説明

脱塩重縮合系重合体の製造方法

【課題】脱塩重縮合反応を安定的にかつ効率よく行って、所望の分子量を有する重合体を容易に得ることができるとともに、脱塩重縮合反応後の精製工程をより短時間で簡易に行うことができる脱塩重縮合系重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】アルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒を用いて脱塩重縮合反応を行う工程を含む脱塩重縮合系重合体の製造方法であって、該脱塩重縮合反応工程は、アルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒として、比表面積が0.8m/g以上であって、かつ、篩法による粒度測定で目開き45μmの篩を通過する量が20質量%以下となる粉状物を用いる脱塩重縮合系重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱塩重縮合系重合体の製造方法に関する。より詳しくは、工業的な製造設備によって生産されるフッ素系重合体等の製造に好適に用いられる脱塩重縮合系重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重合体の製造方法の一つとして、単量体中の反応性官能基どうしが縮合反応して重合していく重縮合が知られており、その一つとして塩基性金属塩を触媒として用いて脱塩しながら重縮合を行う脱塩重縮合が工業的に行われている。
脱塩重縮合反応として、例えば、2つ以上のハロゲン元素を置換基として有する化合物と、2つ以上の水酸基やチオール基を有する化合物とからハロゲン化水素が脱離してエーテル重合体やスルフィド重合体を生成する反応等が挙げられる。脱離したハロゲン化水素は塩基性金属塩と反応し、副生塩が析出する。これらの反応から、ポリエーテルケトンやポリエーテルスルホン等のエンジニアプラスチックが得られることはよく知られている。更に、芳香族基にフッ素を含有するフッ素含有アリールエーテル系重合体は、耐熱性や電気的特性、及び、光学特性に優れた化合物であることから、高周波用配線基板や多層配線基板等の電子材料用途、液晶表示素子等の表示基板用途、表示装置用の光学フィルム材料として知られている。
【0003】
このような脱塩重縮合反応を用いた含フッ素アリールエーテルケトン重合体の製造において、有機溶媒中で塩基性化合物を触媒として単量体を重縮合することにより製造することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、重合体を再現性良くかつ短時間で製造することを目的として、有機溶媒中でジハロゲノジフェニル化合物と二価フェノール化合物を重縮合してポリアリールエーテルを製造する際に、比表面積が0.3m/g以上であるアルカリ金属化合物粒子を触媒に使用する方法や、アルカリ金属化合物として嵩密度が1.3g/cc以下である粒子を触媒に使用する方法が開示されている(例えば、特許文献2及び3参照)。これらのように、塩基性金属塩を触媒として用いてポリアリールエーテルの製造を行う場合、製造を円滑に進めるために触媒の塩基性金属塩として微粉化したものを用いる方法が知られている。しかしながら、微粉化した塩基性金属塩を用いると、反応後に塩基性金属塩を除去するための精製工程として濾過を行った時に長時間を要する場合がある。
【0004】
また、脱塩重縮合反応後の生成物の精製を抽出により行うことも行われており、脱塩重縮合反応を用いて重合体を製造する場合において、脱塩重縮合反応後に非極性溶媒を用いて、生成した重合体を抽出する方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)が、析出している副生成物を再度水に溶解して除くということは効率が悪い。これらのように、脱塩重縮合反応を用いた脱塩重縮合系重合体の製造方法において、反応効率の上昇、精製純度の向上という観点から技術の改善が進んではいるものの、脱塩重縮合反応に用いる塩基性金属塩触媒及び脱塩重縮合反応により生成する副生塩を反応後に煩雑な工程を経ず短時間に除去するということに関しては必ずしも充分な改善が行われてはいなかった。しかしながら、実際の製造時においては生成物である重合体の精製工程における塩基性金属塩触媒及び副生塩の除去は、重合体の生産における律速段階となり得る。したがって、高い反応効率で重合体を製造しながら、より短時間に、かつ、より簡易に触媒として用いた塩基性金属塩を除去し、重合体の精製工程をより効率化することができる製造方法とする工夫の余地があった。
【特許文献1】特開2001−64226号公報(第1−2頁)
【特許文献2】特開平6−32895号公報(第1−2頁)
【特許文献3】特開平6−32894号公報(第1−2頁)
【特許文献4】特開2007−119756号公報(第1−2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、脱塩重縮合反応を安定的にかつ効率よく行って、所望の分子量を有する重合体を容易に得ることができるとともに、脱塩重縮合反応後の精製工程をより短時間で簡易に行うことができる脱塩重縮合系重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、脱塩重縮合反応を用いて重合体を製造する場合において、脱塩重縮合反応を安定的にかつ効率よく行うことができ、また、生成する重合体と触媒として用いた塩基性金属塩とを分離する精製工程を短時間で簡易に行うことができるような脱塩重縮合系重合体の製造方法について種々検討した。
そうしたところ、脱塩重縮合反応の反応効率を高くするためには、塩基性金属塩の触媒能を上げて反応時間を短くするため塩基性金属塩の比表面積を大きくすることが必要であることに先ず着目した。
その一方で、比表面積を大きくするためにこれらの塩基性金属塩を微粉化して用いた場合には、塩基性金属塩を除去する工程を濾過によって行うと、塩基性金属塩の微粉と生成した重合体とによって濾過膜上に膜状物質が形成され、この膜状物質で濾過膜が覆われて濾過効率が著しく低下し、生産性に支障をきたすことが判った。これは、生成した重合体が微粉粒子間でバインダー的に働くため、粒子が細かいときに凝集のような現象が起こり、濾過膜上に貼りついて膜が形成され、目詰まりした状態になっているものと考えられる。このような場合、通常フィルター交換をして対応することが考えられる。しかしこの反応の場合、副生成物等の塩が非常に多く、フィルター上にケーキ層を形成している。したがって、通常のフィルター交換とは異なり、非常に煩雑な作業となり現実的ではない。また、濾過面積を大きくし、目詰まりを起こしにくくすることが考えられるが、通常の工業的な製造工程においては無理である。その他、濾過器を何台も並列し、目詰まりが起こり始め濾過速度が遅くなった時点で新しい濾過器に移して濾過することも可能であるが、工業的には好ましくなく、一台の濾過器で行うことが好ましい。
そこで、脱塩重縮合反応における反応効率と塩基性金属塩の除去効率とを両立させ、工業的に生産効率の高い有用な製法にするという課題を達成するために塩基性金属塩粒子の形態を種々検討した結果、比表面積が一定以上でありかつ粒子径を特定するという手法を見いだした。
これによって、反応を安定的にかつ効率よく行うことができるとともに、生成した重合体の精製工程として濾過を行った場合に、濾過膜上が重合体と塩基性金属塩粒子とによって形成される膜状物質により覆われないために濾過効率が大きく損なわれることがなく、結果、重合体の精製工程を短時間に、また簡易に行うことができるようになる。これは、特定以上の平均粒子径をもつ塩基性金属塩粒子を用いることによって、生成した重合体が粒子間に埋まりにくくなり、通過しやすくなる、言い換えれば、塩基性金属塩粒子が濾過助剤的に働き、粗いフィルターの役割を粒子自体が行っているものと考えられる。
このように、脱塩重縮合反応を用いて重合体を製造する方法において、塩基性金属塩の粒子として特定されたものを用いれば、上記課題をみごとに解決できることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、アルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒を用いて脱塩重縮合反応を行う工程を含む脱塩重縮合系重合体の製造方法であって、前記脱塩重縮合反応工程は、アルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒として、比表面積が0.8m/g以上であって、かつ、篩法による粒度測定で目開き45μmの篩を通過する量が20質量%以下となる粉状物を用いる脱塩重縮合系重合体の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法は、アルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒を用いて脱塩重縮合反応を行うものであるが、脱塩重縮合反応とは、2つ又は2つ以上の官能基を有する単量体間の反応であって、1つの単量体の官能基と、別の単量体の官能基間の反応において、酸が脱離し、官能基間に新たな結合が形成される反応が連続して起こることにより、重合体が形成される反応のことである。脱離した酸はアルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒と反応し、副生塩が生成される。脱塩重縮合反応により重合体を製造する反応としては,例えば、2つ以上のハロゲン元素を置換基として有する化合物と、2つ以上の水酸基を有する化合物から、ハロゲン化水素が脱離してエーテル系重合体が生成する反応等が挙げられる。脱塩重縮合反応に用いられる単量体は1種であってもよく、2種以上であってもよい。
なお、本発明の重合体の製造方法は、脱塩重縮合反応を行う工程、及び、脱塩重縮合反応後にアルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒を除去する工程を含むものである限り、その他の工程を含んでいてもよい。
【0009】
本発明の重合体の製造方法において用いられるアルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒は、脱塩重縮合反応により生成する酸を補集することにより脱塩重縮合反応を促進させる作用を有するものであることが好ましい。そのような作用を有するアルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸リチウム、水酸化カリウム、フッ化カリウムが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、炭酸カリウムを用いることが好ましい。
【0010】
本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法において用いられるアルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒の使用量としては、単量体成分が有する反応性官能基に対して0.8〜4当量が好ましい。より好ましくは、0.9〜3.0当量である。更に好ましくは1.0〜2.0当量である。これにより、脱塩重縮合反応が急激に進行することを防ぐことができ、所望の分子量を有する重合体を容易に得ることができる等の効果に優れることになる。
【0011】
上記単量体成分が有する反応性官能基とは、脱塩重縮合反応の原料として用いられる単量体が有する官能基であって、アルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒によって架橋反応を生じる求核種を意味するものである。反応性官能基は、水酸基、チオール基の何れかであることが好ましい。更に好ましくは、水酸基である。
なお、単量体成分が有する反応性官能基に対して0.8〜4当量の触媒を用いるとは、例えば炭酸カリウムを触媒に用いる場合、炭酸カリウムは2個のカリウムイオンを有するので、2官能の単量体(例えば、ビスフェノール)1モルに対して、0.8〜4モルの炭酸カリウムを用いることである。
【0012】
本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法において用いられるアルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒の比表面積は、0.8m/g以上である。比表面積が0.8m/g以上であるものを用いることによって、脱塩重縮合反応を高い効率で行うことができる。アルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒の比表面積は、1.0m/g以上であることが好ましい。より好ましくは1.2m/g以上である。より大きな比表面積をもったアルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒を用いることによって、触媒と反応原料との接触機会がより増加し、更に高い効率で脱塩重縮合反応を行うことが可能となる。比表面積が0.8m/gより小さい場合、触媒量を増やさなければ脱塩重縮合反応を充分に高い効率で行うことができないことになるが、触媒の量を増やすと、精製工程において触媒の除去に時間がかかるため好ましくない。
上記比表面積は、一般的にBET法と云われる方法を用いて測定できる。触媒として用いられる金属塩を真空で温度をかけて乾燥し、その窒素吸着量を測定することによって求めることができる。
【0013】
本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法において用いられるアルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒の粒子の大きさは、篩法による粒度測定で目開き45μmの篩を通過する量が20質量%以下であるものである。触媒として微粉を用いた場合、精製工程に濾過を行うと、生成した重合体が触媒等の微粉粒子表面に密着し粒子同士を結着させ、締まった膜状生成物を形成する。
この膜状形成物が濾過膜上を覆うことで濾過が阻害されることとなり、濾過に非常に時間がかかったり、目詰まり状態になったりする。これに対し、触媒の粒子の粒子が一定の大きさ以上である場合、粒子間の隙間が大きく、触媒粒子表面に密着した重合体だけでは締まった膜を形成できず、触媒粒子が粗いフィルターの役割を果たす。そのために、目詰まりせず濾過することができる。触媒全体に対して、目開き45μmの篩を通過する量が20質量%以下であれば、形成される膜状形成物は充分に締まった状態にならず、効率的に濾過を行うことが可能となる。
アルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒の粒子の大きさとしては、篩法による粒度測定で目開き45μmの篩を通過する量が10質量%以下であるものが好ましい。好ましくは、7質量%以下である。より好ましくは、5質量%以下ある。更に好ましくは1質量%以下である。
【0014】
本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法において用いられるアルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒の製造方法としては、水酸化カリウムと二酸化炭素とを反応させて炭酸水素カリウムを一旦合成し、合成した炭酸水素カリウムを熱することにより炭酸カリウムを合成する方法が好ましい。該製造方法によって得られる炭酸カリウムは、水酸化カリウムと二酸化炭素とを反応させて直接炭酸カリウムを合成する製造方法によって得られる炭酸カリウムと比較して粒子の形状が多孔質となる。その結果、比表面積が大きく、細孔容積の大きな炭酸カリウム粒子を得ることが可能となる。
【0015】
本発明の脱塩重縮合反応における重合体の製造方法において、生成する重合体と触媒として用いた塩基性金属塩及び副生塩とを分離する精製工程として濾過工程を行うことは一般的である。直接抽出を行ったり、再沈殿を行い分離することも可能であるが、廃液を考慮すると、析出している塩類をそのまま除くことは理に適っている。濾過器の大きさは任意に選択できるが、濾過面に堆積するケーキ厚みが25cm以下となるような濾過器を選択することが好ましい。
【0016】
本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法において製造される重合体は、重量平均分子量が10000以上であることが好ましい。製造される重合体の重量平均分子量が10000以上である場合、脱塩重縮合反応後の精製工程として濾過を行うと、微粉化したアルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒と製造される重合体とによる膜状物質の形成がより顕著に見られることになる。したがって、重量平均分子量が10000以上である重合体を製造する場合に、本発明の製造方法の効果がより顕著に発揮されることになる。また、分子量がある程度高くないと、重合体を用いる用途において膜又は成形体としての性能が充分ではなくなる恐れがある。
上記重量平均分子量は、より好ましくは、20000以上である。この場合、重合体の自立膜としての性能がより向上し、可撓性、耐ワレ性といった性能面で有利なものとなる。
また、重量平均分子量が300000を超えると、ポリマー溶液の粘度が高くなり取り扱いが難しくなるため、製造される重合体の重量平均分子量は、300000以下であることが好ましい。より好ましくは、200000以下である。
なお、本発明のように塩基性金属塩の粒子を用いて脱塩重縮合反応を行う場合、5000以下の重量平均分子量とすることは困難である。
上記重量平均分子量は、ポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC装置、展開溶媒;テトラヒドロフラン)によって測定することができる。使用カラム等のその他の測定条件は、本願明細書の実施例及び比較例に用いられているものを用いることが好適である。
【0017】
本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法において原料として用いられる単量体としては、脱塩重縮合反応の原料となるものであれば特に制限されず、ハロゲン原子や水酸基、チオール基、メルカプト基、及び、アミノ基等の置換基を2つ以上有する化合物の中から、脱塩重縮合反応が起こる単量体を適宜選択して1種類、又は、2種類以上を組み合わせて用いることができる。1種類の単量体のみで脱塩重縮合反応が起こる単量体としては、例えば、1つの分子中にハロゲン元素と水酸基との両方を置換基として有する化合物、1つの分子中にハロゲン元素とチオール基との両方を置換基として有する化合物等が挙げられる。これらの化合物は1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。また、1分子中に同一の置換基を2つ以上有する単量体同士の2種類以上の組み合わせとしては、例えば、臭素、塩素、フッ素等ハロゲン元素を2つ以上有する化合物と2つ以上の水酸基を有する化合物の組み合わせ、ハロゲン元素を2つ以上有する化合物とチオール基を2つ以上有する化合物との組み合わせ等が挙げられる。
なお、本発明の重合体の製造によって得られる重合体は、得られる重合体の重合鎖の少なくとも一部が脱塩重縮合反応により形成されるものである限り、重合鎖の他の部分が脱塩重縮合反応以外の反応により形成されるものであってもよい。すなわち、本発明の重合体の製造方法に原料として用いられる単量体は、脱塩重縮合反応により重合鎖を形成する単量体を含むものである限り、その他の単量体を含んでいてもよい。
【0018】
上記1種類の単量体のみで脱塩重縮合反応が起こる単量体としては、4−ヒドロキシ−4’−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル(HPDE)等の1つの分子中にハロゲン元素と水酸基との両方を置換基として有する化合物等が挙げられる。1分子に同一の置換基を2つ以上有する単量体同士を組み合わせて脱塩重縮合反応を行う場合に用いられる単量体としては、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(BPF)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(Bis−AF)、2,2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BisA)等のビスフェノール類等の2つ以上の水酸基を有する化合物;4,4′−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル(BPDE)、4−フェノキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾニトリル(PTFBN)、4,4′−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルオキシ)ジフェニルエーテル(BPDEs)、2,2−ビス(ペンタフルオロベンゾイルオキシフェニル)−1,1,3,3−ヘキサフルオロプロパン(BP6FBA)等の2つ以上のハロゲン原子を有する化合物等が挙げられる。
例えば、1分子に同一の置換基を2つ以上有する単量体同士を組み合わせて脱塩重縮合反応を行う場合、単量体の有効利用の観点から、1つの単量体1モルに対して、他の単量体0.8〜1.2モルの比率で用いることが好ましい。より好ましくは、1つの単量体1モルに対して他の単量体0.9〜1.1モルの比率で用いることである。
【0019】
本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法において製造される重合体は、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルアミド、及び、ポリエーテルエステルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
なお、上記ポリエーテルスルホンは、分子中にエーテル結合とスルホン酸基とを少なくとも1つずつ有する化合物であればよく、エーテル結合とスルホン酸基との比率は特に制限されない。上記ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルアミド、及び、ポリエーテルエステルについても同様に、分子中のエーテル結合とケトン基との比率、エーテル結合とニトリル基との比率、エーテル結合とアミド基との比率、及び、エーテル結合とエステル結合との比率は、特に制限されない。
また本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法において製造される重合体は、フッ素含有重合体であることが好ましい。フッ素含有重合体とは、フッ素原子を必須とする重合体である。
【0020】
更に本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法において製造される重合体は、フッ素含有芳香族系重合体であることが好ましい。フッ素含有芳香族系重合体とは、芳香環を有する重合体であって、フッ素原子を必須とする重合体である。
したがって、本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法において製造される重合体としては、芳香環を有しフッ素原子を必須とするポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルアミド、及び、ポリエーテルエステルからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、フッ素含有ポリアリールエーテル系、及び、フッ素含有ポリアリールスルフィド系のものが更に好ましい。
本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法においては、これらの重合体が製造されることとなるように、上述した単量体の中から、適宜単量体を選択して脱塩重縮合反応が行われることが好ましい。
【0021】
上記フッ素含有ポリアリールエーテル系重合体は、フッ素原子を必須とし、芳香環及びエーテル結合を有する重合体であり、上記フッ素含有ポリアリールスルフィド系重合体は、フッ素原子を必須とし、芳香環及びチオール結合を有する重合体であって、共にその結合順序やフッ素原子の結合している位置には特に制限はないが、繰り返し単位における芳香環の少なくとも1つにフッ素原子を有する重合体であることが好ましい。
【0022】
上記のものの中でも、本発明のフッ素含有芳香族系重合体は、下記式(1);
【0023】
【化1】

【0024】
(式中、Zは、同一若しくは異なって、2価の有機基又は直接結合を表す。mは、同一又は異なって、芳香環に付加しているフッ素原子の数を表し、1〜4の整数である。Rは、同一又は異なって、2価の有機基である。Yは、同一若しくは異なって、酸素原子又は硫黄原子を表す。)で表される構造の繰り返し単位を有する重合体である、及び/又は、下記式(2);
【0025】
【化2】

【0026】
(式中、Rは、同一又は異なって、2価の有機基である。Rは、同一若しくは異なって、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシル基、炭素原子数1〜12のアルキルアミノ基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、炭素原子数6〜20のアリールアミノ基、又は、炭素原子数6〜20のアリールチオ基を表し、これらは置換基を有していてもよい。)で表される構造の繰り返し単位を有する重合体であることがより好ましい。
これらの繰り返し単位は、同一であっても異なっていてもよく、異なる繰り返し単位により構成される場合には、ブロック状、ランダム状等のいずれの形態であってもよい。フッ素含有ポリアリールエーテル系重合体がフッ素含有ポリアリールエーテルケトン構造を含む繰り返し単位、フッ素含有ポリアリールスルフィド構造を含む繰り返し単位の両方を有するものである場合、両者の構成比率は特に制限されない。
【0027】
上記一般式(1)中、Zは、2価の有機基又はベンゼン環が直接結合していることを表す。2価の有機基として、C、S、N及び/又はO原子を含むことが好ましい。より好ましくはカルボニル基、スルフィド基、スルホン基、複素環を含有する2価の有機基であり、更に好ましくは下記式(3−1)〜(3−10)である。これらの中で(3−5)〜(3〜7)が特に好ましい。
【0028】
【化3】

【0029】
Xは、2価の有機基であるが、例えば下記式(4−1)〜(4−19)であることが好ましい。
【0030】
【化4】

【0031】
上記式(4−1)〜(4−19)中、Y、Y、Y及びYにおける置換基として、例えば、水素、置換基を有してもよいアルキル基、アルコキシル基が好適である。より好適なものとしては、炭素原子数1〜30であって、置換基を有してもよいアルキル基、アルコキシル基である。
【0032】
上記Xとしてより好ましくは、下記(5−1)〜(5−20)であり、更に好ましくは下記(5−6)、(5−7)、(5−15)、(5−20)である。
【0033】
【化5】

【0034】
上記式(1)中、Rは、上記Xと同様である。なお、Rが上記Xと同様であるとは、Rと上記Xとが同じ基であることが好ましいことを意味するのではない。Rと上記Xとは、同一又は異なっていてもよい。
【0035】
本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法において製造される重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、5以下であることが好ましい。より好ましくは4以下である。
【0036】
本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法において脱塩重縮合反応の溶媒として非プロトン性極性溶媒を用いることは、本発明の好適な実施形態の1つである。非プロトン性極性溶媒は、一般に非プロトン性極性溶媒に分類される溶媒であれば特に制限されないが、水への溶解度が10質量%以上のものであるほうが好ましい。水への溶解度が10質量%以上の非プロトン性極性溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が好ましい。また、水と任意に混合するものは、濾過工程の後に行う抽出の際に影響があるので、10質量%以上溶解する一方で、水と任意には混合しない溶液、例えば、MEK等がより好ましい。これらの溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0037】
本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法において脱水剤としてモレキュラーシーブを使用することは、本発明の好適な実施形態の1つである。モレキュラーシーブの使用量は、脱塩重縮合反応で発生する水(単量体と同モル当量)の5〜50倍重量であることが好ましい。より好ましくは8〜30倍重量であり、更に好ましくは10〜20倍重量である。
【0038】
本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法において脱塩重縮合反応の反応温度は、任意である。通常、脱塩重縮合を用いて作製するフッ素を含有しない重合体の場合、通常系中の反応温度を100℃以上の高温で行うか、又は、共沸溶媒を用いて脱水を行う。これに対して、本発明における脱塩重縮合工程は100℃以下で行う場合に特に効果を発現する。特に、フッ素含有芳香族系重合体を作製する場合には、0〜100℃であることが好ましい。反応温度が0℃より低い場合、反応が進みにくく分子量が上がりにくい。また、100℃より大きい場合、重合体がゲル化するおそれがある。反応温度は、好ましくは40〜95℃であり、より好ましくは60〜90℃である。100℃以下で行う場合、水が系中に存在しやすく、反応を円滑に進める為にモレキュラーシーブのような脱水剤が必須となる。
【0039】
本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法において脱塩重縮合反応の反応時間は、2〜10時間とすることが好ましい。
反応時間が10時間より長い場合、例えば4,4′−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテルのように5個のフッ素原子を有する芳香環において、ベンゾイル基の4位のフッ素だけでなくベンゾイル基の2位のフッ素も反応可能な状態に置かれていることから、重合体がゲルするおそれがある。反応時間としてより好ましくは4〜8時間である。
【0040】
本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法においては、重合濃度が10質量%以上であることが好ましい。なお、上記重合濃度は、触媒及びモレキュラーシーブを除いた固形分濃度である。これより低い場合、重合効率が悪く、また最終的に得られる生産性も低くなる。より好ましくは15質量%以上である。上記製造方法は、攪拌しながら脱塩重縮合反応を行うことにより、このような重合濃度であっても、各単量体成分の残存量を少なくすることができ、また、所望の分子量を有する重合体を得ることができる。
【0041】
本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法において、脱塩重縮合反応し濾過を行った後、非極性溶媒を用いて抽出を行う工程を行うことは、本発明の好ましい実施形態のひとつである。電子材料や光学材料用途では純度を重視する為、濾過後に抽出を行うことで充分な効果をえることができる。非極性溶媒としては、任意に水と混和しないものであれば特に制限されず、溶媒は1種用いてもよく、2種以上用いてもよい。非極性溶媒としては、例えば、エステル系、芳香族系、ケトン系が好ましい。また、非極性溶媒としては、上述したものの中でも、沸点が150℃以下の溶媒が好ましい。非極性溶媒が150℃以上になると、重合体から溶媒を完全に除くことに時間が掛かったり、溶媒置換が困難となったりする。より好ましくは、130℃以下のものであり、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、メチルイソブチルケトン(MIBK)等を用いることができる。更に好ましくは、酢酸エチル、酢酸ブチル、MIBKである。また、最も好ましくは、沸点が90℃以下のものである。
沸点の低い溶媒を抽出溶媒に選ぶことにより、それ以上の沸点の溶媒への溶媒置換が容易となるため、溶媒を選択できる。抽出に用いる非極性溶媒の使用量としては、重合溶媒の2倍以上であることが好ましく、3倍以上がより好ましい。
【0042】
本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法において、パドル翼を備えた重合槽中で単量体成分を含む反応溶液を攪拌しながら脱塩重縮合を行う工程を含むものであることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
本発明の製造方法が上記実施形態を有すると、脱塩触媒として用いるアルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒が重合槽内で分散した状態が維持され、有効触媒量が高く維持されることになり、脱塩重縮合反応を更に効率よく行うことができる。
【0043】
上記パドル翼を備えた重合槽は、槽径(D)に対する重合槽底部とパドル翼最下端とのクリアランス(α)の比(α/D)が5%以下であることが好ましい。
上記比(α/D)は、4%以下であることが好ましい。より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは2%以下であり、最も好ましくは1%以下である。
なお、パドル翼とは、平板部分の形状を有する攪拌翼である。クリアランスとは、パドル翼の最下端部から垂直方向に重合槽の釜底部までの距離を意味するものである。また、槽径とは、重合槽の内側の直径である。
【0044】
上記クリアランス比を満たすパドル翼を用いて脱塩重縮合を工業的に行うと、例えば、釜底に触媒の滞留が起こりにくくなり、触媒の反応溶液中における分散状態が均一となり、また、局所的ポリマー化反応等によって触媒が釜底に固着してしまう現象がより生じにくくなる。その結果、釜に満たされた反応溶液中において、分散状態が維持され、触媒の舞い上がりが促進されること等によって有効触媒量がより充分になる。これによって、重合がより遅延しにくくなる、設計通りのポリマーを調製することがより容易になる、釜への固着物を除去する必要が低くなる、製造作業に負担がかかる等の問題が生じにくくなる等の有利な効果が発揮されることになる。
【発明の効果】
【0045】
本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法は、上述の構成よりなり、脱塩重縮合反応を安定的にかつ効率よく行って、所望の分子量を有する重合体を得ることができる。また、脱塩重縮合反応の触媒として粒径の大きなアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を用いることで、脱塩重縮合反応工程の後に生成する副生塩や金属塩触媒を除去する精製工程を濾過によって行うと、その精製工程を短時間で簡易に行うことができる製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」意味するものとする。
【0047】
下記実施例及び比較例では、下記の装置を用いて測定を行った。
<測定装置>
(1)炭酸カリウムの粒子径測定
炭酸カリウム 50gを目開き45μmのステンレス篩を用いて篩にかけ、篩を通過した炭酸カリウム粒子の重量を測定した。
(2)比表面積測定
比表面積計NOVA2000(QUANTACHROME CORPORATION)を用いて測定した。具体的には、200℃で真空乾燥した炭酸カリウムをサンプルとし、窒素吸着量を測定することで比表面積を求めた。
(3)嵩比重
50mlのメスシリンダーに重量を測定した炭酸カリウムを約30ml投入し、30回軽く床にタップさせた。炭酸カリウムの重量をタップ後の容量で除することにより、嵩比重を求めた。
(4)分子量測定
高速GPC装置:HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用いて測定した。
測定条件:展開溶媒 THF
カラム TSK−gel GMHXL ×2本
溶離液流量 1ml/min
カラム温度 40℃
【0048】
実施例1
炭酸カリウムFG(旭硝子製)を用いた場合
BPDE 150.7g(270mmol)、BisAF 90.8g(270mmol)、モレキュラーシーブ3A 20×30 70g、MEK 650gを混合した。BPDE及びBisAFの溶解を確認後、炭酸カリウムFG(旭硝子製) 50.4g(365mmol)を投入して79℃で重合を7.5時間行った。得られた重合体の重量平均分子量は63000であった。その後、MIBK 700gを投入した。
冷却後、この溶液を300メッシュの金網を用いて圧力0.03MPaで加圧濾過(濾過面積φ142mm)を行った。装置の都合上、2回に分けて濾過器に投入し、その際の濾過時間(2回合計)を示した。
濾過後の溶液を、MIBKと水とを用いて分液洗浄し、MIBKを濃縮することで、ポリマーを得た。
【0049】
実施例2
炭酸カリウムFG(旭硝子製)を用いた場合
BPDE 111.7g(200mmol)、BPF 70.1g(200mmol)、モレキュラーシーブ3A 20×30 60g、MEK 800gを混合した。BPDE及びBPFの溶解を確認後、炭酸カリウムFG(旭硝子製) 69.1g(500mmol)を投入して79℃で重合を7.5時間行った。得られた重合体の重量平均分子量は64000であった。その後、MIBK 550gを投入した。
以下は実施例1と同様にして行い、ポリマーを得た。
【0050】
実施例3
炭酸カリウムFG(旭硝子製)を用いた場合
BPDEs(4,4′−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルオキシ)ジフェニルエーテル) 118.0g(200mmol)、BisAF 67.3g(200mmol)、モレキュラーシーブ3A 20×30 70g、MEK 720gを混合した。BPDEs及びBisAFの溶解を確認後、炭酸カリウムFG(旭硝子製) 33.2g(240mmol)を投入して79℃で重合を6.5時間行った。得られた重合体の重量平均分子量は68000であった。その後、MIBK 600gを投入した。
以下は実施例1と同様にして行い、ポリマーを得た。
【0051】
実施例4
実施例1の炭酸カリウムFG(旭硝子製) 50.4g(365mmol)を、炭酸カリウムFG 46.7g(338mmol)及び炭酸カリウム微粉 3.7g(27mmol)に変更した以外は同じ条件で行った。
重合時間は7時間15分で、得られた重合体の重量平均分子量は60000であった。
以下は実施例1と同様に測定した。
【0052】
比較例1
上記実施例1の炭酸カリウムFG(旭硝子製)を炭酸カリウム(旭硝子製)に変更した以外は同じ条件で行った。
重合時間は5時間で、得られた重合体の重量平均分子量は4000であった。
以下は実施例1と同様にして試験した。
【0053】
比較例2
上記実施例1の炭酸カリウムFG(旭硝子製)を炭酸カリウム(日本曹達製)に変更した以外は同じ条件で行った。
重合時間は5時間で、得られた重合体の重量平均分子量は5800であった。
重合が進行しなかったので、操作をここで中断した。
【0054】
比較例3
上記実施例1の炭酸カリウムFG(旭硝子製)を炭酸カリウム微粉(日本曹達製)に変更した以外は同じ条件で行った。
重合を3時間行ったところで、ゲル化したため操作をここで中断した。
【0055】
比較例4
BPDE 150.7g(270mmol)、BisAF 90.8g(270mmol)、モレキュラーシーブ3A 20×30 70g、MEK 650gを混合した。BPDE及びBisAFの溶解を確認後、炭酸カリウム微粉(日本曹達製) 41.0g(297mmol)を投入して79℃で重合を5時間行った。得られた重合体の重量平均分子量は75000であった。その後、MIBK 700gを投入した。
以下は実施例1と同様にして行い、ポリマーを得た。
【0056】
比較例5
BPDE 111.7g(200mmol)、BPF 70.1g(200mmol)、モレキュラーシーブ3A 20×30 60g、MEK 800gを混合した。BPDE及びBPFの溶解を確認後、炭酸カリウム(旭硝子製) 69.1g(500mmol)を投入して79℃で重合を5時間行った。得られた重合体の重量平均分子量は5100であった。
重合が進行しなかったので、操作をここで中断した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1の結果より、比較例1、2及び5では、製造される重合体の分子量がいずれも約5000程度であるために、濾過工程は非常に短時間に終了したが、重合体を用いる用途において膜又は成形体としての充分な性能を発揮することができる程度の分子量を有するものではなく、上記性能面で有利な重合体を製造できなかった。比較例3においては、製造途中においてゲル化してしまい、やはり性能面で有利な重合体を製造することができなかった。また、比較例4では、性能面では有利な分子量を有する重合体を製造することができたが、その後の濾過工程において殆ど目詰まりを起こしてしまい、1時間以上充分時間が経っても濾過を完了させることができなかった。一方、粒子径が大きく、かつ、比表面積の大きい炭酸カリウムを触媒として用いた実施例においてはいずれも、重合体として望ましい分子量を有するものを製造することができ、かつ、製造後の濾過工程も短時間で行うことが可能であった。
【0059】
なお、本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法におけるアルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒粒子の形状の影響について、上記実施例及び比較例から明らかになったことを概念的に表せば、例えば、下記表2のようになる。
【0060】
【表2】

【0061】
アルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒として粒子径が大きく、かつ、比表面積の大きいものを本発明の脱塩重縮合反応による重合体の製造方法において用いた場合、粒子径が大きいために、反応後の生成する重合体の精製工程として濾過を行うと、生成する重合体と塩基性金属塩粒子とによって形成される膜状物質により濾紙が覆われることがなく、よって、濾過が阻害されず、脱塩重縮合反応工程の後の精製工程を短時間で簡易に行うことが可能であった。また、比表面積の大きいアルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒を使用しているため、脱塩重縮合反応においても塩基性金属塩触媒を微粉化して用いた場合と遜色のない反応を実現することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒を用いて脱塩重縮合反応を行う工程を含む脱塩重縮合系重合体の製造方法であって、
該脱塩重縮合反応工程は、アルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒として、比表面積が0.8m/g以上であって、かつ、篩法による粒度測定で目開き45μmの篩を通過する量が20質量%以下となる粉状物を用いる
ことを特徴とする脱塩重縮合系重合体の製造方法。
【請求項2】
前記脱塩重縮合系重合体の製造方法は、脱塩重縮合反応工程の後にアルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒の濾過を行う工程を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の脱塩重縮合系重合体の製造方法。
【請求項3】
前記脱塩重縮合反応工程は、溶媒として非プロトン性極性溶媒を使用する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の脱塩重縮合系重合体の製造方法。
【請求項4】
前記脱塩重縮合系重合体は、フッ素含有芳香族系重合体である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の脱塩重縮合系重合体の製造方法。
【請求項5】
前記フッ素含有芳香族系重合体は、下記一般式(1);
【化1】

(式中、Zは、同一若しくは異なって、2価の有機基又は直接結合を表す。mは、同一又は異なって、芳香環に付加しているフッ素原子の数を表し、1〜4の整数である。Rは、同一又は異なって、2価の有機基である。Yは、同一若しくは異なって、酸素原子又は硫黄原子を表す。)で表される構造の繰り返し単位を有する重合体である、及び/又は、下記一般式(2);
【化2】

(式中、Rは、同一又は異なって、2価の有機基である。Rは、同一若しくは異なって、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシル基、炭素原子数1〜12のアルキルアミノ基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、炭素原子数6〜20のアリールアミノ基、又は、炭素原子数6〜20のアリールチオ基を表し、これらは置換基を有していてもよい。)で表される構造の繰り返し単位を有する重合体である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の脱塩重縮合系重合体の製造方法。

【公開番号】特開2010−18763(P2010−18763A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183075(P2008−183075)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】