説明

脱ろう装置及び連続式焼結炉

【課題】被焼結体の脱ろうの際の雰囲気ガスの組成を安定させバインダー成分を良好に除去するとともに、品質の優れた焼結体を安定して製造することが可能な脱ろう装置及び連続式焼結炉を提供する。
【解決手段】被焼結体を加熱しバインダー成分を除去する脱ろう室21と、前記被焼結体を搬送する搬送手段と、を備える脱ろう装置2であって、前記脱ろう室21を加熱し温度調整するための加熱手段20と、前記加熱手段20とは別に、前記脱ろう室21に酸化性ガスGを供給するためのガス導入手段30と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被焼結体を加熱しバインダー成分を除去する脱ろう室と、前記被焼結体を搬送する搬送手段と、を備える脱ろう装置及び連続式焼結炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼結体の製造に用いられる連続式焼結炉としては、例えば特許文献1に開示されるものが知られている。この連続式焼結炉は、圧粉体(被焼結体)を脱ろう温度域に加熱しバインダー成分を気化させて除去する脱ろう部(脱ろう装置)と、脱ろうした被焼結体を予熱温度域に加熱する予熱部(予熱装置)と、予熱した被焼結体を焼結温度域に加熱して焼結体に加工する焼結部(焼結装置)と、焼結体を冷却する冷却部(冷却装置)とを直列に連結して形成されている。
【0003】
そして、これら脱ろう装置、予熱装置、焼結装置及び冷却装置を貫通するようにして延びるベルトコンベアが無端状に形成されていて、その載置する被焼結体を搬送モータ等を用いて加工の上流側から下流側へと連続的に搬送し、焼結体の製造が行われるようになっている。また、焼結装置には、例えばN、H、アンモニア分解ガス、変成ガス等からなる還元性ガスが充満されており、該還元性ガスは常時一定量が焼結装置に供給されている。
【0004】
この還元性ガスは、焼結装置の加工の下流側の端部近傍から供給されており、供給された新しい還元性ガスによって、焼結装置に充満されている古い還元性ガスが加工の下流側から上流側へ向け送り出されるようになっている。そして、焼結装置から上流側へ送り出された還元性ガスは、予熱装置を経由して脱ろう装置へと流されていき、脱ろう装置の入り口近傍に設けられる排気筒から連続式焼結炉の外部へと排出されるようになっている。
【0005】
また、脱ろう装置には、被焼結体を脱ろう温度域に加熱するための複数の加熱バーナーが配設されている。そして、これら加熱バーナーを用いて例えばブタンやプロパン等の炭化水素系ガスを燃焼し、該燃焼により発生する水蒸気や二酸化炭素等を含む排ガス(酸化性ガス)によって被焼結体を加熱するとともに、脱ろうを促進させるようになっている。
このようにして、脱ろう装置には、焼結装置から加工の上流側へ向け送出される還元性ガスと、加熱バーナーの燃焼により発生する酸化性ガスと、が混在した雰囲気ガスが充満している。
【0006】
また、脱ろう装置に設けられる加熱バーナーは、該脱ろう装置の温度調整に用いられている。すなわち、この加熱バーナーは、脱ろう温度域を一定に維持するために温度プローブや制御部等によって燃焼状態を制御されており、該燃焼状態が点火・消火(ON−OFF)したり火炎を大小に変動(比例制御)したりするようになっている。
【特許文献1】特開平5−279706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、加熱バーナーの燃焼状態が変化すると、燃焼により生じる排ガス(酸化性ガス)量もこれに伴って変動することとなる。そして、排ガス量が変動すると、脱ろう装置に充満する雰囲気ガスの酸化性ガスと還元性ガスとの組成バランスが変動するため、被焼結体の脱ろうが安定しなくなるという問題があった。
【0008】
また、排ガス量が変動すると、脱ろう装置に充満する雰囲気ガスと加工の下流側の予熱装置や焼結装置に充満する雰囲気ガスとの圧力バランスが変動するため、脱ろう装置の雰囲気ガスの流れが加工の上流側や下流側に向きを変えやすくなり、該雰囲気ガスが焼結装置に逆流して焼結装置に充満する還元性ガスの組成を変化させ、安定した焼結を妨げることがあった。すなわち、製造される焼結体の表面近傍に脱炭や浸炭が生じて肌荒れを起こしたり、色合いに斑が生じたりして、製品の品質を低下させることがあった。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、被焼結体の脱ろうの際の雰囲気ガスの組成を安定させバインダー成分を良好に除去するとともに、品質の優れた焼結体を安定して製造することが可能な脱ろう装置及び連続式焼結炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。すなわち本発明は、被焼結体を加熱しバインダー成分を除去する脱ろう室と、前記被焼結体を搬送する搬送手段と、を備える脱ろう装置であって、前記脱ろう室を加熱し温度調整するための加熱手段と、前記加熱手段とは別に、前記脱ろう室に酸化性ガスを供給するためのガス導入手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明に係る脱ろう装置によれば、脱ろう室に酸化性ガスを供給するためのガス導入手段が加熱手段とは別に設けられており、このガス導入手段のみを用いて、該脱ろう室の雰囲気ガスの組成を調整するようになっている。従って、脱ろう室を温度調整するための加熱手段からは、脱ろう室に酸化性ガスは供給されない。
【0012】
すなわち、ガス導入手段のみによって所定量の酸化性ガスが脱ろう室に安定して供給されるので、該脱ろう室に充満する雰囲気ガスの組成バランスが安定する。また、加熱手段は、排ガス(酸化性ガス)を伴わずに脱ろう室を温度調整するようになっており、これによれば、従来のように、脱ろう室の雰囲気ガスの調整に温度調整用の加熱手段の排ガスを用いて、該加熱手段が温度調整のために排ガスの供給量を変動させるとともに、雰囲気ガスの組成バランスを不安定にしてしまうようなことがない。従って、被焼結体の脱ろうが組成の安定した雰囲気ガス中で良好に行われるとともに、脱ろう装置の後工程で焼結される焼結体の品質が向上する。
【0013】
また、本発明の脱ろう装置において、前記ガス導入手段は、前記被焼結体の搬送の下流側から上流側へ向け前記酸化性ガスを供給することとしてもよい。
本発明によれば、ガス導入手段から脱ろう室に送られる酸化性ガスは、被焼結体の搬送の下流側から上流側へ向け供給されているので、該酸化性ガスが、脱ろう室に充満する雰囲気ガスを上流側へ案内するようにして、該雰囲気ガスの流れを一定方向に形成するようになっている。
【0014】
これにより、脱ろう室の雰囲気ガスが搬送の上流側から下流側へ向け流れたり、下流側から上流側へ向け流れたりして方向を変動させるようなことがないので、脱ろう装置の搬送の下流側に配設される焼結装置での焼結に影響を及ぼす虞がない。
また、例えば、ガス導入手段から脱ろう室に酸化性ガスを常時一定量ずつ供給することとした場合には、脱ろう室に充満する雰囲気ガスの組成をより安定させることができるので、前記雰囲気ガス中における被焼結体の脱ろうがさらに安定して行われる。
【0015】
また、本発明の脱ろう装置において、前記ガス導入手段は、燃焼で発生する前記酸化性ガスを前記脱ろう室に供給する加熱バーナーを備えることとしてもよい。
本発明によれば、ガス導入手段は加熱バーナーを備えており、該加熱バーナーを用いて例えば炭化水素系ガスを燃焼させ、燃焼で発生する水蒸気や二酸化炭素を含む排ガス(酸化性ガス)を脱ろう室に供給するようになっている。すなわち、被焼結体の脱ろうを促すための良好な組成の酸化性ガスを、簡便に安定して供給することができる。
【0016】
また、本発明の脱ろう装置において、前記加熱手段は、前記脱ろう室に隣接して形成されるとともに伝熱可能な遮蔽部材と、前記遮蔽部材を挟んで前記脱ろう室の反対側に形成される加熱室と、前記加熱室に配置される温調用バーナーと、を備えることとしてもよい。
【0017】
本発明によれば、脱ろう室と区画された加熱室に、温調用バーナーが配設されている。温調用バーナーは、脱ろう室の温度調整に用いられ、該温度調整のためにその燃焼状態を変化させるようになっている。そして、温調用バーナーの燃焼で生じる熱エネルギーが、脱ろう室と加熱室とを区画する伝熱可能な遮蔽部材を介して、間接的に脱ろう室の加熱に用いられるようになっている。また、遮蔽部材によって、温調用バーナーの燃焼で発生した排ガスは、脱ろう室の雰囲気ガスに流入し混在することがないようになっている。
【0018】
このようにして、加熱手段の温調用バーナーの排ガスと脱ろう室の雰囲気ガスとが区画されているので、該雰囲気ガスが、加熱手段の発生する排ガス量の変動により影響を受けるようなことがない。すなわち、加熱手段が脱ろう室を温度調整するために温調用バーナーの燃焼状態を変化させても、脱ろう室に充満する雰囲気ガスの組成や流れの向きに何ら影響を及ぼすことがない。よって、被焼結体の脱ろうが安定して行われるとともに、脱ろう装置の後工程における該被焼結体の焼結が安定し、品質の良好な焼結体を製造することができる。
【0019】
また、本発明の連続式焼結炉は、前述の脱ろう装置と、脱ろう後の被焼結体を焼結するための焼結装置とを備え、前記被焼結体を前記搬送手段により搬送するよう構成されることとしてもよい。
本発明の連続式焼結炉によれば、搬送手段により加工の上流側から下流側へと搬送される被焼結体は、脱ろう装置で良好にバインダー成分を除去した後、焼結装置で安定して焼結されるので、品質の優れた焼結体を製造することができる。
【0020】
また、本発明の連続式焼結炉において、前記脱ろう装置と前記焼結装置との間に、該脱ろう装置で脱ろうされた被焼結体をさらに加熱する予熱装置が配設されていることとしてもよい。
本発明によれば、脱ろう装置と焼結装置との間に、脱ろう装置で脱ろうされた被焼結体をさらに加熱する予熱装置が設けられているので、被焼結体の脱ろうをより促進させ、バインダー成分を確実に気化して除去することができる。また、予熱装置での加熱によって、焼結装置の焼結のための準備加熱が行われているので、焼結装置に導入された被焼結体の焼結がより効率よく行われるようになっている。
【0021】
また、本発明の連続式焼結炉において、前記予熱装置は、前記ガス導入手段の熱源を用いて加熱されるとともに前記被焼結体を加熱する予熱室を備えることとしてもよい。
本発明によれば、脱ろう装置の脱ろう室に酸化性ガスを供給するガス導入手段の熱源は、例えば加熱バーナーからなるとともに、その酸化性ガスを発生させるための燃焼の熱エネルギーが予熱装置の予熱室の加熱に用いられるようになっている。
【0022】
すなわち、脱ろう装置のガス導入手段の熱源が、例えば予熱装置の予熱室近傍に設けられているとともに、該熱源の熱エネルギーが予熱室の加熱に用いられた後、さらに脱ろう装置の脱ろう室へと供給されて該脱ろう室の加熱に用いられるようになっている。これによれば、加熱のための燃料コストが低減されるとともに、経費削減の効果を奏功する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る脱ろう装置及び連続式焼結炉によれば、被焼結体の脱ろうの際の雰囲気ガスの組成を安定させバインダー成分を良好に除去するとともに、品質の優れた焼結体を安定して製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る連続式焼結炉の概略構成を示す正面図、図2は本発明の一実施形態に係る連続式焼結炉の脱ろう装置及び予熱装置の概略構成を示す正面図、図3は図2のA−A断面を示す側断面図、図4は図2のB−B断面を示す側断面図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の連続式焼結炉1は、金属粉末成形体(圧粉体)からなる被焼結体を脱ろう温度域(温度設定650℃〜700℃程度)に加熱し、成形に用いられたバインダー成分を気化させ除去するための脱ろう装置2を有している。また、脱ろう装置2の加工の下流側(図1における右側)には、該脱ろう装置2で脱ろうした被焼結体を予熱温度域(設定温度800℃程度)にさらに加熱して脱ろうを促進させるとともに、焼結の準備加熱(予熱)を行うための予熱装置3が配設されている。
【0026】
また、予熱装置3の加工の下流側には、予熱した被焼結体を焼結温度域(設定温度1120℃程度)に加熱して焼結し、焼結体に加工する焼結装置4が配設されている。また、焼結装置4の加工の下流側には、該焼結装置4で焼結した焼結体を水冷ジャケット等を用いて冷却するための冷却装置5が配設されている。そして、連続式焼結炉1は、これら脱ろう装置2、予熱装置3、焼結装置4及び冷却装置5を直列に連結して形成されている。
【0027】
また、これら脱ろう装置2、予熱装置3、焼結装置4及び冷却装置5を加工の上流側(図1における左側)から下流側へ貫通し、被焼結体を載置して搬送するためのメッシュベルト6aが配設されている。図1に示すように、メッシュベルト6aは、その上流側の端部近傍及び下流側の端部近傍で夫々搬送ローラ6bに巻き回されるようにして無端状に形成されており、搬送モータ(不図示)によって矢印Cに示す搬送方向に駆動されるとともに、被焼結体を加工の上流側から下流側へと搬送するようになっている。そして、メッシュベルト6a、搬送ローラ6b及び搬送モータを備えた搬送手段6が形成されている。
【0028】
また、焼結装置4には、焼結を行うための炉芯管4aが設けられており、該炉芯管4aの内部には、例えばN、H、アンモニア分解ガス、変成ガス等からなる還元性ガスRが充満している。また、この還元性ガスRは、焼結装置4の下流側の端部近傍に設けられるガス供給口4bから炉芯管4aの内部へ常時一定量が供給されている。このようにして焼結装置4の下流側から還元性ガスRが供給されることにより、炉芯管4aに予め充満されている古い還元性ガスRは、供給された新しい還元性ガスRによって加工の下流側から上流側へ向け送り出される。
【0029】
このようにして焼結装置4から上流側へ送り出された還元性ガスRは、予熱装置3を経由して脱ろう装置2へと流されていく。そして、脱ろう装置2の入り口近傍に設けられる排気筒2aから連続式焼結炉1の装置外部へと排出されるようになっている。
【0030】
また、図2に示すように、脱ろう装置2は本体部分が略直方体状に形成されており、その長手方向が前記メッシュベルト6aの延在する搬送方向Cに設定されている。また脱ろう装置2の内部には空間が形成されており、この空間が脱ろう室21と該脱ろう室21の上方に配置される加熱室22とに分けられている。これら脱ろう室21と加熱室22との間には、例えば金属板からなる遮蔽部材23が配設されており、該遮蔽部材23によってこれら脱ろう室21と加熱室22とが気密に区画されている。また、図3に示すように、遮蔽部材23は、その断面が略山形状に形成されている。
【0031】
また、脱ろう室21の一端側(図2における左側)には、被焼結体を装置に送る入り口24が開口して設けられており、この入り口24にはメッシュベルト6aが挿入されて搬送方向Cに延びている。また、入り口24近傍のメッシュベルト6aの上方には、前記排気筒2aが設けられており、その筒部2bを上方に向け延ばしている。また筒部2bの上端には、筒部2bを開閉するためのダンパー2cが配設されている。
【0032】
また脱ろう室21の搬送方向Cの略中央部分には、メッシュベルト6aから上方に若干の間隙を設けて温度プローブ25が配置されている。この間隙は、搬送される被焼結体に干渉しない程度とされている。温度プローブ25は、例えば熱電対からなり、図3に示すように水平方向に延在する略丸棒状に形成されているとともに、その先端部分が脱ろう室21の幅方向(図3における左右方向)の略中央近傍に配置されている。また、温度プローブ25は、制御部(不図示)に電気的に接続されている。
また、脱ろう室21の他端側(図2における右側)には、脱ろう室21に後述する排ガスG(酸化性ガス)を導入するために開口したガス煙道26が形成されている。
【0033】
また、加熱室22は、その天井部分に複数のガスバーナー(温調用バーナー)27を配設している。これらガスバーナー27は、その炎口27aの配置される先端部分が加熱室22内に向けられており、またガス接続口27bの配置される基端部分が装置外部に向けられている。そして、ガス接続口27bは、装置外部の例えばブタンやプロパン等の炭化水素系ガスを供給するためのガス供給源(不図示)に接続されている。また、炎口27a近傍には、パイロットバーナー27cからなる着火源が設けられている。
【0034】
また、ガスバーナー27とガス供給源との間には、不図示の電磁弁又は比例弁が配設されており、これら電磁弁又は比例弁が、前記制御部に電気的に接続されている。そして、ガスバーナー27の燃焼状態を電磁弁を用いて点火・消火(ON−OFF)したり、比例弁を用いて火炎を大小に変動(比例制御)したりするようになっている。
【0035】
また、加熱室22の一方側(図2における左側)には略円筒状のバーナー用排気筒28が配設されている。バーナー用排気筒28は、その軸線を水平方向に配置するようにして、装置の外部に開口している。そして、ガスバーナー27の燃焼により発生する排ガスを、装置の外部に排出するようになっている。また、ガスバーナー27の燃焼によって発生する熱エネルギーは、加熱室22の下端部に配置される遮蔽部材23を介してその下方の脱ろう室21に伝達され、該脱ろう室21の加熱に用いられるようになっている。また、このようにして、加熱室22、ガスバーナー27、ガス供給源及びバーナー用排気筒28を備えた加熱手段20が形成されている。
【0036】
また、図3において2点鎖線で示す脱ろう室21の幅方向の両端の側部29a及びメッシュベルト6a下方の底部29bは、脱ろう室21を加熱するための電気ヒータを設置するスペースとされており、これら側部29aや底部29bに複数の電気ヒータを設置するとともに、これら電気ヒータを前記制御部に電気的に接続して加熱制御することとしても構わない。ただし電気ヒータを設置する場合には、被焼結体から気化したバインダー成分付着による絶縁不良、異常発熱等のトラブルを防止するため、これら電気ヒータを保護管等で保護することが好ましい。
【0037】
また、脱ろう装置2の他方側(図2における右側)には、予熱装置3が配設されている。予熱装置3は本体部分が略直方体状に形成されており、その長手方向が前記メッシュベルト6aの延在する搬送方向Cに設定されている。また予熱装置3の内部には空間が形成されており、該空間は、予熱室31と該予熱室31の周囲に形成されるガス変成室32とに分けられている。
【0038】
予熱室31は、前記長手方向の両端が開口された筒状のマッフル管33で囲まれるようにして形成されており、また、該マッフル管33をメッシュベルト6aが貫通している。マッフル管33は、その一方側の一端部33aが脱ろう装置2の脱ろう室21に開口されており、また該一端部33aはガス煙道26の下方部分に配置されている。また、マッフル管33の他方側の他端部33bは、焼結装置4の前記炉芯管4aに気密に連通している。
【0039】
また、図4に示すように、マッフル管33はその断面形状が上下に扁平した略矩形状若しくは略蒲鉾状とされており、その天井部分は、幅方向(図4における左右方向)の略中央近傍を頂点として上方に膨らんだ滑らかな円弧状に形成されている。そしてマッフル管33によって、予熱室31とガス変成室32とが区画されている。
【0040】
ガス変成室32の一方側の端部近傍には、該ガス変成室32の天井部分から垂下するようにして煙道制限部材32aが設けられている。また、ガス変成室32の幅方向の側面部分には、この煙道制限部材32aの幅方向の両端近傍から下方へ延びるようにして、別の煙道制限部材32dが夫々設けられている。これら煙道制限部材32a,32dに囲まれる内方の空間は、脱ろう装置2のガス煙道26に繋がっている。
【0041】
また、ガス変成室32の搬送方向Cの略中央部分には、マッフル管33から上方に僅かに間隙を設けて、温度プローブ34が配置されている。温度プローブ34は、例えば熱電対からなり、図4に示すように水平方向に延在する略丸棒状に形成されているとともに、その先端部分がガス変成室32の幅方向の略中央近傍に配置されている。また、温度プローブ34は、制御部(不図示)に電気的に接続されている。
また、ガス変成室32の他端側の端部は、壁部32bによって閉塞されている。
【0042】
また、ガス変成室32の天井部分には、複数のガスバーナー(加熱バーナー)35が配設されている。これらガスバーナー35は、その炎口35aの配置される先端部分がガス変成室32内に向けられており、またガス接続口35bの配置される基端部分が装置外部に向けられている。そして、ガス接続口35bは、装置外部の例えばブタンやプロパン等の炭化水素系ガスを供給するためのガス供給源(不図示)に接続されている。また、炎口35a近傍には、パイロットバーナー35cからなる着火源が設けられている。また、ガスバーナー35と前記ガス供給源との間には、炭化水素系ガスを供給・遮断するための電磁弁(不図示)が配設されている。
【0043】
また、ガス変成室32には、ガスバーナー35の燃焼で発生する排ガス(酸化性ガス)Gを他方側から一方側へ向け案内するためのブロワーファン等からなる送気手段(不図示)が設けられている。また、このようにして、ガス変成室32、ガスバーナー35、ガス供給源及び送気手段を備えるガス導入手段30が形成されている。
【0044】
また、これらガスバーナー35は、炭化水素系ガスを燃焼させ、熱エネルギーを有する排ガスGを発生する。排ガスGは、水蒸気や二酸化炭素を含む酸化性ガスであり、被焼結体の脱ろうを促すために用いられる。またガスバーナー35は、その燃焼状態が一定の状態に維持されるように予め設定されており、燃焼によって常時一定量の排ガスGを発生するようになっている。発生した排ガスGは、ガス変成室32から脱ろう装置2のガス煙道26を通り、還元性ガスRと同様に搬送方向Cの下流側から上流側へ向け脱ろう室21に供給されるようになっている。そして、脱ろう室21において、還元性ガスRと混合されて、脱ろう室21に充満する雰囲気ガスを形成する。
【0045】
また、図4において2点鎖線で示すガス変成室32の幅方向の両端の側部32cは、予熱室31を加熱するための電気ヒータを設置するスペースであり、前記制御部に電気的に接続される複数の電気ヒータ(不図示)が設けられている。また、これら電気ヒータは各々保護管等で覆われている。
【0046】
次に、本実施形態の連続式焼結炉1を用いた被焼結体の焼結について説明する。
まず図1において、脱ろう装置2の長手方向の一方側の外方に配置されるメッシュベルト6a上に、被焼結体を載置する。被焼結体は、メッシュベルト6aの駆動に伴い、加工の上流側から下流側へと搬送方向Cに搬送されていく。
【0047】
脱ろう装置2では、脱ろう室21が前記脱ろう温度域に加熱維持されている。すなわち、脱ろう室21の温度プローブ25で検出された温度によってガスバーナー27の燃焼が制御部により制御されている。また、脱ろう室21に一定量供給されるガスバーナー35の排ガスGの熱エネルギーも、前記加熱維持に用いられている。また、脱ろう室21の側部29aや底部29bに電気ヒータを設置した場合には、これら電気ヒータも脱ろう室21の加熱に用いられる。
そして、脱ろう装置2の脱ろう室21の前記雰囲気ガス中において、被焼結体は搬送方向Cに搬送されながら加熱され、そのバインダー成分を気化させて除去し、脱ろうされるようになっている。
【0048】
予熱装置3では、予熱室31が前記予熱温度域に加熱維持されている。すなわち、ガスバーナー35の燃焼の熱エネルギーと、電気ヒータの熱エネルギーとを用いて予熱室31の加熱が行われているとともに、温度プローブ34の検出した温度により電気ヒータのみが制御部によって制御されている。そして、予熱装置3の予熱室31において、被焼結体は搬送方向Cに搬送されながらさらにそのバインダー成分を除去するとともに、より高温に加熱されて焼結の準備加熱が行われるようになっている。
【0049】
焼結装置4では、炉芯管4aが前記焼結温度域に加熱維持された状態となっている。そして、被焼結体が搬送方向Cに搬送されながら、炉芯管4aで焼結され焼結体へと加工される。
さらに、焼結後の焼結体は冷却装置5において冷却された後、搬送方向Cに搬送されて冷却装置5の他方側の外方へと送出される。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の連続式焼結炉1によれば、予熱装置3に配置されるガス導入手段30がガスバーナー35を備えており、脱ろう装置2の脱ろう室21に、ガスバーナー35の燃焼で生じる排ガスGを常時一定量だけ供給するようになっている。また、脱ろう装置2の加熱室22は、ガスバーナー27の燃焼により発生する排ガスを脱ろう室21に混在させないよう、遮蔽部材23によって該脱ろう室21と区画されている。
【0051】
これによれば、脱ろう室21を脱ろう温度域に温度調整するために、ガスバーナー27の燃焼状態を変化させても、脱ろう室21に充満する雰囲気ガスに対し何ら影響することがない。従って、ガスバーナー27の燃焼状態が、ガスバーナー35から脱ろう室21へ送られる排ガスGの供給量に影響を及ぼすようなことがない。
【0052】
すなわち、ガスバーナー35のみによって常時一定量の排ガスGが脱ろう室21に供給されて該脱ろう室21の雰囲気ガスの組成を調整しているので、従来のように、ガスバーナー27の燃焼状態の変動によって排ガスGの供給量を変化させてしまい、脱ろう室21に充満する雰囲気ガスの組成や流れの向きを変動させてしまうようなことがない。
【0053】
従って、被焼結体の脱ろうが安定して行われるとともに、脱ろう装置2の後工程における焼結装置4の焼結で、被焼結体の表面層での脱炭や浸炭が抑制され、肌荒れが防止されて、外観のよい、品質の優れた焼結体を安定して製造することが可能となる。
【0054】
また、このようにしてガス導入手段30から一定量ずつ供給される排ガスGは、搬送(加工)の下流側から上流側へ向けて送出されているので、焼結装置4から予熱装置3を経由し加工の上流側へと一定量ずつ送出される還元性ガスRと脱ろう室21において安定して混合されるとともに、該脱ろう室21に充満する雰囲気ガスの組成や流れの向きを安定して形成しながら該雰囲気ガスを上流側へと案内するようになっている。
【0055】
すなわち、排ガスGによって、脱ろう室21の雰囲気ガスの流れが一定方向に安定して形成されている。よって、従来のように、脱ろう室21に充満する雰囲気ガスがその流れる向きを変動させてしまい、加工の上流側から下流側へ逆流して焼結装置4に流れ込んでいくようなことがなく、従って、焼結装置4の焼結に影響を及ぼす虞がない。
【0056】
また、ガスバーナー35の燃焼により発生する排ガスGは、その発生する近傍において、まず予熱装置3の予熱室31の加熱に用いられるようになっている。すなわち、排ガスGは、ガスバーナー35から発生して予熱装置3の予熱室31の加熱に用いられた後、加工の上流側へと案内されて脱ろう装置2の脱ろう室21に供給されて、該脱ろう室21の加熱にも用いられている。従って、排ガスGの有する熱エネルギーが無駄なく有効に利用されており、加熱のための燃料コストが低減されるとともに、経費削減の効果を奏功する。
【0057】
また、脱ろう装置2のガス煙道26は、予め煙道制限部材32aの垂下する寸法を種々に設定することによって、その開口を調整可能とされている。すなわち、前記開口を適宜調整することによって、ガス変成室32から脱ろう室21に送出する排ガスGの流速を調節でき、脱ろう室21に充満する雰囲気ガスの攪拌を促すことができるようになっている。従って、被焼結体の脱ろうをさらに精度よく行うことが可能である。
【0058】
尚、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本実施形態では、排ガスGを発生するガスバーナー35を、予熱装置3に設けることとして説明したが、排ガスGを搬送の下流側から上流側へ送出するようにして脱ろう室21に供給可能であればよく、それ以外の構成であっても構わない。すなわち、例えばガスバーナー35を脱ろう装置2に設けてもよく、或いは脱ろう装置2及び予熱装置3以外の装置外部に設けても構わない。
【0059】
また、本実施形態では、焼結装置4の炉芯管4aに常時一定量の還元性ガスRが供給され、脱ろう装置2の脱ろう室21に常時一定量の排ガスGが供給されていることとして説明したが、脱ろう室21の雰囲気ガスの組成バランスを安定して形成可能な構成であればよく、これに限られるものではない。すなわち、例えば還元性ガスRの供給量を焼結に合わせ変動させるとともに、該変動に合わせ排ガスGの供給量を変化させるようにして装置を構成しても構わない。
【0060】
また、本実施形態では、予熱室31とガス変成室32とをマッフル管33により区画することとして説明したが、これに限られるものではない。すなわち、マッフル管33の代わりに、例えば板状部材を用いてこれら予熱室31とガス変成室32とを区画してもよく、或いはそれ以外の部材を用いて区画しても構わない。
【0061】
また、本実施形態では、加熱手段20のガスバーナー27の燃焼状態を制御して、遮蔽部材23を介して脱ろう室21の温度調整を行うこととして説明したが、脱ろう室21に充満する雰囲気ガスに影響を及ぼさないように、排ガスを伴わない加熱手段20であればよく、これに限られるものではない。すなわち、遮蔽部材23を設置せずとも、例えばガスバーナー27の代わりに電気ヒータを用いることとして装置を構成しても構わない。ただしこの場合、バインダー成分付着による絶縁不良、異常発熱等のトラブルを防止するため、前記電気ヒータを保護管等で保護することが好ましい。
【0062】
また、本実施形態では、予熱装置3のガス変成室32には、排ガスGを他方側から一方側へ向け案内するための送気手段が設けられることとして説明したが、排ガスGが自然対流により安定して脱ろう室21に供給されればよく、前記送気手段を用いない構成としても構わない。
また、本実施形態では、被焼結体は金属粉末からなる圧粉体として説明したが、これに限らず、バインダー成分を介して成形された金属材料からなるそれ以外の被焼結体であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態に係る連続式焼結炉の概略構成を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る連続式焼結炉の脱ろう装置及び予熱装置の概略構成を示す正面図である。
【図3】図2のA−A断面を示す側断面図である。
【図4】図2のB−B断面を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 連続式焼結炉
2 脱ろう装置
3 予熱装置
4 焼結装置
6 搬送手段
20 加熱手段
21 脱ろう室
22 加熱室
23 遮蔽部材
27 ガスバーナー(温調用バーナー)
30 ガス導入手段
31 予熱室
35 ガスバーナー(加熱バーナー)
C 搬送方向
G 排ガス(酸化性ガス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被焼結体を加熱しバインダー成分を除去する脱ろう室と、前記被焼結体を搬送する搬送手段と、を備える脱ろう装置であって、
前記脱ろう室を加熱し温度調整するための加熱手段と、
前記加熱手段とは別に、前記脱ろう室に酸化性ガスを供給するためのガス導入手段と、を備えることを特徴とする脱ろう装置。
【請求項2】
請求項1に記載の脱ろう装置であって、
前記ガス導入手段は、前記被焼結体の搬送の下流側から上流側へ向け前記酸化性ガスを供給することを特徴とする脱ろう装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の脱ろう装置であって、
前記ガス導入手段は、燃焼で発生する前記酸化性ガスを前記脱ろう室に供給する加熱バーナーを備えることを特徴とする脱ろう装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の脱ろう装置であって、
前記加熱手段は、前記脱ろう室に隣接して形成されるとともに伝熱可能な遮蔽部材と、
前記遮蔽部材を挟んで前記脱ろう室の反対側に形成される加熱室と、
前記加熱室に配置される温調用バーナーと、を備えることを特徴とする脱ろう装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の脱ろう装置と、脱ろう後の被焼結体を焼結するための焼結装置とを備え、前記被焼結体を前記搬送手段により搬送するよう構成されることを特徴とする連続式焼結炉。
【請求項6】
請求項5に記載の連続式焼結炉であって、
前記脱ろう装置と前記焼結装置との間に、該脱ろう装置で脱ろうされた被焼結体をさらに加熱する予熱装置が配設されていることを特徴とする連続式焼結炉。
【請求項7】
請求項6に記載の連続式焼結炉であって、
前記予熱装置は、前記ガス導入手段の熱源を用いて加熱されるとともに前記被焼結体を加熱する予熱室を備えることを特徴とする連続式焼結炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−215627(P2009−215627A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62593(P2008−62593)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【Fターム(参考)】