説明

脊椎異常を治療するための可動性の動的システム

【課題】脊柱異常を治療するための動的な可動性の植込み可能システムを提供する。
【解決手段】可動性の動的植込み可能脊椎装置(10)は、矯正ロッド(12)に固定される少なくとも1つの固定ブラケット(16a)と、矯正ロッド(12)に摺動自在に取付けられる少なくとも1つの可動キャリア(18a)とを含む。固定ブラケット(16a)と可動キャリア(18a)は、それぞれ、本体と、この本体に連接されたペディクルネジ(20)又は横突起フックとを含む。キャリア(18a)とロッド(12)との間、及びペディクルネジ(20)又はフックとキャリア(18a)及び固定ブラケット(16a)との間の自由度の配分は、椎骨及び椎間板の自然な移動性の幾分かと、脊柱の潜在的成長とを保ち続ける非剛性の組立体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎異常に関し、更に限定的には、脊椎異常を治療するための可動性の動的システムに関する。
【背景技術】
【0002】
脊柱側弯症のような、脊椎異常を治療するための従来の植込み可能な器具は、通常脊柱の両側に取付けるための1対の植込み可能なロッドを含む。剛体の横断方向のバーが、通常これらのロッドを間隔を空けて平行な配置で相互に連結する。ロッドを任意の椎骨に固定するために、フック又はネジの形態のアンカーが、各々のロッドに沿って設けられる。このアンカーは、一たび取付けられると、関係するロッドとの間で相対運動をしないように、該ロッドに堅固に固定される。この器具は、該器具に加わる荷重によって破損するのを防止するために、上記のような構成は、骨移植及び脊椎固定により補足されなくてはならない。しかしながら、骨移植及び椎骨脊椎固定は、患者の人生全般にわたって深刻な合併症を引き起こすことが多い。
【0003】
従って、より大きな荷重に耐えることができ、その結果骨移植及び椎骨脊椎固定に頼る必要の無い、植込み可能な脊椎器具を開発する努力がなされてきた。例えば、Martinに付与された1997年9月30日に公布の米国特許第5,672,175号(特許文献1)は、植込まれたロッドが、固定された中央アンカーと末端の動的アンカーとによって脊柱に固定される、脊椎固定しない植込み可能な脊椎器具を開示している。各々の末端アンカーは、植込まれたロッドの内の対応するロッドに摺動自在に取付けられた結合部材に堅固に連結される。該結合部材は、対応するロッドに対して任意数の自由度を有することができる。
【0004】
上記特許に開示された植込み可能な脊椎器具は、技術的進歩をしているが、脊椎異常を治療するために使用可能な新しい動的な植込み可能システムに対するニーズがあることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,672,175号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、脊柱異常を治療するための動的な可動性の植込み可能システムを提供することである。
本発明の更なる目的は、患者の脊柱の成長を可能にする上記のような動的な可動性の植込み可能システムを提供することである。
本発明の更なる目的は、新しい動的な脊椎器具システムを提供することである。
【0007】
本発明の更に別の目的は、少なくとも部分的に椎骨と椎間板の生理的移動性を保つようになっている動的な脊椎器具システムを提供することである。
本発明の更に別の目的は、植込み可能な脊椎ロッドを骨に連結するための新しい動的な固定組立体を提供することである。
本発明の更に別の目的は、植込み可能な1対の脊椎ロッドを相互に構造的に連結するための動的な交差結合部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って本発明によれば、矢状面を有する脊柱の異常を治療するための可動性の動的内部システムであって、患者の脊柱の一方の側に取付けるための少なくとも1つの植込み可能な矯正ロッドと、前記矯正ロッドに堅固に取付けられる少なくとも1つの固定ブラケットと、前記矯正ロッドに摺動自在に取付けられる少なくとも1つの可動キャリアと、前記矯正ロッドを脊柱に固定するために、前記可動キャリアと前記固定ブラケットとにそれぞれ取付けられる第1及び第2のアンカーと、を含み、前記動的内部システムが植込まれた時に、前記第1及び第2のアンカーが、前記可動キャリアと前記固定ブラケットとに対してそれぞれ限定された運動の自由度を有し、それによって前記可動キャリアが、脊柱の動きに呼応して前記矯正ロッドに沿って摺動することができることを特徴とする、可動性の動的内部システムが提供される。
【0009】
本発明の更に別の一般的態様によれば、植込み可能なロッド上で摺動運動し、該ロッドに垂直な軸線の周りで前記ロッドに対して限定された枢動運動をするために、前記植込み可能なロッドに取付けられるようになっているキャリアと、それが骨に取付けられた時、前記キャリアの移動性を保つことを可能にするために、前記キャリアに連節結合される骨アンカーと、を含むことを特徴とする、可動性の動的固定組立体が提供される。
【0010】
本発明の更に別の一般的態様によれば、1対の植込み可能な脊椎ロッドの対応する1つのロッドに連結されるようになっている、対向する第1及び第2の端部と、前記植込み可能な脊椎ロッドが枢動して離れるのを防止し、並びに前記両ロッド間の他のどのような限定された相対運動をも可能とするように、前記第1及び第2の端部間を連接する点と、を含むことを特徴とする、1対の植込み可能な脊椎ロッドを互いに関節接続するための可動性の動的交差結合部材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による、患者の脊柱の横方向にずれた部分上に取付けられた可動性の動的脊椎器具システムの立体背面図である。
【図2】図1の可動性の動的脊椎器具システムの部分を形成する固定ペディクルネジ・ブラケットの断面図である。
【図3】図1の可動性の動的脊椎器具システムの部分を形成する可動的なペディクルネジ・キャリアの断面図である。
【図4】図1に図示した可動性の動的脊椎器具システムの部分を形成する連接された交差結合部材の断面図である。
【図5】図2及び図3に示すペディクルネジ・サブ組立体に代わるものとして、可動キャリア又は固定ブラケットに選択的に関節接続されるようになっている可動性の横突起フックサブ組立体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明の性質を全般的に述べたが、次に本発明の好ましい実施形態を例示した添付図面を参照する。
全体を通じて此処で使用される、「矢状面」という用語は、患者の身体の前額面又は背面内を右半部分と左半部分とに分ける脊柱の正中長手方向面を表すために用いられる。
【0013】
図1は、患者の脊柱Sの様々な異常を矯正するための可動性の動的植込み可能器具システム10を図解している。例えば、可動性の動的植込み可能システム10は、脊柱側弯症のような脊柱Sの側方への偏りを治療するために使用することができる。脊柱側弯症に罹患した患者においては、脊柱Sの湾曲部分の椎骨が、該椎骨に作用する捩り力により水平に回転する可能性があることが判明した。植込み可能な器具システム10は、図から分かるように、個々の椎骨を正常な脊柱内における椎骨の位置に近づけたほぼ再調整された位置に保持し、同時に有利には、椎骨の自然な移動性及び脊柱Sの骨の成長の可能性の幾分かを保ち続ける。
【0014】
図1に示した動的植込み可能器具システム10は、一般に1対の植込み可能な脊椎ロッド12及び14を含む。該脊椎ロッド12及び14の各々は、該システム10が植込まれる脊柱部分の望ましい3次元的湾曲に近似させるように湾曲させることができる。該ロッド12及び14は、チタン又はステンレス鋼のような金属合金で作られるのが好ましい。ロッド12及び14の一方は、椎骨を正しい整列状態にて並進させ且つ維持するための矯正ロッドとして使用され、他方のロッドは、矯正ロッドのための安定手段として機能する。特定の異常に対して、例えば、矯正ロッドに加わる荷重があまり重要でない場合には、1対のロッドの代わりに単一ロッドを使用することが可能である点に留意されたい。
【0015】
図示した実施例において、ロッド12は、中央固定ブラケット16aと、該中央固定ブラケット16aの両側に配置された任意数の可動キャリア18aとを貫通して延びる。同様に、図示した実施形態によれば、ロッド14は、中央固定ブラケット16bと、対向する側に配置された1対の可動キャリア18bとを貫通して延びる。治療すべき脊椎異常に応じて、可動キャリア18a及び18bは、図1に示したように固定ブラケット16a及び16bの対向する側ではなく、同じ側に配置することができる点に留意されたい。椎骨と椎間板との自然な生理的運動を幾らか許容しながら、脊柱Sの変形力に抵抗してロッド12及び14を矯正位置に維持するために、ペディクルネジ(pedicle screw)20のようなアンカーが、中央固定ブラケット16a、16b及び可動キャリア18a、18bに連接される。ロッド12及び14双方の可動キャリア18a及び18bに対する固定ブラケット16a及び16bの該配置は、有利には、システム10が患者の身体に植込まれたままの状態で、患者の脊柱が成長することができる。
【0016】
図2に見られるように、各々の固定ブラケット16a、16bは、中間が湾曲したロッド係合部分23と、平行に延びて、間に円周方向の空隙28を形成する対向した第1及び第2の端部24及び26とを有する、C字形のクランプカラー22の形態で設けられる。ピン30は、クランプカラー22の第1及び第2の端部24及び26内にそれぞれ形成された、1対の位置整合した貫通孔32、34を通って延びている。複数の軸方向に延びるスプライン36が、ピン30のテーパの付いた拡大底部上に円周方向にそれぞれ配置されて、貫通孔34の側壁内に形成された対応するスプライン(図示せず)と結合する。これによってピン30が、クランプカラー22に対してその長手方向軸線周りに回転することが防止される。ピン30はネジ部分38を有し、このネジ部分38上に自己破断性の自動調心ナット40を螺合させて、第1と第2の端部24、26を互いに押圧し、これにより、関係するロッド12、14の長手方向軸線に対しほぼ垂直に延び、且つこのロッドから横方向に間隔を置いて配置されているピン30と共に、クランプカラー22をロッド12及び14の一方に固定することができる。自己破断性の自動調心ナット40は、所定の締付けトルクで破断するようになっている環状脆弱域42を備えている。また、脆弱域44は、クランプカラー22に対し所望の留め力を伝達するために締め付けられると同時に、自己破断性の自動調心ナット40が破断されると、ピン30のネジ部分の余分な長さを取り除くのを容易にするために、ピン30のネジ部分内に形成される。ピン30の余分な長さ、すなわち脆弱域44とネジ部分38の自由遠位端間のピン30の部分は、貫通孔32及び34内へのピン30の係合を容易にするために使用される。
【0017】
ピン30は、そのネジ部分38と反対側の一端部に、各ペディクルネジ20の頭部内に形成されたソケット48内に受け入れられるようになっているボール体46を備えて、クランプカラー22及び関係するペディクルネジ20に自由度3の限定された相対運動が恒久的に可能となる。ソケット48からのボール体46の軸方向への離脱は、ソケット48内に螺合し、中央部分を貫通してピン30が外方に延びる中空保持キャップ50によって阻止される。
【0018】
保持キャップ50は、頂部環状フランジ52を有し、該フランジは、該フランジ下方に在る、関係するペディクルネジ20の頭部上面を支持し、該フランジから球状セグメント54が、一体的に上方に突き出ている。球状セグメント54をその中に受け、ペディクルネジ20とクランプカラー22との間の狭い相対的角運動を可能にするための空隙58を球状セグメント54との間に形成するために、クランプカラー22の第2の端部26の底面内には、半球状凹部56が形成される。本発明の一実施形態においては、ピン30に対するペディクルネジ20の角運動は、約28度に限定される。
【0019】
ペディクルネジ20をピン30に直接連接することにより、ナット40は、ピン30と協働してクランプカラー22をロッド12、14の一方に係止した状態に留め、同時に、ペディクルネジ20とクランプカラー22とを保持するようにして、組立部品の数を最少化することができる。
【0020】
従来の植込み可能な整形外科システムにおいて、関係する固定手段を貫通してロッドが取り付けられた後、アンカーが前記固定手段に対する所定位置に固定されるのに対して、図2に示したペディクルネジ20は、クランプカラー22に永久的に連接されている。これれにより、システム10に伝達される荷重を低減するのに大いに役立ち、従ってシステム10によって提供される支持力を補うために骨移植及び脊椎固定に頼る必要が無くなる。
【0021】
図3に見られるように、各可動キャリア18a、18bは、ソケット64と連通する1対の対向する位置整合した、長孔すなわち円周方向に延びるスロット62を形成する略円筒状本体60を含む。横方向の貫通孔68を有するローラ66が、ソケット64内に受けられる。ローラ66は、ソケット64内の長手方向軸線周りに回転自在である。該ローラ66は、本体60の開放端上に係止されたキャップ70によって、ソケット64内に捕捉保持されている。ソケット64内のローラ66の軸方向移動を防止するために、キャップ70の内側に研磨された軸受筒72が取り付けられている。軸受筒72は、その一方の側から垂直に延びた一体的な中央ピン突起74を有する。該ピン突起74は、軸受筒72をキャップ70の内側の所定位置に保持するために、キャップ70内に形成された対応する孔に圧入される。
【0022】
平坦な基部突起76が、本体60の開放端とは反対の一方端部から軸方向へ一体的に延びている。基部突起76は、該基部突起76の下側面内に形成された半球状凹部80と連通する孔78を有する。図2に図示したピン30と同様のピン82が、孔78及び半球状凹部80を貫通して延びている。自己破断性の自動調心ナット84がピン82上に螺合され、ピン82を本体60の基部突起76に結合する。孔78の側壁内に形成された対応するスプライン(図示せず)と結合するように、一連の軸方向に延びるスプライン77が、ピン82のテーパの付いた拡大部分に円周方向にそれぞれ配置されて、その結果ピン82が、基部突起76に対してその長手方向軸線周りに回転するのが防止される。ピン82は、その一方の端部にボール体86を備えており、このボール体86は、クランプカラー22に関して此処で前述したように、各ペディクルネジ20の頭部内に形成されたソケット88内に支持されるようになっている。ボール体86は、図2に示した保持キャップ50と類似の中空保持キャップ90により、ソケット88内に捕捉保持される。ボール体86、ソケット88、及び保持キャップ90は、玉継手を形成して、関係するペディクルネジ20がピン82に対して、従って、可動キャリア18a、18bの本体60に対して、自由度3で運動することができる。
【0023】
本体60は、ロッドがローラ66の貫通孔68内に摺動自在に支持され、本体60の位置整合されたスロット62を貫通して該本体60から外方に向かって延びた状態で、ロッド12又は14上に取付けられるようになっている。従って、可動キャリア18a及び18bは、関係するロッド12及び14に沿って摺動することができ、且つ脊柱Sの矢状面に平行な平面内で、関係するロッド12及び14に対して枢動可能である。ロッド12及び14に対する各可動キャリア18a、18bの本体60の枢動運動は、脊椎の移動性によって制限される。
【0024】
可動キャリア18aは、ロッド12に対し自由度2を有し、同様に可動キャリア18bは、ロッド14に対し自由度2を有する。可動キャリア18a及び18bの本体60に対するペディクルネジ20の運動の自由度に加えて、ロッド12及び14に対する可動キャリア18a、18bの傾斜能力は、ロッド12及び14に沿った可動キャリア18a及び18bの並進移動性を保証するために必要とされる柔軟性を提供する。脊椎の成長と、椎骨と椎間板間の自然な運動の幾分かが可能であるので、可動キャリア18a及び18bがロッド12及び14上で摺動自在の状態であり続けることが重要である。可動キャリア18a及び18bとロッド12及び14との間、及び可動キャリア18a及び18bとペディクルネジ20との間の上述した自由度の配分は、可動キャリア18a及び18bがロッド12及び14上に取付けられた時、可動キャリア18a及び18bのロッド12及び14に沿った並進運動が妨げられないことを保証する。
【0025】
図1に見られるように、可動キャリア18a、18bがロッド12、14から滑り抜けるのを防止するために、ロッド12、14の両端部に任意選択的な止め部材92を確実に固定することができる。ロッド12及び14の間に任意選択的に交差結合部材(cross link)94を取付けて、ロッド12及び14が離れて枢動するのを防ぎ、且つ該ロッド間の他のどのような相対運動をも可能とすることができる。
【0026】
図4に見られるように、交差結合部材94は、第1のセグメント96を含み、該第1のセグメントは、第2のセグメント102の近位端に一体的に形成されたボール100を支持するためのソケット98を形成する近位端を有する。ボール100はソケット98内で全ての方向に回転自在であり、それによって第1及び第2のセグメント96及び102間の関節部を形成する。
【0027】
第1及び第2のセグメント96及び102のそれぞれの遠位端には、ロッド係合部材104a及び104bが備えられている。図示した実施形態によれば、ロッド係合部材104a及び104bは、フック106a及び106bの形態で形成されており、これらのフックは、ロッド12及び14に対して交差結合部材94を固定的に取り付けるか、又は摺動自在に取付けるかによって、固定ボルト110又は滑りボルト112を選択的に支持するための、該フックの一方の端部から延びるそれぞれの管状突起108a及び108bを有する。図示の目的上、フック106aは、固定ボルト110と共に使用され、一方、フック106bは、滑りボルト112と共に使用されている。実際には、1対の滑りボルト112又は1対の固定ボルト110を同時に使用することも、或いはこれら2つを組合せて用いることもできるであろう。
【0028】
図4に見られるように、固定ボルト110は、ロッド12を楔止めして交差結合部材94をロッド上の所定位置に固定するために、フック106aの管状突起108aとは反対側の端部内に形成されたネジ孔114a内に螺合されている。同様に、滑りボルト112は、フック106bの管状突起108bとは反対側の端部内に形成されたネジ孔114bに螺合するように、フック106bの管状突起108bを貫通して延びる。しかしながら、滑りボルト112は、ロッドと14に係合せずにフック106bの口を閉止するだけであり、それによって交差結合部材94がロッド上で摺動可能となる。
【0029】
軸受筒116が、固定ボルト110囲りでフック106aの管状突起108a内に嵌合される。同様に、軸受筒118は、滑りボルト112囲りでフック106bの管状突起108b内に嵌合される。
【0030】
このようにして、この可動性の動的植込み可能器具システム10は、骨移植及び脊椎固定無しに使用されるようになっており、従って椎骨及び椎間板間の自然な移動性並びに脊柱及び骨の成長の可能性の幾分かを維持し続ける植込みを提供する。
【0031】
本発明の更に別の実施形態によれば、ペディクルネジ20と、関係するブラケット16a及び16bと、関係する可動キャリア18a及び18bとの間の自由度の数は、2に限定することができる点に留意されたい。
【0032】
ペディクルネジ20に代わるものとして、横突起フック120(図5参照)を、固定ブラケット16a、16b及び可動キャリア18a、18bの各々に連接的に取付けることができる。該横突起フック120は、その一方の端部にボール体123を有するピン122(ピン30と類似の)を含む。該ボール体123は、固定された弓形把持アーム128の円柱状頭部126内に形成されたソケット124内に捕捉され、それによってピン122と把持アーム128間の相対運動を制限することができる。ボール体123をソケット124内で保持するために、キャップ127が頭部126上に螺合される。可動把持アーム130は、固定把持アーム128の平面に対して垂直方向に延びる枢動ピン132により、固定把持アーム128に枢動自在に取付けられる。可動把持アーム130を固定把持アーム128に向かって枢動させるために、一体的な垂下舌状部136を介して可動把持アーム130を押すために、固定リング134が円柱状頭部126上に螺合される。このようにして、植込み可能な脊椎ロッドを脊柱の一方の側で固定するために、把持アーム128及び130を椎骨の任意の横突起周りで閉止することができる。把持アーム128、130の開放は、止め部材として機能する垂下舌状部136が存在することによって防止される。固定リング134の上方部分に沿って、多数の長手方向に延びる折曲げ可能なタブ138が配置されている。頭部126上での固定リング134の弛みは、キャップ127の周囲に形成された対応する直径方向に対向する平坦部分140に対して1対の直径方向に対向するタブ138を内向きに押圧することにより防止することができる。キャップ127が、頭部126上で弛んだ場合に、固定リング134が弛むのを防止するために、キャップ127のネジと固定リング134のネジとは逆ネジであるのが好ましい。
【0033】
図2及び3に図示したペディクルネジ20に関連して述べたように、ナット40と同様なナットをピン122の上方ネジ部分上に螺合することにより、横突起フック120は、固定ブラケット16a、16b又は可動キャリア18a、18b上に容易に取付けることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矢状面を有する脊柱の異常を治療するための可動性の動的内部システムであって、
患者の脊柱の一方の側に取付けるための少なくとも1つの植込み可能な矯正ロッドと、
前記矯正ロッドに堅固に取付けられる少なくとも1つの固定ブラケットと、
前記固定ブラケットの任意の側で前記矯正ロッドに摺動自在に取付けられる少なくとも1つの可動キャリアと、
前記矯正ロッドを脊柱に固定するために、前記可動キャリアと前記固定ブラケットとにそれぞれ取付けられる第1及び第2のアンカーと、を含み、
前記可動性の動的内部システムが植込まれた時に、前記第1及び第2のアンカーが、前記可動キャリアと前記固定ブラケットとに対してそれぞれ限定された運動の自由度を有し、それによって前記可動キャリアが、脊柱の動きに呼応して前記矯正ロッドに沿って摺動することができることを特徴とする、可動性の動的内部システム。
【請求項2】
前記可動キャリアが更に、脊柱の矢状面と平行な平面内で矯正ロッドに対して限定された枢動運動をするように、前記に対して取付けられることを特徴とする、請求項1に記載の可動性の動的内部システム。
【請求項3】
前記可動キャリアが、
互いに整列配置され、前記本体内に形成されたソケットと連通する、1対の対向する長孔を形成する本体と、
前記ソケット内で長手方向軸線の周りに回転自在であり、そこを貫通して前記矯正ロッドを摺動自在に支持するための横方向貫通孔を形成する、前記ソケット内に捕捉保持されたローラと、を含み、
前記横方向貫通孔は、前記ローラが前記矯正ロッド上に係合するのを可能にするために、前記長孔と整列して配置されるようになっており、
前記ロッドに対する前記本体の枢動運動が、脊椎の可動性により限定されることを特徴とする、請求項2に記載の可動性の動的内部システム。
【請求項4】
前記第1のアンカーが、前記可動キャリアに対して自由度3を有することを特徴とする、請求項1に記載の可動性の動的内部システム。
【請求項5】
前記第1のアンカーが、玉継手によって前記可動キャリアに連接されていることを特徴とする、請求項4に記載の可動性の動的内部システム。
【請求項6】
前記第1のアンカーが、前記長孔から横方向に離間した位置で前記可動キャリアの本体に連接され、前記第1のアンカーが、本体に固定されたボール体をその中で捕捉保持するソケットを形成する頭部を有することを特徴とする、請求項3に記載の可動性の動的内部システム。
【請求項7】
前記頭部が、前記本体の底面内に形成された凹部内に少なくとも部分的に支持されており、前記凹部と前記頭部とが、前記第1のアンカーと前記本体との間の限定された相対運動を可能にするための遊びを形成することを特徴とする、請求項6に記載の可動性の動的内部システム。
【請求項8】
前記第2のアンカーが、前記固定ブラケットに対する限定された相対的角運動をするために、前記固定ブラケットに連接されていることを特徴とする、請求項1に記載の可動性の動的内部システム。
【請求項9】
前記可動キャリアが、前記矯正ロッドに対して自由度2を有し、前記第1のアンカーが、前記可動キャリアに対して自由度3を有することを特徴とする、請求項1に記載の可動性の動的内部システム。
【請求項10】
前記可動キャリアが、前記矯正ロッドに沿って摺動し、脊柱の矢状面と平行な平面内で前記ロッドに対して枢動するようになっており、前記第1のアンカーが、玉継手によって前記可動キャリアに連接されていることを特徴とする、請求項9に記載の可動性の動的内部システム。
【請求項11】
前記固定ブラケットが、
前記矯正ロッドに固定係合して緊縮するようになっているクランプカラーと、
前記クランプカラーに係合して、前記第2のアンカーを前記クランプカラーに連接させ、同時に前記クランプカラーを前記矯正ロッドに固定するようになっている結合手段と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の可動性の動的内部システム。
【請求項12】
前記クランプカラーが、対向する第1及び第2の端部間に延びており、前記固定手段が、
前記第1及び第2の端部を貫通して延びるピンと、
前記第1及び第2の端部を互いに対して近づけるために前記ピン上で螺合するようになっているナットと、を含み、
前記ピンが、前記ナットに対して反対側にある前記第1及び第2の端部の一方端に、該端部の一方の外側に配置されたボール体を備え、
前記ボール体が、前記第2のアンカー内に形成されたソケット内に支持されて、前記第2のアンカーと前記固定ブラケットとの間の相対運動を可能にする連接継手を形成する、
ことを特徴とする請求項11に記載の可動性の動的内部システム。
【請求項13】
前記第2のアンカーが頭部を有し、該頭部内に前記ソケットが形成されていることを特徴とする、請求項12に記載の可動性の動的内部システム。
【請求項14】
任意数の固定ブラケットと、可動キャリアと、前記矯正ロッドと安定ロッドとを連節結合するための交差結合部材とを介して、前記矯正ロッドとは反対側ある前記背柱の一方側上に取付けられるようになっている植込み可能な安定ロッドを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の可動性の動的内部システム。
【請求項15】
前記交差結合部材が、前記矯正ロッドと安定ロッドとの間で互いに連接された、第1結合部材と第2結合部材とを含むことを特徴とする、請求項14に記載の可動性の動的内部システム。
【請求項16】
前記第1及び第2の結合部材が、玉継手によって互いに連接されていることを特徴とする、請求項15に記載の可動性の動的内部システム。
【請求項17】
前記第1と第2の結合部材が、それぞれロッド結合遠位端を有し、該各ロッド結合遠位端が、該各遠位端を前記矯正ロッド及び安定ロッドの内の対応するロッドにそれぞれ固定的に及び摺動自在に取付けるために、固定部材及び摺動部材の一方と選択的に協働するようになっていることを特徴とする、請求項15に記載の可動性の動的内部システム。
【請求項18】
前記少なくとも1つの可動キャリアが、前記矯正ロッドから滑落するのを防止するために、前記矯正ロッドの両端部に止め部材が設けられたことを特徴とする、請求項1に記載の可動性の動的内部システム。
【請求項19】
前記第2のアンカーが、玉継手を介して前記固定ブラケットに連接されていることを特徴とする、請求項8に記載の可動性の動的内部システム。
【請求項20】
任意数の可動キャリアが、中央固定ブラケットの両側に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の可動性の動的内部システム。
【請求項21】
植込み可能なロッド上で摺動運動し、該ロッドに垂直な軸線の周りで前記ロッドに対して限定された枢動運動をするために、前記植込み可能なロッドに取付けられるようになっているキャリアと、
骨に取付けられた時、前記キャリアの移動性を保つことを可能にするために、前記キャリアに連節結合される骨アンカーと、
を含むことを特徴とする、可動性の動的固定組立体。
【請求項22】
前記キャリアが、
互いに整列配置され、前記本体内に形成されたソケットと連通する1対の対向する長孔を形成する本体と、
これを貫通してロッドを摺動自在に支持するための貫通孔を形成する、前記ソケット内に回転自在に取付けられたローラと、を含み、
前記貫通孔は、前記ローラがロッドに係合されることを可能にするために、前記長孔と整列配置され、前記ロッドに対する前記本体の枢動運動が、脊椎の移動性によって限定されるように、前記長孔がサイズ形成されていることを特徴とする、請求項21に記載の可動性の動的固定組立体。
【請求項23】
前記骨アンカーが、前記長孔から横方向に離間した位置で前記キャリアの本体に連接され、前記骨アンカーが、前記本体に固定されたボールが捕捉保持されて玉継手を形成するソケットを形成する頭部を有することを特徴とする、請求項22に記載の可動性の動的固定組立体。
【請求項24】
前記頭部が、前記本体の底面内に形成された半球状凹部内に少なくとも部分的に支持され、前記半球状凹部と前記頭部とが、前記アンカーと前記本体との間の限定された相対運動を可能にするための遊びを形成することを特徴とする、請求項23に記載の可動性の動的固定組立体。
【請求項25】
1対の植込み可能な脊椎ロッドの対応する1つのロッドに連結されるようになっている、対向する第1及び第2の端部と、
前記植込み可能な脊椎ロッドが枢動して離れるのを防止し、並びに前記両ロッド間の他のどのような限定された相対運動をも可能とするように、前記第1及び第2の端部間を連接する点と、を含むことを特徴とする、1対の植込み可能な脊椎ロッドを互いに関節接続するための可動性の動的交差結合部材。
【請求項26】
前記交差結合部材が、前記1対のロッドの間で互いに連接される第1及び第2の結合部材を含むことを特徴とする、請求項25に記載の可動性の動的交差結合部材。
【請求項27】
前記第1と第2の結合部材が、玉継手により互いに連接されていることを特徴とする、請求項26に記載の可動性の動的交差結合部材。
【請求項28】
前記第1と第2の端部が、前記交差結合部材を前記植込み可能な脊椎ロッドにそれぞれ固定的に及び摺動自在に取付けるために、固定部材と摺動部材の一方と選択的に協働するようになっていることを特徴とする、請求項25に記載の可動性の動的交差結合部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−224400(P2011−224400A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−177276(P2011−177276)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【分割の表示】特願2002−522781(P2002−522781)の分割
【原出願日】平成13年8月30日(2001.8.30)
【出願人】(503083786)
【Fターム(参考)】