説明

脱血用カニューレ

【課題】体外循環時に上行大静脈及び下行大静脈から脱血する場合に、右心房の血液を吸入してしまうのを抑制し、体外循環の効率を高める。
【解決手段】脱血用カニューレ1は、上行大静脈及び下行大静脈の一方側から他方側に亘って挿入される管部10を有している。管部10には、上行大静脈及び下行大静脈内にそれぞれ開口する脱血孔10c,10dが形成されている。管部10の脱血孔10cよりも基端側には、上行大静脈の右心房側を閉塞するための閉塞部11が設けられている。管部10の閉塞部11よりも基端側には、下行大静脈の右心房側を閉塞するための閉塞部12が設けられている。閉塞部11,12により上行大静脈及び下行大静脈を閉塞した状態で、脱血孔10c,10dにより上行大静脈及び下行大静脈の血液を脱血する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の血液を体外循環させる際に使用される脱血用カニューレに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、患者の血液を体外循環させる際には、血液を体内から抜くための脱血用カニューレと、血液を体内へ送る(以下、返血ともいう)ための送血用カニューレとが用いられる。脱血用カニューレの挿入方向先端側には脱血孔が形成される一方、基端側は、体外循環装置に接続されるようになっている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−700号公報
【特許文献2】特開2003−38650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、肺の機能不全による症例として、人工呼吸器等による治療を行っても機能回復せず、また、人工呼吸器を使用できない難治性の低酸素血症例がある。このような症例で、心不全がなく自己心拍を確保できる場合には、肺の補助を目的として体外式肺補助ECLA(extracorporeal lung assist)を行うことが考えられる。体外式肺補助は、人工肺装置、脱血用カニューレ及び送血用カニューレ等を用いて行われ、静脈から脱血して動脈へ返血する、いわゆるV−Aバイパス法と、静脈から脱血して静脈へ返血する、いわゆるV−Vバイパス法とがある。
【0005】
V−Aバイパス法では、大腿動脈や右腋窩動脈に返血を行うのが一般的であるが、これら動脈に酸素を多く含んだ血液を送っても、心臓の冠動脈からは離れているので、心臓への酸素供給量が十分でなくなる虞れがあり、また、脳への酸素供給量も不足する懸念がある。これに対し、V−Vバイパス法では、酸素を多く含んだ血液を静脈から右心房へ流して肺から左心室へ戻し、左心室から自己心拍により通常の血液の流れと同様に全身へ送り出すことができるので、冠動脈や脳へも酸素を多く含んだ血液を流すことができ、酸素供給量を十分に確保できる点で有利な方法である。
【0006】
しかしながら、V−Vバイパス法では脱血用カニューレと送血用カニューレの両方を静脈に挿入することになるので、両カニューレが近づくことになる。このため、送血用カニューレから送血されたばかりの酸素を多く含んだ血液が脱血用カニューレに吸入されしまい、ひいては、酸素を多く含んだ血液の供給量を十分に確保できなくなることが考えられる。
【0007】
そこで、上行大静脈及び下行大静脈の中枢側(右心房側)からそれぞれ脱血し、右心房に送血する方法が考えられる。上行大静脈及び下行大静脈の中枢側には、全身を循環して右心房へ戻る前の低酸素状態の血液が流れているので、この方法を用いることで、低酸素状態の血液を効率よく脱血できる。そして、脱血した血液に人工肺装置で酸素を含ませて右心房に直接返血でき、酸素を多く含んだ血液の供給量を増加させることが可能になる。
【0008】
ところが、上行大静脈及び下行大静脈の中枢側は右心房に近いため、上行大静脈及び下行大静脈の中枢側からそれぞれ脱血して右心房に返血する方法とした場合にも、脱血用カニューレと送血用カニューレとが近づいてしまうのは避けられない。従って、この方法によっても、送血用カニューレから右心房へ返血されたばかりの血液が脱血用カニューレに吸入されてしまうことが考えられ、このことによって肺補助の効率が低下する懸念がある。
【0009】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上行大静脈及び下行大静脈の中枢側からそれぞれ脱血する場合に、右心房の血液を吸入してしまうのを抑制し、体外循環の効率を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、上行大静脈の右心房側及び下行大静脈の右心房側をそれぞれ閉塞して右心房と区画できるようにし、脱血孔を上行大静脈及び下行大静脈内にそれぞれ開口させた。
【0011】
具体的には、第1の発明では、血液の体外循環時に上行大静脈及び下行大静脈から脱血を行うための脱血用カニューレであって、上行大静脈及び下行大静脈の一方側から他方側に亘って挿入され、上行大静脈及び下行大静脈内にそれぞれ開口する第1及び第2脱血孔を有する管部と、上記管部の第1脱血孔よりも第2脱血孔寄りの部位に設けられ、上行大静脈の右心房側を閉塞するための第1閉塞部と、上記管部の第2脱血孔と第1閉塞部との間に設けられ、下行大静脈の右心房側を閉塞するための第2閉塞部とを備えている構成とする。
【0012】
この構成によれば、管部を上行大静脈及び下行大静脈に挿入すると、第1及び第2脱血孔が上行大静脈内及び下行大静脈内にそれぞれ位置する。そして、第1閉塞部により上行大静脈の右心房側が閉塞され、第2閉塞部により下行大静脈の右心房側が閉塞される。これにより、右心房は上行大静脈及び下行大静脈と区画された状態となる。従って、第1脱血孔からは上行大静脈内の血液が吸入され、第2脱血孔からは下行大静脈内の血液が吸入され、右心房内の血液が第1及び第2脱血孔から吸入され難くなる。
【0013】
第2の発明では、第1の発明において、第1及び第2閉塞部は、流体の供給により膨張する膨張部材で構成され、上記膨張部材には、流体供給器が接続されている構成とする。
【0014】
この構成によれば、第1及び第2閉塞部から流体を抜いて両閉塞部を収縮させておくことで、管部を上行大静脈及び下行大静脈へ挿入し易くなる。そして、挿入後に流体供給器により第1及び第2閉塞部に流体を供給して該閉塞部を膨張させることで上行大静脈及び下行大静脈が確実に閉塞される。
【0015】
第3の発明では、第2の発明において、第1閉塞部と流体供給器とを接続する第1接続管と、第2閉塞部と流体供給器とを接続する第2接続管とを備え、上記第1及び第2接続管に別々に流体が供給される構成とする。
【0016】
この構成によれば、例えば、第2閉塞部を膨張させて下行大静脈を閉塞した後、第1閉塞部を膨張させて上行大静脈を閉塞することや、その逆の順序で両大静脈を閉塞することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、第1及び第2閉塞部により上行大静脈の右心房側及び下行大静脈の右心房側をそれぞれ閉塞した状態で、管部の第1及び第2脱血孔を上行大静脈及び下行大静脈内にそれぞれ位置付けることができる。これにより、右心房内の血液が第1及び第2脱血孔から吸入されてしまうのを抑制しながら、各大静脈内の血液を確実に脱血できるので、体外循環の効率を高めることができる。
【0018】
第2の発明によれば、第1及び第2閉塞部を、流体の供給により膨張する膨張部材で構成したので、上行大静脈及び下行大静脈への挿入処置を容易にしながら、両大静脈を確実に閉塞することができる。
【0019】
第3の発明によれば、上行大静脈と下行大静脈とを閉塞するタイミングを患者の状態や手技に応じて変えて適切なタイミングで閉塞することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る脱血用カニューレの側面図である。
【図2】体外式肺補助を説明する図である。
【図3】送血用カニューレ及び脱血用カニューレを挿入した状態を示す心臓及び血管系の断面図である。
【図4】SVC用閉塞部及びIVC用閉塞部を膨張させた状態の図1相当図である。
【図5】図4におけるV−V線断面図である。
【図6】IVC用閉塞部を膨張させた状態の図3相当図である。
【図7】IVC用閉塞部により下行大静脈を閉塞した状態の図3相当図である。
【図8】SVC用閉塞部により上行大静脈を閉塞した状態の図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る脱血用カニューレ1を示すものである。この脱血用カニューレ1は、体外式肺補助を行う場合に、図2に示すように、人工肺装置100と、送血用カニューレ101と、血液ポンプ102と共に体外式肺補助装置103を構成するものである。この体外式肺補助装置103は、上行大静脈SVC及び下行大静脈IVCから脱血して右心房RAへ返血する、SVC・IVC脱血RA送血法を行うことができるように構成されている。
【0023】
この実施形態の説明では、脱血用カニューレ1の構造を説明する前に、図3に基づいて心臓Hの解剖について説明する。左心房LAには、肺静脈PVeが繋がっている。左心房LAと左心室LVとの間には、僧帽弁MVがある。僧帽弁MVの前側には大動脈弁AVがあり、左心室LVは大動脈弁AVを介して上行大動脈AAoと繋がっている。一方、右心房RAには、上行大静脈SVC及び下行大静脈IVCとが繋がっており、右心房RAと右心室RVとの間には、三尖弁TVがある。大動脈弁AVの前方には、肺動脈弁PVaがあり、右心室RVは肺動脈弁PVaを介して肺動脈PAに繋がっている。
【0024】
次に、脱血用カニューレ1の構造について説明する。脱血用カニューレ1は、血液が流れる管部10と、上行大静脈SVCを閉塞するためのSVC用閉塞部11と、下行大静脈IVCを閉塞するためのIVC用閉塞部12と、SVC用閉塞部11及びIVC用閉塞部12に空気を供給するための第1及び第2空気ポンプ13,14と、SVC用閉塞部11及び第1空気ポンプ13を接続する第1接続管15と、IVC用閉塞部12及び第2空気ポンプ14を接続する第2接続管16とを備えている。
【0025】
管部10は、柔軟性を有する樹脂材で構成されており、太さは、18Fr(フレンチ)以上21Fr以下に設定され、体内へ挿入される挿入部10aの長さは450mm以上550mm以下に設定されている。管部10の太さを18Frよりも細くすると血流量が十分に確保されなくなり、また、24Frよりも太くすると静脈への挿入処置が難しくなるので、血流量及び挿入処置のし易さを考慮して上記範囲に設定されている。
【0026】
尚、上記数値は、成人の体外循環に用いる場合のものであり、例えば、小児等に用いる場合には、上記よりも小径で、短くなるような数値にすればよく、上記数値に限られるものではない。
【0027】
管部10の挿入部10aの基端側にはコネクタ10bが設けられている。このコネクタ10bには、図2に示すように、人工肺装置100から延びるチューブ100aが接続されるようになっている。
【0028】
図1に示すように、管部10には、上行大静脈SVC内の血液を脱血するための4つのSVC用脱血孔(第1脱血孔)10c,10c,…と、下行大静脈IVC内の血液を脱血するための8つのIVC用脱血孔(第2脱血孔)10b,10b,…とが設けられている。SVC用脱血孔10c,10c,…とIVC用脱血孔10b,10b,…とは、上行大静脈SVCと下行大静脈IVCとの離間距離に対応して管部10の長手方向に離れている。具体的には、SVC用脱血孔10c,10c,…は、互いに管部10の長手方向に離れ、かつ、周方向に離れており、最も先端に位置するSVC用脱血孔10cは、管部10の先端から基端側に20mm程度離れている。IVC用脱血孔10d,10d,…も同様に互いに管部10の長手方向に離れ、かつ、周方向に離れており、最も先端に位置するIVC用脱血孔10dは、管部10の先端から300mm〜400mm程度離れている。
【0029】
尚、SVC用脱血孔10c及びIVC用脱血孔10dの数や位置は、上記に限られるものではなく、自由に設定することができる。
【0030】
図4にも示すように、SVC用閉塞部11は、空気の供給により膨張する膨張部材で構成されたバルーン状のものであり、周知の柔軟な樹脂材からなる。SVC用閉塞部11は、管部10のSVC用脱血孔10cよりも基端側に位置付けられ、管部10の全周に亘って連続している。SVC用閉塞部11から空気を抜くと、図1に示すように、管部10の外周面に段差が殆ど無くなるまで収縮する。一方、空気を供給すると、図4に示すように、管部10の外周面から全周に亘って径方向へ突出するように膨張する。SVC用閉塞部11の膨張時の外径は空気の供給量により任意に調整でき、少なくとも上行大静脈SVCの内壁に全周に亘って密着する程度まで膨張するようになっている。
【0031】
IVC用閉塞部12もSVC用閉塞部11と同じ部材で同様に構成されており、管部10のSVC用閉塞部11とIVC用脱血孔10dとの間で、IVC用脱血孔10d寄りの部位に位置付けられている。尚、SVC用閉塞部11とIVC用閉塞部12の形状を異ならせてもよい。
【0032】
第1空気ポンプ13は、術者が操作することによって空気を吐出するように構成され、その吐出方向と逆側には空気が流れないようにする逆止弁(図示せず)を備えた周知の構造のものである。逆止弁を操作することにより、SVC用閉塞部11内の空気を排出できるようになっている。
【0033】
第1接続管15の一端部は、第1空気ポンプ13の吐出口に接続され、他端部はSVC用閉塞部11の内部に連通している。第1接続管15の第1空気ポンプ13側は、挿入部10aの外部においてコネクタ10b側へ向けて延びている。従って第1空気ポンプ13は、コネクタ10b近傍に位置するようになる。また、第1接続管15のSVC用閉塞部11側は、コネクタ10bと挿入部10aとの間から挿入部10aの内部に導入されて先端側へ向けてSVC用閉塞部11に対応する部位まで延びている(図5参照)。
【0034】
第2空気ポンプ14は、第1空気ポンプ13と同じものである。第2接続管16の一端部が第2空気ポンプ14の吐出口に接続され、他端部がIVC用閉塞部12に接続されている。第1接続管15と第2接続管16とは、管部10の周方向に離れている。
【0035】
第1空気ポンプ13と第2空気ポンプ14とには、混同を防止するため、目印が付されている。尚、第1空気ポンプ13と第2空気ポンプ14との色を変えることや、形状を変えることによっても混同を防止できる。
【0036】
次に、上記のように構成された脱血用カニューレ1を用いて体外式肺補助を行う場合について説明する。
【0037】
まず、脱血用カニューレ1のコネクタ10bを人工肺装置100から延びるチューブ100aの端部に接続するとともに、SVC用閉塞部11及びIVC用閉塞部12から空気が抜いてあるか確認する。
【0038】
次いで、図2や図3に示すように、送血用カニューレ101を右内頸静脈から上行大静脈SVCへ挿入していき、右心房RAへ到達させる。
【0039】
その後、脱血用カニューレ1を右大腿静脈から下行大静脈IVC及び上行大静脈SVCへ挿入していき、IVC用閉塞部12が右心房RAに達した時点で挿入を止める。このとき、SVC用閉塞部11及びIVC用閉塞部12が収縮しているので、邪魔になりにくく、挿入処置が容易に行える。
【0040】
そして、図6に示すように、第2空気ポンプ14を操作してIVC用閉塞部12へ空気を供給し、IVC用閉塞部12を膨張させる。IVC用閉塞部12の外径が下行大静脈IVCの中枢端の内径よりも大きくなったら空気の供給を停止する。この空気の供給停止のタイミングは、挿入前に空気の供給量とIVC用閉塞部12の外径との関係を把握しておくことで容易に設定できる。
【0041】
IVC用閉塞部12を右心房RA内で膨張させた後、脱血用カニューレ1を抜き方向に引いていく。すると、図7に示すように、IVC用閉塞部12が下行大静脈IVCの中枢端に嵌り、これにより、下行大静脈IVCが右心房RA側から閉塞される。このように、IVC用閉塞部12を右心房RA内で膨張させるようにしたことで、IVC用閉塞部12が下行大静脈IVCの末梢側へ向けて深いところまで入り込み難くなる。これにより、下行大静脈IVCの中枢端よりも末梢側から分岐して延びる肝静脈Aの開口がIVC用閉塞部12によって閉塞されてしまうのを防止できる。
【0042】
その後、図8に示すように、第2空気ポンプ14を操作してSVC用閉塞部11をIVC用閉塞部12と同様に膨張させ、SVC用閉塞部11を上行大静脈SVCの内壁に密着させる。これにより、上行大静脈SVCが右心房RA側から閉塞される。このように、SVC用閉塞部11とIVC用閉塞部12とを別々に膨張させることができるので、SVC用閉塞部11及びIVC用閉塞部12を、上行大静脈SVC及び下行大静脈IVCを確実に閉塞できるまで膨張させることができる。
【0043】
上記のようにして右心房RAが上行大静脈SVC及び下行大静脈IVCと区画された状態となる。従って、SVC用脱血孔10cからは上行大静脈SVC内の血液が吸入され、IVC用脱血孔10dからは下行大静脈IVC内の血液が吸入され、右心房RA内の血液がSVC用脱血孔10c及びIVC用脱血孔10dから吸入され難くなるので、送血用カニューレ101から右心房RAへ返血された血液が脱血されなくなる。
【0044】
以上説明したように、この実施形態に係る脱血用カニューレ1を用いることで、送血用カニューレ101から返血された右心房RA内の血液が脱血孔10c,10dに吸入されてしまうのを抑制しながら、上行大静脈SVC及び下行大静脈IVC内の血液を確実に脱血できるので、体外循環の効率を高めることができる。
【0045】
また、SVC閉塞部11及びIVC閉塞部12を膨張部材で構成したので、上行大静脈SVC及び下行大静脈IVCへの挿入処置を容易にしながら、両大静脈SVC,IVCを確実に閉塞することができる。
【0046】
また、SVC用閉塞部11とIVC用閉塞部12とを別々に膨張させるようにしたので、上行大静脈SVCと下行大静脈IVCとを閉塞するタイミングを患者の状態や手技に応じて変えて適切なタイミングで閉塞することができる。
【0047】
尚、上記実施形態では、第1及び第2空気ポンプ13,14を用いてSVC用閉塞部11及びIVC用閉塞部12を手動で膨張させるようにしたが、これに限らず、例えば、電動式の空気ポンプ等を用いて自動で膨張及び収縮させるようにしてもよい。
【0048】
また、SVC用閉塞部11及びIVC用閉塞部12には、空気以外にも例えば生理的食塩水を供給するようにしてもよい。
【0049】
また、上記脱血用カニューレ1は、上行大静脈SVCから下行大静脈IVCへ向けて挿入するようにしてもよい。
【0050】
また、上記脱血用カニューレ1は、人工心肺装置に接続して使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように、本発明に係る脱血用カニューレは、例えば、体外式肺補助を行う際に用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 脱血用カニューレ
10 管部
10c SVC用脱血孔(第1脱血孔)
10d IVC用脱血孔(第2脱血孔)
11 SVC用閉塞部(第1閉塞部)
12 IVC用閉塞部(第2閉塞部)
13 第1空気ポンプ(流体供給器)
14 第2空気ポンプ(流体供給器)
15 第1接続管
16 第2接続管
100 人工肺装置
101 送血用カニューレ
RA 右心房
SVC 上行大静脈
IVC 下行大静脈

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液の体外循環時に上行大静脈及び下行大静脈から脱血を行うための脱血用カニューレであって、
上行大静脈及び下行大静脈の一方側から他方側に亘って挿入され、上行大静脈及び下行大静脈内にそれぞれ開口する第1及び第2脱血孔を有する管部と、
上記管部の第1脱血孔よりも第2脱血孔寄りの部位に設けられ、上行大静脈の右心房側を閉塞するための第1閉塞部と、
上記管部の第2脱血孔と第1閉塞部との間に設けられ、下行大静脈の右心房側を閉塞するための第2閉塞部とを備えていることを特徴とする脱血用カニューレ。
【請求項2】
請求項1に記載の脱血用カニューレにおいて、
第1及び第2閉塞部は、流体の供給により膨張する膨張部材で構成され、
上記膨張部材には、流体供給器が接続されていることを特徴とする脱血用カニューレ。
【請求項3】
請求項2に記載の脱血用カニューレにおいて、
第1閉塞部と流体供給器とを接続する第1接続管と、
第2閉塞部と流体供給器とを接続する第2接続管とを備え、
上記第1及び第2接続管に別々に流体が供給されることを特徴とする脱血用カニューレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−83421(P2011−83421A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238360(P2009−238360)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】