説明

脱臭装置

【課題】排気筒から浸入する雨水が脱臭剤に当らないようにすると共に、排気の気流や臭気落下距離に影響を与えることなく、排気騒音の低下を図る。
【解決手段】本発明に係る脱臭装置4は、外筒10と、外筒10の内部に設けられる通気性を有する中筒13と、中筒13の内部に設けられる通気性を有する内筒15と、中筒13と内筒15との間の空間に脱臭剤16が充填されて形成される脱臭剤層17と、内筒15の内部の空洞部28に連通するように内筒15の上方に設けられる排気筒8と、排気筒8と内筒15の間に設けられる防雨部材18と、を備え、防雨部材18は、外側から内側に向かって下傾して形成される鍔部31と、鍔部31の内側に形成される開口部32と、を備え、排気筒8の内部に浸入した雨が鍔部31の傾斜に沿って内側に流れ、脱臭剤層17に接触することなく、開口部32から落下するように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気を除去するための脱臭装置に関するものであって、具体的には、集塵装置の排気側に設けた脱臭装置において、排気筒の上部から浸入する雨水が脱臭剤(活性炭)に直接当らないようにすると共に、排気の気流及び騒音に極力影響を与えないように構成した防雨構造を備えた脱臭装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンブロック等を製造する自動車工場の鋳造ラインでは、製造時に発生する塵埃と共に、溶融した鉄からアンモニア、ホルムアルデヒド、フェノールなどを含んだ独特の鋳物臭が発生するため、作業現場の環境改善が求められている。
【0003】
これらの塵埃や鋳物臭を集塵し脱臭除去するための従来のシステムは、一般的に、塵埃を集塵するための集塵装置と、鋳物臭を除去するための脱臭装置と、空気を吸引するための駆動源となるブロアーと、を備えており、騒音の発生源となる。この脱臭装置などの設備から発生する騒音については、工場周辺の生活環境が損なわれないように「騒音規制法」によって規制されており、騒音防止対策が求められている。
【0004】
一方、前記脱臭装置は比較的大型であるため、一般的には、屋外に設置されている。そのため、前記脱臭装置の排気筒には、該脱臭装置内に雨水が浸入するのを防止するための手段が設けられている。
【0005】
従来、この種の防雨手段としては、排気口に複数枚の傾斜板を所定間隔で設置した防雨排気口(例えば、特許文献1参照)や、排気口の上部にエルボ型のダクトを接続した防雨排気口(例えば、特許文献1の従来例参照)や、円弧状に湾曲形成した防雨部材を排気口の上方に設置した脱臭装置(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭61−175791号公報
【特許文献2】登録実用新案第3021446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記した特許文献1に記載の防雨排気口は、部品点数が多く複雑な構造を有しているため、製造コストが高くなるといった問題がある。また、排気口の開口部全面を覆うように複数枚の傾斜板が設けられているため、この傾斜板により排気の気流が妨げられて排気抵抗が増大し、排気側の圧力が高くなるといった問題がある。
【0008】
また、上記した排気口の上部にエルボ型のダクトを接続する防雨排気口の場合には、ダクトが開口されている一方向の騒音が多方向の騒音に比べて大きくなってしまうという問題やに、上記した特許文献2に記載の脱臭装置では、排気口の開口部全面を防雨部材が覆っているため、この防雨部材により排気の気流が妨げられて排気抵抗が増大し、排気側の圧力が高くなるといった問題がある。また、排気は、防雨部材に当った後、横方向から排気されるようになっているため、地上周辺の騒音が大きくなるという問題もある。
【0009】
さらに、脱臭装置から排出される排気は、「悪臭防止法」によって一定濃度以上の臭気が大気中に排出されないように規制されているが、上記した特許文献2に記載の脱臭装置では、排気中の臭気が一定濃度以下に規制されたとしても、排気中に含まれている臭気が地上に届く落下距離(以下「臭気落下距離」と称す)が短くなるため、臭気の拡散が不十分となるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、鋳物臭などの臭気を除去するための脱臭装置において、低コストで簡素な構造の防雨部材を設けることにより、排気筒から浸入する雨水が脱臭剤(活性炭)に当らないようにすると共に、排気の気流や臭気落下距離に影響を与えることなく、排気騒音の低下を図ることのできる防雨構造を備えた脱臭装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る脱臭装置は、外筒と、該外筒の内部に設けられる通気性を有する中筒と、該中筒の内部に設けられる通気性を有する内筒と、前記中筒と前記内筒との間の空間に脱臭剤が充填されて形成される脱臭剤層と、前記内筒の内部の空洞部に連通するように該内筒の上方に設けられる排気筒と、該排気筒と内筒の間に設けられる防雨部材と、を備え、該防雨部材は、外側から内側に向かって下傾して形成される鍔部と、該鍔部の内側に形成される開口部と、を備え、前記排気筒の内部に浸入した雨が前記鍔部の傾斜に沿って内側に流れ、前記脱臭剤層に接触することなく、前記開口部から落下するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
この特徴を備えた脱臭装置によれば、排気筒から浸入した雨水は、防雨部材により、脱臭剤層の脱臭剤に接触することがなく、また、防雨部材の上面に雨水が滞留して脱臭装置内の湿度が上昇し、脱臭剤にその湿気が吸収されることがない。そのため、脱臭剤層の脱臭剤の性能低下を防止することができる。
【0013】
また、本発明に係る脱臭装置において、前記防雨部材は、無底すり鉢形状を成し、前記鍔部の水平方向に対する傾斜角度が略60度で且つ前記開口部の直径が前記内筒の内径の略80%であることを特徴とする。
【0014】
この特徴を備えた脱臭装置によれば、防雨部材が無底すり鉢状の簡素な構造を有しているため、低コストで製造可能となり、コストの低減化を図ることができる。また、防雨部材の鍔部の水平方向に対する傾斜角度を略60度とすることにより、鍔部の下面側に脱臭剤層から洩れた脱臭剤の周囲に付着する微粉や、運搬などにより破砕した脱臭剤の微粒子(以下、これらを総称して「微粉」と称す。)が排気中に混在されて接触し付着、凝集されることで、排気筒から外部に飛散する脱臭剤の微粉量を減少させることができる。
【0015】
また、防雨部材の開口部の直径を内筒の内径の略80%とすることにより、排気側の圧力の上昇を抑制し、排気の駆動源に負荷をかけることなく、排気の気流に影響を与えることが少ないため、排気からの騒音の増大を防止することができると共に、臭気落下距離に影響を与えないため、臭気の拡散を十分に行うことができる。
【0016】
また、本発明に係る脱臭装置において、前記防雨部材は、周方向に沿って前記鍔部の高さ寸法が次第に大きくなるように形成されており、該高さ寸法が大きい程、前記鍔部の水平方向に対する傾斜角度が大きくなるように形成されていることを特徴とする。
【0017】
この特徴を備えた脱臭装置によれば、排気筒より浸入して鍔部に落下又は流下した雨水は、鍔部の傾斜に沿って流れ、最終的には、傾斜角度が最大の箇所から集中的に落下するため、該落下個所に排水口を設けることにより、雨水の排出を効率よく速やかに行なうことができる。
【0018】
また、本発明に係る脱臭装置において、前記鍔部の下面には面粗し処理が施されていることを特徴とする。
【0019】
この特徴を備えた脱臭装置によれば、鍔部の下面を面粗し処理することによって、無数の凹凸部が形成されるため、脱臭剤層から洩れた脱臭剤の微粉をより付着、捕集し易くなり、排気筒からの外部への脱臭剤の微粉の飛散量をさらに減少させることができる。
【0020】
また、本発明に係る脱臭装置において、前記排気筒の上端部には先細り形状のテーパ部が形成されていることを特徴とする。
【0021】
この特徴を備えた脱臭装置によれば、排気筒の上端部に先細り形状のテーパ部を形成することにより、脱臭装置の運転時に、排気筒内部を通過する清浄空気の速度を速くすることができ、雨水の浸入を防止することができると共に、臭気落下距離を長くし、臭気の拡散を十分に行うことができる。また、テーパ部により排気筒の上端が狭められることにより、脱臭装置の運転停止時にも、雨水が排気筒内に浸入し難くすることができる。
【0022】
また、本発明に係る脱臭装置において、前記防雨部材の開口部の下方には、該開口部から落下した雨水を受けて外部に排出する排水設備が設けられていることを特徴とする。
【0023】
この特徴を備えた脱臭装置によれば、排気筒より浸入した雨水は、脱臭装置内に滞留することなく、排水設備によって速やかに脱臭装置外に排出されるため、脱臭剤に雨水が吸収されることがなく、脱臭剤の性能低下をより確実に防止することができる。
【0024】
また、本発明に係る脱臭装置において、前記排水設備は、中央部に排水口が形成されていると共に該排水口に向かって水勾配を有する雨水受け部と、前記排水口に接続されて外部に向かって水勾配を有する排水管と、を備えていることを特徴とする。
【0025】
この特徴を備えた脱臭装置によれば、排気筒から浸入した雨水は、雨水受け部の水勾配によって中央部に集められ、排水口から排水管を経由して、脱臭装置外に速やかに排出されるため、脱臭剤に雨水が吸収されることがなく、脱臭剤の性能低下をより確実に防止することができる。
【0026】
また、本発明に係る脱臭装置において、前記脱臭剤は活性炭であることを特徴とする。
【0027】
この特徴を備えた脱臭装置によれば、脱臭剤に再使用可能な活性炭を使用しているため、ランニングコストの低減化を図ることができる。また、活性炭は、脱臭効果と共に消音効果も発揮するため、コストを掛けずに騒音を低下させることができ、経済性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る脱臭装置によれば、低コストで簡素な構造の防雨部材を設けることにより、排気筒から浸入する雨水が脱臭剤に当らないようにすると共に、排気の気流や臭気落下距離に影響を与えることなく、排気騒音の防止を図ることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る脱臭装置と集塵装置及びブロアーを備えた集塵・脱臭システムを示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る脱臭装置を示す正面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】図2のC部分を拡大して示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る脱臭装置において、排気筒から雨水が浸入した状態を示す断面図である。
【図7】図2のD部分を拡大して示す断面図であり、防雨部材の下面側に活性炭の微粉が付着した状態を示している。
【図8】本発明の実施の形態に係る脱臭装置の変形例において、排気筒から雨水が浸入した状態を示す断面図である。
【図9】図8のE−E断面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る脱臭装置の別の変形例において、防雨部材の下面側に活性炭の微粉が付着した状態を部分的に拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る脱臭装置について説明する。
【0031】
先ず、図1を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る脱臭装置を備えた集塵・脱臭システムについて説明する。
【0032】
この集塵・脱臭システムは、鋳物を製造・加工する際に発生するアセトアルデヒドやアンモニアなどの臭気と塵埃を含んだ空気(以下、「含塵空気」と称す。)を処理するためのシステムであり、フィルタ1を搭載した集塵装置2と、集塵装置2の下流側に配置されるブロアー3と、ブロアー3の下流側に配置される脱臭装置4と、により構成されている。そして、集塵装置2の吸込側には含塵空気を集塵装置2に搬送するためのダクト5が接続され、さらに、集塵装置2の排出側とブロアー3の吸込側との間及びブロアー3の排出側と脱臭装置4の吸込口6との間にはそれぞれダクト7が接続され、脱臭装置4の上部には排気筒8が接続されている。
【0033】
このように構成された除塵・脱臭システムにおいて、鋳物を製造・加工する設備(図示省略)から発生した含塵空気は、ブロアー3の吸引力によって、集塵装置2内に吸引され、集塵装置2内に搭載されたフィルタ1によって塵埃が集塵濾過される。その後、塵挨が除去された空気は、ブロアー3を経由し、脱臭装置4内において臭気成分が除去され、清浄空気となって排気筒8から外部に放出される。
【0034】
次に、図2〜図7を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る脱臭装置4について説明する。
【0035】
本実施の形態に係る脱臭装置4は、円筒形状の外筒10と、外筒10の下方開口部を閉塞するように設けられるベース11と、外筒10の上方開口部を閉塞するように設けられる天板12と、外筒10の内部に外筒10と同心円状に設けられる円筒形状の中筒13と、外筒10と中筒13との間に形成される円筒状の流路14と、中筒13の内部に中筒13と同心円状に設けられる円筒形状の内筒15と、中筒13と内筒15との間に形成される空間に脱臭剤16が充填されて形成される脱臭剤層17と、排気筒8と内筒15の間に設けられる防雨部材18と、を備えて構成されている。
【0036】
中筒13及び内筒15は、いずれもステンレス製で、多数の小孔19が一定間隔毎に形成されたパンチング材により構成され、通気性を有している。また、このパンチング材には、強度を向上させるために、適宜の間隔で縦横方向に補強板(図示省略)が取り付けられている。
【0037】
外筒10と中筒13と内筒15は、上段、中断、下段の高さ方向3段に一体で分割可能に設けられており、該分割された外筒10と中筒13と内筒15とにより構成される各ユニット20同士はフランジ継手21を介してボルト22及びナット23により互いに締結されている。このように、各ユニット20はフランジ継手21を介して接続される着脱容易な構造を有しているため、ユニット20を簡単に増減することができ、脱臭能力、消音能力に応じて、適宜、最適なユニット20数に選定、変更することができる。
【0038】
各ユニット20の端部には、外筒10と中筒13及び中筒13と内筒15を接続及び補強するため連結板24が、それぞれ、中心角が30度を成すように放射状に12枚ずつ取り付けられており、この連結板24によりユニット20の外筒10と中筒13と内筒15とは一体化されている。なお、連結板24の高さは、脱臭性能や消音性能に影響を与えないようにできる限り低く形成するのが好ましい。
【0039】
脱臭剤層17の脱臭剤16は、活性炭により構成されており、この活性炭としては、例えば、中性ガス用のヤシ殻を原料とした、サイズ4−8メッシュの破砕状活性炭を使用することができる。なお、活性炭の種類及びサイズは、含塵空気中に含まれる臭気物質に対応したものを適宜選択すれば良い。
【0040】
活性炭は、大部分の炭素の他、酸素、水素、カルシウムなどからなる多孔質の物質であり、1g当たりに約700m2の面積に相当する微細な穴(微孔)を有しており、該微孔に臭気を吸着させて脱臭を行なう仕組みとなっている。しかし、活性炭が雨水に濡れた場合には、その水分が活性炭の微孔によって吸着されることとなり、臭気を吸着することができないため、結果的に脱臭装置の脱臭性能が低下して、排気筒8から臭気が洩れてしまい、周囲に悪臭が飛散する危険性がある。
【0041】
脱臭剤層17の上方の天板12には、中筒13と内筒15との間の前記空間に活性炭を充填するための投入口25が複数設けられており、各投入口25には開閉可能な蓋(図示省略)が取り付けられ、該蓋を開放させることにより前記空間に活性炭を充填可能となっている。また、脱臭剤層17の下方のベース11には、活性炭の抜取口(図示省略)が設けられており、一定期間経過することによって脱臭能力が衰えて交換時期に達した使用済みの活性炭を前記抜取口から抜き取ることができるようになっている。なお、使用済みの活性炭は、焼成再生技術等により再生して使用することができるので、脱臭剤16として活性炭を使用することにより、ランニングコストの低減化を図ることができる。
【0042】
中筒13と脱臭剤層17との間及び内筒15と脱臭剤層17との間には、それぞれ、非金属製のメッシュ部材26が介装されており、メッシュ部材26は、中筒13及び内筒15に対して、適宜の間隔で留め具(図示せず)を用いて固定されている。メッシュ部材66は、通気性に優れたものが使用され、脱臭剤16より細かい網目により形成されている。このように、メッシュ部材26の網目の寸法は、脱臭剤(活性炭)16がメッシュ部材26の外部に漏れ出さないように適宜選択されているため、脱臭剤(活性炭)16がメッシュ部材26の網目を通過することがなく、排気筒8から飛散することもない。
【0043】
メッシュ部材26の材質は、耐薬品性に優れたポリプロピレンであり、脱臭剤(活性炭)16と中筒13及び内筒15との間にメッシュ部材26を介装することにより、直接、脱臭剤(活性炭)16と金属製の中筒13及び内筒15とが接触するのを防止することができるため、電蝕(電腐)を防止することができる。より具体的に説明すると、例えば、
内筒15や中筒13が金属製の場合、酸性ガスによって腐食したり、脱臭剤(活性炭)と内筒15及び中筒13が直接接触して長期間その状態が継続したりすることにより、電蝕が発生し、脱臭剤(活性炭)16と接触している金属製の中筒13及び内筒15が腐食するおそれがあるが、非金属性のメッシュ部材26を脱臭剤(活性炭)16と中筒13及び内筒15との間に設けることにより、脱臭剤(活性炭)16と中筒13及び内筒15とが直接接触することを防ぐことができるため、電蝕の発生を抑制し、中筒13及び内筒15の腐食を防ぐことができる。
【0044】
吸込口6は、円筒形状を成し、流路14に連通するように外筒10の外周側面に接続されており、中筒13の吸込口6に対応する位置には、分流板27が設けられている。分流板27は、側方視において、矩形を成し、分流板27の面積が吸込口6の開口面積より大きくなるように形成されている。より具体的には、分流板27は、平面視で中心角が略120度の円弧状に湾曲した金属板により形成されており、中筒13の吸込口に対応した箇所で小孔19を塞ぐように中筒13の外面に沿って取り付けられている。
【0045】
このように分流板27を構成することにより、流路14に進入した空気が脱臭剤層17の周囲の円筒形状の流路14内全体を満遍なく行き渡るようになるため、脱臭剤(活性炭)16の負荷を均一に保つことができる。また、吸込口6から勢い良く外筒10内に進入してくる臭気を含んだ空気を分流板27に最初に衝突させることにより、前記空気が直接、脱臭剤層17に進入して脱臭剤(活性炭)16を破砕させてしまうことを防止することもできる。
【0046】
排気筒8は、直立した円筒形状を成し、内筒15の内部に形成される円柱形状の空洞部28に連通するように天板12に接続されている。排気筒8の上下方向の長さは、十分長く設定されているのが好ましく、天板12を含めた排気筒8の上下方向の長さは、本実施例では、4400mm(排気筒8のみの長さは、3900mm)としている。また、排気筒8の内径は、ブロアー3の運転時に、排気筒8内を通過する空気の速度が、十数m/s程度となるように設定されているのが好ましく、本実施例では、Φ1500mmとしている。
また、排気筒8の上部には、円錐状の先細り形状を有するテーパ部29が形成されており、テーパ部29の上端に排気口30が開口されている。
【0047】
防雨部材18は、無底すり鉢形状を成し、外側から内側に向かって下傾して形成される鍔部31と、鍔部31の内側に形成される開口部32と、を備えて構成されている。鍔部31の水平方向に対する傾斜角度α(図2参照)や径方向の長さは、風量や静圧及び騒音に影響を与えないように適宜設定されており、好ましくは、傾斜角度αが略60度で且つ開口部32の直径Φd(図2参照)が内筒15の内径ΦD(図2参照)或いは排気筒8の内径の略80%に設定されているのが良い。
【0048】
防雨部材18の開口部32の下方には、排水設備33が設けられており、排水設備33には、ベース11の上面の空洞部28に臨む面に雨水受け部34が設けられている。雨水受け部34は、すり鉢形状を成し、中央部に排水口35が形成されていると共に排水口35に向かって水勾配が形成されており、排水口35には外部に向かって水勾配を有する排水管36が接続されている。
【0049】
次に、上記した構成を備えた本発明の実施の形態に係る脱臭装置4の作用について説明する。
【0050】
前記集塵・脱臭システムにおいて集塵装置1から排気された臭気を含んだ空気は、ブロアー3の吐出力によって吸込口6から脱臭装置4の外筒10内に進入すると、分流板27に衝突し、図4に示すように、平面視で左右両側に均等に分流し、流路14内を流通する。
【0051】
その後、前記臭気を含んだ空気は、図5に示すように、中筒13の小孔19から脱臭剤層17に進入し、脱臭剤(活性炭)16と接触することにより脱臭されて、清浄空気となり、内筒15の小孔19から空洞部28内及び排気筒8内を上昇し、排気口30から排出される。また、脱臭剤16の活性炭は、消臭効果の他に、減音(消音)効果も備えているため、臭気を含んだ空気が脱臭剤層17を通過することによって消臭と減音の両方の効果を得ることができる。したがって、臭気を含んだ空気は、脱臭剤層17を通過し、内筒15の空洞部28を経由して、排気口30より大気に排出される際には、減音(消音)且つ無臭化された清浄空気となる。
【0052】
そして、このようにブロアー3が運転されている時に降雨があった場合には、上記したように排気筒8の上部にテーパ部29が形成されていることにより、排気筒8の内部を通過する清浄空気の速度を速くすることができるため、排気口30から排気筒8内への雨水の浸入を防止することができる。また、排気筒8の内部を通過する清浄空気の速度を速くすることにより、臭気落下距離を非常に長くすることができるため、排気口30から放出された排気中の一定濃度以下の臭気を大気中において十分に拡散することができる。
【0053】
一方、ブロアー3の運転を停止して排気筒8内に気流の動きがない状態において降雨があった場合には、テーパ部29によって排気筒8の内部に雨水が浸入し難くはなるが、雨水が排気筒8内に振り込むことはある。この場合、排気筒8内に垂直に振り込んだ雨水は、防雨部材18の鍔部31に落下した後、鍔部31の傾斜に沿って流下し、開口部32から排水設備33の雨水受け部34に落下するか、或いは、鍔部31に落下することなく、直接、排水設備33の雨水受け部34に落下し、排水管36を通って外部に排出される。
【0054】
また、排気筒8内に斜めに降り込んだ雨水は、図6に示すように、排気筒8の内面に接触後、該内面に沿って鍔部31に流下するか、或いは、排気筒8の長さを十分に長く形成したことにより、放物線を描いた後、垂直に落下し、排気筒8の内面に接触することなく直接、鍔部31に落下した後、鍔部31の傾斜に沿って流下し、開口部32から排水設備33の雨水受け部34に落下するか、或いは、鍔部31に落下することなく、直接、排水設備33の雨水受け部34に落下する。そして、雨水受け部34に落下した雨水は排水管36を通って外部に排出される。
【0055】
このように雨水が排気筒8内に浸入した場合でも、雨水が脱臭剤層17の脱臭剤16(活性炭)に接触することがない。また、排気筒から浸入した雨水は、すり鉢形状の雨水受け部によって速やかに中央部に集められた後、排水管36を経由して、脱臭装置4外に排出されるため、脱臭剤(活性炭)16に吸収されることもない。したがって、排気筒8内に浸入した雨水によって脱臭剤(活性炭)16の性能が損なわれることはない。
【0056】
また、この時、鍔部31の傾斜角度αを略60度に設定することにより、防雨部材18に落下又は流下した雨水は、鍔部31の上面に滞留することなく、速やかに排水設備33の雨水受け部34に落下する。したがって、雨水が滞留することによって脱臭装置4内の湿気が上昇して脱臭剤16の性能が低下することを防ぐことができる。
【0057】
また、防雨部材18の圧力損失は、出来る限り小さくすることが望ましく、具体的には、ブロアー3の静圧に対して1%程度の圧力損失に抑えることが望ましい。そのため、防雨部材18の鍔部31の傾斜角度αを略60度とし、鍔部31によって狭められた開口部32の直径Φdを、内筒15の内径ΦDに対して、略80%に設定することにより、具体的には、ブロアー3の静圧が約5KPaである場合に、防雨部材18での圧力損失を、ブロアー3の静圧の1%程度の50Pa程度に抑えることができる。このように、防雨部材18における圧力損失を極力抑えることで、排気側の圧力の上昇を抑え、ブロアー3に負荷をかけることなく、且つ、排気の気流に影響を与えることが少なくなるため、排気からの騒音を増大させることがない。また、臭気落下距離にも影響を与えないため、臭気の拡散を十分に行うことができる。
【0058】
さらに、脱臭剤16として使用する活性炭の大きさは、メッシュ部材26の網目の大きさよりも大きい粒子を使用しているが、それら活性炭の微粉は、メッシュ部材26の網目よりも小さいため、メッシュ部材26の網目から活性炭の微粉が洩れてしまうことがある。しかしながら、排気筒8の下部に防雨部材18が設けられているため、図7に示すように、洩れた活性炭の微粉が混在された排気が鍔部31の下面側(脱臭剤層17側)に接触することで活性炭の微粉が付着し凝集する。そして、このように鍔部31の下面側に付着し凝集した活性炭の微粉は、脱臭装置4の運転停止時に、自重で雨水受け部34に落下して雨水と一緒に外部に排出されるか、若しくは、活性炭交換時などのメンテナンスの際に除去されるため、排気筒8を通って活性炭の微粉が外部に飛散するのを抑制することができる。
【0059】
なお、防雨部材18の鍔部31は、図10に示すように、側面断面視において内側に湾曲したラッパ形状を成していても良く、この場合には、脱臭剤層17と鍔部31との間のスペースを大きく確保することができるため、このスペースにより多くの活性炭の微粉を付着及び捕集させることができるようになる。したがって、排気筒8を通って外部に飛散する活性炭の微粉の量をさらに減少させることができる。
【0060】
また、防雨部材18の鍔部31の下面(脱臭剤層17側の面)には、面粗し処理が施されていても良い。この場合の面粗し処理としては、梨地処理やシボ加工といった方法が知られており、具体的には、エアーブラスト、サンドブラスト、ショットブラスト等を使用して、噴射材を投射することにより表面に凹凸をつけることができる。また、表面にぎざぎざの凹凸を形成するローレット加工も有効な手段の一つである。なお、鍔部31を塗装する場合には、シボ塗装などの面粗し塗装を使用すれば良い。このように面粗し処理を施すことによって、鍔部31の下面に無数のざらざらした凹凸部が形成されるため、脱臭剤層17から洩れた活性炭の微粉を付着及び捕集し易くやすくさせることができ、排気筒8からの活性炭の微粉の飛散量をさらに減少させることができる。
【0061】
さらに、防雨部材18の変形例としては、図8及び図9に示すように、周方向に沿って鍔部31の高さ寸法が次第に大きくなるように形成し、該高さ寸法が大きい程、鍔部31の水平方向に対する傾斜角度が大きくなるように形成してもよい。このように構成することにより、排気筒8から浸入して鍔部31に落下した雨水の多くは、鍔部31の傾斜に沿って周方向に移動した後、傾斜角度の一番大きい箇所から、開口部32を通って雨水受け部34に落下する。この場合、雨水の多くを鍔部31の1箇所から集中的に落下させることができるため、図8に示すように、雨水の落下位置に合せて雨水受け部34に排水口35を配置することができ、雨水の排出を効率よく行なうことができる。
【0062】
なお、上記した本発明の実施の形態では、鋳物から発生する含塵空気を脱臭するシステムに本発明を適用した場合について説明したが、これは、単なる例示に過ぎず、本発明は、臭気成分と塵埃(粉塵)を含んだ空気一般を集塵濾過脱臭するシステム全般に適用可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る脱臭装置の技術は、鋳物を製造する鋳造ラインや、臭気を発する工場などで利用されることが見込まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
4 脱臭装置
8 排気筒
10 外筒
13 中筒
15 内筒
16 脱臭剤
17 脱臭剤層
18 防雨部材
28 空洞部
29 テーパ部
31 鍔部
32 開口部
33 排水設備
34 雨水受け部
35 排水口
36 排水管




【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、
該外筒の内部に設けられる通気性を有する中筒と、
該中筒の内部に設けられる通気性を有する内筒と、
前記中筒と前記内筒との間の空間に脱臭剤が充填されて形成される脱臭剤層と、
前記内筒の内部の空洞部に連通するように該内筒の上方に設けられる排気筒と、
該排気筒と前記内筒の間に設けられる防雨部材と、
を備え、該防雨部材は、外側から内側に向かって下傾して形成される鍔部と、該鍔部の内側に形成される開口部と、を備え、前記排気筒の内部に浸入した雨が前記鍔部の傾斜に沿って内側に流れ、前記脱臭剤層に接触することなく、前記開口部から落下するように構成されていることを特徴とする脱臭装置。
【請求項2】
前記防雨部材は、無底すり鉢形状を成し、前記鍔部の水平方向に対する傾斜角度が略60度で且つ前記開口部の直径が前記内筒の内径の略80%であることを特徴とする請求項1に記載の脱臭装置。
【請求項3】
前記防雨部材は、周方向に沿って前記鍔部の高さ寸法が次第に大きくなるように形成されており、該高さ寸法が大きい程、前記鍔部の水平方向に対する傾斜角度が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の脱臭装置。
【請求項4】
前記鍔部の下面には面粗し処理が施されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載の脱臭装置。
【請求項5】
前記排気筒の上端部には先細り形状のテーパ部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1の請求項に記載の脱臭装置。
【請求項6】
前記防雨部材の開口部の下方には、該開口部から落下した雨水を受けて外部に排出する排水設備が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1の請求項に記載の脱臭装置。
【請求項7】
前記排水設備は、中央部に排水口が形成されていると共に該排水口に向かって水勾配を有する雨水受け部と、前記排水口に接続されて外部に向かって水勾配を有する排水管と、を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1の請求項に記載の脱臭装置。
【請求項8】
前記脱臭剤は活性炭であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1の請求項に記載の脱臭装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−43165(P2013−43165A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185118(P2011−185118)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000101617)アマノ株式会社 (174)
【Fターム(参考)】