説明

脚部材及びその取付構造

【課題】経年変化により収縮が生じても、取着対象物品に対する保持力を失わない合成樹脂製の脚部材を取り付けるための手段を提供する。
【解決手段】脚部材1は合成樹脂製で、内側が中空に形成され、台座部2と、4つの側面3aを持つ四角柱状の嵌合凸部3とから成る。側面3aは中央部が外側へ膨出すると共にたわみ変形が可能である。平面視状態で、取付用凹部11の内壁面間隔d、同対角線の長さe、脚部材1の側面3a間の最大幅寸法D、同対角線の長さEは、d<D、e>Eの関係を持つ。嵌合凸部3を取付用凹部11内へ嵌め込んだときに、嵌合凸部3の側面3aがたわみ変形し、容易には脱落しないように嵌着される。e>Eに設定したので、嵌合凸部3の稜線部3dが取付用凹部11の四隅に当接するおそれがないから、嵌合凸部3のたわみ変形量を大きく設定して、経年変化による収縮に対抗させることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽や防水パン等の比較的重量が大きい据え置き型物品の底部へ、高さ調節のため取り付けられる脚部材及びその取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室を施工するに当たり、浴槽の上面高さ位置があらかじめ規定されている場合、浴槽の製品種類による高さ寸法の相違に応じて、高さ調節用の脚部材を浴槽底部に取着することが従来行なわれている。例えば特許文献1には、浴槽底部に設けた凹部内へ、ゴム又は合成樹脂より成る脚部材を弾性的に圧縮した状態で嵌着することが記載されている。また同文献1には、上記脚部材の周面に、脱落防止用の鰭片を複数形成することも記載されている。他方、特許文献2には、合成樹脂製の脚部材に平行配置した2つの係合片よりなるリブ係合部を設け、このリブ係合部の間へ浴槽底部に突設したリブを嵌合させることにより、上記脚部材を浴槽底部に取着する構造が記載されている。
【0003】
【特許文献1】実公昭51−9473号公報
【特許文献2】特開2000−300456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の脚部材は、ゴムで製作するのが最適であると考えられるが、合成樹脂製と比べて、ゴム製はコストが高くなる欠点がある。脚部材を合成樹脂で製作した場合は、合成樹脂が経年変化で収縮し、浴槽底部の凹部内に留まろうとする保持力が低下又は消失する可能性がある。また脱落防止用の鰭片を周面に形成するのは、形状が複雑になるため、コストの増大をもたらす。
【0005】
特許文献2に記載の脚部材も合成樹脂製であるため、同様に、経年変化による収縮で、浴槽底部のリブに対する保持力が低下又は消失する可能性がある。そこで、脚部材を合成樹脂製とした場合は、浴槽底部へネジや接着剤を用いて固定することが考えられるが、これは作業工数を増やし、施工能率の低下を招くので好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の問題点を解決するために本発明が採用した脚部材の特徴とするところは、請求項1に記載するとおりであって、合成樹脂で製作され、台座部と該台座部の上面に設けられた嵌合凸部とから成り、内側が中空に形成された脚部材であって、嵌合凸部は、多角形柱状、円柱状又は楕円柱状であり、側面が、水平断面において中央部を外側へ膨出させた形態に形成されると共に、たわみ変形が可能であることである。
【0007】
また据え置き型物品の底部に設けた取付用凹部に、前記脚部材を取り付けるための構造の特徴とするところは、請求項2に記載する如く、前記物品の取付用凹部は開口部が多角形状であり、脚部材の嵌合凸部を取付用凹部内へ嵌着したときに、嵌合凸部の側面がたわみ変形して、取付用凹部の各内壁面におけるほぼ中央部に圧接すると共に、取付用凹部の内壁面における各隅部に接触しないよう設定されていることである。
上記において据え置き型物品とは、浴槽や防水パン等の如く、施工面上に設置される比較的重量の大きい物品を適用対象として想定するものであるが、それらに限定されるものではない。
【0008】
なお前記取付構造において、脚部材の嵌合凸部が多角形柱状の場合は、請求項3に記載するように、平面視した状態で、取付用凹部における対向する内壁面の間隔寸法をd、対角線の長さをeとし、脚部材における嵌合凸部の対向する側面間の最大幅寸法をD、対角線の長さをEとすると、d<D、e>Eとなるように設定すればよい、
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の本発明に係る脚部材は、合成樹脂製であって、内部が中空であり、台座部の上面に設ける嵌合凸部を多角形柱状とし、各側面を水平断面において中央部が外側へ膨出する形態に形成すると共に、該側面をたわみ変形可能とした。あるいは嵌合凸部を円柱状又は楕円柱状とし、側面をたわみ変形可能とした。それ故、本発明の脚部材は、嵌合凸部を所定寸法の取付用凹部内へ押し込むことにより、側面がたわみ変形しつつ挿入されるから、嵌合凸部の側面が取付用凹部の内壁面に圧接して、容易には脱落しないように保持される。従って、脚部材の最初の嵌着時における側面のたわみ変形量を適当に設定しておけば、合成樹脂製の脚部材が経年変化により収縮したとしても。取付用凹部に対する保持力を失うことがない。その結果、本発明によれば、安価な合成樹脂で、脱落のおそれのない脚部材を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の本発明に係る取付構造によれば、据え置き型物品の底部に設けた多角形状の取付用凹部に、請求項1に記載する脚部材の嵌合凸部を嵌着したときに、嵌合凸部の側面がたわみ変形して、取付用凹部の各内壁面におけるほぼ中央部に圧接するから、容易には脱落しないように嵌着することができる。また嵌合凸部の側面が、取付用凹部の内壁面における各隅部に接触しないよう設定されているから、たわみ変形時に嵌合凸部の側面を、取付用凹部の隅部方向へ拡大させるのが容易である。よって、嵌合凸部側面のたわみ変形量を大きく設定して、経年変化による収縮に対抗させることが可能である。
【0011】
請求項3に記載する如く、脚部材の嵌合凸部が多角形柱状の場合において、取付用凹部との寸法関係を、d<D、e>E(d:凹部における対向する内壁面の間隔寸法、e;同対角線の長さ、D:前記脚部材における嵌合凸部の対向する側面間の最大幅寸法、E:同対角線の長さ)となるように設定することにより、脚部材の嵌合凸部を取付用凹部内へ嵌め込んだときに、嵌合凸部の側面がたわみ変形して、容易には脱落しないように嵌着することができる。このとき、嵌合凸部の側面は、幅方向には、その最大幅寸法Dが取付用凹部の内壁面の間隔寸法dと等しくなるように収縮すると同時に、対角線方向には、対向する稜線部間の距離を拡大するようにたわみ変形する。本発明では、e>E、すなわち取付用凹部における対角線の長さeよりも、脚部材の嵌合凸部における対角線の長さEが短くなるよう設定したので、嵌合凸部の稜線部が取付用凹部の四隅に当接するおそれがなく、たわみ変形時に、側面を対角線方向へ拡大させるのが容易である。よって、嵌合凸部側面のたわみ変形量を大きく設定して、経年変化による収縮に対抗させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1及び図2に、本発明に係る脚部材1の一例を示す。同脚部材1は、台座部2と、台座部2の上面に設けた嵌合凸部3とから成り、内側は、底面側を開口させた中空部4に形成されている。本例では台座部2の形態を、平面形状がほぼ正方形である板状としたが、これに限定されるものではない。
【0013】
本例の嵌合凸部3は、台座部2より一回り小さい平面形状を有し、4つのほぼ等しい側面3aを持つ四角柱状になされる。各側面3aは、水平断面において中央部が外側へ膨出する凸曲面の形態に形成される。上面部3bの周縁には面取部3cを形成して、取付用凹部への挿入を容易にしている。この面取部3cの形態は、図2(C)のような傾斜平面状でも、同図(D)のような湾曲面状でもよい。
【0014】
上記脚部材1は、例えばPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)等の合成樹脂で製作され、引っ張り弾性率を1000〜1500MPa、ロックウェル硬度を80〜90とするのが好ましい。合成樹脂の特性が上記範囲を逸脱して、材質が柔軟になりすぎた場合、嵌着時に取付用凹部に対する保持力を十分に発現できなくなるおそれがある。反対に、材質があまり硬質になると、たわみ変形させるのが難しくなり、取付用凹部への嵌着が困難になる可能性がある。
【0015】
図3は、本発明に係る取付構造の一例として、浴槽10の底部に設けた取付用凹部11に、前記脚部材1を嵌着した状態を示すものである。浴槽10の底部に、開口部の平面形状がほぼ正方形の筒体12が垂設され、その内部が取付用凹部11となされている。そして、この取付用凹部11内に、脚部材1の嵌合凸部3が嵌め込まれている。
【0016】
脚部材1の嵌合凸部3と、取付用凹部11との寸法関係について、図4を用いて説明する。図4(A)及び(B)に示すように、取付用凹部11と嵌合凸部3とは、いずれも概略的に見ると平面形状が正方形であり、平面視した状態において、取付用凹部11の対抗する内壁面13,13の間隔寸法をd、嵌合凸部の対向する側面3a,3a間の最大幅寸法をDとすると、d<Dである。他方、取付用凹部11における対角線の長さをe、嵌合凸部3の対角線の長さをEとすると、e>Eである。但し嵌合凸部3の側面3aは、正確には、中央部が外側へ膨出した形態である。
【0017】
かかる寸法関係を有する嵌合凸部3を取付用凹部11内へ嵌め込むと、図4(C)に示すように、嵌合凸部3の各側面3aは、中央部においては、その最大幅寸法Dが、取付用凹部11の内壁面間隔dと等しくなるように圧縮され、稜線部3dにおいては、対角線の長さEが拡大するようにたわみ変形する。e>Eであるから、中間部の圧縮率が大きくても、当該たわみ変形を容易に行なわせることができる。
【0018】
上記たわみ変形の結果、嵌合凸部3の各側面3aが、取付用凹部11の各内壁面13に圧接され、脚部材1が容易には脱落しないように嵌着される。嵌合凸部3の変形状態は、前述したD−dの値、側面3a部分の厚み寸法t(図5参照)、側面3aの膨出比率M/L(図5参照/L:側面3aの横幅寸法、M:側面3aの中央部の膨出寸法)などの値が大きく関係する。そして、これらの値と、材質である合成樹脂の特性(弾性率・硬度)とを適当に設定することにより、経年変化により材質の収縮が生じたとしても、取付用凹部11に対する保持力を失わない嵌着状態を得ることができる。
【0019】
なお、嵌合凸部3における側面3aの膨出形態は、図5に示すような、水平断面が外側に凸の円弧となる湾曲面とするほか、図6に示すような、水平断面が凸多角形となる多角面形状とすることが考えられる。
【0020】
本発明の脚部材1は、浴槽10などの据え置き型物品の高さ調節のため、底部に取着される。この目的のため、台座部2の高さ寸法H(図3参照)が異なる脚部材1を複数用意し、施工状況に応じ、高さ寸法Hが最適のものを選択できるようにすることが望ましい。
【0021】
脚部材1の高さ調節は、図7に示すような手段も考えられる。同図(A)のように、脚部材1の中空部4における少なくとも底面側に雌ねじ部5を形成し、これに対応する雄ねじ部7を有する高さ調節ボルト6を用意する。このような構成とすれば、同図(B)に示す如く、高さ調節ボルト6の雄ねじ部7を、脚部材1の雌ねじ部5に螺合させることにより、施工状況に応じた所要の高さを得ることができる。
【0022】
図8及び図9に、本発明に係る脚部材の取付構造の異なる実施形態を示す。図8(A)に示す如く、取付用凹部11の平面形状がほぼ正方形の場合は、脚部材1の嵌合凸部3を円柱状としてもよい。同図(B)に示すように、取付用凹部11の開口部形状が長方形の場合は。これに合わせて嵌合凸部3を、平面形状がほぼ長方形の四角柱状とすればよい。あるいは、同図(C)のように、楕円柱状とすることも考えられる。
【0023】
さらに取付用凹部11の開口部形状を、四角形以外の多角形状とすることも妨げない。例えば、図9(A)に示す六角形状や、同図(B)に示す三角形状などである。取付用凹部11をかかる形態とする場合は、これに合わせて、脚部材1の嵌合凸部3を、六角柱状や三角柱状とすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る脚部材の一例を示すものであって、図(A)は上面側から見た斜視図、図(B)は底面側から見た斜視図である。
【図2】本発明に係る脚部材の一例を示すものであって、図(A)は平面図、図(B)は側面図、図(C)及び(D)は嵌合凸部における面取部(図(B)において○で囲んだ部分)を拡大して示す側面断面図である。
【図3】本発明に係る脚部材の取付構造の一例を示すものであって、図(A)は側面断面図、図(B)は下側から見た平面断面図である。
【図4】本発明に係る脚部材の取付構造の一例を示すものであって、図(A)は取付用凹部の平面図、図(B)は脚部材における嵌合凸部の平面図、図(C)は取付用凹部に嵌合凸部を嵌着した状態の平面図である。
【図5】本発明に係る脚部材における嵌合凸部の一側面を拡大して示す平面断面図である。
【図6】本発明に係る脚部材の異なる実施態様を示すものであり、嵌合凸部の一側面を拡大して示す平面断面図である。
【図7】本発明に係る脚部材のさらに異なる実施態様を示すものであり、図(A)は脚部材と高さ調節ボルトとを分解して示す一部断面側面図、図(B)は脚部材に高さ調節ボルトを螺合させた一部断面側面図である。
【図8】本発明に係る脚部材の取付構造に関する異なる実施態様を示す平面断面図であって、図(A)は、脚部材の嵌合凸部を円柱状としたもの、図(B)は、取付用凹部の開口部形状を長方形とすると共に、嵌合凸部の平面形状をほぼ長方形の四角柱状としたもの、図(C)は、取付用凹部の開口部形状を長方形とすると共に、嵌合凸部を楕円柱状としたものである。
【図9】本発明に係る脚部材の取付構造に関するさらに異なる実施態様を示す平面断面図であって、図(A)は、取付用凹部の開口部形状を六角形とすると共に、嵌合凸部を六角柱状としたもの、図(B)は、取付用凹部の開口部形状を三角形とすると共に、嵌合凸部を三角柱状としたものである。
【符号の説明】
【0025】
1…脚部材 2…台座部 3…嵌合凸部 3a…側面 3b…上面 3c…面取部 3d…稜線部 4…中空部 10…据え付け型物品(浴槽) 11…取付用凹部 12…筒体 d…取付用凹部における対向する内壁面の間隔寸法 e…取付用凹部における対角線の長さ D…脚部材における嵌合凸部の対向する側面間の最大幅寸法 E…脚部材における嵌合凸部の対角線の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂で製作され、台座部と該台座部の上面に設けられた嵌合凸部とから成り、内側が中空に形成された脚部材であって、嵌合凸部は、多角形柱状、円柱状又は楕円柱状であり、側面が、水平断面において中央部を外側へ膨出させた形態に形成されると共に、たわみ変形が可能であることを特徴とする脚部材。
【請求項2】
据え置き型物品の底部に設けた取付用凹部に、請求項1に記載する脚部材を取り付ける構造であって、取付用凹部は開口部が多角形状であり、脚部材の嵌合凸部を取付用凹部内へ嵌着したときに、嵌合凸部の側面がたわみ変形して、取付用凹部の各内壁面におけるほぼ中央部に圧接すると共に、取付用凹部の内壁面における各隅部に接触しないよう設定されていることを特徴とする脚部材の取付構造。
【請求項3】
脚部材の嵌合凸部が多角形柱状であり、平面視した状態で、取付用凹部における対向する内壁面の間隔寸法をd、対角線の長さをeとし、脚部材における嵌合凸部の対向する側面間の最大幅寸法をD、対角線の長さをEとすると、d<D、e>Eとなるように設定されている請求項2に記載する脚部材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−213698(P2009−213698A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61203(P2008−61203)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【出願人】(391009578)ワールド化成株式会社 (1)
【Fターム(参考)】