説明

脱穀装置

【課題】処理胴周辺のメンテナンス性が高い脱穀装置を提供することを課題としている。
【解決手段】回転駆動自在に軸支される扱胴2と処理胴8とが内装され、処理胴8を扱胴2の後方位置で、扱胴2に対して左右方向にオフセット配置した脱穀装置の枠体に、処理胴8の側方から扱胴2の側方に至る開口部14を設け、枠体1に対して着脱自在に、開口部14を覆う側方カバー16を取り付けて設けた。 側方カバー16を脱穀装置の枠体に着脱自在に取り付ける係合部材18を、処理胴8により処理された処理物の濾過を行う処理網9より前方位置と処理網9より後方位置とにそれぞれ配置して設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来回転駆動自在に軸支される扱胴と処理胴とを内装し、処理胴が、扱胴の後方位置において、扱胴に対して左右方向にオフセットして配置された脱穀装置が公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−176837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記脱穀装置は、処理胴が内装された処理室が処理室カバーによって開閉可能となっている。ただし処理室カバーは処理室のみの開閉であるため、処理室カバーの開閉のみでは処理胴側のメンテナンスしか行うことができず、処理胴側から扱胴側に亘るメンテナンスを容易に行うことができないという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の脱穀装置は、回転駆動自在に軸支される扱胴2と処理胴8とを内装し、処理胴8が、扱胴2の後方位置において、扱胴2に対して左右方向にオフセットして配置された脱穀装置において、該脱穀装置の枠体1に、処理胴8の側方から扱胴2の側方に至る開口部14を設け、該開口部14を覆う側方カバー16を、枠体1に対して着脱自在に取り付けて設けたことを第1の特徴としている。
【0005】
第2に、側方カバー16を脱穀装置の枠体1に着脱自在に取り付ける係合部材18を設け、処理胴8の下方に、処理胴8により処理された処理物の濾過を行う処理網9を設け、係合部材18を、処理網9より前方位置と処理網9より後方位置とにそれぞれ配置して設けたことを特徴としている。
【0006】
第3に、処理胴8の前方に、扱胴2の側方に位置する空間23を設け、該空間23に、処理胴8に駆動力を伝動する前後方向の伝動軸37を設け、側方カバー16が、処理胴8と伝動軸37との連結部38の側方を覆うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
以上のように構成される本発明の構造によると、側方カバーが、処理胴の側方から、扱胴の側方を覆うため、脱穀装置の枠体から側方カバーを取り外すことによって、処理胴と扱胴の側方部分が一斉に開放され、メンテナンスを容易に行うことができるという効果がある。
【0008】
なお側方カバーを脱穀装置の枠体に着脱自在に取り付ける係合部材を設け、処理胴の下方に、処理胴により処理された処理物の濾過を行う処理網を設け、係合部材を、処理網より前方位置と処理網より後方位置とにそれぞれ配置して設けることによって、係合部材が処理網による濾過処理を妨げることなく、処理物の処理は円滑に行われる。
【0009】
一方処理胴の前方に、扱胴の側方に位置する空間を設け、該空間に、処理胴に駆動力を伝動する前後方向の伝動軸を設け、側方カバーによって、処理胴と伝動軸との連結部の側方を覆うように構成することによって、枠体から側方カバーを取り外すことで、処理胴と伝動軸とのジョイント部分のメンテナンスを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明を採用した脱穀装置の側面図、図2は要部平面断面図である。該脱穀装置の枠体1内には、回転駆動自在に軸支された扱胴2を上部に備えた扱室3が形成されている。扱室3の下方には、扱胴2により脱穀処理された後の処理物(脱穀粒とわら屑等の混合物)から籾を選別する選別室4が形成されている。扱胴2の下方側には、扱胴2の外周に沿った受網6が設けられている。扱室3と選別室4とは受網6によって区切られている。
【0011】
扱室3の後方には、該扱室3に対して左右方向にオフセットして処理室7が設けられている。図2,図3に示されるように、処理室7と扱室3とは、処理室7の前方部分と扱室3の後方部分とが連通している。該処理室7内には処理胴8が回転駆動自在に軸支されて内装されている。処理胴8は扱胴2の後方側に扱胴2に対して左右方向にオフセット配置されている。
【0012】
図4に示されるように、処理胴8は、外周が処理網9によって覆われている。処理室7と選別室4とは、処理網9によって区切られている。処理網9は、扱胴2側の内側処理網9aと、内側処理網9aの左右反対側の外側処理網9bとからなる。内側処理網9aは処理胴外周の扱胴側の半分を覆う。内側処理網9aは枠体1側に設けられた上下のブラケット11,12にボルトにより一体固定されている。
【0013】
外側処理網9bは処理胴外周の反扱胴側の半分を覆う。外側処理網9bの上部は上記上ブラケット11に内側処理網9aと共締めでボルト固定されている。外側処理網9bの下部は、上記下ブラケット12に形成された凹状の受け12aに挿入されて係止される。外側処理網9bの下部には正面断面が円形をなす円柱形状の凸部13が設けられている。
【0014】
凸部13を受け12aの凹内に上方から挿入することによって、外側処理網9bの下部が下ブラケット12に係止される。これにより外側処理網9bの着脱を容易に行うことができる。内側処理網9aは、上下のブラケット11,12との固定用のボルトを外し、処理胴8に沿って回しながら外側に取り外すことができる。
【0015】
脱穀装置の枠体1には、処理胴8の側方から扱胴2の後方側の側方に至る開口部14が形成されている。該開口部14は、平面視で一直線状をなし、側方カバー16によって覆われている。図2,図5に示されるように、処理網9より前方及び後方には、係止杆17が突出している。一方側方カバー16からは、上記係止杆17に下方から係合するフック18が、係止杆17に対応する位置において、脱穀装置の枠体1内に突出している。
【0016】
側方カバー16の上方は、扱胴2側に向かって屈曲又は湾曲している。側方カバー16の上端縁には、枠体1の上面の端縁を挿入することができる受部19が形成されている。受部19に枠体1の上面の端縁を挿入した状態で、フック18を係止杆17に下方から係合させることによって、側方カバー16が枠体1に取り付けられる。
【0017】
側方カバー16にはフック18を下方に揺動させて係止杆17との係合を解除させることができるレバー22が設けれている。該レバー22を操作してフック18と係止杆17との係合を解除させることによって、側方カバー16をワンタッチで枠体1から取り外すことができる。
【0018】
側方カバー16は枠体に取り付けられた状態で、枠体1における扱胴2の前方側の側方を覆う前側板21と平断面視で一直線状をなす。前側板21は枠体1側にボルト20によって固定されている。ボルト20を外すことによって前側板21を枠体1から取り外すことができる。
【0019】
上記構造により処理室7の前方には、扱室3の側方に位置し、後方側が側方カバー16によって、前方側が前側板21によって覆われる空間23が形成される。なお処理胴8の側方は、処理胴8の全長に亘って、上記側方カバー16によって覆われている。扱胴2は、後方側の側方が側方カバー16によって覆われている。
【0020】
図6に示されるように、上記空間23は、選別室4とつながっており、選別室4の一部を構成している。選別室4内には、扱胴2の下方から上記空間23の外側の端部に亘り揺動選別体24が設けられている。上記揺動選別体24の下方には、選別風を送風する唐箕ファン26が設けられている。扱胴2の後方には、処理胴7の側方に位置して藁屑等を強制排出する排塵ファン27が設けらている。
【0021】
また本脱穀装置には、1番物を収容する1番収容部28と、1番物として収容されなかった枝梗粒,穂切粒等を含む2番物を収容する2番収容部29と、前記1番収容部28に収容された1番物を1番収容部28の一端部まで横搬送する1番横らせん31と、一端部まで横搬送された1番物を揚上搬送する揚上搬送筒32と、前記2番収容部29に収容された2番物を2番収容部29の一端部まで横搬送する2番横らせん33と、一端部まで横搬送された2番物を揚上搬送して揺動選別体24に還元する還元搬送筒34等も備えられている。
【0022】
本脱穀装置は、枠体1の側方に設けられたフィードチェーン35により穀稈を搬送し、該穀稈を扱胴2によって脱穀処理して処理物を受網6を介して選別室4に落下させる。これと共に、扱胴2により処理することができず、扱室3側から処理室7に送られる穂切れ等を処理胴8によって脱穀処理し、処理物を処理網9を介して選別室4に落下させる。
【0023】
扱室3及び処理室7側から選別室4に落下させた処理物を揺動選別体24に送り、揺動選別体24において順次後方に送り、チャフシーブによって濾過し、さらに唐箕ファン26及び排塵ファン27によって形成されて送風される選別風によって1番物と2番物とに風選する。風選した1番物を1番物収容部28に、2番物を2番物収容部29に収容し、上記1番物を、1番らせん31によって1番物収容部28の端部に搬送し、揚上搬送筒32に受け継がせ、揚上搬送筒32によってグレンタンク等に排出する。
【0024】
2番物は2番らせん33によって2番物収容部29の端部に搬送し、還元搬送筒34に受け継がせ、還元搬送筒34内の還元らせんを介して揺動選別体24に還元する。上記脱穀処理時に、脱穀装置の枠体1内で発生する藁屑等の塵芥は上記選別風によって誘導され、排塵ファン27で吸引されて排塵口から機外に排出される。
【0025】
なお前述の処理室7の前方の空間23が扱胴2の側方に設けられているため、扱胴2の側方側から落下する処理物は上記空間23を通過して選別室4に落下する。このため処理物は所定の範囲(例えば扱胴2の直下)に集中して落下することなく、扱胴2の直下から上記空間23の外側の端部に亘り均等に落下し、揺動選別体24上に概ね均等に供給される。
【0026】
還元搬送筒34には、跳ね出される2番物を案内する案内部36が設けられている。案内部34の端部は、選別室4における上記空間23の近傍に接続されている。2番物は空間23を通過して揺動選別体24に還元される。
【0027】
本脱穀装置は、上記構造により、選別室4が扱胴2の下方から上記空間23の外側端に亘る大きな幅広なスペースとなり、揺動選別体24が選別室4の幅いっぱいに亘る幅広のタイプとなっているため、選別面積が大きくなり、選別効率が高い。加えて扱胴2からの処理物がほぼ均等に揺動選別体24に供給され、且つ2番物が上記空間23を通過して揺動選別体24に還元されるため、2番物が揺動選別体24上に均等に拡散される。これらにより揺動選別体24上の処理物の層厚が均等化され、選別性能が高い。
【0028】
前述の処理室7の前方の空間23内には、処理胴8に駆動力を伝動する伝動軸37が前後方向に通っている。該伝動軸37の後端はジョイント38を介して処理胴8側に連結されている。上記伝動軸37の前端は、上記空間23の前方を覆う枠体1の前板39の前方側に配置されたギヤボックス41の出力側にジョイント42を介して連結されている。
【0029】
ギヤボックス41からの駆動力が伝動軸37を介して処理胴7に伝動され、処理胴7が回転駆動される。両ジョイント38,42は上記空間23内に位置している。伝動軸37と処理胴8側とを連結するジョイント38は側方カバー16の側方に位置している。
【0030】
上記構造により側方カバー16を枠体1から取り外すことによって、処理胴8の全側方と扱胴2の後方側の側方が一斉に開放される。この際伝動軸37と処理胴7側とを連結するジョイント38も裸出する。前側板21と側方カバー16の境界位置は、概ね揚上搬送筒32の位置となっており、概ね揚上搬送筒32より後方が一斉に開放される。
【0031】
これにより処理胴8や扱胴2のメンテナンスを容易に行うことができ、特に上記ジョイント38や、ジョイント38の周辺のメンテナンスを簡単に行うことができる。また前側板21を取り外すことにより、扱胴2の側方が全体的に開放され、これにより本脱穀装置のメンテナンス性はより高くなる。
【0032】
なおフック18及び係止杆17は、処理網9より前方位置と処理網9より後方位置とにそれぞれ配置されている。このためフック18や係止杆17が処理網9による濾過処理を妨げることなく、処理物の処理は円滑に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】脱穀装置の右側面図である。
【図2】脱穀装置の要部平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】図2のC−C断面図である。
【図6】図2のD−D断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 枠体
2 扱胴
8 処理胴
9 処理網
14 開口部
16 側方カバー
18 フック(係合部材)
23 空間
37 伝動軸
38 ジョイント(連結部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動自在に軸支される扱胴(2)と処理胴(8)とを内装し、処理胴(8)が、扱胴(2)の後方位置において、扱胴(2)に対して左右方向にオフセットして配置された脱穀装置において、該脱穀装置の枠体(1)に、処理胴(8)の側方から扱胴(2)の側方に至る開口部(14)を設け、該開口部(14)を覆う側方カバー(16)を、枠体(1)に対して着脱自在に取り付けて設けた脱穀装置。
【請求項2】
側方カバー(16)を脱穀装置の枠体(1)に着脱自在に取り付ける係合部材(18)を設け、処理胴(8)の下方に、処理胴(8)により処理された処理物の濾過を行う処理網(9)を設け、係合部材(18)を、処理網(9)より前方位置と処理網(9)より後方位置とにそれぞれ配置して設けた請求項1の脱穀装置。
【請求項3】
処理胴(8)の前方に、扱胴(2)の側方に位置する空間(23)を設け、該空間(23)に、処理胴(8)に駆動力を伝動する前後方向の伝動軸(37)を設け、側方カバー(16)が、処理胴(8)と伝動軸(37)との連結部(38)の側方を覆う請求項1又は2の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−49935(P2007−49935A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237398(P2005−237398)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】