説明

肩プロテーゼの上腕骨構成要素

【課題】モジュール式の肩関節形成システムの上腕骨構成要素であって、関節置換としてまたはリバース型プロテーゼとして使用することができる上腕骨構成要素を提供すること。
【解決手段】肩プロテーゼの上腕骨構成要素は、シャンクおよび上シャンク部分を有し、上シャンク部分がステム支持面を有するステム・モジュールを備える。関節アダプタは、ライナまたは球形のキャップを保持するように適合されている。関節アダプタは、ステム支持面とインタフェースするアダプタ支持面を備える。さらに、ステム支持面およびアダプタ支持面は、放射弧形の対応する断面を備え、これらの放射弧形の対応する断面は、異なる複数の傾斜角で、関節アダプタをステム・モジュールに対して位置決めすることを可能にする。関節アダプタをステム・モジュールに固定するため、ボルトまたはねじが使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肩の外科的再形成に対するモジュール式の肩関節形成システムに関し、具体的には、上腕骨のプロテーゼ置換に関する。
【背景技術】
【0002】
肩関節は、例外的な可動域を備える球関節である。肩の不安定、および関節症、骨折などの肩関節の他の疾患では、関節の置換が必要となることがある。
【0003】
上腕骨の凸形の骨頭の置換を備える肩関節プロテーゼが、特許文献1に開示されている。この肩関節プロテーゼは、実際の関節の回転方向および回転中心を再現する。回旋筋腱板の摩耗もしくは損傷の場合、または骨の損失量が大きすぎる場合、このようなプロテーゼは可動域を回復しないと考えられる。そのような場合には、リバース型肩プロテーゼ(reverse shoulder prosthesis)が好ましいことがある。このようなプロテーゼの一例が特許文献2に開示されている。このようなプロテーゼでは、上腕骨構成要素が、ステム(stem)およびステムに取り付けられたカップを備える。この関節窩構成要素は、上腕骨構成要素のカップとともに関節を構成する凸形の骨頭を支持する。
【0004】
最大の可動域を得るためには、プロテーゼが、個々の症例に適合していなければならない。特に、ステムに対する上腕骨構成要素のカップの位置は決定的に重要である。特許文献2に開示されたカップは、ステムの軸を中心にピボット回転することができる。
【0005】
ヒトの関節の不安定性、および関節症、骨折などの他の疾患は、傷ついた関節フィーチャ(feature)のプロテーゼ置換が指示されることがあるほどに十分に深刻であることがある。例えば、肩の再建では、最初に上腕骨から上腕骨頭を切除し、次いでその切除位置に上腕骨プロテーゼを取り付けることによって、上腕骨頭を置換することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,819,923号
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0210065A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明によって解決される課題は、モジュール式の肩関節形成システムの上腕骨構成要素であって、関節置換としてまたはリバース型プロテーゼとして使用することができる上腕骨構成要素を提供することである。解決される他の課題は、可動域を最適化するために、プロテーゼの適合性をさらに向上させることである。変形性関節症、外傷および腱板断裂関節症のうちのいずれか1つまたは全部に対処するように設計された改良されたモジュール式の肩関節形成システムも求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題の解決策は独立請求項に記載されている。従属請求項は、本発明の追加の改良に関する。
【0009】
一実施形態では、肩プロテーゼの上腕骨構成要素が、ステム・モジュール(1)および関節アダプタ(2、6、7)を備える。ステム・モジュールは、上シャンク(shank)部分(1b)を有するシャンク(1a、1b)を備える。上シャンク部分は、関節アダプタを支持するためのステム支持面(1c)を備える。関節アダプタ(2、6、7)は、リバース型プロテーゼの場合にはライナ(3)を保持するように適合され、または関節置換として使用するためには球形のキャップ(8)を保持するように適合される。こうすることによって、このステム・モジュールを、リバース型プロテーゼまたは関節置換に対して使用することができる。関節アダプタ(2、6、7)はさらに、ステム支持面(1c)とインタフェース(interface)するアダプタ支持面(2d)を備える。研究によれば、関節の傾斜角、したがって関節アダプタの傾斜角は、肩の内転に対して最も大きな影響を有する。このことに応じて、ステム・モジュール(1)および関節アダプタ(2、6、7)は、傾斜角の調整が可能である。この目的のために、ステム支持面(1c)およびアダプタ支持面(2d)は、ほぼ放射弧(radial arc)形の対応する断面を備え、これらのほぼ放射弧形の対応する断面は、ステム・モジュール(1)の縦軸と関節アダプタ(2、6、7)の中心軸との間の異なる複数の角度で、関節アダプタ(2、6、7)をステム・モジュールに対して位置決めすることを可能にする。ステム支持面(1c)およびアダプタ支持面(2d)は、本質的に放射弧形の対応する断面を備えることが好ましく、これらの本質的に放射弧形の対応する断面は、半径(11)および中心軸(10)を有する円筒殻表面の弓形を備えることができ、中心軸(10)の周りの異なる複数の傾斜角で、関節アダプタ(2、6、7)をステム・モジュールに対して位置決めすることを可能にする。これらの本質的に放射弧形の断面の形状は、多角形のような弧に近い形状でもよく、その多角形は正多角形でも、または非正多角形でもよい。この多角形は、中心軸(10)に平行な方向の突起状の形状を備えることが好ましい。これらの本質的に放射弧形の断面の接触点が半径(11)に沿って配置されることが最も好ましい。それらの接触点を互いに軸方向にずらすことができ、その結果、前方(anterior)/後方(posterior)に変位させることができると好ましい。関節アダプタの安定性を高めるため、ステム・モジュール(1)と関節アダプタ(2、6、7)の傾斜角だけを変更することができ、全てのもしくは他の自由度、または平行移動および/もしくは前記傾斜角とは異なる角度の回転のような移動は妨げる手段が提供されることが好ましい。関節アダプタ(2、6、7)をステム・モジュール(1)に固定するため、少なくとも1つのボルトもしくはねじ(4)または他の幾何学的手段が提供される。一般に、フォーム・ロックト・ジョイン(form−locked join)手段および/またはフォース・ロックト・ジョイン(force−locked join)手段が提供される。関節アダプタ(2、6、7)をステム・モジュール(1)内へ、好ましくは横方向から滑り込ませる手段を提供することもできる。
【0010】
他の実施形態では、ピボット回転または滑動のようなステム・モジュール(1)に対する関節アダプタ(2、6、7)の移動を防ぐために、ステム支持面(1c)およびアダプタ支持面(2d)が、好ましくは互いに相互作用する対応する突起(2e)および/または凹み(1f)を備える。これらの突起(2e)および/または凹み(1f)は、ステム・モジュール(1)と関節アダプタ(2、6、7)の傾斜角の連続的な移動を防ぎ、したがって、不連続な刻みで傾斜角を変化させる位置決めだけを可能にすることが好ましい。一般に、これらの表面は、連続し、短縮され、もしくは中断した波形のフォーム(form)、またはこれらの表面間の摩擦を増大させる表面コーティングもしくは表面処理を備えることができる。この突起および凹みは、関節アダプタ(2、6、7)とステム・モジュール(1)の両方に配置することができる。関節アダプタ(2、6、7)とステム・モジュール(1)のうちの一方に、突起および凹みのうちの少なくとも一方を配置することができる。
【0011】
他の実施形態によれば、ステム・モジュールの放射弧形の断面(1c)は、ステム・モジュール(1)の最も近位側のアスペクト(aspect)の内側境界(medial boundary)(1d)から、またはこの内側境界(1d)内から、外側境界(lateral boundary)(1e)まで延びる。あるいは、放射弧形の断面(1c)は、これらの境界間の部分的な断面だけを備えることができる。
【0012】
他の実施形態では、少なくとも1つの穴(1o、1p)がステム・モジュール(1)に形成されて、ステム・モジュール(1)に対する代替位置に関節アダプタ(2、6、7)を固定するためにそれらの穴のうちの少なくとも1つの中にボルトまたはねじ(4)を固定することが可能になる。その位置は、ボルトまたはねじ(4)を固定するのにどの穴を選択するかによって決まる。それらの穴にねじを切ってもよい。それらの穴を前方/後方に変位させてもよい。
【0013】
他の実施形態では、ボルトまたはねじを保持するために、ステム・モジュール(1)の表面からステム・モジュールのボディ内へ広がる連続した単一の空洞(1g、1h)が形成される。他の実施形態では、関節アダプタ(2、6、7)の表面から関節アダプタのボディ内へ広がるこのような空洞が形成される。この空洞を前方/後方に変位させてもよい。
【0014】
他の実施形態では、前記表面の下方の空洞のかなりの部分(1h)の幅が、前記表面の開口(1g)の幅よりも大きい。関節アダプタ(2、6、7)をステム・モジュール(1)に固定するために、ねじが切られた近位部分(4a)および球形の遠位部分(4b)を備えるボールねじが使用されることが好ましい。この球形の部分を空洞に挿入し、空洞内に保持する。このねじのボール部分の代わりに、さまざまな位置にねじをスライドさせ、ねじを締めることを可能にする等価の手段を使用してもよい。このような実施形態は、ステム・モジュール(1)と関節アダプタ(2、6、7)の連続的な位置決めを可能にする。突起、凹みまたは波形の起伏によって、この連続的な位置決めを制限することができる。
【0015】
他の実施形態によれば、関節アダプタ(2)は、ステム・モジュール(1)と関節アダプタ(2、6、7)の間の傾斜角または相対位置に応じてボルトまたはねじ(4)を挿入するための複数の穴(2x、2y、2z)を備える。これらの穴にねじを切ってもよい。それらの穴を前方/後方に変位させてもよい。
【0016】
好ましい一実施形態では、関節アダプタ(2)がカップ形であり、ライナ(3)を保持するように適合される。このようなライナは、リバース型関節(reverse joint)のカップの役目を果たすことができる。ライナ(3)は、表面(3b)から始まり中心に向かって配置されたへこんだ球形の凹部(3a)を備えることが好ましい。
【0017】
代替実施形態では、関節アダプタ(2)が、基本関節形成システム用の球形のキャップ(8)、またはへこんだ球形の凹部(3a)を備えるリバース型関節形成システム用のライナ(3)を保持することができるトラニオン(trunion)(6)である。トラニオン(6)は、関節アダプタを貫通して延びる空洞(6c)が中心に配置された突起(6b)が交差した実質的に平らな前面(6a)を、アダプタ支持面(6d)の反対側に備えることが好ましい。
【0018】
ステム・モジュール(1)、関節アダプタ(2)およびボルトまたはねじ(4)は、チタン合金、または生物適合性の他の金属材料もしくは非金属材料から製造することができる。アディティブ法(additive process)もしくはサブトラクティブ法(subtractive process)、テクスチャの付与、または骨誘導性(osteoinductive)/骨伝導性(osteoconductive)材料によって、装置の外面を強化することができる。
【0019】
ライナ(3)および球形のキャップ(8)は、超高分子量ポリエチレン、または相補的な幾何形状の対合構成要素と調和する座面として使用するのに適した他の生体適合性材料を使用することによって製造することができる。
【0020】
本発明は、変形性関節症、外傷および腱板断裂関節症に対処するモジュール式の肩関節形成システムに関する。本発明はこのような用途に限定されない。他の関節を置換するために、本発明を使用することもできる。
【0021】
次に、図面を参照し、本発明の全般的な概念を限定しない実施形態の例を示すことによって、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】肩プロテーゼの上腕骨構成要素の第1の実施形態を示す図である。
【図2】肩プロテーゼの上腕骨構成要素の第2の実施形態を示す図である。
【図3】肩プロテーゼの上腕骨構成要素の第3の実施形態を示す図である。
【図4a】ステム・モジュールに異なる傾斜で装着された前記第1の実施形態に基づく関節アダプタを示す図である。
【図4b】ステム・モジュールに異なる傾斜で装着された前記第1の実施形態に基づく関節アダプタを示す図である。
【図5a】ステム・モジュールに異なる傾斜で装着された前記第2の実施形態に基づく関節アダプタを示す図である。
【図5b】ステム・モジュールに異なる傾斜で装着された前記第2の実施形態に基づく関節アダプタを示す図である。
【図6】傾斜角の定義を示す図である。
【図7】ステム・モジュールの詳細な側面図である。
【図8】関節アダプタの下面図である。
【図9】関節アダプタの断面図である。
【図10】ステム・モジュールに装着された関節アダプタの断面図である。
【図11】ステム・モジュールの上面図である。
【図12】関節アダプタに挿入されたライナを示す図である。
【図13】関節アダプタとしてのトラニオンを示す図である。
【図14】トラニオンの下面図である。
【図15】リバース型トラニオンの側面図である。
【図16】球形のキャップを備える関節アダプタを示す図である。
【図17】2つの部品からなるシャンクを示す図である。
【図18】肩プロテーゼの組み立てられた上腕骨構成要素の透視図である。
【図19】雄型ポストを備えるステム・モジュールを示す図である。
【図20】雄型ポストによってステム・モジュールに装着された関節アダプタを示す図である。
【図21】拡張式ねじを備えるステム・モジュールを示す図である。
【図22a】拡張式ねじによってステム・モジュールに装着された関節アダプタを示す図である。
【図22b】拡張式ねじによってステム・モジュールに装着された関節アダプタを示す図である。
【図23a】キー/スロット接続によってステム・モジュールに装着された関節アダプタを示す図である。
【図23b】キー/スロット接続によってステム・モジュールに装着された関節アダプタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、さまざまな変更および代替形態を受け入れることができるが、図面には、本発明の特定の実施形態が例として示され、本明細書では、それらの実施形態が詳細に説明される。しかしながら、図面および図面の詳細な説明の意図は、開示された特定の形態に本発明を限定することにはなく、反対に、その意図は、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の趣旨および範囲に備えられる全ての変更、等価物および代替物をカバーすることにあることを理解すべきである。
【0024】
図1は、肩プロテーゼの上腕骨構成要素の第1の実施形態を示す。この上腕骨構成要素は、ステム・モジュール(1)および関節アダプタ(2)を備える。関節アダプタ(2)のアダプタ支持面(2d)は、ステム・モジュール(1)のステム支持面(1c)とインタフェースする。これらの支持面はともに放射弧形の断面を備える。これらの放射弧形の断面は円筒の表面の断面を備え、したがって円筒の軸を中心とした1種類の回転しか許さない。別の軸を中心とした回転、具体的には円筒軸に対して垂直な軸を中心とした回転は不可能である。残りの自由度は円筒軸を中心とした回転であり、円筒軸に平行に平行移動する可能性もある。関節アダプタ(2)の円形であることが好ましい突起(2g)を貫通したねじ(4)が、ねじ穴(1o、1p)のうちの1つの穴に入る。これらのねじ穴(1o、1p)は、複数の代替位置を画定し、したがって関節アダプタ(2)とステム・モジュール(1)の間の代替傾斜角を画定する。ねじ(4)は、関節アダプタをステム・モジュールに固定し、関節アダプタをロックして、回転したり、および/または平行移動したりしないようにする。ステム・モジュール(1)が関節アダプタ(2)に対して連続的に移動することを防ぐために、円弧形の断面に対して横方向に、ステム・モジュール(1)の凹み(1q)および関節アダプタ(2)の突起(2h)が延び、それらが互いに相互作用することが好ましい。ステム・モジュール(1)の凹み(1q)および関節アダプタ(2)の突起(2h)は、関節アダプタ(2、6、7)に対して、ステム・モジュール(1)を、不連続な複数の位置に位置決めすることだけを可能にする。所望の解剖学的結果が得られるいずれかの位置を外科医が選択できるように、ずらされた異なる位置に突起または穴を備える複数の関節アダプタを用意することができる。
【0025】
図2は、肩プロテーゼの上腕骨構成要素の第2の実施形態を示す。この第2の実施形態は主に、ねじ(4)を挿入する穴の位置が異なることによって第1の実施形態から区別される。この上腕骨構成要素は、ステム・モジュール(1)および関節アダプタ(2)を備える。ステム・モジュールは、上シャンク部分(1b)を有するシャンク(1a、1b)を備える。上シャンク部分は、関節アダプタを支持するためのステム支持面(1c)を備える。関節アダプタ(2)は、リバース型プロテーゼの場合にはライナを保持するように適合され、または、関節置換として使用するため、関節アダプタ(2)を、球形のキャップ(8)を保持するように適合させることもできる。関節アダプタ(2)はさらに、ステム支持面(1c)とインタフェースするアダプタ支持面(2d)を備える。ステム支持面(1c)およびアダプタ支持面(2d)は、半径(11)および中心軸(10)を有する円筒殻表面(12)の弓形を有する放射弧形の対応する断面を備え、これらの放射弧形の対応する断面は、中心軸(10)の周りの異なる複数の傾斜角で、関節アダプタ(2)をステム・モジュールに対して位置決めすることを可能にする。この図では中心軸(10)が、投影面に対して垂直に示されている。放射弧形の断面は他の実施形態と共通である。固定用のねじ(4)が使用されている。このねじは、関節アダプタの傾斜に応じて、複数の穴(2x、2y、2z)のうちの1つの穴に挿入することができる。所望の解剖学的結果が得られる1つの位置を外科医が選択できるように、ずらされた異なる位置に突起または穴を備える複数の関節アダプタを用意することができる。
【0026】
図3は、肩プロテーゼの上腕骨構成要素の第3の実施形態を示す。この第3の実施形態は主に、異なるねじ(4)、および構成要素を固定するためにねじが使用される方法によって第1の実施形態から区別される。この上腕骨構成要素は、ステム・モジュール(1)、関節アダプタ(2)およびライナ(3)を備える。関節アダプタ(2)の表面(2f)にあるボディの外径と同心の外周溝とインタフェースするために、ライナ(3)の外面(3c)には、ボディの外径と同心の外周溝がある。ねじが切られた近位部分(4a)および球形の遠位フォーム(4b)を特徴とするボディを備える固定のために使用されるボールねじが、関節アダプタ(2)の後面(2b)にねじ込まれ、ステム・モジュール(1)とインタフェースする。
【0027】
図4aおよび4bは、ねじ(4)を挿入するためのステム・モジュール(1)のそれぞれの穴(1o、1p)を使用した異なる傾斜角でステム・モジュール(1)に装着された、第1の実施形態に基づく関節アダプタ(2)を示す。
【0028】
図5aおよび5bは、ねじ(4)を挿入するための関節アダプタ(2)のそれぞれの穴(2z、2x)を使用した異なる傾斜角でステム・モジュール(1)に装着された、第2の実施形態に基づく関節アダプタ(2)を示す。
【0029】
図6は、ネックシャフト角(neck shaft angle)としても知られている傾斜角13の定義を示す。傾斜角13は、ステム・モジュール(1)の縦軸と関節アダプタ(2、6、7)の中心軸との間の角度であり、ステム・モジュール(1)の縦軸は本質的に、ステム・モジュールを挿入する骨の縦軸である。傾斜角13は、120度から170度の間の角度とすることができ、135度から155度の間の角度であることが好ましい。この傾斜角は、ステム・モジュール(1)に対する関節アダプタ(2、6、7)の位置決めによって変更することができる。
【0030】
図7は、ステム・モジュールの詳細な側面図である。このステムは、モノブロック構成とすることができ、またはいくつかの部品からなることができる。このステムは、円筒形のまたはテーパの付いた遠位アスペクト(1a)を備え、この遠位アスペクト(1a)は、より大きな多角形のフォーム(1b)へと変化する。このモノブロックの最も近位側のアスペクトは、ステム・モジュールの内側境界(1d)から外側境界(1e)まで延びる放射弧としてのステム支持面(1c)を特徴とする。ステム支持面(1c)は、連続し、短縮され、または中断した波形のフォーム(1f)を備えることができる。
【0031】
図8は、関節アダプタの下面図である。この関節アダプタは、正面から見たときに円形のフォームに見えるモノブロック構成である。後面(2b)を貫通した単一の穴(2a)が配置されている。背面(2c)は全体に球形である。放射弧の形状に形成されたアダプタ支持面(2d)がこの背面と交差している。アダプタ支持面は、連続し、短縮され、または中断した波形のフォーム(2e)を備えることができる。
【0032】
図9は、ライナ(3)が挿入された関節アダプタの断面図である。ライナ(3)は、正面から見たときに円形のフォームに見えるモノブロック構成である。内面(3b)から始まり中心に向かって、へこんだ球形の凹部(3a)が配置されている。外面(3c)に形成されたボディの外径と同心の外周溝が、関節アダプタ(2)とインタフェースする。
【0033】
図10は、ステム・モジュール(1)に装着された関節アダプタ(2)の断面図である。図11は、ステム・モジュール(1)の上面図である。ステム支持面(1c)から上シャンク部分(1b)のボディ内へ広がる連続した単一の空洞(1h、1i)が形成されている。表面の下方の空洞の相当な部分(1h)の幅を、表面の開口(1g)の幅よりも大きくすることができる。縫合ワイヤを固定する穴(1n)が形成されている。
【0034】
図12は、関節アダプタ(2)に挿入されたライナ(3)を示す。内面(3b)から始まり中心へ向かって、へこんだ球形の凹部(3a)が配置されている。
【0035】
図13は、関節アダプタとしてのトラニオン(6)を示す。トラニオン(6)は、正面から見たときに実質的に円形に見えるモノブロック・ボディを備える。突起(6b)が、実質的に平らな前面(6a)と交差している。突起の中心に空洞(6c)が配置されており、空洞(6c)は、ボディの境界を貫通して延びている。放射弧の形状に形成されたアダプタ支持面(6d)が背面と交差している。アダプタ支持面は、連続し、短縮され、または中断した波形のフォーム(6e)を備えることができる。
【0036】
図14は、トラニオン(6)の下面図である。突起(6f)の境界は実質的に平らとすることができる。このような実質的に平らな境界は、関節アダプタ(2、6、7)のうちの任意の1つの関節アダプタに提供することもできる。
【0037】
図15は、関節アダプタとしてのトラニオン(7)の側面図である。トラニオン(7)は、正面から見たときに実質的に円形に見えるモノブロック・ボディを備える。突起(6b)が、実質的に平らな前面(6a)と交差している。突起の中心に空洞を配置することができ、空洞は、ボディの境界を貫通して延びる。放射弧の形状に形成されたアダプタ支持面が背面と交差し、アダプタ支持面は、中央の球形のフォーム(7a)の部分である。アダプタ支持面は、連続し、短縮され、または中断した波形のフォーム(6e)を備えることができる。
【0038】
図16は、球形のキャップを備える関節アダプタとしてのトラニオン(7)の側面図である。
【0039】
図17は、2つの部品からなるステム・モジュールを示す。このステム・モジュールは、円筒形の遠位アスペクト(1k)を有するシャンク(1a)を備え、この遠位アスペクト(1k)は、上シャンク部分(1b)においてより大きな多角形のフォームへと変化する。シャンク(1a)は、内側境界(1d)および外側境界(1e)を備える。シャンク(1a)の最も遠位側の境界に、遠位シャフト(5)のような追加のボディを取り付けるためのフィーチャ(1m)が配置されている。この遠位ボディは、円筒形のまたはテーパの付いたボディ(5a)とすることができる。遠位ボディの最も近位側の境界に、ステム・モジュールに取り付けるための近位フィーチャ(5b)が配置されている。
【0040】
図18は、ねじ(4)によって固定されたステム・モジュール(1)および関節アダプタ(2)からなる肩プロテーゼの組み立てられた上腕骨構成要素の透視図である。
【0041】
図19は、関節アダプタのスロットにはまる雄型ポスト(4c)を備えるステム・モジュール(1)を示す。
【0042】
図20は、雄型ポスト(4c)によってステム・モジュール(1)に装着された関節アダプタ(2)を示す。
【0043】
図21は、締めると拡張する拡張式ねじ(4d)を備えるステム・モジュール(1)を示す。
【0044】
図22aおよび22bは、拡張式ねじ(4d)によってステム・モジュール(1)に装着された関節アダプタ(2)を示す。このねじは、傾斜角に従って関節アダプタ(2)の異なる穴にはまる。
【0045】
図23aおよび23bは、キー/スロット接続によってステム・モジュール(1)に装着された関節アダプタ(2)を示す。ステム・モジュール(1)のキー(1r)が、傾斜角に応じて、関節アダプタ(2)のスロット(2r、2s)のうちの1つのスロットにはまる。キーおよびスロットは、ステム・モジュール(1)上もしくは関節アダプタ(2)上、またはその両方に置くことができる。組み立てるためには、関節アダプタ(2)を側面からステム・モジュール(1)に挿入する。このタイプの接続は、主固定用のボルトまたはねじを必要としないが、追加の固定のために、このようなボルトまたはねじを使用してもよい。
【0046】
本開示の恩典に浴した当業者は、本発明が、肩プロテーゼの上腕骨構成要素を提供すると考えられることを理解するであろう。この説明を検討した当業者には、本発明のさまざまな態様の他の変更および代替実施形態が明白である。したがって、この説明は、例示だけが目的であると解釈すべきであり、この説明は、本発明を実施する一般的な方法を当業者に教示するためのものである。本明細書に示され、記載された本発明の諸形態は、現時点における好ましい実施形態であると解釈するべきであることを理解すべきである。本明細書に示され、記載された要素および材料の代わりに他の要素および材料を使用することができ、部品およびプロセスを逆にすることができ、本発明のある特徴を独立して利用することができる。これらのことは全て、本発明のこの説明の恩典に浴した当業者には明白であろう。以下の特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された要素に変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ステム・モジュール
1a シャンク
1b 上シャンク部分
1c ステム支持面
1d 内側境界
1e 外側境界
1f 凹み
1g 空洞の表面開口
1h 表面の下方の空洞
1i 空洞の拡大された表面開口
1k 円筒形の遠位アスペクト
1m 追加のボディを取り付けるためのフィーチャ
1n 縫合ワイヤを取り付けるための穴
1o ねじのための穴
1p ねじのための穴
1q 突起
1r キー
2 関節アダプタ
2a 穴
2b 後面
2c 背面
2d アダプタ支持面
2e 突起
2f 外周溝
2g 突起
2h 凹み
2i スロット
2r スロット
2s スロット
2x ボルトまたはねじを挿入するための穴
2y ボルトまたはねじを挿入するための穴
2z ボルトまたはねじを挿入するための穴
3 ライナ
3a へこんだ球形の凹部
3b 内面
3c 外面
4 ボルトまたはねじ
4a ねじが切られた近位部分
4b 球形の遠位部分
4c 雄型ポスト
4d 拡張式ねじ
5 遠位シャフト
5a 遠位ボディ
5b 近位フィーチャ
6 トラニオン
6a 前面
6b 突起
6c 空洞
6d アダプタ支持面
6e 突起
6f 突起の境界
7 リバース型トラニオン
7a 中央の球形のフォーム
8 球形のキャップ
10 円筒の中心軸
11 円筒の半径
12 円筒殻
13 傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャンク(1a、1b)および上シャンク部分(1b)を有し、前記上シャンク部分(1b)がステム支持面(1c)を有するステム・モジュール(1)と、
ライナ(3)または球形のキャップ(8)を保持するように適合された関節アダプタ(2、6、7)であり、前記ステム支持面(1c)とインタフェースするアダプタ支持面(2d)を有する関節アダプタ(2、6、7)と
を備える肩プロテーゼの上腕骨構成要素において、
前記ステム・モジュール(1)の縦軸と前記関節アダプタ(2、6、7)の中心軸との間の異なる複数の傾斜角で、前記関節アダプタ(2、6、7)を前記ステム・モジュールに対して位置決めするために、前記ステム支持面(1c)および前記アダプタ支持面(2d)が、半径(11)および中心軸(10)を有する円筒殻表面の弓形を有するほぼ放射弧形の対応する断面を備え、
前記関節アダプタ(2、6、7)が、ボルトもしくはねじ(4)によって、または他の幾何学的手段によって前記ステム・モジュール(1)に固定される
ことを特徴とする肩プロテーゼの上腕骨構成要素。
【請求項2】
前記関節アダプタ(2、6、7)が前記ステム・モジュール(1)に対してピボット回転することを防ぐために、前記ステム支持面(1c)および前記アダプタ支持面(2d)が、対応する突起(2e)および/または凹み(1f)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の肩プロテーゼの上腕骨構成要素。
【請求項3】
前記ステム・モジュールの前記放射弧形の断面(1c)が、前記ステム・モジュール(1)の最も近位側のアスペクトの内側境界(1d)から、または前記内側境界(1d)内から、外側境界(1e)まで延びることを特徴とする、請求項1または2に記載の肩プロテーゼの上腕骨構成要素。
【請求項4】
少なくとも1つの穴(1o、1p)が前記ステム・モジュール(1)に形成されて、前記ステム・モジュール(1)に対する代替位置に前記関節アダプタ(2、6、7)を固定するために前記穴のうちの少なくとも1つの中に前記ボルトまたはねじ(4)を固定することが可能になることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の肩プロテーゼの上腕骨構成要素。
【請求項5】
前記ボルトまたはねじを保持するために、前記ステム・モジュール(1)の表面から前記ステム・モジュールのボディ内で連続した単一の空洞(1g、1h)が形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の肩プロテーゼの上腕骨構成要素。
【請求項6】
前記表面の下方の前記空洞のかなりの部分(1h)の幅を、前記表面の開口(1g)の幅よりも大きくすることができることを特徴とする、請求項5に記載の肩プロテーゼの上腕骨構成要素。
【請求項7】
前記関節アダプタ(2、6、7)を前記ステム・モジュール(1)に固定するため、ねじが切られた近位部分(4a)および球形の遠位部分(4b)を備えるボールねじが使用されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の肩プロテーゼの上腕骨構成要素。
【請求項8】
前記関節アダプタ(2)が、前記傾斜角に応じてボルトまたはねじ(4)を挿入するための複数の穴(2x、2y、2z)を備えることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の肩プロテーゼの上腕骨構成要素。
【請求項9】
前記関節アダプタ(2)がカップ形であり、ライナ(3)を保持するように適合されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の肩プロテーゼの上腕骨構成要素。
【請求項10】
前記ライナ(3)が、表面(3b)から始まり中心に向かって配置されたへこんだ球形の凹部(3a)を備えることを特徴とする、請求項9に記載の肩プロテーゼの上腕骨構成要素。
【請求項11】
前記関節アダプタ(2)が、球形のキャップ(8)を保持するための、またはへこんだ球形の凹部(3a)を備えるライナ(3)を保持するためのトラニオン(6)であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の肩プロテーゼの上腕骨構成要素。
【請求項12】
前記トラニオン(6)が、前記関節アダプタを貫通して中心に配置された空洞(6c)を備えた突起(6b)によって交差した前記アダプタ支持面(6d)の反対側に、実質的に平らな前面(6a)を、備えることを特徴とする、請求項11に記載の肩プロテーゼの上腕骨構成要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22a】
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【図22b】
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【図23a】
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【図23b】
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