説明

脱穀用の扱胴

【課題】扱歯を支持する支持部材自体によって、穀稈に十分な叩打、拡散効果を与えるものとする。
【解決手段】扱胴軸(12)の前部及び後部に支持板(18,19)を夫々装着し、前後の支持板(18,19)の間には、板体からなる複数の支持部材(20)を扱胴軸(12)を中心とした円周方向に互いに所定の間隔を置いて装着し、各支持部材(20)には複数の扱歯(21)を植設し、円周方向における各支持部材(20)の両端部(20a,20b)が中間部よりも扱胴軸(12)に接近するように各支持部材(20)を屈曲形成する。また、扱歯(21)を板体で構成すると共に、扱歯(21)の基部側を支持部材(20)の頂点(M)を跨いだ状態で取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀用の扱胴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、全稈投入型脱穀装置の扱胴構造としては、扱胴軸の前部、中間及び後部に一体装備した支持板の外周部に周方向所定間隔置きに装着支持された丸パイプ鋼材からなる6本の支持部材(扱胴フレーム)と、支持部材から外方に向けて突出する姿勢で前後方向に所定間隔を隔てて装備した複数の扱歯などによって籠状に構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−200763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
扱歯を植設する上記構成の支持部材は丸パイプからなるものであるため、この支持部材そのものでは十分な叩打、拡散作用が期待できないものである。
本発明の課題は、扱歯のみならず、支持部材そのものでも十分な叩打、拡散効果をもたらし、脱穀性能の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、扱胴軸(12)の前部及び後部に支持板(18,19)を夫々装着し、該前後の支持板(18,19)の間には、板体からなる複数の支持部材(20)を扱胴軸(12)を中心とした円周方向に互いに所定の間隔を置いて装着し、各支持部材(20)には複数の扱歯(21)を植設し、前記円周方向における各支持部材(20)の両端部(20a,20b)が中間部よりも扱胴軸(12)に接近するように各支持部材(20)を屈曲形成したことを特徴とする脱穀用の扱胴とする。
【0006】
扱室内に供給される刈取穀稈は、扱胴の回転により、扱歯(21)による打撃、扱き作用を受けながら脱粒されると共に、支持部材(20)によっても屈曲部にて叩かれ、捌き作用を受けながら広く拡散されることになり、脱穀性能が向上する。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記支持部材(20)を、断面形状が略く字形状になるように折り曲げて形成したことを特徴とする請求項1記載の脱穀用の扱胴とする。
上記構成によると、この支持部材(20)は丸棒部材に比べて平らな広い面で叩くことになるので打撃効果がアップし、また、くの字形状のため、扱胴自体を強固に保持する。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記扱歯(21)を板体で構成すると共に、該扱歯(21)の基部側を支持部材(20)の頂点(M)を跨いだ状態で取り付けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀用の扱胴とする。
【0009】
上記構成によると、支持部材(20)のエッジ部が外周方向に大きく突出することがないので、作物への打撃が緩和され、無駄な損傷が減少する。また、扱歯自体が補強材の役目を果たし、支持部材の強度を高め、強固な扱胴が得られる。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記支持部材(20)を、扱胴軸(12)の軸芯方向視で断面形状が略コの字形状になるように折り曲げて形成したことを特徴とする請求項1記載の脱穀用の扱胴とする。
【0011】
上記構成によると、支持部材は2箇所の折曲部によって強度が増し、扱胴全体の剛性、強度が十分に確保される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、扱歯(21)による打撃、梳き込み作用によって脱粒効果を高め、支持部材(20)によっても叩打、捌き拡散効果を高めることができ、脱穀性能の向上を図ることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、板体からなる支持部材(20)が、略く字形状であるため、扱胴自体を強固に保持することができる。
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2の発明の効果を奏するものでありながら、扱歯(21)自体が補強材の役目を果たし、支持部材(20)の強度を高くでき、扱胴の強度を高めることができる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果を奏するものでありながら、支持部材(20)がコの字形状であるため、扱胴全体の剛性、強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】全稈投入型コンバインの側面図
【図2】扱胴の斜視図
【図3】扱胴要部の縦断正面図
【図4】扱胴の縦断正面図
【図5】扱胴の別実施例の斜視図
【図6】扱歯の正面図
【図7】扱胴の斜視図及びその一部の正面図
【図8】扱胴別例要部の斜視図
【図9】同上要部の縦断正面図
【図10】同上別例要部の縦断正面図
【図11】扱胴別例要部の斜視図
【図12】扱胴別例要部の斜視図
【図13】扱胴逆転装置の平面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、全稈投入型の脱穀装置を備えた汎用コンバインを示すものであり、この走行車体1には、左右一対の走行クローラ2,2を備え、後部に搭載した脱穀装置(脱穀部)3の前方部に刈取部4を設置し,刈取部4の横側部には図外の運転席や操作ボックス等の運転操作部を備え、更に、その運転操作部の後方には脱穀粒を一時的に貯留するグレンタンクを装備している。
【0017】
刈取部4は、立毛穀稈を後方に掻き寄せる掻込リール5と、掻込後の穀稈を切断する刈取装置6、刈取後の穀稈を受け入れるテーブル7と、受け入れた刈取穀稈を一側又は中央側に集送する集送オーガ8と、集送された刈穀稈を脱穀装置3に送給するフィーダハウス9に内装された送給コンベア(フィードコンベア)10等からなり、走行車体に対してフィーダハウス9の後端部を支点として昇降可能に装備している。
【0018】
脱穀装置3は、扱室11内に供給される穀稈を駆動回転する扱胴13により脱穀処理するよう構成している。扱室11の下半周部には受網14が張設され、扱胴13の上部は扱胴カバー15によって被覆されている。
【0019】
扱胴13は、扱胴軸12が扱室11の前壁板16と後壁板17とにわたって架設され、エンジンからの動力伝達を受けて回転駆動されるようになっている。そして、この扱胴軸12の前側に一体的に架設した支持板18と後側部位に一体的に架設した支持板19との間にわたり、板体からなる6本の支持部材20を扱胴の周方向所定間隔置きに配列して一体的に連結保持させて設け、各支持部材20には複数の扱歯21を前後方向所定間隔置きに植設することによって籠状の扱胴が構成されている。
【0020】
支持部材20は、扱胴の円周方向両端部位が円周方向中間部位よりも内側となるよう屈曲形成してあり、図3に示す実施例では、この支持部材における扱胴円周方向中間部位から円周方向の回転上手側部位と回転下手側部位とに変位すべく略くの字形状に折り曲げ形成している。
【0021】
また、この支持部材20は、扱胴円周方向の両端部20a,20bが扱胴軸の軸芯方向視で各支持部材の頂点Mを結んだ多角形よりも内側となるよう構成している。つまり、多角形の内角θ1よりも小さい角θ2となるよう(θ1>θ2)に形成している。
【0022】
なお、支持部材のくの字形状の変形例として、回転方向前面側が幅広く、回転方向後面側が幅狭くなるようへの字形状に構成することもできる。
また、前記支持部材のくの字形状に代えて、図4に示すように、断面略コの字型(又は半円弧型)に折り曲げ形成するものであっても良い。
【0023】
扱歯21は、板体で構成(ソリッド歯)し、くの字型支持部材の頂点を跨ぐ状態にして溶接等により一体化した構成としている。
図5に示す扱胴の構成例について説明すると、扱胴13の前端部に穀稈を取り込む取込スパイラ30を有し、扱胴軸に固定した前後の円盤部材31a,31bの外周部に、丸又は角状の棒状部材32を所定間隔をあけて前後方向に沿わせて設け、各棒状部材32には、図6に示すような多角形(a)又は複数の鋭角の頂点を持つ星型(b)形状のソリッド扱歯33を所定間隔をあけて一体的に固着して設け、各棒状部材32は、前後の円盤部材31a,31bに対し該棒状部材の前後方向の軸芯を中心として回動固定自在に取り付けた構成としている。この構成によると、扱歯が磨耗したときには、棒状部材を回動させるだけで、これと一体の扱歯を回動させて新たな扱歯に変更することができる。棒状部材を適宜回動変位させることにより、扱歯の突出量を任意に変更することもできる。
【0024】
また、前記扱歯は、棒状部材に対して送り方向に適宜傾斜させることによって処理物の後方への送りを促進することができる。
図7に示すように、前後の円盤部材31a,31b間で、棒状部材32の中間部を扱胴軸12から放射状に延出したスポーク形状の中間支持部材34によって支持するように構成することで、扱胴内での処理物の移動が停滞なく円滑に行える。
【0025】
図8〜図10に示す実施例では、扱胴軸12の前端と後端に支持板体31,31を有し、その間の扱胴本体部35は板体によって多角形(六角形)に構成すると共に、多角形の各稜線部に沿って補強部材36を前後方向に沿わせて設け、補強部材36にはソリッド扱歯33を所定間隔置きに設けた構成としている。
【0026】
また、図11に示す実施例では、棒状部材32の外周にラセン扱歯37を巻回した構成であり、図12に示す実施例では板状支持部材20の外周にラセン扱歯37を巻き掛けた構成としている。
【0027】
図13に示す実施例は、扱胴の逆転装置に関するもので、扱胴軸12上をフリーで回転する一対のベベルギヤG1,G2を設け、ベベルギヤG1,G2は、扱胴入力軸25上のベベルギヤG3と常時噛合う構成とし、一対のベベルギヤG1,G2には爪クラッチ26を有し、通常は扱胴軸12のスプライン上を前後方向に摺動する爪クラッチ付きシフタ27aとベベルギヤG1が噛合う。シフタ27a側のシフトに切替操作すると、シフタ27aがベベルギヤG2と噛合って、通常とは逆方向に扱胴が回転するようになっている。上記のシフタ27は、脱穀レバー28と連動する牽制装置29により、脱穀レバー28を「切」の位置に操作した時のみ、操作ができるように構成している。
【0028】
上記構成によると、シフタを切り替え、扱胴の回転方向を通常回転方向と逆転させることで、扱胴に詰まった穀稈等を容易に除去することができる。また、脱穀回転中に急激に回転方向を切り替えることが無いので安全である。
【符号の説明】
【0029】
12 扱胴軸
13 扱胴
18 支持板(前)
19 支持板(後)
20 支持部材
20a 端部
20b 端部
21 扱歯
M 頂点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴軸(12)の前部及び後部に支持板(18,19)を夫々装着し、該前後の支持板(18,19)の間には、板体からなる複数の支持部材(20)を扱胴軸(12)を中心とした円周方向に互いに所定の間隔を置いて装着し、各支持部材(20)には複数の扱歯(21)を植設し、前記円周方向における各支持部材(20)の両端部(20a,20b)が中間部よりも扱胴軸(12)に接近するように各支持部材(20)を屈曲形成したことを特徴とする脱穀用の扱胴。
【請求項2】
前記支持部材(20)を、断面形状が略く字形状になるように折り曲げて形成したことを特徴とする請求項1記載の脱穀用の扱胴。
【請求項3】
前記扱歯(21)を板体で構成すると共に、該扱歯(21)の基部側を支持部材(20)の頂点(M)を跨いだ状態で取り付けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀用の扱胴。
【請求項4】
前記支持部材(20)を、扱胴軸(12)の軸芯方向視で断面形状が略コの字形状になるように折り曲げて形成したことを特徴とする請求項1記載の脱穀用の扱胴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−175952(P2012−175952A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41755(P2011−41755)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】