説明

脱臭装置

【課題】 ベッド間の移動が容易で、発生する局所臭気の吸引、脱臭を簡易な操作で行える装置を提供する。
【解決手段】 内部に着脱自在な脱臭剤カートリッジが装着された移動可能な脱臭装置10本体と、一端が脱臭装置10本体上面に回動可能に支持され、内部に通気路が形成された第1の吸引アーム11と、第1の吸引アーム11の通気路と連通した通気路が内部に形成され、一端が第1の吸引アーム11の先端に回動関節17を介して連結された、先端に吸引口を有する第2の吸引アーム12と、脱臭装置本体10内に設けられ、第1の吸引アーム11及び第2の吸引アーム12内の通気路を介して吸引口から臭気を吸引する吸気ファンとを備えた。この吸気ファンから送気された臭気を、カートリッジ内の脱臭剤を通過させて脱臭し、装置本体外に排出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や老人介護施設等において、寝たきりの病人、要介護者のベッドのもとに移動して、おむつ交換等の際に発生する局所臭気を吸引し、脱臭する脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病院や老人介護施設等において、寝たきりの病人、要介護者のおむつ交換をする際に、排泄物や局部から発せられる臭気を短時間に処理できることへの要求がある。このような、排泄物等の局所臭気を脱臭する脱臭装置には、様々なものが開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、蛇腹状の管を変位させて臭気発生源のすぐ近くに吸引口配置させ、吸引口から臭気を吸い込み脱臭する脱臭装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、脱臭装置と電池とを搭載し、吸引ホースを伸ばした場合はホース先端から臭気を収集し、吸引ホースを収納した場合はダストボックス内の臭気を脱臭する装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、ボールジョイント(球関節)で連結されたダクトの先端に椀状の吸込フードを備え、ダクトを屈曲させて吸込フードの位置決めをすることができる脱臭装置が開示されている。また、この脱臭装置は、フィルタによる送風能力の低下を避けるため、吸込口にも吸込ファンを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−157617号公報
【特許文献2】特開2000−157582号公報
【特許文献3】特許2005−185696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した脱臭装置は、装置が大掛かりで、看護師等が各ベッドまで移動させるのが大変で、また発生する局所臭気の脱臭作業に手間がかかるという問題があった。また、上述した脱臭装置においては、吸引した臭気の処理についての明確な処理方法が特記されていないことが環境保全において課題となる。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成からなり、ベッド間の移動が容易で、発生する局所臭気の吸引、脱臭を簡易な操作で行えるようにしたもので、吸引した臭気を容易かつ確実に吸着可能な吸着剤を装着した脱臭装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の脱臭装置は、内部に着脱自在な脱臭手段を有する移動可能な脱臭装置本体と、一端が前記脱臭装置本体上面に回動可能に支持され、内部に通気路が形成された第1の吸引アームと、該第1の吸引アームの通気路と連通した通気路が内部に形成され、一端が前記第1の吸引アームの先端に回動関節を介して連結された、先端に吸引口を有し、前記第1の吸引アームを連動可能な第2の吸引アームと、前記脱臭装置本体内に、前記第1の吸引アーム及び前記第2の吸引アーム内の通気路を介して前記吸引口から臭気を吸引し、排気側から送気可能な吸気手段とを備え、前記吸引口から吸引され、前記第1の吸引アームと前記第2の吸引アーム内の通気路を経由し、前記吸気手段を通じて送気された臭気を、前記脱臭手段を通過させて脱臭し、装置本体外に排出する脱臭装置において、前記吸引口の外周縁に根元部が支持され、先端に向けて拡径する筒状のカバーと、該カバーの内周面と前記吸引口との間に、前記吸引口から所定の離れをとって遮蔽板とが設けられ、前記第2の吸引アームを操作して、前記カバーを臭気発生源の上方に位置させ、前記吸気手段の動作により、発生臭気を、前記遮蔽板と前記カバー内周面とに沿って前記吸引口に案内して吸引することを特徴とする。
【0010】
前記遮蔽板は、前記吸引口から所定の離れをとって設けられた平板形状からなり、該遮蔽板と前記カバー内周面とに沿って、臭気が前記吸引口に案内されるようにすることが好ましい。
【0011】
前記遮蔽板は、前記カバーで囲まれた空間において、先端側に向けて凸状をなした形状からなり、該遮蔽板の外周面と前記カバー内周面とに沿って、臭気が前記吸引口に案内されるようにすることが好ましい。
【0012】
前記遮蔽板は、先端に向けて凸状をなした円錘形状をなすことが好ましい。
【0013】
前記遮蔽板は、先端に向けて凸状をなした湾曲面形状をなすことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な構成からなり、かつ、脱臭作業に手間を要しない脱臭装置を提供することができる。また、メソ孔主体活性炭を脱臭吸着剤としていることから、カートリッジ式で吸着剤を取り出して容易に吸着剤の脱着再生が行えるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る脱臭装置の外観を示した斜視図である。
【図2】吸引アームの各部拡大した部分側面図であり、(a)は第2吸引アームの先端部、(b)は第1吸引アームと第2吸引アームとの接合部、(c)は第1吸引アームの根元部を図である。
【図3】臭気吸引カバーと遮蔽板に関する他の実施例を示した部分断面図。
【図4】図1中の矢視III−IIIで示した脱臭装置の側断面図である。
【図5】活性炭カートリッジを示した図であり、(a)は平面図、(b)は(a)中の矢視b−bで示した断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る脱臭装置を上方から見た平面図である。
【図7】脱臭装置本体に収容された吸収アームの昇降装置を示した脱臭装置の側断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る脱臭装置を使用している様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る脱臭装置を図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る脱臭装置1の外観を示した斜視図である。この脱臭装置1は、アルミニウムの板材及び成型材から形成された、上面に操作パネル40が配置された脱臭装置本体10と、脱臭装置本体10から延出した第1の吸引アーム11及び第2の吸引アーム12とを備えている。
【0018】
脱臭装置本体10は、脱臭装置1を構成する各装置を収容・保持するとともに、脱臭装置本体10から延出した第1の吸引アーム11及び第2の吸引アーム12(以下、第1の吸引アーム11及び第2の吸引アーム12を総称する場合は、単に吸引アームと記す。)のうち、第1の吸引アーム11の根元部を支持する。本実施の形態では、第1の吸引アーム11及び第2の吸引アーム12は、ステンレススチールを折り曲げ成形してなる断面矩形の筒体形状をなし、回動関節を介して屈曲、伸長可能なアームからなる。アーム内は臭気の通気路となっている。脱臭装置本体10の下面の四隅にはキャスタ13が取り付けられ、また、脱臭装置本体10の側面上部には取手14が取り付けられている。これにより、看護師やヘルパー等(以下、作業者と呼ぶ。)はこの脱臭装置1を、使用するベッドサイドまで手押しで移動することができる。なお、一部のキャスタ13にはストッパ13aが取り付けられており、ストッパ13aによりキャスタ13をロックすることで、脱臭装置1を確実に停止保持させておくことができる。また、脱臭装置本体10の側面には、格子状のハンガー面(不図示)が形成され、このハンガー面に大きさの異なる複数の収納籠15が着脱自在に取り付けられている。これらの収納籠15に、それぞれ未使用のおむつやタオル等の備品、使用済みのおむつ等を分けて収納しておくことができる。なお、使用済みのおむつ等を収納する収納籠15には、密閉蓋15aが設けられている。これにより、収納籠15内の臭気を外部に漏らさないようにすることができる。
【0019】
脱臭装置1の上面には操作パネル40が設けられている。この操作パネル40は作業者が脱臭装置1の操作を行うためのスイッチ群から構成されており、後述するように、スイッチ群により吸引アーム11,12の昇降動作や、臭気の吸引動作のON/OFF操作を実行できる。
【0020】
図2各図は、吸引アーム11,12の各部を拡大して示した部分側面図である。図2(a−1),(a−2)は第2吸引アーム12の先端部を示している両図に示したように、第2の吸引アーム12の先端近傍の下面には、臭気を取り込むための直径160mmの開口12cが形成されており、この開口12cを取り囲むように、円錐台形状の臭気吸引カバー18が取り付けられている。この臭気吸引カバー18は、臭気発生源に面してテーパ角度θをなして開口12cの外周縁位置に支持され、開口端の臭気吸引口18aにかけて拡径されている。これにより臭気吸引口18aを臭気発生源に向けることにより、臭気を確実に吸引し、臭気吸引カバー18で囲まれたカバー内空間18bを通じて開口12cに吸引させ、臭気を外部に逃さない。本実施例の臭気吸引カバー18のテーパ角度θはθ=60°に設定されているが、テーパ角度θの範囲はθ=45〜65°程度に設定できる。なお、この臭気吸引カバー18は、例えばアクリル板等の透明樹脂材料とすることにより、開口端の臭気吸引口18aを臭気発生源の近傍に接近させた場合にもおむつの交換作業等に支障を生じさせることがない。
【0021】
図2(a−1)に示したように、臭気吸引カバー18の内側には、第2の吸引アーム12に形成された開口12cを覆い、開口部から所定の離れhを確保して、開口よりわずかに小さな平板状の遮蔽板19が取り付けられている。この遮蔽板19を開口前面に配置することにより、第2の吸引アーム12と遮蔽板19との間に、吸引通気部としての隙間18cが形成され、この隙間18cから臭気が吸引される(図中矢印で臭気の流れを示す)ことにより、吸引される臭気の風速が高められ、より効果的に所定風量の臭気を装置本体内に吸引することができる。
【0022】
図2(a−2)は、この遮蔽板19を、下向きに凸状をなす扁平円錐形状とした例を示している。臭気吸引時に、遮蔽板19の面に沿った臭気流れを形成することにより、より効果的な吸引が可能になる。
【0023】
以下、図2(b),(c)を参照して、第2の吸引アーム12先端から第1の吸引アーム11の根元部の脱臭装置本体10(図1)内までの臭気の流れについて、簡単に説明する。図2(b)に示したように、第1吸引アーム11内、第2の吸引アーム12内に形成された通気路11a、12aは、リング状のシールジョイント17aが装着された回動関節17により連通している。さらに、図2(c)に示したように、第1の吸引アーム11は、その根元部において、回動支持部16を介して、脱臭装置本体10(図1)から延びた伸縮式ダクト20の上端にシールジョイント16aを介して回動可能に支持されている。このように、第2の吸引アーム12は、第1の吸引アーム11の先端と、シールジョイント17aを介して回動可能に連結されている。また、臭気吸引口18aから吸引された臭気は、第2の吸引アーム12内から第1の吸引アーム11内へ通気し、脱臭装置本体10(図1)内まで導かれる。
【0024】
ここで、第2の吸引アーム12先端の臭気吸引カバー18と遮蔽板19の他の実施例について、図3各図を参照して説明する。
図3(a)、(b)は、図2(a−1)で示した臭気吸引カバー18のテーパ角度を上述のようにθ=45°、65°とした例を示している。図3(a)に示した実施例では、臭気吸引カバー18のテーパ角度(θ=45°)としたが、この場合、臭気吸引カバー18の高さHを図2(a−1)の場合より低くすることができ、対象により近づけることができる。そのときの吸引カバー18の開放端の直径を大きくすることができ、吸引範囲を広くすることができる。また、遮蔽板19の取り付け位置は開口12cからの隙間18cの距離hを小さくすることにより、吸引される臭気の風速を高め、十分な風量(吸気量)を確保することができる。図3(b)は臭気吸引カバー18のテーパ角度(θ=45°)とした他の実施例を示している。この実施例では、臭気吸引カバー18の高さHは図2(a−1)の場合より高くなり、吸引対象範囲も狭まるが、遮蔽板19の取り付け位置は開口12cからの距離hを大きくでき、十分な吸引風量を確保することができる。
【0025】
図3(c)〜(f)は、図2(a−2)の変形例として各種形状の遮蔽板19を示している。図3(c)は図2(a−2)に示した下向きの扁平円錐形状の遮蔽板19の高さを臭気吸引カバー18の開放端までとし、臭気吸引カバー18と遮蔽板19とで囲まれたカバー内空間18bの容積を小さくし、臭気吸引時の風速を高めるようにした変形例である。図3(d)は、この遮蔽板19を底面が円板状の円錐台形状とした変形例である。この場合には、臭気吸引カバー18と遮蔽板19とで囲まれたカバー内空間18bの容積を、より小さくでき、臭気吸引効果をより高めることができる。
【0026】
図3(e)、(f)は、遮蔽板19の変形例として、下方に凸形状となる曲面状板を採用した例を示している。この場合には鋭角な部分がないので、カバー内空間18bでの臭気のスムーズな流れを確保することができるとともに、装置使用時の安全性を高めることができる。図3(e)の場合には、図2(a−2)に近い吸引効果が見込まれるが、臭気吸引カバー18に沿って吸引される臭気に対して、遮蔽板19に沿って吸引される臭気がカバー内空間18bでスムースに混ざる効果が期待できるので、隙間18c近傍で発生する乱流状態を抑えることができる。なお、遮蔽板19の曲面形状は球面に限られず、任意の凸形状の曲面板を採用することができる。そのときの遮蔽板19の高さの違いにより、取り付け高さh(図3(a)参照)を適宜設定することができる。
【0027】
図3(g)は、臭気吸引カバー18の外形形状が椀状をなす湾曲面とした変形例を示している。この形状からなる臭気吸引カバー18では、吸引対象が狭まり、カバー内空間18bも狭まるが、その分、吸引する臭気の風速を十分確保することができる。このとき、さらに遮蔽板19として上述した各種の形状のものを併用することができる。
【0028】
次に、脱臭装置本体10に収納された各装置の構成と吸引した臭気の処理方法について説明する。
【0029】
図4は、図1中の断面線III−IIIで示した脱臭装置1の側断面図である。なお、図面の簡略化のため、吸引アーム11を上下方向に昇降する昇降機構については図示を省略している。
【0030】
図4に示すように、脱臭装置本体10内には、第1の吸引アーム11の通気路11aに接続された伸縮式ダクト20と、伸縮式ダクト20に接続され、臭気吸引口18a(図1)から臭気を吸引するための吸気ファン21と、臭気内の粉塵等を捕捉するフィルタとともに臭い成分を吸着する活性炭が充填された活性炭カートリッジ22と、吸気ファン21に電力を供給するバッテリ23とが備えられている。なお、図中、吸引された臭気の流れを矢印で模式的に示している。
【0031】
伸縮式ダクト20は、第1の吸引アーム11の通気路11aから流入した臭気が通気する通気路となる。なお、伸縮式ダクト20は、後述するように吸引アーム11の高さ方向の調整の際に生じる第1の吸引アーム11の昇降動作に追随して伸縮するホース、例えば蛇腹式の樹脂製ホースから構成されている。
【0032】
吸気ファン21は、バッテリ23から電力の供給を受けてモータ21aでシロッコファン21bを回転させ、シロッコファン21bの回転吸引により、吸引アーム11,12を経由して臭気吸引口18a(図1)から臭気を吸引し、排気側から臭気を送気可能となっている。吸気ファン21の吸引能力としては、臭気吸引口18a(図1)において臭気の吸気量が3000l/min程度確保できるように、本実施形態では2台の吸気ファン21が通気路20aを挟んで対向して配置されている。臭気吸引口18aにおける臭気の吸気量3000l/minは、実験による検証によって得られた値であり、この吸気量が確保されれば臭気の拡散が防げることが確認できた。そして、吸気ファン21により吸引された臭気は、脱臭バッファ部24に送られる。
【0033】
脱臭バッファ部24は、吸気ファン21により送られた臭気を活性炭カートリッジ22に均一に通過させるとともに、臭気吸引口18aにおいて所定の風速、吸気量を確保するために形成された空間である。例えば、本実施形態では脱臭バッファ部24の高さHは96mmに設定されている。なお、脱臭バッファ部24の高さHを100mm程度に設定することにより、活性炭カートリッジ22に均一に臭気を通過させることができるとともに、臭気吸引口18aにおいて所定の吸気量を確保することができる。
【0034】
活性炭カートリッジ22は、脱臭装置本体10内の下部位置に着脱自在に取り付けられ、通過する臭気中の微粒子や粉塵等を捕捉するとともに、メソ孔主体活性炭により、におい成分を吸着脱臭する。ここで、活性炭カートリッジ22の詳細を図5を用いて説明する。図5は活性炭カートリッジ22を示した図であり、(a)は活性炭カートリッジ22の上面図、(b)は(a)の矢視b−bで示した活性炭カートリッジ22の断面図を示している。
【0035】
図5(a)に示すように、活性炭カートリッジ22は、開口25aが形成された格子枠状の収容ケース25によりその外殻が形成されている。この収容ケース25の内部には上下面と、厚さ方向の中央仕切部に不織布フィルタ26が配置され、その内部にメソ孔主体活性炭が充填された活性炭層27が形成されている。不織布フィルタ26には、たとえばフィレドンフィルタ(登録商標)が用いられ、メソ孔主体活性炭を安定して収容ケース25内に充填させるためと、プレフィルタとして、吸引した臭気中の微粒子や粉塵等を捕捉する役割を果たす。活性炭層27は臭気中のにおい成分を吸着する。用いられるメソ孔主体活性炭は、木質系の略球状活性炭(3〜5mm程度)で、活性炭に形成された主体細孔(メソ孔)径が2〜50nmで、比表面積が1000〜1400m2/g程度から構成されている。
【0036】
メソ孔主体活性炭は、活性炭層27の通気性、脱臭効果を考慮して、メソ孔容積の割合が活性炭全吸着容積の55〜70%程度とするのがよい。より好ましくは60〜65%が脱臭効果の面から実験結果として好ましいことが確認されている。従来の活性炭は、ミクロ孔(0.8〜2mm)が形成されたものを主体にして用いられてきたが、本実施形態のようにメソ孔が形成された活性炭を主体にしたタイプの方が汚物複合臭の脱臭効果に優れることが、実験で確認された。また、活性炭層27の中にサンゴ砂等の抗菌作用のある物質を混入することで、清潔な空気を活性炭カートリッジ22から排出することができる。また本実施形態では、収容ケース25に不織布フィルタ26及び活性炭層27を収容する構成としているため、脱臭装置1の利用現場では、活性炭カートリッジ22をそのまま新しいものに差し替えて交換することが好ましい。しかし、不織布フィルタ26は洗浄すれば再利用できる製品であるため、活性炭層27を入れ替え、収容ケースを再利用したリサイクルカートリッジの使用も好ましい。
【0037】
脱臭バッファ部24から活性炭カートリッジ22を通過した臭気は、脱臭、清浄され脱臭装置本体10の下面から排出される。すなわち、脱臭装置本体10の下面は空気の排出口となっている。
【0038】
このように、脱臭装置1内の通気路を挟むように対向して配設された2台の吸気ファン21が作動することにより、臭気吸引口18aから吸引された臭気は、第2の吸引アーム12の通気路12aから第1の吸引アーム11の通気路11aを通気して、脱臭装置1内の脱臭バッファ部24で面状のフロー状態となり、活性炭カートリッジ22まで導かれる。
【0039】
なお、臭気発生源から発生した臭気を吸引する際は、第2の吸引アーム12の先端に位置する臭気吸引口18aを、なるべく臭気発生源に近接した上方位置で、可能な限り直上位置に移動することで、脱臭装置1の周辺に臭気が拡散するのを防止することが好ましい。本実施形態の脱臭装置1では、臭気吸引口18aを臭気発生源の近傍に位置させることができるように、脱臭装置本体10上面に取付けられた、第1の吸引アーム11及び第2の吸引アーム12を、回動支持部16と回動関節17回りに所定角度だけ回動させて伸長させることで、臭気発生源と臭気吸引口18aとの平面的な位置合わせが行われる。これに加え、脱臭装置1は、臭気吸引口18aを所定の高さとするために、吸引アーム11、12の高さ位置を調整する昇降装置30を備えている。
【0040】
図6は、脱臭装置1を上方から見た平面図である。図に示すように、第1の吸引アーム11は、平面視して回動支持部16回りに時計回り、反時計回りに回動でき、第2の吸引アーム12は回動関節17回りに同様に回動できる。これにより、作業者は、吸引アーム11,12の折りたたみ時から、最大伸長時までの範囲において、第2の吸引アーム12の先端に取付けられた取手12bを手に取って操作することで、第1の吸引アーム11が連動して第2の吸引アーム12の先端の臭気吸引口18aを所望の位置(臭気発生源等の)に移動させることができる。また、このように、第1の吸引アーム11及び第2の吸引アーム12を自在に動かすことができるため、脱臭装置1の待機時や、手押しにより移動させる場合等に、第1の吸引アーム11と第2の吸引アーム12とが上下に重なるように折りたたんだ状態としておくことが好ましい。
【0041】
図7は、脱臭装置1の側断面図を示している。同図に示したように、脱臭装置1内には、第1の吸引アーム11及び第2の吸引アーム12を上下方向に昇降させる昇降装置30が設けられている。この昇降装置30は、ギアモータMと、ギアモータMの回転軸の回転プーリ(不図示)に掛け渡された伝動ベルト31と、鉛直方向に配置され、上下端が図示しない支持プレートに支持され、伝動ベルト31の駆動力により回転可能なボールねじ32と、このボールねじ32に螺合したナット36が固定されたベースプレート35と、このベースプレート35の四隅に立設され、上面がアーム支持プレート38に固定され、全体として枠体状をなした昇降フレーム37の一部を構成する4本のシャフト33と、シャフト33の上下方向のスライドを案内するために、脱臭装置本体10に固定支持されたリニアブッシュ34とを備えている。同図では、昇降フレーム37の構成および動作を説明するために、伸縮式ダクト20の一部及び吸気ファン21の図示を省略している。
【0042】
以下、昇降装置30の構成と動作について説明する。昇降フレーム37の上面を構成するアーム支持プレート38は、第1の吸引アーム11に回動支持部16を介して連結されている。また、下面を構成するベースプレート35に取り付けられたナット36は、ボールねじ32と螺合している。ボールねじ32の端部にはプーリ(不図示)が設けられており、このプーリとギアモータMに設けられたプーリ(不図示)とに伝動ベルト31が掛け渡されることにより、ギアモータMの回転駆動がボールねじ32に伝達される。ギアモータMは可変速型のモータであり、脱臭装置本体10の上面に設けられた操作パネル40のスイッチ(図1)を操作することにより、ギアモータMを所望の回転方向及び回転速度にすることができる。このとき、4本のシャフト33がリニアブッシュ34により起立位置が保持されているため、昇降フレーム37は、回転が抑止された状態で、モータの回転方向に応じて上方向あるいは下方向に昇降することができる。そして、この昇降フレーム37とともに、吸引アーム11、12は上下方向に昇降する。本実施形態ではこの昇降フレーム37の最大ストロークSは360mmに設定されている。作業者は、操作パネル40を操作することにより、第2の吸引アーム12の先端に形成された臭気吸引口18aの高さをこの範囲内で調整することができる。
【0043】
次に、本願の実施形態に係る脱臭装置1の使用方法について説明する。ここでは、病棟や老人介護施設などにおいての利用を例に説明する。まず、脱臭装置1を、おむつ交換を必要とする人のベッドの足元付近に移動させる。そして、臭気吸引口18aが臭気発生源付近にくるように、操作パネル40のスイッチ操作により、臭気吸引口18aと臭気発生源との高さを合わせるとともに、第2の吸引アーム12に取り付けられた取手12bを持って吸引アーム11、12を伸長させて、臭気吸引口18aと臭気発生源との平面的な位置合わせをする。このようにして、臭気吸引口18aの位置合わせが完了すると、操作パネル40の吸気ファン21のスイッチをオンにする。図8は、おむつ交換の際に発生する臭気を脱臭装置1を使用して脱臭、清浄している様子を示した図である。そして、臭気吸引口18aから臭気を吸引しながら、おむつ交換を実施する。なお、おむつ交換に用いる新しいおむつ等の備品類は、予め脱臭装置本体10に取り付けられた収納籠15に収納しておき、また、使用済みのおむつは密閉蓋付きの収納籠15に収納することができる。そのため、備品類等を備えた脱臭装置1を準備することにより、複数人のおむつを交換することができる。
【0044】
なお、図8に示すように、第1の吸引アーム11及び第2の吸引アーム12を伸長させた場合にも、脱臭装置1の安定が図れるように、脱臭装置本体10内にカウンタウエイトを設置したり、あるいは、脱臭装置1の下部に位置する部材を重量のある材料から構成してもよい。また、第1の吸引アーム11及び第2の吸引アーム12を伸長させた方向にアウトリガを張り出して脱臭装置1の安定を図ってもよい。
【0045】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、様々な変形及び応用が可能である。例えば、吸気ファン21が稼働した時間を積算していき、積算した時間が予め設定した活性炭カートリッジ22の寿命期間に達すると、操作パネルに設けられた警告ランプを点灯させて、活性炭カートリッジ22の交換を作業者に促すようにしてもよい。これにより、十分に脱臭効果を発揮しない活性炭カートリッジ22を使用することがなくなるとともに、予め交換用の活性炭カートリッジ22を準備しておくように作業者に促すことができる。
【0046】
また、収納籠15に吸気ファン21を接続して、おむつ等の汚物を収容する収納籠15に充満した臭気を脱臭する構成としてもよい。これにより、収納籠15に充満した臭気を外部に拡散することを防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1 脱臭装置
10 脱臭装置本体
11 第1の吸引アーム
12 第2の吸引アーム
16 回動支持部
17 回動関節
18 臭気吸引カバー
18a 臭気吸引口
19 遮蔽板
20 伸縮式ダクト
21 吸気ファン
22 活性炭カートリッジ
24 脱臭バッファ部
26 不織布フィルタ
27 活性炭層
30 昇降装置
32 ボールねじ
33 シャフト
36 ナット
37 昇降フレーム
M ギアモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に着脱自在な脱臭手段を有する移動可能な脱臭装置本体と、
一端が前記脱臭装置本体上面に回動可能に支持され、内部に通気路が形成された第1の吸引アームと、
該第1の吸引アームの通気路と連通した通気路が内部に形成され、一端が前記第1の吸引アームの先端に回動関節を介して連結された、先端に吸引口を有し、前記第1の吸引アームを連動可能な第2の吸引アームと、
前記脱臭装置本体内に、前記第1の吸引アーム及び前記第2の吸引アーム内の通気路を介して前記吸引口から臭気を吸引し、排気側から送気可能な吸気手段とを備え、前記吸引口から吸引され、前記第1の吸引アームと前記第2の吸引アーム内の通気路を経由し、前記吸気手段を通じて送気された臭気を、前記脱臭手段を通過させて脱臭し、装置本体外に排出する脱臭装置において、
前記吸引口の外周縁に根元部が支持され、先端に向けて拡径する筒状のカバーと、該カバーの内周面と前記吸引口との間に、前記吸引口から所定の離れをとって遮蔽板とが設けられ、前記第2の吸引アームを操作して、前記カバーを臭気発生源の上方に位置させ、前記吸気手段の動作により、発生臭気を、前記遮蔽板と前記カバー内周面とに沿って前記吸引口に案内して吸引することを特徴とする脱臭装置。
【請求項2】
前記遮蔽板は、前記吸引口から所定の離れをとって設けられた平板形状からなり、該遮蔽板と前記カバー内周面とに沿って、臭気が前記吸引口に案内されることを特徴とする請求項1に記載の脱臭装置。
【請求項3】
前記遮蔽板は、前記カバーで囲まれた空間において、先端側に向けて凸状をなした形状からなり、該遮蔽板の外周面と前記カバー内周面とに沿って、臭気が前記吸引口に案内されることを特徴とする請求項1に記載の脱臭装置。
【請求項4】
前記遮蔽板は、先端に向けて凸状をなした円錘形状をなすことを特徴とする請求項3に記載の脱臭装置。
【請求項5】
前記遮蔽板は、先端に向けて凸状をなした湾曲面形状をなすことを特徴とする請求項3に記載の脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−253248(P2010−253248A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23116(P2010−23116)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【分割の表示】特願2010−13819(P2010−13819)の分割
【原出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(591028108)安藤建設株式会社 (46)
【出願人】(599141227)学校法人関東学院 (14)
【Fターム(参考)】