説明

脱穀機

【課題】 揺動選別装置21の組み付け作業が行いやすい脱穀機を構造簡単に得られるようにする。
【解決手段】 揺動選別装置21のシーブケース25を、脱穀機体横向きの一本の連結軸41を介して脱穀機体の両横側に位置する揺動アーム42に連結してある。各揺動アーム42の遊端側に、脱穀機体の横側壁6aの貫通孔45を挿通して連結軸41の端部が連結される連結ボス部42bを備えてある。連結軸41がシーブケース25及び各揺動アーム42に組み付けられた状態において、連結軸41の両端が脱穀機体の横側壁内面よりも脱穀機体内側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀機体の外部に基端側が回動自在に支持され、遊端側が脱穀機体内に位置する揺動選別装置のシーブケースに相対回動自在に連結されて揺動選別装置を脱穀機体前後方向に往復移動自在に支持する揺動アームを、脱穀機体の両横側に設けてある脱穀機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記脱穀機において、従来、例えば特許文献1に示されるように、揺動選別装置のシーブケース6と、一対の揺動アーム5のボス部5aとにわたって装着される一本の脱穀機体横向きの連結シャフト37(連結軸に相当)を備えて、揺動選別装置が脱穀機体前後方向に往復移動自在に支持されるように支持構造を構成していた。
【0003】
【特許文献1】特開2002−58328号公報(段落〔0054〕―〔0055〕、図8,9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、特許文献1に示されるように、連結軸として、連結軸がシーブケース及び各揺動アームに装着された状態において連結軸の両端側が脱穀側板39(横側壁に相当)から脱穀機体外に突出する長い連結軸を採用しており、脱穀機の組み立てを行なうに当たり、脱穀機体内に入れた揺動選別装置のシーブケースの連結軸取り付け部と、脱穀機の横側壁の貫通孔とが合致した状態に揺動選別装置を支持しながら、連結軸を脱穀機体の外部から内部に差し入れてシーブケースに装着することにより、揺動選別装置を組み付けるという組み付け方法を採用する必要があった。このため、連結軸の揺動選別装置に対する組み付けを容易に行なうことができるように揺動選別装置を支持するための持ち上げレバー40を設けることにより、組み立て作業が楽に能率よく行なえるようにしていた。
【0005】
本発明の目的は、揺動選別装置を一本の連結軸を介して一対の揺動アームに連結するものでありながら、組み立て作業の容易化や能率向上を構造簡単に図ることができる脱穀機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明にあっては、脱穀機体の外部に基端側が回動自在に支持され、遊端側が脱穀機体内に位置する揺動選別装置のシーブケースに相対回動自在に連結されて揺動選別装置を脱穀機体前後方向に往復移動自在に支持する揺動アームを、脱穀機体の両横側に設けてある脱穀機において、
前記一対の揺動アームの遊端側と前記シーブケースとに装着されてシーブケースと各揺動アームを相対回動自在に連結する脱穀機体横向きの一本の連結軸を設け、
前記各揺動アームの遊端側に、脱穀機体の横側壁の貫通孔を挿通して前記連結軸の端部が連結される連結ボス部を設けるとともに、前記連結軸がシーブケース及び各揺動アームに組み付けられた状態において連結軸の両端が脱穀機体の横側壁内面よりも脱穀機体内側に位置するように連結軸を構成してある。
【0007】
すなわち、連結軸がシーブケース及び各揺動アームに組み付けられた状態において連結軸の両端が脱穀機体の横側壁内面よりも脱穀機体内側に位置するという比較的短尺の連結軸を介してシーブケースが一対の揺動アームに連結されるものである。これにより、脱穀機の組み立てを行なうに当たり、連結軸を脱穀機体外部でシーブケースに組み付けて揺動選別装置と共に脱穀機体の内部に入れておき、揺動アームの遊端側の連結ボス部が機体横側壁の貫通孔に入り込んで連結軸の端部に連結するようにしながら揺動アームの基端側を脱穀機体外部の支持部に装着して、各揺動アームを所定の組み付け状態にするという組み立て方向を採用することができる。
【0008】
従って、本第1発明によれば、シーブケースを一本の連結軸を介して一対の揺動アームに連結するものでありながら、連結軸を脱穀機体の外部で揺動選別装置に容易に組み付けて脱穀機の組み立て作業を楽に能率よく行なうことができ、しかも、揺動選別装置を支持するための持ち上げレバーの如き特別の支持手段を必要としないで構造簡単かつ安価に得ることができる。
【0009】
本第2発明にあっては、本第1発明の構成において、前記連結軸のこの連結軸の軸芯方向でのシーブケースに対する位置決めを行なう位置決め手段を、前記連結軸又は前記シーブケースに設けてある。
【0010】
すなわち、連結軸をシーブケースに組み付けて揺動選別装置と共に脱穀機体内に持ち込んだり、脱穀機体内に位置する連結軸に揺動アームを連結したりする際、位置決め手段によって連結軸のシーブケースに対する位置決めを行なっておき、連結軸がシーブケースに対してずれ動いて持ち込みや連結に支障が生じないようにしながら持込や連結作業を行なうことができる。
【0011】
従って、本第2発明によれば、位置決め手段によって連結軸のシーブケースに対するずれ動きを防止して揺動選別装置及び揺動アームの持込や連結を容易に行い、この面からも脱穀機の組み立て作業を楽に能率よく行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、クローラ式走行装置1、運転座席2が装備された運転部などを備えた自走機体の機体フレーム3の前部に、刈取り前処理部4の前処理部フレーム4aの基部を回動自在に連結するとともに前処理部フレーム4aにリフトシリンダ5を連動させ、前記機体フレーム3の後側に脱穀機6及び穀粒タンク7を設けるとともに脱穀機6の後部に排ワラ処理装置8を連結して、コンバインを構成してある。
【0013】
このコンバインは、稲、麦などの穀粒を収穫するものであり、リフトシリンダ5を伸縮操作すると、このリフトシリンダ5が前処理部フレーム4aを機体フレーム3に対して上下に揺動操作して刈取り前処理部4を引起し装置4bの始端部やバリカン形の刈取装置4cが地面上近くに位置した下降作業状態と、引起し装置4bや刈取装置4cが地面上から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降操作する。刈取り前処理部4を下降作業状態にして自走機体を走行させると、刈取り前処理部4は、引起し装置4bによって植立穀稈を引き起こし処理するとともに刈取装置4cによって刈取り処理し、刈取装置4cからの刈取穀稈を搬送装置4dによって機体後方向きに搬送して脱穀機6の脱穀フィードチェーン11の始端部に供給する。脱穀機6は、刈取穀稈を脱穀フィードチェーン11によって搬送しながら脱穀処理し、穀粒タンク7は、脱穀機6からの脱穀粒を回収して貯留していく。排ワラ処理装置8は、脱穀機6からの脱穀排ワラを細断して排出する細断処理を行なうか、あるいは長ワラ状態のままで排出する長ワラ排出処理を行なう。
【0014】
脱穀機6について詳述すると、図2に示すように、脱穀機6は、前記脱穀フィードチェーン11、扱室12などを備えた脱穀部10、扱室12の下方に前端側が位置した揺動選別装置21などを備えた選別部20、揺動選別装置21の下方に設けた1番スクリューコンベヤ31及び2番スクリューコンベヤ32などを備えて構成してある。
【0015】
脱穀部10は、脱穀フィードチェーン11によって刈取穀稈の株元側を挟持搬送し、刈取穀稈の穂先側を扱室12に供給して回動する扱胴13によって脱穀処理し、脱穀排ワラを扱室12の後端部に位置する送塵口14から排出して排塵ファン22の上方を通して前記排ワラ処理装置8に供給する。
【0016】
選別部20は、扱室12の受網15から落下した脱穀処理物を揺動選別装置21によって受け止めてこの揺動選別装置21によって脱穀機体後方向きに搬送しながら選別処理して、これとともに揺動選別装置21の前端部の下方に位置する唐箕23からの選別風を作用させて、精粒や未処理粒の穀粒と、ワラ屑などの塵埃とに選別処理し、精粒や未処理粒を揺動選別装置21から落下させ、塵埃を排塵ファン22によって選別風と共に吸引して脱穀機体外に排出したり、脱穀機体後部に位置する排塵口24から脱穀機体外に排出する。
【0017】
揺動選別装置21から落下した精粒は、1番スクリューコンベヤ31によって脱穀機体の横外側に搬出して1番スクリューコンベヤ31の終端部から前記穀粒タンク7に搬送する。揺動選別装置21から落下した未処理粒は、2番スクリューコンベヤ32によって脱穀機体の横外側に搬出して2番スクリューコンベヤ32の終端部から揚送コンベヤ33によって脱穀機体の還元口34に揚送し、この還元口34から脱穀機体内に投入して揺動選別装置21の前端部に還元するようになっている。
【0018】
図2に示すように、揺動選別装置21は、シーブケース25、及び、このシーブケース25の内部に揺動選別装置21の前後方向や上下方向に並べて設けたグレンパン26、チャフシーブ27、ストローラック28、グレンシーブ29などを備えて構成してある。
【0019】
図2,3に示すように、シーブケース25の前端側の下方に配置した脱穀機体横向きの一本の連結軸41を備えた支持構造40により、シーブケース25の前端側を脱穀機体の横側壁6aに脱穀機体前後方向に往復移動自在に支持させ、シーブケース25の後端側の下方に配置した偏芯カム51が駆動回動自在に装備された駆動機構50を介してシーブケース25の後端側を脱穀機体の横側壁6aに駆動自在に支持させてあり、これにより、揺動選別装置21は、駆動機構50によって脱穀機体前後方向に往復揺動するように揺動駆動される。
【0020】
図3,4に示すように、前記支持構造40には、前記連結軸41、及び、この連結軸41の両端部に連結された揺動アーム42を備えてある。
【0021】
各揺動アーム42の基端側には、脱穀機体の横側壁6aの外面側に設けた支軸43にベアリング44を介して回動自在に連結された取り付け部42aを備え、各揺動アーム42の遊端側には、前記横側壁6aに設けた長孔形の貫通孔45を挿通した連結ボス部42bを備えてあり、各揺動アーム42は、前記支軸43の軸芯まわりで脱穀機体前後方向に揺動するように脱穀機体の外部に取り付け部42aで支持されているとともに前記連結ボス部42bが横側壁6aの前記貫通孔45の内部を脱穀機体前後方向に往復移動する状態で揺動するようになっている。
【0022】
前記連結軸41の両端部がシーブケース25の下面側に設けた軸装着部25aと、揺動アーム42の前記連結ボス部42bとに相対回動自在に挿入されている。連結軸41と軸装着部25a及び連結ボス部42bの間にブシュ46,47が介装されている。連結軸41の両端部に、揺動アーム42の抜け外れを防止する抜け止めねじ48が装着されている。これにより、連結軸41は、シーブケース25と各揺動アーム42の連結ボス部42bとを相対回動自在に連結して、両揺動アーム42の揺動によって揺動選別装置21の前端側が脱穀機体前後方向に往復移動することを可能にしている。連結軸41がシーブケース25及び両揺動アーム42に組み付けられた状態において連結軸41の両端41aが脱穀機体の横側壁6aの内面よりも脱穀機体内側に位置するように、連結軸41の一端から他端までの長さLを脱穀機体の両横側壁6aの内面間長さよりも短くしてある。
【0023】
図4に示すように、連結軸41の両端側に図6の如きベータピンで成る位置決めピン60を設けてある。各位置決めピン60は、この位置決めピン60とシーブケース25の軸装着部25aの間に配置して連結軸41に装着された座金61を介して軸装着部25aの端面に当接することにより、連結軸41のこの連結軸41の軸芯方向でのシーブケース25に対する位置決めを行なうようになっている。すなわち、連結軸41の両端側でシーブケース23の軸装着部25aから横外側に突出した連結軸端部の長さが連結軸41を揺動アーム42の連結ボス部42bに連結するのに必要な長さになった所定の組み付け状態で連結軸41がシーブケース25に保持されることになるように連結軸41の位置決めを行なうようになっている。
【0024】
つまり、揺動選別装置21の組み付けを行うに当たり、図5に示す如き組み付け方法を採用することができるようになっている。
【0025】
すなわち、連結軸41を脱穀機体の外部で揺動選別装置21のシーブケース25に装着して揺動選別装置21と共に脱穀機体の内部に持ち込む。このとき、位置決めピン60を装着して連結軸41を所定の組み付け状態からずれ動かないようにシーブケース25に保持させておき、連結軸41がシーブケース25に対してずれ動いて持ち込み作業に支障が出ないようにして揺動選別装置21を脱穀機体内に持ち込む。この後、脱穀機体の両横側において、揺動アーム42の連結ボス部42bの一端側が横側壁6aの貫通孔45から脱穀機体内に入り込んで連結軸41の端部に連結するようにしながら揺動アーム42の取り付け部42aを横側壁6aの支軸43に装着し、支軸43に抜け止めねじ49を、連結軸41に抜け止めねじ48をそれぞれ装着するという組み付け方法を採用できるようになっている。
【0026】
図1に示すように、脱穀機体の横外側に、脱穀フィードチェーン11を覆うサイドカバー65を設け、このサイドカバー65にエンジン停止スイッチ66を設けてある。このエンジン停止スイッチ66は、押し操作されるとエンジン停止指令をエンジン停止装置(図示せず)に出力してエンジン停止を実行させるようになっている。
【0027】
図7に示すように、前記エンジン停止スイッチ66をエンジン停止装置に接続している電気コード67の脱穀機体フレーム6bに保持されている部位とエンジン停止スイッチ66の間に、伸縮性を備えるようにコイル状に成形した伸縮部68を備えてある。この伸縮部68は、脱穀フィードチェーン11を点検や清掃するなどサイドカバー65を取り外す際、エンジン停止スイッチ66から電気コード67を分離させなくともサイドカバー65を取り外すことができるように電気コード67を伸張状態にし、サイドカバー65が装着された状態において、電気コード67に過剰な弛みが出ないように電気コード67を収縮状態にするようになっている。
【0028】
図1に示すように、穀粒タンク7の排出口に搬送始端部が連通された走行機体上下向きの縦スクリューコンベヤ70と、この縦スクリューコンベヤ70の搬送終端部から上下揺動自在に延出された横スクリューコンベヤ71とを備えて成る搬出オーガを穀粒タンク7に備えてあり、この搬出オーガによって穀粒タンク7から穀粒を取り出すようになっている。
【0029】
図8に示すように、前記横スクリューコンベヤ71の先端部に位置する吐出口72の両横側に、超音波センサを利用した旋回停止センサ73を設けてある。縦スクリューコンベヤ70の回動操作によって横スクリーコンベヤ71が旋回操作されて横スクリューコンベヤ71の先端部が障害物に設定距離まで接近した際、前記旋回停止センサ73は、その接近を検出して旋回停止指令をオーガ旋回駆動装置(図示せず)に出力することにより、横スクリューコンベヤ71の旋回を自動的に停止させるようになっている。
【0030】
〔別実施例〕
上記位置決めピン60に替えてストッパーボルトなどを採用して実施しても、本発明の目的を達成することができる。従って、位置決めピン60やストッパーボルトなどを総称して位置決め手段60と呼称する。
また、位置決め手段60は、上記実施形態の如く連結軸41に設ける他、シーブケース25の方に設けて実施しても、本発明の目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】コンバイン全体の側面図
【図2】脱穀機の断面図
【図3】揺動選別装置前端側の支持構造の側面図
【図4】揺動選別装置前端側の支持構造の揺動アーム断面状態での正面図
【図5】揺動選別装置組み付け方法を示す正面図
【図6】連結軸の位置決め手段装着部の断面図
【図7】エンジン停止スイッチ配設部の断面図
【図8】横スクリューコンベヤの吐出口配設部の斜視図
【符号の説明】
【0032】
6a 横側壁
21 揺動選別装置
25 シーブケース
41 連結軸
41a 連結軸の端
42 揺動アーム
42b 連結ボス部
45 貫通孔
60 位置決めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀機体の外部に基端側が回動自在に支持され、遊端側が脱穀機体内に位置する揺動選別装置のシーブケースに相対回動自在に連結されて揺動選別装置を脱穀機体前後方向に往復移動自在に支持する揺動アームを、脱穀機体の両横側に設けてある脱穀機であって、
前記一対の揺動アームの遊端側と前記シーブケースとに装着されてシーブケースと各揺動アームを相対回動自在に連結する脱穀機体横向きの一本の連結軸を設け、
前記各揺動アームの遊端側に、脱穀機体の横側壁の貫通孔を挿通して前記連結軸の端部が連結される連結ボス部を設けるとともに、前記連結軸がシーブケース及び各揺動アームに組み付けられた状態において連結軸の両端が脱穀機体の横側壁内面よりも脱穀機体内側に位置するように連結軸を構成してある脱穀機。
【請求項2】
前記連結軸のこの連結軸の軸芯方向でのシーブケースに対する位置決めを行なう位置決め手段を、前記連結軸又は前記シーブケースに設けてある請求項1記載の脱穀機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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