説明

脱穀装置

【課題】脱穀装置において、唐箕フアン13の唐箕軸24に、選別風の吸引口29aに隣接するようにして入力プーリ26を設けるにあたり、入力プーリ26で吸引口29aを塞がないようにする。
【解決手段】唐箕フアン13が設けられる唐箕軸24に、選別風吸引口29aの外側に隣接して大径の入力プーリ26が設け、該入力プーリ26の外径を吸引口29aよりも大径にしてリム26aの内周に形成される開口の内径を吸引口29aよりも大径にし、これによって、吸引口29aが、隣接する入力プーリ26によって塞がれてしまうことが解消されて効率のよい選別風の吸引がなされることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米や麦等の穀粒の脱穀処理をするための脱穀装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種脱穀装置には、脱穀ケース側板に設けた吸引口から吸引した空気を選別風に起風するための唐箕ファンが設けられているが、このような唐箕ファンを回転するため設けられる唐箕軸は脱穀ケース側板に回動自在に支持されると共に、エンジン側からの動力を入力したりするための伝動プーリが脱穀ケース側板の外側に位置して吸引口と隣接する状態で設けられることになる(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3476673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが前記従来のものは、伝動プーリが脱穀ケースに形成の吸引口と略同じ大きさであったため、どうしても吸引口が隣接する伝動プーリで塞がれる状態となって選別風の吸引性能が低下するという問題がある。そのうえ伝動プーリに懸回される伝動ベルトを緊張するためのテンションプーリは、唐箕軸の軸受部に近い位置を揺動支軸として設けることがテンション効率等を考慮したとき好ましいが、唐箕軸軸受部の周りは吸引口が開設されているためこの近傍に設けることができず、この結果、唐箕軸軸受部から遠い位置に揺動支軸を設けざるを得ず、この結果テンション効率が悪いだけでなく、テンションアームを長いものにせざるを得ないという問題もあり、これらに本発明が解決せんとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、脱穀された穀粒を選別する選別室に選別風の起風をする唐箕フアンを設けると共に、脱穀部ケース側板に唐箕フアンによって起風される選別風を吸引するための吸引口を開設してなる脱穀装置において、前記唐箕フアンの唐箕軸に、吸引口の外側に隣接して伝動プーリを設けるにあたり、該伝動プーリの外径を吸引口よりも大径にして、伝動プーリに前記吸引口よりも大径の開口を形成したことを特徴とする脱穀装置である。
請求項2の発明は、唐箕軸の一端部は、吸引口を跨ぐようにして脱穀ケース側板に設けた支持ブラケットに設けた軸受部に支持されるものとし、支持ブラケットには、軸受部に近接する状態でテンションプーリの揺動支軸を設けたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明とすることにより、吸引口に隣接して設けられる伝動プーリに、吸引口よりも大径の開口が形成されることになって、吸引口が隣接する伝動プーリに塞がれてしまうことが解消されて効率のよい選別風の吸引がなされることになる。
請求項2の発明とすることにより、テンションプーリの揺動支軸位置が軸受部に近いものになってテンションの向きが適正になりテンション効率の向上が図れると共に、テンションプーリを伝動プーリに近づけることが、テンションアームを長くしないでできることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態について、図面に沿って説明する。図中、1はコンバインであって、該コンバイン1は、茎稈を刈取る前処理部2と、刈取茎稈から穀粒を脱穀し、この穀粒を選別する脱穀部(脱穀装置)3と、選別済みの穀粒を貯溜する穀粒タンク4と、脱穀済みの排稈を処理する後処理部5と、各種の操作具が設けられる操作部6と、クローラ式の走行部7とを備えて構成されていること等は何れも従来どおりである。
【0007】
前記脱穀部3は、扱胴8を内装する扱室(図示せず)と、処理胴9を内装する処理室(図示せず)と、脱穀された穀粒を選別する選別室(図示せず)と、扱室に沿って茎稈を搬送する脱穀フィードチェン10と、脱穀済みの排藁を後処理部5に向けて搬送する排藁搬送装置11とをユニット化して構成され、機体組立工程において機体フレーム12上に搭載される。
【0008】
選別室には、選別風を起風する唐箕(圧風)ファン13、穀粒を揺動選別する揺動選別体14、排塵風を起風する吸引ファン15、選別処理された一番物、二番物の搬送をする一番物搬送体16、二番物搬送体17、二番物選別用ファン18、後処理部5を構成するカッタ19、一番物搬送体16で搬送された一番物を穀粒タンク4に搬送供給するオーガ20などが設けられて構成されている。
【0009】
21は操作部6の下方に配設されるエンジンであって、該エンジン21からの動力は、ギアケース22に入力され、HSTポンプ(斜板式可変容量油圧ポンプ)23を介して前処理部2およびフィードチエン10に動力伝動されるものと、HSTポンプ23を経由することなく唐箕フアン13を回転するための唐箕軸24に動力伝動されるものとに分配されている。
【0010】
前記唐箕軸24は脱穀部ケースの側板25に支持されることになるが、該側板25から突出する唐箕軸24の一方の軸端部(機体外側端部)24aにはギアケース22に設けた出力プーリ22aに動力伝動される内側の入力プーリ(本発明の伝動プーリに相当する)26と外側の第一出力プーリ27とが設けられ、他端部(穀粒タンク4側端部)24bには第二出力プーリ28が設けられている。そして第一出力プーリ27は、ベルト伝動によって前記一番物搬送体16、二番物搬送体17、二番物選別用フアン18、揺動選別体14、吸引フアン15そしてカッタ19に動力伝動するよう構成されている。一方、第二出力プーリ28は、ベルト伝動によって扱胴8および処理胴9に動力伝動するようになっている。尚、走行部7への動力伝動機構については汎用のものを採用しているのでここでは記載を省略している。
【0011】
唐箕軸一端部24aには、内側の入力プーリ26よりも内側に位置して円形状の吸引口29aが形成された吸引板29が配設されるが、該吸引板29は脱穀ケース側板25に取付け固定される。さらに吸引板29と入力プーリ26とのあいだには長板状に形成される支持ブラケット30が配設されているが、該支持ブラケット30は、吸引口29aを直径状に跨ぐ状態で両端部が吸引板29を越えた位置において脱穀ケース側板25に取付け固定される。支持ブラケット30には、唐箕軸一端部24aを回動自在に支持するための軸受部31が設けられると共に、第一出力プーリ27に懸回される伝動ベルト32を緊張させるためのテンションプーリ33が設けられたテンションアーム33aの揺動支軸33bが軸受部31に隣接する状態で軸支されている。尚、33cはテンションプーリ33にテンションを付与するための弾機、34は唐箕軸他端部24bを脱穀ケース側板25に軸支するための軸受部である。
【0012】
前記入力プーリ26は吸引口29aに隣接する状態で配されることになるが、ベルト溝が形成されるリム26aと、唐箕軸24に固定するためのボス26bと、該ボス26bおよびリム26aとを連結するためのアーム26cとを備えて構成されている。そして、入力プーリ26には、リム26a、ボス26b、アーム26cによって囲繞される部位が開口(連通口)となっているが、リム26aは内径が吸引口29aの内径よりも大径になっており、これによって入力プーリ26を通して吸引口29aが視認できるようになっている。
また、第一出力プーリ27は、入力プーリ26を大径にした分、小径になっており、これによって、第一出力プーリ27の外径は、吸引口29aよりも小径になっていて、第一出力プーリ27の外周から吸引口29aを視認できるようになっている。因みに、入力プーリ27を内側に配し、第一出力プーリ27を外側に配しているが、これはベルト交換や後処理部の着脱の際に、第一出力プーリ27のベルトを外すことがあり、この場合において、プーリ配置が逆であるとベルトの着脱作業に支承をきたして作業性が損なわれてしまうことになるが、本実施の形態ではそのようなことがないよう配慮されている。
【0013】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、前記唐箕フアン13が設けられる唐箕軸24には、選別風吸引口29aの外側に隣接して大径の入力プーリ26が設けられるが、該入力プーリ26の外径を吸引口29aよりも大径にしてリム26aの内周に形成される開口の内径を吸引口29aよりも大径にし、これによって、吸引口29aが、隣接する入力プーリ26によって塞がれてしまうことが解消されて効率のよい選別風の吸引がなされることになる。
【0014】
しかもこのものでは、唐箕軸の一端部を支持する軸受部31は、吸引口29aを跨ぐようにして脱穀ケース側板25に設けた支持ブラケット30に設けられ、この支持ブラケット30に、軸受部31に近接する状態でテンションプーリ33の揺動支軸33bが設けられている結果、テンションプーリ33の揺動支軸33b位置が軸受部31に近いものになってテンションの向きが適正になりテンション効率の向上が図れると共に、テンションプーリ33を、テンションを付与するための伝動ベルト32が懸回される第一出力プーリ27に近づけることが、テンションアームを長くしないでできることになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】脱穀部の動力伝動形を示す側面図である。
【図3】コンバインの動力伝動系を示す動力回路図である。
【図4】(A)は唐箕フアン部位の正面図、(B)は唐箕フアン部位の側面図である。
【図5】(A)は唐箕フアン部位の斜視図、(B)は要部拡大正面図である。
【図6】唐箕軸一端部位の拡大平面図である。
【符号の説明】
【0016】
3 脱穀部(脱穀装置)
13 唐箕ファン
24 唐箕軸
25 脱穀ケース側板
26 入力プーリ(伝動プーリ)
29a 吸引口
30 支持ブラケット
33 テンションプーリ
33b 揺動支軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀された穀粒を選別する選別室に選別風の起風をする唐箕フアンを設けると共に、脱穀部ケース側板に唐箕フアンによって起風される選別風を吸引するための吸引口を開設してなる脱穀装置において、前記唐箕フアンの唐箕軸に、吸引口の外側に隣接して伝動プーリを設けるにあたり、該伝動プーリの外径を吸引口よりも大径にして、伝動プーリに前記吸引口よりも大径の開口を形成したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
唐箕軸の一端部は、吸引口を跨ぐようにして脱穀ケース側板に設けた支持ブラケットに設けた軸受部に支持されるものとし、支持ブラケットには、軸受部に近接する状態でテンションプーリの揺動支軸を設けたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−252296(P2007−252296A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82377(P2006−82377)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】