説明

背光表示パネル及びその製造方法

【課題】表示プレートとの接触干渉を防止しながら、非背光時における表示プレートの高い視認性及び加飾性と、背光時における表示プレートの高い視認性及び加飾性と、の両立を達成することができる背光表示パネル及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】パネル背面側にLED2を配置し、該LED2からの光をパネルの一部分から表面側へ透過させて背光表示する前面パネルP1である。光透過性樹脂により二次元平面に成形した光透過性樹脂基材3と、光透過性樹脂基材3の表面側に被覆され、光の透過を遮る塗膜層4と、塗膜層4から光透過性樹脂基材3の途中位置まで厚み方向に切除したカット凹部5と、カット凹部5の内側領域に沈み込み状態で接合固定された電着画像表示プレート6と、を備える。そして、電着画像表示プレート6の外周位置に、電着画像表示プレート6の外周形状に沿うスリット状の光透過ギャップ7を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル背面側の光源からの光を、パネルの一部分から表面側へ透過させて背光表示する背光表示パネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パネル背面側の光源からの光を、パネルの一部分から表面側へ透過させて背光表示する背光表示パネルとしては、透光性を有する成形体の表面側にアンダーコート層とトップコート層が形成され、アンダーコート層とトップコート層の表示部分に相当する所を共にレーザーカットして表示部を形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−14967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の背光表示パネルにあっては、表示部全体について、透光性を有する成形体を残してレーザーカットにより切除し、光源からの光を表示部分に透過させるもの、つまり、文字等による表示部そのものをくり抜き、くり抜いた表示部全体を背光表示するものである。このため、昼間等で光源から背光が無い非背光時には、表示部分を注視しても、トップコート層の色をバックにして、透光性を有する成形体の色や影による表示部がカット溝の奥側に僅かに確認できるだけである。つまり、非背光時と背光時とでは視認性に大きな落差を持つオン/オフ的な表示形態となり、この結果、非背光時における表示部の視認性に劣る、という問題があった。
【0004】
一方、家電製品等では、メーカー商標名や商品名等による表示部を立体的に突出させた表示プレートを、パネル表面に貼り付けたものが一般的に知られている。しかし、この場合、夜間等の暗い環境下においては、照明を当てない限り表示プレートが暗闇にかすみ、表示部の視認性に劣る。加えて、表示部が立体的に突出しているため、人の手や物がパネル表面に沿って移動すると接触干渉しやすく、この接触干渉により、表示プレートが摩耗したり、表示プレートの一部が損傷したり、表示プレートが脱落してしまう、という問題があった。特に、エッジが鋭い表示プレートの場合、接触干渉の問題が顕著となる。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、表示プレートとの接触干渉を防止しながら、非背光時における表示プレートの高い視認性及び加飾性と、背光時における表示プレートの高い視認性及び加飾性と、の両立を達成することができる背光表示パネル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、パネル背面側に光源を配置し、該光源からの光をパネルの一部分から表面側へ透過させて背光表示する背光表示パネルにおいて、
光透過性樹脂により二次元平面あるいは三次元曲面に成形した光透過性樹脂基材と、
前記光透過性樹脂基材の表面側に被覆され、光の透過を遮る遮光性被覆層と、
前記遮光性被覆層から前記光透過性樹脂基材の途中位置まで厚み方向に切除したカット凹部と、
前記カット凹部の内側領域に沈み込み状態で接合固定された表示プレートと、を備え、
前記表示プレートの外周位置に、表示プレートの外周形状に沿うスリット状の光透過ギャップを形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明の背光表示パネルは、表示プレートがカット凹部の内側領域に沈み込み状態で接合固定されているため、パネル表面からの表示プレートの突出が抑えられ、人の手や物と表示プレートとの接触干渉が防止される。
光源から背光が無い非背光時には、光透過ギャップによる輪郭の隙間部分を通して表示プレートを立体的に視認することができる。このため、非背光時、高い視認性が得られると共に、遮光性被覆層の色や質感等と表示プレートの色や質感等を異ならせ、「象嵌」としての工芸品的付加価値を与えることにより加飾性を得ることができる。
また、光源から背光が照射される背光時には、表示プレートの外周形状に沿った光透過ギャップを透過する光により、遮光性被覆層の色をバックにして表示プレートが、囲まれた光の中に浮き上がって見える。このため、背光時、表示プレートの輪郭を光らせるという浮き出し演出効果により視認性に優れると共に、光透過ギャップを透過する光の色を適切に選択するという色の演出効果により加飾性を得ることができる。
この結果、表示プレートとの接触干渉を防止しながら、非背光時における表示プレートの高い視認性及び加飾性と、背光時における表示プレートの高い視認性及び加飾性と、の両立を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の背光表示パネル及びその製造方法を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例4に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1のデジタルビデオデッキの前面パネル(背光表示パネルの一例)を示す正面図である。図2は実施例1の前面パネルのメーカー商標名を表示した部分の一部拡大図である。図3は実施例1の前面パネルのメーカー商標名を表示した部分の図2のA−A線拡大断面図である。
【0010】
実施例1における前面パネルP1は、図1に示すように、パネル本体1のパネル背面側に図外の光源を配置し、該光源からの光をパネルのメーカー商標名部分1aと商品名部分1bから表面側へ透過させて背光表示する背光表示パネルである。なお、図1において、1cは電源スイッチ穴、1dはディスク脱着穴、1eは動作情報表示穴、1fは操作ボタン穴である。
【0011】
前記前面パネルP1は、図2及び図3に示すように、LED2(光源)と、光透過性樹脂基材3と、塗膜層4(遮光性被覆層)と、カット凹部5と、電着画像表示プレート6(表示プレート)と、光透過ギャップ7と、を備えている。
【0012】
前記LED2は、発光ダイオード(例えば、青色発光ダイオード)であり、メーカー商標名部分1a(ABCDEと表記した部分)と商品名部分1b(HD−DVDと表記した部分)に対応するパネル背面側に配置される。なお、「LED(Light Emitting Diodeの略)」とは、電流を流すと発光する半導体素子の一種である。
【0013】
前記光透過性樹脂基材3は、透明アクリル樹脂等のような光透過性樹脂により二次元平面に成形したものである。
【0014】
前記塗膜層4は、図3に示すように、光透過性樹脂基材3の表面側に被覆され、光の透過を遮る遮光性被覆層である。実施例1の塗膜層4は、遮光性を有する塗料(例えば、黒色塗料)を光透過性樹脂基材3の表面に塗布することで形成される。
【0015】
前記カット凹部5は、図3に示すように、パネル表面側から塗膜層4を貫通し、塗膜層4から光透過性樹脂基材3の途中位置まで厚み方向に切除することで形成される。このカット凹部5の内周形状は、図2及び図3に示すように、電着画像表示プレート6の外周形状より大きな形状とし、内周形状に囲まれる面領域を切除している。
【0016】
前記電着画像表示プレート6は、図3に示すように、カット凹部5の底面に接着剤層8を介して接合固定されている。この電着画像表示プレート6は、電気分解成形法により作成された金属メッキ層6bを表面に有し、シルバーメタリック調の金属質感を出した表示プレートとしている。
【0017】
前記光透過ギャップ7は、図2及び図3に示すように、電着画像表示プレート6をカット凹部5の底面に接合固定した状態で、電着画像表示プレート6の外周面6aとカット凹部5の内周面5aの間に、電着画像表示プレート6の外周形状(図2の場合は「A」の字形状)に沿ってスリット状に形成されたギャップである。
【0018】
前記カット凹部5と前記電着画像表示プレート6は、カット凹部5の深さの設定と電着画像表示プレート6と接着剤層8(接合層)の合計厚みの設定により、電着画像表示プレート6をカット凹部5の底面に接合固定した状態で、プレート表面の高さ寸法からパネル表面の高さ寸法を差し引いた寸法差を、-2000μm〜+50μmの範囲に設定している。ここで、下限値である-2000μmは、非背光時に電着画像表示プレート6の視認性を確保できるプレート沈み込み量の限界値である。また、上限値である+50μmは、カット凹部5の加工誤差や接着剤層8の厚み誤差を考慮して定めた値であり、この値は、目視によっては突出を認識できない程度の値である。なお、好ましくは、パネル表面からプレート表面が突出することのなく、確実なプレート沈み込み状態を実現できる-200μm〜+0μmの範囲による設定とする。
【0019】
前記光透過ギャップ7は、電着画像表示プレート6の外周形状の設定とカット凹部5の内周形状の設定により、ギャップ幅GWを100μm〜2000μmの範囲に設定している。ここで、下限値である100μmは、光透過ギャップ7を透過する光を十分に確保できる限界により定めた値である。また、上限値である2000μmは、散光により電着画像表示プレート6の浮き出し演出性が低下し始める限界により定めた値である。なお、好ましくは、光透過ギャップ7を透過する光による電着画像表示プレート6の高い浮き出し演出効果が発揮される200μm〜1000μmの範囲による設定とする。
【0020】
次に、実施例1における前面パネルP1の製造方法について説明する。
図4は実施例1における前面パネルP1の製造方法を示す工程図であり、(a)は被覆工程を示し、(b)はレーザーカット工程を示し、(c)は表示プレート接合工程を示す。
【0021】
実施例1の前面パネルP1の製造方法は、図4に示すように、被覆工程と、レーザーカット工程と、表示プレート接合工程を有する。以下、各工程について説明する。
【0022】
前記被覆工程は、図4(a)に示すように、二次元平面に成形した光透過性樹脂基材3の表面側に遮光性被覆層としての塗膜層4を形成する工程である。この被覆工程では、遮光性を有する塗料(例えば、黒色塗料)により表面塗装を施すことで、光透過性樹脂基材3の表面を被覆する塗膜層4を形成する。
【0023】
前記レーザーカット工程は、図4(b)に示すように、遮光性被覆層である塗膜層4と光透過性樹脂基材3によるパネル材の表面側の塗膜層4から光透過性樹脂基材3の途中位置まで厚み方向にレーザー光により切除してカット凹部5を形成する工程である。
このカット工程では、カット凹部5の内周形状を、電着画像表示プレート6の外周形状より大きな形状とし、カット凹部5の内周形状に囲まれる面領域をレーザー光により切除している。なお、カット凹部5の底面形状は、多少の凹凸を許容した平面形状とする。
ここで、カット加工法としてレーザー光による加工法を選択したのは、加工精度、加工速度、加工再現性の高さによる。例えば、炭酸ガスレーザー光で、パワー(光エネルギー)を調整することにより、カット凹部5を高い寸法精度で加工することができる。
【0024】
前記表示プレート接合工程は、図4(c)に示すように、電着画像表示プレート6の裏面に接着剤を塗布しておき、カット凹部5の底面に電着画像表示プレート6を接合固定する工程である。
電着画像表示プレート6は、別製造ラインにおいて、電気分解成形法により予め製造されているものであり、表面にシルバーメタリック調の金属質感を出す金属メッキ層6bを有する。
この表示プレート接合工程では、電着画像表示プレート6の外周面6aとカット凹部5の内周面5aの間に、電着画像表示プレート6の外周形状に沿うスリット状の光透過ギャップ7を確保しつつ電着画像表示プレート6をカット凹部5の底面に接合固定する。
【0025】
次に、実施例1の前面パネルP1を採用したデジタルビデオデッキによる作用を、[接触干渉防止作用]と[非背光時の視認・加飾作用]と[背光時の視認・加飾作用]に分けて説明する。
【0026】
[接触干渉防止作用]
デジタルビデオデッキ等の家電製品では、メーカー商標名や商品名等による表示部を立体的に突出させた表示プレートを、パネル表面に貼り付けたものが一般的に知られている。しかし、この場合、夜間等の暗い環境下においては、照明を当てない限り表示プレートが暗闇にかすみ、表示部の視認性に劣る。加えて、表示部が立体的に突出しているため、人の手や物がパネル表面に沿って移動すると接触干渉しやすい。
【0027】
これに対し、実施例1の前面パネルP1は、電着画像表示プレート6をカット凹部5の底面に沈み込み状態にて接合固定するものであるため、パネル表面からの電着画像表示プレート6の突出が抑えられ、例えば、表示文字等のエッジが鋭くても、人の手や物と電着画像表示プレート6との接触干渉が防止される。
【0028】
そして、この接触干渉防止作用により、電着画像表示プレート6が摩耗したり、電着画像表示プレート6の一部が損傷したり、電着画像表示プレート6が脱落してしまうことを回避することができる。
【0029】
[非背光時の視認・加飾作用]
実施例1の前面パネルP1は、電着画像表示プレート6の外周面6aとカット凹部5の内周面5aの間に、電着画像表示プレート6の外周形状に沿うスリット状の光透過ギャップ7が形成されている。
【0030】
したがって、光源であるLED2からの背光が無い非背光時には、光透過ギャップ7による隙間部分を通して電着画像表示プレート6の外周面6aが垣間見え、電着画像表示プレート6を立体的に視認することができる。このため、非背光時であっても、一見するだけで電着画像表示プレート6に表示されている表示内容を認識できるという高い視認性が得られる。
【0031】
実施例1の前面パネルP1は、光透過性樹脂基材3を彫り、その彫った部分に他の電着画像表示プレート6を嵌め込んでいる。このため、基材を彫り、その彫った部分に他の素材を嵌め込む「象嵌」による加飾体ということができる。ちなみに、「象嵌」の「象」は「形を切り抜く」という意味があり、「嵌」は[嵌め込む]という意味がある。
【0032】
しかも、実施例1の前面パネルP1は、塗膜層4が黒っぽい塗装による色と質感であるのに対し、電着画像表示プレート6がシルバーメタリック色により金属質感を持たせている。
【0033】
したがって、光源であるLED2からの背光が無い非背光時には、後退色で柔らかい質感による塗膜層4を背景とし、進出色で硬い質感による電着画像表示プレート6を引き立てることで、「象嵌」としての工芸品的付加価値(加飾性)を与えることができる。
【0034】
[背光時の視認・加飾作用]
実施例1の前面パネルP1は、電着画像表示プレート6の外周面6aとカット凹部5の内周面5aの間に、電着画像表示プレート6の外周形状に沿うスリット状の光透過ギャップ7が形成されている。
【0035】
したがって、光源であるLED2から背光が照射される背光時には、電着画像表示プレート6の外周形状に沿った光透過ギャップ7を透過する光により、塗膜層4の黒っぽい色をバックにして電着画像表示プレート6が、囲まれた光の中に浮き上がって見える。このため、背光時、電着画像表示プレート6の輪郭を光らせるという浮き出し演出効果により視認性に優れる。
【0036】
実施例1の前面パネルP1は、パネル背面からのバックライトとして、青色の光を発するLED2を用いている。
【0037】
したがって、光透過ギャップ7を透過する光の色が強い青色光、塗膜層4が淡い青色反射光、電着画像表示プレート6が輝く青色反射光、という光の色合いコントラストによる演出効果で、加飾性を得ることができる。
【0038】
次に、効果を説明する。
実施例1の前面パネルP1及びその製造方法にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0039】
(1) パネル背面側に光源(LED2)を配置し、該光源からの光をパネルの一部分から表面側へ透過させて背光表示する前面パネルP1において、光透過性樹脂により二次元平面に成形した光透過性樹脂基材3と、前記光透過性樹脂基材3の表面側に被覆され、光の透過を遮る遮光性被覆層(塗膜層4)と、前記遮光性被覆層から前記光透過性樹脂基材3の途中位置まで厚み方向に切除したカット凹部5と、前記カット凹部5の内側領域に沈み込み状態で接合固定された表示プレート(電着画像表示プレート6)と、を備え、前記表示プレートの外周位置に、表示プレートの外周形状に沿うスリット状の光透過ギャップ7を形成したため、表示プレートとの接触干渉を防止しながら、非背光時における表示プレートの高い視認性及び加飾性と、背光時における表示プレートの高い視認性及び加飾性と、の両立を達成することができる。
【0040】
(2) 前記表示プレート(電着画像表示プレート6)は、プレート表面の高さ寸法からパネル表面の高さ寸法を差し引いた寸法差を、-2000μm〜+50μmの範囲に設定したため、上記(1)の効果に加え、表示プレートに対する接触干渉を確実に防止することができると共に、「象嵌」により加飾性を高めることができる。
【0041】
(3) 前記光透過ギャップ7は、そのギャップ幅GWを100μm〜2000μmの範囲に設定したため、上記(1)または(2)の効果に加え、背光時、光透過ギャップ7を透過する光による表示プレート(電着画像表示プレート6)の浮き出し演出性が確保され、高い視認性を得ることができる。
【0042】
(4) 前記カット凹部5は、表示プレート(電着画像表示プレート6)の外周形状より大きな内周形状を持つ面領域を、前記光透過性樹脂基材3の途中位置まで厚み方向に切除して形成し、前記表示プレートは、前記カット凹部5の底面に接合固定し、前記光透過ギャップ7は、前記表示プレートの外周面と前記カット凹部5の内周面の間に形成したため、上記(1)乃至(3)の何れかの効果に加え、スリット状の光透過ギャップ7を通し、深く沈み込んだ位置に表示プレートの外周面を垣間見ることができる。
【0043】
(5) 前記遮光性被覆層は、遮光性を有する塗料を光透過性樹脂基材3の表面に塗布することで形成された塗膜層4であるため、上記(1)乃至(4)の何れかの効果に加え、色の選択自由度が高く、簡単な表面塗装を施すだけで、光透過性樹脂基材3の表面に遮光性被覆層を形成することができる。
【0044】
(6) 前記表示プレートは、電気分解成形法により作成された電着画像表示プレート6であるため、上記(1)乃至(5)の何れかの効果に加え、視認性と加飾性に優れる金属質感を持たせた表示プレートとすることができる。
【0045】
(7) パネル背面側に光源(LED2)を配置し、該光源からの光をパネルの一部分から表面側へ透過させて背光表示する前面パネルP1の製造方法において、二次元平面に成形した光透過性樹脂基材3の表面側に遮光性被覆層(塗膜層4)を形成する被覆工程と、前記遮光性被覆層と前記光透過性樹脂基材3によるパネル材の表面側の遮光性被覆層から光透過性樹脂基材3の途中位置まで厚み方向にレーザー光により切除してカット凹部5を形成するレーザーカット工程と、前記カット凹部5の内側領域に表示プレート(電着画像表示プレート6)を沈み込み状態で接合固定する表示プレート接合工程と、を備え、前記表示プレートの外周位置に、表示プレートの外周形状に沿うスリット状の光透過ギャップ7を形成したため、表示プレートとの接触干渉を防止しながら、非背光時における表示プレートの高い視認性及び加飾性と、背光時における表示プレートの高い視認性及び加飾性と、の両立を達成する前面パネルP1の製造方法を提供することができる。
【0046】
(8) 前記レーザーカット工程では、表示プレート(電着画像表示プレート6)の外周形状より大きな内周形状を持つ面領域を、前記光透過性樹脂基材3の途中位置まで厚み方向に切除してカット凹部5を形成し、前記表示プレート接合工程では、表示プレートをカット凹部5の底面に接合固定するため、上記(7)の効果に加え、光透過ギャップ7を表示プレートの外周面とカット凹部5の内周面の間に形成することができる。
【実施例2】
【0047】
実施例2は、本発明の背光表示パネルを自動車用シフトノブの操作表示パネルに適用した例である。
【0048】
まず、構成を説明する。
図5は実施例2の自動車用シフトノブの操作表示パネル(背光表示パネルの一例)を示す平面図である。図6は実施例2の操作表示パネルの変速段数(1速段)を表示した部分の一部拡大図である。図7は実施例2の操作表示パネルの変速段数(1速段)を表示した部分の図6のB−B線拡大断面図である。
【0049】
実施例2における操作表示パネルP2は、図5に示すように、自動車用シフトノブ10内の頂面部分に嵌め込みにて取り付け、パネル背面側に図外の光源を配置し、該光源からの光をパネル本体11の変速段表示部分11aから表面側へ透過させて背光表示する背光表示パネルである。
【0050】
前記操作表示パネルP2は、図6及び図7に示すように、LED12(光源)と、光透過性樹脂基材13と、加飾層14(遮光性被覆層)と、カット凹部15と、樹脂製装飾表示プレート16(表示プレート)と、光透過ギャップ17と、を備えている。
【0051】
前記LED12は、発光ダイオード(例えば、青色発光ダイオード)であり、変速段表示部分11aに対応するパネル背面側に配置される。
【0052】
前記光透過性樹脂基材13は、透明アクリル樹脂等の光透過性樹脂により三次元曲面に成形したものである。
【0053】
前記加飾層14は、図7に示すように、光透過性樹脂基材13の表面側に被覆され、光の透過を遮る遮光性被覆層である。実施例2の加飾層14は、予め木目意匠を施したフィルムを加飾成形により光透過性樹脂基材13の表面に被覆することで形成される。なお、加飾層14の表面側には、透明のオーバーコート層19が被覆される。
【0054】
前記カット凹部15は、図7に示すように、パネル表面側からオーバーコート層19及び加飾層14を貫通し、加飾層14から光透過性樹脂基材13の途中位置まで厚み方向に切除することで形成される。このカット凹部15の内周形状は、図6及び図7に示すように、樹脂製装飾表示プレート16の外周形状より大きな形状とし、内周面で囲まれる面領域を光透過性樹脂基材13の途中位置まで厚み方向に切除している。
【0055】
前記樹脂製装飾表示プレート16は、図7に示すように、カット凹部15の底面に接着剤層18を介して接合固定されている。この樹脂製装飾表示プレート16は、樹脂成形法(射出成形、ブロー成形、レーザーカット成形、硬化形成型等)により得られた単色(例えば、黒色)による表示プレートとしている。
【0056】
前記光透過ギャップ17は、図6及び図7に示すように、樹脂製装飾表示プレート16をカット凹部15の底面に接合固定した状態で、樹脂製装飾表示プレート16の外周面16aとカット凹部15の内周面15aの間に、樹脂製装飾表示プレート16の外周形状(図6の場合は「1」の字形状)に沿ってスリット状に形成されたギャップである。
【0057】
前記カット凹部15と前記樹脂製装飾表示プレート16は、カット凹部15の深さの設定と樹脂製装飾表示プレート16と接着剤層18(接合層)の合計厚みの設定により、樹脂製装飾表示プレート16をカット凹部15の底面に接合固定した状態で、プレート表面の高さ寸法からパネル表面の高さ寸法を差し引いた寸法差を、実施例1と同様に、-2000μm〜+50μmの範囲(好ましくは、-200μm〜+0μmの範囲)に設定している。
【0058】
前記光透過ギャップ17は、樹脂製装飾表示プレート16の外周形状の設定とカット凹部15の内周形状の設定により、実施例1と同様に、ギャップ幅GWを100μm〜2000μmの範囲(好ましくは、200μm〜1000μmの範囲)に設定している。
【0059】
次に、実施例2における操作表示パネルP2の製造方法について説明する。
図8は実施例2における操作表示パネルP2の製造方法を示す工程図であり、(a)はフィルム浮かべ工程を示し、(b)はフィルムの水圧転写工程を示し、(c)は基材取り出し工程を示し、(d)は転写部のコーティング工程を示し、(e)はレーザーカット工程を示し、(f)は表示プレート接合工程を示す。
【0060】
実施例2の操作表示パネルP2の製造方法は、図8に示すように、フィルム浮かべ工程と、フィルムの水圧転写工程と、基材取り出し工程と、転写部のコーティング工程と、レーザーカット工程と、表示プレート接合工程を有する。以下、各工程について説明する。
【0061】
前記フィルム浮かべ工程は、図8(a)に示すように、予め木目意匠を施した水溶性印刷フィルムを水槽に浮かべる固定である。
【0062】
前記フィルムの水圧転写工程は、図8(b)に示すように、三次元曲面に成形した光透過性樹脂基材13を水溶性印刷フィルムの上から水槽に沈め、水溶性印刷フィルムを水圧にて光透過性樹脂基材13に転写する工程である。
【0063】
前記基材取り出し工程は、図8(c)に示すように、水溶性印刷フィルムを転写した光透過性樹脂基材13を水槽から取り出す工程である。この工程で、水溶性印刷フィルムは、光透過性樹脂基材13に転写されて加飾層14となる。
【0064】
前記転写部のコーティング工程は、図8(d)に示すように、転写したフィルム表面を保護及び光沢仕上げのためにコーティングしてオーバーコート層19を形成する工程である。
すなわち、実施例2では、水圧転写加飾工法により、光透過性樹脂基材13の表面を被覆する加飾層14を形成する。
【0065】
前記レーザーカット工程は、図8(e)に示すように、オーバーコート層19及び加飾層14と光透過性樹脂基材13によるパネル材の表面側のオーバーコート層19から光透過性樹脂基材13の途中位置まで厚み方向にレーザー光により切除してカット凹部15を形成する工程である。
このカット工程では、カット凹部15の内周形状を、樹脂製装飾表示プレート16の外周形状より大きな形状とし、内周面で囲まれる面領域をレーザー光により光透過性樹脂基材13の途中位置まで厚み方向に切除している。なお、カット凹部15の底面形状は、多少の凹凸を許容した平面形状とする。
この実施例2でも、実施例1と同じ理由により、カット加工法としてレーザー光による加工法を選択している。
また、樹脂製装飾表示プレート16は、別製造ラインにおいて、樹脂成形法により予め製造されている。
【0066】
前記表示プレート接合工程は、図8(f)に示すように、樹脂製装飾表示プレート16の裏面に接着剤を塗布しておき、カット凹部15の底面に樹脂製装飾表示プレート16を接合固定する工程である。
この表示プレート接合工程では、樹脂製装飾表示プレート16の外周面16aとカット凹部15の内周面15aの間に、樹脂製装飾表示プレート16の外周形状に沿うスリット状の光透過ギャップ17を確保しつつ樹脂製装飾表示プレート16をカット凹部15の底面に接合固定する。
【0067】
次に、実施例2における操作表示パネルP2を採用した自動車用シフトノブ10による作用を、[非背光時の視認・加飾作用]と[背光時の視認・加飾作用]に分けて説明する。なお、[接触干渉防止作用]については、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0068】
[非背光時の視認・加飾作用]
実施例2の操作表示パネルP2は、樹脂製装飾表示プレート16の外周面16aとカット凹部15の内周面15aの間に、樹脂製装飾表示プレート16の外周形状に沿うスリット状の光透過ギャップ17が形成されている。
【0069】
したがって、光源であるLED12からの背光が無い非背光時には、光透過ギャップ17による隙間部分を通して樹脂製装飾表示プレート16の外周面16aが垣間見え、樹脂製装飾表示プレート16を立体的に視認することができる。加えて、加飾層14に施された木目意匠のバックに対し、樹脂製装飾表示プレート16の黒っぽい単色表示が際立つ。このため、非背光時であっても、一見するだけで樹脂製装飾表示プレート16に表示されている表示内容を認識できるという高い視認性が得られる。
【0070】
実施例2の操作表示パネルP2は、加飾層14に木目意匠を施しているため、外観上、「木工象嵌」による加飾体ということができる。
しかも、実施例2の操作表示パネルP2は、加飾層14が木肌色で木目調により暖かい質感を持たせたものであるに対し、樹脂製装飾表示プレート16が黒っぽい単色により冷たい質感を持たせている。
【0071】
したがって、光源であるLED12からの光が遮断されている非背光時には、木目調の暖かい質感による加飾層14を背景とし、単色で冷たい質感による樹脂製装飾表示プレート16を引き立てることで、「木工象嵌」としての工芸品的付加価値(加飾性)を与えることができる。
【0072】
[背光時の視認・加飾作用]
実施例2の操作表示パネルP2は、樹脂製装飾表示プレート16の外周面16aとカット凹部15の内周面15aの間に、樹脂製装飾表示プレート16の外周形状に沿うスリット状の光透過ギャップ17が形成されている。
【0073】
したがって、光源であるLED12から背光が照射される背光時には、樹脂製装飾表示プレート16の外周形状に沿った光透過ギャップ17を透過する光により、加飾層14の木肌色をバックにして樹脂製装飾表示プレート16が、囲まれた光の中に浮き上がって見える。このため、背光時、樹脂製装飾表示プレート16の輪郭を光らせるという浮き出し演出効果により視認性に優れる。
【0074】
実施例2の操作表示パネルP2は、パネル背面からのバックライトとして青色の光を発するLED12を用いている。
したがって、光透過ギャップ17を透過する光で黒っぽい樹脂製装飾表示プレート16の輪郭を明るく照らし、加飾層14のうち、樹脂製装飾表示プレート16の輪郭部分の木目調を部分的に淡く照らし出すという、光による色のコントラスト演出効果により加飾性を得ることができる。
【0075】
次に、効果を説明する。
実施例2の操作表示パネルP2及びその製造方法にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0076】
(9) 前記遮光性被覆層は、予め木目意匠を施したフィルムを加飾成形により光透過性樹脂基材13の表面に被覆することで形成される加飾層14であるため、(5)を除く実施例1の効果に加え、木目意匠を施した加飾層14による「木工象嵌」の実現により、加飾性を高めることができる。
【0077】
(10) 前記表示プレートは、樹脂成形法により作成された樹脂製装飾表示プレート16であるため、(6)を除く実施例1の効果に加え、容易な樹脂成形法により樹脂製装飾表示プレート16を得ることができる。
【実施例3】
【0078】
実施例3は、光透過ギャップのギャップ溝内を透明性樹脂により充填した背光表示パネルの例である。以下、実施例1をベースとして実施例3の背光表示パネルの製造方法を説明する。
【0079】
図9は実施例3における前面パネルP1’(背光表示パネルの一例)の製造方法を示す工程図であり、(a)は被覆工程を示し、(b)はレーザーカット工程を示し、(c)は透明樹脂圧入工程を示し、(d)は第2のレーザーカット工程を示し、(e)は表示プレート接合工程を示す。
【0080】
実施例3の前面パネルP1’の製造方法は、図9に示すように、被覆工程と、レーザーカット工程と、透明樹脂圧入工程と、第2のレーザーカット工程と、表示プレート接合工程を有する。以下、各工程について説明する。
【0081】
前記被覆工程は、図9(a)に示すように、二次元平面あるいは三次元曲面に成形した光透過性樹脂基材3の表面側に遮光性被覆層としての塗膜層4を形成する工程である。
【0082】
前記レーザーカット工程は、図9(b)に示すように、遮光性被覆層である塗膜層4と光透過性樹脂基材3によるパネル材の表面側の塗膜層4から光透過性樹脂基材3の途中位置まで厚み方向にレーザー光により切除してカット凹部5を形成する工程である。なお、以上の2つの工程は、実施例1の製造方法と同様である。
【0083】
前記透明樹脂圧入工程は、図9(c)に示すように、レーザーカット工程によりカット凹部5を形成した後、カット凹部5に透明樹脂9(例えば、透明メジウム)を圧入する工程である。
【0084】
前記第2のレーザーカット工程は、図9(d)に示すように、透明樹脂圧入工程によりカット凹部5に充填された透明樹脂9が固化した後、レーザー光により光透過ギャップ7の部分を残し、電着画像表示プレート6の外形に合わせて切除する工程である。
【0085】
前記表示プレート接合工程は、図9(e)に示すように、透明樹脂9により囲まれたカット凹部5の底面に電着画像表示プレート6を接合固定することで、光透過ギャップ7のギャップ溝内を透明性樹脂により充填する工程である。
なお、電着画像表示プレート6は、別製造ラインにおいて、電気分解成形法により予め製造されているものであり、表面にシルバーメタリック調の金属質感を出す金属メッキ層6bを有する。
【0086】
次に、作用を説明すると、実施例3の製造方法により製造される前面パネルP1’は、図9(e)に示すように、光透過ギャップ7のギャップ溝内が、透明性樹脂9により充填されたものとなる。
したがって、実施例1の前面パネルP1の場合は、光透過ギャップ7のギャップ溝内にゴミ等が入りやすいのに対し、実施例3の前面パネルP1’の場合は、光透過ギャップ7のギャップ溝内にゴミ等が入りにくいものとなる。なお、他の作用については、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0087】
次に、効果を説明する。
実施例3の前面パネルP1’にあっては、下記の効果を得ることができる。
【0088】
(11) 前記光透過ギャップ7は、そのギャップ溝内を透明性樹脂により充填したため、実施例1,2の効果に加え、光透過ギャップ7のギャップ溝内へのゴミの入り込みを防止することができる。
【実施例4】
【0089】
実施例4は、実施例1〜実施例3がカット凹部を面領域カットとし、カット凹部の底面に表示プレートを接合固定した例であるのに対し、カット凹部を表示プレートの外周に沿う線領域カットとし、光透過性樹脂基材の表面に表示プレートを接合固定するようにした例である。
【0090】
図10は実施例4における幅の細いロゴによる金属製表示プレートを持つ背光表示パネルP3の製造方法を示す工程図であり、(a)は被覆工程を示し、(b)はレーザーカット工程を示し、(c)はマスキング及び塗膜層の除去工程を示し、(e)は固定表示プレート接合工程を示す。
【0091】
前記被覆工程は、図10(a)に示すように、光透過性樹脂基材23の表示プレート接合領域にマスキング29を貼った状態で、光透過性樹脂基材23とマスキング29の表面に塗膜層24(遮光性被覆層)を形成する工程である。ここで、マスキング29としては、表示プレート接合領域に沿ってカットしたポリエステルシート等が用いられる。また、塗膜層24は、30μm〜50μmの厚みに設定されるもので、1回の塗装厚で塗膜層24の厚みが不足する場合は、2回,3回と重ね塗装を行う。
【0092】
前記レーザーカット工程は、図10(b)に示すように、被覆工程の終了後、金属製表示プレート26の外周形状(マスキング29の外周形状)に沿った線領域のみを、レーザー光により光透過性樹脂基材3の途中位置まで厚み方向に切除してカット凹部25を形成する工程である。このカット凹部25のカット幅は、光透過ギャップ27のギャップ幅GWに一致させ、例えば、200μm〜1000μmとする。
【0093】
前記マスキング及び塗膜層の除去工程は、図10(c)に示すように、レーザーカット工程の終了後、表示プレート接合領域のマスキング29及び塗膜層24を取り除く工程である。なお、レーザーカット工程において、レーザー光によりマスキング29及び塗膜層24の外周が切断されるため、切断部分を取り除くだけで、この除去工程が達成される。
【0094】
前記表示プレート接合工程では、金属製表示プレート26の厚みを遮光性被覆層である塗膜層24の厚みとほぼ同厚(30μm〜50μmの厚み)にすると共に、金属製表示プレート26を、マスキング29及び塗膜層24を剥がした後に残ったカット凹部25に囲まれた光透過性樹脂基材23の表面に接着剤(接着剤層28)を介して接合固定する工程である。
ここで、金属製表示プレート26は、別工程にて製造されるもので、この実施例4では、金属製表示プレート26を、フォトエッチング法(金属化学腐蝕法)、または、プレス法により作成する。
【0095】
この実施例4の製造方法により製造される背光表示パネルP3は、図10(d)に示すように、カット凹部25は、金属製表示プレート26の外周形状に沿った線領域のみが、光透過性樹脂基材23の途中位置まで厚み方向に切除して形成される。金属製表示プレート26は、その厚みが塗膜層24とほぼ同厚にされると共に、カット凹部25に囲まれた光透過性樹脂基材23の表面に接合固定される。光透過ギャップ27は、金属製表示プレート26の外周面と塗膜層24の内周面の間隙に、カット凹部25を加えて形成される。なお、図10(d)において、22は青色発光ダイオードによるLED(光源)である。
【0096】
また、実施例4の[接触干渉防止作用]、[非背光時の視認・加飾作用]、[背光時の視認・加飾作用]ついては、実施例1または実施例2と同様であるので説明を省略する。
【0097】
次に、効果を説明する。
実施例4の背光表示パネルP4及びその製造方法にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0098】
(12) 前記カット凹部25は、金属製表示プレート26の外周形状に沿った線領域のみを、光透過性樹脂基材23の途中位置まで厚み方向に切除して形成し、前記金属製表示プレート26は、その厚みを塗膜層24とほぼ同厚にすると共に、カット凹部25に囲まれた光透過性樹脂基材23の表面に接合固定し、前記光透過ギャップ27は、金属製表示プレート26の外周面と塗膜層24の内周面の間隙に、カット凹部25を加えて形成したため、上記(1)乃至(3)の何れかの効果に加え、平面精度の高い光透過性樹脂基材23の表面に金属製表示プレート26を接合固定することで、金属製表示プレート26の取り付け平面精度を確保することができると共に、パネル表面に対するプレート表面の高さ寸法管理を精度良く行うことができる。
【0099】
(13) 前記表示プレートは、フォトエッチング法により作成された金属製表示プレート26であるため、上記(1)乃至(5)の何れかの効果に加え、装飾自由度が高く、視認性と加飾性に優れる金属質感を持たせた表示プレートとすることができる。
【0100】
(14) 前記表示プレートは、プレス法により作成された金属製表示プレート26であるため、上記(1)乃至(5)の何れかの効果に加え、製造容易性が得られると共に、視認性と加飾性に優れる金属質感を持たせた表示プレートとすることができる。
【0101】
(15) 前記被覆工程では、光透過性樹脂基材23の表示プレート接合領域にマスキング29を貼った状態で塗膜層24を形成し、前記レーザーカット工程では、金属製表示プレート26の外周形状に沿った線領域のみを、レーザー光により光透過性樹脂基材23の途中位置まで厚み方向に切除してカット凹部25を形成し、前記表示プレート接合工程では、金属製表示プレート26の厚みを塗膜層24とほぼ同厚にすると共に、金属製表示プレート26を、マスキング29及び塗膜層24を剥がした後に残ったカット凹部25に囲まれた光透過性樹脂基材23の表面に接合固定するため、実施例1の(7)の効果に加え、レーザーカット工程の所要時間を短時間としながら、平面精度の高い光透過性樹脂基材23の表面に金属製表示プレート26を接合固定することができると共に、光透過ギャップ27を、金属製表示プレート26の外周面と塗膜層24の内周面の間隙に、カット凹部25を加えて形成することができる。特に、実施例4のように、幅の細いロゴによる金属製表示プレート26を持つ背光表示パネルP3の製造方法として有効である。
【0102】
以上、本発明の背光表示パネル及びその製造方法を実施例1〜実施例4に基づき説明してきたが、具体的な構成や工程については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0103】
実施例1〜4では、光源として、青色発光ダイオードによるLEDの例を示したが、赤色発光ダイオードによるLEDや緑色発光ダイオードによるLEDやオレンジ色発光ダイオードによるLEDを用いても良い。また、LEDに限らず、背光(バックライト)として採用できるものであれば、自然光や白熱球や液晶用蛍光管等であっても良い。
【0104】
実施例1〜4では、光透過性樹脂基材として、透明アクリル樹脂の例を示したが、光透過性(透明、着色半透明等)を有する樹脂であれば、例えば、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ABS樹脂等の合成樹脂を用いることができる。
【0105】
実施例1,3,4では、遮光性被覆層として塗膜層を用いる例を示し、実施例2では、遮光性被覆層として加飾層を用いる例を示した。しかし、遮光性被覆層としては、光の透過を遮る層であれば、隠蔽性のある単色顔料インクやメタリック顔料を用いた塗装であっても良いし、また、製遮光性フィルムを貼り付けたもの等であっても良く、これらの例に限られることはない。なお、塗料を用いた場合、レーザー光のエネルギーによって昇華されてしまい固形部が除去されてしまう。
また、実施例2では加飾層を水圧転写加飾工法により形成する例を示したが、インモールド成形加飾工法やインサートモールド成形加飾工法や3次元ラミネート成形加飾工法等を用いても良い。さらに、加飾模様も、実施例2の木目模様に限らず、フィルムに印刷可能な様々な模様(無地模様を含む)を施しても良い。
【0106】
実施例1〜4では、カット凹部を、レーザーカットにより形成する例を示したが、刃具によるプレスカット等のように、レーザー以外のカット法を採用しても良い。さらに、試作や少量生産は、レーザー倣い方式とし、大量生産はプレスカット方式というように、使い分けるようにしても良い。
【0107】
実施例1,3では表示プレートとして電気分解成形法により作成された電着画像表示プレートの例を示し、実施例2では表示プレートとして樹脂成形法により作成された樹脂製装飾表示プレートの例を示し、実施例4ではフォトエッチング法(金属化学腐蝕法)またはプレス法により作成された金属製表示プレートの例を示した。しかし、表示プレートとしては、これらの方法により作成されたプレートに限らず、これら以外の方法により作成された表示プレート等を用いても良い。
【0108】
実施例1,2,3では、表示プレートをカット凹部の底面に接着剤により接着固定する例を示し、実施例4では、表示プレートをカット凹部に囲まれる光透過性樹脂基材の表面に接着固定する例を示した。しかし、表示プレートをカット凹部の周面に対し接着剤により接着固定しても良いし、また、溶着固定や嵌合固定等のように、接着剤を用いることのない方法により表示プレートをカット凹部や光透過性樹脂基材の表面に接合するようにしても良い。
【0109】
実施例1〜4では、表示プレートによりアルファベット文字と数字を表示する例を示したが、表示プレートとしては、数字・文字・図形・記号・これらの組み合わせ、等を様々な表示形態のものに適用することができる。
【0110】
実施例4では、遮光性被覆層として塗膜層を用いる例を示したが、実施例2のように、厚みのあるフィルム転写するフィルム転写層としても良く、この場合も、1枚のフィルムで厚みが不足する場合には、2層、3層…というように多層のフィルム転写層としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0111】
実施例1,3では、本発明の背光表示パネルをデジタルビデオデッキの前面パネルへ適用した例を示し、実施例2では、本発明の背光表示パネルを自動車用シフトノブの操作表示パネルへ適用した例を示した。しかし、本発明の背光表示パネルは、デジタルビデオデッキ以外の事業用電化製品や家庭用電化製品へも適用できるし、自動車用シフトノブ以外に車室内トリムやインストルメントパネル周りの自動車用内装材や自動車用外装材へも適用できる。さらに、家具や内外装建材や雑貨品(化粧品ケース)等の様々な用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】実施例1のデジタルビデオデッキの前面パネル(背光表示パネルの一例)を示す正面図である。
【図2】実施例1の前面パネルのメーカー商標名を表示した部分の一部拡大図である。
【図3】実施例1の前面パネルのメーカー商標名を表示した部分の図2のA−A線拡大断面図である。
【図4】実施例1における前面パネルP1の製造方法を示す工程図であり、(a)は被覆工程を示し、(b)はレーザーカット工程を示し、(c)は表示プレート接合工程を示す。
【図5】実施例2の自動車用シフトノブの操作表示パネル(背光表示パネルの一例)を示す平面図である。
【図6】実施例2の操作表示パネルの変速段数(1速段)を表示した部分の一部拡大図である。
【図7】実施例2の操作表示パネルの変速段数(1速段)を表示した部分の図6のB−B線拡大断面図である。
【図8】実施例2における操作表示パネルP2の製造方法を示す工程図であり、(a)はフィルム浮かべ工程を示し、(b)はフィルムの水圧転写工程を示し、(c)は基材取り出し工程を示し、(d)は転写部のコーティング工程を示し、(e)はレーザーカット工程を示し、(f)は表示プレート接合工程を示す。
【図9】実施例3における前面パネルP1’(背光表示パネルの一例)の製造方法を示す工程図であり、(a)は被覆工程を示し、(b)はレーザーカット工程を示し、(c)は透明樹脂圧入工程を示し、(d)は第2のレーザーカット工程を示し、(e)は表示プレート接合工程を示す。
【図10】実施例4における幅の細いロゴによる金属製表示プレートを持つ背光表示パネルP3の製造方法を示す工程図であり、(a)は被覆工程を示し、(b)はレーザーカット工程を示し、(c)はマスキング及び塗膜層の除去工程を示し、(e)は固定表示プレート接合工程を示す。
【符号の説明】
【0113】
P1 前面パネル(背光表示パネル)
1 パネル本体
1a メーカー商標名部分
1b 商品名部分
2 LED(光源)
3 光透過性樹脂基材
4 塗膜層(遮光性被覆層)
5 カット凹部
5a 内周面
6 電着画像表示プレート(表示プレート)
6a 外周面
7 光透過ギャップ
8 接着剤層
9 透明樹脂(透明性樹脂)
P2 操作表示パネル(背光表示パネル)
10 自動車用シフトノブ
11 パネル本体
11a 変速段表示部分
12 LED(光源)
13 光透過性樹脂基材
14 加飾層(遮光性被覆層)
15 カット凹部
15a 内周面
16 樹脂製装飾表示プレート(表示プレート)
16a 外周面
17 光透過ギャップ
18 接着剤層
P3 背光表示パネル
22 LED(光源)
23 光透過性樹脂基材
24 塗膜層(遮光性被覆層)
25 カット凹部
26 金属製表示プレート(表示プレート)
27 光透過ギャップ
28 接着剤層
29 マスキング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル背面側に光源を配置し、該光源からの光をパネルの一部分から表面側へ透過させて背光表示する背光表示パネルにおいて、
光透過性樹脂により二次元平面あるいは三次元曲面に成形した光透過性樹脂基材と、
前記光透過性樹脂基材の表面側に被覆され、光の透過を遮る遮光性被覆層と、
前記遮光性被覆層から前記光透過性樹脂基材の途中位置まで厚み方向に切除したカット凹部と、
前記カット凹部の内側領域に沈み込み状態で接合固定された表示プレートと、を備え、
前記表示プレートの外周位置に、表示プレートの外周形状に沿うスリット状の光透過ギャップを形成したことを特徴とする背光表示パネル。
【請求項2】
請求項1に記載された背光表示パネルにおいて、
前記表示プレートは、プレート表面の高さ寸法からパネル表面の高さ寸法を差し引いた寸法差を、-2000μm〜+50μmの範囲に設定したことを特徴とする背光表示パネル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された背光表示パネルにおいて、
前記光透過ギャップは、そのギャップ幅を100μm〜2000μmの範囲に設定したことを特徴とする背光表示パネル。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載された背光表示パネルにおいて、
前記カット凹部は、表示プレートの外周形状より大きな内周形状を持つ面領域を、前記光透過性樹脂基材の途中位置まで厚み方向に切除して形成し、
前記表示プレートは、前記カット凹部の底面に接合固定し、
前記光透過ギャップは、前記表示プレートの外周面と前記カット凹部の内周面の間に形成したことを特徴とする背光表示パネル。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載された背光表示パネルにおいて、
前記カット凹部は、表示プレートの外周形状に沿った線領域のみを、前記光透過性樹脂基材の途中位置まで厚み方向に切除して形成し、
前記表示プレートは、その厚みを前記遮光性被覆層とほぼ同厚にすると共に、前記カット凹部に囲まれた前記光透過性樹脂基材の表面に接合固定し、
前記光透過ギャップは、前記表示プレートの外周面と前記遮光性被覆層の内周面の間隙に、前記カット凹部を加えて形成したことを特徴とする背光表示パネル。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載された背光表示パネルにおいて、
前記遮光性被覆層は、遮光性を有する塗料を光透過性樹脂基材の表面に塗布することで形成された塗膜層であることを特徴とする背光表示パネル。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載された背光表示パネルにおいて、
前記遮光性被覆層は、予め所望の意匠を施したフィルムを加飾成形により光透過性樹脂基材の表面に被覆することで形成される加飾層であることを特徴とする背光表示パネル。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載された背光表示パネルにおいて、
前記表示プレートは、電気分解成形法により作成された電着画像表示プレートであることを特徴とする背光表示パネル。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載された背光表示パネルにおいて、
前記表示プレートは、樹脂成形法により作成された樹脂製装飾表示プレートであることを特徴とする背光表示パネル。
【請求項10】
請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載された背光表示パネルにおいて、
前記表示プレートは、フォトエッチング法により作成された金属製表示プレートであることを特徴とする背光表示パネル。
【請求項11】
請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載された背光表示パネルにおいて、
前記表示プレートは、プレス法により作成された金属製表示プレートであることを特徴とする背光表示パネル。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載された背光表示パネルにおいて、
前記光透過ギャップは、そのギャップ溝内を透明性樹脂により充填したことを特徴とする背光表示パネル。
【請求項13】
パネル背面側に光源を配置し、該光源からの光をパネルの一部分から表面側へ透過させて背光表示する背光表示パネルの製造方法において、
二次元平面あるいは三次元曲面に成形した光透過性樹脂基材の表面側に遮光性被覆層を形成する被覆工程と、
前記遮光性被覆層と前記光透過性樹脂基材によるパネル材の表面側の遮光性被覆層から光透過性樹脂基材の途中位置まで厚み方向にレーザー光により切除してカット凹部を形成するレーザーカット工程と、
前記カット凹部の内側領域に表示プレートを沈み込み状態で接合固定する表示プレート接合工程と、を備え、
前記表示プレートの外周位置に、表示プレートの外周形状に沿うスリット状の光透過ギャップを形成したことを特徴とする背光表示パネルの製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載された背光表示パネルの製造方法において、
前記レーザーカット工程では、表示プレートの外周形状より大きな内周形状を持つ面領域を、前記光透過性樹脂基材の途中位置まで厚み方向に切除してカット凹部を形成し、
前記表示プレート接合工程では、表示プレートをカット凹部の底面に接合固定することを特徴とする背光表示パネルの製造方法。
【請求項15】
請求項13に記載された背光表示パネルの製造方法において、
前記被覆工程では、光透過性樹脂基材の表示プレート接合領域にマスキングを貼った状態で遮光性被覆層を形成し、
前記レーザーカット工程では、表示プレートの外周形状に沿った線領域のみを、レーザー光により光透過性樹脂基材の途中位置まで厚み方向に切除してカット凹部を形成し、
前記表示プレート接合工程では、表示プレートの厚みを遮光性被覆層とほぼ同厚にすると共に、表示プレートを、マスキング及び遮光性被覆層を剥がした後に残ったカット凹部に囲まれた光透過性樹脂基材の表面に接合固定することを特徴とする背光表示パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−197346(P2008−197346A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32051(P2007−32051)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(505156891)ナガシマ工芸株式会社 (9)
【出願人】(593220236)テフコインターナショナル株式会社 (1)
【Fターム(参考)】