説明

肺炎球菌感染を治療または予防するための組成物および方法

【課題】肺炎球菌感染を治療または予防するためのポリペプチド、多糖類−ポリペプチド共役体、および発現ベクターを提供する。
【解決手段】肺炎連鎖球菌のニューモリシンに対する免疫応答を誘発するための医薬の製造における、肺炎連鎖球菌のニューモリシンポリペプチドまたはその抗原性フラグメントをコードする核酸を含むヌクレオチド哺乳動物に投与されると、抗肺炎球菌免疫応答を誘導する。この組成物は、感染した個体において、当該個体を予防的にワクチン化する、および/または治療的に治療的免疫応答を誘導するために用いられうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する米国出願
本願は、2002年11月7日に提出された、米国仮出願第60/424,497号の優先権を主張する。従来の出願の全ての内容は、参照により本明細書中に引用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、ポリペプチド、肺炎球菌多糖類−ポリペプチド共役体、肺炎球菌ポリペプチドをコードする発現ベクター、抗肺炎球菌免疫応答の誘導方法、および、肺炎球菌感染を治療または予防する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)は、小児、高齢者、および免疫不全の個体における、細菌性の肺炎、髄膜炎、中耳炎および菌血症の共通の原因である。肺炎連鎖球菌は、自身の莢膜多糖類に基づき、約90種の血清型に細分されうる。しかしながら、疾患は一般的に、約30のタイプの肺炎連鎖球菌の単離体により引き起こされる。世界保健機関は、小児における肺炎球菌性の髄膜炎および敗血症による年間の死者は100万人であり、これらの98%は発展途上国において発生していると見積もっている。抗微生物剤に耐性を有する肺炎球菌株の発生により、抗微生物剤に加えて、方法によって肺炎球菌感染を治療および予防することの必要性が強調されている。
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
一形態において、本発明は、肺炎連鎖球菌の莢膜多糖類に共役したポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが肺炎連鎖球菌のニューモリシンタンパク質の少なくとも400個の連続したアミノ酸のフラグメントを含み、前記ポリペプチドがアミノ酸配列KVEND(配列番号22)を欠失しており(例えば、カルボキシ末端で)、前記ポリペプチドが溶血作用を示さず、哺乳動物へ投与されると肺炎連鎖球菌に対する免疫応答(例えば、液性免疫応答および/または細胞性免疫応答)を誘発する、組成物を特徴とする。当該免疫応答は、予防的免疫応答および/または治療的免疫応答でありうる。
【0005】
肺炎連鎖球菌のニューモリシンタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を有しうる。いくつかの実施形態において、このポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1〜460を含む。他の実施形態では、このポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1〜464、配列番号1のアミノ酸1〜465、配列番号1のアミノ酸1〜466、配列番号1のアミノ酸1〜469、または配列番号1のアミノ酸1〜470を含む。
【0006】
このポリペプチドは、必要であれば、アミノ酸配列EDKVEND(配列番号23)またはアミノ酸配列YPQVEDKVEND(配列番号24)を欠失していてもよい。
【0007】
いくつかの実施形態において、このポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸残基1〜460、配列番号1のアミノ酸残基1〜464、配列番号1のアミノ酸残基1〜465、配列番号1のアミノ酸残基1〜466、配列番号1のアミノ酸残基1〜469、または配列番号1のアミノ酸残基1〜470からなる。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記莢膜多糖類は、血清型4、6B、9V、14、18C、19F、および23Fからなる群から選択される。一例を挙げると、前記莢膜多糖類は、血清型14である。他の例を挙げると、前記莢膜多糖類は、血清型18Cである。前記組成物は、必要であれば、血清型4、6B、9V、14、18C、19F、および23Fからなる群から選択される複数の異なる莢膜多糖類を含んでもよい。この組成物により誘発される免疫応答は、肺炎連鎖球菌の莢膜多糖類に対するものであってもよいし、肺炎連鎖球菌のニューモリシンタンパク質に対するものであってもよいし、肺炎連鎖球菌の莢膜多糖類および肺炎連鎖球菌のニューモリシンタンパク質に対するものであってもよい。
【0009】
他の形態において、本発明は、肺炎連鎖球菌のニューモリシンタンパク質の少なくとも400個の連続したアミノ酸のフラグメントを含むポリペプチドをコードする核酸を含むヌクレオチド配列に対して作動可能なように結合したプロモータを含み、前記ポリペプチドがアミノ酸配列KVEND(配列番号22)を欠失しており(例えば、カルボキシ末端で)、前記ポリペプチドが溶血作用を示さず、前記ポリペプチドが、哺乳動物へ投与されると肺炎連鎖球菌に対する免疫応答(例えば、液性免疫応答および/または細胞性免疫応答)を誘発する、哺乳動物発現ベクターを特徴とする。当該免疫応答は、予防的免疫応答および/または治療的免疫応答でありうる。
【0010】
肺炎連鎖球菌のニューモリシンタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を有しうる。いくつかの実施形態において、コードされるポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1〜460を含む。他の実施形態では、このコードされるポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1〜464、配列番号1のアミノ酸1〜465、配列番号1のアミノ酸1〜466、配列番号1のアミノ酸1〜469、または配列番号1のアミノ酸1〜470を含む。
【0011】
このコードされるポリペプチドは、必要であれば、アミノ酸配列EDKVEND(配列番号23)またはアミノ酸配列YPQVEDKVEND(配列番号24)を欠失していてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、このコードされるポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸残基1〜460、配列番号1のアミノ酸残基1〜464、配列番号1のアミノ酸残基1〜465、配列番号1のアミノ酸残基1〜466、配列番号1のアミノ酸残基1〜469、または配列番号1のアミノ酸残基1〜470からなる。このコードされるポリペプチドにより誘発される免疫応答は、肺炎連鎖球菌のニューモリシンタンパク質に対するものであってもよい。
【0013】
他の形態において、本発明は、肺炎連鎖球菌のオートリシンポリペプチドをコードする核酸を含むヌクレオチド配列に対して作動可能なように結合したプロモータを含み、前記ポリペプチドが、哺乳動物へ投与されると肺炎連鎖球菌に対する免疫応答(例えば、液性免疫応答および/または細胞性免疫応答)を誘発する、哺乳動物発現ベクターを特徴とする。当該免疫応答は、予防的免疫応答および/または治療的免疫応答でありうる。
【0014】
いくつかの実施形態において、コードされるポリペプチドは、配列番号14のアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、このコードされるポリペプチドは、配列番号14のアミノ酸配列からなる。
【0015】
他の形態において、本発明は、肺炎連鎖球菌の表面タンパク質Aポリペプチドをコードする核酸を含むヌクレオチド配列に対して作動可能なように結合したプロモータを含み、前記ポリペプチドが、哺乳動物へ投与されると肺炎連鎖球菌に対する免疫応答(例えば、液性免疫応答および/または細胞性免疫応答)を誘発する、哺乳動物発現ベクターを特徴とする。当該免疫応答は、予防的免疫応答および/または治療的免疫応答でありうる。
【0016】
いくつかの実施形態において、コードされるポリペプチドは、配列番号18のアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、このコードされるポリペプチドは、配列番号18のアミノ酸配列からなる。
【0017】
他の形態において、本発明は、配列番号1のアミノ酸1〜460、配列番号1のアミノ酸1〜464、配列番号1のアミノ酸1〜466、および配列番号1のアミノ酸1〜469からなる群から選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを特徴とする。
【0018】
他の形態において、本発明は、哺乳動物における肺炎連鎖球菌に対する免疫応答を誘導するのに有効な量の本明細書に記載の組成物を哺乳動物へ投与することにより、哺乳動物における免疫応答を誘導する方法を特徴とする。当該免疫応答は、予防的免疫応答および/または治療的免疫応答でありうる。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記免疫応答は、前記組成物中に存在する莢膜多糖類の血清型(例えば、血清型7、6B、18C、または23F)とは異なる肺炎連鎖球菌の血清型の少なくとも1つに対して交差反応性である。いくつかの実施形態において、前記免疫応答は、少なくとも1つの連鎖球菌属の肺炎連鎖球菌以外の種に対して交差反応性である。
【0020】
他の形態において、本発明は、哺乳動物における肺炎連鎖球菌に対する免疫応答を誘導するのに有効な量の本明細書に記載の発現ベクター(例えば、ニューモリシン、シュードニューモリシン、オートリシン、または肺炎球菌表面タンパク質Aの発現ベクター)を哺乳動物へ投与することにより、哺乳動物における免疫応答を誘導する方法を特徴とする。当該免疫応答は、予防的免疫応答および/または治療的免疫応答でありうる。いくつかの実施形態において、当該免疫応答は、少なくとも1つの連鎖球菌属の肺炎連鎖球菌以外の種に対して交差反応性である。
【0021】
他の形態において、本発明は、肺炎連鎖球菌のニューモリシンポリペプチドまたはその抗原性フラグメントをコードする核酸を含むヌクレオチド配列に対して作動可能なように結合したプロモータを含む哺乳動物発現ベクターを、哺乳動物に対して投与し;さらに、精製されたニューモリシンポリペプチドまたはその抗原性フラグメントを、哺乳動物に対して投与して、これらの投与の組み合わせにより、哺乳動物における肺炎連鎖球菌のニューモリシンに対する免疫応答を誘発することにより、哺乳動物における免疫応答を誘導する方法を特徴とする。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記哺乳動物には、前記発現ベクターを、少なくとも2つの、3つの、またはそれ以上の異なる用量で投与する。当該用量には、必要であれば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、またはそれ以上の日数を置く。
【0023】
いくつかの実施形態において、肺炎連鎖球菌のニューモリシンポリペプチドまたはその抗原性フラグメントの投与は、前記発現ベクターの投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、またはそれ以上の日数後である。
【0024】
他の形態において、本発明は、肺炎連鎖球菌以外の細菌の多糖類に共役したポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが肺炎連鎖球菌のニューモリシンタンパク質の少なくとも400個の連続したアミノ酸のフラグメントを含み、前記ポリペプチドがアミノ酸配列KVEND(配列番号22)を欠失しており、前記ポリペプチドが溶血作用を示さず、哺乳動物へ投与されると前記肺炎連鎖球菌以外の細菌に対する免疫応答を誘発する、組成物を特 徴とする。
【0025】
いくつかの例を挙げると、前記肺炎連鎖球菌以外の細菌は、肺炎球菌、インフルエンザ菌タイプb、髄膜炎菌グループA、BまたはC、およびグループB連鎖球菌タイプIa、Ib、II、III、VまたはVIIIからなる群から選択される。かような組成物は、当該組成物の有効量を哺乳動物に対して投与して、哺乳動物における肺炎連鎖球菌以外の細菌に対する免疫応答を誘導することにより、哺乳動物における免疫応答を誘導するために用いられうる。
【0026】
他の形態において、本発明は、本明細書に記載の組成物またはポリペプチドに対して結合する(例えば、選択的に結合する)精製された抗体を特徴とする。例えば抗体は、肺炎連鎖球菌の莢膜多糖類に共役したポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが肺炎連鎖球菌のニューモリシンタンパク質の少なくとも400個の連続したアミノ酸のフラグメントを含み、前記ポリペプチドがアミノ酸配列KVEND(配列番号22)を欠失しており(例えば、カルボキシ末端で)、前記ポリペプチドが溶血作用を示さず、哺乳動物へ投与されると肺炎連鎖球菌に対する免疫応答(例えば、液性免疫応答および/または細胞性免疫応答)を誘発する、組成物に対して特異的に結合しうる。かような抗体は、例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体でありうる。本明細書に記載の抗体を分泌する、ハイブリドーマのような細胞系が調製されうる。当該抗体は、精製された抗体の治療上または予防上有効量を哺乳動物に対して投与することにより、哺乳動物における肺炎連鎖球菌感染を治療または予防しうる。
【0027】
いくつかの実施形態において、本発明の利点は、肺炎連鎖球菌の第1の血清型の多糖類−ポリペプチド共役体が、予期せぬことに、肺炎連鎖球菌の第2の血清型による感染に対する交差耐性を提供しうるということである。かような交差耐性によれば、肺炎連鎖球菌の2種以上の血清型による感染の治療または予防における所定の共役体の有効性が増大しうる。従って、それぞれに特異的な血清型を有する共役体を必ずしも提供することなく、肺炎連鎖球菌の複数の血清型に対する耐性が提供されうる。
【0028】
いくつかの実施形態において、本発明の他の利点は、シュードニューモリシンポリペプチドが溶血作用を示さないということである。従って、かようなシュードニューモリシン共役体ベクターは、溶血作用を示す天然に存在するニューモリシンまたは部分的に溶血作用を示すトキソイド化ニューモリシンを含む組成物と比較して、毒性が低減されているかまたは消失している。
【0029】
いくつかの実施形態において、本発明の他の利点は、ニューモリシン断片をコードする発現ベクターは、ニューモリシン点変異体をコードする核酸とは対照的に、復帰突然変異によって溶血作用を示す毒性タンパク質をコードする虞が少ないということである。
【0030】
前記ニューモリシン断片は、ニューモリシンの溶血作用に関与している領域を欠失していることから、前記発現ベクターのヌクレオチド配列におけるどのような変異によっても、毒性が再生することはありえない。
【0031】
そうでないと定義しない限り、本明細書中で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者により一般的に理解される意味と同様である。適当な方法および材料を以下に記載するが、本発明を実施または試験する際には、本明細書に記載されるのと類似のまたは等価な方法および材料が用いられうる。本明細書で言及する全ての出版物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により引用される。専門用語における争いが生じた場合には、本明細書が優先する。また、記載される材料および方法は例示のみを目的とし、限定を意図するものではない。
【0032】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、血清型14の多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後にマウスにおいて誘発された抗ニューモリシンIgG抗体の産生を示すグラフである。
【図2】図2は、血清型14の多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後にマウスにおいて誘発された抗多糖類IgG抗体の産生を示すグラフである。
【図3】図3は、血清型18Cの多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後にマウスにおいて誘発された抗ニューモリシンIgG抗体の産生を示すグラフである。
【図4】図4は、血清型18Cの多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後にマウスにおいて誘発された抗多糖類IgG抗体の産生を示すグラフである。
【図5】図5は、血清型19Fの多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後にマウスにおいて誘発された抗ニューモリシンIgG抗体の産生を示すグラフである。
【図6】図6は、血清型19Fの多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後にマウスにおいて誘発された抗多糖類IgG抗体の産生を示すグラフである。
【図7】図7は、血清型23Fの多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後にマウスにおいて誘発された抗ニューモリシンIgG抗体の産生を示すグラフである。
【図8】図8は、血清型23Fの多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後にマウスにおいて誘発された抗多糖類IgG抗体の産生を示すグラフである。
【図9】図9は、血清型4の多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後にマウスにおいて誘発された抗ニューモリシンIgG抗体の産生を示すグラフである。
【図10】図10は、血清型4の多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後にマウスにおいて誘発された抗多糖類IgG抗体の産生を示すグラフである。
【図11】図11は、血清型6Bの多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後にマウスにおいて誘発された抗ニューモリシンIgG抗体の産生を示すグラフである。
【図12】図12は、血清型6Bの多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後にマウスにおいて誘発された抗多糖類IgG抗体の産生を示すグラフである。
【図13】図13は、血清型9Vの多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後にマウスにおいて誘発された抗ニューモリシンIgG抗体の産生を示すグラフである。
【図14】図14は、血清型9Vの多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後にマウスにおいて誘発された抗多糖類IgG抗体の産生を示すグラフである。
【図15】図15は、肺炎連鎖球菌の血清型14の多糖類−シュードニューモリシン共役体の3回目の注射後の肺炎連鎖球菌の血清型14の多糖類に対する抗体の応答を示すグラフである。
【図16】図16は、シュードニューモリシンDNAのワクチン投与のためにプライム−ブースト法を用いた、ウサギにおけるニューモリシンに対する抗体の応答を示すグラフである。
【図17】図17は、肺炎球菌の表面タンパク質AのDNAワクチンをコードする発現ベクターの注射後の抗体の応答を示すグラフである。
【図18】図18は、オートリシンのDNAワクチンをコードする発現ベクターの注射後の抗体の応答を示すグラフである。
【図19】図19は、血清型14の多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後に、肺炎連鎖球菌の血清型14に感染したマウスにおける細菌の減少を示すグラフである。
【図20】図20は、血清型14の多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後に、肺炎連鎖球菌の血清型7に感染したマウスにおける細菌の減少を示すグラフである。
【図21】図21は、血清型14の多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後に、肺炎連鎖球菌の血清型6Bに感染したマウスにおける細菌の減少を示すグラフである。
【図22】図22は、血清型14の多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後に、肺炎連鎖球菌の血清型18Cに感染したマウスにおける細菌の減少を示すグラフである。
【図23】図23は、血清型14の多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後に、肺炎連鎖球菌の血清型23Fに感染したマウスにおける、感染1時間後の細菌の減少を示すグラフである。
【図24】図24は、血清型14の多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後に、肺炎連鎖球菌の血清型23Fに感染したマウスにおける、感染3時間後の細菌の減少を示すグラフである。
【図25】図25は、血清型14の多糖類−シュードニューモリシン共役体を用いた免疫後に、肺炎連鎖球菌の血清型23Fに感染したマウスにおける、感染5時間後の細菌の減少を示すグラフである。
【0034】
発明の詳細な説明
本発明は、肺炎球菌感染を治療または予防するための組成物および方法を提供する。本明細書に記載のポリペプチド、多糖類−ポリペプチド共役体、および発現ベクターは、哺乳動物に対して投与されると、当該哺乳動物において抗肺炎球菌免疫応答を誘導する。これらの組成物は、個体に予防接種するために予防的に、および/または、感染した個体における治療的な免疫応答を誘導するために、用いられうる。
【0035】
多糖類−タンパク質共役体
ポリペプチドは、共有結合または非共有結合の方法により、肺炎連鎖球菌の莢膜多糖類に共役しうる。一般的に、この共役体のポリペプチド成分は、肺炎連鎖球菌のニューモリシンタンパク質または肺炎連鎖球菌の変異型ニューモリシンタンパク質の一部を含み、アミノ酸配列KVEND(配列番号22)を欠失しており、そして溶血作用を示さない。この多糖類−ポリペプチド共役体は、哺乳動物に対して投与されると肺炎連鎖球菌に対する免疫応答を誘発する。当該免疫応答は、前記ポリペプチド、前記多糖類、または前記ポリペプチドおよび前記多糖類の組み合わせに対するものであってもよい。
【0036】
この共役体のポリペプチド成分は、組み換えDNA技術を用いて調製されてもよく、自然源から精製されてもよく、または化学的に合成されてもよい。一般的に、前記ポリペプチド成分は、アミノ酸配列の点で天然に存在する肺炎連鎖球菌のニューモリシンタンパク質とは異なる。肺炎連鎖球菌の血清型19Aニューモリシンポリペプチドの配列は、配列番号1で示される(実施例1を参照)。共役体のポリペプチド成分の例としては、以下に制限されないが、配列番号1のアミノ酸1〜460、1〜461、1〜462、1〜463、1〜464、1〜465、1〜466、1〜469、および1〜470が挙げられる。
【0037】
肺炎連鎖球菌のニューモリシンタンパク質の断片型および/または変異型をコードする核酸は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により調製されうる。かようなタンパク質をコードする核酸は、特定の発現系に好ましい、または好ましくないコドンを有することで選別されうる。例えば、前記核酸は、その配列が大腸菌、酵母、ヒト、昆虫、またはCHO細胞における発現に最適となるように、少なくとも1つのコドン、好ましくはコドンの少なくとも10%、または20%が改変されている。
【0038】
肺炎連鎖球菌のニューモリシンタンパク質の断片型および/または変異型をコードする核酸は、(1)オートリシン、表面タンパク質A、ノイラミニダ−ゼ、ヒアルロン酸塩溶解物、コリン結合タンパク質Aなどの他の肺炎球菌のタンパク質、あるいは(2)インフルエンザ菌b、髄膜炎菌グループA、BもしくはC、または連鎖球菌グループBなどの有機体からの肺炎球菌以外のタンパク質をコードするヌクレオチド配列と融合しうる。かような融合タンパク質をコードする核酸は、発現系において発現しうる。
【0039】
ニューモリシン断片は、宿主において予め多糖類の担体に対する抗体が存在していない場合に、かような多糖類の担体として有用である。ニューモリシンは肺炎球菌感染における毒性因子であり、異なるサブタイプを有する肺炎球菌間でのニューモリシンの抗原性の変動はほとんどない。
【0040】
多糖類−タンパク質共役体は、ヒトのような哺乳動物に対して投与されると、量、型、および/または期間の点で、多糖類成分単独での哺乳動物への投与により誘導される免疫応答を超える免疫応答を誘導する。従って、前記ポリペプチド成分は、かような向上した免疫応答を誘導するのに充分な長さでなければならない。肺炎連鎖球菌の天然に存在するニューモリシンタンパク質のフラグメントについて、当該フラグメントは少なくとも8、10、25、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、425、450、460、465、460、465、またはそれを超えるアミノ酸長である。肺炎連鎖球菌の天然に存在するニューモリシンタンパク質由来の配列の異なるポリペプチドについて、当該ポリペプチドは、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、またはそれを超えて、例えば配列番号1の肺炎連鎖球菌の天然に存在するニューモリシンタンパク質と一致する。
【0041】
前記ポリペプチド成分は、好ましくは、肺炎連鎖球菌の天然に存在するニューモリシンタンパク質に存在する溶血作用を示さない。一般的に、前記ポリペプチド成分は、肺炎連鎖球菌の天然に存在するニューモリシンタンパク質の溶血作用の30%、20%、10%、5%、1%、またはそれ未満の溶血作用しか示さない。溶血作用は、実施例3で詳述するように測定されうる。一般的に、ポリペプチドの溶血作用は、ポリペプチドを赤血球(例えば、ヒツジ赤血球)とインキュベートし、当該ポリペプチドにより誘導された溶血を測定することにより決定されうる(典型的な溶血アッセイの説明については、例えば、Owen et al. (1994) FEMS Microbiology Letters 121:217−222を参照)。
【0042】
前記共役体の多糖類成分は、肺炎連鎖球菌の任意の莢膜多糖類であり、以下に制限されないが、サブタイプ1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、19A、20、22F、23A、23F、24F、27、33F、または34が挙げられる。いくつかの実施形態において、前記莢膜多糖類は、サブタイプ4、6B、9V、14、18C、19F、または23Fからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、前記多糖類は、血清型14である。他の実施形態において、前記多糖類は、血清型18Cである。1または2以上の異なる莢膜多糖類が、単一のまたは複数のポリペプチドに共役しうる。例えば、多価共役体は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10の異なる莢膜多糖類を含みうる。多糖類は、例えばモノマー性の結合(多糖類の一方の末端のみがポリペプチドに連結される)、環状の結合(単一のポリペプチドが環状の多糖類に連結される)、または架橋(複数の多糖類が複数のポリペプチドに連結される)を介してポリペプチドに共役しうる。
【0043】
ポリペプチド(例えば、シュードニューモリシンポリペプチド)を精製するための方法は実施例に記載されており、ポリペプチドへの多糖類の共役は実施例4に記載されている。ポリペプチドまたは多糖類の精製および共役プロセスに関するさらなる詳細は、例えば、米国特許第4,242,501号、米国特許第4,686,102号、米国特許第5,623,057号、および米国特許第5,565,204号に記載されている。
【0044】
本明細書に記載の共役体またはポリペプチドは、哺乳動物における肺炎連鎖球菌に対する免疫応答(予防的および/または治療的免疫応答)を誘発する目的で、哺乳動物に対して投与されうる。共役体またはポリペプチドを含有する薬剤組成物は、製薬上許容しうる担体、緩衝液、または、以下に制限されないが、生理食塩水もしくは他の注射用液体などのワクチンに適当な保存剤においてデリバリーされうる。ワクチンに汎用される添加剤(例えば、ラクトースまたはソルビトールのような安定化剤、およびリン酸アルミニウム、水酸化物、もしくは硫酸塩およびステアリルチロシンのような免疫応答を増強させるためのアジュバント)もまた、存在してもよい。製造されるワクチンはまた、複数の感染性物質に対する免疫応答を誘発する多価ワクチンの成分として用いられうる。
【0045】
前記組成物は、本技術分野において周知の手法により(例えば、経口で、筋肉内に、静脈内に、動脈内に、クモ膜下腔内に、皮内に、腹腔内に、鼻腔内に、肺内に、眼内に、膣内に、直腸内に、または皮下に)投与されうる。前記組成物は、例えば、前記共役体を含有する溶液または粉末の吸入により、胃腸管または呼吸管中に導入されうる。いくつかの実施形態において、前記組成物は、皮膚パッチを介して投与されうる。
【0046】
薬剤組成物(例えば、ワクチン)は、免疫応答の一部である抗体の産生を誘発するのに充分な量で投与される。任意の所定の患者に対する用量は、患者のサイズ、健康状態、性別、体表面積、年齢、投与されるべき特定の化合物、投与時間および投与経路、並びに同時に投与されている他の薬剤などの多くの要因に依存する。最適用量の決定は、通常の技能を有する薬理学者の能力の範囲内に充分に含まれる。
【0047】
組成物が宿主哺乳動物において免疫応答を誘発する能力は、免疫応答を測定するための本技術分野において周知の方法を用いることにより試験されうる。例えば、細胞障害性T細胞の生成は、標準的な51Cr放出アッセイにおいて、細胞間のサイトカインの発現もしくは分泌を測定することにより、または主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)テトラマーを用いることにより、立証されうる。T細胞活性化に起因するサイトカインプロファイルを測定するためには、酵素免疫吸着測定アッセイ(ELISA)または酵素免疫スポット(enzyme−linked immunospot)(ELISPOT)のような標準的なアッセイが用いられうる。T細胞の増殖は、H−チミジン取り込みおよび、本技術分野において周知の他のアッセイを用いて測定されうる。B細胞の応答は、ELISAのような本技術分野において認識されているアッセイを用いて測定されうる。他の手法もまた用いられうる。疾病に関連する病原体に対する、または他の病原体レベルに対する前記共役体の効果(例えば、共役体を用いて処置された感染マウスにおける肺炎球菌の減少)を一般的に評価するためには、他の方法論もまた、用いられうる。
【0048】
本明細書に記載の組成物は、肺炎連鎖球菌による感染または当該感染に関連する症状を予防または治療するための医薬の製造に用いられうる。
【0049】
抗体
多糖類、ニューモリシン、またはこれらの組み合わせに対する抗体は、第1の個体から第2の個体を免疫する目的で(例えば、肺炎連鎖球菌に対する第2の個体の免疫応答を増大させる目的で、または第2の個体が易感染性患者である場合に応答を提供する目的で)、予防的なまたは治療的な適用に用いられうる。多糖類、ニューモリシン、またはこれらの組み合わせに対する抗体は、免疫応答性宿主において生成し(例えば、本明細書に記載の共役体を免疫応答性宿主に対して投与することにより)、前記宿主から回収され、治療または予防の必要性に応じてレシピエントに輸血され、これによりニューモリシン毒に対するだけではなく肺炎連鎖球菌および、前記共役体(例えば、前記共役体の多糖類成分)により誘発される抗体に結合する他の任意の可能な細菌に対する耐性が、レシピエントに付与される。
【0050】
本明細書に記載の組成物により誘発される抗体は、薬剤組成物として配合され、個体に対して予防的または治療的免疫応答を付与するために用いられうる。薬剤組成物の投与に適当な成分および方法は、本明細書に記載されている。受動免疫を誘発するために、前記薬剤組成物はポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体またはこれらのフラグメントの誘導体を含んでもよい。薬剤組成物は、標準的な臨床的技術により決定されるような、予防上または治療上有効量の抗体、フラグメント、または誘導体を含む。
【0051】
肺炎球菌ポリペプチドをコードする核酸
肺炎球菌ポリペプチドまたは肺炎球菌ポリペプチドのフラグメントもしくは変異体をコードする核酸は、哺乳動物における予防的および/または治療的免疫応答を引き起こす目的で、哺乳動物(例えば、ヒト)に投与されうる。当該免疫応答は、抗肺炎球菌の液性および/または細胞性免疫でありうる。
【0052】
前記核酸構築物によりコードされうるポリペプチドとしては、本明細書に記載の共役体のポリペプチド成分、実施例に記載のシュードニューモリシンポリペプチド、並びにオートリシンおよび肺炎球菌の表面タンパク質Aおよびそのフラグメントおよび変異体が挙げられる。さらに、核酸は、2以上のかようなポリペプチド、フラグメント、または変異体をコードしうる。
【0053】
核酸発現構築物は、組み換えDNAの標準的な手法を用いて調製されうる。ポリペプチドをコードする核酸の発現を促進させる目的で、構築物中には制御エレメントが含まれうる。これらのエレメントとしては、ヒトまたは他の哺乳動物細胞における発現を増強させるための配列(例えば、プロモータ、コーディング配列の5’側および/または3’側のRNA安定化配列、イントロン(コーディング配列の内部またはこれに隣接する任意の位置に配置されうる)、およびポリ(A)付加部位)、並びに、複製開始部位および、構築物の複製および原核および/または真核宿主における選択を可能とする選択可能なマーカーをコードする1以上の遺伝子が挙げられる。必要であれば、T7プロモータまた他のタイプのプロモータ(例えば、組織特異的プロモータもしくは筋特異的プロモータのような細胞特異的プロモータ)が、コーディング配列の5’末端に存在してもよく、また、必要であれば、FLAGまたは他のmAb決定因子をコードする配列が、コーディング配列の3’末端に存在してもよい。前記構築物はまた、コザック(Kozak)配列のような他の転写および翻訳シグナルを含んでもよい。
【0054】
前記構築物は、コードされたポリペプチドを所望の細胞内区画へと指向する、前記ポリペプチドに連結された標的化シグナルをコードする配列をさらに含んでもよく、前記標的化シグナルとしては、標的化シグナルは、コードされたポリペプチドを、小胞体(ER)、ゴルジ体、核、リソソーム、クラスIIペプチドローディング区画、またはエンドソームへと指向するものであってもよく、シグナルペプチド、ER残留ペプチド、およびリソソーム標的化ペプチドが挙げられる。
【0055】
前記核酸は、哺乳動物の細胞中での発現を可能とする任意のベクター中で用いられうる。当該ベクターは、例えば、プラスミドまたは細菌ベクターのような非ウイルスベクター、組み込み型ウイルスベクター、または非組み込み型ウイルスベクターであってもよい。適当なベクターの例としては、pcDNA哺乳動物発現ベクターのファミリー(インビトロジェン(Invitrogen))があり、これによればPCR産物の直接かつ迅速なクローニングが可能となる。
【0056】
ポリペプチドをコードする核酸を適切な細胞へとデリバリーする目的で、種々のデリバリーシステムが用いられうる。ポリペプチドをコードする核酸は、生理食塩水のような製薬上許容しうる担体中で、またはコロイド性懸濁液として、または粉末として、希釈剤を用いてもしくは用いずに、デリバリーされうる。前記核酸は「裸」であってもよいし、デリバリーベヒクルと関連していてもよく、脂質、リポソーム、マイクロスフェア、マイクロ粒子、またはマイクロカプセル、金粒子、ISCOMS、ナノ粒子、ポリマー、縮合剤、多糖類、ポリアミノ酸、デンドリマー、サポニン、QS21、吸着増強剤、アジュバント、または脂肪酸のような本技術分野において周知のデリバリーシステムを用いてデリバリーされうる。核酸はまた、インビトロまたはインビボで、エレクトロポレーションを用いて、細胞(例えば、骨格筋細胞)へとデリバリーされうる。
【0057】
核酸は、標準的な方法(例えば、Donnelly et al., J. Immunol. Methods 176:145, 1994、および、Vitiello et al., J. Clin. Invest. 95:341, 1995に記載の方法)を用いて投与されてもよく、本技術分野において周知の方法によって(例えば、経口で、筋肉内に、静脈内に、動脈内に、クモ膜下腔内に、皮内に、腹腔内に、鼻腔内に、肺内に、眼内に、膣内に、直腸内に、または皮下に)患者にデリバリーされうる。拡散は、例えば、当該核酸を含有する溶液または粉末の吸入により、胃腸管または呼吸管中に導入されうる。投与は局所的であってもよいし、全身的であってもよい。
【0058】
個体に対しては、約100〜2000μg核酸の用量が投与されるであろうと予想される。患者が成人のヒトの場合、予防接種の手法としては、例えば、マイクロ粒子中でデリバリーされるときには10〜1000μgのプラスミドDNAを、筋肉内、皮内、吸入、または皮下へ投与すること、または、約10〜2500μg(例えば、100〜2000、もしくは500〜1000μg)の裸のプラスミドDNAを、3〜6回繰り返して、筋肉内にまたは皮内に投与することが挙げられる。医療の技術分野においては周知のように、任意の所定の患者に対する用量は、患者のサイズ、健康状態、性別、体表面積、年齢、投与されるべき特定の化合物、投与時間および投与経路、並びに同時に投与されている他の薬剤などの多くの要因に依存する。最適用量の決定は、通常の技能を有する薬理学者の能力の範囲内に充分に含まれる。
【0059】
他の標準的なデリバリー方法(例えば、バイオリスティック(biolistic)移入またはエクスビボ処置)もまた、用いられうる。エクスビボ処置においては、樹状細胞、末梢血単核細胞、または骨髄細胞のような抗原提示細胞(APC)は、患者または適切なドナーから得られ、核酸を用いてエクスビボで活性化され、次いで患者に対して移植または再注入されうる。
【0060】
核酸は、単独でまたは本技術分野において周知の他の治療法(例えば、抗微生物剤)と組み合わせて投与されうる。さらに、核酸は、本技術分野において周知のように、免疫応答を増強するように設計された他の治療法と組み合わせて(例えば、アジュバント、サイトカイン(もしくはサイトカインをコードする核酸)、またはCpGオリゴヌクレオチドと一緒の投与により)投与されうる。
【0061】
核酸が宿主哺乳動物において免疫応答を誘発する能力は、免疫応答を測定するための本技術分野において周知の方法を用いることにより試験されうる。例えば、細胞障害性T細胞の生成は、標準的な51Cr放出アッセイにおいて、細胞間のサイトカインの発現もしくは分泌を測定することにより、またはMHCテトラマーを用いることにより、立証されうる。T細胞活性化に起因するサイトカインプロファイルを測定するためには、ELISAまたはELISPOTのような標準的なアッセイが用いられうる。T細胞の増殖は、H−チミジン取り込みおよび、本技術分野において周知の他のアッセイを用いて測定されうる。B細胞の応答は、ELISAのような本技術分野において認識されているアッセイを用いて測定されうる。他の手法もまた用いられうる。疾病に関連する病原体に対する、または他の病原体レベルに対する前記共役体の効果(例えば、共役体を用いて処置された感染マウスにおける肺炎球菌の減少)を一般的に評価するためには、他の方法論もまた、用いられうる。
【0062】
本明細書に記載の核酸は、肺炎連鎖球菌による感染または当該感染に関連する症状を予防または治療するための医薬の製造に用いられうる。
【0063】
本発明を下記の実施例によりさらに説明するが、当該実施例により特許請求の範囲に記載の発明の技術的範囲は限定されない。
【実施例】
【0064】
実施例
実施例1:シュードニューモリシン発現ベクターの構築
断片型のニューモリシンポリペプチドを発現するベクターを、実施例1A〜1E二記載する。「シュードニューモリシン」と称される、コードされる断片型のポリペプチドは、共役ワクチンを調製する目的で肺炎球菌の多糖類に共役させるために用いられうる。さらに、シュードニューモリシンをコードするポリペプチドは、コードされるポリペプチドに対する免疫応答を生じさせる目的で個体に投与されうる。
【0065】
肺炎連鎖球菌の血清型19Aの染色体DNAをテンプレートとして用いてPCRを行い、ニューモリシン遺伝子の種々のフラグメントを増幅した。PCR反応に用いたセンスプライマーは、翻訳開始コドンのすぐ上流のニューモリシン遺伝子のコーディング配列にアニールし、特異的な制限酵素部位を組み込んだ。LYSN−1と称されるセンスプライマー:
【0066】
【化1】

【0067】
は、ニューモリシン遺伝子の5’末端のヌクレオチド1〜24に相補的である。LYSN−3と称されるアンチセンスプライマー:
【0068】
【化2】

【0069】
は、ニューモリシン遺伝子の3’末端のヌクレオチド1396〜1413に相補的である。このプライマーは、471アミノ酸の全長ニューモリシンタンパク質をコードする1413塩基対のDNAを増幅する。肺炎連鎖球菌の血清型19Aのニューモリシンポリペプチドのアミノ酸配列は、以下の通りである:
【0070】
【化3】

【0071】
PCRは一般的に、以下のように行った:94℃にて4分間を1サイクル;94℃にて1分間、55℃にて1分間、および72℃にて1.5分間を30サイクル;並びに、72℃にて10分間を1サイクル。PCRにより合成したDNAフラグメントを、NdeIおよびBamHI制限酵素を用いて消化し、pET11b発現ベクター中にライゲーションした(これにより、pSA−14を作製)。この組み換えDNAを、形質転換により大腸菌DE3細胞中に導入した。アンピシリン耐性の形質転換体を選択した。NdeIおよびBamHI制限酵素を用いた消化により、インサートの存在を確認した。
【0072】
増幅したDNAフラグメントは、野生型のゲノム配列と比較して、3’末端のヌクレオチドを欠失している。これらの修飾核酸によりコードされるシュードニューモリシンポリペプチドの多くは、非溶血性であり、非毒性であるが、免疫原性は保持していることが判明した。
【0073】
A.pSA−1発現ベクターの構築
pSA−1発現ベクターは、配列番号1のニューモリシンタンパク質のアミノ酸1〜460からなるポリペプチドをコードする。LSYN−1プライマー:
【0074】
【化4】

【0075】
および、LSYN−4プライマー:
【0076】
【化5】

【0077】
を用い、肺炎連鎖球菌の血清型19Aの染色体DNAについてPCRを行い、1380塩基対のDNAを増幅した。
【0078】
PCRにより合成したDNAフラグメントを、NdeIおよびBamHIを用いて消化し、pET11b発現ベクターのNdeIおよびBamHI部位中にライゲーションして、pSA−1を作製した。この組み換えDNAを、形質転換により大腸菌DE3細胞中に導入した。アンピシリン耐性の形質転換体を選択した。制限酵素(NdeIおよびBamHI)を用いた消化により、インサートの存在を確認し、さらにDNA配列を確認した。
【0079】
コードされる460アミノ酸のポリペプチドは、野生型のニューモリシンタンパク質のカルボキシ末端に存在する11アミノ酸が欠失しており、以下の配列を有する:
【0080】
【化6】

【0081】
B.pSA−49発現ベクターの構築
pSA−49発現ベクターは、配列番号1のニューモリシンタンパク質のアミノ酸1〜464からなるポリペプチドをコードする。LSYN−1プライマー:
【0082】
【化7】

【0083】
および、LSYN−54プライマー:
【0084】
【化8】

【0085】
を用い、肺炎連鎖球菌の血清型19Aの染色体DNAについてPCRを行い、1392塩基対のDNAを増幅した。
【0086】
PCRにより合成したDNAフラグメントを、NdeIおよびBamHIを用いて消化し、pET11b発現ベクターのNdeIおよびBamHI部位中にライゲーションして、pSA−49を作製した。この組み換えDNAを、形質転換により大腸菌DE3細胞中に導入した。アンピシリン耐性の形質転換体を選択した。制限酵素(NdeIおよびBamHI)を用いた消化により、インサートの存在を確認し、さらにDNA配列を確認した。
【0087】
コードされる464アミノ酸のポリペプチドは、野生型のニューモリシンタンパク質のカルボキシ末端に存在する7アミノ酸が欠失しており、以下の配列を有する:
【0088】
【化9】

【0089】
C.pSA−11発現ベクターの構築
pSA−11発現ベクターは、配列番号1のニューモリシンタンパク質のアミノ酸1〜466からなるポリペプチドをコードする。LSYN−1プライマー:
【0090】
【化10】

【0091】
および、LSYN−17プライマー:
【0092】
【化11】

【0093】
を用い、肺炎連鎖球菌の血清型19Aの染色体DNAについてPCRを行い、1398塩基対のDNAを増幅した。
【0094】
PCRにより合成した上記のDNAフラグメントを、NdeIおよびBamHIを用いて消化し、pET11b発現ベクターのNdeIおよびBamHI部位中にライゲーションして、pSA−11を作製した。この組み換えDNAを、形質転換により大腸菌DE3細胞中に導入した。アンピシリン耐性の形質転換体を選択した。制限酵素(NdeIおよびBamHI)を用いた消化により、インサートの存在を確認し、さらにDNA配列を確認した。
【0095】
コードされる466アミノ酸のポリペプチドは、野生型のニューモリシンタンパク質のカルボキシ末端に存在する5アミノ酸が欠失しており、以下の配列を有する:
【0096】
【化12】

【0097】
D.pSA−32発現ベクターの構築
pSA−32発現ベクターは、配列番号1のニューモリシンタンパク質のアミノ酸1〜469からなるポリペプチドをコードする。LSYN−1プライマー:
【0098】
【化13】

【0099】
および、LSYN−37プライマー:
【0100】
【化14】

【0101】
を用い、肺炎連鎖球菌の血清型19Aの染色体DNAについてPCRを行い、1407塩基対のDNAを増幅した。
【0102】
PCRにより合成したDNAフラグメントを、NdeIおよびBamHIを用いて消化し、pET11b発現ベクターのNdeIおよびBamHI部位中にライゲーションして、pSA−32を作製した。この組み換えDNAを、形質転換により大腸菌DE3細胞中に導入した。アンピシリン耐性の形質転換体を選択した。制限酵素(NdeIおよびBamHI)を用いた消化により、インサートの存在を確認し、さらにDNA配列を確認した。
【0103】
コードされる469アミノ酸のポリペプチドは、野生型のニューモリシンタンパク質のカルボキシ末端に存在する2アミノ酸が欠失しており、以下の配列を有する:
【0104】
【化15】

【0105】
E.pSA−31発現ベクターの構築
pSA−31発現ベクターは、配列番号1のニューモリシンタンパク質のアミノ酸1〜470からなるポリペプチドをコードする。LSYN−1プライマー:
【0106】
【化16】

【0107】
および、LSYN−38プライマー:
【0108】
【化17】

【0109】
を用い、肺炎連鎖球菌の血清型19Aの染色体DNAについてPCRを行い、1410塩基対のDNAを増幅した。
【0110】
PCRにより合成したDNAフラグメントを、NdeIおよびBamHIを用いて消化し、pET11b発現ベクターのNdeIおよびBamHI部位中にライゲーションして、pSA−31を作製した。この組み換えDNAを、形質転換により大腸菌DE3細胞中に導入した。アンピシリン耐性の形質転換体を選択した。制限酵素(NdeIおよびBamHI)を用いた消化により、インサートの存在を確認し、さらにDNA配列を確認した。
【0111】
コードされる470アミノ酸のポリペプチドは、野生型のニューモリシンタンパク質のカルボキシ末端に存在する1アミノ酸が欠失しており、以下の配列を有する:
【0112】
【化18】

【0113】
実施例2:組み換えシュードニューモリシンポリペプチドの発現、精製、および特性
実施例1に記載されているように、pET発現ベクター中にPCR産物をクローニングした。組み換えDNAで大腸菌を形質転換し、形質転換体を、抗生物質を含有するプレート上で選択した。インサートDNAの配列を、DNAシーケンシングにより確認した。組み換え大腸菌を37℃にて一晩増殖させ、イソプロピルチオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)を誘導剤として培地に添加し、この細胞を続けて3時間増殖させた。発現した組み換えポリペプチドを、クマシーブルーで染色したSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により評価した。アフィニティクロマトグラフィを用いて組み換えポリペプチドを精製し、ヒツジまたはヒトの赤血球を用いた溶血アッセイにより溶血作用を試験した(実施例3に詳述する)。
【0114】
実施例3:シュードニューモリシンポリペプチドの溶血作用の決定
以下の手法に従って、コードされたポリペプチドの溶血作用を決定した。
【0115】
1)ヒトまたはヒツジの赤血球の2%懸濁液を調製する。0.2mLの新鮮な血球を10mLのPBS(pH7.2)中に添加する。この懸濁液を3000rpmにて30秒間スピンさせ、ペレットを10mLのPBSに3回再懸濁させる。
【0116】
2)1μgのポリペプチドを0.5mLのPBS(pH7.2)に添加し、0.5mLの洗浄した2%RBC懸濁液と混合する。
【0117】
3)この混合物を37℃にて1時間インキュベートし、次いで、エッペンドルフマイクロ遠心分離機(Eppendorf microcentrifuge)中で10,000rpmにて2分間遠心分離する。
【0118】
4)541nmでの光学密度(OD)を測定する。全長ニューモリシンポリペプチドと比較したOD吸収の百分率として、溶血作用を測定する。
【0119】
表1に示すように、C末端の7、6、2、または1アミノ酸を欠失しているニューモリシンの断片は溶血作用を示さなかった。C末端の5アミノ酸を欠失している断片では、溶血作用の一部が失われていた。
【0120】
【表1】

【0121】
実施例4:多糖類−タンパク質共役体の調製
A.多糖類の酸化
肺炎球菌の莢膜多糖類(例えば、4、6B、9V、14、18、19F、および23F)を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(マナッサス、ヴァージニア州)から購入した。10mgの多糖類を、4℃にて一晩、1mLの蒸留水に溶解させた。次の日に、1mLの0.2M PBS(pH7.2)を添加した。室温にて10分間、暗室で2mM過ヨウ素酸ナトリウム(MW:213.9、シグマ)と反応させることにより、多糖類を酸化させた。最終濃度25mMのエチレングリコール(MW:62.07)との反応により、過剰な過ヨウ素酸ナトリウムを分解させた。多糖類を含有する反応混合物を、1000mLの0.1M PBS(pH7.2)中で3回、充分に透析した。
【0122】
B.イムノ−アフィニティカラムの調製
(i)全長His−タグニューモリシンの精製
大腸菌(C−Hisタグニューモリシンを含有するpET24b)を、40μLの20%グルコースおよび4μLの50mg/mLカナマイシンを含有する4mLのLB培地中で増殖させ、37℃にて一晩、160rpmで連続振盪しながらインキュベートした。一晩培養した培地の3mLを、1mLの20%グルコースおよび100μLの50mg/mLカナマイシンを含有する100mLのLB培地に移し、37℃にて160rpmで連続振盪しながら、OD600が0.4〜0.5に達するまでインキュベートした。400μLの1M IPTGを、IPTGの最終濃度が4mMとなるように、100mLの培地に移した。遺伝子発現の誘導の3時間後に、4000rpmにて5分間の遠心分離によって細胞を回収した。インビトロジェン(カールスバッド、カリフォルニア州)により提供されるプロボンド精製システム(ProBond Purification System)の手法に従って、全長His−タグニューモリシンを精製した。
【0123】
(ii)His−タグニューモリシンに対するポリクローナル抗体の製造
ニュージーランド白ウサギの4箇所の異なる部位に、それぞれ25μgの4つの等量の乳化His−タグニューモリシンおよびタイターマックス(TiterMax)アジュバント(400μLの1mg/mL His−タグニューモリシンおよび400μLのタイターマックスアジュバント)を注射した;それぞれの大腿筋(i.m.)にそれぞれ1箇所、および、背中の縦方向の筋に沿って脊椎のそれぞれの側の皮下(s.c.)。14日後、上記のウサギから耳静脈経由で5mLの血液を回収した。
【0124】
血清からの抗体の力価が1:3000の希釈レベルに達していれば、その動物からは最終的に血液を採取した。抗体の力価が1:3000未満であれば、第2の用量の抗原を注射し、当該動物を1週間後に試験した(第2の用量の7日後)。このサイクルを、充分な力価が達成されるまで続けた。
【0125】
(iii)アフィ−ゲル(Afi−Gel)タンパク質Aアガロースを用いたウサギIgGの精製
His−タグニューモリシンを用いて免疫されたウサギからの血清を、10mMリン酸ナトリウムおよび150mM NaCl(pH8.2)を用いて平衡化したアフィ−ゲルタンパク質Aカラムにアプライした。10ベッド体積を用いて洗浄した後、2〜5体積の100mMクエン酸ナトリウム(pH3.0)を用いて免疫グロブリンを溶出させた。溶出したIgGを回収してプールし、280におけるODを測定した。3mLの精製IgGを10DGカラムにさらにアプライし、カラムから溶出した最初の3mLを捨てた。このカラムに、3.5mLのカップリング緩衝液(150mM NaClおよび100mM酢酸ナトリウム pH5.5)または0.1Mの3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)緩衝液のいずれかを添加した。3.5mLの溶出IgGを回収しプールして、さらにアフィ−ゲルHzまたはアフィ−ゲル10のいずれかとカップリングさせた。
【0126】
(iv)アフィ−ゲル10へのIgGのランダムカップリングを用いたイムノアフィニティカラムの調製
アフィ−ゲル10は、誘導体化された架橋アガロースゲルビーズ担体のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルであり、第1級アミンを介して全てのリガンドとカップリングする。IgGとのカップリングのために、アフィ−ゲル10を15mLチューブに移し、冷DDHOで3回、および冷0.1M MOPS緩衝液(pH7.0)で2回洗浄した。予め洗浄されたアフィ−ゲル10を含む15mLチューブに精製IgGを添加し、4℃にて4時間逆さまに回転させた。100mMトリス塩酸(pH8.0)を添加しさらに4℃にて0.5時間で、アフィ−ゲル10の残留活性エステルをブロックした。このゲルを1.5×9.0cmのカラムに移した。カラムの溶出液を回収し、280でのODを測定した。2ベッド体積の0.5M NaClおよび25mMトリス塩酸(pH8.0)を用いて、このアフィ−ゲル10イムノアフィニティカラムを洗浄した。カラムの溶出液を再度回収し、280でのODを測定した。全IgGおよび非カップリングIgGの濃度に基づき、カップリング効率を算出した。
【0127】
(v)イムノアフィニティカラムの試験
イムノアフィニティカラムを試験するために、DEAE−セファロースクロマトグラフィからのシュードニューモリシンを含む画分を、25mMトリス塩酸(pH8.0)、0.5M NaClおよび0.5%トリトンX−100に添加した。0.5M NaClおよび25mMトリス塩酸(pH8.0)で平衡化された6.5mLのアフィ−ゲルカラム(1,5×12cm)に、この試料を1mL/2分の流速でアプライした。フロースルー画分を回収した。15mLの0.5M NaClおよび25mMトリス塩酸(pH8.0)を用いて、このカラムを2〜3回洗浄した。5mLの4M尿素を用いてこのカラムを再度洗浄した。7mLの4M尿素を用いて、結合したシュードニューモリシンタンパク質を2回溶出させた。最初の7mLの4M尿素画分からのタンパク質試料を、9%SDS−PAGEにより分析し、クマシーブリリアントブルーR−20で染色することにより可視化した。
【0128】
C.組み換えシュードニューモリシンタンパク質の調製
発現ベクターpSA−49(ニューモリシンのC末端の7アミノ酸を欠失しているポリペプチドをコードする;実施例1を参照)で形質転換された細菌を、100μg/mLアンピシリンを含有する30mLのLB培地を含む50mLチューブ中で、37℃にて一晩増殖させた。翌朝、100μg/mLアンピシリンおよび0.2%のグルコースを含有する、1Lフラスコ中の400mLのLB培地に、一晩培養物の13mLを接種し、37℃にて振盪しながらインキュベートした。0.5のA600に相当する細胞密度で、2または4mMのIPTGを添加することにより、シュードニューモリシンタンパク質を3時間誘導した。
【0129】
500mL遠心チューブ中で6,500rpmにて10分間、細菌を遠心分離した。100μg/mLのリゾチームを含む40mLのトリス塩酸緩衝液(pH8.0)中に細菌ペレットを再懸濁させ、氷上で15分間インキュベートし、氷上で10秒間のバーストで3回超音波分解した。溶解物を−80℃にて10分間凍結させて、37℃にて5分間融解させた。この細胞溶解物に、超音波分解−凍結−融解によりさらに2回処理した。6,000rpmにて20分間の遠心分離により、不溶性の細胞の破片を除去した。上清の溶解物を、さらに0.8μMフィルタを通過させた。フロースルータンパク質を9%SDS−PAGE分析により試験し、クマシーブリリアントブルーR−250染色により可視化した。未精製の溶解物を、DEAE−セファロースクロマトグラフィによりさらに精製した。
【0130】
25mMトリス塩酸(pH8.0)を用いて平衡化したDEAE−セファロースを含むカラム(5×12cm)に、20mLの未精製の細菌溶解物をロードした。最初のフロースルーを回収した後、10mLの25mMトリス塩酸をカラムに添加した。10mLのフロースルーを回収し、最初のフロースルー画分とプールした(画分1)。次いで、35mLの25mMトリス塩酸(pH8.0)をアプライし、フロースルーを回収した(画分2)。さらに35mLの25mMトリス塩酸(pH8.0)をアプライし、フロースルーを再度回収した(画分3)。4M NaClおよび25mMトリス塩酸を用いて、結合している細菌タンパク質を溶出させた(画分4)。280nmでのODを測ることにより、各画分中のタンパク質濃度を測定した。タンパク質試料を9%SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により分析し、クマシーブルーR−20で染色して可視化した。シュードニューモリシンを含有するフロースルー画分(1および2)を、イムノアフィニティクロマトグラフィによりさらに精製した。
【0131】
DEAE−セファロースクロマトグラフィの後、シュードニューモリシンを含む画分を、25mMトリス塩酸(pH8.0)、0.5M NaClおよび0.5%トリトンX−100に添加した。0.5M NaClおよび25mMトリス塩酸(pH8.0)で平衡化した、ウサギ抗ニューモリシンIgGをカップリングした6.5mLのアフィ−ゲル10カラム(1.5×12cm)に、この試料を1mL/2分の流速でアプライした。フロースルー画分を回収した。15mLの0.5M NaClおよび25mMトリス塩酸(pH8.0)を用いてこのカラムを3回洗浄した。5mLの4M尿素を用いてこのカラムを再度洗浄した。7mLの4M尿素を用いて、結合しているシュードニューモリシンタンパク質を2回溶出させた。非結合画分および結合画分からのタンパク質試料を、SDS−PAGEにより分析し、クマシーブリリアントブルーR−20での染色により可視化した。
【0132】
イムノアフィニティクロマトグラフィの後、シュードニューモリシンを含有する4M尿素溶出画分を、10DGクロマトグラフィによりさらに精製し、尿素を除去した。1×PBS緩衝液で平衡化された10DGカラム(1.5×12cm)に、3.0mLの試料をアプライした。最初の3.0mLのフロースルーを捨てた。このカラムに3.9mLの1×PBS緩衝液を添加した。カラムから回収したこの3.9mLの画分について、280でのODを測定し、タンパク質画分を回収した。9%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により、タンパク質の純度を評価した。
【0133】
D.多糖類−タンパク質共役体の調製
2μgの肺炎連鎖球菌の多糖類18Cを、還元アミノ化アッセイを用いた直接共役により、シュードニューモリシンタンパク質(上記の項Cに記載)に共役させた。酸化された多糖類反応混合物に、0.1M PBS中の10mgのシュードニューモリシンを添加し、緩やかに撹拌しながら室温にて30分間インキュベートした。シアノボロヒドリドナトリウムを、20mMの最終濃度で添加した(例えば、750μLの100mMシアノボロヒドリドを、3mLの酸化された多糖類とシュードニューモリシンとの混合物に添加した)。この混合物を緩やかに撹拌しながら室温にて5日間インキュベートした。この共役体を9,000rpmにて10分間沈殿させ、次いで1〜2mLの0.1M PBS(pH7.2)に溶解させた。1×PBS(pH7.2)で平衡化したセファロースCL−4Bカラム(1.5×100cm)を用い、この混合物をクロマトグラフにかけた。タンパク質および多糖類の双方を含む画分をプールし、アミコン セントリコン−30(Amicon Centricon−30)(分子量カットオフ30,000)により濃縮し、次いでタンパク質および多糖類の含量をアッセイした。
【0134】
実施例5:多糖類−タンパク質共役体に対するマウスの抗体応答
実施例4に記載のように調製した肺炎連鎖球菌14、18C、19F、23F、4、6Bおよび9Vの多糖類シュードニューモリシンタンパク質共役体について、マウスで多糖類およびニューモリシンに対する抗体を増強する能力を試験した。水酸化アルミニウムアジュバント(0.1mg/用量)と混合された多糖類の用量あたり0.3、1、3μgの共役体を、雌のNIHスイスマウスの群に腹腔内注射した。いくつかの実験では、第2のマウス群は1μgの多糖類を投与され、および/または、第3のマウス群は1μgのシュードニューモリシンを投与された。2週間の間隔でマウスに2回のブースターを投与した。最後の注射の7日後、抗多糖類抗体および抗ニューモリシン抗体の血清レベルを測定した。表2に、投与された特定の共役体および、それぞれ図1〜14に示される実験で測定された免疫応答をまとめた。
【0135】
【表2】

【0136】
図1〜14の説明文では以下の略語が用いられている:リン酸緩衝化生理食塩水(「PBS」);共役体(「C」);水酸化アルミニウムアジュバント(「A」);および、シュードニューモリシン(「PPN」)。
【0137】
前記多糖類−シュードニューモリシン共役体で免疫されたマウスでは、His−タグ野生型ニューモリシンを用いたELISAに反応する抗体が誘導された。共役体およびアジュバントを投与された全ての群について、抗ニューモリシンおよび抗多糖類抗体のレベルがPBSおよびアジュバントのコントロールよりも有意に高かった(p<0.001、t−検定)。共役体を投与されたマウスの血清は、驚くべきことに、PBS単独で投与されたマウスと比較して、血清希釈係数がそれぞれ76800および9600と高力価の高ニューモリシンおよび高多糖類抗体を発現した。最高の抗ニューモリシンおよび抗多糖類抗体レベルは、3.0μgの多糖類−ニューモリシン共役体を投与されたマウスにおいて観察された(図1〜14)。アジュバントを投与したシュードニューモリシン群(図3)またはアジュバントを投与しなかったシュードニューモリシン群(図6)と比較して、多糖類−シュードニューモリシン共役体をアジュバントとともに投与された群で抗ニューモリシン抗体レベルが高かった。
【0138】
表3および4によれば、3.0μgの共役体を投与されたマウスが最高の応答百分率を有していたことが示される。これらの結果から、多糖類のシュードニューモリシンタンパク質への共役によって肺炎球菌ワクチンの有効性が改善されうることが示唆される。抗体の応答に加えて、共役体ワクチンを投与されたマウスにおいては、交差反応性免疫および細菌の減少も試験した(実施例8を参照)。
【0139】
【表3】

【0140】
【表4】

【0141】
図15は、マウスにおける、血清型14の多糖類−シュードニューモリシン共役体の3回目の注射の7日後の血清型14の多糖類に対する抗体の応答を示すグラフである。図15において、G1、G2、およびG3はそれぞれ、マウスあたり0.3μg、1,0μgおよび3.0μgの共役体ワクチンを注射されたマウスの群である。G4は、1.0μgの血清型14の多糖類を単独で注射されたマウスを示す。G5およびG6はそれぞれ、1.0および3.0μgのシュードニューモリシンを単独で注射されたマウスの群である。G7は、1.0μgの血清型14の多糖類−シュードニューモリシン共役体ワクチンをアジュバントなしで注射されたマウスの群である。G4、G5およびG6のマウスでは、ほとんどまたは全く、多糖類に対する抗体の応答が観察されなかった。
【0142】
実施例6:シュードニューモリシン、肺炎球菌オートリシン、および肺炎球菌表面タンパク質DNAワクチンのための発現ベクターの構築
A.DNAワクチンの構築のためのpVAX1ベクター
DNAワクチンの開発に用いるために、pVAX1ベクター(インビトロジェン)を特異的に設計した。この構築は、1996年12月22日に出版された食品医薬品局の文書である「感染性疾患の予防的適応のためのプラスミドDNAワクチンについて考慮すべきポイント」に沿ったものである。
【0143】
B.シュードニューモリシンのクローニングおよび発現
プライマーおよびテンプレートである肺炎球菌19A染色体DNAを含むレディトゥゴー(Ready−to−go)PCRビーズ(アマシャム ファルマシア バイオテック インコーポレイテッド、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)を用いてPCRを行った。PCRは以下のように実施した:94℃にて4分間を1サイクル;94℃にて1分間;55℃にて1分間;72℃にて1.5分間を30サイクル;および、72℃にて10分間を1サイクル。
【0144】
増幅したPCR産物を制限酵素を用いて消化し、pVAX1ベクターの部位へライゲーションし、pSA−8、pSA−45、pSA−12、pSA−42、およびpSA−41を作製した。この組み換えDNAを、形質転換によって大腸菌DH5α細胞に導入し、制限酵素を用いた消化によりチェックした。DNA配列決定により、インサート遺伝子を分析した。TnTキットを用いて製造者の説明書(プロメガ、マディソン、ウィスコンシン州)に従い、インビトロでの転写および翻訳を行って、インサート遺伝子の発現を確認した。
【0145】
pSA−8発現ベクターは、配列番号1のニューモリシンタンパク質のアミノ酸1〜460からなるポリペプチドをコードする。このインサートは、上記のように、LSYN−15プライマー:
【0146】
【化19】

【0147】
および、LSYN−4プライマー:
【0148】
【化20】

【0149】
を用いて、1380塩基対のDNAを増幅した。
【0150】
次いで、この1380塩基対のPCR産物をNheIおよびBamHIを用いて制限酵素切断し、pVAX1ベクターのNheIおよびBamHI部位にライゲーションして、pSA−8を作製した。
【0151】
pSA−45発現ベクターは、配列番号1のニューモリシンタンパク質のアミノ酸1〜464からなるポリペプチドをコードする。このインサートは、LSYN−15プライマー:
【0152】
【化21】

【0153】
および、LSYN−105プライマー:
【0154】
【化22】

【0155】
を用いて、1392塩基対のDNAを増幅した。
【0156】
次いで、この1392塩基対のPCR産物をNheIおよびBamHIを用いて制限酵素切断し、pVAX1ベクターのNheIおよびBamHI部位にライゲーションして、pSA−45を作製した。
【0157】
pSA−12発現ベクターは、配列番号1のニューモリシンタンパク質のアミノ酸1〜466からなるポリペプチドをコードする。このインサートは、LSYN−15プライマー:
【0158】
【化23】

【0159】
および、LSYN−17プライマー:
【0160】
【化24】

【0161】
を用いて、1398塩基対のDNAを増幅した。
【0162】
次いで、この1398塩基対のPCR産物をNheIおよびBamHIを用いて制限酵素切断し、pVAX1ベクターのNheIおよびBamHI部位にライゲーションして、pSA−12を作製した。
【0163】
pSA−42発現ベクターは、配列番号1のニューモリシンタンパク質のアミノ酸1〜469からなるポリペプチドをコードする。このインサートは、LSYN−15プライマー:
【0164】
【化25】

【0165】
および、LSYN−37プライマー:
【0166】
【化26】

【0167】
を用いて、1407塩基対のDNAを増幅した。
【0168】
次いで、この1407塩基対のPCR産物をNheIおよびBamHIを用いて制限酵素切断し、pVAX1ベクターのNheIおよびBamHI部位にライゲーションして、pSA−42を作製した。
【0169】
pSA−41発現ベクターは、配列番号1のニューモリシンタンパク質のアミノ酸1〜470からなるポリペプチドをコードする。このインサートは、LSYN−15プライマー:
【0170】
【化27】

【0171】
および、LSYN−38プライマー:
【0172】
【化28】

【0173】
を用いて、1410塩基対のDNAを増幅した。
【0174】
次いで、この1410塩基対のPCR産物をNheIおよびBamHIを用いて制限酵素切断し、pVAX1ベクターのNheIおよびBamHI部位にライゲーションして、pSA−41を作製した。
【0175】
非メチル化シトシン−グアニン(「CpG」)ジヌクレオチドを特定の配列順またはモチーフ中に含む核酸は、インビトロにおける種々のタイプの免疫細胞の強力な刺激剤でありうる。CpGモチーフを含む合成オリゴヌクレオチドは、B細胞を刺激して免疫グロブリン、IL−6およびIL−10、IFN−γを産生するNK細胞、並びにIL−6、IL−12、IL−18、TNT−αおよびIFN−αを産生する単球および樹状細胞を増殖および分泌させることにより、先天的な免疫系を直接活性化しうる。2つの5’プリンおよび2つの3’ピリミジンに連結された非メチル化CpGジヌクレオチドからなるDNAモチーフは、IL−6およびIL−12を産生するB細胞を刺激し、IL−6およびIFN−ガンマを産生するCD4+T細胞を刺激しうる。
【0176】
ニューモリシンの構造−機能分析によれば、システイン残基を含む、当該ポリペプチドのC末端のドメイン(アミノ酸427〜437に位置する)が細胞毒性に重要であることが示された。このシステインモチーフは、チオールにより活性化される細胞溶解素ファミリー間で高度に保存されている。このドメイン中での種々の一アミノ酸置換により、ニューモリシンの細胞毒性は有意に低下する。以下の核酸は、ニューモリシンのヌクレオチドの1272位および1274位に(部位特異的突然変異誘発法を用いて)GAGCGTTを導入することにより、このシステインモチーフをCpGで置換している。GAGCGTT免疫刺激性配列を含むこの変異核酸は、以下の通りである:
【0177】
【化29】

【0178】
他の実施形態においては、C末端の33ヌクレオチドを欠失したシュードニューモリシンのヌクレオチドの1272位および1274位に、(部位特異的突然変異誘発法を用いて)免疫刺激性DNA配列であるGAGCGTTを導入した。
【0179】
免疫刺激性配列を含むシュードニューモリシンDNAは、以下の通りである:
【0180】
【化30】

【0181】
D.肺炎球菌オートリシン遺伝子のクローニングおよび発現
pSA−59発現ベクターは、316アミノ酸のオートリシン(Aly)ポリペプチドをコードする。プライマーおよび肺炎球菌19A染色体DNA由来のテンプレートを含むレディトゥゴーPCRビーズを用いたPCRにより、血清型19AのAly遺伝子を増幅した。PCRは以下のように実施した:94℃にて4分間を1サイクル;94℃にて1分間;50℃にて1分間;72℃にて1分間15秒を30サイクル;および、72℃にて10分間を1サイクル。このインサートは、LSYN−74プライマー:
【0182】
【化31】

【0183】
および、LSYN−89プライマー:
【0184】
【化32】

【0185】
を用いて、948塩基対のDNAを増幅した。
【0186】
HindIIIおよびXhoIを用いて、PCRで合成したDNAを消化し、pVAX1のHindIIIおよびXhoI部位にライゲーションして、pSA−59(Aly)を作製した。この組み換えDNAを、形質転換によって大腸菌DH5α細胞に導入し、制限酵素(HindIIIおよびXhoI)を用いた消化によりチェックした。DNA配列決定により、Alyインサートを確認した。TnTキットを用いて製造者の説明書(プロメガ、マディソン、ウィスコンシン州)に従い、インビトロでの転写および翻訳を行って、pSA−59の発現を確認した。
【0187】
pSA−59Alyインサートの核酸配列は以下の通りである:
【0188】
【化33】

【0189】
このpSA−59Alyインサートによりコードされるアミノ酸配列は以下の通りである:
【0190】
【化34】

【0191】
E.N末端肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)遺伝子のクローニングおよび発現
pSA−60発現ベクターは、459アミノ酸のPspAポリペプチドをコードする。プライマーおよび肺炎球菌19A染色体DNA由来のテンプレートを含むレディトゥゴーPCRビーズを用いたPCRにより、血清型19AのPspA遺伝子を増幅した。PCRは以下のように実施した:94℃にて4分間を1サイクル;94℃にて1分間;50℃にて1分間;72℃にて1分間15秒を30サイクル;および、72℃にて10分間を1サイクル。このインサートは、LSYN−90プライマー:
【0192】
【化35】

【0193】
および、LSYN−78プライマー:
【0194】
【化36】

【0195】
を用いて、1377塩基対のDNAを増幅した。
【0196】
HindIIIおよびXhoIを用いて、PCRで合成したDNAを消化し、pVAX1のHindIIIおよびXhoI部位にライゲーションして、pSA−60(PspA)を作製した。この組み換えDNAを、形質転換によって大腸菌DH5α細胞に導入し、制限酵素(HindIIIおよびXhoI)を用いた消化によりチェックした。DNA配列決定により、PspAインサートを確認した。TnTキットを用いて製造者の説明書(プロメガ、マディソン、ウィスコンシン州)に従い、インビトロでの転写および翻訳を行って、pSA−60の発現を確認した。
【0197】
pSA−60PspAインサートの核酸配列は以下の通りである:
【0198】
【化37】

【0199】
このpSA−60PspAインサートによりコードされるアミノ酸配列は以下の通りである:
【0200】
【化38】

【0201】
実施例7:DNAワクチンの免疫原性
プラスミドベクターpSA−7は、全長ニューモリシンタンパク質をコードする。プライマーおよび肺炎球菌19A染色体DNA由来のテンプレートを含むレディトゥゴーPCRビーズを用いたPCRにより、血清型19AのPly遺伝子を増幅した。PCRは以下のように実施した:94℃にて4分間を1サイクル;94℃にて1分間;55℃にて1分間;72℃にて1.5分間を30サイクル;および、72℃にて10分間を1サイクル。Plyの5’末端のヌクレオチド1〜24に相補的なLSYN−15プライマー:
【0202】
【化39】

【0203】
を、Plyの3’末端のヌクレオチド1396〜1413に相補的なLSYN−3プライマー:
【0204】
【化40】

【0205】
とともに用いて、471アミノ酸の全長の野生型Plyタンパク質をコードする1413塩基対のDNAを増幅した。NheIおよびBamHIを用いて、PCRで増幅したこのDNAフラグメントを処理し、pVAX1発現ベクターのNheIおよびBamHI部位にライゲーションして、pSA−7を作製した。この組み換えDNAを、形質転換によって大腸菌DE5α細胞に導入し、制限酵素(NheIおよびBamHI)を用いた消化によりチェックした。DNA配列決定により、血清型19Aの野生型Ply遺伝子インサートを確認した。
【0206】
プラスミドベクターpSA−10は、C末端が断片化されたニューモリシンタンパク質(PlyのC末端の114アミノ酸を欠失している)をコードする。プライマーおよび肺炎球菌19A染色体DNA由来のテンプレートを含むレディトゥゴーPCRビーズを用いたPCRにより、血清型19AのPly遺伝子を増幅した。PCRは以下のように実施した:94℃にて4分間を1サイクル;94℃にて1分間;55℃にて1分間;72℃にて1.5分間を30サイクル;および、72℃にて10分間を1サイクル。Plyヌクレオチドの5’末端のヌクレオチド1〜24に相補的なLSYN−15プライマー:
【0207】
【化41】

【0208】
を、3’末端のヌクレオチド1054〜1071に相補的なLSYN−6プライマー:
【0209】
【化42】

【0210】
とともに用いて、357アミノ酸のポリペプチドをコードする1071塩基対のDNAを増幅した。NheIおよびBamHIを用いて、PCRで増幅したこのDNAフラグメントを処理し、pVAX1発現ベクターのNheIおよびBamHI部位にライゲーションして、pSA−10を作製した。この組み換えDNAを、形質転換によって大腸菌DE5α細胞に導入し、制限酵素(NheIおよびBamHI)を用いた消化によりチェックした。DNA配列決定により、血清型19Aのシュードニューモリシン遺伝子インサートを確認した。
【0211】
プラスミドベクターpSA−26は、CpGモチーフを有する全長ニューモリシンをコードする。3’末端にCpGを有する2つの相補的なオリゴヌクレオチドを含むPCRプライマーLSYN−34およびLSYN−33を用いて、PCR1およびPCR2を作製した。第2のプライマーであるLSYN−15およびLSYN−3はそれぞれ、ニューモリシンのN末端およびC末端の配列に相補的である。それぞれの増幅において、プライマーLSYN−15および34(PCR1)並びにLSYN−33および3(PCR2)、並びに全長ニューモリシン遺伝子を含有するテンプレートpSA−7を含むレディトゥゴーPCRビーズを用いたPCRにより、第1のPCR産物であるPCR1(1.2kb)およびPCR2(150kb)を作製した。第1のPCR産物を混合し、変性させ、第2のプライマーセットであるLSYN−15および3により作製される第2のPCR産物を作製するためのテンプレートとして用いた。NheIおよびBamHIを用いてこの第2のPCR産物を切断し、pVAX1のNheIおよびBamHI部位にクローニングして、pSA−26を作製した。PCRは以下のように実施した:94℃にて4分間を1サイクル;94℃にて1分間;55℃にて1分間;72℃にて1分間を30サイクル;および、72℃にて8分間を1サイクル。
【0212】
プライマーLSYN−3、LSYN−15、LSYN−33、およびLSYN−34の配列は以下の通りである:
LSYN−3プライマー;
【0213】
【化43】

【0214】
LSYN−15プライマー;
【0215】
【化44】

【0216】
LSYN−33プライマー;
【0217】
【化45】

【0218】
LSYN−34プライマー;
【0219】
【化46】

【0220】
この組み換えDNAを、形質転換によって大腸菌DE5α細胞に導入し、制限酵素(NheIおよびBamHI)を用いた消化によりチェックした。DNA配列決定により、CpGモチーフを有する血清型19Aの野生型Ply遺伝子インサートを確認した。
【0221】
プラスミドベクターpSA−27はCpGモチーフを含み、ニューモリシンのC末端断片をコードする(11アミノ酸を欠失している)。3’末端にCpGを有する2つの相補的なオリゴヌクレオチドを含むPCRプライマーLSYN−34およびLSYN−33を用いて、PCR1およびPCR2を作製した。第2のプライマーであるLSYN−15およびLSYN−3はそれぞれ、ニューモリシンのN末端およびC末端の配列に相補的である。それぞれの増幅において、プライマーLSYN−15および34(PCR1)並びにLSYN−33および3(PCR2)、並びに全長ニューモリシン遺伝子を含有するテンプレートpSA−7を含むレディトゥゴーPCRビーズを用いたPCRにより、第1のPCR産物であるPCR1(1.2kb)およびPCR2(150kb)を作製した。
【0222】
第1のPCR産物を混合し、変性させ、第2のプライマーセットであるLSYN−15および4により作製される第2のPCR産物を作製するためのテンプレートとして用いた。NheIおよびBamHIを用いてこの第2のPCR産物を切断し、pVAX1のNheIおよびBamHI部位にクローニングして、pSA−27を作製した。PCRは以下のように実施した:94℃にて4分間を1サイクル;94℃にて1分間;55℃にて1分間;72℃にて1分間を30サイクル;および、72℃にて8分間を1サイクル。
【0223】
プライマーLSYN−3、LSYN−4、LSYN−15、LSYN−33、およびLSYN−34のオリゴヌクレオチドは以下の通りである:
LSYN−3プライマー;
【0224】
【化47】

【0225】
LSYN−4プライマー;
【0226】
【化48】

【0227】
LSYN−15プライマー;
【0228】
【化49】

【0229】
LSYN−33プライマー;
【0230】
【化50】

【0231】
LSYN−34プライマー;
【0232】
【化51】

【0233】
この組み換えDNAを、形質転換によって大腸菌DE5α細胞に導入し、制限酵素(NheIおよびBamHI)を用いた消化によりチェックした。DNA配列決定により、CpGモチーフを有する血清型19Aのシュードニューモリシン遺伝子インサートを確認した。
【0234】
DNAベクターを用いた作製およびタンパク質を用いた増強を伴うワクチン化プログラムによって高レベルの特異的な免疫が生成し、場合によっては、現在ワクチンの開発に大きな問題を引き起こしている病原体に対する予防も可能となった。これらの実験では、ニューモリシンDNAベクターを用いて3回免疫し、アジュバントなしでニューモリシンタンパク質を用いて増強した。
【0235】
図16は、上述したシュードニューモリシンDNAのワクチン化のためにプライム−ブースト法を用いた、ウサギにおける抗ニューモリシン抗体の応答を示すグラフである。レーン1、2、および3は、第1の(1)、第2の(2)、および第3の(3)筋内へのシュードニューモリシンDNAのワクチン化の7日後の免疫応答を示す。レーン4はタンパク質増強(200μgニューモリシン)の10日後の応答を示す。レーン5は、タイターマックスアジュバントと一緒に200μgのニューモリシンタンパク質を注射した10日後の抗体の応答を示す。この結果から、DNAの3回の注射にタンパク質を用いた増強を加えると、アジュバントを用いた従来のタンパク質ワクチン化法と比較してより高い抗体の応答が得られることが示される。
【0236】
全体積0.1mLの1×PBS中のそれぞれ100μgの量のDNAワクチンであるpSA−59およびpSA−60、並びに1つのベクターコントロールプラスミドDNAを、それぞれBalb/Cマウスの双方の大腿四頭筋または後肢に筋肉注射した。マウスには注射の間に2週間の間隔を置いて100μgのDNAワクチンの4用量を注射した。最後の注射の7日後に、ELISAによりIgG抗体の血清レベルを測定した。4回の注射によるDNAワクチンを投与されたマウスは、コントロール群の9600倍超のIgG Abを産生した。これらの結果から、プラスミドDNAは、マウスにおいてインビボでオートリシンまたは肺炎球菌表面タンパク質A抗原を発現でき、免疫系を刺激して高レベルの特異的なIgG抗体を産生させうることが示される。
【0237】
図17は、PspA DNAワクチンを用いた4回目の注射の7日後の肺炎球菌の表面タンパク質Aに対する抗体の応答を示すグラフである。図18は、オートリシンDNAワクチンを用いた4回目の注射の7日後の肺炎球菌オートリシンに対する抗体の応答を示すグラフである。
【0238】
実施例8:毒性肺炎球菌のヘテロ血清型への感染に対する予防的免疫および交差耐性
2.5μgの血清型14多糖類−シュードニューモリシン(−7アミノ酸)共役体の3用量を、2週間の間隔を置いてマウスに腹腔内投与した。コントロール群では、前記共役体をPBSで置換した。3回目の注射の8日後に、0.1mLあたり1×10〜1×10CFU(コロニー形成単位)肺炎球菌を、免疫されたマウスに感染させた。注射されたミリリットルあたりのCFUの正確な数を、ヒツジ血液寒天プレート上でのプレート計数により決定した。感染の1、3、および5時間後に、各マウスの5μLおよび20μLの血液試料をヒツジ血液寒天プレート上に塗布し、37℃にて一晩インキュベートした。共役体でワクチン化されたマウスでは、感染後に、コントロールに対して血液試料からの細菌の減少の有意な差が検出された。
【0239】
図19は、血清型14多糖類−シュードニューモリシン共役体で免疫されたマウスが血清型14の肺炎球菌に感染した際の当該マウスの血液からの細菌の減少を示す。共役体で処理された群とPBSで処理された群とでは、感染の1、3、および5時間後のCFUに有意差がみられた(p<0.01)。
【0240】
図20は、血清型14多糖類−シュードニューモリシン共役体で免疫されたマウスが血清型7の肺炎球菌に感染した際の当該マウスの血液からの細菌の減少を示す。共役体で処理された群とPBSで処理された群とでは、感染の1、3、および5時間後のCFUに有意差がみられた(p<0.01)。これらのデータによっても、共役体で免疫されたマウスによって異種の肺炎球菌の血清型への感染に対する交差耐性が提供されることが示される。
【0241】
図21は、血清型14多糖類−シュードニューモリシン共役体で免疫されたマウスが血清型6Bの肺炎球菌に感染した際の当該マウスの血液からの細菌の減少を示す。共役体で処理された群とPBSで処理された群とでは、感染の1、3、および5時間後のCFUに有意差がみられた(p<0.05)。これらのデータによっても、共役体で免疫されたマウスによって異種の肺炎球菌の血清型への感染に対する交差耐性が提供されることが示される。
【0242】
図22は、血清型14多糖類−シュードニューモリシン共役体で免疫されたマウスが血清型18Cの肺炎球菌に感染した際の当該マウスの血液からの細菌の減少を示す。共役体で処理された群とPBSで処理された群とでは、感染の1、3、および5時間後のCFUに有意差がみられた(p<0.01)。これらのデータによっても、共役体で免疫されたマウスによって異種の肺炎球菌の血清型への感染に対する交差耐性が提供されることが示される。
【0243】
図23〜25は、血清型14多糖類−シュードニューモリシン共役体で免疫されたマウスが血清型23Fの肺炎球菌に感染した際の当該マウスの血液からの細菌の減少を示す。共役体で処理された群とPBSで処理された群とでは、感染の1時間後(図23)、3時間後(図24)、および5時間後(図25)のCFUに有意差がみられた(p<0.01)。これらのデータによっても、共役体で免疫されたマウスによって異種の肺炎球菌の血清型への感染に対する交差耐性が提供されることが示される。
【0244】
実施例9:オプソニン化食作用アッセイ
A.オプソニン化食作用アッセイ
ヒト多形核白血球(PMNL)を用いたオプソニン化食作用アッセイにより、血清型14の肺炎球菌の多糖類に対する抗体の機能的活性を測定した。抗血清を直列希釈(2倍)し、20μLの各血清試料を、ブレインハートインフュージョン(Brain Heatt Infusion)培地中に約200CFUを含有する細菌懸濁液20μLと混合し、37℃にて15分間インキュベートした。インキュベーション後、10μLの新生児ウサギ補体および40μLのPMNL(4×10細胞)を添加した。この混合物を5%CO雰囲気中で60分間、37℃にてインキュベートした。生存可能な細胞を計数するために、各試料からの20μLのアリコートを血液寒天プレート上に3枚播種し、37℃に一晩維持した。補体コントロールは、肺炎球菌に対する抗体を除く全ての試験試薬を含んでいた。オプソニン化食作用力価は、補体中での増殖と比較して50%超の細菌が死滅する最高の血清希釈の逆数として示した。
【0245】
B.食作用
健康な成人ボランティアから、単核球およびPMNLのデキストラン沈降およびフィコール(ficoll)(ICN Biomedical Company, #16−922−54 Lymphocyte Separation Medium)分離によって、新鮮なPMNLを単離した。ACK溶解緩衝液(BioFluids, Catalog number p304−100)を用いて赤血球を溶解させた。BME(Life Technologies GIBCO BRL, Basal Medium Eagle)中で細胞の最終濃度を1×10細胞/mLに調節した。各試料について、PMNL2〜4×10細胞の40μLを用いた。
【0246】
C.マウス血清および細菌
14多糖類に対するマウス抗血清をブレインハートインフュージョン培地で直列希釈(2倍、1:2〜1:256)し、各抗血清試料の20μLを、37℃にて15分間、20μLの細胞懸濁液(200CFUの肺炎連鎖球菌血清型14)と混合した。
【0247】
血清型14の肺炎連鎖球菌をブレインハートインフュージョン培地中で37℃にて10時間培養した。10倍直列希釈により、本実験に用いるための細菌の数を決定した。100μLの試料をプレート上にアプライした。1:10希釈の試料を用いたプレート上では10CFUが観察され。1:10希釈の試料を用いたプレート上では91CFUが観察された。従って、本実験に用いるための細菌の濃度は約1×109CFU/mLと決定された。血清型14の肺炎連鎖球菌の1×10CFU/mLを、1×10CFU/mLに希釈した。各試料について、200CFU/20μLを用いた。
【0248】
D.補体およびPMNL
インキュベーション後、10μLの新生児ウサギ補体(若いウサギの血清から新鮮に回収され、使用まで−80℃にて貯蔵されたアリコート)および40μLのPMNL2.8×10細胞を添加した。この混合物を、5%CO雰囲気中、37℃にて60分間インキュベートした。
【0249】
E.CFUの計数
生存可能な細胞を計数するために、各試料由来の2つの希釈(1:10および1:100)の20μLアリコートを、血液寒天プレート上に3枚播種し、37℃に一晩維持した。補体コントロールは、肺炎球菌に対する抗体を除き、全ての試験試薬を含んでいた。
【0250】
F.オプソニン化食作用活性
オプソニン化食作用力価は、補体中での増殖と比較して50%超の細菌が死滅する最高の血清希釈の逆数として示した。オプソニン化食作用の力価は、
【0251】
【表5】

【0252】
【表6】

【0253】
表5および6に示すように、血清型14多糖類およびシュードニューモリシンに対してより高い抗体の応答を有するマウス(例えば、マウス番号1、2、3、4、5、および7)は、より高いオプソニン化活性を示したのに対し、血清型14多糖類およびシュードニューモリシンに対してより低い抗体力価を有するマウス(例えば、マウス番号6および8)は、より低いオプソニン化活性を示した。PBSを注射されたマウスではオプソニン化活性は検出されなかった。
【0254】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明とともに記載したが、上記の記載は例示のためのものであって、本発明の技術的範囲を制限するものではないと解されるべきである。本発明の他の形態、利点、および修飾は、下記の特許請求の範囲内のものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における肺炎連鎖球菌のニューモリシンに対する免疫応答を誘発するための医薬の製造における、肺炎連鎖球菌のニューモリシンポリペプチドまたはその抗原性フラグメントをコードする核酸を含むヌクレオチド配列に対して作動可能なように結合したプロモータを含む哺乳動物発現ベクター、および、精製されたニューモリシンポリペプチドまたはその抗原性フラグメントの使用。
【請求項2】
前記哺乳動物に対して、前記発現ベクターを少なくとも2つの異なる用量で投与する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ニューモリシンポリペプチドまたはその抗原性フラグメントの投与が、前記発現ベクターの投与の少なくとも1週間後である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
肺炎連鎖球菌の表面タンパク質Aポリペプチドをコードする核酸を含むヌクレオチド配列に対して作動可能なように結合したプロモータを含み、ベクターが哺乳動物へ投与されたときに、前記ポリペプチドが肺炎連鎖球菌に対する免疫応答を誘発する、哺乳動物発現ベクター。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、配列番号18のアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の哺乳動物発現ベクター。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、配列番号18のアミノ酸配列からなる、請求項4または5に記載の哺乳動物発現ベクター。
【請求項7】
前記免疫応答が、液性免疫応答を含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載の哺乳動物発現ベクター。
【請求項8】
前記免疫応答が、細胞性免疫応答を含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載の哺乳動物発現ベクター。
【請求項9】
哺乳動物における肺炎連鎖球菌に対する免疫応答を誘発するための医薬の製造における、請求項4〜8のいずれか1項に記載の哺乳動物ベクターの使用。
【請求項10】
前記免疫応答は、少なくとも1つの連鎖球菌属の肺炎連鎖球菌以外の種に対して交差反応性である、請求項9に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−139221(P2012−139221A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−25451(P2012−25451)
【出願日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【分割の表示】特願2009−253536(P2009−253536)の分割
【原出願日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【出願人】(505168975)シナジー アメリカ,インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】