説明

脱線時走行装置

【課題】地震等に起因して列車が脱線する際に、脱線走行する列車の車輪を誘導規制して列車の逸脱走行や横転等を回避するとともに、軌道に配置されたレール締結装置やレール支承体等の軌道構成部品の損傷を防止する脱線時走行装置を提供すること。
【解決手段】左右一対の本線レールR、Rが敷設された軌道Tの内側領域に左右一対で内側走行路形成体110、110が近接配置されるとともに、軌道Tの両外側領域に左右一対で外側走行路形成体120、120が近接配置されて脱線走行する列車の車輪Wを誘導して走行させる脱線時の脱線時走行装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対の本線レールが敷設された軌道の内側領域に左右一対で内側走行路形成体が近接配置されるとともに前記軌道の両外側領域に左右一対で外側走行路形成体が近接配置されて脱線走行する列車の車輪を誘導して走行させる脱線時走行機構、すなわち、脱線時走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路盤コンクリート上に列べられたプレキャストコンクリート製の軌道スラブに対してレール締結装置を介してレールを締着させた構造のスラブ軌道が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−98503号公報(第2欄、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述したような従来のスラブ軌道は、列車の脱線事故に対する何らの対策を講じていないため、地震等に起因して列車がレールから脱線した際、列車がスラブ軌道を逸脱走行して、付近の構造物に衝突したり、列車の車体が横転する等の大規模な事故に発展するという問題があった。
また、脱線した列車がスラブ軌道上に設置されたレール締結装置等の軌道構成部品に衝突して損傷させるため、このような損傷した軌道構成部品の復旧作業に多大な時間を要し、列車の運行に大きな支障をきたすという列車運行上の問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、地震等に起因して列車が脱線する際に、脱線走行する列車の車輪を誘導規制して列車の逸脱走行や横転等を回避するとともに、軌道に配置されたレール締結装置やレール支承体等の軌道構成部品の損傷を防止する脱線時走行装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る本発明は、左右一対の本線レールが敷設された軌道の内側領域に左右一対で内側走行路形成体が近接配置されるとともに前記軌道の両外側領域に左右一対で外側走行路形成体が近接配置されて脱線走行する列車の車輪を誘導して走行させる脱線時走行装置であって、前記内側走行路形成体が、前記本線レールの頭部頂面近傍から下方に向けて傾斜して前記車輪のフランジ部を誘導移行させる内側移行緩斜面と該内側移行緩斜面の末端縁に沿って連続形成されて前記フランジ部を誘導走行させる内側誘導走行面と該内側誘導走行面の外側縁に沿って立設して前記車輪のフランジ側端面を当接させて走行規制する内側走行規制壁面とで構成されているとともに、前記外側走行路形成体が、前記本線レールの頭部頂面近傍から下方に向けて傾斜して前記車輪のフランジ部を誘導移行させる外側移行緩斜面と該外側移行緩斜面の末端縁に沿って連続形成されて前記フランジ部を誘導走行させる外側誘導走行面と該外側誘導走行面の外側縁に沿って立設して前記車輪の飛び出しをガードする外側ガード壁面とで構成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0006】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の構成に加えて、前記左右一対の本線レールのいずれか一方の近傍に配置された内側走行路形成体の内側走行規制壁面と本線レールの他方の近傍に配置された外側走行路形成体の外側ガード壁面との相互間隔が、前記左右一対の車輪においていずれか一方の車輪のフランジ側端面と他方の車輪の転動部側端面との相互間隔より長く設定されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0007】
請求項3に係る本発明は、請求項1または請求項2記載の構成に加えて、前記内側走行路形成体の内側誘導走行面の高さが、前記外側走行路形成体の外側誘導走行面の高さより低く設定されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0008】
請求項4に係る本発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の構成に加えて、前記内側走行路形成体の内側移行緩斜面の上端縁の高さが、前記外側走行路形成体の外側移行緩斜面の上端縁の高さより低く設定されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、左右一対の本線レールが敷設された軌道の内側領域に左右一対で内側走行路形成体が近接配置されるとともに前記軌道の両外側領域に左右一対で外側走行路形成体が近接配置されて脱線走行する列車の車輪を誘導して走行させる脱線時走行装置であって、以下のような特有の構成に基づいた格別の作用効果を奏することができる。
【0010】
すなわち、請求項1に係る本発明の脱線時走行装置によれば、内側走行路形成体が、本線レールの頭部頂面近傍から下方に向けて傾斜した内側移行緩斜面と内側移行緩斜面の末端縁に沿って連続形成した内側誘導走行面と内側誘導走行面の外側縁に沿って立設した内側走行規制壁面とで構成されているとともに、外側走行路形成体が、本線レールの頭部頂面近傍から下方に向けて傾斜した外側移行緩斜面と外側移行緩斜面の末端縁に沿って連続形成した外側誘導走行面と外側誘導走行面の外側縁に沿って立設した外側ガード壁面とで構成されていることにより、地震等に起因して列車の車輪が本線レールから脱線した際、列車の車輪が内側走行規制壁面に当接して確実に走行規制された状態で左右一対の車輪のフランジ部が内側誘導走行面と外側誘導走行面を誘導走行するので、列車の逸脱走行や横転等を回避できるとともに、内側走行路形成体と外側走行路形成体が本線レールの近傍に配置されてレール締結装置やレール支承体等の軌道構成部品を覆っているため、列車の脱線時に走行する車輪から受けるレール締結装置やレール支承体等の軌道構成部品の損傷を防止できる。
【0011】
特に、内側走行路形成体が本線レールの頭部頂面近傍から下方に向けて傾斜した内側移行緩斜面を備えているとともに、外側走行路形成体が本線レールの頭部頂面近傍から下方に向けて傾斜した外側移行緩斜面を備えていることにより、本線レールから脱線した左右一対の車輪のフランジ部が内側移行緩斜面と外側移行緩斜面にそれぞれ誘導されるので、脱線時に生じがちな衝撃を吸収緩和して列車の車体バランスを過度に損なうことなく、脱線した車輪を内側誘導走行面と外側誘導走行面にそれぞれ円滑に移行できる。
【0012】
そして、外側走行路形成体が、外側誘導走行面の外側縁に沿って立設した外側ガード壁面を備えていることにより、列車との衝突等に起因して内側走行規制壁面が損傷、曲折した際にも、外側ガード壁面が車輪の飛び出しをガードするので、列車の逸脱走行等を確実に回避できる。
【0013】
請求項2に係る本発明の脱線時走行装置によれば、請求項1記載の脱線時走行装置が奏する効果に加えて、左右一対の本線レールのいずれか一方の近傍に配置された内側走行路形成体の内側走行規制壁面と本線レールの他方の近傍に配置された外側走行路形成体の外側ガード壁面との相互間隔が、左右一対の車輪においていずれか一方の車輪のフランジ側端面と他方の車輪の転動部側端面との相互間隔より長く設定されていることにより、左右一対の車輪が内側誘導走行面と外側誘導走行面をそれぞれ走行する際、左右一対の車輪のうち脱線蛇行する方向に位置する車輪が外側ガード壁面と当接することなく、前記車輪に追従する車輪が内側走行規制壁面のみと当接状態で誘導走行するので、走行する車輪の摺
動抵抗を大幅に低減して安定した走行を実現でき、また、誘導走行時に内側走行規制壁面が過度の摺動抵抗により変形または摩耗損傷しても外側ガード壁面に当接状態で誘導走行するので、安全性の高い走行が達成できる。
【0014】
請求項3に係る本発明の脱線時走行装置によれば、請求項1または請求項2記載の脱線時走行装置が奏する効果に加えて、内側走行路形成体の内側誘導走行面の高さが外側走行路形成体の外側誘導走行面の高さより低く設定されていることにより、左右一対の車輪が内側誘導走行面と外側誘導走行面を走行する際、車輪の上部が内側走行規制壁面から離間する方向に列車の車輪及び車体が傾斜して、走行時の崩れかけた車体バランスを回復させるように車体の重心を本線レール側に傾斜させる調心作用を奏するため、脱線走行を安定化させることができる。
【0015】
請求項4に係る本発明の脱線時走行装置によれば、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の脱線時走行装置が奏する効果に加えて、内側走行路形成体の内側移行緩斜面の上端縁の高さが外側走行路形成体の外側移行緩斜面の上端縁の高さより低く設定されていることにより、内側移行緩斜面が本線レールから脱線した車輪を誘導移行する際、車輪のフランジ部の下端縁と内側移行緩斜面の上端縁との引っ掛かりを回避できるので、車輪の円滑な誘導移行を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、左右一対の本線レールが敷設された軌道の内側領域に左右一対で内側走行路形成体が近接配置されるとともに前記軌道の両外側領域に左右一対で外側走行路形成体が近接配置されて脱線走行する列車の車輪を誘導して走行させる脱線時走行装置であって、前記内側走行路形成体が、前記本線レールの頭部頂面近傍から下方に向けて傾斜して前記車輪のフランジ部を誘導移行させる内側移行緩斜面と該内側移行緩斜面の末端縁に沿って連続形成されて前記フランジ部を誘導走行させる内側誘導走行面と該内側誘導走行面の外側縁に沿って立設して前記車輪のフランジ側端面を当接させて走行規制する内側走行規制壁面とで構成されているとともに、前記外側走行路形成体が、前記本線レールの頭部頂面近傍から下方に向けて傾斜して前記車輪のフランジ部を誘導移行する外側移行緩斜面と該外側移行緩斜面の末端縁に沿って連続形成されて前記フランジ部を誘導走行させる外側誘導走行面と該外側誘導走行面の外側縁に沿って立設して前記車輪の飛び出しをガードする外側ガード壁面とで構成されて、地震等に起因して列車が脱線する際に、脱線走行する列車の車輪を誘導規制して列車の逸脱走行や横転等を回避するとともに、軌道に配置されたレール締結装置やレール支承体等の軌道構成部品の損傷を防止するものであれば、その具体的な実施の形態は如何なるものであっても何ら構わない。
【0017】
例えば、本発明におけるレール支承体の具体的種類については、スラブ盤、PCマクラギ(コンクリート製マクラギ)、木マクラギ等のいずれであっても差し支えない。
【0018】
また、本発明におけるレール締結装置の具体的態様については、どのような形態であっても差し支えない。
【0019】
また、本発明に適用される列車の車輪形態については、本線レールを転動走行する転動面とこの転動面から列車の内側に向けて一体成形されて蛇行走行を規制するフランジ部とを備えたものであれば如何なる車輪形態であっても良く、例えば、車輪の外側に向かって僅かに縮径する転動面を有するものであれば良い。
【0020】
また、本発明における内側走行路形成体の内側誘導走行面と外側走行路形成体の外側誘導走行面の相対的な高さ関係については、互いに同じ高さになるように設定されたもの、内側誘導走行面の高さが外側誘導走行面の高さより高く設定されたもの等のいずれであっ
ても良いが、特に、内側車輪走行面の高さが外側車輪走行面の高さより低く設定された場合には、左右一対の車輪が内側誘導走行面と外側誘導走行面を走行する際に、走行時の崩れかけた車体バランスを回復させるように車体の重心を本線レール側に傾斜させる調心作用を奏する。
【0021】
また、本発明における内側走行路形成体の内側移行緩斜面の上端縁と外側走行路形成体の外側移行緩斜面の上端縁の相対的な高さ関係については、互いに同じ高さになるように設定されたもの、内側移行緩斜面の上端縁の高さが外側移行緩斜面の上端縁の高さより高く設定されたもの等のいずれであっても良いが、特に、内側移行緩斜面の上端縁の高さが外側移行緩斜面の上端縁の高さより低く設定された場合には、内側移行緩斜面が本線レールから脱線した車輪を誘導移行する際に、車輪のフランジ部の下端縁と内側移行緩斜面の上端縁との引っ掛かりを回避できる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の一実施例である脱線時走行装置100を図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の一実施例である脱線時走行装置を組み込んだ軌道の全体概要図であり、図2は、脱線時走行装置を組み込んだ軌道の一部を示す斜視図であり、図3は、脱線時走行装置を組み込んだ軌道の一部を示す上面図であり、図4は、脱線時走行装置を組み込んだ軌道の一部を示す断面図である。
【0023】
まず、本実施例である脱線時走行装置100は、図1乃至図4に示すように、左右一対の本線レールR、Rが敷設された軌道Tの内側領域に左右一対で近設配置された内側走行路形成体110、110と、軌道Tの両外側領域に左右一対で近設配置された外側走行路形成体120、120とからなり、脱線走行する列車の車輪Wを誘導して走行させるものである。
なお、図1乃至図4に示す符号Bは、レール支承体としてのスラブ盤であり、図1乃至図4に示す符号Cは、本線レールRをスラブ盤Bに締結するレール締結装置である。
また、図1乃至図4に示す符号Sは、内側走行路形成体110と外側走行路形成体120とを支持するために設けられた走行路支持体であり、図1乃至図4に示す符号Scは、走行路支持体Sをスラブ盤Bに締結する締結手段である。
【0024】
内側走行路形成体110は、図1乃至図4に示すように、本線レールRの頭部頂面Rtの近傍から下方に向けて傾斜して車輪Wのフランジ部Wfを誘導移行させる内側移行緩斜面111と、この内側移行緩斜面111の末端縁に沿って連続形成されてフランジ部Wfを誘導走行させる内側誘導走行面112と、この内側誘導走行面112の外側縁に沿って立設して車輪Wのフランジ側端面Wfsを当接させて走行規制する内側走行規制壁面113とで構成されている。
【0025】
外側走行路形成体120は、図1乃至図4に示すように、本線レールRの頭部頂面Rtの近傍から下方に向けて傾斜して車輪Wのフランジ部Wfを誘導移行させる外側移行緩斜面121と、この外側移行緩斜面121の末端縁に沿って連続形成されてフランジ部Wfを誘導走行させる外側誘導走行面122と、この外側誘導走行面122の外側縁に沿って立設して車輪Wの飛び出しをガードする外側ガード壁面123とで構成されている。
【0026】
また、脱線時走行装置100は、図4に示すように、左右一対の本線レールR、Rのいずれか一方の近傍に配置された内側走行路形成体110の内側走行規制壁面113と本線レールRの他方の近傍に配置された外側走行路形成体120の外側ガード壁面123との相互間隔Dsが、左右一対の車輪W、Wにおいていずれか一方の車輪Wのフランジ側端面Wfsと他方の車輪Wの転動部側端面Wnsとの相互間隔Dwより長く設定されている。
【0027】
また、図4に示すように、内側走行路形成体110の内側誘導走行面112の高さHgiが、外側走行路形成体120の外側誘導走行面122の高さHgoより低く設定されている。
【0028】
そして、図4に示すように、内側走行路形成体110の内側移行緩斜面111の上端縁の高さHdiが、外側走行路形成体120の外側移行緩斜面121の上端縁の高さHdoより低く設定されている。
【0029】
このようにして得られた本実施例の脱線時走行装置100は、内側走行路形成体110が、本線レールRの頭部頂面Rtの近傍から下方に向けて傾斜した内側移行緩斜面111と内側移行緩斜面111の末端縁に沿って連続形成した内側誘導走行面112と内側誘導走行面112の外側縁に沿って立設した内側走行規制壁面113とで構成されているとともに、外側走行路形成体120が、本線レールRの頭部頂面Rtの近傍から下方に向けて傾斜した外側移行緩斜面121と外側移行緩斜面121の末端縁に沿って連続形成した外側誘導走行面122と外側誘導走行面122の外側縁に沿って立設した外側ガード壁面123とで構成されている。
したがって、地震等に起因して列車の車輪Wが本線レールRから脱線した際、列車の車輪Wが内側走行規制壁面113に当接して確実に走行規制された状態で左右一対の車輪W、Wのフランジ部Wf、Wfが内側誘導走行面112と外側誘導走行面122を誘導走行するので、列車の逸脱走行や横転等を回避できるとともに、内側走行路形成体110と外側走行路形成体120が本線レールRの近傍に配置されてレール締結装置Cやスラブ盤B等の軌道構成部品を覆っているため、列車の脱線時に走行する車輪Wから受けるレール締結装置Cやスラブ盤B等の軌道構成部品の損傷を防止できる。
【0030】
また、内側走行路形成体110が本線レールRの頭部頂面Rtの近傍から下方に向けて傾斜した内側移行緩斜面111を備えているとともに、外側走行路形成体120が本線レールRの頭部頂面Rtの近傍から下方に向けて傾斜した外側移行緩斜面121を備えている。
したがって、本線レールRから脱線した左右一対の車輪W、Wのフランジ部Wf、Wfが内側移行緩斜面111と外側移行緩斜面121にそれぞれ誘導されるので、脱線時に生じがちな衝撃を吸収緩和して列車の車体バランスを過度に損なうことなく、脱線した車輪Wを内側誘導走行面112と外側誘導走行面122にそれぞれ円滑に移行できる。
【0031】
また、外側走行路形成体120が、外側誘導走行面122の外側縁に沿って立設した外側ガード壁面123を備えている。
したがって、列車との衝突等に起因して内側走行規制壁面113が損傷、曲折した際にも、外側ガード壁面123が車輪Wの飛び出しをガードするので、列車の逸脱走行等を確実に回避できる。
【0032】
また、左右一対の本線レールR、Rのいずれか一方の近傍に配置された内側走行路形成体110の内側走行規制壁面113と本線レールRの他方の近傍に配置された外側走行路形成体120の外側ガード壁面123との相互間隔Dsが、左右一対の車輪W、Wのいずれか一方のフランジ側端面Wfsと他方の転動部側端面Wnsとの相互間隔Dwよりも長く設定されている。
したがって、左右一対の車輪W、Wが内側誘導走行面112と外側誘導走行面122をそれぞれ走行する際、左右一対の車輪W、Wのうち脱線蛇行する方向に位置する車輪Wが外側ガード壁面123と当接することなく、前記車輪Wに追従する車輪Wが内側走行規制壁面113のみと当接状態で誘導走行するので、走行する車輪Wの摺動抵抗を大幅に低減して安定した走行を実現でき、また、誘導走行時に内側走行規制壁面113が過度の摺動抵抗により変形または摩耗損傷しても外側ガード壁面123に当接状態で誘導走行するの
で、安全性の高い走行が達成できる。
【0033】
また、内側走行路形成体110の内側誘導走行面112の高さHgiが、外側走行路形成体120の外側誘導走行面122の高さHgoよりも低く設定されている。
したがって、左右一対の車輪W、Wが内側誘導走行面112と外側誘導走行面122を走行する際、車輪Wの上部が内側走行規制壁面113から離間する方向に列車の車輪W及び車体が傾斜して、走行時の崩れかけた車体バランスを回復させるように車体の重心を本線レールR側に傾斜させるため、脱線走行を安定化させることができる。
【0034】
そして、内側走行路形成体110の内側移行緩斜面111の上端縁の高さHdiが、外側走行路形成体120の外側移行緩斜面121の上端縁の高さHdoよりも低く設定されている。
したがって、内側移行緩斜面111が本線レールRから脱線した車輪Wを誘導移行する際、車輪Wのフランジ部Wfの下端縁と内側移行緩斜面111の上端縁との引っ掛かりを回避できるので、車輪Wの円滑な誘導移行を実現できるなど、その効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施例である脱線時走行装置を組み込んだ軌道の全体概要図。
【図2】脱線時走行装置を組み込んだ軌道の一部を示す斜視図。
【図3】脱線時走行装置を組み込んだ軌道の一部を示す上面図。
【図4】脱線時走行装置を組み込んだ軌道の一部を示す断面図。
【符号の説明】
【0036】
100 ・・・ 脱線時走行装置
110 ・・・ 内側走行路形成体
111 ・・・ 内側移行緩斜面
112 ・・・ 内側誘導走行面
113 ・・・ 内側走行規制壁面
120 ・・・ 外側走行路形成体
121 ・・・ 外側移行緩斜面
122 ・・・ 外側誘導走行面
123 ・・・ 外側ガード壁面
T ・・・ 軌道
R ・・・ 本線レール
Rt ・・・ 本線レールの頭部頂面
C ・・・ レール締結装置
B ・・・ スラブ盤
S ・・・ 走行路支持体
Sc ・・・ 締結手段
W ・・・ 列車の車輪
Wf ・・・ フランジ部
Wfs ・・・ フランジ側端面
Wns ・・・ 転動部側端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の本線レールが敷設された軌道の内側領域に左右一対で内側走行路形成体が近接配置されるとともに前記軌道の両外側領域に左右一対で外側走行路形成体が近接配置されて脱線走行する列車の車輪を誘導して走行させる脱線時走行装置であって、
前記内側走行路形成体が、前記本線レールの頭部頂面近傍から下方に向けて傾斜して前記車輪のフランジ部を誘導移行させる内側移行緩斜面と該内側移行緩斜面の末端縁に沿って連続形成されて前記フランジ部を誘導走行させる内側誘導走行面と該内側誘導走行面の外側縁に沿って立設して前記車輪のフランジ側端面を当接させて走行規制する内側走行規制壁面とで構成されているとともに、
前記外側走行路形成体が、前記本線レールの頭部頂面近傍から下方に向けて傾斜して前記車輪のフランジ部を誘導移行させる外側移行緩斜面と該外側移行緩斜面の末端縁に沿って連続形成されて前記フランジ部を誘導走行させる外側誘導走行面と該外側誘導走行面の外側縁に沿って立設して前記車輪の飛び出しをガードする外側ガード壁面とで構成されていることを特徴とする脱線時走行装置。
【請求項2】
前記左右一対の本線レールのいずれか一方の近傍に配置された内側走行路形成体の内側走行規制壁面と本線レールの他方の近傍に配置された外側走行路形成体の外側ガード壁面との相互間隔が、前記左右一対の車輪においていずれか一方の車輪のフランジ側端面と他方の車輪の転動部側端面との相互間隔より長く設定されていることを特徴とする請求項1記載の脱線時走行装置。
【請求項3】
前記内側走行路形成体の内側誘導走行面の高さが、前記外側走行路形成体の外側誘導走行面の高さより低く設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の脱線時走行装置。
【請求項4】
前記内側走行路形成体の内側移行緩斜面の上端縁の高さが、前記外側走行路形成体の外側移行緩斜面の上端縁の高さより低く設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の脱線時走行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−240473(P2008−240473A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85805(P2007−85805)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000216047)鉄道軌材工業株式会社 (16)