説明

脂質及びタンパク質を消化する能力が減少した動物を同定するための方法

本発明は、動物に対して、様々な血液因子及び身体因子を判定し、判定された値を脂肪及びタンパク質を消化する能力が減少していることを示す基準値と比較することによって、脂肪又はタンパク質を消化する能力が減少した動物を同定するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
[発明の分野]
[0002]本発明は、一般に、食物栄養素を消化する能力が減少した動物を同定するための方法に関し、特に脂質又はタンパク質を消化する能力が減少した動物を同定するための方法に関する。
【関連技術の説明】
【0002】
[0003]食物及び食物栄養素を消化する動物の能力は、年齢に伴って変化することが知られている。同様に、食物及び食物栄養素を消化する動物の能力を判断するための方法並びに消化性に影響を及ぼすための方法が知られており、例えば、「Changing Perspectives on Aging and Energy Requirements:Aging and Digestive Function in Humans,Dogs and Cats,」The Journal of Nutrition Vol.128 No.12 December 1998,pp.2632S〜2635S及び「Experimental Approaches to Study the Nutritional Value of Food Ingredients for Dogs and Cats,」R.Bras.Zootec.vol.36 supp l.0 Vicosa July 2007で報告されている。米国特許出願公開第2005/0147649号は、動物による脂肪消化性を改善するための方法及び食事の組成物を開示している。米国特許出願公開第2009/0136588号は、食物摂取を変える、栄養素消化性を改善する並びに便の質及び/又は便の頻度を変えるための方法、例えば、タンパク質消化性を増加させる又は低下させるための方法を開示している。国際公開第03/084344号及び国際公開第03/084343号は、脂質を効率的に消化するペットの能力を維持する、増進する、又は増強する成分が入っている可食の組成物を投与することによって、効果的な脂質又は脂質画分の同化に関する利益を動物に提供するための方法を開示している。これらの方法は、消化性を試験するのに有用であるが、特に臨床的状況において、困難又は不便である、長時間にわたる複雑な手順をしばしば必要とする。したがって、脂質及びタンパク質を消化する能力が減少した動物を同定するための新規な方法が必要である。
【発明の概要】
【0003】
[0004]したがって、本発明の一目的は、脂質を消化する能力が減少した動物を同定するための方法を提供することである。
【0004】
[0005]本発明の別の目的は、タンパク質を消化する能力が減少した動物を同定するための方法を提供することである。
【0005】
[0006]これら及び他の目的は、動物に対して、ビタミンE濃度、ビタミンB12(コバラミンとしても知られている)濃度、葉酸濃度、膵リパーゼ免疫反応性、ボディーコンディションスコア、皮下脂肪厚、及び年齢から成る群から選択される因子の少なくとも2つを判定すること、並びに対応する因子について、ビタミンE濃度が5mg/L以下である場合、ビタミンB12濃度が200ng/L以下である場合、葉酸濃度が15μg/L以下である場合、膵リパーゼ免疫反応性が3.5μg/L以上である場合、ボディーコンディションスコアが5段階評価で3未満である場合、皮下脂肪厚が2mm以下である場合、及び年齢がその種類の動物の平均寿命の70%以上である場合、動物が脂質若しくはタンパク質又は両方を消化する能力が減少していることを判定することによって達成される。本明細書で記載したように、脂肪を消化する能力が減少した動物を同定するために様々な因子を使用し、タンパク質を消化する能力が減少した動物を同定するのに様々な因子が有用である。
【0006】
[0007]本発明の追加の及びさらなる目的、特徴、並びに利点は、当業者に容易に明らかとなろう。
【発明の詳細な説明】
【0007】
定義
[0008]略語:ナノグラム(ng)、リットル(L)、マイクログラム(μg)、ミリメーター(mm)、及びミリグラム(mg)。
【0008】
[0009]「ビタミンE濃度」、「ビタミンB12濃度」、「葉酸濃度」、及び「膵リパーゼ免疫反応性」という用語は、任意の適切な方法によって判定される、動物の血液中におけるそれぞれの化合物の濃度又は活性を意味する。
【0009】
[0010]「消化する」という用語は、消化、吸収、及び同化のプロセスを意味する。消化プロセスは、食物を吸収することができる栄養素に分解する、物理的及び化学的プロセスを使用して、胃腸管内で食物を吸収可能な栄養素に変える。吸収は、消化された食物栄養素の胃腸管から体内への移行を促進するプロセスである。同化は、消化及び吸収された栄養素の、体組織への組込み及び/又は代謝のための使用を行うプロセスである。
【0010】
[0011]「動物」という用語は、トリ、ウシ、イヌ、ウマ、ネコ、ヤギ、ネズミ、ヒツジ、及びブタの各動物を含めた、脂質及びタンパク質を消化する能力がある任意の動物を意味する。
【0011】
[0012]「単一パッケージ」という用語は、キットの構成要素が、1つ又は複数の容器内で又は容器と物理的に関連付けられ、製造、流通、販売、又は使用のための構成単位と考えられることを意味する。容器には、袋、箱、瓶、収縮包装パッケージ、ステープルで留めた又はさもなければ添付された構成要素、或いはそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。単一のパッケージは、製造、流通、販売、又は使用のための構成単位と考えられるような、物理的に関連付けられる、血液パラメーター又は非血液因子を測定するための構成要素の容器とすることができる。
【0012】
[0013]「仮想パッケージ」という用語は、キットの構成要素に、他の構成要素の入手方法を使用者に指示する1つ又は複数の物理的な又は仮想のキット構成要素に関する説明書が付いている、例えば、袋の中に、1つの構成要素と、ウェブサイトへのアクセスの仕方、録音メッセージの聴き方、視覚的なメッセージの見方、又は世話をする人若しくはインストラクターに連絡してキットを使用する方法に関する指示の入手の仕方を使用者に指示する説明書とが入っていることを意味する。
【0013】
本発明
[0014]一態様において、本発明は、脂質を消化する能力が減少した動物を同定するための方法を提供する。
この方法は、
動物に対して、下記因子、
ビタミンE濃度、
ビタミンB12濃度、
葉酸濃度、
膵リパーゼ免疫反応性、
ボディーコンディションスコア、
皮下脂肪厚、及び
年齢、
の少なくとも2つを判定するステップと、
対応する因子について、
ビタミンE濃度が5mg/L以下である場合、
ビタミンB12濃度が200ng/L以下である場合、
葉酸濃度が15μg/L以下である場合、
膵リパーゼ免疫反応性が3.5μg/L以上である場合、
ボディーコンディションスコアが5段階評価で3未満である場合、
皮下脂肪厚が2mm以下である場合、及び
年齢がその種類の動物の平均寿命の70%以上である場合、
動物が脂質を消化する能力が減少していることを判定するステップと、
を含む。
【0014】
[0015]様々な実施形態において、本方法は、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つの因子、好ましくは3つ又は4つの因子を使用することを含む。様々な好ましい実施形態において、因子は、ビタミンE濃度及びビタミンB12濃度であり、ビタミンE濃度、ビタミンB12濃度、及び葉酸濃度であり、並びに、ビタミンE濃度、ビタミンB12濃度、ビタミンE濃度、及び膵リパーゼ免疫反応性である。因子の様々な組合せを当業者は選択することができる。
【0015】
[0016]別の態様において、本発明は、タンパク質を消化する能力が減少した動物を同定するための方法を提供する。
この方法は、
動物に対して、下記因子、
ビタミンE濃度、
ビタミンB12濃度、
葉酸濃度、
ボディーコンディションスコア、及び
年齢、
の少なくとも2つを判定するステップと、
対応する因子について、
ビタミンE濃度が5mg/L以下である場合、
ビタミンB12濃度が200ng/L以下である場合、
葉酸濃度が15μg/L以下である場合、
ボディーコンディションスコアが5段階評価で3未満である場合、及び
年齢がその種類の動物の平均寿命の70%以上である場合、
動物が脂質を消化する能力が減少していることを判定するステップと、
を含む。
【0016】
[0017]様々な実施形態において、本方法は、3つ、4つ、又は5つの因子、好ましくは3つ又は4つの因子を使用することを含む。様々な好ましい実施形態において、因子は、ビタミンE濃度及びビタミンB12濃度であり、ビタミンE濃度、ビタミンB12濃度、及び葉酸濃度であり、並びに、ビタミンE濃度、ビタミンB12濃度、ビタミンE濃度、及びボディーコンディションスコアである。因子の様々な組合せを当業者は選択することができる。
【0017】
[0018]本発明は、様々な血液因子及び身体因子が、いくつかの食物成分、すなわち、脂質及びタンパク質、特に脂肪の形での脂質を消化する動物の能力について予測的であるという知見に基づく。
【0018】
[0019]好ましい実施形態において、動物は、栄養因子、すなわち、ビタミンE、ビタミンB12、及び葉酸の、その動物の最小限の1日の推奨所要量を得た動物である。
【0019】
[0020]本方法は、脂質及びタンパク質を消化する能力が減少した動物を同定し、動物の食事を改善して適切な栄養を保証する、例えば、食事中の脂質若しくはタンパク質を増加させるか、又は食事中の容易に消化できる脂質若しくはタンパク質の量を増加させるのに有用である。また、方法は、長時間にわたる高価な動物実験又は臨床試験を行うことなく、動物において脂質及びタンパク質を消化する動物の能力を評価するのに有用である。
【0020】
[0021]方法は、種々のヒト及び非ヒト動物に有用であり、特にウシ及びブタなどの食用動物、並びにイエイヌ及びイエネコを含めた、イヌ及びネコなどのコンパニオンアニマルに有用である。いくつかの実施形態において、動物はコンパニオンアニマルである。コンパニオンアニマルは、ペットとして飼育される任意の種の動物とすることができる。コンパニオンアニマルは、動物がペットとして単独で飼育されるかどうかにかかわらず、イエイヌ(Canis familiaris)及びイエネコ(Felis domesticus)などの種々の広範に家畜化された種由来の動物ともすることできる。したがって、コンパニオンアニマルには、作業犬、齧歯類防除のために飼育されるネコ、並びにペット用のネコ及びイヌが含まれる。好ましい実施形態において、動物は、その年齢がその種類の動物の平均寿命の70%以上、好ましくは80%、最も好ましくは90%である動物である。
【0021】
[0022]別の態様において、本発明は、(1)脂質、特に脂肪を消化する能力が減少した動物を同定するための、ビタミンE濃度、ビタミンB12濃度、葉酸濃度、膵リパーゼ免疫反応性、ボディーコンディションスコア、皮下脂肪厚、及び年齢の様々な組合せの使用、(2)タンパク質を消化する能力が減少した動物を同定するための、ビタミンE濃度、ビタミンB12濃度、葉酸濃度、ボディーコンディションスコア、及び年齢の様々な組合せの使用、並びに(3)脂肪又はタンパク質を消化する能力が減少した動物を同定するための、本発明のキットの使用の1つ又は複数に関する情報又は指示を伝達するための手段を提供する。手段は、情報又は指示が入っている、文書、デジタル記録媒体、光学記録媒体、音声の提示、又は視覚的な表示を含む。好ましくは、伝達手段は、そのような情報又は指示が入っている、表示されたウェブサイト、視覚的な表示、広告塔、パンフレット、製品ラベル、添付文書、広告、配布資料、公示、音声テープ、ビデオテープ、DVD、CD−ROM、コンピューターで読み取りができるチップ、コンピューターで読み取りができるカード、コンピューターで読み取りができるディスク、コンピューターメモリ、又はそれらの組合せである。
【0022】
[0023]有用な情報には、本発明及び本発明の使用に関する質問がある場合に使用するための、動物又は動物の世話をする人に関する連絡先の1つ又は複数が含まれる。伝達手段は、本発明を使用することの利益について指示するのに有用である。
【0023】
[0024]別の態様において、本発明は、脂質又はタンパク質を消化する能力が減少した動物を同定するのに適したキットを提供する。キットは、キット構成要素に応じて適切に、単一のパッケージ内の別々の容器中又は仮想パッケージ内の別々の容器中に、(a)脂質を消化する能力が減少した動物を同定するための指示書及び(b)タンパク質を消化する能力が減少した動物を同定するための指示書の1つ又は複数、並びに(1)ビタミンE濃度を判定するのに必要な構成要素、(2)ビタミンB12濃度を判定するのに必要な構成要素、(3)葉酸濃度を判定するのに必要な構成要素、(4)膵リパーゼ免疫反応性を判定するのに必要な構成要素、(5)ボディーコンディションスコアを判定するのに必要な構成要素、(6)皮下脂肪厚を判定するのに必要な構成要素、及び(7)脂質又はタンパク質を消化する能力が減少した動物を同定するためのキットの使用に関する指示書の少なくとも1つを含む。キットが仮想パッケージを含む場合、キットは、1つ又は複数の物理的キット構成要素と組み合わせて仮想環境における指示書に限定される。キットには、脂質、タンパク質、又は両方を消化する能力が減少した動物を同定することに関して必要に応じて、様々な組合せのいずれかでキット指示書及び構成要素が入っていてもよい。
【実施例】
【0024】
[0025]本発明を、以下の実施例によってさらに例示することができるが、明確に示さない限り、実施例は単に例示の目的のために含まれ、本発明の範囲を限定することを意図していないということが理解されよう。
【0025】
材料及び方法
脂質及びタンパク質消化性
[0026]全ての関与したネコは、成体且つ健康であった。単一の食事は、ネコにとって唯一の栄養源であった。ネコは、常に水を利用することができた。各ネコの体重を、試験の開始より前に記録した。各ネコに、ネコの代謝エネルギー必要量を満たすのに必要な量の食物を与えた。ネコに、5日間の予備試験期間の間同じ食事を与えた。各ネコの体重を、6日目に記録した。糞便の採取期間は、6日目〜11日目にかけてであった。この期間に食べた食物の量を記録した。6日目に、食事を、1食の質量に対して1.0g/kgの濃度で、マーカーとしての赤色酸化鉄と一緒に与えた。赤いマーカーが付いた糞便が、採取する最初のものであった。6日目及び7日目に、赤いマーカーが付いた糞便の最初の出現の前に、全てのマーカーが付いていない(正常な色の)糞便を処分した。最初の赤い糞便が観察された後、排泄された全てのマーカーが付いていない糞便だけでなく、全ての赤いマーカーが付いた糞便も採取した。各ネコについて採取した糞便を、−20℃で冷凍保存した。10日目の朝、今回は試験給餌期間の終わりにマーカーを付けるために、赤色酸化鉄を再び食事に加え(6日目の通りに)、各ネコの体重を記録した。赤いマーカーの再出現まで、糞便を採取し続けた。食事の2つの試料及び最初に凍結乾燥した個々のネコの糞便の試料を、タンパク質、脂肪、乾物、及び灰分の分析のために送った。
【0026】
ボディーコンディションスコアリング
[0027]ネコにおけるボディーコンディションスコアリングを以下のように行った。各ネコを立位の状態にし、側面からもネコの上からも脊椎を見下ろして視覚的に検査した。触診を、肋骨を手探りするように胸部に対して、脊椎、顔、肢及び腹部に沿って行って、脂肪の蓄積の程度を判断した。1は極めて痩せており、5は極めて肥満である、5段階スコアリングシステムを使用した。ボディーコンディションスコア(BCS)1は、肋骨を視認でき、脂肪を触知できず、腹部のたるみがひどく、椎骨及び腸骨の翼状部を容易に触知できるネコに割り当てた。BCS2は、肋骨を容易に触知でき、脂肪の付きが極わずかであり、腰椎が見てすぐ分かり、肋骨の後ろの腰のくびれが見てすぐ分かり、最小の腹部の脂肪が極わずかであるネコに割り当てた。BCS3は、肋骨の後ろに腰のくびれがあり、肋骨を触知でき脂肪の付きがわずかであり、最小の腹部の脂肪パッドが極わずかである、よく均整のとれたネコに割り当てた。BCS4は、腰のくびれが十分に識別できず、肋骨を覆う脂肪の付きが中程度であり(まだ触知できるが)、腹部の丸みが見てすぐ分かり、腹部の脂肪パッドが中程度であるネコに割り当てた。BCS5は、肋骨(触知できない)、腰部の領域、顔及び肢を覆う脂肪の付きが厚く、腹部が膨張し腰のくびれがなく、腹部の脂肪蓄積が大量であるネコに割り当てた。
【0027】
皮下脂肪厚
[0028]ネコにおける皮下脂肪厚を以下のように行った。最後の肋骨に対してすぐ腹側で、脊椎の直下、左の背側上の点で、コードレスの電気クリッパーで約2インチの正方形に毛の部分を剃った(短く刈り込んだが、皮膚の熱傷を避けて)。鈍い先端を有するMitutoyo Digimatic電子カリパスを、ミリメーター単位で読み取るように設定した。1つまみのネコの皮膚を指で取り(筋肉又は皮下脂肪は含まれていなかった)、カリパスで測定した(測定値を得るためにつまんでいる指を放す)。剃った部分内で最低3つの部位からの読取り値を得、平均値を記録した。
【0028】
血液構成要素
[0029]血清ビタミンE、ビタミンB12、葉酸、及び膵リパーゼ免疫反応性(PLI)を、以下のようにネコの群において判断した。血液試料を得る前に、動物を終夜絶食させた。右又は左の頸静脈上方の点で、頸静脈を視覚化するのに十分大きい、毛の小さな部分をコードレスの電気クリッパーで剃った(短く刈り込んだが、皮膚の熱傷を避けて)。血清分離管に付属している20若しくは22ゲージバキュテナー、又は3ml若しくは12ml注射器に付属している20若しくは22ゲージ針を使用して最低3mlの全血を得た。血清を標準的な方法論に従って分離し、分析に適切な実験室へ運ぶまで−20℃以下で凍結した。
【0029】
[0030]ビタミンE分析を、HPLC(Waters Separation Module 2690)に従って行った。ビタミンB12分析を、申請番号04745736190、Elecsys Vitamin B12 assay for Cobasに従って行った。葉酸分析を、申請番号03253678160、Elecsys Folate II assay for Cobasに従って行った。膵リパーゼ免疫反応性分析を、Steiner JM,Teague SR,Williams DA.Development and analytic validation of an enzyme−linked immunosorbent assay for the measurement of canine pancreatic lipase immunoreactivity in serum.Can J Vet Res.2003;67:175〜182に従って行った。
【0030】
実施例1
[0031]七十(70)匹の年長のネコ(7〜17年齢)に、12カ月間標準的な缶詰食物組成物を与え、消化性試験を行った。ネコに、残りの生存期間同じ食事を続けた。消化性試験は、6カ月毎に繰り返した。消化性を判定する際に、血清ビタミンE、血清ビタミンB12、血清葉酸、及び血清膵リパーゼ免疫反応性(PLI)のための血液試料、ボディーコンディションスコアリング、二重エネルギーX線吸収法(DEXA)による体組成、並びに皮下脂肪厚測定値を、同じネコにおいて取った。
【0031】
[0032]相関分析を、脂肪及びタンパク質消化性と他の変数との間のデータについて行った。相関を算出するために、脂肪又はタンパク質消化性が従属変数であり、時間、ネコ及び変数の1つが独立変数である、共分散分析を使用した。
【0032】
[0033]脂肪消化性について、相関は、以下の通りであった。
【表1】

【0033】
[0034]タンパク質消化性について、相関は、以下の通りであった。
【表2】

【0034】
[0035]さらなるデータ評価を行って、低い脂肪又はタンパク質消化性が他のパラメーターの異常レベルと共に生じた頻度を判定した。異常レベルを以下のように定義した。
【表3】

【0035】
[0036]以下の結果を脂肪消化性について得た。
【表4】

【0036】
[0037]以下の結果をタンパク質消化性について得た。
【表5】

【0037】
[0038]結果は、脂質及びタンパク質を消化する能力が減少した動物を同定するために、試験した因子の様々な組合せを使用することができるということを示している。
【0038】
[0039]本明細書において、本発明の典型的な好ましい実施形態を開示し、特定の用語を用いたが、それらは一般的及び説明的な意味のみで使用し、限定の目的のためではない。明らかに、本発明の多くの変更形態及び変形形態が上述の教示に照らして可能である。したがって、明確に記載しない限り、本発明を実施することができるということが理解されよう。
【0039】
[0040]本明細書及び添付の特許請求の範囲では、単数形の「a」、「an」、及び「the」には、文脈で明白に示さない限り、複数形の参照が含まれる。「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」という用語は、排他的よりはむしろ包括的に解釈するべきである。
【0040】
[0041]定義しない限り、本明細書で使用した全ての技術的用語及び科学的用語並びにあらゆる頭字語は、本発明の分野における当業者によって通例理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載したものと同類又は同等な、あらゆる組成物、方法、キット、及び情報を伝達するための手段を使用して本発明を実施することができるが、好ましい組成物、方法、キット、及び情報を伝達するための手段を本明細書で記載している。
【0041】
[0042]上述で引用した全ての参考文献は、法律によって許容される程度まで、参照によって本明細書に組み込まれる。それらの参考文献の考察は、参考文献の著者による主張を単に要約することが意図されている。いかなる参考文献(又はいかなる参考文献の一部)も、関連する先行技術であるということを認めるのではない。出願人らは、全ての引用した参照文献の正確性及び妥当性を問題にする権利を保有する。
【関連出願の相互参照】
【0042】
[0001]本出願は、2009年10月15日に出願された米国特許仮出願第61/279044号の優先権を主張し、その開示は、本参照によって本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質を消化する能力が減少した動物を同定するための方法であって、
動物に対して、下記因子、
ビタミンE濃度、
ビタミンB12濃度、
葉酸濃度、
膵リパーゼ免疫反応性、
ボディーコンディションスコア、
皮下脂肪厚、及び
年齢、
の少なくとも2つを判定するステップと、
対応する因子について、
ビタミンE濃度が5mg/L以下である場合、
ビタミンB12濃度が200ng/L以下である場合、
葉酸濃度が15μg/L以下である場合、
膵リパーゼ免疫反応性が3.5μg/L以上である場合、
ボディーコンディションスコアが5段階評価で3未満である場合、
皮下脂肪厚が2mm以下である場合、及び
年齢がその種類の動物の平均寿命の70%以上である場合、
動物が脂質を消化する能力が減少していることを判定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
動物に対して少なくとも3つの因子が判定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
動物に対して少なくとも4つの因子が判定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
因子が、ビタミンE濃度及びビタミンB12濃度である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
因子が、ビタミンE濃度、ビタミンB12濃度、及び葉酸濃度である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
因子が、ビタミンE濃度、ビタミンB12濃度、ビタミンE濃度、及び膵リパーゼ免疫反応性である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
動物がコンパニオンアニマルである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
動物がイヌである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
動物がネコである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
タンパク質を消化する能力が減少した動物を同定するための方法であって、
動物に対して、下記因子、
ビタミンE濃度、
ビタミンB12濃度、
葉酸濃度、
ボディーコンディションスコア、及び
年齢、
の少なくとも2つを判定するステップと、
対応する因子について、
ビタミンE濃度が5mg/L以下である場合、
ビタミンB12濃度が200ng/L以下である場合、
葉酸濃度が15μg/L以下である場合、
ボディーコンディションスコアが5段階評価で3未満である場合、
年齢がその種類の動物の平均寿命の70%以上である場合、
動物が脂質を消化する能力が減少していることを判定するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
動物に対して少なくとも3つの因子が判定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
動物に対して少なくとも4つの因子が判定される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
因子が、ビタミンE濃度及びビタミンB12濃度である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
因子が、ビタミンE濃度、ビタミンB12濃度、及び葉酸濃度である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
因子が、ビタミンE濃度、ビタミンB12濃度、ビタミンE濃度、及びボディーコンディションスコアである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
動物がコンパニオンアニマルである、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
動物がイヌである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
動物がネコである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
(1)脂質を消化する能力が減少した動物を同定するための、ビタミンE濃度、ビタミンB12濃度、葉酸濃度、膵リパーゼ免疫反応性、ボディーコンディションスコア、皮下脂肪厚、及び年齢の様々な組合せの使用、(2)タンパク質を消化する能力が減少した動物を同定するための、ビタミンE濃度、ビタミンB12濃度、葉酸濃度、ボディーコンディションスコア、及び年齢の様々な組合せの使用、並びに(3)脂肪又はタンパク質を消化する能力が減少した動物を同定するための本発明のキットの使用、の1つ又は複数に関する情報又は指示を伝達するための手段であって、情報又は指示が入っている、文書、デジタル記録媒体、光学記録媒体、音声の提示、又は視覚的な表示を含む手段。好ましくは、伝達手段は、そのような情報又は指示が入っている、表示されたウェブサイト、視覚的な表示、広告塔、パンフレット、製品ラベル、添付文書、広告、配布資料、公示、音声テープ、ビデオテープ、DVD、CD−ROM、コンピューターで読み取りができるチップ、コンピューターで読み取りができるカード、コンピューターで読み取りができるディスク、コンピューターメモリ、又はそれらの組合せである。
【請求項20】
表示されたウェブサイト、パンフレット、製品ラベル、添付文書、広告、表示されたウェブサイト、及び視覚的な表示から成る群から選択される、請求項19に記載の手段。
【請求項21】
脂質又はタンパク質を消化する能力が減少した動物を同定するのに適したキットであって、キット構成要素に応じて適切に、単一パッケージ内の別々の容器中又は仮想パッケージ内の別々の容器中に、(a)脂質を消化する能力が減少した動物を同定するための指示書及び(b)タンパク質を消化する能力が減少した動物を同定するための指示書の1つ又は複数と、(1)ビタミンE濃度を判定するのに必要な構成要素、(2)ビタミンB12濃度を判定するのに必要な構成要素、(3)葉酸濃度を判定するのに必要な構成要素、(4)膵リパーゼ免疫反応性を判定するのに必要な構成要素、(5)ボディーコンディションスコアを判定するのに必要な構成要素、(6)皮下脂肪厚を判定するのに必要な構成要素、及び(7)脂質又はタンパク質を消化する能力が減少した動物を同定するためのキットの使用に関する指示書の少なくとも1つと、を含むキット。

【公表番号】特表2013−508678(P2013−508678A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534158(P2012−534158)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/002724
【国際公開番号】WO2011/046595
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】