説明

脱穀装置

【課題】扱室の後部と排塵処理室が連通する脱穀装置において、排塵処理室の詰りを抑制する。
【解決手段】扱胴(5)を備えた扱室(3)の後部に排塵処理胴(18)を備えた排塵処理室(19)と連通する連通部(9)を設け、連通部(9)の後方には4番処理室(10)を形成し、連通部(9)の下部には、その前端部と中間部と後端部に前仕切板(12)と中仕切板(13)と後仕切板(14)を夫々設け、連通部(9)の上部にはその前端部に送塵板(22)を設け、送塵板(22)を、送塵板(22)における扱胴(5)の回転方向下手側の端部が前仕切板(12)よりも前側に位置する角度から、送塵板(22)における扱胴(5)の回転方向下手側の端部が前仕切板(12)よりも後方で且つ中仕切板(13)よりも前側に位置する角度まで角度変更自在な構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバイン等に搭載される脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された技術は、扱室終端からの排塵処理物を受け入れて処理する排塵処理室への連通部より前側位置において、2枚の仕切板が前後に配置して設けられている。扱胴カバーの内面には、送塵量を調整する送塵板が角度変更自在に設けられている。そして、該送塵板は、この先端側が後側の仕切板よりも前方及び後方にわたって角度変更できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−104956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成のものでは、連通部内において中間の仕切板が存しない構成であるため、扱室内で発生する被処理物量が多い場合に、被処理物中に含まれる穀粒を、連通部の下方の濾過体が十分に漏下しないまま排塵処理室へ送り込まれ、排塵処理室の前側部位で詰りを生じたり、それに伴って、大量の排塵物が排塵処理室に送り込まれずに連通部の後方へ移送され、扱室下方の選別部に藁屑が落下し、選別精度を低下させる問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
【0006】
すなわち、請求項1記載の発明は、扱胴(5)を備えた扱室(3)の後部に排塵処理胴(18)を備えた排塵処理室(19)と連通する連通部(9)を設け、該連通部(9)の後方には4番処理室(10)を形成し、前記連通部(9)の下部には、その前端部と中間部と後端部に前仕切板(12)と中仕切板(13)と後仕切板(14)を夫々設け、連通部(9)の上部にはその前端部に送塵板(22)を設け、該送塵板(22)を、送塵板(22)における扱胴(5)の回転方向下手側の端部が前仕切板(12)よりも前側に位置する角度から、該送塵板(22)における扱胴(5)の回転方向下手側の端部が前仕切板(12)よりも後方で且つ中仕切板(13)よりも前側に位置する角度まで角度変更自在な構成とした脱穀装置である。
請求項2記載の発明は、前記中仕切板(13)の高さを、前仕切板(12)の高さ及び後仕切板(14)の高さよりも低くした請求項1記載の脱穀装置である。
【0007】
請求項3記載の発明は、前記送塵板(22)は、該送塵板(22)よりも前側に設けられた複数の前側送塵板(22a,22b,22c,22d,22e)と一体的に角度変更できる構成とした請求項1又は請求項2記載の脱穀装置である。
【0008】
請求項4記載の発明は、前記扱室(3)の上部における後仕切板(14)との対向位置に固定ガイド(25)を設けた請求項1又は請求項2又は請求項3記載の脱穀装置である。
【0009】
請求項5記載の本発明は、前記固定ガイド(25)は、扱室(3)内の処理物の移送に抵抗を付与する側に傾斜させた請求項4記載の脱穀装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、扱室(3)内の処理物の移送作用を調整する送塵板(22)の角度変更により、連通部(9)に導かれる処理物が前仕切板(12)と中仕切板(13)と後仕切板(14)の作用を受けて排塵処理室(19)内へ多量に送り込まれるものでありながら、排塵処理室(19)内へは各仕切板(12,13,14)による移送抵抗の付与と相俟って扱胴(5)に持ち回りされながらスムーズに送塵案内されることになり、排塵処理室(19)内での詰まりを防止することができる。
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明による効果に加えて、中仕切板(13)によって連通部(9)の中間部で被処理物の後方移送に抵抗を与え、被処理物中の穀粒の漏下を促進できるものでありながら、被処理物の一部が、中仕切板(13)を超えて後方へ移送されるので、連通部(9)全体で藁屑と穀粒の分離を行うことができ、排塵処理室(19)の詰り防止効果を高めることができる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2記載の発明による効果に加えて、複数の前側送塵板(22a,22b,22c,22d,22e)と前記送塵板(22)を一斉に角度変更することができるので、操作の煩雑さがなく、操作性が向上する。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、請求項1又は請求項2又は請求項3記載の発明による効果に加えて、連通部(9)から後方へ送られる処理物に対し、固定ガイド(25)により適度の送り抵抗をかけながら持ち回らせることで、藁屑類の捌きや分離並びに受網からの漏下を促進し、4番処理室(10)に送られる処理物の量を低減することができる
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の効果に加えて、固定ガイド(25)の傾斜によって処理物の送り抵抗が強く働き、処理物を移送方向上流側に戻す方向に作用することになるので、処理物の分離、脱粒処理効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】脱穀装置の要部の平面図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】脱穀装置の要部の側断面図
【図4】脱穀装置の要部の側断面図
【図5】排塵処理胴要部の平面図
【図6】排塵処理胴要部の側面図
【図7】脱穀装置の要部の側断面図
【図8】同上要部の背面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、脱穀装置の側断面図を示すものであり、次のような構成になっている。
すなわち、脱穀装置(脱穀部)1は、脱穀フィードチエン2により株元を挟持しながら搬送される穀稈の穂先部を扱室3内で駆動回転する扱歯4付扱胴5により脱穀処理するよう構成している。扱室3の下半周部には受網6が張設され、扱胴5の上部を覆う扱胴カバー7は、扱室の一側を支点として揺動開閉する構成である。扱室3の終端側には多量の藁屑や未処理物を含む排塵処理物を下方に落下させる排塵口8と、この排塵口8を含む対応部位から後記する排塵処理室19への連通部9が設けられている。扱室3終端の排塵口8連通部9より後方部には、排藁中のささり粒を掻き落して回収する4番処理室10を構成して設け、この4番処理室10には、前記扱胴5と略同径で同一軸芯回りに強制回転する外周に4番処理歯11aを有した4番処理胴11を内装軸架している。4番処理胴11は、実施例では前記扱胴5と一体構成としてあり、該扱胴を扱室終端より長く延出させた構成としている。
【0015】
前記扱室3のフィードチエン2側とは反対側一側には2番処理胴15を内装軸架した2番処理室16を並設している。また、前記2番処理胴15の後方にはこれと同一軸芯上において外周に排塵処理歯17を備えた排塵処理胴18を内装軸架した排塵処理室19を構成して設けている。
前記連通部9は、排塵口8を介して排塵処理室19の始端に連通されてあり、そして、この連通部9の下部には、漏下部が形成されるともに、前端と中間と後端にそれぞれ前仕切板12、中仕切板13、後仕切板14が設けられている。各仕切板の高さは、高いものから順に後仕切板14、前仕切板12、中仕切板13である。なお、この仕切板の高さとは、受網6から扱胴5の軸心方向に向かう突出量である。そして、上記漏下部のうち、中仕切板13よりも前側の部位は、後側部位と比して目合いが小さく形成されており、藁屑の下方への落下を抑制しながら穀粒を落下させる。
連通部9の対応部には、排塵処理胴18の始端部に固着されたスパイラー形状の取込羽根20が介入するように設けられ、排塵処理室内への排塵物の取込みが容易に行えるようにしている。排塵処理胴18の終端には排出羽根21が設けられ、処理室終端まで送られてきた排塵処理物を前記排出羽根21によって処理室終端の横側部の排出口から下方の揺動選別棚上に排出する構成としている。
連通部9の前端側上部で扱胴カバー7内面には送塵量を調整する送塵板22が設けられている。該送塵板22は、送塵板における扱胴の回転方向下手側の端部が前記連通部前端の仕切板12よりも前側となる角度Fから、前端の仕切板12を超える後方側で中間の仕切板13よりも前側となる角度Rまで角度変更できるように構成されている。また、送塵板は、枢支点Qを中心として回動する構成であるが、R角位置では主として処理物の後方への送り作用を促進し、F角位置では処理物を若干戻す作用が働き、処理物の持ち回りと漏下を促進するようになっている。
前記送塵板22とこの前側に設けられた複数の送塵板(前側送塵板)22a,22b,22c…とは連動部材23を介して連動連結されてあり、送塵レバー24の操作で一体的に角度変更できるように構成されている。
前記連通部9後端の後仕切板14と対応する前後位置にあって、扱室の上部に固定ガイド25が配備され、連通部9から後方へ送られる処理物を適度の送り抵抗をかけながら持ち回りするように構成されている。また、この固定ガイド25は、扱胴回転方向に平行若しくは送り抵抗を付与する側に傾斜θ角させることによって処理作用が充分に行えるようにしている。
図5、図6に示すように、排塵処理胴18の後端部を軸受保持する後側板26には、排塵処理胴の円周方向に沿う凹状空間27を設けることによって、処理物の機外排出を促進することができる。
また、処理胴後側板26を上下幅の狭い桟状に構成することで、この軸受部を挟む上下位置を後方に大きく開放することができ、処理物の排出を促進することができる。なお、処理胴後側板をこの軸受部を除く処理胴円周方向に切り欠いた構成とすることもできる。
揺動選別棚30は、脱穀処理後の処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別する構成であり、選別方向上手側から移送棚31、チャフシ−ブ32、ストロ−ラック33の順に配置し、且つ、前記チャフシ−ブ32の下方にグレンシ−ブ34を配置して設けた構成としている。また、揺動選別棚30の下方には選別方向の上手側から順に、唐箕35と、1番移送螺旋36、2番移送螺旋37と、その上方に排塵フアン横断流ファン38を設けて選別室を構成している。
排塵ファン38からの排塵物及び排藁カッター39からの切断藁を受け入れて後方に排出案内するゴム板のような弾性ガイド板40の下端(後端)位置は、揺動選別30終端後端の前後方向に揺動する揺動範囲Lの略中間位置に臨ませている図7参照。これによると、揺動棚の後端から処理物を機外に排出する場合の唐箕風が弾性ガイド板による風の流れを規制して後端の寄せガイド41に案内されやすくなる。弾性ガイド板40は、フルイ線のような棒状の支持部材42によって下から支持させている。
揺動選別棚30の後端位置は、排藁カッター39の回転刃39a,39bの軸間中心よりも前方に配置することで、揺動棚への切り藁混入を防ぐことができる。また、揺動選別棚30のストローラック33の終端を寄せガイド41の先端部まで延出することで、機外に排出する排塵物を確実に寄せガイドまで送り、寄せガイドによって既刈地側に寄せながら機体右側後方へスムーズに排出案内することができる。
【符号の説明】
【0016】
3 扱室
5 扱胴
9 連通部
10 4番処理室
11 4番処理胴
12 前仕切板
13 中敷地板
14 後仕切板
18 排塵処理胴
19 排塵処理室
22 送塵板
22a 送塵板(前側送塵板)
22b 送塵板(前側送塵板)
22c 送塵板(前側送塵板)
22d 送塵板(前側送塵板)
22e 送塵板(前側送塵板)
25 固定ガイド
26 後側板
27 凹状空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(5)を備えた扱室(3)の後部に排塵処理胴(18)を備えた排塵処理室(19)と連通する連通部(9)を設け、該連通部(9)の後方には4番処理室(10)を形成し、前記連通部(9)の下部には、その前端部と中間部と後端部に前仕切板(12)と中仕切板(13)と後仕切板(14)を夫々設け、連通部(9)の上部にはその前端部に送塵板(22)を設け、該送塵板(22)を、送塵板(22)における扱胴(5)の回転方向下手側の端部が前仕切板(12)よりも前側に位置する角度から、該送塵板(22)における扱胴(5)の回転方向下手側の端部が前仕切板(12)よりも後方で且つ中仕切板(13)よりも前側に位置する角度まで角度変更自在な構成とした脱穀装置。
【請求項2】
前記中仕切板(13)の高さを、前仕切板(12)の高さ及び後仕切板(14)の高さよりも低くした請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記送塵板(22)は、該送塵板(22)よりも前側に設けられた複数の前側送塵板(22a,22b,22c,22d,22e)と一体的に角度変更できる構成とした請求項1又は請求項2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記扱室(3)の上部における後仕切板(14)との対向位置に固定ガイド(25)を設けた請求項1又は請求項2又は請求項3記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記固定ガイド(25)は、扱室(3)内の処理物の移送に抵抗を付与する側に傾斜させた請求項4記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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