説明

脱穀選別装置

【課題】選別部を構成する部品の処理物接触面を撥水性材料で覆うにあたり、撥水性材料の摩耗や剥がれによって構成部品の基材が露出しても、錆に起因する汚粒の発生を防止する。
【解決手段】茎稈から穀粒を脱穀する扱室7と、扱室7から漏下した処理物を選別する選別部12とを備える汎用コンバイン1において、選別部12の少なくとも一部の構成部品(例えば、グレンパン19)を、ステンレス材19aで形成すると共に、その処理物接触面を撥水性材料19bで覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒の脱穀や選別を行うコンバインなどの脱穀選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインなどの脱穀選別装置は、茎稈から穀粒を脱穀する扱室や、扱室から漏下した処理物を選別する選別部を備えている。そして、一般的な脱穀選別装置の選別部は、扱室から漏下した処理物を揺動選別する揺動選別体を用いて構成されているが、揺動選別体を用いた選別部では、水分が多い湿材を選別する場合に、揺動選別体上における処理物の流れが悪くなり、作業効率や選別精度が低下するという問題がある。
【0003】
そこで、揺動選別体における処理物接触面の一部又は全体をフッ素樹脂などの撥水性材料で覆うことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようにすると、水分が多い湿材であっても、撥水性材料によって揺動選別体における流れが促進されるので、作業効率や選別精度の低下を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−271315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、撥水性材料は、処理物との接触や衝突によって摩耗したり、剥がれる可能性がある。特に、刈取茎稈を扱室に全稈投入する汎用コンバインでは、扱室からの処理物が揺動選別体(グレンパン)に勢いよく衝突するので、その衝撃で撥水性材料が部分的に剥がれることがある。そして、撥水性材料の摩耗や剥がれによって揺動選別体の基材(例えば、鋼板)が露出すると、基材に錆が発生し、汚粒の原因となる惧れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、茎稈から穀粒を脱穀する扱室と、扱室から漏下した処理物を選別する選別部とを備える脱穀選別装置において、前記選別部の少なくとも一部の構成部品を、ステンレス材で形成すると共に、その処理物接触面を撥水性材料で覆うことを特徴とする。
また、前記選別部は、扱室から漏下した処理物を揺動選別する揺動選別体を備え、該揺動選別体のグレンパンを、ステンレス材で形成すると共に、その処理物接触面を撥水性材料で覆い、さらに、揺動選別体に対して着脱自在に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、選別部を構成する部品の処理物接触面を撥水性材料で覆うものでありながら、仮に撥水性材料の摩耗や剥がれによって構成部品の基材が露出しても、基材が錆びにくいステンレス材で形成されているので、錆に起因する汚粒の発生を防止することができる。
また、請求項2の発明によれば、揺動選別体のグレンパンを、ステンレス材で形成すると共に、その処理物接触面を撥水性材料で覆ったので、仮に撥水性材料の摩耗や剥がれによってグレンパンの基材が露出しても、錆に起因する汚粒の発生を防止することができる。しかも、グレンパンは、揺動選別体に対して着脱自在に構成されるので、撥水性材料の摩耗や剥がれによって撥水性能が低下した場合に、グレンパンの交換にもとづいて撥水性能を復元させることができる。特に、刈取茎稈を扱室に全稈投入する汎用コンバインでは、扱室からの処理物がグレンパンに勢いよく衝突し、その衝撃で撥水性材料が剥がれる可能性が高いので、本発明の効果が顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】汎用コンバインの左側面図である。
【図2】脱穀部の内部を示す左側面図である。
【図3】グレンパンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1は汎用コンバイン(脱穀選別装置)であって、該汎用コンバイン1は、茎稈を刈り取る刈取部2と、刈り取った茎稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀部3と、選別した穀粒を貯留する穀粒タンク4と、オペレータが乗車する操作部5と、クローラ式の走行部6とを備えて構成されている。
【0010】
図2に示すように、脱穀部3は、刈取茎稈が全稈投入される扱室7と、扱室7内に回転自在に内装され、外周に突設される扱歯8で茎稈から穀粒を脱粒させる扱胴9と、扱胴9の下側に沿って配置され、扱室7から穀粒を漏下させる受網10と、受網10から漏下せずに扱室7の終端まで達した排出物を排出する排出口11と、受網10から漏下した穀粒を選別する選別部12と、選別部12の終端部及び扱室7の排出口11に連通し、選別部12側及び扱室7側から排出される排出物を機外に導く排塵部13とを備えて構成されている。
【0011】
選別部12は、受網10から漏下した穀粒を揺動選別する揺動選別体14と、揺動選別体14の前下方で選別風を起風する圧風ファン15と、一番物を回収する一番ラセン16と、一番物を一番ラセン16へ導く一番流板16aと、二番物を回収する二番ラセン17と、二番物を二番ラセン17へ導く二番流板17aと、二番ラセン17の前方で二番選別風を起風する二番選別ファン18とを備えている。そして、一番ラセン16によって回収された一番物は、図示しない揚穀筒を介して穀粒タンク4に貯留され、二番ラセン17によって回収された二番物は、図示しない二番還元筒を介して揺動選別体14上に還元されるようになっている。
【0012】
揺動選別体14は、受網10から漏下した穀粒を後方へ順次搬送する波板状のグレンパン19と、グレンパン19の後方で穀粒をフィン20aによって篩い選別するチャフシーブ20と、該チャフシーブ20から漏下した穀粒をクリンプ網21aによって篩い選別するグレンシーブ21と、チャフシーブ20やグレンシーブ21の終端まで達した処理物をラック(歯形板)22aによって篩い選別するストロラック22と、グレンシーブ21から漏下した一番物を一番ラセン16(一番流板16a)へ導く前側揺動流板23と、ストロラック22から漏下した二番物を二番ラセン17(二番流板17a)へ導く後側揺動流板24とを備える揺動アッセンブリであり、図示しない駆動機構(クランク機構、カム機構など)によって所定の周期で連続的に往復揺動されるようになっている。
【0013】
本発明の実施形態に係る汎用コンバイン1では、選別部12の少なくとも一部の構成部品を、ステンレス材で形成すると共に、その処理物接触面をフッ素入り塗料などの撥水性材料で覆っている。このようにすると、選別部12を構成する部品の処理物接触面を撥水性材料で覆うものでありながら、仮に撥水性材料の摩耗や剥がれによって構成部品の基材が露出しても、基材を錆びにくいステンレス材としたので、錆に起因する汚粒の発生を防止することが可能になる。
【0014】
例えば、図3に示すように、本実施形態では、揺動選別体14のグレンパン19を、ステンレス材19aで形成すると共に、その処理物接触面を撥水性材料19bで覆っている。このようにすると、仮に撥水性材料19bの摩耗や剥がれによってグレンパン19の基材が露出しても、錆に起因する汚粒の発生を防止することができる。特に、刈取茎稈を扱室7に全稈投入する本実施形態の汎用コンバイン1では、扱室7からの処理物がグレンパン19に勢いよく衝突し、その衝撃で撥水性材料19bが剥がれる可能性が高いので、本発明の効果が顕著である。
【0015】
また、ステンレス材19aは、表面の滑り性が低いため、そのままだと処理物の滑りが悪く選別性能を低下させる惧れがあるが、その反面、鋼板に比べてフッ素入り塗料の塗料乗りが良いので、フッ素入り塗料が剥がれ難いという利点がある。また、フッ素入り塗料は、比較的高価であるため、選別部構成部品の表裏両面を塗装することなく、表面(処理物接触面)のみを塗装することも考えられるが、基材がステンレス材19aであれば、裏面が錆びることも防止できるので、裏面の錆びによる品質低下も防止することができる。尚、ステンレス材19aの代わりに、錆び難いメッキ鋼板を適用することも考えられるが、メッキ鋼板は、フッ素入り塗料を焼き付け塗装する際に、基材温度が高温になってメッキが剥げる惧れがあるので、適用が困難である。
【0016】
さらに、本実施形態では、上記のように構成されたグレンパン19を、揺動選別体14に対して着脱自在に構成している。例えば、図3に示すように、着脱可能なネジ25を介して、グレンパン19を揺動選別体14に固定する。このようにすると、撥水性材料19bの摩耗や剥がれによって撥水性能が低下した場合に、新しいグレンパン19に交換することによって撥水性能を復元させることが可能になる。
【0017】
また、本実施形態では、前述した一番流板16a、二番流板17a、フィン20a、クリンプ網21a、ラック22a、前側揺動流板23、後側揺動流板24についても、ステンレス材で形成し、その処理物接触面を撥水性材料で覆っている。このようにすると、仮に撥水性材料の摩耗や剥がれによって一番流板16a、二番流板17a、フィン20a、クリンプ網21a、ラック22a、前側揺動流板23、後側揺動流板24の基材が露出しても、錆に起因する汚粒の発生を防止することができる。
【0018】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、茎稈から穀粒を脱穀する扱室7と、扱室7から漏下した処理物を選別する選別部12とを備える汎用コンバイン1において、選別部12の少なくとも一部の構成部品を、ステンレス材で形成すると共に、その処理物接触面を撥水性材料で覆うようにしたので、仮に撥水性材料の摩耗や剥がれによって構成部品の基材が露出しても、錆に起因する汚粒の発生を防止することができる。
【0019】
また、選別部12は、扱室7から漏下した処理物を揺動選別する揺動選別体14を備え、該揺動選別体14のグレンパン19を、ステンレス材19aで形成すると共に、その処理物接触面を撥水性材料19bで覆い、さらに、揺動選別体14に対して着脱自在に構成したので、仮に撥水性材料19bの摩耗や剥がれによってグレンパン19の基材が露出しても、錆に起因する汚粒の発生を防止することができる。しかも、グレンパン19は、揺動選別体14に対して着脱自在に構成されるので、撥水性材料19bの摩耗や剥がれによって撥水性能が低下した場合に、グレンパン19の交換にもとづいて撥水性能を復元させることができる。特に、刈取茎稈を扱室7に全稈投入する汎用コンバイン1では、扱室7からの処理物がグレンパン19に勢いよく衝突し、その衝撃で撥水性材料19bが剥がれる可能性が高いので、本発明の効果が顕著である。
【0020】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されないことは勿論であって、特許請求の範囲内で適宜変更できることは言うまでもない。
例えば、前記実施形態のグレンパン19は、波板であるが、ステンレス材を波板状に加工することが難しい場合は、グレンパン19を波板以外の形状(例えば、平板)としてもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 汎用コンバイン
2 刈取部
3 脱穀部
7 扱室
12 選別部
14 揺動選別体
16a 一番流板
17a 二番流板
19 グレンパン
19a ステンレス材
19b 撥水性材料
20 チャフシーブ
20a フィン
21 グレンシーブ
21a クリンプ網
22 ストロラック
22a ラック
23 前側揺動流板
24 後側揺動流板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茎稈から穀粒を脱穀する扱室と、扱室から漏下した処理物を選別する選別部とを備える脱穀選別装置において、
前記選別部の少なくとも一部の構成部品を、ステンレス材で形成すると共に、その処理物接触面を撥水性材料で覆うことを特徴とする脱穀選別装置。
【請求項2】
前記選別部は、扱室から漏下した処理物を揺動選別する揺動選別体を備え、該揺動選別体のグレンパンを、ステンレス材で形成すると共に、その処理物接触面を撥水性材料で覆い、さらに、揺動選別体に対して着脱自在に構成したことを特徴とする請求項1記載の脱穀選別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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