胃腸障害の管理
呼気検査と他の検査を継続して実行することにより胃腸状態を特定するための方法及びシステム、特に被験者の胃排出又は胃調節を特定するための呼気検査及びシステムが提供されている。様々な検査食により継続的胃調節検査を行うための方法及びシステムも提示されており、特定されるべき胃調節を特定可能にする。結果に対する様々な検査食の効果も提示されている。かかる検査において使用するため、マイクロカプセル化の使用など、の新規基質も提示されている。細菌増殖、ラクトース不耐性及びそれらの組み合わせの検出のための呼気検査も提示されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は胃および胃腸機能障害の様々な状態を決定するための方法の分野に関し、特に呼気検査により行われる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先進国の総人口の25%よりも多くが様々異なる程度の機能性消化不良および/または過敏性腸症候群IBSを羅患している。このような症状は本願の目的のために機能性GI障害と称される。これらの障害は特定可能な原因のないGI症候群によって特徴付けられる臨床症候群である。生理学的原因が特定されると、これらの障害はより正確には器質的消化不良または腸不全と称される。消化不良症候群の症群は、へその周囲もしくは上の腹部の中央で一般に感じられる痛みや不快感に通常関連する。不快感の幾つかの例としては満腹感、早期飽満感(これは食べ始めた直後の満腹感である)、鼓腸感および嘔吐感が挙げられる。これらの全てを説明する単一の器質的障害は存在しないが、これらの症候群をもった全患者の約3分の1は胃排出の遅延(delayed gastric emptying)があり、通常は起こらないが重くなると頻繁な嘔吐が起こる。さらに、3分の1は、異常な胃の調節反射(abnormal gastric accommodation reflex)として知られている状態である、食物摂取後の上胃の弛緩故障を示す。これらの患者における胃排出遅延の羅患率は無症候者と比較して顕著に高いわけでないが、これらの症候群を有する患者の約半数は胃内容物が少量であるときでも不快感を生じる過敏性または刺激性の胃も有する。胃排出研究は胃の内容物排出不良があるかどうかを示すことができる。他の運動性障害は比較的に検出困難であるが、C.ステンダール(C. Stendal)著, "Practical Guide to Gastrointestinal Function Testing"(胃腸機能検査の実用ガイド), 第197-201 頁, Blackwell Science Ltd, Oxford, U.K.,(1997)発行に記載されているような、バロスタット(barostat)と呼ばれるコンピュータ制御されたポンプに接続された胃内バルーンを使用する方法が開発されており、この方法は以下:
(a)拡張、または上胃が食中に十分に弛緩するかどうか、および
(b)胃調節、または痛みや不快感を引き起こすのにどの位の胃の内容物充填が必要かを示すことができる。
【0003】
バロスタット研究は、胃内圧の関数として胃体積、もしくはその逆、および/または、異なる胃体積での胃内圧変化に対する症候反応を測定することによって、消化不良症候群と調節障害との間の関係を示してきた。このようなバロスタット方法では、液状食が投与されるが、この液状食は多量の水(2リットルまで)、アイソトニックまたは高カロリー値溶液、例えばエンシュア(Ensure)やゲータレード(Gatorade)、スープ、またはグルカゴン輸液であってよい。次に、ある体積のバルーンについて、胃の不快感や痛みを誘発するのに必要な圧力が測定される。この方法は侵襲的で、患者にとって不快であり、広い臨床用途には非実用的である。さらに、バロスタット・バッグは胃の運動性と干渉することがあり、このことは不正確な結果を生じる。消化不良の器質性原因の他の例はヘリコバクター・ピロリ(Helicobactor pylori)感染である。
【0004】
糖尿病患者、パーキンソン病の薬物療法を受けている患者、等のようなリスクグループの無症候患者もまた、それらの主障害の予後に影響を与え得る具体的なGI障害を決定するための調査から恩恵を受ける。例えば、障害のある胃排出は糖尿病患者において血糖調節に影響を与えることがある。
【0005】
胃は、一般に、2つの分離した解剖学的部分、すなわち、上、近位または底部、および下、遠位または腔部、に分けて説明される。上(近位または底)胃は、食物が入ることにより拡張し、食物貯蔵所として機能するとともに、液状物と胃内容物を胃から外に押し出すポンプとして機能する。下(遠位または腔)胃の機能は、食物をより小さな粒子にすり潰すとともに、それを消化液とともに混合してそれが小腸に到達する時には吸収できるようにすることである。胃はまた、小腸を損傷したり又は過負荷をかけることになる食物または酸の広範囲の送達を回避するために制御された速度で、胃の内容物を小腸に排出する。
【0006】
胃には以下の3種類の動きが一般に認められる。
1.閉じた括約筋(幽門括約筋)に跳ねかけて食物を小粒子にすり潰す消化液と食物粒子の波を生じさせる、胃の下部における約3回/分の速度での律動的で同調した収縮。
2.胃の上部は、体積が変化する間に一定の圧力を保持する胃に食物が入ることを可能にする、各嚥下の後に1分以上持続する、ゆっくりした緩和を示す:他の時に、胃の上部は、胃の排出を助ける圧力の勾配を生じさせる、ゆっくりした収縮を示す。
3.全ての消化可能な食物が胃を出た後の食間では、幽門括約筋が開くことに伴われる非常に強い同調した収縮の時々の突発が起こる。これらは、その機能がいずれの摂取可能な粒子をも胃の外に掃きだすことにあるので、時として「ハウスキーパー波」とも呼ばれる。その別名は転移運動コンプレックス(migrating motor complex)である。
【0007】
前述したように、バロスタット方法は侵襲的で、不快で、広い臨床用途には非実用的であり、必ずしも正確な結果を与えないことがある。さらに、胃単独の拡張と充填の障害の決定にとって制限的であり、通過時間(transit time)または吸収不良に広く関連する障害あるいはIBS障害と呼ばれる障害のようなGI管でそれ自体兆候になる他の障害については他の検査を適用する必要がある。このような胃およびGI機能障害の広く蔓延する羅患率のため、このような障害の多様な形態を識別および診断するための簡単、迅速、容易に我慢でき、かつ信頼できる検査法を得ることが重要になっている。
【0008】
C.ステンダールの上記文献は、本願の主題の背景のレビューとして特に有用である。この欄および本明細書の他の欄に言及される公表物の各々の開示が、ここで参照されることにより各々がその全体として取り込まれる。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明は、消化不良またはIBSを羅患する患者ならびにリスクグループにある無症候患者における胃の障害のより正確な診断を可能にする新たな方法を行うことにて使用するための新たなる装置およびキットを提供することを目的とする。特に、GI障害決定のための専用の呼気検査によって、より正確な診断を可能とする方法が提案される。これらの方法は呼気検査の形態で行われる場合、患者が容易に我慢できるとともに、多くの従来技術の胃障害のための検査とは対照的に、医師によってのみ実行され得る程に十分に簡単である。本発明の譲受人に譲渡された"Breath Test Analyzer"(呼気検査分析装置)に関する米国特許第6,186,958号に記載されているような、リアルタイムの結果を与える自動化呼気検査手順は、検査を迅速化するだけでなく、本発明に係る方法の幾つかの実用的実行を可能とするためにほぼ不可欠でもある。ここで結果のほぼ連続的な、オンラインモニタリングは、検査を、リアルタイム結果の提供が不可能である従来技術の方法よりも早く終らせることを可能にする。しかし、本発明の装置であって、胃排出(gastric emptying)および胃調節(gastric accommodation)に関連する本発明の方法を少なくとも行うための装置は、食の、以後の胃腸進行をできる他の型のものでもありうる。呼気分析のための他の係る型としては、同位体比マススペクトロメーターなどが挙げられる。呼気検査と無関係な他の装置の型としては、MRIイメージング装置、コンピュータ断層撮影システム、シンチグラフィーイメージング装置(ガンマカメラ)、X線装置、超音波イメージング装置など下に記載したものが挙げられる。しかし、ほかに留意されない限り、そして適用の簡素化のために、本発明の様々な実施態様を記載さするために使用される装置は概ね、呼気検査装置である。
【0010】
さらに、本発明の好適な方法及び装置は、このような患者の処置の制御管理を可能とする。GI患者は安定でない症候をしばしば示す;それ故に継続中の検査を行わない症候のみによる処置は問題となり得る、という最近の調査結果により、これら本発明の方法の重要な臨床的な利点は明らかである。
【0011】
本発明の好適な方法および装置によって診断および追跡できる障害は、以下の2つの群に分けることができる。
(A)(i)胃排出の遅延;
(ii)胃調節の乱れ;
(iii)ヘリコバクター・ピロリ感染の効果;
および(iv)胃の化学的感覚
などの、胃の領域での感覚と一般に関連する消化不良型障害。
(B)(v)細菌過剰増殖;
(vi)ラクトース不耐性;
およびオロセカル(Orocecal)通過時間障害
などの、過敏性腸症候群型障害。
【0012】
消化不良に対する異なる生理学的所見を評価することは、適切な処置の処方を可能にする。例えば、胃排出の遅延と正常な胃調節を示す患者は、プロキネティック(pro-kinetic)(薬剤、ダイエットなど)により処置することができる。他の例では、異常な胃調節と陽性のH.ピロリ用尿素呼気検査を示す患者は、H.ピロリ根絶単独で又は底部緩和薬(fundus-relaxing agent)と併用して処置することができる。
【0013】
本発明の更なる他の好ましい実施態様に従い提供されているのは、さらに1組の1以上の食、被験者の胃を出た食の体積の関数として1以上の食の胃排出パラメータを2以上測定することによって該被験者の胃調節の測定において使用するための、該被験者の胃中で1以上の食の滞留を生じさせるために有効である1以上の成分を含んでなり、そして所定の体積を有する1以上の食の組が提供されている。好適に前記1以上の食は1つの食であり、そして2以上の測定は当該食に対して行われる。さらに、2以上のパラメータのうちの1以上の測定は、被験者の胃からの食の液体排出段階において行われる。なお、前記1以上の食が2以上の食であり、そして2以上の測定が2以上の食の最初の1つに対して行われ、そして2以上の測定のうちの第2番目になるものが該2以上の食のうちの第2のものに対して行われる。2以上の食のうちの第1のものは、該2以上の食のうちの第2のものよりも大量、または小量あってよい。
【0014】
本発明の上記の好ましい実施態様において、所定の体積とは150ml以上であり、そして前記組の食の少なくとも1つは、被験者の胃を離れた後に検出されるマーカーを含んでなる。該マーカーは、被験者の呼気中その存在下によって、または被験者の体内で検出されてよく、体内での場合、それは好ましくは被験者の胃腸管中にそれが存在することにより検出されてよい。
【0015】
本発明の上記実施態様において、前記少なくとも1つの食の組は、好ましくは:
150kcal以上のカロリー値、
5%以上の脂質含量、
10%以上の炭水化物含量、
5%以上のタンパク質含量、および
3未満のpH値、
を少なくとも1つ含んでなる。該炭水化物は、好ましくはグルコースである。
【0016】
本発明のさらなる他の好ましい実施態様によれば、呼気検査において被験者によって使用されるための単回投与液状食であって:
(i)500ml以上の体積、
(ii)食の胃滞留を生じる剤、および
(iii)マーカーであって、胃の環境に適しており、そして被験者の胃を出ることによって検出可能なマーカー、
を含んでなる食が提供されている。
【0017】
食の胃滞留を生じる剤は、好適に少なくとも:
(i)150kcal以上のカロリー値、
(ii)5%以上の脂質含量、
(iii)10%以上の炭水化物含量、
(iv) 5%以上のタンパク質含量;および
(V)3未満のpH値、
の1つを含んでなる。
【0018】
本発明のさらに他の好ましい実施態様によれば、さらに、被験者の胃調節を測定するための装置であって、被験者に対して、少なくとも1つが被験者の胃を出ることによって検出可能であるマーカーを含んでなる第1及び第2食の連続投与の後に、被験者の胃調節を測定するための装置が提供されている。
【0019】
該装置は:
検出装置であって、マーカーを、それが被験者の胃を出ることによって検出し、そして被験者の胃からの食の排出の速度に関する情報を担持するマーカー出力信号を供する検出装置、ならびに
データ処理システムであって、該マーカー出力信号を受けて、第1食の胃排出を特徴づける第1の組のパラメータ、および第2食の胃排出を特徴づける第2の組の対応するパラメータを計算し、そして第1および第2の組のパラメータに対応する2つのパラメータを比較することによって胃調節を決定するデータ処理システム、
を含んでなる。この装置を使用する際、前記第1および第2食は、異なった体積であってよく、この場合、胃調節は該第1および第2食の体積によるパラメータの依存性から決定される。代替的に且つ好ましく、前記第1および第2食は類似する体積であってよく、そして該第2食は、該第1食が被験者の胃から排出される前に投与される。
【0020】
最後に挙げた装置の実施態様のすべてにおいて、前記処理システムは好適に、第1食が被験者の胃から排出される前に第2食の1組のパラメータを比較するようになっている。さらに、マーカーは好適に被験者の呼気中にそれが存在することによってかあるいは被験者の体内で検出され、そしてもしそのように体内での検出ならば、このましくは被験者の胃腸管におけるその存在により検出される。
【0021】
上記装置において、前記処理システムによって計算された所定の組のパラメータは少なくとも、t1/2、tlag、CEG、CPDR、および時間の関数としてDoBのプロット下の積分のうちの1つを含んでなる。
【0022】
本発明のさらに他の好ましい実施態様によれば、被験者における胃調節の診断のためのキットであって:
(i)第1の所定体積および第1の所定胃滞留特性を有する第1食をマーキングするためのある量の物質、
(ii) 第2の所定体積および第2の所定胃滞留特性を有する第2食をマーキングするためのある量の物質、ならびに
(iii)第1食および第2食の調製に関連する情報を供するプロトコール、
を含んでなるキットが提供されている。前記プロトコールは好ましくは、第1食および第2食の被験者に対する投与に関連する情報を供し、そしてまた第2食が摂取される場合、その時点に関連する情報を、第1食について測定した胃排出の結果に従い供する。該キットは前記食のうちの少なくとも1つを調製するために必要な物質をも含んでなってよく、そして呼気回収装置をも含んでよく、それは一般にディスポーザブル装置である。
【0023】
本発明のさらに他のこのましい実施態様に従い、被験者の1以上の胃腸管状態を特定するための呼気検査装置であって:
(i)被験者から標識した基質の消化の後に呼気を回収するための呼気回収装置、および
(ii)被験者の呼気における標識された基質の産物を検出するためのガス分析装置、
を含んでなる装置が提供されており、ここで、該呼気検査装置および該標識された基質は被験者に関連する胃腸情報を提供する可能な呼気検査グループから選択される第1呼気検査を行うために適合され、そしてここで該呼気検査装置および標識された基質も、第1呼気検査の結果に従い、該呼気検査グループから選択される第2呼気検査を行うために適合されており、従って、被験者の胃腸状態は、少なくとも該呼気検査の1つの結果から測定される。
【0024】
この呼気検査装置において、胃腸状態は少なくとも消化不良および過敏性腸症候群のうちの1つを含んでなりえ、そして該消化不良は従って、胃腸排出障害、胃腸調節障害、およびヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染のうちの1つから生じうる。なお、前記過敏性腸症候群は少なくとも、糖吸収不良障害、細菌過剰増殖、およびオレセカル(orececal)経過障害のうち1つから選択されうる。かかる場合には、糖吸収不良障害は、ラクトース不耐性(intolerance)、フルクトース不耐性、スクロース不耐性およびマルトース不耐性のうちの少なくとも1つである。
【0025】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、被験者の胃排出の測定をするための呼気検査装置であって:
(i)ガス回収装置であって、被験者から、マーカーを含んでなる検査食の投与後に吐かれた呼気サンプルを回収するためのガス回収装置。該食の副産物は、該被験者の胃からのマーカーの排出の速度に従って、被験者の呼気中に吐き出される。
(ii)ガス分析装置であって、回収した呼気を分析するためのガス分析装置。ここで分析は本質的に連続的に行われる。及び
(iii)計算システムであって、呼気検査が進むにつれ、ここでt1/2、tlag、デルタ・オーバーベースライン(DoB)曲線強度、および時間の関数としてDoBのプロット下の積分、および被験者の胃排出係数(GEC)パラメータのうちの少なくとも1つを計算する計算システム、
を含んでなる装置が提供されており、ここで該呼気検査装置は1以上のパラメータの最終推定値を決定すること、ならびに該パラメータが該パラメータ値についての公知の基準から有意に離れているかどうかを決定することによって胃排出障害の兆候を供する。この装置は従って、好ましくは、被験者の胃排出障害を示すために提供されており、その間に該被験者はなおも前記分析装置に対して呼気サンプルを供し、または代替的に且つ好ましく、被験者の呼気の継続中(on-going)分析に従いサンプルを供する。
【0026】
本発明のさらなるこのましい実施態様によれば、同位体呼気検査のための基質であって、マイクロカプセル化コーティング物質中に同位体標識した物質を含んでなる基質が提供されており、ここで該マイクロカプセル化コーティング物質の特性は、該同位体標識された物質が胃腸管の所定の部分で放出されるように選択される。該マイクロカプセル化コーティング物質は、好ましくは、それが通過する環境のpH値に従い破壊されて同位体標識された物質が放出されるように選択される。代替的に且つ好ましく、該物質は、それが被験者の胃を離れた後にのみ破壊され同位体標識された物質を放出するような物質である。後者の場合には、前記同位体標識された物質は十二指腸を通過するのを特定するためのマーカーとして使用されてよい。本発明のさらに好ましい実施態様によれば、前記マイクロカプセル化コーティング物質は、それが通過する酵素的環境から生じる酵素活性の効果の下で破壊されて同位体標識された物質を放出するように選択される。酵素は、好ましくは、膵臓および胆嚢のうちの少なくとも1つによって分泌されるものであってよく、従って前記同位体標識された物質は十二指腸の通過を特定するためのマーカーとして使用される。
【0027】
一般に、マイクロカプセル化コーティングは、従って好ましくはそれが同位体標識された物質自身よりも投与される食に対して一層容易に結合できる。
【0028】
本発明の好ましい実施態様によれば、被験者の胃調節を測定することにおいて使用するための第1および第2液状食の組が提供されており、該第1液状食は第1の所定体積を含んでなり、そして第2液状食は、該第1の所定体積よりも大きい第2の所定体積を含んでなり、且つ所定の胃滞留特性を有し、ここで該第2液状食は、該被験者に対して、該第1食が該被験者の胃から排出され始めた後に投与され、そしてここで被験者の胃調節は測定された第2食の排出の速度と第1食の排出の速度との間の偏差に従い決定される。好ましくは、前記第2の所定の体積は被験者において胃拡張を引き起こすのに十分であり、そして好ましくは500ml以上の液体であってよい。上記の食の組において、胃滞留特性は従って、所定のpH、所定のカロリー値および第2液状食の所定の成分のうち少なくとも1つから選択されてよい。前記所定のpHは、好ましくは3.0未満であり、前記所定のカロリー値は好適に150kcal以上であり、そして所定の成分は好ましくはアイソトニック成分である。前記第2液状食は、好ましくは、前記第1食が投与された被験者の胃から排出される速度と同じくらいすぐに投与されるかあるいは該第1食の被験者に対する全生理学的効果が本質的に終了した後に投与されてよい。代わりに、前記第2液状食は第1食の連日に投与されてよい。さらに、排出の速度は任意の呼気検査、シンチグラフィー、X線、コンピュータ断層撮影、ガンマイメージングまたは超音波法によって測定されてよい。
【0029】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、所定の体積を含んでなり且つ所定の胃滞留特性を有する、被験者の胃調節を測定することにおいて使用するための液状食が提供されており、ここで大多数の正常な被験者に関する該食の平均胃排出速度は公知であり、そして被験者の胃からの該食の排出速度が測定され、そして被験者の胃からの該食の排出の速度と大多数の正常な被験者に関する該食の排出の平均速度と間の偏差は該被験者の胃調節の兆候を供する。好ましくは、前記所定の体積は、被験者において胃拡張を引き起こすのに十分であり、そして好ましくは500ml以上の液体であってよい。上記の液状食において、胃滞留特性は従って、所定のpH、所定のカロリー値および液状食の所定の成分のうち少なくとも1つから選択されてよい。前記所定のpHは、好ましくは3.0未満であり、前記所定のカロリー値は150kcal以上であり、そして所定の成分は好ましくはアイソトニック成分である。さらに、排出の速度は任意の呼気検査、シンチグラフィー、X線、コンピュータ断層撮影、ガンマイメージングまたは超音波法によって決定されてよい。
【0030】
本発明のさらに好ましい他の実施態様によれば、同位体標識された液状食であって、所定の体積を含んでなり且つ所定の胃滞留特性を有する、被験者の胃内圧に対する食の体積の効果を測定することにおいて使用するための液状食が提供されており、ここで被験者の胃からの該食の排出速度は、様々な所定の体積の食について、該食の同位体標識された生成物を検出するために行われる呼気検査によって決定される。
【0031】
本発明のさらに好ましい他の実施態様によれば、被験者に対して投与される食であって、該被験者の胃腸障害を特定するための使用される食が提供されており、該食は少なくとも第1マーカーおよび第2マーカー物質を含んでなり、従って該第1物質は一般に被験者の胃において吸収されることはなく、そして所定のガスを腸内細菌の存在下で放出し、そして該第2物質は従って、該被験者の胃腸管内での該食の位置を示し、そしてここで被験者における所定のガスの生成は呼気検査によって検出され、そして該所定のガスが生成される被験者の胃腸管の位置は、該第2マーカー物質によって決定される。上記の食において、前記第2マーカー物質の副生成物は呼気検査によって検出されてもよく、従って、被験者の胃腸管における所定のガス生成の位置は、被験者呼気における所定のガスの出現と該マーカー物質の副生成物の出現との間の時間的関係によって特定される。前記第2マーカー物質は好ましくは炭素同位体で標識され、そして前記副生成物は同位体標識された二酸化炭素である。さらに、前記第1物質は好ましくは被験者の小腸で代謝される糖であってよく、従って前記第2マーカー物質の検出の時間に対する所定のガスの検出の時間が、小腸における細菌過剰増殖の存在を特定するために使用される。この場合には、前記第2物質は、標識された糖であってもよく、被験者の小腸でも代謝され、従って一般に、被験者の呼気における所定のガスと第2マーカー物質の副生成物の同時出現が該被験者における細菌過剰増殖の存在の兆候であってよい。加えて、前記第2物質は好ましくは被験者の小腸で代謝される標識された糖であってよく、従って該被験者の呼気において、所定のガスの出現より有意に早い第2マーカー物質の副生成物の出現は、一般に該被験者における細菌過剰増殖の存在の兆候でありうる。上記の食において、前記第1物質は好ましくはグルコースおよびラクトースのうちの少なくとも1つである。前記第2物質は、標識された酢酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム、グルコース、アセチルロイシン標識、またはマイクロカプセル化標識基質のうちの少なくとも1つである。
【0032】
上記食の全てにおいて、前記第1物質は一般に好ましくは、被験者の小腸で代謝される糖であってよく、従って、所定のガスの検出は、被験者のオロカエカル(orocaecal)通過時間を測定するために使用されてよい少量の第2マーカー物質の検出と本質的に同時である。代替的に且つ好ましく、前記第1物質は被験者の小腸において消化不良を起こすと考えられるグループの糖であり、従って、それは被験者の結腸で吸収されるにはいたらず、該結腸では所定のガスが結腸性細菌の存在によって生成され、従って、第2マーカー物質の検出の時間に対する所定のガスの検出の時間が、該被験者の糖不耐性を特定するために使用されてよい。そしてまた前記第2物質は被験者の小腸において吸収される同位体標識された物質であって良く、従って、第2マーカー物質の標識された副生成物の検出と本質的に同時の所定のガスの検出が該被験者の糖不耐性を特定するために使用されてよい。前記第2物質は一般に、副生成物が小腸で吸収される炭素同位体標識された物質であってよい。加えて、前記第2物質は小腸で吸収される同位体標識された物質であってよく、従って、所定のガスおよび第2マーカー物質の標識された副生成物の検出の相対的な時間および量は、被験者が糖不耐性および細菌過剰増殖の1つまたは両方を罹患しているかどうかを特定するために使用されてよい。
【0033】
本発明のさらに他の好ましい実施態様によれば、上記食の使用において、第2マーカー物質の標識副生成物の検出と本質的に同時におこる、細菌の存在下での第1物質の小部分に特徴的な、少量の所定のガスの検出は、被験者が細菌過剰増殖を罹患していることの兆候として使用される。第2マーカー物質の標識された副生成物の検出より遅い所定のガスの検出は、被験者が糖不耐性を罹患していることの兆候でありうる。第2マーカー物質の標識副生成物の検出と本質的に同時に生じる、細菌の存在下での第1物質の大部分に特徴的な、多量の所定のガスの検出は、好ましくは、被験者が糖不耐性および細菌過剰増殖を罹患していることの兆候でありうる。第2マーカー物質の標識された副産物の検出と本質的に同時に生じる、細菌の存在下で大多数の第1物質に特徴的な、多量の所定のガスの検出は、被験者が糖不耐性及び細菌過剰増殖を罹患していることの兆候でありうる。上記食全てにおいて、糖は好ましくは、ラクトース、フルクトース、マルトースおよびスクロースからなるグループのうちの少なくとも1つでありうる。さらに、所定のガスは水素および/またはメタンでありうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
ここで、上で規定されたGIハイリスクグループに属する無症候患者について、あるいいは消化不良またはIBSの症候を有する患者について、可能な検出および処置のコースを説明するフローチャートを模式的に示す図1Aおよび図1Bを参照する。このフローチャートは、包括的診断処置ルーチンのための確定的アルゴリズムを示すことが意図されるのではなく、むしろ、本発明の好適な実施態様に係る方法および装置を用いて行うことができる、処置医師に開かれた可能なコースのいくつかを示すことが意図される。図1Aおよび図1Bに示される好適な方法による検査は呼気検査として記載されるが、これらは下に記載されるような他の検査によっても同様に良好に行うことができる。
【0035】
また、上述のGI問題のいずれかを有する疑いのある患者について検出および処置の方法を示す代替的模式図である図1Cを参照する。図1Cのフローチャートでは、医師が患者の症候の強さまたは緊急性の順に必要な検査を行うことができるように、提案される検査法が並列配置で体系化されている。したがって、例えば、胃液逆流(gastric reflux)を羅患する被験者は最初にヘリコバクター・ピロリ(H・p)感染について検査されることになり、そしてこの検査が陰性を示す場合、または該検査が陽性を示し、かつ、処置が症候を除去しない場合にのみ、ヘリコバクター・ピロリ以外の他の検査に着手することが必要となるであろう。
【0036】
本発明の好適な実施態様の方法及び装置に係る方法による、図1Bに示される呼気検査の各々の実行方法について、ここで更に詳細な説明を行う。
以下の各欄において、前記検査は一般に呼気検査との観点において記載されており、これは特に該検査を行う都合よい方法であり、それらは、適宜、下に記載の他の方法および装置によって行われて良い。係る代替的な方法またはシステムの使用は、胃排出検査および胃調節検査に対して特に適用可能であるが、呼気検査もなお選定の方法でありうる。
【0037】
1.ヘリコバクター・ピロリについての呼気検査
ヘリコバクター・ピロリ感染についての呼気検査は、本願の譲受人に譲渡された"Breath Test for the Diagnosis of Helicobacter pylori in the Gastrointestinal Tract"(胃腸管におけるヘリコバクター・ピロリの診断用呼気検査)に関する米国特許第6,067,989号によく記載されており、ここで参照されることによりその全体が本明細書に取り込まれるため、ここでは該検査自体について更に詳細な説明は行わない。図1Bの診断階層における該検査の使用および位置は上に記載され、また図1C、5C及び5Dに関して下に記載される。
【0038】
2.胃排出呼気検査(GEBT)
胃排出の遅延に関連する症状としては、嘔気、嘔吐および糖尿病患者における不安定な血糖値が挙げられる。胃の排出不良は、以下の幾つかの理由により起こり得る。
1.幽門および十二指腸を含め、胃の出口は、潰瘍または腫瘍により、あるいは嚥下された大きな摂取可能物により閉塞されることがある。
2.胃への出口の幽門括約筋が食物の通過させるために十分に又は適度な回数で開かないことがある。この括約筋は、非常に小さな粒子のみが胃を出ることを確保するように、また胃を一度出て小腸に入ることができる食物または酸の量を制限するように、神経反射により調節されている。これらの反射は神経に依存するが、この神経は時として損傷を受け得る。
3.胃下部の正常に律動する3回/分の収縮が乱されるため、胃の内容物が幽門括約筋に対して押し出されないことがある。これも通常は神経に起因し、最も一般的な原因は長期的な真性糖尿病であるが、多くの患者では胃排出の遅延の原因は不明であり、そのため特発性胃不全麻痺として診断が与えられる。
【0039】
固形物の胃排出の決定方法は、シンチグラフィの分野において、放射性同位体標識された炭素基質を使用して従来から開発されている。このような方法では、標識基質の排出の進行が、一般には、放射性同位体から放出される放射線の直接的イメージングにより追跡される。類似の時間パラメータを測定するための呼気検査が提案されており、ここで胃からの標識基質の排出の進行は、患者の体内に残るものを測定するのではなく、被験者の息からの吐き出された基質の標識された副生成物を観視することにより追跡される。従来技術の胃排出呼気検査(GEBT)は、一般に、使用される検査プロトコルにより、患者を正常、軽度の遅延および遅延と分類する。
【0040】
従来技術のGEBTは、大抵の場合に、マーカーとしてC13 またはC14 で標識された基質を有する150〜350キロカロリーの固形検査食を投与することにより行われるのが一般的である。このような基質の例は、オクタン酸、オクタン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、またはアセチルロイシンのようなアシルアミノ酸、等である。
【0041】
これらの基質の最適特性は以下の通りである:
1.胃の酸性環境における検査食及び未放出物への良好な結合;
2.胃を出る時の検査食からの迅速な放出;
3.迅速な吸収、代謝および測定可能CO2 への転化;
4.臨床的簡単さのためにGEBTについて液状物および固形物の同時使用;および
5.容易な調製および妥当なコスト。
【0042】
現在利用されている基質はこれらの特性の一部のみを満たすにすぎない。オクタン酸は食物に用いられる固形脂肪に調理後に強固に結合できる。オクタン酸はまた、十二指腸の通過時に食物から迅速に放出されるが、小腸壁に吸収された後は、肝臓に運搬されてそこで代謝されてCO2 を生成する必要がある。これらのプロセスは胃排出と直接に関連するものでなく、胃排出時間を超過する無視できない時間延長することになり、従って、真の胃排出速度の検出における遅延の原因となる。さらに、CO2 が被験者間で変動し得る肝機能に依存することから、結果の変動性も生じ得る。従って、例えば、適量のアルコールの消費から生じる肝機能の一時的な不全ですら、たとえ胃排出それ自体が前述のアルコール消費により影響を受けないとしても、その消費後ある一定時間、かかる従来技術の胃排出測定に影響を与え得る。
【0043】
さらに、オクタン酸の取扱いには特殊な設備が必要であり、その食物調製を臨床施設において行うためには不適切で不器用である。他方、臨床施設の外で食物調製を行うことは、大抵の呼気試験で一般に受け入れられているような標識基質だけでなく食物全体について、その製造プロセスについて規制許可が必要となる。それ故に、このような手順には高レベルの標準化が必要であり、それに伴う費用は高価である。
【0044】
オクタン酸ナトリウムはオクタン酸のナトリウム塩である。オクタン酸ナトリウムはオクタン酸それ自体よりも取扱い容易であり、胃を出た後に固形物から放出されるが、オクタン酸と同一の間接的な代謝経路を受け、また固形食と均一に混合することが容易でない。
【0045】
酢酸ナトリウムは、液状物および半固形物の胃排出測定のために最適な基質であると考えられている。この非常に簡単で低コストの基質は、十二指腸を通過後に迅速に代謝され容易にCO2 に転化される。しかしながら、酢酸ナトリウムは、水および酸性媒体により容易に希釈され、また胃の環境においては、その食物基材から容易に脱離するため、その経過は必ずしも食物の排出速度を反映しない。それ故に、酢酸ナトリウムは固形食と共に使用するためには臨床的に非実用的である。更に、酢酸ナトリウムを工業的食品調製技術により固形食に結合する必要性により、オクタン酸の不利点の幾つかが酢酸ナトリウムに生じる。
【0046】
アセチルロイシンのようなアシルアミノ酸は、代替的GEBT基質として最近提案されており、結合、代謝および汎用性に関連するオクタン酸の上記技術的難点の大部分を受けないが、比較的に高コストである。さらに、アシルアミノ酸は天然産生物質でないので、使用の承認前に複雑な規制プロセスが必要となることがある。
【0047】
重炭酸ナトリウムは、その容易に利用でき、かつ豊富なCO2 源であること、およびその簡単さと低コストから、代替的基質として提案されている。しかしながら、重炭酸ナトリウムも、食物に容易に結合することができず、そのCO2 含有量を胃壁により容易に放出してしまい、その使用を非実用的とする。
【0048】
14C標識された重炭酸ナトリウムのカプセル化物を使用する呼気検査が、Am. J. Gastroenterol. Vol. 88(3), pp. 462-4, 1993年 3月に公表された論文"Will a NaH14CO3 capsule method accurately measure gastric emptying?"(NaH14CO3 カプセル方法は胃排出を正確に測定するか?)に記載されているようにチーグヘルボイム(Zighelboim)により試みられている。この検査は、該カプセルが胃により「液状」食として排出される2mmの粒径よりも大きく、食物に結合されなかったことから、不成功であった。γカメラ測定により、食物が排出された後に該カプセルが胃に残留することが示された。
【0049】
GEBTを行う際に、1つの呼気サンプルが食物の投与前にベースラインとして通常測定された後に、呼気サンプルが4時間の間、15分毎に通常測定される。これら呼気サンプルは、質量分光法、非分散性赤外分光法、または同位体分析のいずれかの代替方法により通常分析される。基質の代謝速度は13CO2 呼気の変化(デルタ・オーバー・ベースライン−DoB)により決定され、そして代謝基質排出の曲線が、DoBから%線量速度(PRD)として以下のように決定および表現される。
y=atbexp(−ct)
式中、a、bおよびcは、測定曲線に従って最小自乗フィット等により又は非線形回帰分析により当てはめられるパラメータである。
【0050】
基質排出の累積曲線が最後の曲線の積分から以下のように計算され、
yc =m(1−exp(−κt))β
パラメータm、κおよびβが回帰分析により計算される。これらのパラメータを導くために、検査される被験者の身長および体重に基づいてCO2 生成速度の推定値がDoBから導かれる。生成のこの正規化された速度は%線量速度、PRDとして知られており、それは一般に、胃排出適用のために、DoBよりも使用される。放出された合計線量も、胃排出機能を分析することにおいて有用な基準であり、そしてそれはPRDを統合することによって獲得され、そして累積%線量速度、CPRDとして知られている。被験者のDoBからPRDおよびCPRDを、被験者の体重および身長に従い、獲得する方法は、Gastroenterology,1993年6月、Vol.104(6)pp.1640-7,において刊行されたY.F.Ghoosら“Measurement of Gastric emptying rate of solids by means of a carbon-labeled octanoic acid breath test” に開示されている。
【0051】
患者の胃排出結果を記述する、GEBTから導かれる、以下の3つの伝導的なパラメータがある。
1.yc =m/2従って、t1/2=−1/κ*(n(1−2-1/ββ)と設定することにより計算される、検査食の半分が胃を出た時間、または半排出時間(t1/2 )。
2.初期の液相排出の後に、食物の固相排出が開始する時間として定義され、tlag=(lnB)/kで与えられる、ラグ時間(tlag )。
3.ln a に等しい胃排出係数(GEC)。このパラメータは基質回収曲線の強度と関連する。
【0052】
ここで、胃排出呼気検査と関連する本発明の好適な実施態様について説明する。本発明の方法及び装置に係る方法の利点の1つは、正常、軽度の遅延および重度の遅延を有する患者間で識別するための十分なデータがある場合に、測定および決定を行う間にリアルタイムで上記パラメータのいずれかの計算および分析を行うことである。このことは、確定可能な結果を得るために要する時間を、質量分光法測定を使用するような従来技術の方法により現在必要とされる4時間から、顕著に短縮する。この本発明の方法及び装置に係る好適な実施態様の他の顕著な利点は、排出プロセスにおけるピークまたは生理学ノイズを明確に特定する等、胃排出の動態(dynamics)における変化を追跡する可能性である。呼気検査を行うために適した装置および方法が、全て本発明の譲受人に譲渡された、"Breath Test Analyzer"(呼気検査分析装置)に関する米国特許第6,186,958号; "Breath test Methods and Apparatus"(呼気検査方法および装置)に関する米国特許出願整理番号09/542,768号; および"Isotopic Gas Analyzer"(同位体ガス分析装置)に関する米国特許出願整理番号09/508,805号に記載されており、全てが参照されることによりその全体において本明細書に取り込まれる。胃排出に関するこれらの検査を行うために使用するための本発明の好適な実施態様に係る呼気検査装置を以下に図2Eと関連して記載する。
【0053】
この手順において以下の3段階がある。
1.多数の被験者からデータを蓄積することにより、t1/2 ,tlag ,デルタ・オーバー・ベースライン(DoB)および胃排出係数(GEC)パラメータについての正常および異常な値または値範囲を決定すること。
2.ある被験者に検査を行い、そして測定進行時に、該計算されるt1/2 ,tlag ,デルタ・オーバー・ベースライン(DoB)強度および胃排出係数(GEC)をリアルタイムでモニタリングすること。
3.これらの4パラメータのモニタリングされるグラフをその測定進行時に追跡し、そして、可能な限り早い時に外挿することにより、上記4パラメータ(t1/2 ,tlag ,DoBおよびGEC)の1つが異常であるか又は上記4パラメータが全て正常であるかを決定し得る、許容誤差限度内の、最終推定値を決定すること。許容誤差は、得られる推定値の関数となり得る。値が正常範囲と異常範囲のボーダーから大きく外れる場合には、ボーダーライン値が得られる場合よりも大きな誤差を許容できる。
【0054】
この好適な手順の実行の例として、表1は、150〜350キロカロリーの固形検査食と共に100mgの13C標識オクタン酸およびアセチルロイシンをマーカーとして投与することにより、単一被験者を4回検査した結果を示す。この表は上記4パラメータの各々がその最終無症候収束値の85%および70%内に外挿された時のピーク後の時間を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
正常被験者において到達されるDoBレベルおよびピークに到達するのに要する典型的時間との比較により決定されるように、ピークに到達する前でも高いDoB強度が得られる迅速な胃排出をもった被験者のケースがある。
【0057】
ここで、時間単位での時間の関数として、ある選択された被験者の計算されたt1/2 (図2A),tlag (図2B),DoB曲線(図2C)の下のエリアから獲得される統合マーカー呼気、および被験者のGEC(図2D)のリアルタイム進行経過の例を示す4グラフ組である図2A〜図2Dを参照する。結果は、図2Eに模式的に示され、本発明の好適な実施態様に従い構築され且つ操作される呼気検査装置を使用することで得た。呼気は回収されて、上記特許文献に記載された呼気検査装置に示される方法に従い好適に、その放射性同位体標識された内容物が分析された。4つの胃排出パラメータのプロットに対する測定点のカーブフィッティングは好適に、レーベンバーグ−マーケット(Levenberg-Marquat)アルゴリズムを適用し、呼気分析装置(図2Eの好適な実施態様の破線の内に示される)(これはイスラエル国エルサレムのオリディオン・メディカル・リミテッド(Oridion Medical Ltd.)により供給されるモデル ブレスID(BreathID)が好ましい)に内蔵される米国テキサス州78759オースチンのナショナル・インスティテュート・コーポレーション(National Instrument Corporation)により供給されるラボ・ビュー(Lab View)プログラムを使用することによって決定された。前述の係数a,bおよびcについての初期推測値は、データプロセッサのデータベースモジュールに保存されているような被験者に対して行われた従来の検査から獲得されたt1/2 ,tlag およびGECの予測値から、又は多数の従来測定された正常被験者からのこれらのパラメータの正常な範囲の平均から導かれる。この例では、4つの胃排出パラメータについて約1時間後に外挿を行ってよい。これらのパラメータの値は、測定された呼気から導かれる計算された曲線から連続的に抽出され、そして示差胃排出パラメータ比較モジュールに保存された基準値と繰り返し比較される。このリアルタイム測定の方法および漸近性エンド値への収束に関する測定された曲線のほぼ連続的なチェックによって、胃係数の期待値は、該曲線の漸近最終点が到達する十分前に優れた精度で予測できる。従って、最終的な結果がこの装置によって、呼気検査のリアルタイム結果を供することのない従来技術の装置よりも有意に一層迅速に生成される。示されている例において、4つの胃排出パラメータに対しておよそ1時間後に外挿が行われて良く、それは従来技術の装置を使用することで可能であろうよりも有意により早い。
【0058】
用語「事実上連続」または「リアルタイム」などとは、呼気サンプリングとの関係で使用される場合、考慮された検査に依存すると解される。従って、数分のみ続く検査に関して、該用語は一般にノンストップサンプリングを意味しうる。一方で、1時間以上続き、サンプルが周期的に、例えばたった10〜15分ごとに採取される胃機能性検査などの検査に関しては、従来技術においては尚「事実上連続して」サンプル採取され、そして「リアルタイム」で測定されたとみなされるだろうし、そして本願ではそのように記載されて請求されている。
【0059】
症候と胃排出遅延の間に全く相関が無いことが時としてあるので、上述のGEBTは、Gastric emptying in diabetes: clinical significance and treatment.(糖尿病における胃排出:臨床的意義と処置)Diabet Med. 2002年 3月; 19(3): 177-94 に論じられるようなインスリン/薬物・食物管理についての糖尿病患者の定期的管理に特に有用である。消化不良の場合には、消化不良症候が患者を検査するための主な理由である。シスパリド(Cisparide)またはエリスロマイシン等のような胃排出の処置用の第1世代薬物は、一般に、消化不良症候を軽減するのを助けるが、"Gastric emptying rate of solids in patients with nonulcer dyspepsia"(非潰瘍性消化不良を有する患者における固形物の胃排出速度)と題されたマエス BD(Maes BD)による論文において、胃排出遅延が必ずしも全ての消化不良症候の原因でないことが示されている。これらの症候の軽減における、新たに提案されたテガセロッド(Tegaserod)等のような、新たに出現する医薬品の有効性は、未だ十分に明確でないが、このような薬物が前述した薬物よりもGI障害特異的であると指定されているという事実から、その薬物が処方される前の診断が推奨されることがある。このことは、これらの薬物がGI障害を外見上処置するがGI障害を治癒しないので該障害を処置するために継続的に投与されなければならないという事実に起因して特に重要である。
【0060】
痛み、初期満腹感および鼓張の内臓知覚と関連する、他の胃運動性障害として胃拡張と調節の不全の徴候が挙げられ、そのための適当な処置として、筋肉音(muscular tone)を緩和するための薬物、例えばグリセリルトリナイトレート(Glyceryl trinitrate)、セロトニン生成剤または何らかの抗うつ剤、の投与が挙げられる。現在のバロスタット研究はこれらの障害を測定するための臨床用途における臨床的方法にすぎない。
【0061】
本発明の好適な実施態様によれば、胃排出および他の胃運動性障害と関連するこれらの胃腸状態の重症度を測定するための非侵襲性、正確かつ便利な方法も提供される。
【0062】
さらに、本発明の更に好適な実施態様によれば、現在利用可能な基質の不利点を克服する同位体呼気検査用の基質も提供される。この基質は、マイクロカプセル化同位体標識物質又は腸溶コーティング同位体標識物質を利用するものである。好ましくは、コーティングは、胃におけるpHが一般に2.5〜3.5であること比較して、GI管の十二指腸または小腸におけるpHが一般に6と高いpHであることに起因して、胃よりも十二指腸または小腸において分解されるようなものを使用することができる。あるいは好ましくは、GI管の所望部分にのみ見出される特異的酵素によって分解されるコーティングを使用することができる。
【0063】
これらのカプセルは、好ましくは、最も簡単な材料の 13C標識基質、例えば重炭酸ナトリウムまたは酢酸ナトリウム、で充填される。したがって、マイクロカプセル化は、食物の胃からの排出後に初めて、迅速かつ均質な経路で十二指腸による該物質の特異的マーカー薬物放出を可能とする。
【0064】
オクタン酸のような基質は、通常、卵黄に取り込まれ、そこから検査食であるオムレツが調製される。卵黄からの油がオクタン酸の周囲に疎水性コーティングを形成し、そして調理プロセス中にオクタン酸を保護することから、食物調理時にマイクロカプセル化が生じ、オクタン酸の食物への良好な結合特性を与えることが知られている。
【0065】
前述したように、本発明の他の好適な実施態様によれば、マイクロカプセル化を使用することができ、ここでコーティングはpH環境でなく、ある選択される酵素によって分解される。この方法における選択性は、十二指腸における特異的酵素、例えば膵臓により分泌されか又は胆管を通じて分泌される酵素、の存在に依存する。この好適な実施態様の利点は、液状食のマイクロカプセル化に使用することができ、また被験者間のpHの変動性に依存しないことである。
【0066】
マイクロカプセル化された基質の使用に係るこれらの好適な方法は、従来技術の基質を超える以下のような利点を有する。
1)マイクロカプセルが摂取される食物に均質に分散されるので、胃排出のリアルタイム分析が可能となること。
2)酢酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムのような基質物質が、胃からの排出後に初めて、迅速かつ均質な経路で十二指腸または小腸または大腸において特異的に放出されること。この放出は、pH依存性または特異的酵素依存性とすることができる。さらに、追加的な代謝ステップを必要とすることなく、該基質の吸収を達成することができる。
3)食物への結合特性、胃環境内での安定性、味、使用の利便性等が、基質物質それ自体に非依存性であって、選択されたマイクロカプセル化コーティングの性質にのみ依存性であることから、固形食および液状食の両方に対して同一の材料を使用可能であること。
4)マイクロカプセル化それ自体がキログラム当たり10〜100ドルの領域のコストという低コストプロセスであるとともに、低コスト 13Cマーカーの使用が可能となること。
【0067】
3.胃調節についての検査(GA検査)
適当な調節特性をもった上胃は、その体積が増大する間に一定圧力を保持することを可能にする。胃の上部は液状物の胃排出に関与し、固形物の胃排出に対しては殆ど効果が無い。胃の下部は、液状物の胃排出に有意な効果を有しないと考えられている。さらに、過剰な胃内圧が上部胃腸管の症候に関連すること、および高カロリー食が投与されるときに胃排出の阻害が必要とされることが文献から知られている。
【0068】
したがって、本発明の更に好適な実施態様によれば、拡張体積が様々異なる場合に胃排出速度は正常な個人では影響を受けないが調節障害を有する患者では損なわれるという原理に基づく胃調節呼気検査(GAT)およびこれらを行うための装置が提供される。
【0069】
本発明の異なる好適な実施態様によれば、これらのGABTを実行するために2つの方法が提案される。先に挙げられたように、これらの検査は、それらの呼気試験実施態様形態において主に記載されている。
【0070】
A. 2食方法
好適に13C標識基質を含有する低体積、好ましくは100ml〜350ml程度、の液状食が、モッシー(Mossi)らによるDigestive Diseases and Sciences, Vol. 39, No. 12, Dec. 1994 Suppl., pp. 107S-109S (参照により本明細書に取り込まれる)に記載されているような従来技術の液状物胃排出検査における公知方法と同様の方法で、被験者に投与される。適した13C標識基質は、限定されないが、オクタン酸、酢酸ナトリウム、グルコース、オクタン酸ナトリウム、アセチルロイシン、スピルリナ藻(Spirulina algae)、マクロカプセル化重炭酸塩または他の基質、好ましくは直接かつ迅速な代謝を受けるものが含まれ、これらは液状物胃排出速度の測定に使用することができる。呼気における同位体比が、ベースラインにおいて測定され、その後にリアルタイムで定期的間隔で測定される。好ましくは、デルタ・オーバー・ベースライン曲線が追跡され、その結果から胃からの排出または液状物排出の速度の曲線が決定される。この手順から得られる、時間の関数としての典型的DoB曲線が図4Aの左側部分に示されており、これは正常な胃調節曲線の典型的な形状である。
【0071】
本発明のこれらの好適な実施態様に係る方法によれば、胃拡張の誘発および/または胃排出速度の制限を行うために、好ましくは以下:
1)高体積、典型的に500ml〜1.5リットル、の水、又は更に;
2)アイソトニック溶液
3)酸性溶液、例えば2.5以下のpHを有するもの;又は
4)カロリー(caloric)液状食;
の少なくとも1種を含む、第2食が被験者に投与される。この第2食は、胃排出速度についての呼気検査の欄で上述されているような、第1食の胃排出速度を必要な精度まで評価するために十分なデータが蓄積された直後の時間T0 で投与される。T0 は図4の曲線に示されており、また、それ以降の図においてT0 が表示されている。この排出曲線上の傾きの変化、あるいは胃排出パラメータ、例えばt1/2 またはtlag 、の変化が、このDoBプロットから導かれる。このような第2食の望ましい特性は、
1)近位胃における拡張効果を引き起こす効果、または
2)小腸の過負荷を避けるために胃排出の阻害が必要とされるように高カロリー値もしくは低pH値を有する効果、
の少なくとも1つである。それ故に、1つの好適で所望される手法は、多量の水を用いること以外は第1食で投与されたものと同一の液状食を投与して底部(fundus)のストレスを誘発し、そして、異なる体積を有すること以外は類似するカロリー含有量の食物の排出速度を測定することである。異なる好適な実施態様によれば、この第2食は同位体標識基質を含むもの又は含まないもののいずれでもよい。この第2食において同位体標識基質を全く使用しない場合には、第1食の胃調節の効果は第1胃排出曲線(かかる効果が存在する場合)の効果に対する第2食の体積の増加効果より決定される。この場合には、第1食で使用された13C標識基質より生じる13CO2レベルと第2食が干渉しないように、第2食が天然低13C源であることが重要である。
【0072】
この効果は、非標識第2食を用いて行われたGEBTにおいて得られた標識分解生成物の呼気量曲線またはDoB曲線の模式図である図3を参照することにより示される。十分な精度をもって胃排出パラメータが決定された時点である時間T0 において、第2食が投与される。第2食の投与を行わなければ得られたであろう、時間T0 を過ぎてからの曲線の外挿された形状が点線で示されている。この曲線から得られた胃排出パラメータの値が、利用可能となる後、すなわち時間T0 の後に非常に近くまたは直後に記録される。第2食の投与は、実線で示されるように、この曲線の漸近性テイルエンド(後尾)に変化を生じ得る。ここで、この新たな曲線から胃排出パラメータの新たな値が計算され、その値は当初に得られた曲線から当初得られた胃排出パラメータと比較される。正常な被験者では、胃排出パラメータの値に変化があるとしても殆ど変化しないのに対し、胃調節障害を有する被験者は、一般に、著しく変化した値を示す。一般に、2食検査について、胃調節障害のレベルは、2食の投与から獲得される対応する組の胃排出パラメータ間での臨床的に有意な差を検出することにより定義される。かかる差の程度により、検出された胃調節が、正常、異常又はボーダーラインにあるとして分類される。
【0073】
同位体標識第2食の場合には、図4Aとの関連で以上及び下に説明するように、第2食について新たな曲線を直接的にモデル化することができ、そして直接的に第2食の排出速度を決定するために新たな組の胃排出パラメータが計算されることから、この好適な手順はより簡単でより直接的である。排出曲線に対する第2食の効果は該第2食の組成に依存する。正常な被験者では、第2液状食は、一般に、第2胃排出曲線の形状に大きく影響せず、図4Aに図示される2つの曲線の類似性によって示されるように、第1食の曲線の形状と類似する通常の形状を有する。ここで例えば図4Aのプロットに示される第1食は、200mlのエンシュア・プラス(Ensure Plus)(登録商標)に100mgの 13C標識酢酸ナトリウムが添加されたものである。第2食は、600mlの追加的な水を含む200mlのエンシュア・プラス(登録商標)に100mgの 13C標識酢酸ナトリウムが添加されたものである。本発明の様々な好適な実施態様の食物に対して加えられた同位体標識の量は全て100mgであるが、この量は検査の型、被験者または食の型に従い多種でありうると解される。
【0074】
他方、何らかの型の胃調節障害を有する被験者では、この好適な実施態様によって行われた呼気検査の起こり得る結果は、図4Bに典型的に図示されるように、第2食の投与により排出曲線の形状を変化させることになる。図4Aに示される検査で使用された食物と同一の食物を使用する図4Bに示される例では、胃排出が第1食についてよりも第2食について著しく速いことが見られる。例えば、図4Bで検査された被験者の場合には、t1/2 は第1食(200ml)について174分である一方、高体積の第2食(800ml)について僅か112分にすぎないことが認められ、したがって被験者が重度の胃調節異常を有することを示す。
【0075】
ここで、本発明の好ましい他の実施態様によれば、上記検査方法に記載の胃調節検査を行うために、システムの模式的な説明は図5Aおよび5Bを参照にされ、そして図5Bにおいては、係るシステムのデータ処理装置から獲得された出力データの例が示されており、それから被験者における胃調節の問題の存在または不在の兆候が獲得されうる。
【0076】
図5Aを最初に参照することにより、入力において、食センサーが示されおり、それは被験者の胃を離れる検査食を感知し、そして第1検査食V1の投与から経過した時間の関数として該胃から排泄されるまたは該胃に維持されるマーカー(即ち、検査食)の断片の測定を供する。このセンサーは好ましくは、胃を離れる検査食中のマーカーのPRDに関連する呼気検査測定であってよく、もしくは胃からマーカーの進行をプロットできる他の任意のセンサー、例えば、MRI、シンチグラフィー(ガンマイメージング)、CT、X線、超音波であってよく、または胃領域の体積減少を測定するために被験者の腹部の外部体積測定のような単純な測定であってもよい。
【0077】
次いで、胃排出食センサーからの信号は好ましくは食センサーデータ分析装置に移され、該分析装置が該食センサーデータ出力を分析しそして、このシステムによってさらに処理を行うために、経過した時間の関数として被験者の胃からの%食排泄を考慮して、必要な情報を供する。食センサーが呼気検査センサーである好ましい実施態様について、例えば、データ分析装置は、被験者の体重と身長を考慮するPRD曲線生成装置であってよい。同時に、呼気検査適用に関して、前記データ分析装置は、この曲線の下で連続的に積分を計算することもでき且つ時間に対するCPRDプロットが提供される。図5Bにおいて、これら2つのプロットの中間結果は、食センサーデータ分析装置によって生成される5B(i)および5B(ii)と命名された上の2つのグラフに示されている。
【0078】
ここで図5Aに戻ると、分析されたデータはここで、データ処理システムによって処理され、そのシステムは本発明の好適な実施態様の呼気検査に関して、図2Eの胃排出検査装置の説明において破線内に示されるシステムと類似しうる。前記データ処理システムのカーブフィッティングモジュールは、パラメータの値を獲得しようと繰り返し試行し、そしてPDRまたはDoBの曲線から、上の等式(1)のパラメータa、b、およびcの値を獲得する試行が繰り返しなされ、そして試行がCPDRの曲線から、または代替的に統合されたDoBから、上の等式(2)のm、κおよびβの値を獲得する試みが行われる。これらのパラメータの収束値が獲得されていれば、mの値から、t1/2は、上記のように、yc=m/2を設定することによって計算され、そしてパラメータaの値から、log aに等しいGECの値が獲得可能である。tlagの値はtlag=(lnβ)/κから導かれ、そして食の投与後の曲線のピークの位置からも評価されてもよい。データ処理システムが検査結果を評価することにおいて使用するために生成しうる他のパラメータは、検出された合計線量を示すPDRまたはDoB曲線の下の積分エリア、およびPDRまたはDoB曲線の強度である。
【0079】
胃調節検査は、同じ被験者に対して類似量の標識物質を伴う2つの継続的な食を使用するので、簡略化のために、前記PRD曲線はDoB曲線によって置き換えられてよいことに留意すべきである。この場合、GECは被験者の実際のGECを反映せず、そして実際のCPDRは計算されていない。この相違は検査の結果に影響を及ぼさず、なぜならパラメータ間の分散のみが同被験者による検査結果に関して計算され、そして下で説明されるように該パラメータ自身は計算されていないからだ。他のパラメータ、例えば、t1/2、tlag、DoB強度およびDoB曲線下の積分はこの簡略化により影響されない。
【0080】
図5Bの下半分において、データ処理装置のカーブフィッティングアルゴリズムモジュールの出力から獲得された典型的な時間プロットが示されており、ここで胃排出パラメータ、GEC、t1/2、tlagの計算された値は経過した時間の関数として示されている。これらのグラフはそれぞれ、5(iii)、5(iv)及び5(v)と命名されている。各グラフにおいて、それは、どのようにして測定されたパラメータが、経過した時間とともにその最終的に決定された値に収束するかが示される。収束の最終段階中、前記システムは遡及的に最終漸近性エンド値周辺のエラーバンドを規定でき、そして前記処理装置は好ましくは、曲線の収束挙動からこのエラーバンドを認識するようにプログラムされている。エラーバンドの幅は好ましくは、リアルタイムで獲得される結果に従い決定されてよい。最終値は、プロットされるパラメータの値から明らかである場合、正常な範囲から明らかに外れている(胃排出の障害を明らかに示す)かあるいは十分に正常な範囲内にある(広いエラーバンドが使用され、検査のセグメントを集結させることに関する決定点をよりすぐに到達可能にする)ことから明らかである。一方で、もしパラメータが見かけ上、正常値と異常値の間のボーダーライン上にあれば、狭いエラーバンドが、該パラメータについて最終的に達成可能な精度を高めるために使用される。
【0081】
ここで図5Aのシステムにもどり参照することで、すぐに、または本発明の他の好適な実施態様により、1超のパラメータが最終エラーバンドに入っているとして確認された場合検出され、該システムが出力信号を、被験者に対してかあるいは医療スタッフアテンダントに対して提供し、胃調節検査の第2食が被験者によって摂取されるべきことを告げる。このシステムは、好ましくは、最終的に生成された値の精度を高めるために、第1食の胃排出パラメータをある限定された時間にわたりプロットして計算し続け、その理由は、それが時々、食センサーにおいて出現し始めた第2食の前の効果を採ることあるからだ。これは特に、呼気検査センサーが使用された場合、それによって、第2食の検出の開始が一般に、該食が胃を出始めた場合にのみ始まるかまたはさらに、代謝経路遅延時間が理由でこの後に始まる。
【0082】
一度第2食が摂取されれば、胃調節システムは該第2食の進行を、それが第1食についての測定に類似する方法でプロットし、第2組の胃排出パラメータは図5Aの下半分に示されるように、システムによって生成される。しかし、該データ処理システムは、図6との関係において下に示されるだろうように、第1食のPDRもしくはDoB曲線の外挿値を、第2食のPDRもしくはDoB値から差し引くために使用しなければならない。
【0083】
最後に、一度データ処理装置が、第2食胃排出パラメータは十分な精度で獲得されていると特定すれば、このシステムは好ましく2つの食から対応するパラメータを比較し、そして所定の基準に従い、被験者の胃調節の障害の存在または不在に関する診断出力を供する。1つの好ましい基準により、前記胃調節は、もし第2食に関するt1/2の値が第1食の少なくとも10%未満であれば、または第2食に関するGECの値が該第1食の少なくとも5%未満であれば、障害されているとして規定される。2つの食に関するPDR曲線のピークもしくはDoB曲線のピークの強度の値の差に関連する他の好ましい基準も好ましく使用されて良く、そして該第1食と該第2食間での10%超の増加は胃調節の障害を示すとして考えられる。代替的に且つ好ましく、PDRの下の積分エリア(即ち、CPDR)またはDoB曲線の下の積分エリアは使用されるパラメータであってよく、そして10%増加は胃調節の障害として規定される。
【0084】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、パラメータの組み合わせは診断基準を構築するために使用されて良く、従って、所定数のあるパラメータは胃調節の障害を示し、次いで、これはもし、他のパラメータが有意な差を示さなくとも、診断を行うために十分であるとしてみなされる。さらに、診断基準のために使用される組み合わせにおける様々なパラメータは、様々な重みで与えられてよく、従って被験者の胃の状態の一層の基準もしくは兆候であるそれらパラメータには一層の重みが与えられる。例えば、半分の時間はCPDRよりも高い重みが与えられてよく、従って、前記装置中へとエキスパートシステムを導入することで手順に対してより高い感覚および特性を与えることができる。
【0085】
医者に対して多機能胃診断情報を提供できる本発明のさらなる他の好適な実施態様により構築され且つ有効な呼気装置を模式的に示す図5Cおよび5Dを参照する。係るシステムは医者が、図1Cに示された診断ルーチンを行うことを可能にし、そしてさらに、単一の装置によっても行うことを可能にする。呼気検査装置はどちらも好ましく本願に記載された実施態様を組み込み、そしてさらに、包括的消化不良マネジメントシステムを提供するために、他の検査からの外部出力を利用する。図5Cは、呼気検査装置の要素の模式的なブロック線図を示し、一方で、図5Dは、係るシステムの好ましいディスプレー出力スクリーンを模式的に示す。
【0086】
図5Cを参照すると、それは、呼気を標識された二酸化炭素について分析するガス分析装置Iによる分析のために、食の連続的な投与に続き、好ましくは個別のバッチ1,2において呼気をデリバリーする呼気入力Iを示す。ここから、例えば、本明細書中上図2Eおよび5Aに示されるように、分析結果が胃排出速度および胃調節(GE/GA)診断モジュールに対して向けられる。さらに且つ好ましく、このシステムは第2ガス分析装置IIをも含んでなり、それは好適に呼気を水素またはメタン含量に関して分析し、そしてその結果は、本明細書中図14に示されるように細菌過剰増殖、ラクトース不耐性、糖消化不良、または低GI運動性の検出のための診断処理モジュールに対して向けられる。この処理モジュールは、IBS診断生成装置として知られている。GE/GAおよびIBS診断処理装置からの出力情報は、多機能胃腸診断処理装置に対する入力であり、それはディスプレーに対して入力するための出力情報の全てをソーティングおよび集積するもとになる。
【0087】
さらに且つ好適に、さらなる入力は、被験者の胃の状態に関する情報を提供するための他の検査から多機能胃腸診断処理装置に対して供される。とりわけ、係る検査のなかでは、ヘリコバクター・ピロリの存在の検出のための呼気検査の結果である。この検査は、該検査を行うために対応する標識された基質の投与後に、同じ呼気入力をGE/GA検査のために使用しそして同ガス分析装置を使用することで行われてよい。しかし、GE/GA検査の結果との干渉を避けるために、GE/GA検査とは異なる時間に、好ましくは、数時間前に行い、そして結果をシステムのメモリーに保存しておくべきである。
【0088】
さらに、電気ガスクロマトグラフィー(EGG)検査からの出力も前記処理装置に対して入力されてディスプレーに映されてよく、従って、医者も、被験者の全体的なGI状態を評価することにおいてこれらの結果を有することになる。加えて、図5Aの実施態様と関連して記載されたように、患者の胃の症候の出力も供されてよい。最後に、有用なGI機能情報を供する他の外部装置も前記システムに対して、医者のための完全な像を供するために、入力をすることができる。
【0089】
図5Dを参照にすると、それは図5Cに示されるシステムの典型的なディスプレー出力スクリーンを説明する。図5Cに示される好適な例において、スクリーンは2つの欄に分けられており、そして検査のグラフ出力は左手側に示されており、そしてこれらグラフ出力を処理した結果は、右手側の表として示されているが、他の適切なディスプレー配置も本発明の範囲から逸脱せず使用されてよいと解される。そこには第1小体積食のグラフ結果が示されており、収束が達成した後の胃排出パラメータを示すために既に外挿されており、そして外挿された曲線を示す破線は検査t0のカットオフ点を越える。確認されるように、第1食の結果は、単に第1食胃パラメータの値が明らかに示されるまでプロットされている。底のグラフは、曲線分析が進行中である第2食を示す。これら2つの連続食の測定曲線は、同時且つ個々に、第1食からのダンピング曲線の推定値および胃排出速度の推定値と一緒に出現する。
【0090】
加えて、被験者自身によって表されて入力される場合、該被験者の保護された胃症候レベルのグラフ表現は、食摂取の時からの関数として、ヒストグラムの形態において示される。食摂取の間の胃症候の評価は、被験者の胃の感覚を特定することにおいて有用であり、それにより、消化不良症候の原因が、食の体積によって生じた機械的な苦痛に関連するのかあるいは摂取検査食の化学成分、例えば、脂肪成分の場合に関連するのかどうかを特定できる。例えば、有意な症候性反応が様々な体積の食の消化の間に確認されれば、測定が食サイズに関連した胃調節障害のサインをも示すかどうかにかかわらず、それは化学成分による苦痛のサインである。この情報は、適切な薬理治療を決定することにおいて臨床的に重要である。図5Dに示される場合では、第2およびより大量の食から記録された胃症候は、胃調節障害を罹患する消化不良の被験者により往々にして経験したように、より強いようである。この結果は、第2の、高体積食のより早い排出とイン・ライン(inline)であり、それは表示されたいくつかの胃調節パラメータの偏差によって示される。
【0091】
さらに、このシステムは、下に一層詳細に記載するように、第1および/もしくは第2食に関連する、被験者の呼気における水素もしくはメタン量を測定して排出曲線を示すこともできる。1つのスクリーンの上において、EGGトレースが医者による確認のために表示され、そして被験者のGI管における、活性のあるヘリコバクター・ピロリを検出するために行われた以前の検査の結果も表示される。
【0092】
この単一装置は、従って単一プラットフォームにより包括的胃腸モニタリング手順を行うことができ、ある数の機能性GI障害に関する結果を表示し、従って医者のオフィスを訪れる多数の被験者を助けることとなる。
【0093】
上述の好適な実施態様で記載した胃排出呼気検査および胃調節呼気検査は、オンラインのリアルタイムガス分析装置を使用するもの、又は被験者の呼気が個別のバッグに集められ、次に、隔たったガス分析機器、例えば質量分光計、に移されるものの、いずれの適した呼気検査装置によっても行い得る。さらに、これらの好適な実施態様に従順な検査は、シンチグラフィ、CT、常用のX線イメージング、MRI、超音波、または胃機能を調査決定するために従来技術で知られている他の何れの手段を使用することもできる。
【0094】
もし、呼気検査が、上記米国特許文献に記載されるような又は上記オリディオン・メディカル・リミテッドにより供給されるブレスID装置のようなオンラインのリアルタイム呼気分析装置を使用して行われる場合には、第2食は、その検査の要求および被験者の反応に従って、ピーク前またはピーク後の、可能な限り早い時に被験者に投与することができる。したがって、このような装置を使用することは、本発明の好適な方法を適用する他の可能な手段と比較して検査を短縮する。
【0095】
オンライン呼気検査装置を使用するこの第1方法を適用するための1つの好適な手順によれば、ベースライン同位体レベルの測定後に、200mlの、例えばエンシュア・プラス(登録商標)または他の利用可能な代替物のような、標準的な高カロリー液状検査食に溶解された100mgの13C酢酸ナトリウムが、被検者に投与される。あるいは好ましくは、該カロリー液状食への取込みを容易にするために、13C酢酸ナトリウムを5ml〜15mlの水に予め溶解させることもできる。従来技術で記載されているように、食物投与後に、呼気サンプルが収集され、呼気分析装置により頻繁な間隔で又は準連続的に分析され、そのDoB曲線振幅がリアルタイムで測定される。前述したように、測定点からの当てはめと外挿の結果として曲線が得られ、胃排出パラメータがそれらの漸近値に対する収束とともにリアルタイムで計算される。胃排出パラメータの収束を計算するための可能な方法は、上で参照される米国特許文献に記載されているように、呼気分析装置を制御する計算システムを使用して、胃排出パラメータを時間の関数としてプロットし、最近の測定点の微分値を計算することである。微分値がゼロに近似する時に、該パラメータの収束が達成される。t1/2 およびtlag の値を第2食の排出曲線の値と比較できるように、これらの値の収束が確定的に分かるように決定され次第、上述の第2食が投与される時間T0 の点は到達されたものと仮定する。
【0096】
第2食も標識される場合の好適な実施態様によれば、好ましくは、第2食も200mlの標準的な高カロリー液状検査食に溶解された100mgの13C酢酸ナトリウムを含むが、追加的な600mlの水で希釈される。ここでは、t1/2 およびtlag パラメータが、第2検査食について、それが投与される時である時間T0 から計算される。しかしながら、第2食の投与後の少なくとも最初の時間の間は、第1食の残り部分が、肺により未だ呼気されていないその同位体13C開裂生成物と共に、依然として胃腸管に残留する。それ故に、第1食からのこれらの残留物は、同位体標識第2食から得られる結果と干渉することになる。この生理学的干渉をどのように補正するかを模式的に示す、図6を参照する。図6に示されるように、第1曲線の形状が計算され、そこから低体積食についてのt1/2 およびtlag パラメータを抽出した後に、第2食が投与される時間τ0 を過ぎてからの曲線が外挿され、この外挿された曲線の残留値を測定点から減算して、補正された測定曲線を生成し、そこから高体積食についてのt1/2 およびtlag パラメータの値が得られる。図6では実際の測定された曲線が実線により示され、補正された曲線が点線により示される。
【0097】
第1食および第2食についてのパラメータ組間の偏差が計算される。胃調節障害を有する個人では、高体積の第2液状食の排出速度は第1食の排出速度よりも一般に速い。これは増大した胃内圧の指標となり、それ故に調節(accommodation)の問題の指標である。実行された多数の分析において、有症候患者の半排出時間は、第2食について少なくとも20%速いことが見出された。さらに、これらの同じ検査において、調節障害を有する患者にはtlag (ラグ時間)の大きな減少が見られた。
【0098】
ここで、一部の被験者が異常胃調節を有し一部の被験者が無症候である一連の被験者間の胃排出パラメータの偏差を示す表である、図7を参照する。以上説明された第1方法についての結果が、「2食手順」と標識された表の左側半分に示されている。これらの結果を、以下説明される「2検査手順」と呼ばれる別の好適な方法により得られた結果と比較する。
【0099】
tlag パラメータの差によって表わされるラグ期偏差が有症候被験者では通常大きいことが分かる。第1食のt1/2 およびtlag の高い値は、胃排出遅延の指標にもなる。
【0100】
高カロリー液状検査食が利用される場合のこれら実施態様において、正常被験者では、消化管通過のためのカロリー放出率により、一定した排出速度が一般に見出される。この目的のために特に適した食物は、高パーセントの脂肪を含むカロリードリンク、例えば商業行利用可能なエンシュア・プラス(登録商標)またはニュートラドリンク(Nutradrink)(登録商標)製品である。このような食物は胃がそのカロリー含有量を小腸に遅く放出するように強制する。またこのような食物は、様々異なる体積の検査食から生じる希釈化とは無関係に、類似する量の標識基質の利用を可能にする。
【0101】
100mgの酢酸ナトリウムを各々含む200mlおよび800mlの水をそれぞれ第1食および第2食として使用して、水のみを検査食として利用する場合には、上述の検査はその特異性の一部を失う。図8に示されるような無症候被験者の検査結果は、その被験者が正常であると分かっていてtlag が不変であっても、高体積水食後のt1/2 時間が低体積水食後のt1/2 時間よりも25%程短いことを示す。低体積および高体積のエンシュア・プラス検査食を使用して類似の検査を行った後に、同被験者は、これら2つの体積についてのt1/2 およびtlag の両方について非常に近い値を示した。
【0102】
胃排出速度を調節するためにクエン酸を使用する場合には、これらのパラメータの収束が著しく遅くなり、特異性も低くなることが一般に見出される。このことは、胃内容物のpHの結果としてその内容物を放出する際の胃の生理学的機構がカロリー消費機構とは多分異なるからであると考えられる。さらに、pHは希釈化により影響を受ける、全カロリー量は影響を受けない。それ故に、異なる体積のために異なる検査食量を利用しなければならない。
【0103】
本発明のさらなる好ましい実施態様によれば、本発明の胃調節検査の効率的且つ安全な実施を可能にするためのキットが提供されている。呼気検査の好適な場合、該キットは好ましくは、該検査を行うことにおいて使用される1または複数の食に対して加えるための必要量の同位体標識されたマーカー物質を含んでなる。該食およびマーカーの正確な使用を確実にするために、プロトコールを使用するための指示(DFU)または能書が該キットに含まれている。このプロトコールは好ましくは、前記食に関する希釈手順、もし適用可能なら、マーカー物質の添加に関するかかる説明および第2食が摂取される時間を、第1食により測定した胃排出の結果に従って同定または関連づける、もしくはこれが胃調節検査システムによって自動的に行われる場合、システムによって提供された信号に従って、もしくは所定の経過時間後(これらの場合、分析はオンラインでは行われない)に同定または関連付けるための説明を含む。このプロトコールは好ましくは、検査の結果を解釈するための案内を含み、それはある組のパラメータ結果を、正常、異常もしくはボーダーラインとして定義するための基準、ならびに/またはパラメータの組における差を、正常、異常、もしくはボーダーラインの胃調節、排出および感覚を有する患者の典型とするための基準でありうる。代替的に且つ好ましく、前記キットは、濃縮食自体のための容器、例えばエンシュア(登録商標)の缶などを、希釈によって所望の食を生産するために含んでよい。代替的且つ好ましく、前記キットは被験者の呼気を回収するために使用される呼気回収装置をも含んでよい。
【0104】
B. 1食方法
この好適な実施態様では、明確なカロリー含有量を有し、かつ上述の標識マーカーから選択された標識マーカーを含有する単一液状食が、被験者に投与される。液状食のサイズは好ましくは750mlであってよい、または一層、下に記載のように、100mlに下げられたより低体積の食物及び最大1.5リットルもあるより高い体積の食物が使用されて良い。この食物は、例えば低pHまたは高カロリー値により設計されて、ある所定時間x(例えば60分)の間、正常な被験者の胃に残留するとともにy(例えば90分)の半排出時間t1/2により規定される排出速度を有すべきことを保証する。呼気検査分析により、デルタ・オーバー・ベースライン曲線が追跡され、その結果から胃による液状物排出の曲線が決定される。この曲線から胃排出パラメータが決定される。
【0105】
正常よりも速い液状食排出速度を有する被験者では、この速い液状食排出速度が増大した胃圧の指標となり得るし、それ故に調節(accommodation)の問題の指標となり得る。呼気検査の起こり得る結果は、排出曲線の傾きの変化である。
【0106】
この最初の検査後に結果が明確でない場合には、食物が濃縮されるように体積が小さい(例えば100ml)こと以外は同一の食物を使用して、呼気検査を繰り返してよい。このようにして、以上説明される2検査方法で説明されるように、体積の効果のみを比較することができる。低体積および高体積液状検査食の投与後の正常な個人から得られる曲線のサンプルが、それぞれ図9Aおよび図9Bに示される。正常な胃調節を有する被験者から期待されるように、曲線の形状は非常に類似しており、それは、図9Bの結果を獲得するために使用した食が図9Aよりも有意に大きかったという、投与縦軸から明らかではある。
【0107】
上記単一食呼気検査は、許容基準との抽出されたパラメータの比較、または本質的に2食検査である、異なる体積の食による繰り返しと比較のいずれかによって結果を供する。図9Cを参照にすれば、それはさらなる単一食検査からの典型的な結果であって、そこから胃調節障害に関する情報が獲得されてよい第3の型の結果を示す。この検査において、図9Bの実施態様に記載のような、高体積食の投与後、測定された胃排出速度は、線量曲線の巨大且つ早期ピークによって裏付けられるように、正常よりも最初高い。しかし、胃から排泄された検出された食体積における規則的な衰退の代わりに、第2の且つ一般により低いピークが確認され、次いでそれは往々にして、図9Aおよび9Bに示されるように予測された正常速度に見かけ上衰退する。図9Cに示される結果は、胃が最初に大量の食を高速で排泄する胃調節障害状態の典型であり、それから胃調節の障害を伴う被験者の胃において多体積の食に関連する典型的な、胃排出パラメータの最初の組の曲線の部分が抽出されてよく、次いで、食体積がより低い量に下がれば、胃排出が正常になり、そして小体積の食を胃内にとどめる典型的な、胃排出パラメータの第2の組が抽出されてよい。これら2つの組の胃排出パラメータのうちの対応する1つのパラメータ間での差は、被験者における胃調節障害の存在および感覚を特定するために使用されてよい。これに関して、被験者の胃排出機能の生理は、単一食検査を有効に2食検査に変更可能であり、なぜなら、胃排出機能自身が胃排出機能を2つの個別の段階、即ち、高体積食段階、および低体積食段階に分ける機能をするからである。
【0108】
図9Cに示されている類似する結果は、高体積食の受け入れにより有効な胃弛緩機構障害の観点から説明されてよく、この状態は異常な胃調節を反映しているとして知られている。この状態において、食の胃排出における2つの段階の検出、および該段階の間での時間における点の特定は、食投与に続いていつ胃の弛緩が生じるかを示すために使用されてよい。胃弛緩調節過程における遅延は病理学的生理機能を示しうる。しかし、本発明のこの好ましい実施態様の実行は、曲線形状をもたらすために必要な正確な機構と独立して行われてよく、そして実際又は推定機構は本発明の範囲を限定することを意味しない。
【0109】
C. 2検査手順
本発明のこの好適な実施態様に係る方法では、検査は、上述した2食方法で説明された検査と実質的に同じであるが、好ましくは、標識基質の代謝経路の効果を含む第1食の効果が第2食投与前に実質的に消散していているような十分に間隔をおいた時に、異なる2回の機会で実行される。この2検査方法は典型的には連続する2日に行われるが、可能な場合または望ましい場合には、第1検査を午前早くに行った後、その日の遅くに第2検査を行うことも実行可能な選択肢である。これらの離隔した2回の各機会で、体積が異なるが同一標識基質を含む検査食が投与される。胃排出の正常範囲および検査曲線のパラメータが決定され、各測定に特異的な検査食体積をもった各測定についてのパラメータ間で相対偏差が計算される。この手法は、1種類の食物のみによる1検査を使用する場合よりも高い信頼度を与え得る。
【0110】
2検査手順の1つの好ましい実施態様によれば、異なる2日に被験者に検査を行う。第1日に、ベースライン同位体呼気測定を行った後に、エンシュア・プラス(登録商標)のような200mlの標準的な高カロリー液状検査食に溶解された100mgの13C酢酸ナトリウムが、被検者に投与される。あるいは、該カロリー液状食への取込みを容易にするために、13C酢酸ナトリウムを5ml〜15mlの水に最初に溶解させることもできる。従来技術で知られているように、食物投与後に、呼気サンプルが呼気分析装置により繰り返し又は連続的に収集され、そのDoBがリアルタイムで測定される。分析の結果に対して測定曲線が当てはめられ、そこから胃排出速度パラメータがリアルタイムで計算され、それらの漸近収束値が決定される。第2日に、同一手順が繰り返されるが、食物は、100mgの13C酢酸ナトリウムを含む200mlの標準的な高カロリー液状検査食に対して600mlの水を追加することによって補正されている。この第2食について、胃排出パラメータが再び計算され、そして第1食の胃排出パラメータからの偏差が計算される。有症候被験者についての幾つかの典型的な検査結果が図10Aおよび図10Bに示される。図10Aでは、同被験者に対して翌日に200mlの高カロリー検査食が投与され、t1/2 の値が156分であることが認められる。図10Bでは、800mlの高カロリー検査食が投与され、t1/2 の値が99分であることが認められ、それは胃調節障害の兆候である。
【0111】
上述の3手順を呼気検査の形態での実行について説明してきた。しかしながら、上述の胃排出パラメータの測定方法の根底にある概念は、呼気検査によるもの以外の他の異なる測定方法を使用することによっても実行し得ることが理解されるべきである。このような方法としては、限定されることを意図することなく、 99Te, 14Cその他の標識基質を使用する放射性同位体追跡法の使用、MRIによって追跡されるマーカーとして強磁性材料の使用、X線またはCT方法におけるコントラスト材料の使用、または超音波イメージングにおける気泡の使用、ならびに磁気共鳴、ガンマイメージング、シンチグラフィ等の技術を使用するような代替的測定方法が挙げられる。本発明により記載されるものを含め、その各々の技術分野で知られているように、これらの方法の各々が、その固有の感度、特異性によって並びに利用される食物、集団、臨床設備または利用される測定設備による利便性によって特徴付けられる。
【0112】
胃排出速度を決定するための新たな数学的方法が、East Kilbride. Department of Child Health and School of Veterinary Science, University of Glasgow のトム・プレストン(Tom Preston)により "13C-Breath Test Modeling"(13C-呼気検査モデル化)に既に記載されている方法の代替法として現在提案されている。これらの方法は、デコンボルト(deconvolutive)法によって各々の異なる代謝もしくは生理プロセスに対するへビサイド(Heaviside)関数に正規化された異なる微分方程式またはそれらの均等物を結合(coupling)することに基づくものである。こうして異なるパラメータが、各式について得られ、組み合わされて、t1/2 およびtlag またはその均等物を得る。これらの計算方法は、その数学的手法においてのみ当該時術分野で知られている方法とは異なるものであるが、シンチグラフィ分析において使用されるものと同一の呼気検査手順または胃排出研究に基づくものである。
【0113】
標識基質の量は、数学的均質性を示すGECのような同位体強度に関連するパラメータに影響を与えるにすぎず、t1/2 およびtlag のようなパラメータには影響を与えないことが観測されている。それ故に、本発明の好適な方法は、胃排出速度パラメータの計算に係る何れの特定の方法に限定されることを意味するのではなく、上述のモデルのような代替的数学的モデルにも適用可能であることが理解されるべきである。
【0114】
本発明の更に好適な実施態様によれば、胃排出障害の機械的原因または化学的原因のいずれかを区別することが臨床的に意義があることも提案される。本発明の目的は、この指標を、検査実行時に食物に対する被験者の症候性応答を記録することにより提供することである。したがって、胃調節障害の疑いがある患者を調査するための上記2食手順方法および2検査手順方法において、高体積検査食が投与されたときにのみ不快な症候が観察される場合には、その症候は該体積に対する機械的応答の指標である。小量食により、または小量および多量食の両方により不快な症候が観察される場合は、それは該食物のカロリー組成もしくは酸性組成に関連する症候の又は「化学的ストレス感覚」(chemical stress sensation)と呼ばれるものの指標である。不快な症候を測定するために幾つかの方法、例えば、臨床技術分野でよく知られているような症候質問、臨床観察、顔面認識、バイオフィードバック等、がある。これらの好ましい実施態様によれば、胃症候入力が、好ましくは被験者の胃症状の規模に従って、システムに入れられてよく、そして記録が、小体積、例えば、100〜350mlの食および多体積、例えば、500〜1500mlの食の投与の間または後に行われてよい。次いで、被験者の胃調節、排出および感覚の一層完全な臨床評価をするために、被験者胃症候入力および被験者胃測定出力の間での相関関係がとられてよい。
【0115】
胃症候のこれらの因子は、好ましくは先に記載されたシステムに対して、医者が被験者問診の結果から作った入力によって、または患者が該データ処理システムへ直接入力することのいずれかによって導入されてよい。かかる胃症候入力ユニットは図5Aに描かれた装置において示されており、胃調節、排出および感覚診断出力モジュールに対するさらなる入力を供する。これは任意の特徴であるので、破線で描かれている。
【0116】
さらに、本発明の他の好ましい実施態様によれば、上記キットは好ましくは、マーカー物質もしくは食それら自身と一緒に、そして、追加でもしくは検査プロトコール説明書の代替として、被験者に対して適用するための問診の要素をも含んでよい。
【0117】
4.細菌過剰増殖検査(BOAT)
消化不良、IBSまたは胃腸疾病についての他の知られている原因は、細菌過剰増殖または大腸菌による小腸もしくは上部胃腸管のコロニー形成、ラクトース不耐性その他の等の吸収不良、または低胃腸運動性である。細菌過剰増殖について、大腸外のこれら微生物レベルの評価は、胃鏡検査法(これは煩しく、患者に不快であり、人間の解釈に依存する)により、又は水素呼気検査(HBT)により通常行われる。HBTは、胃で分解されないラクトース等のある量のマーカー糖の被験者への投与の前後の呼気を分析することによって行われる。細菌がラクトースを分解して、ラクトース代謝の天然の結果として、ヒトのような大型生物によっては発生しないガスである水素を発生する。したがって、被験者の呼気中で測定される水素レベルの増大は、細菌活性の指標となる。胃で分解されない他の糖に関して、ラクトースが大腸に到達するために要する時間は約3時間である。それ故に早期の水素ピークは、細菌過剰増殖の信号である。水素はこれらGI障害の呼気検査をするために使用される最も共通の副生成物であるが、メタンは、摂取されたラクトースが小腸に存在する代替的且つさらなる細菌によって代謝される場合に生産されうる。本発明の他の好ましい実施態様によれば、係るメタン生成物は、水素の代わりまたは水素に加えて、これらの呼気検査において使用されてよい。水素呼気検査がこの用途においていつ挙げられようとも、この検査はメタン呼気検査を記載して網羅することを意味し、そしてまた違いは、一般にガス検出装置において使用されるガス検出装置にのみあると解されるべきである。
【0118】
この従来技術のHBTの主な不利点は、食物が小腸を通過する間の正確な時間を特定する必要性である。異なる被験者間での、および同一被験者間であっても異なる時間での、胃腸通過時間の変動に起因して、偽陰性および偽陽性の診断が生じ得る。
【0119】
したがって、これらの欠点を克服するために、本発明の更に別の好適な実施態様によれば、細菌の存在下で水素を発生するラクトース等のような基質を含有するだけでなく、胃腸管内で基質の位置を示すように作用する第2の同位体標識マーカーをも含有する、基質を投与する検査法が提案される。水素発生は細菌叢が存在する場合の細菌叢の発酵作用を示すように測定され、第2マーカーの分解生成物の第2測定が、一般に、水素発生量の測定と同時に行われる。この第2測定は、好ましくは、標識された炭素含有基質の被験者による代謝の結果として生成する標識CO2 の測定であってよい。
【0120】
本発明の好適な実施態様によれば、スパイロメーターまたはガスクロマトグラファーのようなH2 検出器が、呼気検査装置の部分である同位体ガス分析装置に組み込まれる。好ましくは、従来技術に記載されているような中間セル(intermediate cell)により、ある制御範囲のCO2 濃度においてサンプルガスが収集される。
【0121】
小腸または大腸におけるH2 発生、および基質の小腸の通過の両方をチェックするために、好ましくは、幾つかの異なる種類の基質を使用してよい。この呼気検査を行うための第1の好適な方法によれば、標識CO2 生成の測定のために、小腸で体により迅速に吸収または代謝される比較的小量の13C標識基質、例えば100mgのグルコースまたは酢酸ナトリウムまたはマイクロカプセル化重炭酸塩と一緒に、比較的大量のグルコースまたはラクトース、ソルビトールまたはラクトース例えば100gが、被験者に投与される。グルコースは、それが小腸に到達した時にのみ患者の体によって吸収および迅速に代謝され、この時点で被験者の呼気中の標識CO2 として検出可能となる。グルコースは、細菌によっても代謝可能であり、これが呼気中のH2 として検出される。13CO2 ピークが少なくともH2 の前の所定時間に生じることにおいて13CO2 およびH2 のガス性ピークが時間的に正しく分離される場合には、このことは被験者の細菌集団の位置が正常であることを示す。この状況は図11に示される模式的な呼気検査の結果に例示される。他方、図12に模式的に示されるように、H2 ピークが13CO2ピークと近い時間に位置する場合には、そのことは小腸における細菌過剰増殖の存在を示す。13CO2 ピークよりも遥かにブロードで長続きする場合の水素呼気の「ピーク」、ならびに請求の範囲に記載されるようなH2 ピークそれ自体としての言及、および13CO2 ピークに対するH2 ピークの時間的位置は、このように条件付けされることが留意されるべきである。実際に、大部分の実際の場合において、水素の「ピーク」位置の測定の代わりに、H2 呼気の測定は、水素呼気がベースラインレベルを超えたある一定のレベルを達成する位置によって決定される。
【0122】
正常な個人では、グルコースは小腸で体により吸収および代謝される。細菌代謝による検出可能な水素ピークを与えるために、いずれの残留グルコースでも大腸で利用可能となる。しかしながら、幾つかの例では、正常な被験者における細菌代謝からの検出可能な水素ピークを与えるべく大腸へ通過するために残留するグルコースが不十分となる場合がある。この場合には、ラクトース等の非分解性糖が、検査基質として含まれる。
【0123】
他の例では、100mgの 13C標識基質が、細菌過剰増殖水素呼気検査のための専用検査基質、例えば10gのラクトースと一緒に、投与される。上述のように、図11に模式的に示されるように、13CO2 ピークがH2 ピークよりも著しく先行する場合には、このことは患者の細菌集団が正常であることを示す。図13に示されるように、H2 「ピーク」が13CO2 ピークとほぼ同時に生じる場合には、そのことは小腸における細菌過剰増殖の存在を示す。しかしながら、この例では、検査基質としてラクトースのような非分解性糖の存在が、水素ピークが細菌過剰増殖を有する被験者の小腸におけるものか、又は正常被験者の大腸におけるものか、検出されることを保証する。
【0124】
13C標識基質の既知の代謝より生じる 13CO2 は、食物が胃腸管に到達した時点を決定するためのマーカーピークであり、それ故に、異なる代謝動態に起因するか又は被験者の臨床状態に起因する消化速度の差を克服する。それ故に、この好適な方法は、胃腸通過時間における患者内および患者間の変動に係る従来技術の不利点を克服するものである。
【0125】
本発明の更に好適な実施態様によれば、摂取される基質における水素およびCO2 マーカーの同時使用は、オロセカル通過時間の加速または遅延を決定するための方法も提供する。これは食物の経口投与と、大腸菌により糖の発酵が行われる大腸へのその食物の到達との間の時間である。このプロセスは低標識CO2 生成量と共に水素の高ピークによって特徴付けられる。
【0126】
他の代替的な検査食としては、限定されないが、比較的大量、例えば70〜100gの非標識グルコースまたは10gのラクトースと一緒の、標識酢酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム、グルコース、アセチルロイシンのようなプローブ、またはマイクロカプセル化標識基質が挙げられる。
【0127】
本発明に係る方法の更に好ましい実施態様によれば、多量に与えられる、これらの基質は、アルカリ性腸内媒体においてのみ放出可能とするように設計されたマイクロカプセル化手段中に取り入れられる。これにより、検査の時間的精度における改善を達成することが可能となる。あるいは、2成分を同一食において分離して提供することができ、これは特に簡単な適用方法である。単一標識基質および同時/単一のマイクロカプセル化マーカーは、体による吸収と代謝および/または細菌発酵がGI管で同時に生じる従来技術を超える利点を有する。
【0128】
あるいは好ましくは、オロセカル胃時間を示すために、重炭酸塩のような迅速放出の標識基質を含有する、大腸で分解可能なマイクロカプセル化配合物が利用され得る。
【0129】
本発明の他の好適な実施態様によれば、ラクトース呼気検査(LBT)および他の糖吸収不良、例えばフルクトースまたはマルトースまたはスクロース不耐性の時間を短縮し、かつ、その精度を改善するための方法が提供される。ラクトース不耐性は総人口の25%に起こり、乳中のラクトースを体による利用のためにグルコースまたはガラクトースに代謝する酵素であるラクターゼの体内の低利用効率によって特徴付けられると考えられている。このラクターゼ欠損の結果として、未代謝ラクトースが大腸菌により発酵され、検出可能なH2 を発生する。このような未代謝ラクトースの大腸における吸収を検出するために、13C−ラクトース摂取後の13CO2 およびH2 の同時測定が、ラクトース不耐性の診断のために提案されている。残念ながら、13C標識ラクトースは高価であり、容易に利用可能でなく、この提案を魅力のない検査方法にする。適度に安価に利用可能である13C濃縮供給物と共に乳生産牛に供給することによる、天然 13C標識ラクトースが示唆されている。しかしながら、このような乳の濃縮レベルは許容できる結果を生み出すためには低すぎるものであり、その変動性は標準化のためには高すぎる。したがって、本発明の他の好適な実施態様によれば、ラクトース不耐性を検出するための同時食(dual meal)の供給方法が提供される。この同時食は、大腸に到達するときにのみ主に吸収され、かつ、低コストで容易に利用可能な糖である、13C標識キシロースのような標識マーカー基質と一緒に天然ラクトースを含む。したがって、この同時食の摂取後に、図12に示されるように、13CO2 がH2 とほぼ同時に検出される場合には、そのことはラクトースがラクターゼ酵素の不存在に起因して小腸では吸収されていないが、標識ラクトースと一緒に大腸に到達したことの指標である。他方、H2 が全く13CO2 と共に検出されない場合には、このことはラクトースが正しく小腸で吸収され、被験者がラクトース不耐性を羅患していないことの指標である。さらに、内在性ラクターゼの欠乏がある場合には、H2 ピークが13CO2ピークの直ぐ後に予想され、そのためH2 ピークが出現するか否かを見るために長時間待つ必要が無いことが知られているので、この同時食の使用により検査時間の短縮が可能になる。
【0130】
本発明の更に他の好適な実施態様によれば、ラクトース不耐性のような糖吸収不良の存在または細菌過剰増殖の存在の一方または両方を決定するために、ラクトースと、小腸で吸収されるマーカー基質、例えば 13C標識酢酸ナトリウムとを含む、同時食を使用し得る。被験者が細菌過剰増殖を羅患しているが、ラクトース不耐性を羅患していない場合には、ラクトースの大部分が小腸で迅速に吸収されるが、小量は小腸での細菌過剰増殖と接触することに起因して水素を発生する。結果として、図11に示されるように、その食物が小腸を通過している際に、13CO2 ピークとほぼ同時に小さなH2 ピークが生じる。他方、被験者がラクトース不耐性を有する場合には、実質的に全てのラクトースが大腸の細菌に到達する時に大きなH2 ピークが生じ、このピークは、前に説明したように標識酢酸ナトリウムの小腸の通過時に生成する13CO2 ピークよりも遅く生じる。被験者が両方の障害を羅患している場合には、ラクトース吸収機構の不存在により、ラクトースの全てのラクトースが小腸での細菌過剰増殖に曝されるために小腸で利用可能となり、その結果は13CO2 ピークと同時に大きなH2 ピークが生じる。
【0131】
あるいは、大腸で代謝される標識基質、例えばキシロースまたはマイクロカプセル化重炭酸塩も、ラクトースと一緒に利用し得る。このような場合に、早い水素ピークおよび遅い標識基質ピークは細菌過剰増殖の指標である。同時に生じる2つのピークはラクトース不耐性の指標である。
【0132】
本発明の更に他の好適な実施態様によれば、13C標識グルコース、酢酸ナトリウムまたは他の 13C標識物質を、同一機会の1検査における胃調節、胃排出および細菌過剰増殖の組合せ型評価のためのグルコースまたはラクトースを含む固形/液状検査食に利用することもでき、これにより、患者がクリニックに訪問しなければならない回数を減らすころができる。
【0133】
細菌過剰増殖呼気検査は、以下の点により要約することができる:
1.食物が小腸を通過するとすぐに小腸で吸収されてCO2 ピークを生じる、13C標識により食物が標識される。
2.同食物は、それが大腸での正常な細菌濃度に到達する時に、呼気検査(BT)におけるH2 ピークを生じる。
3.従来技術で使用されるラクトースのような非分解糖を使用することにより、H2 ピークが生じるために要する時間に従って細菌過剰増殖を決定する。
4.CO2 ピークおよびH2 ピークの両方を検出するためにBTを行う。これらのピークが時間的に正しく分離される場合には、患者の細菌位置が正常である。H2 ピークがCO2 ピークと近い時間に生じる場合には、そのことは小腸での細菌過剰増殖の存在を示す。
5.その利点は、その食物のGI管における場所を決定するためのマーカーピークとしてCO2 を用いることにより、異なる代謝または患者の臨床状態に起因する消化速度の差が克服されることである。
【0134】
ここで図14を参照すれば、それは本発明の好ましい実施態様により構築され且つ有効な、細菌過剰増殖、ラクトース不耐性、糖吸収不良、または低GI運動性を検出するための呼気検査システムを模式的に示している。対応する食の投与後または呼気検査基質を含有する部分の投与後、行われるべき特定の検査により、上記実施態様において説明されたように、被験者の呼気はシステムに対する入り口において回収され、そして2つのガス分析装置に移される。これら3の分析装置のうちの1つは好ましくは、呼気における水素および/またはメタンの量を検出および測定し、そして他のものは好ましくは、同位体比分析装置であり、それは摂取された基質に由来する標識された同位体の、それと等しい天然に生じる同位体に対する呼気中の比を測定する。これらの分析は繰り返しまたは実質上連続して検査の期間に渡り行われ、そしてこれらの分析の結果は好ましくは、曲線フィッティングアルゴリズム、例えば、当業者に公知の、データをDoB曲線へと、水素またはメタン量について個別に、そして同位体比についてフィッティングするためのアルゴリズムを使用する型の計算モジュールのうちの1つに対して好ましく入力される。DoBに対して代替的且つ好ましく、本明細書中上で記載されたように、PDRなどの、呼気において測定された線量の他の任意の表現が使用されてよい。次いで、これらの曲線またはそれらを構成するデータは、データ分析装置に入力され、それが曲線のピークの領域を、検査食の投与から経過した時間の関数として検出する。水素またはメタンデータの場合、有意なピークが検出されないということは一般ではなく、何故なら、非常にブロード且つ低い水平な形状の曲線が獲得されるからだ。この理由について、水素またはメタン分析装置ユニットは、有用なピークが前記データから抽出できない場合、前記アルゴリズムが、水素もしくはメタン量が所定の閾値を越える場合の時間点を交互に検出し、そしてこの時間点が水素もしくはメタン「ピーク」の存在を定義するための基礎として使用されるように、好ましく予めプログラムされている。次いで、示差時間比較装置は、好ましくは、2つのピークが生じる時間における差を計算し、この差の正常な範囲のデータベースと、該生じる差を比較し、そして推定標準との任意の時間差の比較に基づき、呼気検査の検査結果を生じる。
【0135】
さらに一層、本発明のさらに好適な実施態様によれば、これら記載の呼気検査の有効且つ安全な実行を可能にするためのキットが供されている。該キットは好ましくは、該キットが供給される特定の検査を行うために使用される必要量の2つの個別の成分基質物質を含んでなる。該基質および/またはマーカーの正確な使用を確実にするために、プロトコールを使用するための指示(DFU)または能書が該キットに含まれている。このプロトコールは好ましくは、もし適用可能なら食の調製手順、もし適用可能なら、マーカー物質の添加に関するかかる説明を含んでよい。このプロトコールはまた、検査の結果を解釈するための案内を含み、それはある組の時差結果を、正常、異常もしくはボーダーラインとして定義するための基準でありうる。
【0136】
以上に説明され、そして特に示された事項によっては本発明が限定されないことが当業者に理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、以上に説明された様々な特徴のコンビネーションおよびサブコンビネーションの両方、ならびに当業者が以上の説明を読むことによって行われるであろう変形および改良であって従来技術に含まれないものを包含する。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1A】GIハイリスクグループに属する無症候患者について(図1A)あるいは消化不良またはIBSの症候を有する患者について(図1B)、可能な検出および処置のコースを説明する模式的フローチャートである。
【図1B】GIハイリスクグループに属する無症候患者について(図1A)あるいは消化不良またはIBSの症候を有する患者について(図1B)、可能な検出および処置のコースを説明する模式的フローチャートである。
【図1C】並列配置で体系化された提案される検査法を示すことで、上述のGI問題のいずれかを有する疑いのある患者について検出および処置の方法を示す代替的模式図である。
【図2A】時間単位での時間の関数として被験者の計算されたt1/2 ,tlag ,DoBおよびGEC胃排出パラメータのリアルタイム進行経過の例を示す4グラフ組の1つである。
【図2B】時間単位での時間の関数として被験者の計算されたt1/2 ,tlag ,DoBおよびGEC胃排出パラメータのリアルタイム進行経過の例を示す4グラフ組の1つである。
【図2C】時間単位での時間の関数として被験者の計算されたt1/2 ,tlag ,DoBおよびGEC胃排出パラメータのリアルタイム進行経過の例を示す4グラフ組の1つである。
【図2D】時間単位での時間の関数として被験者の計算されたt1/2 ,tlag ,DoBおよびGEC胃排出パラメータのリアルタイム進行の例経過を示す4グラフ組の1つである。
【図2E】このデータを獲得して使用し被験者におけるこれらのパラメータの正常さを特定するための、好適な呼気検査装置の模式的な説明である。
【図3】非標識第2食を用いて行われるGEBTにおいて得られた標識分解生成物の呼気量またはDoB曲線の模式図である。
【図4】A及びBは2食手順より生じる、時間の関数としての典型的DoB曲線である。Aにおいて正常な胃調節を伴う被験者に関する結果を示し、Bでは胃調節障害を伴う被験者に関する結果を示す。
【図5】図5A〜Dは、本発明の一層好ましい実施態様により、胃機能検査を行うための、そして特に胃調節検査を行うためのシステムを模式的に示し;5Aにおいて、胃調節検査システムの要素のブロック線図を示し、一方で5Bではかかるシステムのデータ処理装置から獲得された出力データの例を示し;図5Cは、本発明のさらに他の好ましい実施態様により構築され且つ有効な呼気検査装置を模式的に示し、それは胃排出および胃調節情報に加えて、多機能胃診断情報を医者に対して供することができ;図5Dは図5Cにおけるようなシステムの好ましいディスプレー出力スクリーンを模式的に示す。
【図6】未だ肺により呼気されていない同位体 13C開裂生成物により、胃腸管に依然として残留する第1食の残留部分について第2食曲線における補正がどのようにして行われるかを模式的に示す図である。
【図7】2食手順および2検査手順について、一部の被験者が異常胃調節を示し一部の被験者が無症候である一連の被験者間の胃排出パラメータの偏差を示す表である。
【図8】第2食として高体積水食を用いる2食検査を実行する無症候被験者の検査結果を模式的に示す図である。
【図9】図9A〜Cは一回食物検査から獲得した胃排出曲線の模式的サンプルを示す。図9Aおよび図9Bは、それぞれ低体積および高体積の液状検査食の投与後の正常個人から獲得した胃排出曲線の模式的サンプルを示す図である。図9Cは胃調節障害を伴う被験者から獲得した曲線を示す。
【図10】図10Aおよび図10Bは、2日検査について症候性患者からの胃排出曲線の模式的サンプルを示す図であり、図10Aでは200mlの高カロリー検査食が投与され、図10Bでは800mlの高カロリー検査食が投与される。
【図11】得られた曲線の模式的例であって、各々が水素ピークと同位体標識二酸化炭素ピークの両方を示して、細菌過剰繁殖および糖吸収不良など異なるIBS障害をもった被験者から得られた結果を示す図である。
【図12】得られた曲線の模式的例であって、各々が水素ピークと同位体標識二酸化炭素ピークの両方を示して、細菌過剰繁殖および糖吸収不良など異なるIBS障害をもった被験者から得られた結果を示す図である。
【図13】得られた曲線の模式的例であって、各々が水素ピークと同位体標識二酸化炭素ピークの両方を示して、細菌過剰繁殖および糖吸収不良など異なるIBS障害をもった被験者から得られた結果を示す図である。
【図14】本発明の他の好適な実施態様に従って最近過剰増殖または様々なGI不耐性を検出するための、呼気試験を行うためのシステムを模式的に示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は胃および胃腸機能障害の様々な状態を決定するための方法の分野に関し、特に呼気検査により行われる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先進国の総人口の25%よりも多くが様々異なる程度の機能性消化不良および/または過敏性腸症候群IBSを羅患している。このような症状は本願の目的のために機能性GI障害と称される。これらの障害は特定可能な原因のないGI症候群によって特徴付けられる臨床症候群である。生理学的原因が特定されると、これらの障害はより正確には器質的消化不良または腸不全と称される。消化不良症候群の症群は、へその周囲もしくは上の腹部の中央で一般に感じられる痛みや不快感に通常関連する。不快感の幾つかの例としては満腹感、早期飽満感(これは食べ始めた直後の満腹感である)、鼓腸感および嘔吐感が挙げられる。これらの全てを説明する単一の器質的障害は存在しないが、これらの症候群をもった全患者の約3分の1は胃排出の遅延(delayed gastric emptying)があり、通常は起こらないが重くなると頻繁な嘔吐が起こる。さらに、3分の1は、異常な胃の調節反射(abnormal gastric accommodation reflex)として知られている状態である、食物摂取後の上胃の弛緩故障を示す。これらの患者における胃排出遅延の羅患率は無症候者と比較して顕著に高いわけでないが、これらの症候群を有する患者の約半数は胃内容物が少量であるときでも不快感を生じる過敏性または刺激性の胃も有する。胃排出研究は胃の内容物排出不良があるかどうかを示すことができる。他の運動性障害は比較的に検出困難であるが、C.ステンダール(C. Stendal)著, "Practical Guide to Gastrointestinal Function Testing"(胃腸機能検査の実用ガイド), 第197-201 頁, Blackwell Science Ltd, Oxford, U.K.,(1997)発行に記載されているような、バロスタット(barostat)と呼ばれるコンピュータ制御されたポンプに接続された胃内バルーンを使用する方法が開発されており、この方法は以下:
(a)拡張、または上胃が食中に十分に弛緩するかどうか、および
(b)胃調節、または痛みや不快感を引き起こすのにどの位の胃の内容物充填が必要かを示すことができる。
【0003】
バロスタット研究は、胃内圧の関数として胃体積、もしくはその逆、および/または、異なる胃体積での胃内圧変化に対する症候反応を測定することによって、消化不良症候群と調節障害との間の関係を示してきた。このようなバロスタット方法では、液状食が投与されるが、この液状食は多量の水(2リットルまで)、アイソトニックまたは高カロリー値溶液、例えばエンシュア(Ensure)やゲータレード(Gatorade)、スープ、またはグルカゴン輸液であってよい。次に、ある体積のバルーンについて、胃の不快感や痛みを誘発するのに必要な圧力が測定される。この方法は侵襲的で、患者にとって不快であり、広い臨床用途には非実用的である。さらに、バロスタット・バッグは胃の運動性と干渉することがあり、このことは不正確な結果を生じる。消化不良の器質性原因の他の例はヘリコバクター・ピロリ(Helicobactor pylori)感染である。
【0004】
糖尿病患者、パーキンソン病の薬物療法を受けている患者、等のようなリスクグループの無症候患者もまた、それらの主障害の予後に影響を与え得る具体的なGI障害を決定するための調査から恩恵を受ける。例えば、障害のある胃排出は糖尿病患者において血糖調節に影響を与えることがある。
【0005】
胃は、一般に、2つの分離した解剖学的部分、すなわち、上、近位または底部、および下、遠位または腔部、に分けて説明される。上(近位または底)胃は、食物が入ることにより拡張し、食物貯蔵所として機能するとともに、液状物と胃内容物を胃から外に押し出すポンプとして機能する。下(遠位または腔)胃の機能は、食物をより小さな粒子にすり潰すとともに、それを消化液とともに混合してそれが小腸に到達する時には吸収できるようにすることである。胃はまた、小腸を損傷したり又は過負荷をかけることになる食物または酸の広範囲の送達を回避するために制御された速度で、胃の内容物を小腸に排出する。
【0006】
胃には以下の3種類の動きが一般に認められる。
1.閉じた括約筋(幽門括約筋)に跳ねかけて食物を小粒子にすり潰す消化液と食物粒子の波を生じさせる、胃の下部における約3回/分の速度での律動的で同調した収縮。
2.胃の上部は、体積が変化する間に一定の圧力を保持する胃に食物が入ることを可能にする、各嚥下の後に1分以上持続する、ゆっくりした緩和を示す:他の時に、胃の上部は、胃の排出を助ける圧力の勾配を生じさせる、ゆっくりした収縮を示す。
3.全ての消化可能な食物が胃を出た後の食間では、幽門括約筋が開くことに伴われる非常に強い同調した収縮の時々の突発が起こる。これらは、その機能がいずれの摂取可能な粒子をも胃の外に掃きだすことにあるので、時として「ハウスキーパー波」とも呼ばれる。その別名は転移運動コンプレックス(migrating motor complex)である。
【0007】
前述したように、バロスタット方法は侵襲的で、不快で、広い臨床用途には非実用的であり、必ずしも正確な結果を与えないことがある。さらに、胃単独の拡張と充填の障害の決定にとって制限的であり、通過時間(transit time)または吸収不良に広く関連する障害あるいはIBS障害と呼ばれる障害のようなGI管でそれ自体兆候になる他の障害については他の検査を適用する必要がある。このような胃およびGI機能障害の広く蔓延する羅患率のため、このような障害の多様な形態を識別および診断するための簡単、迅速、容易に我慢でき、かつ信頼できる検査法を得ることが重要になっている。
【0008】
C.ステンダールの上記文献は、本願の主題の背景のレビューとして特に有用である。この欄および本明細書の他の欄に言及される公表物の各々の開示が、ここで参照されることにより各々がその全体として取り込まれる。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明は、消化不良またはIBSを羅患する患者ならびにリスクグループにある無症候患者における胃の障害のより正確な診断を可能にする新たな方法を行うことにて使用するための新たなる装置およびキットを提供することを目的とする。特に、GI障害決定のための専用の呼気検査によって、より正確な診断を可能とする方法が提案される。これらの方法は呼気検査の形態で行われる場合、患者が容易に我慢できるとともに、多くの従来技術の胃障害のための検査とは対照的に、医師によってのみ実行され得る程に十分に簡単である。本発明の譲受人に譲渡された"Breath Test Analyzer"(呼気検査分析装置)に関する米国特許第6,186,958号に記載されているような、リアルタイムの結果を与える自動化呼気検査手順は、検査を迅速化するだけでなく、本発明に係る方法の幾つかの実用的実行を可能とするためにほぼ不可欠でもある。ここで結果のほぼ連続的な、オンラインモニタリングは、検査を、リアルタイム結果の提供が不可能である従来技術の方法よりも早く終らせることを可能にする。しかし、本発明の装置であって、胃排出(gastric emptying)および胃調節(gastric accommodation)に関連する本発明の方法を少なくとも行うための装置は、食の、以後の胃腸進行をできる他の型のものでもありうる。呼気分析のための他の係る型としては、同位体比マススペクトロメーターなどが挙げられる。呼気検査と無関係な他の装置の型としては、MRIイメージング装置、コンピュータ断層撮影システム、シンチグラフィーイメージング装置(ガンマカメラ)、X線装置、超音波イメージング装置など下に記載したものが挙げられる。しかし、ほかに留意されない限り、そして適用の簡素化のために、本発明の様々な実施態様を記載さするために使用される装置は概ね、呼気検査装置である。
【0010】
さらに、本発明の好適な方法及び装置は、このような患者の処置の制御管理を可能とする。GI患者は安定でない症候をしばしば示す;それ故に継続中の検査を行わない症候のみによる処置は問題となり得る、という最近の調査結果により、これら本発明の方法の重要な臨床的な利点は明らかである。
【0011】
本発明の好適な方法および装置によって診断および追跡できる障害は、以下の2つの群に分けることができる。
(A)(i)胃排出の遅延;
(ii)胃調節の乱れ;
(iii)ヘリコバクター・ピロリ感染の効果;
および(iv)胃の化学的感覚
などの、胃の領域での感覚と一般に関連する消化不良型障害。
(B)(v)細菌過剰増殖;
(vi)ラクトース不耐性;
およびオロセカル(Orocecal)通過時間障害
などの、過敏性腸症候群型障害。
【0012】
消化不良に対する異なる生理学的所見を評価することは、適切な処置の処方を可能にする。例えば、胃排出の遅延と正常な胃調節を示す患者は、プロキネティック(pro-kinetic)(薬剤、ダイエットなど)により処置することができる。他の例では、異常な胃調節と陽性のH.ピロリ用尿素呼気検査を示す患者は、H.ピロリ根絶単独で又は底部緩和薬(fundus-relaxing agent)と併用して処置することができる。
【0013】
本発明の更なる他の好ましい実施態様に従い提供されているのは、さらに1組の1以上の食、被験者の胃を出た食の体積の関数として1以上の食の胃排出パラメータを2以上測定することによって該被験者の胃調節の測定において使用するための、該被験者の胃中で1以上の食の滞留を生じさせるために有効である1以上の成分を含んでなり、そして所定の体積を有する1以上の食の組が提供されている。好適に前記1以上の食は1つの食であり、そして2以上の測定は当該食に対して行われる。さらに、2以上のパラメータのうちの1以上の測定は、被験者の胃からの食の液体排出段階において行われる。なお、前記1以上の食が2以上の食であり、そして2以上の測定が2以上の食の最初の1つに対して行われ、そして2以上の測定のうちの第2番目になるものが該2以上の食のうちの第2のものに対して行われる。2以上の食のうちの第1のものは、該2以上の食のうちの第2のものよりも大量、または小量あってよい。
【0014】
本発明の上記の好ましい実施態様において、所定の体積とは150ml以上であり、そして前記組の食の少なくとも1つは、被験者の胃を離れた後に検出されるマーカーを含んでなる。該マーカーは、被験者の呼気中その存在下によって、または被験者の体内で検出されてよく、体内での場合、それは好ましくは被験者の胃腸管中にそれが存在することにより検出されてよい。
【0015】
本発明の上記実施態様において、前記少なくとも1つの食の組は、好ましくは:
150kcal以上のカロリー値、
5%以上の脂質含量、
10%以上の炭水化物含量、
5%以上のタンパク質含量、および
3未満のpH値、
を少なくとも1つ含んでなる。該炭水化物は、好ましくはグルコースである。
【0016】
本発明のさらなる他の好ましい実施態様によれば、呼気検査において被験者によって使用されるための単回投与液状食であって:
(i)500ml以上の体積、
(ii)食の胃滞留を生じる剤、および
(iii)マーカーであって、胃の環境に適しており、そして被験者の胃を出ることによって検出可能なマーカー、
を含んでなる食が提供されている。
【0017】
食の胃滞留を生じる剤は、好適に少なくとも:
(i)150kcal以上のカロリー値、
(ii)5%以上の脂質含量、
(iii)10%以上の炭水化物含量、
(iv) 5%以上のタンパク質含量;および
(V)3未満のpH値、
の1つを含んでなる。
【0018】
本発明のさらに他の好ましい実施態様によれば、さらに、被験者の胃調節を測定するための装置であって、被験者に対して、少なくとも1つが被験者の胃を出ることによって検出可能であるマーカーを含んでなる第1及び第2食の連続投与の後に、被験者の胃調節を測定するための装置が提供されている。
【0019】
該装置は:
検出装置であって、マーカーを、それが被験者の胃を出ることによって検出し、そして被験者の胃からの食の排出の速度に関する情報を担持するマーカー出力信号を供する検出装置、ならびに
データ処理システムであって、該マーカー出力信号を受けて、第1食の胃排出を特徴づける第1の組のパラメータ、および第2食の胃排出を特徴づける第2の組の対応するパラメータを計算し、そして第1および第2の組のパラメータに対応する2つのパラメータを比較することによって胃調節を決定するデータ処理システム、
を含んでなる。この装置を使用する際、前記第1および第2食は、異なった体積であってよく、この場合、胃調節は該第1および第2食の体積によるパラメータの依存性から決定される。代替的に且つ好ましく、前記第1および第2食は類似する体積であってよく、そして該第2食は、該第1食が被験者の胃から排出される前に投与される。
【0020】
最後に挙げた装置の実施態様のすべてにおいて、前記処理システムは好適に、第1食が被験者の胃から排出される前に第2食の1組のパラメータを比較するようになっている。さらに、マーカーは好適に被験者の呼気中にそれが存在することによってかあるいは被験者の体内で検出され、そしてもしそのように体内での検出ならば、このましくは被験者の胃腸管におけるその存在により検出される。
【0021】
上記装置において、前記処理システムによって計算された所定の組のパラメータは少なくとも、t1/2、tlag、CEG、CPDR、および時間の関数としてDoBのプロット下の積分のうちの1つを含んでなる。
【0022】
本発明のさらに他の好ましい実施態様によれば、被験者における胃調節の診断のためのキットであって:
(i)第1の所定体積および第1の所定胃滞留特性を有する第1食をマーキングするためのある量の物質、
(ii) 第2の所定体積および第2の所定胃滞留特性を有する第2食をマーキングするためのある量の物質、ならびに
(iii)第1食および第2食の調製に関連する情報を供するプロトコール、
を含んでなるキットが提供されている。前記プロトコールは好ましくは、第1食および第2食の被験者に対する投与に関連する情報を供し、そしてまた第2食が摂取される場合、その時点に関連する情報を、第1食について測定した胃排出の結果に従い供する。該キットは前記食のうちの少なくとも1つを調製するために必要な物質をも含んでなってよく、そして呼気回収装置をも含んでよく、それは一般にディスポーザブル装置である。
【0023】
本発明のさらに他のこのましい実施態様に従い、被験者の1以上の胃腸管状態を特定するための呼気検査装置であって:
(i)被験者から標識した基質の消化の後に呼気を回収するための呼気回収装置、および
(ii)被験者の呼気における標識された基質の産物を検出するためのガス分析装置、
を含んでなる装置が提供されており、ここで、該呼気検査装置および該標識された基質は被験者に関連する胃腸情報を提供する可能な呼気検査グループから選択される第1呼気検査を行うために適合され、そしてここで該呼気検査装置および標識された基質も、第1呼気検査の結果に従い、該呼気検査グループから選択される第2呼気検査を行うために適合されており、従って、被験者の胃腸状態は、少なくとも該呼気検査の1つの結果から測定される。
【0024】
この呼気検査装置において、胃腸状態は少なくとも消化不良および過敏性腸症候群のうちの1つを含んでなりえ、そして該消化不良は従って、胃腸排出障害、胃腸調節障害、およびヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染のうちの1つから生じうる。なお、前記過敏性腸症候群は少なくとも、糖吸収不良障害、細菌過剰増殖、およびオレセカル(orececal)経過障害のうち1つから選択されうる。かかる場合には、糖吸収不良障害は、ラクトース不耐性(intolerance)、フルクトース不耐性、スクロース不耐性およびマルトース不耐性のうちの少なくとも1つである。
【0025】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、被験者の胃排出の測定をするための呼気検査装置であって:
(i)ガス回収装置であって、被験者から、マーカーを含んでなる検査食の投与後に吐かれた呼気サンプルを回収するためのガス回収装置。該食の副産物は、該被験者の胃からのマーカーの排出の速度に従って、被験者の呼気中に吐き出される。
(ii)ガス分析装置であって、回収した呼気を分析するためのガス分析装置。ここで分析は本質的に連続的に行われる。及び
(iii)計算システムであって、呼気検査が進むにつれ、ここでt1/2、tlag、デルタ・オーバーベースライン(DoB)曲線強度、および時間の関数としてDoBのプロット下の積分、および被験者の胃排出係数(GEC)パラメータのうちの少なくとも1つを計算する計算システム、
を含んでなる装置が提供されており、ここで該呼気検査装置は1以上のパラメータの最終推定値を決定すること、ならびに該パラメータが該パラメータ値についての公知の基準から有意に離れているかどうかを決定することによって胃排出障害の兆候を供する。この装置は従って、好ましくは、被験者の胃排出障害を示すために提供されており、その間に該被験者はなおも前記分析装置に対して呼気サンプルを供し、または代替的に且つ好ましく、被験者の呼気の継続中(on-going)分析に従いサンプルを供する。
【0026】
本発明のさらなるこのましい実施態様によれば、同位体呼気検査のための基質であって、マイクロカプセル化コーティング物質中に同位体標識した物質を含んでなる基質が提供されており、ここで該マイクロカプセル化コーティング物質の特性は、該同位体標識された物質が胃腸管の所定の部分で放出されるように選択される。該マイクロカプセル化コーティング物質は、好ましくは、それが通過する環境のpH値に従い破壊されて同位体標識された物質が放出されるように選択される。代替的に且つ好ましく、該物質は、それが被験者の胃を離れた後にのみ破壊され同位体標識された物質を放出するような物質である。後者の場合には、前記同位体標識された物質は十二指腸を通過するのを特定するためのマーカーとして使用されてよい。本発明のさらに好ましい実施態様によれば、前記マイクロカプセル化コーティング物質は、それが通過する酵素的環境から生じる酵素活性の効果の下で破壊されて同位体標識された物質を放出するように選択される。酵素は、好ましくは、膵臓および胆嚢のうちの少なくとも1つによって分泌されるものであってよく、従って前記同位体標識された物質は十二指腸の通過を特定するためのマーカーとして使用される。
【0027】
一般に、マイクロカプセル化コーティングは、従って好ましくはそれが同位体標識された物質自身よりも投与される食に対して一層容易に結合できる。
【0028】
本発明の好ましい実施態様によれば、被験者の胃調節を測定することにおいて使用するための第1および第2液状食の組が提供されており、該第1液状食は第1の所定体積を含んでなり、そして第2液状食は、該第1の所定体積よりも大きい第2の所定体積を含んでなり、且つ所定の胃滞留特性を有し、ここで該第2液状食は、該被験者に対して、該第1食が該被験者の胃から排出され始めた後に投与され、そしてここで被験者の胃調節は測定された第2食の排出の速度と第1食の排出の速度との間の偏差に従い決定される。好ましくは、前記第2の所定の体積は被験者において胃拡張を引き起こすのに十分であり、そして好ましくは500ml以上の液体であってよい。上記の食の組において、胃滞留特性は従って、所定のpH、所定のカロリー値および第2液状食の所定の成分のうち少なくとも1つから選択されてよい。前記所定のpHは、好ましくは3.0未満であり、前記所定のカロリー値は好適に150kcal以上であり、そして所定の成分は好ましくはアイソトニック成分である。前記第2液状食は、好ましくは、前記第1食が投与された被験者の胃から排出される速度と同じくらいすぐに投与されるかあるいは該第1食の被験者に対する全生理学的効果が本質的に終了した後に投与されてよい。代わりに、前記第2液状食は第1食の連日に投与されてよい。さらに、排出の速度は任意の呼気検査、シンチグラフィー、X線、コンピュータ断層撮影、ガンマイメージングまたは超音波法によって測定されてよい。
【0029】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、所定の体積を含んでなり且つ所定の胃滞留特性を有する、被験者の胃調節を測定することにおいて使用するための液状食が提供されており、ここで大多数の正常な被験者に関する該食の平均胃排出速度は公知であり、そして被験者の胃からの該食の排出速度が測定され、そして被験者の胃からの該食の排出の速度と大多数の正常な被験者に関する該食の排出の平均速度と間の偏差は該被験者の胃調節の兆候を供する。好ましくは、前記所定の体積は、被験者において胃拡張を引き起こすのに十分であり、そして好ましくは500ml以上の液体であってよい。上記の液状食において、胃滞留特性は従って、所定のpH、所定のカロリー値および液状食の所定の成分のうち少なくとも1つから選択されてよい。前記所定のpHは、好ましくは3.0未満であり、前記所定のカロリー値は150kcal以上であり、そして所定の成分は好ましくはアイソトニック成分である。さらに、排出の速度は任意の呼気検査、シンチグラフィー、X線、コンピュータ断層撮影、ガンマイメージングまたは超音波法によって決定されてよい。
【0030】
本発明のさらに好ましい他の実施態様によれば、同位体標識された液状食であって、所定の体積を含んでなり且つ所定の胃滞留特性を有する、被験者の胃内圧に対する食の体積の効果を測定することにおいて使用するための液状食が提供されており、ここで被験者の胃からの該食の排出速度は、様々な所定の体積の食について、該食の同位体標識された生成物を検出するために行われる呼気検査によって決定される。
【0031】
本発明のさらに好ましい他の実施態様によれば、被験者に対して投与される食であって、該被験者の胃腸障害を特定するための使用される食が提供されており、該食は少なくとも第1マーカーおよび第2マーカー物質を含んでなり、従って該第1物質は一般に被験者の胃において吸収されることはなく、そして所定のガスを腸内細菌の存在下で放出し、そして該第2物質は従って、該被験者の胃腸管内での該食の位置を示し、そしてここで被験者における所定のガスの生成は呼気検査によって検出され、そして該所定のガスが生成される被験者の胃腸管の位置は、該第2マーカー物質によって決定される。上記の食において、前記第2マーカー物質の副生成物は呼気検査によって検出されてもよく、従って、被験者の胃腸管における所定のガス生成の位置は、被験者呼気における所定のガスの出現と該マーカー物質の副生成物の出現との間の時間的関係によって特定される。前記第2マーカー物質は好ましくは炭素同位体で標識され、そして前記副生成物は同位体標識された二酸化炭素である。さらに、前記第1物質は好ましくは被験者の小腸で代謝される糖であってよく、従って前記第2マーカー物質の検出の時間に対する所定のガスの検出の時間が、小腸における細菌過剰増殖の存在を特定するために使用される。この場合には、前記第2物質は、標識された糖であってもよく、被験者の小腸でも代謝され、従って一般に、被験者の呼気における所定のガスと第2マーカー物質の副生成物の同時出現が該被験者における細菌過剰増殖の存在の兆候であってよい。加えて、前記第2物質は好ましくは被験者の小腸で代謝される標識された糖であってよく、従って該被験者の呼気において、所定のガスの出現より有意に早い第2マーカー物質の副生成物の出現は、一般に該被験者における細菌過剰増殖の存在の兆候でありうる。上記の食において、前記第1物質は好ましくはグルコースおよびラクトースのうちの少なくとも1つである。前記第2物質は、標識された酢酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム、グルコース、アセチルロイシン標識、またはマイクロカプセル化標識基質のうちの少なくとも1つである。
【0032】
上記食の全てにおいて、前記第1物質は一般に好ましくは、被験者の小腸で代謝される糖であってよく、従って、所定のガスの検出は、被験者のオロカエカル(orocaecal)通過時間を測定するために使用されてよい少量の第2マーカー物質の検出と本質的に同時である。代替的に且つ好ましく、前記第1物質は被験者の小腸において消化不良を起こすと考えられるグループの糖であり、従って、それは被験者の結腸で吸収されるにはいたらず、該結腸では所定のガスが結腸性細菌の存在によって生成され、従って、第2マーカー物質の検出の時間に対する所定のガスの検出の時間が、該被験者の糖不耐性を特定するために使用されてよい。そしてまた前記第2物質は被験者の小腸において吸収される同位体標識された物質であって良く、従って、第2マーカー物質の標識された副生成物の検出と本質的に同時の所定のガスの検出が該被験者の糖不耐性を特定するために使用されてよい。前記第2物質は一般に、副生成物が小腸で吸収される炭素同位体標識された物質であってよい。加えて、前記第2物質は小腸で吸収される同位体標識された物質であってよく、従って、所定のガスおよび第2マーカー物質の標識された副生成物の検出の相対的な時間および量は、被験者が糖不耐性および細菌過剰増殖の1つまたは両方を罹患しているかどうかを特定するために使用されてよい。
【0033】
本発明のさらに他の好ましい実施態様によれば、上記食の使用において、第2マーカー物質の標識副生成物の検出と本質的に同時におこる、細菌の存在下での第1物質の小部分に特徴的な、少量の所定のガスの検出は、被験者が細菌過剰増殖を罹患していることの兆候として使用される。第2マーカー物質の標識された副生成物の検出より遅い所定のガスの検出は、被験者が糖不耐性を罹患していることの兆候でありうる。第2マーカー物質の標識副生成物の検出と本質的に同時に生じる、細菌の存在下での第1物質の大部分に特徴的な、多量の所定のガスの検出は、好ましくは、被験者が糖不耐性および細菌過剰増殖を罹患していることの兆候でありうる。第2マーカー物質の標識された副産物の検出と本質的に同時に生じる、細菌の存在下で大多数の第1物質に特徴的な、多量の所定のガスの検出は、被験者が糖不耐性及び細菌過剰増殖を罹患していることの兆候でありうる。上記食全てにおいて、糖は好ましくは、ラクトース、フルクトース、マルトースおよびスクロースからなるグループのうちの少なくとも1つでありうる。さらに、所定のガスは水素および/またはメタンでありうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
ここで、上で規定されたGIハイリスクグループに属する無症候患者について、あるいいは消化不良またはIBSの症候を有する患者について、可能な検出および処置のコースを説明するフローチャートを模式的に示す図1Aおよび図1Bを参照する。このフローチャートは、包括的診断処置ルーチンのための確定的アルゴリズムを示すことが意図されるのではなく、むしろ、本発明の好適な実施態様に係る方法および装置を用いて行うことができる、処置医師に開かれた可能なコースのいくつかを示すことが意図される。図1Aおよび図1Bに示される好適な方法による検査は呼気検査として記載されるが、これらは下に記載されるような他の検査によっても同様に良好に行うことができる。
【0035】
また、上述のGI問題のいずれかを有する疑いのある患者について検出および処置の方法を示す代替的模式図である図1Cを参照する。図1Cのフローチャートでは、医師が患者の症候の強さまたは緊急性の順に必要な検査を行うことができるように、提案される検査法が並列配置で体系化されている。したがって、例えば、胃液逆流(gastric reflux)を羅患する被験者は最初にヘリコバクター・ピロリ(H・p)感染について検査されることになり、そしてこの検査が陰性を示す場合、または該検査が陽性を示し、かつ、処置が症候を除去しない場合にのみ、ヘリコバクター・ピロリ以外の他の検査に着手することが必要となるであろう。
【0036】
本発明の好適な実施態様の方法及び装置に係る方法による、図1Bに示される呼気検査の各々の実行方法について、ここで更に詳細な説明を行う。
以下の各欄において、前記検査は一般に呼気検査との観点において記載されており、これは特に該検査を行う都合よい方法であり、それらは、適宜、下に記載の他の方法および装置によって行われて良い。係る代替的な方法またはシステムの使用は、胃排出検査および胃調節検査に対して特に適用可能であるが、呼気検査もなお選定の方法でありうる。
【0037】
1.ヘリコバクター・ピロリについての呼気検査
ヘリコバクター・ピロリ感染についての呼気検査は、本願の譲受人に譲渡された"Breath Test for the Diagnosis of Helicobacter pylori in the Gastrointestinal Tract"(胃腸管におけるヘリコバクター・ピロリの診断用呼気検査)に関する米国特許第6,067,989号によく記載されており、ここで参照されることによりその全体が本明細書に取り込まれるため、ここでは該検査自体について更に詳細な説明は行わない。図1Bの診断階層における該検査の使用および位置は上に記載され、また図1C、5C及び5Dに関して下に記載される。
【0038】
2.胃排出呼気検査(GEBT)
胃排出の遅延に関連する症状としては、嘔気、嘔吐および糖尿病患者における不安定な血糖値が挙げられる。胃の排出不良は、以下の幾つかの理由により起こり得る。
1.幽門および十二指腸を含め、胃の出口は、潰瘍または腫瘍により、あるいは嚥下された大きな摂取可能物により閉塞されることがある。
2.胃への出口の幽門括約筋が食物の通過させるために十分に又は適度な回数で開かないことがある。この括約筋は、非常に小さな粒子のみが胃を出ることを確保するように、また胃を一度出て小腸に入ることができる食物または酸の量を制限するように、神経反射により調節されている。これらの反射は神経に依存するが、この神経は時として損傷を受け得る。
3.胃下部の正常に律動する3回/分の収縮が乱されるため、胃の内容物が幽門括約筋に対して押し出されないことがある。これも通常は神経に起因し、最も一般的な原因は長期的な真性糖尿病であるが、多くの患者では胃排出の遅延の原因は不明であり、そのため特発性胃不全麻痺として診断が与えられる。
【0039】
固形物の胃排出の決定方法は、シンチグラフィの分野において、放射性同位体標識された炭素基質を使用して従来から開発されている。このような方法では、標識基質の排出の進行が、一般には、放射性同位体から放出される放射線の直接的イメージングにより追跡される。類似の時間パラメータを測定するための呼気検査が提案されており、ここで胃からの標識基質の排出の進行は、患者の体内に残るものを測定するのではなく、被験者の息からの吐き出された基質の標識された副生成物を観視することにより追跡される。従来技術の胃排出呼気検査(GEBT)は、一般に、使用される検査プロトコルにより、患者を正常、軽度の遅延および遅延と分類する。
【0040】
従来技術のGEBTは、大抵の場合に、マーカーとしてC13 またはC14 で標識された基質を有する150〜350キロカロリーの固形検査食を投与することにより行われるのが一般的である。このような基質の例は、オクタン酸、オクタン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、またはアセチルロイシンのようなアシルアミノ酸、等である。
【0041】
これらの基質の最適特性は以下の通りである:
1.胃の酸性環境における検査食及び未放出物への良好な結合;
2.胃を出る時の検査食からの迅速な放出;
3.迅速な吸収、代謝および測定可能CO2 への転化;
4.臨床的簡単さのためにGEBTについて液状物および固形物の同時使用;および
5.容易な調製および妥当なコスト。
【0042】
現在利用されている基質はこれらの特性の一部のみを満たすにすぎない。オクタン酸は食物に用いられる固形脂肪に調理後に強固に結合できる。オクタン酸はまた、十二指腸の通過時に食物から迅速に放出されるが、小腸壁に吸収された後は、肝臓に運搬されてそこで代謝されてCO2 を生成する必要がある。これらのプロセスは胃排出と直接に関連するものでなく、胃排出時間を超過する無視できない時間延長することになり、従って、真の胃排出速度の検出における遅延の原因となる。さらに、CO2 が被験者間で変動し得る肝機能に依存することから、結果の変動性も生じ得る。従って、例えば、適量のアルコールの消費から生じる肝機能の一時的な不全ですら、たとえ胃排出それ自体が前述のアルコール消費により影響を受けないとしても、その消費後ある一定時間、かかる従来技術の胃排出測定に影響を与え得る。
【0043】
さらに、オクタン酸の取扱いには特殊な設備が必要であり、その食物調製を臨床施設において行うためには不適切で不器用である。他方、臨床施設の外で食物調製を行うことは、大抵の呼気試験で一般に受け入れられているような標識基質だけでなく食物全体について、その製造プロセスについて規制許可が必要となる。それ故に、このような手順には高レベルの標準化が必要であり、それに伴う費用は高価である。
【0044】
オクタン酸ナトリウムはオクタン酸のナトリウム塩である。オクタン酸ナトリウムはオクタン酸それ自体よりも取扱い容易であり、胃を出た後に固形物から放出されるが、オクタン酸と同一の間接的な代謝経路を受け、また固形食と均一に混合することが容易でない。
【0045】
酢酸ナトリウムは、液状物および半固形物の胃排出測定のために最適な基質であると考えられている。この非常に簡単で低コストの基質は、十二指腸を通過後に迅速に代謝され容易にCO2 に転化される。しかしながら、酢酸ナトリウムは、水および酸性媒体により容易に希釈され、また胃の環境においては、その食物基材から容易に脱離するため、その経過は必ずしも食物の排出速度を反映しない。それ故に、酢酸ナトリウムは固形食と共に使用するためには臨床的に非実用的である。更に、酢酸ナトリウムを工業的食品調製技術により固形食に結合する必要性により、オクタン酸の不利点の幾つかが酢酸ナトリウムに生じる。
【0046】
アセチルロイシンのようなアシルアミノ酸は、代替的GEBT基質として最近提案されており、結合、代謝および汎用性に関連するオクタン酸の上記技術的難点の大部分を受けないが、比較的に高コストである。さらに、アシルアミノ酸は天然産生物質でないので、使用の承認前に複雑な規制プロセスが必要となることがある。
【0047】
重炭酸ナトリウムは、その容易に利用でき、かつ豊富なCO2 源であること、およびその簡単さと低コストから、代替的基質として提案されている。しかしながら、重炭酸ナトリウムも、食物に容易に結合することができず、そのCO2 含有量を胃壁により容易に放出してしまい、その使用を非実用的とする。
【0048】
14C標識された重炭酸ナトリウムのカプセル化物を使用する呼気検査が、Am. J. Gastroenterol. Vol. 88(3), pp. 462-4, 1993年 3月に公表された論文"Will a NaH14CO3 capsule method accurately measure gastric emptying?"(NaH14CO3 カプセル方法は胃排出を正確に測定するか?)に記載されているようにチーグヘルボイム(Zighelboim)により試みられている。この検査は、該カプセルが胃により「液状」食として排出される2mmの粒径よりも大きく、食物に結合されなかったことから、不成功であった。γカメラ測定により、食物が排出された後に該カプセルが胃に残留することが示された。
【0049】
GEBTを行う際に、1つの呼気サンプルが食物の投与前にベースラインとして通常測定された後に、呼気サンプルが4時間の間、15分毎に通常測定される。これら呼気サンプルは、質量分光法、非分散性赤外分光法、または同位体分析のいずれかの代替方法により通常分析される。基質の代謝速度は13CO2 呼気の変化(デルタ・オーバー・ベースライン−DoB)により決定され、そして代謝基質排出の曲線が、DoBから%線量速度(PRD)として以下のように決定および表現される。
y=atbexp(−ct)
式中、a、bおよびcは、測定曲線に従って最小自乗フィット等により又は非線形回帰分析により当てはめられるパラメータである。
【0050】
基質排出の累積曲線が最後の曲線の積分から以下のように計算され、
yc =m(1−exp(−κt))β
パラメータm、κおよびβが回帰分析により計算される。これらのパラメータを導くために、検査される被験者の身長および体重に基づいてCO2 生成速度の推定値がDoBから導かれる。生成のこの正規化された速度は%線量速度、PRDとして知られており、それは一般に、胃排出適用のために、DoBよりも使用される。放出された合計線量も、胃排出機能を分析することにおいて有用な基準であり、そしてそれはPRDを統合することによって獲得され、そして累積%線量速度、CPRDとして知られている。被験者のDoBからPRDおよびCPRDを、被験者の体重および身長に従い、獲得する方法は、Gastroenterology,1993年6月、Vol.104(6)pp.1640-7,において刊行されたY.F.Ghoosら“Measurement of Gastric emptying rate of solids by means of a carbon-labeled octanoic acid breath test” に開示されている。
【0051】
患者の胃排出結果を記述する、GEBTから導かれる、以下の3つの伝導的なパラメータがある。
1.yc =m/2従って、t1/2=−1/κ*(n(1−2-1/ββ)と設定することにより計算される、検査食の半分が胃を出た時間、または半排出時間(t1/2 )。
2.初期の液相排出の後に、食物の固相排出が開始する時間として定義され、tlag=(lnB)/kで与えられる、ラグ時間(tlag )。
3.ln a に等しい胃排出係数(GEC)。このパラメータは基質回収曲線の強度と関連する。
【0052】
ここで、胃排出呼気検査と関連する本発明の好適な実施態様について説明する。本発明の方法及び装置に係る方法の利点の1つは、正常、軽度の遅延および重度の遅延を有する患者間で識別するための十分なデータがある場合に、測定および決定を行う間にリアルタイムで上記パラメータのいずれかの計算および分析を行うことである。このことは、確定可能な結果を得るために要する時間を、質量分光法測定を使用するような従来技術の方法により現在必要とされる4時間から、顕著に短縮する。この本発明の方法及び装置に係る好適な実施態様の他の顕著な利点は、排出プロセスにおけるピークまたは生理学ノイズを明確に特定する等、胃排出の動態(dynamics)における変化を追跡する可能性である。呼気検査を行うために適した装置および方法が、全て本発明の譲受人に譲渡された、"Breath Test Analyzer"(呼気検査分析装置)に関する米国特許第6,186,958号; "Breath test Methods and Apparatus"(呼気検査方法および装置)に関する米国特許出願整理番号09/542,768号; および"Isotopic Gas Analyzer"(同位体ガス分析装置)に関する米国特許出願整理番号09/508,805号に記載されており、全てが参照されることによりその全体において本明細書に取り込まれる。胃排出に関するこれらの検査を行うために使用するための本発明の好適な実施態様に係る呼気検査装置を以下に図2Eと関連して記載する。
【0053】
この手順において以下の3段階がある。
1.多数の被験者からデータを蓄積することにより、t1/2 ,tlag ,デルタ・オーバー・ベースライン(DoB)および胃排出係数(GEC)パラメータについての正常および異常な値または値範囲を決定すること。
2.ある被験者に検査を行い、そして測定進行時に、該計算されるt1/2 ,tlag ,デルタ・オーバー・ベースライン(DoB)強度および胃排出係数(GEC)をリアルタイムでモニタリングすること。
3.これらの4パラメータのモニタリングされるグラフをその測定進行時に追跡し、そして、可能な限り早い時に外挿することにより、上記4パラメータ(t1/2 ,tlag ,DoBおよびGEC)の1つが異常であるか又は上記4パラメータが全て正常であるかを決定し得る、許容誤差限度内の、最終推定値を決定すること。許容誤差は、得られる推定値の関数となり得る。値が正常範囲と異常範囲のボーダーから大きく外れる場合には、ボーダーライン値が得られる場合よりも大きな誤差を許容できる。
【0054】
この好適な手順の実行の例として、表1は、150〜350キロカロリーの固形検査食と共に100mgの13C標識オクタン酸およびアセチルロイシンをマーカーとして投与することにより、単一被験者を4回検査した結果を示す。この表は上記4パラメータの各々がその最終無症候収束値の85%および70%内に外挿された時のピーク後の時間を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
正常被験者において到達されるDoBレベルおよびピークに到達するのに要する典型的時間との比較により決定されるように、ピークに到達する前でも高いDoB強度が得られる迅速な胃排出をもった被験者のケースがある。
【0057】
ここで、時間単位での時間の関数として、ある選択された被験者の計算されたt1/2 (図2A),tlag (図2B),DoB曲線(図2C)の下のエリアから獲得される統合マーカー呼気、および被験者のGEC(図2D)のリアルタイム進行経過の例を示す4グラフ組である図2A〜図2Dを参照する。結果は、図2Eに模式的に示され、本発明の好適な実施態様に従い構築され且つ操作される呼気検査装置を使用することで得た。呼気は回収されて、上記特許文献に記載された呼気検査装置に示される方法に従い好適に、その放射性同位体標識された内容物が分析された。4つの胃排出パラメータのプロットに対する測定点のカーブフィッティングは好適に、レーベンバーグ−マーケット(Levenberg-Marquat)アルゴリズムを適用し、呼気分析装置(図2Eの好適な実施態様の破線の内に示される)(これはイスラエル国エルサレムのオリディオン・メディカル・リミテッド(Oridion Medical Ltd.)により供給されるモデル ブレスID(BreathID)が好ましい)に内蔵される米国テキサス州78759オースチンのナショナル・インスティテュート・コーポレーション(National Instrument Corporation)により供給されるラボ・ビュー(Lab View)プログラムを使用することによって決定された。前述の係数a,bおよびcについての初期推測値は、データプロセッサのデータベースモジュールに保存されているような被験者に対して行われた従来の検査から獲得されたt1/2 ,tlag およびGECの予測値から、又は多数の従来測定された正常被験者からのこれらのパラメータの正常な範囲の平均から導かれる。この例では、4つの胃排出パラメータについて約1時間後に外挿を行ってよい。これらのパラメータの値は、測定された呼気から導かれる計算された曲線から連続的に抽出され、そして示差胃排出パラメータ比較モジュールに保存された基準値と繰り返し比較される。このリアルタイム測定の方法および漸近性エンド値への収束に関する測定された曲線のほぼ連続的なチェックによって、胃係数の期待値は、該曲線の漸近最終点が到達する十分前に優れた精度で予測できる。従って、最終的な結果がこの装置によって、呼気検査のリアルタイム結果を供することのない従来技術の装置よりも有意に一層迅速に生成される。示されている例において、4つの胃排出パラメータに対しておよそ1時間後に外挿が行われて良く、それは従来技術の装置を使用することで可能であろうよりも有意により早い。
【0058】
用語「事実上連続」または「リアルタイム」などとは、呼気サンプリングとの関係で使用される場合、考慮された検査に依存すると解される。従って、数分のみ続く検査に関して、該用語は一般にノンストップサンプリングを意味しうる。一方で、1時間以上続き、サンプルが周期的に、例えばたった10〜15分ごとに採取される胃機能性検査などの検査に関しては、従来技術においては尚「事実上連続して」サンプル採取され、そして「リアルタイム」で測定されたとみなされるだろうし、そして本願ではそのように記載されて請求されている。
【0059】
症候と胃排出遅延の間に全く相関が無いことが時としてあるので、上述のGEBTは、Gastric emptying in diabetes: clinical significance and treatment.(糖尿病における胃排出:臨床的意義と処置)Diabet Med. 2002年 3月; 19(3): 177-94 に論じられるようなインスリン/薬物・食物管理についての糖尿病患者の定期的管理に特に有用である。消化不良の場合には、消化不良症候が患者を検査するための主な理由である。シスパリド(Cisparide)またはエリスロマイシン等のような胃排出の処置用の第1世代薬物は、一般に、消化不良症候を軽減するのを助けるが、"Gastric emptying rate of solids in patients with nonulcer dyspepsia"(非潰瘍性消化不良を有する患者における固形物の胃排出速度)と題されたマエス BD(Maes BD)による論文において、胃排出遅延が必ずしも全ての消化不良症候の原因でないことが示されている。これらの症候の軽減における、新たに提案されたテガセロッド(Tegaserod)等のような、新たに出現する医薬品の有効性は、未だ十分に明確でないが、このような薬物が前述した薬物よりもGI障害特異的であると指定されているという事実から、その薬物が処方される前の診断が推奨されることがある。このことは、これらの薬物がGI障害を外見上処置するがGI障害を治癒しないので該障害を処置するために継続的に投与されなければならないという事実に起因して特に重要である。
【0060】
痛み、初期満腹感および鼓張の内臓知覚と関連する、他の胃運動性障害として胃拡張と調節の不全の徴候が挙げられ、そのための適当な処置として、筋肉音(muscular tone)を緩和するための薬物、例えばグリセリルトリナイトレート(Glyceryl trinitrate)、セロトニン生成剤または何らかの抗うつ剤、の投与が挙げられる。現在のバロスタット研究はこれらの障害を測定するための臨床用途における臨床的方法にすぎない。
【0061】
本発明の好適な実施態様によれば、胃排出および他の胃運動性障害と関連するこれらの胃腸状態の重症度を測定するための非侵襲性、正確かつ便利な方法も提供される。
【0062】
さらに、本発明の更に好適な実施態様によれば、現在利用可能な基質の不利点を克服する同位体呼気検査用の基質も提供される。この基質は、マイクロカプセル化同位体標識物質又は腸溶コーティング同位体標識物質を利用するものである。好ましくは、コーティングは、胃におけるpHが一般に2.5〜3.5であること比較して、GI管の十二指腸または小腸におけるpHが一般に6と高いpHであることに起因して、胃よりも十二指腸または小腸において分解されるようなものを使用することができる。あるいは好ましくは、GI管の所望部分にのみ見出される特異的酵素によって分解されるコーティングを使用することができる。
【0063】
これらのカプセルは、好ましくは、最も簡単な材料の 13C標識基質、例えば重炭酸ナトリウムまたは酢酸ナトリウム、で充填される。したがって、マイクロカプセル化は、食物の胃からの排出後に初めて、迅速かつ均質な経路で十二指腸による該物質の特異的マーカー薬物放出を可能とする。
【0064】
オクタン酸のような基質は、通常、卵黄に取り込まれ、そこから検査食であるオムレツが調製される。卵黄からの油がオクタン酸の周囲に疎水性コーティングを形成し、そして調理プロセス中にオクタン酸を保護することから、食物調理時にマイクロカプセル化が生じ、オクタン酸の食物への良好な結合特性を与えることが知られている。
【0065】
前述したように、本発明の他の好適な実施態様によれば、マイクロカプセル化を使用することができ、ここでコーティングはpH環境でなく、ある選択される酵素によって分解される。この方法における選択性は、十二指腸における特異的酵素、例えば膵臓により分泌されか又は胆管を通じて分泌される酵素、の存在に依存する。この好適な実施態様の利点は、液状食のマイクロカプセル化に使用することができ、また被験者間のpHの変動性に依存しないことである。
【0066】
マイクロカプセル化された基質の使用に係るこれらの好適な方法は、従来技術の基質を超える以下のような利点を有する。
1)マイクロカプセルが摂取される食物に均質に分散されるので、胃排出のリアルタイム分析が可能となること。
2)酢酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムのような基質物質が、胃からの排出後に初めて、迅速かつ均質な経路で十二指腸または小腸または大腸において特異的に放出されること。この放出は、pH依存性または特異的酵素依存性とすることができる。さらに、追加的な代謝ステップを必要とすることなく、該基質の吸収を達成することができる。
3)食物への結合特性、胃環境内での安定性、味、使用の利便性等が、基質物質それ自体に非依存性であって、選択されたマイクロカプセル化コーティングの性質にのみ依存性であることから、固形食および液状食の両方に対して同一の材料を使用可能であること。
4)マイクロカプセル化それ自体がキログラム当たり10〜100ドルの領域のコストという低コストプロセスであるとともに、低コスト 13Cマーカーの使用が可能となること。
【0067】
3.胃調節についての検査(GA検査)
適当な調節特性をもった上胃は、その体積が増大する間に一定圧力を保持することを可能にする。胃の上部は液状物の胃排出に関与し、固形物の胃排出に対しては殆ど効果が無い。胃の下部は、液状物の胃排出に有意な効果を有しないと考えられている。さらに、過剰な胃内圧が上部胃腸管の症候に関連すること、および高カロリー食が投与されるときに胃排出の阻害が必要とされることが文献から知られている。
【0068】
したがって、本発明の更に好適な実施態様によれば、拡張体積が様々異なる場合に胃排出速度は正常な個人では影響を受けないが調節障害を有する患者では損なわれるという原理に基づく胃調節呼気検査(GAT)およびこれらを行うための装置が提供される。
【0069】
本発明の異なる好適な実施態様によれば、これらのGABTを実行するために2つの方法が提案される。先に挙げられたように、これらの検査は、それらの呼気試験実施態様形態において主に記載されている。
【0070】
A. 2食方法
好適に13C標識基質を含有する低体積、好ましくは100ml〜350ml程度、の液状食が、モッシー(Mossi)らによるDigestive Diseases and Sciences, Vol. 39, No. 12, Dec. 1994 Suppl., pp. 107S-109S (参照により本明細書に取り込まれる)に記載されているような従来技術の液状物胃排出検査における公知方法と同様の方法で、被験者に投与される。適した13C標識基質は、限定されないが、オクタン酸、酢酸ナトリウム、グルコース、オクタン酸ナトリウム、アセチルロイシン、スピルリナ藻(Spirulina algae)、マクロカプセル化重炭酸塩または他の基質、好ましくは直接かつ迅速な代謝を受けるものが含まれ、これらは液状物胃排出速度の測定に使用することができる。呼気における同位体比が、ベースラインにおいて測定され、その後にリアルタイムで定期的間隔で測定される。好ましくは、デルタ・オーバー・ベースライン曲線が追跡され、その結果から胃からの排出または液状物排出の速度の曲線が決定される。この手順から得られる、時間の関数としての典型的DoB曲線が図4Aの左側部分に示されており、これは正常な胃調節曲線の典型的な形状である。
【0071】
本発明のこれらの好適な実施態様に係る方法によれば、胃拡張の誘発および/または胃排出速度の制限を行うために、好ましくは以下:
1)高体積、典型的に500ml〜1.5リットル、の水、又は更に;
2)アイソトニック溶液
3)酸性溶液、例えば2.5以下のpHを有するもの;又は
4)カロリー(caloric)液状食;
の少なくとも1種を含む、第2食が被験者に投与される。この第2食は、胃排出速度についての呼気検査の欄で上述されているような、第1食の胃排出速度を必要な精度まで評価するために十分なデータが蓄積された直後の時間T0 で投与される。T0 は図4の曲線に示されており、また、それ以降の図においてT0 が表示されている。この排出曲線上の傾きの変化、あるいは胃排出パラメータ、例えばt1/2 またはtlag 、の変化が、このDoBプロットから導かれる。このような第2食の望ましい特性は、
1)近位胃における拡張効果を引き起こす効果、または
2)小腸の過負荷を避けるために胃排出の阻害が必要とされるように高カロリー値もしくは低pH値を有する効果、
の少なくとも1つである。それ故に、1つの好適で所望される手法は、多量の水を用いること以外は第1食で投与されたものと同一の液状食を投与して底部(fundus)のストレスを誘発し、そして、異なる体積を有すること以外は類似するカロリー含有量の食物の排出速度を測定することである。異なる好適な実施態様によれば、この第2食は同位体標識基質を含むもの又は含まないもののいずれでもよい。この第2食において同位体標識基質を全く使用しない場合には、第1食の胃調節の効果は第1胃排出曲線(かかる効果が存在する場合)の効果に対する第2食の体積の増加効果より決定される。この場合には、第1食で使用された13C標識基質より生じる13CO2レベルと第2食が干渉しないように、第2食が天然低13C源であることが重要である。
【0072】
この効果は、非標識第2食を用いて行われたGEBTにおいて得られた標識分解生成物の呼気量曲線またはDoB曲線の模式図である図3を参照することにより示される。十分な精度をもって胃排出パラメータが決定された時点である時間T0 において、第2食が投与される。第2食の投与を行わなければ得られたであろう、時間T0 を過ぎてからの曲線の外挿された形状が点線で示されている。この曲線から得られた胃排出パラメータの値が、利用可能となる後、すなわち時間T0 の後に非常に近くまたは直後に記録される。第2食の投与は、実線で示されるように、この曲線の漸近性テイルエンド(後尾)に変化を生じ得る。ここで、この新たな曲線から胃排出パラメータの新たな値が計算され、その値は当初に得られた曲線から当初得られた胃排出パラメータと比較される。正常な被験者では、胃排出パラメータの値に変化があるとしても殆ど変化しないのに対し、胃調節障害を有する被験者は、一般に、著しく変化した値を示す。一般に、2食検査について、胃調節障害のレベルは、2食の投与から獲得される対応する組の胃排出パラメータ間での臨床的に有意な差を検出することにより定義される。かかる差の程度により、検出された胃調節が、正常、異常又はボーダーラインにあるとして分類される。
【0073】
同位体標識第2食の場合には、図4Aとの関連で以上及び下に説明するように、第2食について新たな曲線を直接的にモデル化することができ、そして直接的に第2食の排出速度を決定するために新たな組の胃排出パラメータが計算されることから、この好適な手順はより簡単でより直接的である。排出曲線に対する第2食の効果は該第2食の組成に依存する。正常な被験者では、第2液状食は、一般に、第2胃排出曲線の形状に大きく影響せず、図4Aに図示される2つの曲線の類似性によって示されるように、第1食の曲線の形状と類似する通常の形状を有する。ここで例えば図4Aのプロットに示される第1食は、200mlのエンシュア・プラス(Ensure Plus)(登録商標)に100mgの 13C標識酢酸ナトリウムが添加されたものである。第2食は、600mlの追加的な水を含む200mlのエンシュア・プラス(登録商標)に100mgの 13C標識酢酸ナトリウムが添加されたものである。本発明の様々な好適な実施態様の食物に対して加えられた同位体標識の量は全て100mgであるが、この量は検査の型、被験者または食の型に従い多種でありうると解される。
【0074】
他方、何らかの型の胃調節障害を有する被験者では、この好適な実施態様によって行われた呼気検査の起こり得る結果は、図4Bに典型的に図示されるように、第2食の投与により排出曲線の形状を変化させることになる。図4Aに示される検査で使用された食物と同一の食物を使用する図4Bに示される例では、胃排出が第1食についてよりも第2食について著しく速いことが見られる。例えば、図4Bで検査された被験者の場合には、t1/2 は第1食(200ml)について174分である一方、高体積の第2食(800ml)について僅か112分にすぎないことが認められ、したがって被験者が重度の胃調節異常を有することを示す。
【0075】
ここで、本発明の好ましい他の実施態様によれば、上記検査方法に記載の胃調節検査を行うために、システムの模式的な説明は図5Aおよび5Bを参照にされ、そして図5Bにおいては、係るシステムのデータ処理装置から獲得された出力データの例が示されており、それから被験者における胃調節の問題の存在または不在の兆候が獲得されうる。
【0076】
図5Aを最初に参照することにより、入力において、食センサーが示されおり、それは被験者の胃を離れる検査食を感知し、そして第1検査食V1の投与から経過した時間の関数として該胃から排泄されるまたは該胃に維持されるマーカー(即ち、検査食)の断片の測定を供する。このセンサーは好ましくは、胃を離れる検査食中のマーカーのPRDに関連する呼気検査測定であってよく、もしくは胃からマーカーの進行をプロットできる他の任意のセンサー、例えば、MRI、シンチグラフィー(ガンマイメージング)、CT、X線、超音波であってよく、または胃領域の体積減少を測定するために被験者の腹部の外部体積測定のような単純な測定であってもよい。
【0077】
次いで、胃排出食センサーからの信号は好ましくは食センサーデータ分析装置に移され、該分析装置が該食センサーデータ出力を分析しそして、このシステムによってさらに処理を行うために、経過した時間の関数として被験者の胃からの%食排泄を考慮して、必要な情報を供する。食センサーが呼気検査センサーである好ましい実施態様について、例えば、データ分析装置は、被験者の体重と身長を考慮するPRD曲線生成装置であってよい。同時に、呼気検査適用に関して、前記データ分析装置は、この曲線の下で連続的に積分を計算することもでき且つ時間に対するCPRDプロットが提供される。図5Bにおいて、これら2つのプロットの中間結果は、食センサーデータ分析装置によって生成される5B(i)および5B(ii)と命名された上の2つのグラフに示されている。
【0078】
ここで図5Aに戻ると、分析されたデータはここで、データ処理システムによって処理され、そのシステムは本発明の好適な実施態様の呼気検査に関して、図2Eの胃排出検査装置の説明において破線内に示されるシステムと類似しうる。前記データ処理システムのカーブフィッティングモジュールは、パラメータの値を獲得しようと繰り返し試行し、そしてPDRまたはDoBの曲線から、上の等式(1)のパラメータa、b、およびcの値を獲得する試行が繰り返しなされ、そして試行がCPDRの曲線から、または代替的に統合されたDoBから、上の等式(2)のm、κおよびβの値を獲得する試みが行われる。これらのパラメータの収束値が獲得されていれば、mの値から、t1/2は、上記のように、yc=m/2を設定することによって計算され、そしてパラメータaの値から、log aに等しいGECの値が獲得可能である。tlagの値はtlag=(lnβ)/κから導かれ、そして食の投与後の曲線のピークの位置からも評価されてもよい。データ処理システムが検査結果を評価することにおいて使用するために生成しうる他のパラメータは、検出された合計線量を示すPDRまたはDoB曲線の下の積分エリア、およびPDRまたはDoB曲線の強度である。
【0079】
胃調節検査は、同じ被験者に対して類似量の標識物質を伴う2つの継続的な食を使用するので、簡略化のために、前記PRD曲線はDoB曲線によって置き換えられてよいことに留意すべきである。この場合、GECは被験者の実際のGECを反映せず、そして実際のCPDRは計算されていない。この相違は検査の結果に影響を及ぼさず、なぜならパラメータ間の分散のみが同被験者による検査結果に関して計算され、そして下で説明されるように該パラメータ自身は計算されていないからだ。他のパラメータ、例えば、t1/2、tlag、DoB強度およびDoB曲線下の積分はこの簡略化により影響されない。
【0080】
図5Bの下半分において、データ処理装置のカーブフィッティングアルゴリズムモジュールの出力から獲得された典型的な時間プロットが示されており、ここで胃排出パラメータ、GEC、t1/2、tlagの計算された値は経過した時間の関数として示されている。これらのグラフはそれぞれ、5(iii)、5(iv)及び5(v)と命名されている。各グラフにおいて、それは、どのようにして測定されたパラメータが、経過した時間とともにその最終的に決定された値に収束するかが示される。収束の最終段階中、前記システムは遡及的に最終漸近性エンド値周辺のエラーバンドを規定でき、そして前記処理装置は好ましくは、曲線の収束挙動からこのエラーバンドを認識するようにプログラムされている。エラーバンドの幅は好ましくは、リアルタイムで獲得される結果に従い決定されてよい。最終値は、プロットされるパラメータの値から明らかである場合、正常な範囲から明らかに外れている(胃排出の障害を明らかに示す)かあるいは十分に正常な範囲内にある(広いエラーバンドが使用され、検査のセグメントを集結させることに関する決定点をよりすぐに到達可能にする)ことから明らかである。一方で、もしパラメータが見かけ上、正常値と異常値の間のボーダーライン上にあれば、狭いエラーバンドが、該パラメータについて最終的に達成可能な精度を高めるために使用される。
【0081】
ここで図5Aのシステムにもどり参照することで、すぐに、または本発明の他の好適な実施態様により、1超のパラメータが最終エラーバンドに入っているとして確認された場合検出され、該システムが出力信号を、被験者に対してかあるいは医療スタッフアテンダントに対して提供し、胃調節検査の第2食が被験者によって摂取されるべきことを告げる。このシステムは、好ましくは、最終的に生成された値の精度を高めるために、第1食の胃排出パラメータをある限定された時間にわたりプロットして計算し続け、その理由は、それが時々、食センサーにおいて出現し始めた第2食の前の効果を採ることあるからだ。これは特に、呼気検査センサーが使用された場合、それによって、第2食の検出の開始が一般に、該食が胃を出始めた場合にのみ始まるかまたはさらに、代謝経路遅延時間が理由でこの後に始まる。
【0082】
一度第2食が摂取されれば、胃調節システムは該第2食の進行を、それが第1食についての測定に類似する方法でプロットし、第2組の胃排出パラメータは図5Aの下半分に示されるように、システムによって生成される。しかし、該データ処理システムは、図6との関係において下に示されるだろうように、第1食のPDRもしくはDoB曲線の外挿値を、第2食のPDRもしくはDoB値から差し引くために使用しなければならない。
【0083】
最後に、一度データ処理装置が、第2食胃排出パラメータは十分な精度で獲得されていると特定すれば、このシステムは好ましく2つの食から対応するパラメータを比較し、そして所定の基準に従い、被験者の胃調節の障害の存在または不在に関する診断出力を供する。1つの好ましい基準により、前記胃調節は、もし第2食に関するt1/2の値が第1食の少なくとも10%未満であれば、または第2食に関するGECの値が該第1食の少なくとも5%未満であれば、障害されているとして規定される。2つの食に関するPDR曲線のピークもしくはDoB曲線のピークの強度の値の差に関連する他の好ましい基準も好ましく使用されて良く、そして該第1食と該第2食間での10%超の増加は胃調節の障害を示すとして考えられる。代替的に且つ好ましく、PDRの下の積分エリア(即ち、CPDR)またはDoB曲線の下の積分エリアは使用されるパラメータであってよく、そして10%増加は胃調節の障害として規定される。
【0084】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、パラメータの組み合わせは診断基準を構築するために使用されて良く、従って、所定数のあるパラメータは胃調節の障害を示し、次いで、これはもし、他のパラメータが有意な差を示さなくとも、診断を行うために十分であるとしてみなされる。さらに、診断基準のために使用される組み合わせにおける様々なパラメータは、様々な重みで与えられてよく、従って被験者の胃の状態の一層の基準もしくは兆候であるそれらパラメータには一層の重みが与えられる。例えば、半分の時間はCPDRよりも高い重みが与えられてよく、従って、前記装置中へとエキスパートシステムを導入することで手順に対してより高い感覚および特性を与えることができる。
【0085】
医者に対して多機能胃診断情報を提供できる本発明のさらなる他の好適な実施態様により構築され且つ有効な呼気装置を模式的に示す図5Cおよび5Dを参照する。係るシステムは医者が、図1Cに示された診断ルーチンを行うことを可能にし、そしてさらに、単一の装置によっても行うことを可能にする。呼気検査装置はどちらも好ましく本願に記載された実施態様を組み込み、そしてさらに、包括的消化不良マネジメントシステムを提供するために、他の検査からの外部出力を利用する。図5Cは、呼気検査装置の要素の模式的なブロック線図を示し、一方で、図5Dは、係るシステムの好ましいディスプレー出力スクリーンを模式的に示す。
【0086】
図5Cを参照すると、それは、呼気を標識された二酸化炭素について分析するガス分析装置Iによる分析のために、食の連続的な投与に続き、好ましくは個別のバッチ1,2において呼気をデリバリーする呼気入力Iを示す。ここから、例えば、本明細書中上図2Eおよび5Aに示されるように、分析結果が胃排出速度および胃調節(GE/GA)診断モジュールに対して向けられる。さらに且つ好ましく、このシステムは第2ガス分析装置IIをも含んでなり、それは好適に呼気を水素またはメタン含量に関して分析し、そしてその結果は、本明細書中図14に示されるように細菌過剰増殖、ラクトース不耐性、糖消化不良、または低GI運動性の検出のための診断処理モジュールに対して向けられる。この処理モジュールは、IBS診断生成装置として知られている。GE/GAおよびIBS診断処理装置からの出力情報は、多機能胃腸診断処理装置に対する入力であり、それはディスプレーに対して入力するための出力情報の全てをソーティングおよび集積するもとになる。
【0087】
さらに且つ好適に、さらなる入力は、被験者の胃の状態に関する情報を提供するための他の検査から多機能胃腸診断処理装置に対して供される。とりわけ、係る検査のなかでは、ヘリコバクター・ピロリの存在の検出のための呼気検査の結果である。この検査は、該検査を行うために対応する標識された基質の投与後に、同じ呼気入力をGE/GA検査のために使用しそして同ガス分析装置を使用することで行われてよい。しかし、GE/GA検査の結果との干渉を避けるために、GE/GA検査とは異なる時間に、好ましくは、数時間前に行い、そして結果をシステムのメモリーに保存しておくべきである。
【0088】
さらに、電気ガスクロマトグラフィー(EGG)検査からの出力も前記処理装置に対して入力されてディスプレーに映されてよく、従って、医者も、被験者の全体的なGI状態を評価することにおいてこれらの結果を有することになる。加えて、図5Aの実施態様と関連して記載されたように、患者の胃の症候の出力も供されてよい。最後に、有用なGI機能情報を供する他の外部装置も前記システムに対して、医者のための完全な像を供するために、入力をすることができる。
【0089】
図5Dを参照にすると、それは図5Cに示されるシステムの典型的なディスプレー出力スクリーンを説明する。図5Cに示される好適な例において、スクリーンは2つの欄に分けられており、そして検査のグラフ出力は左手側に示されており、そしてこれらグラフ出力を処理した結果は、右手側の表として示されているが、他の適切なディスプレー配置も本発明の範囲から逸脱せず使用されてよいと解される。そこには第1小体積食のグラフ結果が示されており、収束が達成した後の胃排出パラメータを示すために既に外挿されており、そして外挿された曲線を示す破線は検査t0のカットオフ点を越える。確認されるように、第1食の結果は、単に第1食胃パラメータの値が明らかに示されるまでプロットされている。底のグラフは、曲線分析が進行中である第2食を示す。これら2つの連続食の測定曲線は、同時且つ個々に、第1食からのダンピング曲線の推定値および胃排出速度の推定値と一緒に出現する。
【0090】
加えて、被験者自身によって表されて入力される場合、該被験者の保護された胃症候レベルのグラフ表現は、食摂取の時からの関数として、ヒストグラムの形態において示される。食摂取の間の胃症候の評価は、被験者の胃の感覚を特定することにおいて有用であり、それにより、消化不良症候の原因が、食の体積によって生じた機械的な苦痛に関連するのかあるいは摂取検査食の化学成分、例えば、脂肪成分の場合に関連するのかどうかを特定できる。例えば、有意な症候性反応が様々な体積の食の消化の間に確認されれば、測定が食サイズに関連した胃調節障害のサインをも示すかどうかにかかわらず、それは化学成分による苦痛のサインである。この情報は、適切な薬理治療を決定することにおいて臨床的に重要である。図5Dに示される場合では、第2およびより大量の食から記録された胃症候は、胃調節障害を罹患する消化不良の被験者により往々にして経験したように、より強いようである。この結果は、第2の、高体積食のより早い排出とイン・ライン(inline)であり、それは表示されたいくつかの胃調節パラメータの偏差によって示される。
【0091】
さらに、このシステムは、下に一層詳細に記載するように、第1および/もしくは第2食に関連する、被験者の呼気における水素もしくはメタン量を測定して排出曲線を示すこともできる。1つのスクリーンの上において、EGGトレースが医者による確認のために表示され、そして被験者のGI管における、活性のあるヘリコバクター・ピロリを検出するために行われた以前の検査の結果も表示される。
【0092】
この単一装置は、従って単一プラットフォームにより包括的胃腸モニタリング手順を行うことができ、ある数の機能性GI障害に関する結果を表示し、従って医者のオフィスを訪れる多数の被験者を助けることとなる。
【0093】
上述の好適な実施態様で記載した胃排出呼気検査および胃調節呼気検査は、オンラインのリアルタイムガス分析装置を使用するもの、又は被験者の呼気が個別のバッグに集められ、次に、隔たったガス分析機器、例えば質量分光計、に移されるものの、いずれの適した呼気検査装置によっても行い得る。さらに、これらの好適な実施態様に従順な検査は、シンチグラフィ、CT、常用のX線イメージング、MRI、超音波、または胃機能を調査決定するために従来技術で知られている他の何れの手段を使用することもできる。
【0094】
もし、呼気検査が、上記米国特許文献に記載されるような又は上記オリディオン・メディカル・リミテッドにより供給されるブレスID装置のようなオンラインのリアルタイム呼気分析装置を使用して行われる場合には、第2食は、その検査の要求および被験者の反応に従って、ピーク前またはピーク後の、可能な限り早い時に被験者に投与することができる。したがって、このような装置を使用することは、本発明の好適な方法を適用する他の可能な手段と比較して検査を短縮する。
【0095】
オンライン呼気検査装置を使用するこの第1方法を適用するための1つの好適な手順によれば、ベースライン同位体レベルの測定後に、200mlの、例えばエンシュア・プラス(登録商標)または他の利用可能な代替物のような、標準的な高カロリー液状検査食に溶解された100mgの13C酢酸ナトリウムが、被検者に投与される。あるいは好ましくは、該カロリー液状食への取込みを容易にするために、13C酢酸ナトリウムを5ml〜15mlの水に予め溶解させることもできる。従来技術で記載されているように、食物投与後に、呼気サンプルが収集され、呼気分析装置により頻繁な間隔で又は準連続的に分析され、そのDoB曲線振幅がリアルタイムで測定される。前述したように、測定点からの当てはめと外挿の結果として曲線が得られ、胃排出パラメータがそれらの漸近値に対する収束とともにリアルタイムで計算される。胃排出パラメータの収束を計算するための可能な方法は、上で参照される米国特許文献に記載されているように、呼気分析装置を制御する計算システムを使用して、胃排出パラメータを時間の関数としてプロットし、最近の測定点の微分値を計算することである。微分値がゼロに近似する時に、該パラメータの収束が達成される。t1/2 およびtlag の値を第2食の排出曲線の値と比較できるように、これらの値の収束が確定的に分かるように決定され次第、上述の第2食が投与される時間T0 の点は到達されたものと仮定する。
【0096】
第2食も標識される場合の好適な実施態様によれば、好ましくは、第2食も200mlの標準的な高カロリー液状検査食に溶解された100mgの13C酢酸ナトリウムを含むが、追加的な600mlの水で希釈される。ここでは、t1/2 およびtlag パラメータが、第2検査食について、それが投与される時である時間T0 から計算される。しかしながら、第2食の投与後の少なくとも最初の時間の間は、第1食の残り部分が、肺により未だ呼気されていないその同位体13C開裂生成物と共に、依然として胃腸管に残留する。それ故に、第1食からのこれらの残留物は、同位体標識第2食から得られる結果と干渉することになる。この生理学的干渉をどのように補正するかを模式的に示す、図6を参照する。図6に示されるように、第1曲線の形状が計算され、そこから低体積食についてのt1/2 およびtlag パラメータを抽出した後に、第2食が投与される時間τ0 を過ぎてからの曲線が外挿され、この外挿された曲線の残留値を測定点から減算して、補正された測定曲線を生成し、そこから高体積食についてのt1/2 およびtlag パラメータの値が得られる。図6では実際の測定された曲線が実線により示され、補正された曲線が点線により示される。
【0097】
第1食および第2食についてのパラメータ組間の偏差が計算される。胃調節障害を有する個人では、高体積の第2液状食の排出速度は第1食の排出速度よりも一般に速い。これは増大した胃内圧の指標となり、それ故に調節(accommodation)の問題の指標である。実行された多数の分析において、有症候患者の半排出時間は、第2食について少なくとも20%速いことが見出された。さらに、これらの同じ検査において、調節障害を有する患者にはtlag (ラグ時間)の大きな減少が見られた。
【0098】
ここで、一部の被験者が異常胃調節を有し一部の被験者が無症候である一連の被験者間の胃排出パラメータの偏差を示す表である、図7を参照する。以上説明された第1方法についての結果が、「2食手順」と標識された表の左側半分に示されている。これらの結果を、以下説明される「2検査手順」と呼ばれる別の好適な方法により得られた結果と比較する。
【0099】
tlag パラメータの差によって表わされるラグ期偏差が有症候被験者では通常大きいことが分かる。第1食のt1/2 およびtlag の高い値は、胃排出遅延の指標にもなる。
【0100】
高カロリー液状検査食が利用される場合のこれら実施態様において、正常被験者では、消化管通過のためのカロリー放出率により、一定した排出速度が一般に見出される。この目的のために特に適した食物は、高パーセントの脂肪を含むカロリードリンク、例えば商業行利用可能なエンシュア・プラス(登録商標)またはニュートラドリンク(Nutradrink)(登録商標)製品である。このような食物は胃がそのカロリー含有量を小腸に遅く放出するように強制する。またこのような食物は、様々異なる体積の検査食から生じる希釈化とは無関係に、類似する量の標識基質の利用を可能にする。
【0101】
100mgの酢酸ナトリウムを各々含む200mlおよび800mlの水をそれぞれ第1食および第2食として使用して、水のみを検査食として利用する場合には、上述の検査はその特異性の一部を失う。図8に示されるような無症候被験者の検査結果は、その被験者が正常であると分かっていてtlag が不変であっても、高体積水食後のt1/2 時間が低体積水食後のt1/2 時間よりも25%程短いことを示す。低体積および高体積のエンシュア・プラス検査食を使用して類似の検査を行った後に、同被験者は、これら2つの体積についてのt1/2 およびtlag の両方について非常に近い値を示した。
【0102】
胃排出速度を調節するためにクエン酸を使用する場合には、これらのパラメータの収束が著しく遅くなり、特異性も低くなることが一般に見出される。このことは、胃内容物のpHの結果としてその内容物を放出する際の胃の生理学的機構がカロリー消費機構とは多分異なるからであると考えられる。さらに、pHは希釈化により影響を受ける、全カロリー量は影響を受けない。それ故に、異なる体積のために異なる検査食量を利用しなければならない。
【0103】
本発明のさらなる好ましい実施態様によれば、本発明の胃調節検査の効率的且つ安全な実施を可能にするためのキットが提供されている。呼気検査の好適な場合、該キットは好ましくは、該検査を行うことにおいて使用される1または複数の食に対して加えるための必要量の同位体標識されたマーカー物質を含んでなる。該食およびマーカーの正確な使用を確実にするために、プロトコールを使用するための指示(DFU)または能書が該キットに含まれている。このプロトコールは好ましくは、前記食に関する希釈手順、もし適用可能なら、マーカー物質の添加に関するかかる説明および第2食が摂取される時間を、第1食により測定した胃排出の結果に従って同定または関連づける、もしくはこれが胃調節検査システムによって自動的に行われる場合、システムによって提供された信号に従って、もしくは所定の経過時間後(これらの場合、分析はオンラインでは行われない)に同定または関連付けるための説明を含む。このプロトコールは好ましくは、検査の結果を解釈するための案内を含み、それはある組のパラメータ結果を、正常、異常もしくはボーダーラインとして定義するための基準、ならびに/またはパラメータの組における差を、正常、異常、もしくはボーダーラインの胃調節、排出および感覚を有する患者の典型とするための基準でありうる。代替的に且つ好ましく、前記キットは、濃縮食自体のための容器、例えばエンシュア(登録商標)の缶などを、希釈によって所望の食を生産するために含んでよい。代替的且つ好ましく、前記キットは被験者の呼気を回収するために使用される呼気回収装置をも含んでよい。
【0104】
B. 1食方法
この好適な実施態様では、明確なカロリー含有量を有し、かつ上述の標識マーカーから選択された標識マーカーを含有する単一液状食が、被験者に投与される。液状食のサイズは好ましくは750mlであってよい、または一層、下に記載のように、100mlに下げられたより低体積の食物及び最大1.5リットルもあるより高い体積の食物が使用されて良い。この食物は、例えば低pHまたは高カロリー値により設計されて、ある所定時間x(例えば60分)の間、正常な被験者の胃に残留するとともにy(例えば90分)の半排出時間t1/2により規定される排出速度を有すべきことを保証する。呼気検査分析により、デルタ・オーバー・ベースライン曲線が追跡され、その結果から胃による液状物排出の曲線が決定される。この曲線から胃排出パラメータが決定される。
【0105】
正常よりも速い液状食排出速度を有する被験者では、この速い液状食排出速度が増大した胃圧の指標となり得るし、それ故に調節(accommodation)の問題の指標となり得る。呼気検査の起こり得る結果は、排出曲線の傾きの変化である。
【0106】
この最初の検査後に結果が明確でない場合には、食物が濃縮されるように体積が小さい(例えば100ml)こと以外は同一の食物を使用して、呼気検査を繰り返してよい。このようにして、以上説明される2検査方法で説明されるように、体積の効果のみを比較することができる。低体積および高体積液状検査食の投与後の正常な個人から得られる曲線のサンプルが、それぞれ図9Aおよび図9Bに示される。正常な胃調節を有する被験者から期待されるように、曲線の形状は非常に類似しており、それは、図9Bの結果を獲得するために使用した食が図9Aよりも有意に大きかったという、投与縦軸から明らかではある。
【0107】
上記単一食呼気検査は、許容基準との抽出されたパラメータの比較、または本質的に2食検査である、異なる体積の食による繰り返しと比較のいずれかによって結果を供する。図9Cを参照にすれば、それはさらなる単一食検査からの典型的な結果であって、そこから胃調節障害に関する情報が獲得されてよい第3の型の結果を示す。この検査において、図9Bの実施態様に記載のような、高体積食の投与後、測定された胃排出速度は、線量曲線の巨大且つ早期ピークによって裏付けられるように、正常よりも最初高い。しかし、胃から排泄された検出された食体積における規則的な衰退の代わりに、第2の且つ一般により低いピークが確認され、次いでそれは往々にして、図9Aおよび9Bに示されるように予測された正常速度に見かけ上衰退する。図9Cに示される結果は、胃が最初に大量の食を高速で排泄する胃調節障害状態の典型であり、それから胃調節の障害を伴う被験者の胃において多体積の食に関連する典型的な、胃排出パラメータの最初の組の曲線の部分が抽出されてよく、次いで、食体積がより低い量に下がれば、胃排出が正常になり、そして小体積の食を胃内にとどめる典型的な、胃排出パラメータの第2の組が抽出されてよい。これら2つの組の胃排出パラメータのうちの対応する1つのパラメータ間での差は、被験者における胃調節障害の存在および感覚を特定するために使用されてよい。これに関して、被験者の胃排出機能の生理は、単一食検査を有効に2食検査に変更可能であり、なぜなら、胃排出機能自身が胃排出機能を2つの個別の段階、即ち、高体積食段階、および低体積食段階に分ける機能をするからである。
【0108】
図9Cに示されている類似する結果は、高体積食の受け入れにより有効な胃弛緩機構障害の観点から説明されてよく、この状態は異常な胃調節を反映しているとして知られている。この状態において、食の胃排出における2つの段階の検出、および該段階の間での時間における点の特定は、食投与に続いていつ胃の弛緩が生じるかを示すために使用されてよい。胃弛緩調節過程における遅延は病理学的生理機能を示しうる。しかし、本発明のこの好ましい実施態様の実行は、曲線形状をもたらすために必要な正確な機構と独立して行われてよく、そして実際又は推定機構は本発明の範囲を限定することを意味しない。
【0109】
C. 2検査手順
本発明のこの好適な実施態様に係る方法では、検査は、上述した2食方法で説明された検査と実質的に同じであるが、好ましくは、標識基質の代謝経路の効果を含む第1食の効果が第2食投与前に実質的に消散していているような十分に間隔をおいた時に、異なる2回の機会で実行される。この2検査方法は典型的には連続する2日に行われるが、可能な場合または望ましい場合には、第1検査を午前早くに行った後、その日の遅くに第2検査を行うことも実行可能な選択肢である。これらの離隔した2回の各機会で、体積が異なるが同一標識基質を含む検査食が投与される。胃排出の正常範囲および検査曲線のパラメータが決定され、各測定に特異的な検査食体積をもった各測定についてのパラメータ間で相対偏差が計算される。この手法は、1種類の食物のみによる1検査を使用する場合よりも高い信頼度を与え得る。
【0110】
2検査手順の1つの好ましい実施態様によれば、異なる2日に被験者に検査を行う。第1日に、ベースライン同位体呼気測定を行った後に、エンシュア・プラス(登録商標)のような200mlの標準的な高カロリー液状検査食に溶解された100mgの13C酢酸ナトリウムが、被検者に投与される。あるいは、該カロリー液状食への取込みを容易にするために、13C酢酸ナトリウムを5ml〜15mlの水に最初に溶解させることもできる。従来技術で知られているように、食物投与後に、呼気サンプルが呼気分析装置により繰り返し又は連続的に収集され、そのDoBがリアルタイムで測定される。分析の結果に対して測定曲線が当てはめられ、そこから胃排出速度パラメータがリアルタイムで計算され、それらの漸近収束値が決定される。第2日に、同一手順が繰り返されるが、食物は、100mgの13C酢酸ナトリウムを含む200mlの標準的な高カロリー液状検査食に対して600mlの水を追加することによって補正されている。この第2食について、胃排出パラメータが再び計算され、そして第1食の胃排出パラメータからの偏差が計算される。有症候被験者についての幾つかの典型的な検査結果が図10Aおよび図10Bに示される。図10Aでは、同被験者に対して翌日に200mlの高カロリー検査食が投与され、t1/2 の値が156分であることが認められる。図10Bでは、800mlの高カロリー検査食が投与され、t1/2 の値が99分であることが認められ、それは胃調節障害の兆候である。
【0111】
上述の3手順を呼気検査の形態での実行について説明してきた。しかしながら、上述の胃排出パラメータの測定方法の根底にある概念は、呼気検査によるもの以外の他の異なる測定方法を使用することによっても実行し得ることが理解されるべきである。このような方法としては、限定されることを意図することなく、 99Te, 14Cその他の標識基質を使用する放射性同位体追跡法の使用、MRIによって追跡されるマーカーとして強磁性材料の使用、X線またはCT方法におけるコントラスト材料の使用、または超音波イメージングにおける気泡の使用、ならびに磁気共鳴、ガンマイメージング、シンチグラフィ等の技術を使用するような代替的測定方法が挙げられる。本発明により記載されるものを含め、その各々の技術分野で知られているように、これらの方法の各々が、その固有の感度、特異性によって並びに利用される食物、集団、臨床設備または利用される測定設備による利便性によって特徴付けられる。
【0112】
胃排出速度を決定するための新たな数学的方法が、East Kilbride. Department of Child Health and School of Veterinary Science, University of Glasgow のトム・プレストン(Tom Preston)により "13C-Breath Test Modeling"(13C-呼気検査モデル化)に既に記載されている方法の代替法として現在提案されている。これらの方法は、デコンボルト(deconvolutive)法によって各々の異なる代謝もしくは生理プロセスに対するへビサイド(Heaviside)関数に正規化された異なる微分方程式またはそれらの均等物を結合(coupling)することに基づくものである。こうして異なるパラメータが、各式について得られ、組み合わされて、t1/2 およびtlag またはその均等物を得る。これらの計算方法は、その数学的手法においてのみ当該時術分野で知られている方法とは異なるものであるが、シンチグラフィ分析において使用されるものと同一の呼気検査手順または胃排出研究に基づくものである。
【0113】
標識基質の量は、数学的均質性を示すGECのような同位体強度に関連するパラメータに影響を与えるにすぎず、t1/2 およびtlag のようなパラメータには影響を与えないことが観測されている。それ故に、本発明の好適な方法は、胃排出速度パラメータの計算に係る何れの特定の方法に限定されることを意味するのではなく、上述のモデルのような代替的数学的モデルにも適用可能であることが理解されるべきである。
【0114】
本発明の更に好適な実施態様によれば、胃排出障害の機械的原因または化学的原因のいずれかを区別することが臨床的に意義があることも提案される。本発明の目的は、この指標を、検査実行時に食物に対する被験者の症候性応答を記録することにより提供することである。したがって、胃調節障害の疑いがある患者を調査するための上記2食手順方法および2検査手順方法において、高体積検査食が投与されたときにのみ不快な症候が観察される場合には、その症候は該体積に対する機械的応答の指標である。小量食により、または小量および多量食の両方により不快な症候が観察される場合は、それは該食物のカロリー組成もしくは酸性組成に関連する症候の又は「化学的ストレス感覚」(chemical stress sensation)と呼ばれるものの指標である。不快な症候を測定するために幾つかの方法、例えば、臨床技術分野でよく知られているような症候質問、臨床観察、顔面認識、バイオフィードバック等、がある。これらの好ましい実施態様によれば、胃症候入力が、好ましくは被験者の胃症状の規模に従って、システムに入れられてよく、そして記録が、小体積、例えば、100〜350mlの食および多体積、例えば、500〜1500mlの食の投与の間または後に行われてよい。次いで、被験者の胃調節、排出および感覚の一層完全な臨床評価をするために、被験者胃症候入力および被験者胃測定出力の間での相関関係がとられてよい。
【0115】
胃症候のこれらの因子は、好ましくは先に記載されたシステムに対して、医者が被験者問診の結果から作った入力によって、または患者が該データ処理システムへ直接入力することのいずれかによって導入されてよい。かかる胃症候入力ユニットは図5Aに描かれた装置において示されており、胃調節、排出および感覚診断出力モジュールに対するさらなる入力を供する。これは任意の特徴であるので、破線で描かれている。
【0116】
さらに、本発明の他の好ましい実施態様によれば、上記キットは好ましくは、マーカー物質もしくは食それら自身と一緒に、そして、追加でもしくは検査プロトコール説明書の代替として、被験者に対して適用するための問診の要素をも含んでよい。
【0117】
4.細菌過剰増殖検査(BOAT)
消化不良、IBSまたは胃腸疾病についての他の知られている原因は、細菌過剰増殖または大腸菌による小腸もしくは上部胃腸管のコロニー形成、ラクトース不耐性その他の等の吸収不良、または低胃腸運動性である。細菌過剰増殖について、大腸外のこれら微生物レベルの評価は、胃鏡検査法(これは煩しく、患者に不快であり、人間の解釈に依存する)により、又は水素呼気検査(HBT)により通常行われる。HBTは、胃で分解されないラクトース等のある量のマーカー糖の被験者への投与の前後の呼気を分析することによって行われる。細菌がラクトースを分解して、ラクトース代謝の天然の結果として、ヒトのような大型生物によっては発生しないガスである水素を発生する。したがって、被験者の呼気中で測定される水素レベルの増大は、細菌活性の指標となる。胃で分解されない他の糖に関して、ラクトースが大腸に到達するために要する時間は約3時間である。それ故に早期の水素ピークは、細菌過剰増殖の信号である。水素はこれらGI障害の呼気検査をするために使用される最も共通の副生成物であるが、メタンは、摂取されたラクトースが小腸に存在する代替的且つさらなる細菌によって代謝される場合に生産されうる。本発明の他の好ましい実施態様によれば、係るメタン生成物は、水素の代わりまたは水素に加えて、これらの呼気検査において使用されてよい。水素呼気検査がこの用途においていつ挙げられようとも、この検査はメタン呼気検査を記載して網羅することを意味し、そしてまた違いは、一般にガス検出装置において使用されるガス検出装置にのみあると解されるべきである。
【0118】
この従来技術のHBTの主な不利点は、食物が小腸を通過する間の正確な時間を特定する必要性である。異なる被験者間での、および同一被験者間であっても異なる時間での、胃腸通過時間の変動に起因して、偽陰性および偽陽性の診断が生じ得る。
【0119】
したがって、これらの欠点を克服するために、本発明の更に別の好適な実施態様によれば、細菌の存在下で水素を発生するラクトース等のような基質を含有するだけでなく、胃腸管内で基質の位置を示すように作用する第2の同位体標識マーカーをも含有する、基質を投与する検査法が提案される。水素発生は細菌叢が存在する場合の細菌叢の発酵作用を示すように測定され、第2マーカーの分解生成物の第2測定が、一般に、水素発生量の測定と同時に行われる。この第2測定は、好ましくは、標識された炭素含有基質の被験者による代謝の結果として生成する標識CO2 の測定であってよい。
【0120】
本発明の好適な実施態様によれば、スパイロメーターまたはガスクロマトグラファーのようなH2 検出器が、呼気検査装置の部分である同位体ガス分析装置に組み込まれる。好ましくは、従来技術に記載されているような中間セル(intermediate cell)により、ある制御範囲のCO2 濃度においてサンプルガスが収集される。
【0121】
小腸または大腸におけるH2 発生、および基質の小腸の通過の両方をチェックするために、好ましくは、幾つかの異なる種類の基質を使用してよい。この呼気検査を行うための第1の好適な方法によれば、標識CO2 生成の測定のために、小腸で体により迅速に吸収または代謝される比較的小量の13C標識基質、例えば100mgのグルコースまたは酢酸ナトリウムまたはマイクロカプセル化重炭酸塩と一緒に、比較的大量のグルコースまたはラクトース、ソルビトールまたはラクトース例えば100gが、被験者に投与される。グルコースは、それが小腸に到達した時にのみ患者の体によって吸収および迅速に代謝され、この時点で被験者の呼気中の標識CO2 として検出可能となる。グルコースは、細菌によっても代謝可能であり、これが呼気中のH2 として検出される。13CO2 ピークが少なくともH2 の前の所定時間に生じることにおいて13CO2 およびH2 のガス性ピークが時間的に正しく分離される場合には、このことは被験者の細菌集団の位置が正常であることを示す。この状況は図11に示される模式的な呼気検査の結果に例示される。他方、図12に模式的に示されるように、H2 ピークが13CO2ピークと近い時間に位置する場合には、そのことは小腸における細菌過剰増殖の存在を示す。13CO2 ピークよりも遥かにブロードで長続きする場合の水素呼気の「ピーク」、ならびに請求の範囲に記載されるようなH2 ピークそれ自体としての言及、および13CO2 ピークに対するH2 ピークの時間的位置は、このように条件付けされることが留意されるべきである。実際に、大部分の実際の場合において、水素の「ピーク」位置の測定の代わりに、H2 呼気の測定は、水素呼気がベースラインレベルを超えたある一定のレベルを達成する位置によって決定される。
【0122】
正常な個人では、グルコースは小腸で体により吸収および代謝される。細菌代謝による検出可能な水素ピークを与えるために、いずれの残留グルコースでも大腸で利用可能となる。しかしながら、幾つかの例では、正常な被験者における細菌代謝からの検出可能な水素ピークを与えるべく大腸へ通過するために残留するグルコースが不十分となる場合がある。この場合には、ラクトース等の非分解性糖が、検査基質として含まれる。
【0123】
他の例では、100mgの 13C標識基質が、細菌過剰増殖水素呼気検査のための専用検査基質、例えば10gのラクトースと一緒に、投与される。上述のように、図11に模式的に示されるように、13CO2 ピークがH2 ピークよりも著しく先行する場合には、このことは患者の細菌集団が正常であることを示す。図13に示されるように、H2 「ピーク」が13CO2 ピークとほぼ同時に生じる場合には、そのことは小腸における細菌過剰増殖の存在を示す。しかしながら、この例では、検査基質としてラクトースのような非分解性糖の存在が、水素ピークが細菌過剰増殖を有する被験者の小腸におけるものか、又は正常被験者の大腸におけるものか、検出されることを保証する。
【0124】
13C標識基質の既知の代謝より生じる 13CO2 は、食物が胃腸管に到達した時点を決定するためのマーカーピークであり、それ故に、異なる代謝動態に起因するか又は被験者の臨床状態に起因する消化速度の差を克服する。それ故に、この好適な方法は、胃腸通過時間における患者内および患者間の変動に係る従来技術の不利点を克服するものである。
【0125】
本発明の更に好適な実施態様によれば、摂取される基質における水素およびCO2 マーカーの同時使用は、オロセカル通過時間の加速または遅延を決定するための方法も提供する。これは食物の経口投与と、大腸菌により糖の発酵が行われる大腸へのその食物の到達との間の時間である。このプロセスは低標識CO2 生成量と共に水素の高ピークによって特徴付けられる。
【0126】
他の代替的な検査食としては、限定されないが、比較的大量、例えば70〜100gの非標識グルコースまたは10gのラクトースと一緒の、標識酢酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム、グルコース、アセチルロイシンのようなプローブ、またはマイクロカプセル化標識基質が挙げられる。
【0127】
本発明に係る方法の更に好ましい実施態様によれば、多量に与えられる、これらの基質は、アルカリ性腸内媒体においてのみ放出可能とするように設計されたマイクロカプセル化手段中に取り入れられる。これにより、検査の時間的精度における改善を達成することが可能となる。あるいは、2成分を同一食において分離して提供することができ、これは特に簡単な適用方法である。単一標識基質および同時/単一のマイクロカプセル化マーカーは、体による吸収と代謝および/または細菌発酵がGI管で同時に生じる従来技術を超える利点を有する。
【0128】
あるいは好ましくは、オロセカル胃時間を示すために、重炭酸塩のような迅速放出の標識基質を含有する、大腸で分解可能なマイクロカプセル化配合物が利用され得る。
【0129】
本発明の他の好適な実施態様によれば、ラクトース呼気検査(LBT)および他の糖吸収不良、例えばフルクトースまたはマルトースまたはスクロース不耐性の時間を短縮し、かつ、その精度を改善するための方法が提供される。ラクトース不耐性は総人口の25%に起こり、乳中のラクトースを体による利用のためにグルコースまたはガラクトースに代謝する酵素であるラクターゼの体内の低利用効率によって特徴付けられると考えられている。このラクターゼ欠損の結果として、未代謝ラクトースが大腸菌により発酵され、検出可能なH2 を発生する。このような未代謝ラクトースの大腸における吸収を検出するために、13C−ラクトース摂取後の13CO2 およびH2 の同時測定が、ラクトース不耐性の診断のために提案されている。残念ながら、13C標識ラクトースは高価であり、容易に利用可能でなく、この提案を魅力のない検査方法にする。適度に安価に利用可能である13C濃縮供給物と共に乳生産牛に供給することによる、天然 13C標識ラクトースが示唆されている。しかしながら、このような乳の濃縮レベルは許容できる結果を生み出すためには低すぎるものであり、その変動性は標準化のためには高すぎる。したがって、本発明の他の好適な実施態様によれば、ラクトース不耐性を検出するための同時食(dual meal)の供給方法が提供される。この同時食は、大腸に到達するときにのみ主に吸収され、かつ、低コストで容易に利用可能な糖である、13C標識キシロースのような標識マーカー基質と一緒に天然ラクトースを含む。したがって、この同時食の摂取後に、図12に示されるように、13CO2 がH2 とほぼ同時に検出される場合には、そのことはラクトースがラクターゼ酵素の不存在に起因して小腸では吸収されていないが、標識ラクトースと一緒に大腸に到達したことの指標である。他方、H2 が全く13CO2 と共に検出されない場合には、このことはラクトースが正しく小腸で吸収され、被験者がラクトース不耐性を羅患していないことの指標である。さらに、内在性ラクターゼの欠乏がある場合には、H2 ピークが13CO2ピークの直ぐ後に予想され、そのためH2 ピークが出現するか否かを見るために長時間待つ必要が無いことが知られているので、この同時食の使用により検査時間の短縮が可能になる。
【0130】
本発明の更に他の好適な実施態様によれば、ラクトース不耐性のような糖吸収不良の存在または細菌過剰増殖の存在の一方または両方を決定するために、ラクトースと、小腸で吸収されるマーカー基質、例えば 13C標識酢酸ナトリウムとを含む、同時食を使用し得る。被験者が細菌過剰増殖を羅患しているが、ラクトース不耐性を羅患していない場合には、ラクトースの大部分が小腸で迅速に吸収されるが、小量は小腸での細菌過剰増殖と接触することに起因して水素を発生する。結果として、図11に示されるように、その食物が小腸を通過している際に、13CO2 ピークとほぼ同時に小さなH2 ピークが生じる。他方、被験者がラクトース不耐性を有する場合には、実質的に全てのラクトースが大腸の細菌に到達する時に大きなH2 ピークが生じ、このピークは、前に説明したように標識酢酸ナトリウムの小腸の通過時に生成する13CO2 ピークよりも遅く生じる。被験者が両方の障害を羅患している場合には、ラクトース吸収機構の不存在により、ラクトースの全てのラクトースが小腸での細菌過剰増殖に曝されるために小腸で利用可能となり、その結果は13CO2 ピークと同時に大きなH2 ピークが生じる。
【0131】
あるいは、大腸で代謝される標識基質、例えばキシロースまたはマイクロカプセル化重炭酸塩も、ラクトースと一緒に利用し得る。このような場合に、早い水素ピークおよび遅い標識基質ピークは細菌過剰増殖の指標である。同時に生じる2つのピークはラクトース不耐性の指標である。
【0132】
本発明の更に他の好適な実施態様によれば、13C標識グルコース、酢酸ナトリウムまたは他の 13C標識物質を、同一機会の1検査における胃調節、胃排出および細菌過剰増殖の組合せ型評価のためのグルコースまたはラクトースを含む固形/液状検査食に利用することもでき、これにより、患者がクリニックに訪問しなければならない回数を減らすころができる。
【0133】
細菌過剰増殖呼気検査は、以下の点により要約することができる:
1.食物が小腸を通過するとすぐに小腸で吸収されてCO2 ピークを生じる、13C標識により食物が標識される。
2.同食物は、それが大腸での正常な細菌濃度に到達する時に、呼気検査(BT)におけるH2 ピークを生じる。
3.従来技術で使用されるラクトースのような非分解糖を使用することにより、H2 ピークが生じるために要する時間に従って細菌過剰増殖を決定する。
4.CO2 ピークおよびH2 ピークの両方を検出するためにBTを行う。これらのピークが時間的に正しく分離される場合には、患者の細菌位置が正常である。H2 ピークがCO2 ピークと近い時間に生じる場合には、そのことは小腸での細菌過剰増殖の存在を示す。
5.その利点は、その食物のGI管における場所を決定するためのマーカーピークとしてCO2 を用いることにより、異なる代謝または患者の臨床状態に起因する消化速度の差が克服されることである。
【0134】
ここで図14を参照すれば、それは本発明の好ましい実施態様により構築され且つ有効な、細菌過剰増殖、ラクトース不耐性、糖吸収不良、または低GI運動性を検出するための呼気検査システムを模式的に示している。対応する食の投与後または呼気検査基質を含有する部分の投与後、行われるべき特定の検査により、上記実施態様において説明されたように、被験者の呼気はシステムに対する入り口において回収され、そして2つのガス分析装置に移される。これら3の分析装置のうちの1つは好ましくは、呼気における水素および/またはメタンの量を検出および測定し、そして他のものは好ましくは、同位体比分析装置であり、それは摂取された基質に由来する標識された同位体の、それと等しい天然に生じる同位体に対する呼気中の比を測定する。これらの分析は繰り返しまたは実質上連続して検査の期間に渡り行われ、そしてこれらの分析の結果は好ましくは、曲線フィッティングアルゴリズム、例えば、当業者に公知の、データをDoB曲線へと、水素またはメタン量について個別に、そして同位体比についてフィッティングするためのアルゴリズムを使用する型の計算モジュールのうちの1つに対して好ましく入力される。DoBに対して代替的且つ好ましく、本明細書中上で記載されたように、PDRなどの、呼気において測定された線量の他の任意の表現が使用されてよい。次いで、これらの曲線またはそれらを構成するデータは、データ分析装置に入力され、それが曲線のピークの領域を、検査食の投与から経過した時間の関数として検出する。水素またはメタンデータの場合、有意なピークが検出されないということは一般ではなく、何故なら、非常にブロード且つ低い水平な形状の曲線が獲得されるからだ。この理由について、水素またはメタン分析装置ユニットは、有用なピークが前記データから抽出できない場合、前記アルゴリズムが、水素もしくはメタン量が所定の閾値を越える場合の時間点を交互に検出し、そしてこの時間点が水素もしくはメタン「ピーク」の存在を定義するための基礎として使用されるように、好ましく予めプログラムされている。次いで、示差時間比較装置は、好ましくは、2つのピークが生じる時間における差を計算し、この差の正常な範囲のデータベースと、該生じる差を比較し、そして推定標準との任意の時間差の比較に基づき、呼気検査の検査結果を生じる。
【0135】
さらに一層、本発明のさらに好適な実施態様によれば、これら記載の呼気検査の有効且つ安全な実行を可能にするためのキットが供されている。該キットは好ましくは、該キットが供給される特定の検査を行うために使用される必要量の2つの個別の成分基質物質を含んでなる。該基質および/またはマーカーの正確な使用を確実にするために、プロトコールを使用するための指示(DFU)または能書が該キットに含まれている。このプロトコールは好ましくは、もし適用可能なら食の調製手順、もし適用可能なら、マーカー物質の添加に関するかかる説明を含んでよい。このプロトコールはまた、検査の結果を解釈するための案内を含み、それはある組の時差結果を、正常、異常もしくはボーダーラインとして定義するための基準でありうる。
【0136】
以上に説明され、そして特に示された事項によっては本発明が限定されないことが当業者に理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、以上に説明された様々な特徴のコンビネーションおよびサブコンビネーションの両方、ならびに当業者が以上の説明を読むことによって行われるであろう変形および改良であって従来技術に含まれないものを包含する。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1A】GIハイリスクグループに属する無症候患者について(図1A)あるいは消化不良またはIBSの症候を有する患者について(図1B)、可能な検出および処置のコースを説明する模式的フローチャートである。
【図1B】GIハイリスクグループに属する無症候患者について(図1A)あるいは消化不良またはIBSの症候を有する患者について(図1B)、可能な検出および処置のコースを説明する模式的フローチャートである。
【図1C】並列配置で体系化された提案される検査法を示すことで、上述のGI問題のいずれかを有する疑いのある患者について検出および処置の方法を示す代替的模式図である。
【図2A】時間単位での時間の関数として被験者の計算されたt1/2 ,tlag ,DoBおよびGEC胃排出パラメータのリアルタイム進行経過の例を示す4グラフ組の1つである。
【図2B】時間単位での時間の関数として被験者の計算されたt1/2 ,tlag ,DoBおよびGEC胃排出パラメータのリアルタイム進行経過の例を示す4グラフ組の1つである。
【図2C】時間単位での時間の関数として被験者の計算されたt1/2 ,tlag ,DoBおよびGEC胃排出パラメータのリアルタイム進行経過の例を示す4グラフ組の1つである。
【図2D】時間単位での時間の関数として被験者の計算されたt1/2 ,tlag ,DoBおよびGEC胃排出パラメータのリアルタイム進行の例経過を示す4グラフ組の1つである。
【図2E】このデータを獲得して使用し被験者におけるこれらのパラメータの正常さを特定するための、好適な呼気検査装置の模式的な説明である。
【図3】非標識第2食を用いて行われるGEBTにおいて得られた標識分解生成物の呼気量またはDoB曲線の模式図である。
【図4】A及びBは2食手順より生じる、時間の関数としての典型的DoB曲線である。Aにおいて正常な胃調節を伴う被験者に関する結果を示し、Bでは胃調節障害を伴う被験者に関する結果を示す。
【図5】図5A〜Dは、本発明の一層好ましい実施態様により、胃機能検査を行うための、そして特に胃調節検査を行うためのシステムを模式的に示し;5Aにおいて、胃調節検査システムの要素のブロック線図を示し、一方で5Bではかかるシステムのデータ処理装置から獲得された出力データの例を示し;図5Cは、本発明のさらに他の好ましい実施態様により構築され且つ有効な呼気検査装置を模式的に示し、それは胃排出および胃調節情報に加えて、多機能胃診断情報を医者に対して供することができ;図5Dは図5Cにおけるようなシステムの好ましいディスプレー出力スクリーンを模式的に示す。
【図6】未だ肺により呼気されていない同位体 13C開裂生成物により、胃腸管に依然として残留する第1食の残留部分について第2食曲線における補正がどのようにして行われるかを模式的に示す図である。
【図7】2食手順および2検査手順について、一部の被験者が異常胃調節を示し一部の被験者が無症候である一連の被験者間の胃排出パラメータの偏差を示す表である。
【図8】第2食として高体積水食を用いる2食検査を実行する無症候被験者の検査結果を模式的に示す図である。
【図9】図9A〜Cは一回食物検査から獲得した胃排出曲線の模式的サンプルを示す。図9Aおよび図9Bは、それぞれ低体積および高体積の液状検査食の投与後の正常個人から獲得した胃排出曲線の模式的サンプルを示す図である。図9Cは胃調節障害を伴う被験者から獲得した曲線を示す。
【図10】図10Aおよび図10Bは、2日検査について症候性患者からの胃排出曲線の模式的サンプルを示す図であり、図10Aでは200mlの高カロリー検査食が投与され、図10Bでは800mlの高カロリー検査食が投与される。
【図11】得られた曲線の模式的例であって、各々が水素ピークと同位体標識二酸化炭素ピークの両方を示して、細菌過剰繁殖および糖吸収不良など異なるIBS障害をもった被験者から得られた結果を示す図である。
【図12】得られた曲線の模式的例であって、各々が水素ピークと同位体標識二酸化炭素ピークの両方を示して、細菌過剰繁殖および糖吸収不良など異なるIBS障害をもった被験者から得られた結果を示す図である。
【図13】得られた曲線の模式的例であって、各々が水素ピークと同位体標識二酸化炭素ピークの両方を示して、細菌過剰繁殖および糖吸収不良など異なるIBS障害をもった被験者から得られた結果を示す図である。
【図14】本発明の他の好適な実施態様に従って最近過剰増殖または様々なGI不耐性を検出するための、呼気試験を行うためのシステムを模式的に示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの食の組の使用であって、前記組の少なくとも1つの食は、被験者の胃において前記少なくとも1つの食の滞留を生じさせるために有効な少なくとも1つの成分を含んでなり且つ所定の体積を有しており、該被験者の胃を出る所定の体積の前記食の関数として前記少なくとも1つの食の胃排出(gastric emptying)パラメータを少なくとも2つ測定することによって該被験者の胃調節(gastric accommodation)を特定するための食の組の使用。
【請求項2】
前記少なくとも1つの食が1つの食であり、そして前記少なくとも2つの測定が前記1つの食により行われる、請求項1に記載の少なくとも1つの食の組の使用。
【請求項3】
前記少なくとも2つの測定の少なくとも1つが、前記被験者の胃からの前記食の液体排出段階により行われる、請求項3に記載の少なくとも1つの食の組の使用。
【請求項4】
前記少なくとも1つの食が少なくとも2つの食であり、そして前記少なくとも2つの測定の1つが前記少なくとも2つの食の第1の食により行われ、そして前記少なくとも2つの測定の第2の測定が、前記少なくとも2つの食の第2の食により行われる、請求項1に記載の少なくとも1つの食の組の使用。
【請求項5】
前記少なくとも2つの食の第1の食が前記少なくとも2つの食の第2の食よりも大(体積)である、請求項4に記載の2食の組の使用。
【請求項6】
前記少なくとも2つの食の第2の食が前記少なくとも2つの食の第1の食よりも大(体積)である、請求項4に記載の2食の組の使用。
【請求項7】
前記少なくとも2つの食の第2の食が前記少なくとも2つの食の第1の食よりも2倍の大きさ(の体積)である、請求項6に記載の少なくとも2食の組の使用。
【請求項8】
前記所定の体積が150ml以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の少なくとも1つの食の組の使用。
【請求項9】
前記組の少なくとも1つの食が、前記被験者の胃を離れた後に検出されるマーカーを含んでなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の少なくとも1つの食の組の使用。
【請求項10】
前記マーカーが、前記被験者の呼気中に存在することによって検出される、請求項9に記載の少なくとも1つの食の組の使用。
【請求項11】
前記マーカーが、前記被験者の体内に存在することによって検出される、請求項9に記載の少なくとも1つの食の組の使用。
【請求項12】
前記マーカーが、前記被験者の胃腸管に存在することによって検出される、請求項11に記載の少なくとも1つの食の組の使用。
【請求項13】
前記組の少なくとも1つの食が:
150kcal以上のカロリー値;
5%以上の脂質含量;
10%以上の炭水化物含量;
5%以上のタンパク質含量;
3未満のpH値、
を少なくとも1つ含んでなる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の少なくとも1つの食の組の使用。
【請求項14】
前記炭水化物がグルコースである、請求項13に記載の少なくとも1つの食の組の使用。
【請求項15】
呼気検査における被験者による使用のための単回投与液状食であって:
500ml以上の体積;
前記食の胃滞留を生じさせるための剤;および
胃環境で安定であり、そして該被験者の胃を出ることによって検出可能であるマーカー、
を含んでなる液状食。
【請求項16】
前記剤が:
150kcal以上のカロリー値;
5%以上の脂質含量;
10%以上の炭水化物含量;
5%以上のタンパク質含量;および
3未満のpH値、
の少なくとも1つを含んでなる、請求項15に記載の単回投与液状食の使用。
【請求項17】
被験者の胃調節を、該被験者に対し、該被験者の胃を出ることによって検出可能であるマーカーを含んでなる第1および第2食を連続投与した後に特定するための装置であって、当該装置は:
該被験者の胃を出ることによって前記マーカーを検出し、そして該被験者の胃からの前記食を排出する速度に関する情報を運ぶマーカー出力信号を供するための検出装置;
前記マーカー出力信号を受け取り、そして前記第1食の胃排出を特徴付ける第1組のパラメータを計算し、そして前記第2食の胃排出を特徴付ける対応する第2の組のパラメータを計算し、そして前記第1および第2組のパラメータからの対応する2つのパラメータを比較することによって前記胃調節を特定するデータ処理システム、
を含んでなる装置。
【請求項18】
前記第1および前記第2食が異なる体積のものである、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記胃調節が、前記第1および第2食の体積に対する前記パラメータの依存から特定される、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記第1および第2食が類似体積の食であり、そして前記第2食は、前記第1食が前記被験者の胃から排出される前に投与される、請求項17に記載の装置。
【請求項21】
前記処理システムが、前記第1食が前記被験者の胃から排出される前に前記第2食のパラメータの組を比較する、請求項17〜20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記マーカーが、前記被験者の呼気中に存在することによって検出される、請求項17〜21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
前記マーカーが、前記被験者の体内に存在することによって検出される、請求項17〜21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
前記マーカーが、前記被験者の胃腸管に存在することによって検出される、請求項17〜24のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
前記パラメータの組が:
t1/2;
tlag;
GEC;
CPDR;および
時間の関数としてDoBのプロット下の積分、
を含んでなる、請求項17〜24のいずれか1項に記載の装置。
【請求項26】
被験者の胃調節の診断をするためのキットであって:
第1所定体積および第1所定胃滞留特性を有する第1食をマーキングするためのある量の物質;
第2所定体積および第2所定胃滞留特性を有する第2食をマーキングするためのある量の物質;
前記第1食および前記第2食の調製に関連する情報を供するプロトコール、
を含んでなるキット。
【請求項27】
前記プロトコールが、前記第1食および前記第2食の前記被験者に対する投与に関連する情報をも供する、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
前記プロトコールが、前記第1食により測定された胃排出の結果に従って、前記第2食が摂取される時間点に関連する情報をも提供する、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
前記第1食および第2食の少なくとも1つを調製するための物質をも含んでなる、請求項26に記載の被験者における胃調節の診断のためのキット。
【請求項30】
呼気回収装置をも含んでなる、請求項26に記載の被験者における胃調節の診断のためのキット。
【請求項31】
被験者における胃腸状態の少なくとも1つを特定するための呼気検査装置であって、当該装置は:
標識した基質の摂取後に該被験者から呼気を回収するための呼気回収装置;および
前記被験者の呼気中の前記マーキングされた基質の生成物を検出するためのガス分析装置、
を含んでなり;
ここで前記呼気検査装置および前記マーキングされた基質は、前記被験者に関連した胃腸情報を提供する呼気検査が可能なグループから選択される第1呼気検査を行うために適合され;
そして前記呼気検査装置および前記マーキングされた基質も、少なくとも前記第1呼気検査の結果に従い、前記呼気検査のグループから選択される第2呼気検査を少なくとも行うように適合され、従って、前記被験者の胃腸状態が少なくとも1つの前記呼気検査の結果から特定される装置。
【請求項32】
前記胃腸状態が消化不良および過敏性腸症候群の少なくとも1つを含んでなる、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記消化不良が、胃排出障害、胃調節障害、およびヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染の少なくとも1つから選択される請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記過敏性腸症候群が、糖吸収不良障害、細菌過剰増殖、およびオレセカル(orececal)経過時間障害の少なくとも1つから生じる、請求項32に記載の装置。
【請求項35】
前記糖吸収不良障害が、ラクトース不耐性(intolerance)、フルクトース不耐性、スクロース不耐性およびマルトース不耐性の少なくとも1つである、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
被験者の胃排出の特定をするための呼気検査装置であって、当該装置は:
ガス回収装置;
回収された呼気を分析するためのガス分析装置;および
計算システム、
を含んでなり、
ここで、該ガス回収装置は、マーカーを含んでなる検査食であって、その副生成物が被験者の胃からの当該マーカーの排出の速度に従って被験者の呼気中に吐き出される検査食を被験者へ投与した後に該被験者から呼気サンプルを回収し;
前記分析は本質的に連続的に行われ;そして
該計算システムは、呼気検査が進むにつれ、前記被験者の、t1/2、tlag、デルタオーバーベースライン(DoB)曲線強度、時間の関数として該DoBプロット下の積分、および胃排出係数パラメータ(GEC)の少なくとも1つを計算し;
該呼気検査装置は、前記パラメータの少なくとも1つの最終推定値を特定し、そして前記パラメータが、前記パラメータに関する公知の標準から有意に離れているかどうかを特定することによって胃排出障害の兆候を供する装置。
【請求項37】
前記兆候は、前記被験者が呼気サンプルを前記分析装置に対して提供する間に前記被験者における胃排出障害の兆候が供される、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
前記兆候が、前記被験者の呼気のオン・ゴーイング分析により前記被験者における胃排出障害の兆候が供される、請求項36に記載の装置。
【請求項39】
同位体呼気検査のための基質であって、同位体標識された物質をマイクロカプセル化コーティング物質中に含んでなり、ここで該マイクロカプセル化コーティング物質の特性は、前記同位体標識された物質が胃腸管の所定の部分において放出されるように選択される基質。
【請求項40】
前記マイクロカプセル化コーティング物質は、それが通過する環境のpH値により破壊されて同位体標識された物質を放出するように選択される、請求項39に記載の基質。
【請求項41】
前記マイクロカプセル化コーティング物質は、それが被験者の胃を離れた後のみに破壊されて同位体標識された物質を放出するように選択される、請求項40に記載の基質。
【請求項42】
前記同位体標識された物質が十二指腸通過を特定するためのマーカーとして使用されている、請求項41に記載の基質。
【請求項43】
前記マイクロカプセル化コーティング物質は、それが通過する酵素環境から生じる酵素活性の効果の下で破壊されて同位体標識された物質を放出するように選択される、請求項39に記載の基質。
【請求項44】
前記酵素が、膵臓および胆嚢の少なくとも1つによって分泌されるものであり、従って前記同位体標識された物質が十二指腸通過を特定するためのマーカーとして使用されている、請求項43に記載の基質。
【請求項45】
前記マイクロカプセル化コーティング物質は従って、それが前記同位体標識された物質よりも一層容易に、投与された食に対して結合することができる、請求項39に記載の基質。
【請求項46】
被験者の胃調節の特定における第1および第2液状食の組の使用であって、前記第1液状食は第1所定体積を含んでなり、そして前記第2液状食は、該第1所定体積よりも大きい第2所定体積を含んでなり且つ所定の胃滞留特性を有し;
ここで前記第2液状食は該被験者に対して前記第1液状食が該被験者の胃から排出され始めた後に投与され;そして
該被験者の胃調節は、前記第2食の測定された排出速度と前記第1食の測定された排出速度の間の偏差に従い特定される、
第1および第2液状食の組の使用。
【請求項47】
前記第2所定体積は、前記被験者において胃拡張を起こすために十分である、請求項46に記載の食の組の使用。
【請求項48】
前記第2所定体積は500ml以上の液体である、請求項46に記載の食の組の使用。
【請求項49】
前記胃滞留特性が、前記第2液状食の所定のpH、所定のカロリー値、および所定の成分の1つから生じる、請求項46に記載の食の組の使用。
【請求項50】
前記所定pHが3.0未満である、請求項49に記載の食の組の使用。
【請求項51】
前記所定のカロリー値が150kcal以上である、請求項49に記載の食の組の使用。
【請求項52】
前記所定の成分が、アイソトニック成分である、請求項49に記載の食の組の使用。
【請求項53】
前記第2液状食は、前記第1食の前記被験者から排出される速度が特定されるとすぐに投与される、請求項46に記載の食の組の使用。
【請求項54】
前記第2液状食は、前記第1食の前記被験者に対する生理効果が本質的に全て特定された時間の後に特定される、請求項46に記載の食の組の使用。
【請求項55】
前記第2液状食は、前記第1食に続く日に投与されている、請求項54に記載の食の組の使用。
【請求項56】
前記排出速度が、呼気検査、X線、シンチグラフィー、コンピュータ断層撮影、ガンマイメージングおよび超音波法の少なくとも1つによって特定されている、請求項46〜55のいずれか1項に記載の食の組の使用。
【請求項57】
所定の体積を含んでなり且つ所定の胃滞留特性を有する液状食の、被験者の胃調節の特定における使用であって;
ここで、多数の正常な被験者に関する前記食の平均胃排出速度は既知であり;
そして該被験者の胃からの前記食の排出速度が測定され;
そして該被験者の胃からの前記食の排出速度と多数の正常な被験者に関する前記食の排出の平均速度との間の偏差が、該被験者の胃調節の兆候を供する、
液状食の使用。
【請求項58】
前記所定の体積が前記被験者において胃拡張を生じるために十分である、請求項57に記載の液状食の使用。
【請求項59】
前記所定の体積が500ml以上の液体である、請求項57に記載の液状食の使用。
【請求項60】
前記胃滞留特性が、前記液状食の所定のpH、所定のカロリー値、および所定の成分のうちの1つから生じる、請求項57に記載の液状食の使用。
【請求項61】
前記所定pHが3.0未満である、請求項60に記載の液状食の使用。
【請求項62】
前記所定のカロリー値が150kcal以上である、請求項61に記載の液状食の使用。
【請求項63】
前記所定の成分が、アイソトニック成分である、請求項61に記載の液状食の使用。
【請求項64】
前記排出の速度が、呼気検査、シンチグラフィー、X線コンピュータ断層撮影、ガンマイメージングおよび超音波法の1つによって特定されている、請求項57〜63のいずれか1項に記載の液状食の使用。
【請求項65】
所定の体積を含んでなり且つ所定の胃滞留特性を有する同位体標識された液状食の、被験者の胃内圧に対する食の体積の効果を特定するための使用であって;
該被験者の胃からの前記食の排出速度が、多彩な所定体積の食に関して、該被験者の呼気における前記食の同位体標識された生成物を検出するために行われる呼気検査によって特定される、同位体標識された液状食の使用。
【請求項66】
被験者における胃腸障害を特定するための、該被験者に対して投与される食の使用であって、該食は少なくとも第1および第2マーカー物質を含んでなり、従って前記第1物質は一般に該被験者の胃において吸収されることはなく、そして所定のガスを腸内細菌の存在下で放出し、そして前記第2物質は従って、該被験者の胃腸管内で前記食の位置を示し;
ここで前記被験者における前記所定のガスの生成は、呼気検査によって検出され、そして被験者内の所定のガスが生成される位置が第2マーカー物質によって特定される、食の使用。
【請求項67】
前記第2マーカー物質の副生成物が、呼気検査によっても検出され、従って、前記被験者の胃腸管における前記所定のガス生成の位置が、前記被験者の呼気における前記所定のガスの出現と前記マーカー物質の副生成物の出現の時間的関係によって特定される、請求項66に記載の食の使用。
【請求項68】
前記第2マーカー物質が同位体炭素により標識され、そして前記副生成物が同位体標識された二酸化炭素である、請求項67に記載の食の使用。
【請求項69】
前記第1物質が前記被験者の小腸において代謝される糖であり、従って前記第2マーカー物質の検出の時間に対する前記所定のガスの検出の時間が、前記小腸における細菌過剰増殖の存在を特定するために使用される、請求項66〜68のいずれか1項に記載の使用。
【請求項70】
前記第2物質が前記被験者の小腸において代謝される標識された糖でもあり、従って、前記被験者の呼気における所定のガスおよび前記第2マーカー物質の副生成物の同時出現は一般に、前記被験者における細菌過剰増殖の存在の兆候である、請求項69に記載の食の使用。
【請求項71】
前記第2物質が前記被験者の小腸において代謝される標識された糖でもあり、従って、前記被験者の呼気における前記第2マーカー物質の、副生成物の、前記所定のガスが出現する有意に前の出現は一般に、前記被験者における細菌過剰増殖の不在の兆候である、請求項69に記載の食の使用。
【請求項72】
前記第1物質がグルコースおよびラクトースの少なくとも1つである、請求項69〜71のいずれか1項に記載の物質の使用。
【請求項73】
前記第2物質が標識された酢酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム、グルコース、アセチルロイシンプローブ、またはマイクロカプセル化標識基質の少なくとも1つである、請求項69に記載の物質の使用。
【請求項74】
前記第1物質が前記被験者の小腸において一般に代謝される標識される糖でもあり、従って、前記所定のガスの、前記小量の第2マーカー物質の検出と本質的に同時の検出が、前記被験者のオロカエカル(orocaecal)経過時間を特定するために使用される、請求項66〜68のいずれか1項に記載の食の使用。
【請求項75】
前記第1物質が前記被験者の小腸において代謝されると考えられるグループの糖であり、従って、それは本質的に吸収されて前記被験者の結腸に至り、結腸性細菌の存在により前記所定のガスが生成され、従って、前記第2マーカー物質の検出の時間に対する前記所定のガスの検出の時間が、前記被験者における糖不耐性を特定するために使用される、請求項66〜68のいずれか1項に記載の食の使用。
【請求項76】
前記第2物質は前記結腸において一般に吸収される同位体標識された物質であり、従って前記第2マーカー物質の標識された副生成物の検出と本質的に同時である、前記所定のガスの検出は、前記被験者における糖不耐性を特定するために使用される、請求項75に記載の食の使用。
【請求項77】
前記第2物質は炭素同位体で標識されたキシロースであり、そして前記副生成物は同位体標識された二酸化炭素である、請求項76に記載の食の使用。
【請求項78】
前記第2物質が一般に小腸で吸収される同位体標識された物質であり、従って前記所定のガスおよび前記第2マーカー物質の標識された副生成物の検出の相対的な時間および量は、前記被験者が糖不耐性および細菌過剰増殖の1つまたは両方を罹患しているかどうかを特定するために使用されている、請求項75に記載の食の使用。
【請求項79】
前記第2マーカー物質の前記標識された副生成物の検出と本質的に同時に生じる、前記細菌の存在下での小部分の前記第1物質に特徴的な、前記小量の所定のガスの検出は、前記被験者が細菌過剰増殖を罹患していること示す、請求項78に記載の食の使用。
【請求項80】
前記第2マーカー物質の前記標識された副生成物の検出ではなく前記所定のガスの検出は、前記被験者が糖不耐性を罹患していることを示す、請求項78に記載の食の使用。
【請求項81】
前記第2マーカー物質の前記標識された副生成物の検出と本質的に同時に生じる、前記細菌の存在下での大部分の前記第1物質に特徴的な、前記大量の所定のガスの検出は、前記被験者が糖不耐性および細菌過剰増殖を罹患していること示す、請求項78に記載の食の使用。
【請求項82】
前記糖がラクトース、フルクトース、マルトースおよびスクロースの少なくとも1つである、請求項75〜81のいずれか1項に記載の食の使用。
【請求項83】
前記所定のガスが水素およびメタンの少なくとも1つである、請求項66〜82のいずれか1項に記載の食の使用。
【請求項1】
少なくとも1つの食の組の使用であって、前記組の少なくとも1つの食は、被験者の胃において前記少なくとも1つの食の滞留を生じさせるために有効な少なくとも1つの成分を含んでなり且つ所定の体積を有しており、該被験者の胃を出る所定の体積の前記食の関数として前記少なくとも1つの食の胃排出(gastric emptying)パラメータを少なくとも2つ測定することによって該被験者の胃調節(gastric accommodation)を特定するための食の組の使用。
【請求項2】
前記少なくとも1つの食が1つの食であり、そして前記少なくとも2つの測定が前記1つの食により行われる、請求項1に記載の少なくとも1つの食の組の使用。
【請求項3】
前記少なくとも2つの測定の少なくとも1つが、前記被験者の胃からの前記食の液体排出段階により行われる、請求項3に記載の少なくとも1つの食の組の使用。
【請求項4】
前記少なくとも1つの食が少なくとも2つの食であり、そして前記少なくとも2つの測定の1つが前記少なくとも2つの食の第1の食により行われ、そして前記少なくとも2つの測定の第2の測定が、前記少なくとも2つの食の第2の食により行われる、請求項1に記載の少なくとも1つの食の組の使用。
【請求項5】
前記少なくとも2つの食の第1の食が前記少なくとも2つの食の第2の食よりも大(体積)である、請求項4に記載の2食の組の使用。
【請求項6】
前記少なくとも2つの食の第2の食が前記少なくとも2つの食の第1の食よりも大(体積)である、請求項4に記載の2食の組の使用。
【請求項7】
前記少なくとも2つの食の第2の食が前記少なくとも2つの食の第1の食よりも2倍の大きさ(の体積)である、請求項6に記載の少なくとも2食の組の使用。
【請求項8】
前記所定の体積が150ml以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の少なくとも1つの食の組の使用。
【請求項9】
前記組の少なくとも1つの食が、前記被験者の胃を離れた後に検出されるマーカーを含んでなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の少なくとも1つの食の組の使用。
【請求項10】
前記マーカーが、前記被験者の呼気中に存在することによって検出される、請求項9に記載の少なくとも1つの食の組の使用。
【請求項11】
前記マーカーが、前記被験者の体内に存在することによって検出される、請求項9に記載の少なくとも1つの食の組の使用。
【請求項12】
前記マーカーが、前記被験者の胃腸管に存在することによって検出される、請求項11に記載の少なくとも1つの食の組の使用。
【請求項13】
前記組の少なくとも1つの食が:
150kcal以上のカロリー値;
5%以上の脂質含量;
10%以上の炭水化物含量;
5%以上のタンパク質含量;
3未満のpH値、
を少なくとも1つ含んでなる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の少なくとも1つの食の組の使用。
【請求項14】
前記炭水化物がグルコースである、請求項13に記載の少なくとも1つの食の組の使用。
【請求項15】
呼気検査における被験者による使用のための単回投与液状食であって:
500ml以上の体積;
前記食の胃滞留を生じさせるための剤;および
胃環境で安定であり、そして該被験者の胃を出ることによって検出可能であるマーカー、
を含んでなる液状食。
【請求項16】
前記剤が:
150kcal以上のカロリー値;
5%以上の脂質含量;
10%以上の炭水化物含量;
5%以上のタンパク質含量;および
3未満のpH値、
の少なくとも1つを含んでなる、請求項15に記載の単回投与液状食の使用。
【請求項17】
被験者の胃調節を、該被験者に対し、該被験者の胃を出ることによって検出可能であるマーカーを含んでなる第1および第2食を連続投与した後に特定するための装置であって、当該装置は:
該被験者の胃を出ることによって前記マーカーを検出し、そして該被験者の胃からの前記食を排出する速度に関する情報を運ぶマーカー出力信号を供するための検出装置;
前記マーカー出力信号を受け取り、そして前記第1食の胃排出を特徴付ける第1組のパラメータを計算し、そして前記第2食の胃排出を特徴付ける対応する第2の組のパラメータを計算し、そして前記第1および第2組のパラメータからの対応する2つのパラメータを比較することによって前記胃調節を特定するデータ処理システム、
を含んでなる装置。
【請求項18】
前記第1および前記第2食が異なる体積のものである、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記胃調節が、前記第1および第2食の体積に対する前記パラメータの依存から特定される、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記第1および第2食が類似体積の食であり、そして前記第2食は、前記第1食が前記被験者の胃から排出される前に投与される、請求項17に記載の装置。
【請求項21】
前記処理システムが、前記第1食が前記被験者の胃から排出される前に前記第2食のパラメータの組を比較する、請求項17〜20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記マーカーが、前記被験者の呼気中に存在することによって検出される、請求項17〜21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
前記マーカーが、前記被験者の体内に存在することによって検出される、請求項17〜21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
前記マーカーが、前記被験者の胃腸管に存在することによって検出される、請求項17〜24のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
前記パラメータの組が:
t1/2;
tlag;
GEC;
CPDR;および
時間の関数としてDoBのプロット下の積分、
を含んでなる、請求項17〜24のいずれか1項に記載の装置。
【請求項26】
被験者の胃調節の診断をするためのキットであって:
第1所定体積および第1所定胃滞留特性を有する第1食をマーキングするためのある量の物質;
第2所定体積および第2所定胃滞留特性を有する第2食をマーキングするためのある量の物質;
前記第1食および前記第2食の調製に関連する情報を供するプロトコール、
を含んでなるキット。
【請求項27】
前記プロトコールが、前記第1食および前記第2食の前記被験者に対する投与に関連する情報をも供する、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
前記プロトコールが、前記第1食により測定された胃排出の結果に従って、前記第2食が摂取される時間点に関連する情報をも提供する、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
前記第1食および第2食の少なくとも1つを調製するための物質をも含んでなる、請求項26に記載の被験者における胃調節の診断のためのキット。
【請求項30】
呼気回収装置をも含んでなる、請求項26に記載の被験者における胃調節の診断のためのキット。
【請求項31】
被験者における胃腸状態の少なくとも1つを特定するための呼気検査装置であって、当該装置は:
標識した基質の摂取後に該被験者から呼気を回収するための呼気回収装置;および
前記被験者の呼気中の前記マーキングされた基質の生成物を検出するためのガス分析装置、
を含んでなり;
ここで前記呼気検査装置および前記マーキングされた基質は、前記被験者に関連した胃腸情報を提供する呼気検査が可能なグループから選択される第1呼気検査を行うために適合され;
そして前記呼気検査装置および前記マーキングされた基質も、少なくとも前記第1呼気検査の結果に従い、前記呼気検査のグループから選択される第2呼気検査を少なくとも行うように適合され、従って、前記被験者の胃腸状態が少なくとも1つの前記呼気検査の結果から特定される装置。
【請求項32】
前記胃腸状態が消化不良および過敏性腸症候群の少なくとも1つを含んでなる、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記消化不良が、胃排出障害、胃調節障害、およびヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染の少なくとも1つから選択される請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記過敏性腸症候群が、糖吸収不良障害、細菌過剰増殖、およびオレセカル(orececal)経過時間障害の少なくとも1つから生じる、請求項32に記載の装置。
【請求項35】
前記糖吸収不良障害が、ラクトース不耐性(intolerance)、フルクトース不耐性、スクロース不耐性およびマルトース不耐性の少なくとも1つである、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
被験者の胃排出の特定をするための呼気検査装置であって、当該装置は:
ガス回収装置;
回収された呼気を分析するためのガス分析装置;および
計算システム、
を含んでなり、
ここで、該ガス回収装置は、マーカーを含んでなる検査食であって、その副生成物が被験者の胃からの当該マーカーの排出の速度に従って被験者の呼気中に吐き出される検査食を被験者へ投与した後に該被験者から呼気サンプルを回収し;
前記分析は本質的に連続的に行われ;そして
該計算システムは、呼気検査が進むにつれ、前記被験者の、t1/2、tlag、デルタオーバーベースライン(DoB)曲線強度、時間の関数として該DoBプロット下の積分、および胃排出係数パラメータ(GEC)の少なくとも1つを計算し;
該呼気検査装置は、前記パラメータの少なくとも1つの最終推定値を特定し、そして前記パラメータが、前記パラメータに関する公知の標準から有意に離れているかどうかを特定することによって胃排出障害の兆候を供する装置。
【請求項37】
前記兆候は、前記被験者が呼気サンプルを前記分析装置に対して提供する間に前記被験者における胃排出障害の兆候が供される、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
前記兆候が、前記被験者の呼気のオン・ゴーイング分析により前記被験者における胃排出障害の兆候が供される、請求項36に記載の装置。
【請求項39】
同位体呼気検査のための基質であって、同位体標識された物質をマイクロカプセル化コーティング物質中に含んでなり、ここで該マイクロカプセル化コーティング物質の特性は、前記同位体標識された物質が胃腸管の所定の部分において放出されるように選択される基質。
【請求項40】
前記マイクロカプセル化コーティング物質は、それが通過する環境のpH値により破壊されて同位体標識された物質を放出するように選択される、請求項39に記載の基質。
【請求項41】
前記マイクロカプセル化コーティング物質は、それが被験者の胃を離れた後のみに破壊されて同位体標識された物質を放出するように選択される、請求項40に記載の基質。
【請求項42】
前記同位体標識された物質が十二指腸通過を特定するためのマーカーとして使用されている、請求項41に記載の基質。
【請求項43】
前記マイクロカプセル化コーティング物質は、それが通過する酵素環境から生じる酵素活性の効果の下で破壊されて同位体標識された物質を放出するように選択される、請求項39に記載の基質。
【請求項44】
前記酵素が、膵臓および胆嚢の少なくとも1つによって分泌されるものであり、従って前記同位体標識された物質が十二指腸通過を特定するためのマーカーとして使用されている、請求項43に記載の基質。
【請求項45】
前記マイクロカプセル化コーティング物質は従って、それが前記同位体標識された物質よりも一層容易に、投与された食に対して結合することができる、請求項39に記載の基質。
【請求項46】
被験者の胃調節の特定における第1および第2液状食の組の使用であって、前記第1液状食は第1所定体積を含んでなり、そして前記第2液状食は、該第1所定体積よりも大きい第2所定体積を含んでなり且つ所定の胃滞留特性を有し;
ここで前記第2液状食は該被験者に対して前記第1液状食が該被験者の胃から排出され始めた後に投与され;そして
該被験者の胃調節は、前記第2食の測定された排出速度と前記第1食の測定された排出速度の間の偏差に従い特定される、
第1および第2液状食の組の使用。
【請求項47】
前記第2所定体積は、前記被験者において胃拡張を起こすために十分である、請求項46に記載の食の組の使用。
【請求項48】
前記第2所定体積は500ml以上の液体である、請求項46に記載の食の組の使用。
【請求項49】
前記胃滞留特性が、前記第2液状食の所定のpH、所定のカロリー値、および所定の成分の1つから生じる、請求項46に記載の食の組の使用。
【請求項50】
前記所定pHが3.0未満である、請求項49に記載の食の組の使用。
【請求項51】
前記所定のカロリー値が150kcal以上である、請求項49に記載の食の組の使用。
【請求項52】
前記所定の成分が、アイソトニック成分である、請求項49に記載の食の組の使用。
【請求項53】
前記第2液状食は、前記第1食の前記被験者から排出される速度が特定されるとすぐに投与される、請求項46に記載の食の組の使用。
【請求項54】
前記第2液状食は、前記第1食の前記被験者に対する生理効果が本質的に全て特定された時間の後に特定される、請求項46に記載の食の組の使用。
【請求項55】
前記第2液状食は、前記第1食に続く日に投与されている、請求項54に記載の食の組の使用。
【請求項56】
前記排出速度が、呼気検査、X線、シンチグラフィー、コンピュータ断層撮影、ガンマイメージングおよび超音波法の少なくとも1つによって特定されている、請求項46〜55のいずれか1項に記載の食の組の使用。
【請求項57】
所定の体積を含んでなり且つ所定の胃滞留特性を有する液状食の、被験者の胃調節の特定における使用であって;
ここで、多数の正常な被験者に関する前記食の平均胃排出速度は既知であり;
そして該被験者の胃からの前記食の排出速度が測定され;
そして該被験者の胃からの前記食の排出速度と多数の正常な被験者に関する前記食の排出の平均速度との間の偏差が、該被験者の胃調節の兆候を供する、
液状食の使用。
【請求項58】
前記所定の体積が前記被験者において胃拡張を生じるために十分である、請求項57に記載の液状食の使用。
【請求項59】
前記所定の体積が500ml以上の液体である、請求項57に記載の液状食の使用。
【請求項60】
前記胃滞留特性が、前記液状食の所定のpH、所定のカロリー値、および所定の成分のうちの1つから生じる、請求項57に記載の液状食の使用。
【請求項61】
前記所定pHが3.0未満である、請求項60に記載の液状食の使用。
【請求項62】
前記所定のカロリー値が150kcal以上である、請求項61に記載の液状食の使用。
【請求項63】
前記所定の成分が、アイソトニック成分である、請求項61に記載の液状食の使用。
【請求項64】
前記排出の速度が、呼気検査、シンチグラフィー、X線コンピュータ断層撮影、ガンマイメージングおよび超音波法の1つによって特定されている、請求項57〜63のいずれか1項に記載の液状食の使用。
【請求項65】
所定の体積を含んでなり且つ所定の胃滞留特性を有する同位体標識された液状食の、被験者の胃内圧に対する食の体積の効果を特定するための使用であって;
該被験者の胃からの前記食の排出速度が、多彩な所定体積の食に関して、該被験者の呼気における前記食の同位体標識された生成物を検出するために行われる呼気検査によって特定される、同位体標識された液状食の使用。
【請求項66】
被験者における胃腸障害を特定するための、該被験者に対して投与される食の使用であって、該食は少なくとも第1および第2マーカー物質を含んでなり、従って前記第1物質は一般に該被験者の胃において吸収されることはなく、そして所定のガスを腸内細菌の存在下で放出し、そして前記第2物質は従って、該被験者の胃腸管内で前記食の位置を示し;
ここで前記被験者における前記所定のガスの生成は、呼気検査によって検出され、そして被験者内の所定のガスが生成される位置が第2マーカー物質によって特定される、食の使用。
【請求項67】
前記第2マーカー物質の副生成物が、呼気検査によっても検出され、従って、前記被験者の胃腸管における前記所定のガス生成の位置が、前記被験者の呼気における前記所定のガスの出現と前記マーカー物質の副生成物の出現の時間的関係によって特定される、請求項66に記載の食の使用。
【請求項68】
前記第2マーカー物質が同位体炭素により標識され、そして前記副生成物が同位体標識された二酸化炭素である、請求項67に記載の食の使用。
【請求項69】
前記第1物質が前記被験者の小腸において代謝される糖であり、従って前記第2マーカー物質の検出の時間に対する前記所定のガスの検出の時間が、前記小腸における細菌過剰増殖の存在を特定するために使用される、請求項66〜68のいずれか1項に記載の使用。
【請求項70】
前記第2物質が前記被験者の小腸において代謝される標識された糖でもあり、従って、前記被験者の呼気における所定のガスおよび前記第2マーカー物質の副生成物の同時出現は一般に、前記被験者における細菌過剰増殖の存在の兆候である、請求項69に記載の食の使用。
【請求項71】
前記第2物質が前記被験者の小腸において代謝される標識された糖でもあり、従って、前記被験者の呼気における前記第2マーカー物質の、副生成物の、前記所定のガスが出現する有意に前の出現は一般に、前記被験者における細菌過剰増殖の不在の兆候である、請求項69に記載の食の使用。
【請求項72】
前記第1物質がグルコースおよびラクトースの少なくとも1つである、請求項69〜71のいずれか1項に記載の物質の使用。
【請求項73】
前記第2物質が標識された酢酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム、グルコース、アセチルロイシンプローブ、またはマイクロカプセル化標識基質の少なくとも1つである、請求項69に記載の物質の使用。
【請求項74】
前記第1物質が前記被験者の小腸において一般に代謝される標識される糖でもあり、従って、前記所定のガスの、前記小量の第2マーカー物質の検出と本質的に同時の検出が、前記被験者のオロカエカル(orocaecal)経過時間を特定するために使用される、請求項66〜68のいずれか1項に記載の食の使用。
【請求項75】
前記第1物質が前記被験者の小腸において代謝されると考えられるグループの糖であり、従って、それは本質的に吸収されて前記被験者の結腸に至り、結腸性細菌の存在により前記所定のガスが生成され、従って、前記第2マーカー物質の検出の時間に対する前記所定のガスの検出の時間が、前記被験者における糖不耐性を特定するために使用される、請求項66〜68のいずれか1項に記載の食の使用。
【請求項76】
前記第2物質は前記結腸において一般に吸収される同位体標識された物質であり、従って前記第2マーカー物質の標識された副生成物の検出と本質的に同時である、前記所定のガスの検出は、前記被験者における糖不耐性を特定するために使用される、請求項75に記載の食の使用。
【請求項77】
前記第2物質は炭素同位体で標識されたキシロースであり、そして前記副生成物は同位体標識された二酸化炭素である、請求項76に記載の食の使用。
【請求項78】
前記第2物質が一般に小腸で吸収される同位体標識された物質であり、従って前記所定のガスおよび前記第2マーカー物質の標識された副生成物の検出の相対的な時間および量は、前記被験者が糖不耐性および細菌過剰増殖の1つまたは両方を罹患しているかどうかを特定するために使用されている、請求項75に記載の食の使用。
【請求項79】
前記第2マーカー物質の前記標識された副生成物の検出と本質的に同時に生じる、前記細菌の存在下での小部分の前記第1物質に特徴的な、前記小量の所定のガスの検出は、前記被験者が細菌過剰増殖を罹患していること示す、請求項78に記載の食の使用。
【請求項80】
前記第2マーカー物質の前記標識された副生成物の検出ではなく前記所定のガスの検出は、前記被験者が糖不耐性を罹患していることを示す、請求項78に記載の食の使用。
【請求項81】
前記第2マーカー物質の前記標識された副生成物の検出と本質的に同時に生じる、前記細菌の存在下での大部分の前記第1物質に特徴的な、前記大量の所定のガスの検出は、前記被験者が糖不耐性および細菌過剰増殖を罹患していること示す、請求項78に記載の食の使用。
【請求項82】
前記糖がラクトース、フルクトース、マルトースおよびスクロースの少なくとも1つである、請求項75〜81のいずれか1項に記載の食の使用。
【請求項83】
前記所定のガスが水素およびメタンの少なくとも1つである、請求項66〜82のいずれか1項に記載の食の使用。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2006−508334(P2006−508334A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−517167(P2004−517167)
【出願日】平成15年3月5日(2003.3.5)
【国際出願番号】PCT/IL2003/000174
【国際公開番号】WO2004/002307
【国際公開日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願人】(503055299)オリディオン ブレシド リミティド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年3月5日(2003.3.5)
【国際出願番号】PCT/IL2003/000174
【国際公開番号】WO2004/002307
【国際公開日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願人】(503055299)オリディオン ブレシド リミティド (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]