL−コレステロール比を改善し、減量効果が短期間で得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明により、運動との併用によって、極めて短期間にメタボリックシンドロームの状態を改善することができるタウリンを配合した経口用組成物を医薬品、医薬部外品又は特定保健用食品として提供することが可能となった。これを通じて、現代人の健康の増進に寄与するとともに医薬品産業等の健全な発達を図ることが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥満における内臓脂肪蓄積を有する人が、該内臓脂肪を減少させるための運動と共に服用することを特徴する、タウリンを有効成分として含有する、肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤。
【請求項2】
肥満における内臓脂肪蓄積、これに伴う高血糖又は脂質代謝異常を有する人を対象とする請求項1に記載のタウリンを有効成分として含有する、肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤。
【請求項3】
肥満における内臓脂肪蓄積、これに伴う高血糖及び脂質代謝異常を有する人を対象とする請求項1に記載のタウリンを有効成分として含有する、肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤。
【請求項4】
肥満における内臓脂肪蓄積、これに伴う高LDL−コレステロール/HDL−コレステロール比が2.5以上の人を対象とする請求項1に記載のタウリンを有効成分として含有する、肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤。
【請求項5】
メタボリックシンドローム状態の改善又は予防剤である請求項1に記載のタウリンを有効成分として含有する、肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤。
【請求項6】
メタボリックシンドローム予備群の状態の改善剤である請求項1に記載のタウリンを有効成分として含有する、肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤。
【請求項7】
内臓脂肪を減少させるための運動が、4.5〜10.5エクササイズの運動である請求項1〜6の何れか1項に記載のタウリンを有効成分として含有する、肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤。
【請求項8】
内臓脂肪を減少させるための運動が、3〜7メッツの運動を1日に30分以上かつ1週間に3日以上である請求項1〜6の何れか1項に記載のタウリンを有効成分として含有する、肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤。
【請求項9】
タウリンの有効量が1日当たり3000〜6000mgである請求項1〜8の何れか1項に記載のタウリンを有効成分として含有する、肥満における内臓脂肪蓄積の改善剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−190243(P2011−190243A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27410(P2011−27410)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】