説明

脳腫瘍の治療のための移植可能な神経前駆および幹細胞

【課題】異なる型の神経細胞中に分化する能力を有し、それにより細胞がニューロン細胞が投与される第一の位置から腫瘍細胞が存在する位置までの移動能力を有し、複数のニューロン細胞が腫瘍を囲むように周囲を移動する能力を有すること;そして浸潤性腫瘍細胞の跡をたどって浸潤性および転移性腫瘍を治療する能力を有するヒト神経幹細胞もしくはヒト神経幹細胞子孫のクローンの提供。
【解決手段】生きている宿主被験者へ要求に応じてインビボ(in vivo)で移植するのに適する個々の明確な細胞系としてインビトロ(in vitro)で安定に維持される遺伝子的に改変されたヒト神経幹細胞もしくはヒト神経幹細胞子孫のクローンまたはインビトロ(in vitro)で安定な細胞系として維持され、生きている宿主被験者へ要求に応じてインビボ(in vivo)で移植するのに適する遺伝子的に改変されたヒト神経幹細胞の生きている子孫細胞。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遺伝子治療の分野、より具体的には脳腫瘍を治療するためのニューロン細胞の使用の分野にある。
【背景技術】
【0002】
脳腫瘍の治療のための有効な遺伝子治療は長年の間つかみどころのない最終目標であった。事実上治療不可能である多形膠芽腫およびより小さく悪性の未分化星状細胞腫は米国で年間に診断される5,000の頭蓋内神経膠腫の約1/4の原因であり;成人での神経膠腫の75パーセントはこの範疇のものである。その深刻かつ均一の罹患率のため、それはいずれかの他の腫瘍がするよりひとり当たりに基づく癌の費用により大きく寄与する。普遍的には人生の第五の10年に襲われる患者は、放射線および化学療法の比較的無効な治療に伴う進行性合併症を経験する一方で反復性の入院および手術の周期に入る(“Harrison’s Principles of Internal Medicine,”アイゼルバッハー(Isselbacher)、ブラウンヴァルト(Braunwald)、ウィルソン(Willson)、マーティン(Martin)、ファウチ(Fauci)とカスパー(Kasper)により編、第13版、p.2262、マグロー・ヒル インク(McGraw−Hill,Inc.)1994)。
【0003】
神経膠腫のような脳腫瘍の遺伝子治療に対する妨害の一は、それらが拡張する、広範に移動する、そして正常細胞に浸潤する度合にあった。今日までの大部分の遺伝子治療戦略はウイルスベクターを基礎とするが、それにもかかわらず典型的に必要な細胞の大きな領域および数に十分な量へのウイルスベクター媒介性の遺伝子の広範囲の分布はしばしばがっかりさせることに制限されている。興味深いことに、正常の神経前駆および幹細胞の検定の特徴の一はそれらの移動性の質にある。神経幹細胞(NSC)は発生中のそして成人においてさえもCNSに存在する未熟な未前駆(uncommitted)細胞であり、そして整然と並んだCNSのより特化された(specialized)細胞を生じさせるものと仮定される。それらは、複数の解剖学的および発生の情況において自己新生する(self-renew)ならびに大部分の(全部でない場合)ニューロンおよび膠の系統の細胞に分化する、ならびに発達するおよび/もしくは退化するCNS領域を占める(populate)それらの能力により機能的に定義される1-5
【0004】
培養物中で再生産される幹細胞の特性をもつ神経細胞が哺乳動物の脳中に再移植され得、そこでそれらは神経の構造に適切にかつ一様に再統合しそして外来遺伝子を安定に発現し得るという最初の認識をもって6-7、遺伝子治療者はこうした現象が治療の目的上どのように利用されうるかを推測することを開始した。これら、およびそれらが植え付けられた研究(別の場所で1-5,8総説される)は、神経前駆/幹細胞の使用はそれらの固有の生物学のおかげで現在利用可能な遺伝子導入ベヒクル(例えば非神経細胞、ウイルスベクター、合成ポンプ)の現在の制限のいくつかを回避することができ、かつ、多様な新規治療戦略に基礎を提供しうるという希望を提供した。
【0005】
移植片材料としてのそれらの使用は原型の神経前駆クローンC17.2(われわれが広範囲の経験を有し6,9-16,17かつここで提示される研究で使用されたクローン)によりはっきりとかつ具体的に説明されてきた。C17.2はトリのmyc遺伝子を含有するレトロウイルス構築物での感染により不死化された生後第0日の小脳からのマウス細胞系である。この系統はlacZおよびneoR遺伝子を構成的に発現するように導入された。脳全体の胚領域に移植される場合、これらの細胞はマウスの中枢神経軸に沿って複数の段階で(胎児から成体)移動し、分割を停止し、そして複数の領域の正常な発生に参画して正
常な非腫瘍原性細胞構築学的構成要素として多様なニューロンおよびグリア細胞型に適切に分化することが示されている。それらは内在性の神経前駆/幹細胞と非破壊的に混ざって類似の様式で同一の空間的かつ一時的刺激に応答する。治療上考慮すべき事柄として重要な、C17.2細胞が寄与する構造が発生しそして神経解剖学的正常度を維持する。それらの最も初期の治療上の使用において、それらはリソゾーム欠損状態を伴うマウスの脳全体に欠けている遺伝子産物を送達させるのに役立ち、そしてリソゾーム酵素の放出および取り込みにより宿主細胞を交差修正した(cross-corrected)9。CNSに対しそしてそれ全体に直接に治療分子を送達するための神経前駆/幹細胞を基礎とした戦略の実行可能性は、最初に、ヒトで精神遅滞および早期死亡を引き起こす状態であるβ−グルクロニダーゼ(GUSB)遺伝子の遺伝的欠失により引き起こされる遺伝的神経変性性リソゾーム貯蔵疾患ムコ多糖症タイプVIIのマウスモデルの広まった神経病理学を修正することにより確認された。宿主のCNS全体に拡散的に移植そして構造の不可欠な構成員となるそれらの能力を活用して、GUSB分泌性のNSCが出生時に脳室下の胚領域に導入され、そして突然変異体の脳全体でニューロンおよびグリア中のリソソームの貯蔵の修正を提供した。そうすることにおいて、それは、神経前駆細胞の神経移植が新規治療様式を提供し得たことを確立した。
【0006】
必要とされるものは拡散性、浸潤性および/もしくは転移性である腫瘍を治療する一つの方法である。必要とされるものは腫瘍に対する影響を最大にし、そして患者に対する毒性を低下させるように局所的に腫瘍を治療する一つの方法である。
【発明の概要】
【0007】
少なくとも異なる型の神経細胞中に分化する能力を有する単離された多分化能ニューロン細胞が開示される。この多分化能細胞はそれにより細胞がニューロン細胞が投与される第一の位置から最低1個の腫瘍細胞が存在する第二の位置まで移動することが可能である移動能力を有すること、それにより複数のニューロン細胞が腫瘍を囲むことができるような腫瘍を通ってかつその周囲を移動する能力を有すること;そして最低1個の浸潤性腫瘍細胞の跡をたどりそれにより浸潤性および転移性腫瘍を治療する能力を有することをさらに特徴とする。
【0008】
当該ニューロン細胞は単離された神経幹細胞でありうる。当該ニューロン細胞は場合によっては細胞傷害性物質を分泌するよう処理される。当該ニューロン細胞は、あるいは腫瘍性細胞の分化を直接促進する因子で形質転換される。あるいは、当該ニューロン細胞は腫瘍細胞により組み込まれるべき治療遺伝子をコードするウイルスベクターで形質転換される。別の態様において、当該ニューロン細胞は腫瘍細胞中に組み込まれるべき自殺遺伝子、分化性剤もしくはトロフィンに対するレセプターをコードするウイルスベクターで形質転換され得る。当該ニューロン細胞は腫瘍から脳の同一の側もしくは反対側に投与される場合に腫瘍に達することが可能である。
【0009】
別の態様において、移動性のニューロン細胞の移動性のパッケージング/プロデューサー細胞への転化方法が提供され、前記方法は、a)β−galのようなマーカーを構成的に産生するニューロン細胞を提供すること;b)両栄養性p(または両種性)PAM3パッケージングプラスミドおよびpPGKpuro中のピューロマイシン選択プラスミドでニューロン細胞をコトランスフェクションすること;c)トランスフェクションされた細胞をピューロマイシン中で選択すること;d)両栄養性エンベロープ糖タンパク質コートの細胞表面の発現について選択すること;e)モノクローナル抗体83A25を使用して蛍光活性化細胞選別により細胞を単離すること;およびf)どのコロニーが感染性ウイルス粒子中にlacZをパッケージングしたかを評価することによりそれらのパッケージング能力について段階e)の細胞をスクリーニングすること、という段階を包含する。従って、選択の遺伝子でトランスフェクションされることが可能な移動性ニューロン細胞が産
生され、その結果選択の遺伝子を発現するウイルス粒子が産生され、そして複数のトランスフェクションされたパッケージング細胞により中枢神経系の広範な領域にわたって播種される。
【0010】
その中で段階f)がβ−gal産生についてのウイルスフォーカスアッセイにより実施される移動性ニューロン細胞のパッケージング細胞系への転化方法。あるいは、当該方法は選択の遺伝子としてプロドラッグ活性化酵素を用いて実施され得る。あるいは、このプロドラッグ活性化酵素は大腸菌(E.coli)シトシンデアミナーゼ(CD)、HSV−TKもしくはチトクロームp450である。より好ましくは、プロドラッグ活性化酵素は大腸菌(E.coli)シトシンデアミナーゼ(CD)である。
【0011】
中枢神経系のための新規細胞パッケージング系もまた開示される。当該細胞系はニューロン細胞を包含し、それは、βgalのようなマーカーを構成的に産生し、両栄養性pPAM3パッケージングプラスミドおよびピューロマイシン選択プラスミドpPGKpuroでコトランスフェクションされており;モノクローナル抗体83A25を使用して両栄養性のエンベロープ糖タンパク質コートの細胞表面の発現および蛍光について、ならびにどのコロニーが感染性ウイルス粒子中にlacZをパッケージングしたかを評価することによりそれらのパッケージング能力について、ピューロマイシン中で選択される。生じる細胞は粒子もしくはベクターをパッケージングおよび放出することが可能であり、それらは順に中枢神経系細胞への遺伝子導入のためのベクターとして役立ちうる。新規細胞パッケージング系中の粒子は複製欠損レトロウイルス粒子であり得る。新規細胞パッケージング系中のベクターは複製が条件的な(replication-conditional)ヘルペスウイルスベクターであり得る。
【0012】
(発明の詳細な記述)
本明細書で提示される実験は、NSC(原型クローンC17.2)が実験的神経膠腫に移植される場合にそれらのレポーター遺伝子lacZを発現することを継続する一方で腫瘍全体に分布しそして攻撃的に前進する腫瘍細胞と一緒に移動することができることを立証する。(使用された神経膠腫系の一すなわち星状細胞腫細胞系CNS−1はヒト膠芽腫のものに類似の単一細胞浸潤および侵襲性の特徴を立証する18)。さらに、神経前駆/幹細胞は侵襲性腫瘍の境界をわずかに越えて移動しかつそれを囲むように思われる。神経前駆体が同一半球、反対半球もしくは側脳室中に腫瘍床から離れた部位に移植された付加的実験において、それらは正常細胞を通って移動しとりわけCNS−1腫瘍細胞に向かって動いた。それらは腫瘍床中もしくはその付近ならびに個々の浸潤性腫瘍細胞付近もしくはそれと直接並んで蓄積することが見出された。
【0013】
いずれかの特定の理論により束縛されることを願わないが、発明者は、この神経前駆/幹細胞系が腫瘍細胞により産生された成長因子の栄養勾配に向かって移動することを提案する。従って、NSCは既に到達不可能であった腫瘍の近接もしくはその中への治療遺伝子の播種のための独特の基盤を提供しうる。これらの観察結果は多数の他の新たな遺伝子治療のアプローチをさらに示唆する。これらは細胞傷害性の遺伝子産物の播種を包含しうるが、しかし腫瘍性細胞の分化ならびに腫瘍細胞により取り込まれるべき治療遺伝子(例えば自殺遺伝子、分化性剤、トロフィンに対するレセプター)をコードするウイルスベクターのより効率的な送達を直接促進する因子もまた包含し得る。NSCは、順にCNS細胞への遺伝子の導入のためのベクターとして役立ちうる複製欠損レトロウイルス粒子もしくは複製が条件的なヘルペスウイルスベクターをパッケージングかつ放出するよう工作され得るため、神経前駆/幹細胞は脳中の大きな領域へのウイルス媒介性の遺伝子送達の効率を拡大するのに役立つはずである。
【0014】
実験的脳腫瘍に対する治療の一有効様式はプロドラッグの活性化であった。当初、プロ
ドラッグ活性化酵素は腫瘍濃縮抗原に対し向けられた抗体に制限された。新たな戦略はこれらの酵素のための遺伝子をウイルスベクター中に組み込む。神経膠腫に有効であることが示されたプロドラッグ活性化酵素のなかで、大腸菌(E.coli)シトシンデアミナーゼ(CD)、HSV−TKおよびチトクロームp450が薬物媒介性の傍観者(bystander)効果を有することが立証されている。これらのうちでCDが最良に報告された「傍観者」効果を与える。CDは非毒性のプロドラッグ5−フルオロシトシン(5−FC)を5−フルオロウリジン(5−FU)代謝物に転化する。5−FUは能動的に分割する細胞に対する選択的毒性を有する化学療法剤であり、従って主として腫瘍細胞に標的を定める。加えて、5−FUおよびその毒性の代謝物質は促進されない拡散により隣接のおよび周囲の細胞に容易に進み得る。脳腫瘍は、全身性の非毒性レベルの5−FCで治療される場合に有意の抗腫瘍効果を生じさせるために少数のCDを発現する細胞(約2%の均一に分布された)のみを必要としうる。われわれの結果は、導入されたNSCが腫瘍全体に効率的にCD発現を分散させることができ、かつ、単一の移動する「逃れる」腫瘍細胞の「跡をたどる」ことでさえできるという仮説を支持する。
【0015】
脳腫瘍の遺伝子治療に対する別のアプローチは薬物療法とともに腫瘍細胞への選択的遺伝子導入であり、例えばHSV−TK遺伝子はレトロウイルスを介して脳腫瘍細胞の分割する集団に導入される場合に薬物ガンシクロビルに対する致死的感受性を与える。感染および細胞特異的ターゲッティングの効率を増大させるためのレトロウイルス構築物の最近の改変はこの戦略の能力を高めることについて見込みを保持する。再度、「傍観者効果」により、腫瘍の破壊は細胞の一画分のみがHSV−TKを発現する場合でさえ有効であり;HSV−TKを発現しない隣接する腫瘍細胞もまた排除されるようである。腫瘍の破壊の効率を改善するための試みはHSV−TK遺伝子を発現する細胞の数を増加させることに集中した。パッケージング細胞(その後自己排除されうる)としてのNSCの使用は近隣の有糸分裂腫瘍細胞、とりわけ個々の浸潤性腫瘍細胞への致死的遺伝子の有効な拡大された送達系であることが判明しうる。
【0016】
結論として、遺伝子的に改変された神経前駆/幹細胞は成熟および発生する脳全体にある範囲の腫瘍選択性の作用物質を供給する能力を有する。ここで提示される実験は、(1)実験的神経膠腫に直接移植される場合に主腫瘍床全体に迅速かつ効果的に移動/分布する;(2)侵襲性腫瘍の境界を越えて移動しそしてそれを「取り囲む」(含有するかのように);(3)周囲組織への個々の浸潤性腫瘍細胞を表面上「跡をたどる」;(4)離れた部位から標的のCNS−1腫瘍まで正常組織を通って移動する;そして(5)腫瘍床全体でかつ腫瘍細胞に並んで外来遺伝子(この場合はlacZ)の安定な発現を示す、NSCの能力を立証する。これらの結果は将来の治療的脳腫瘍研究のための下地を作り、腫瘍に向けられたベクター媒介性の酵素/プロドラッグ遺伝子治療のための有効な送達ベヒクルとしての神経前駆/幹細胞の使用のための決定的な支持を提供する。
他の細胞 HCN−1細胞系は一側巨脳症成長を伴う患者の大脳皮質組織からの親細胞系由来である(ロネット(Ronnett G.V.)ら、Science 248:603−5、1990)。HCN−1A細胞はニューロン様の形態に分化しそして神経フィラメント、ニューロン特異的エノラーゼおよびp75NGFRについて(しかしミエリン塩基性タンパク質、S−100もしくはグリア筋原線維酸性タンパク質(GFAP)についてでない)陽性に染色するよう誘導された。これらの細胞はγ−アミノ酪酸およびグルタミン酸についてもまた陽性に染色するため、それらは神経伝達体となるようである。以前に、ポルトラク(Poltorak M.)ら(Cell Transplant (1):3−15、1992)はHCN−1細胞が脳実質中で生存したことを観察し、そしてこれらの細胞がヒトでの脳内移植に適しうることを提案した。
【0017】
ロネット(Ronnett GV)ら(Neuroscience 63(4):1081−99、1994)は、HCN−1細胞が神経成長因子ジブチリル環状AMPおよび
イソブチルメチルキサンチンに曝露された場合にニューロンに似る過程を成長したことを報告した。
【0018】
神経細胞は末梢神経細胞への曝露により活性化されているマクロファージとともにもまた投与され得る。こうした活性化されたマクロファージはCNSの外傷の部位、例えば切断された視神経を浄化することが示され、この後に新たな神経伸長が開始して損傷にわたって成長した。CNS組織(マクロファージを阻害する化学物質を分泌する)に曝露されたもしくは全く何にもされないマクロファージを移植することはほとんどもしくは全く再生をもたらさなかった(ラザロフ−シュピーグラー(Lazarov−Spiegler)ら、FASEB J. 10:1、1996)。
【0019】
ブタ胎児細胞がパーキンソン病およびハンチントン舞踏病ならびに難治性発作のような神経変性性疾患を伴う患者に移植され、こうした患者では興奮領域の外科的除去がそうでなければ実施されることができた。こうした細胞は、レトロウイルスについて適正にスクリーニングされる場合に発明の方法でもまた使用され得る。
【0020】
神経堤細胞が、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)が5ng/mlの増分で5から100ng/mlまでの範囲にわたる濃度で培地に添加されるという改変を伴ってステンプル(Stemple)とアンダーソン(Anderson)(米国特許第5,654,183号)(引用により本明細書に組み込まれる)に従って単離かつ培養される。そのように培養された神経堤細胞は約1ないし5ng/mlの増大する濃度のFGFの存在により刺激されることが見出される。こうした細胞は末梢神経細胞に分化し、それが本発明で使用され得る。他のサイトカイン、成長因子および薬物 あるサイトカイン、成長因子および薬物が移植領域で場合によっては使用されるか、もしくは移植と付随して投与されうる。
【0021】
既知のサイトカインはインターロイキン(IL)IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−10およびIl−11;組織壊死因子はTNF、TNFα、またリンホトキシン(LT)およびTNFβ;インターフェロン(IFN)はIFNα、IFNβおよびIFNγ;ならびに組織成長因子(TGF)を包含する。コロニー刺激因子(CSF)は幹細胞の産生、分化および機能に関与していると考えられる特定の糖タンパク質である。
【0022】
神経成長因子(NGF)はおそらくコリン作動性の経路に対して作用することによりentorhinal傷害後に空間的変化の任務の回復の速度を増大させることが示された(シュタイン(Stein)とウィル(Will)、Brain Res. 261:127−31、1983)。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
【表3】

【0026】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】1Aおよび1Bは、本発明にかかる、インビトロでの神経前駆/幹C17.2細胞の移動能力を具体的に説明する。インキュベーションの5日後にC17.2細胞の幅広い分布が存在し(図1B)、それらが、筒中の最初の植付け(seeding)の領域に局在されたままであったTR−10細胞(図1A)と比較して筒中のそれらの最初の植付けから離れて移動したことを示唆する。これらのパターンは、細胞が神経膠腫細胞の上部で直接プレート培養された(右のわきに置かれた筒[矢印])にしろ、単にそれらに並んだ(中央の筒[矢印])にしろ、観察された。
【図2】2A、2B、2Cおよび2Dは、本発明にかかる、移動性腫瘍細胞の「跡をたどる」ようにみえる実験的腫瘍塊全体および前進する腫瘍の縁をわずかに越える外来遺伝子を発現する神経前駆/幹細胞の広範囲の移動を具体的に説明する。(図2A)4×で示される第2日;矢尻は腫瘍塊のおおよその縁の境界を定める;(図2B)10×での高出力、ここでX−galすなわち青色に染色するNSC[矢印]が暗赤色に染色する腫瘍細胞の間に点在される。(図2C)Xgal+青色を示す腫瘍内注入10日後の腫瘍塊の眺め(view)、C17.2 NSCは腫瘍に浸潤したが、しかし青色に染色するNSCが侵襲する「逃れる」細胞[矢印](10×)の「後を追って」いるように見える場合に周囲組織への若干の移動を伴った暗赤色に染色された腫瘍組織の縁で大部分は停止する。(図2D)成体ヌードマウスの前頭皮質に移植されたCNS−1腫瘍細胞、浸潤する実験的腫瘍床全体で浸潤性の腫瘍縁[矢印]までかつそれに沿って青色のC17.2細胞の広範囲の移動および分布が存在し、かつ、そこで多くの腫瘍細胞が攻撃性腫瘍細胞[矢印]に実際に並んで周囲組織中に正常組織に侵襲している(10×)。
【図3】3A、3B、3C、3D、3E、3F、3Gおよび3Hは、本発明にかかる、主腫瘍塊から離れて移動性腫瘍細胞の「跡をたどる」神経前駆/幹細胞の外観を具体的に説明し;(図3A、3B)平行切片:低出力のC17.2細胞は腫瘍全体および周囲の縁に分布した[図3A)Xgalおよびニュートラルレッド、図3B)テキサスレッドおよびFITCでの二重免疫蛍光標識];(図3C、3D)C17.2細胞に並んだ腫瘍の縁および移動性腫瘍細胞の低および高出力(Xgalおよびニュートラルレッド);(図3G、3H)C17.2細胞に並んだ単一の移動性腫瘍細胞の低および高出力(テキサスレッドおよびFITCでの二重免疫蛍光標識)。
【図4】4A、4B、4C、4D、4E、4Fおよび4Gは、本発明にかかる、 正常組織の標的CNS−1腫瘍細胞全体を移動する主腫瘍床から離れた部位に移植された神経前駆/幹細胞を具体的に説明し;(図4A、4B)同一半球:3×104個のCNS−1腫瘍細胞を右前頭葉に移植した。第6日に、4×104個のC17.2細胞を右前頭頭頂葉に注入した(4mm尾側の腫瘍注入)。動物を第12(示される)および21日に殺し、C17−2細胞が腫瘍床中にみられる(Xgalおよびニュートラルレッド)。(図4C、4D、4E)反対側半球:3×104個のCNS−1腫瘍細胞を左前頭葉に移植し、また、5×104個のCNS−1腫瘍細胞を左前頭頭頂葉に移植した。第6日に、8×104個のC17−2細胞を右前頭葉に注入した。動物を第12および21日(示される)に殺した;c)4×C17.2(赤色)が脳の反対側から腫瘍(緑色)に向かって移動するのがみられ、d)10×C17.2細胞(赤色)が中央交連を横断して能動的に移動するのがみられる(二重免疫蛍光)、e)20×C17−2細胞(青色)が腫瘍(黒色矢印)に進入するのがみられる(Xgal/ニュートラルレッド)。(図4F、4G)脳室内:5×104個のCNS−1腫瘍細胞を右前頭葉に移植した。第6日に、8×104個のC17.2細胞を右もしくは左(示される)側脳室に注入した。
【0028】
実施例
実験方法
細胞:
C17−2およびTR−10細胞は10%ウシ胎児血清(FCS;シグマ(Sigma)、ミズーリ州セントルイス)、5%ウマ血清(HS;ギブコ(Gibco))、1%グルタミン(2mM;ギブコ(Gibco))、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(シグマ(Sigma))で補充されたダルベッコの改変イーグル培地(DMEM;メディアテック(Mediatech)、ワシントンDC)中で維持した。CNS−1細胞は既に記述されたとおり(アブーディ・グーテルマン(Aboody−Guterman)ら、1997を参照)緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するようにPGK−GFP−IRES−NeoRレトロウイルスベクター構築物を用いて安定に導入し、そして10%FCSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシン(シグマ(Sigma))で補充されたRPMI−1640(バイオ ウィッタカー(Bio Whittaker))中で維持した。細胞構造の研究を、標準的条件すなわち加湿、37℃、5%CO2インキュベーター下で100mmペトリ皿中で実施した。インビトロ研究;CNS−1神経膠腫細胞を、そ
の中に40,000個のC17.2もしくはTR−10細胞が一夜プレート培養された5mm筒(すなわちCNS−1細胞を含まない)の周囲におよそ60〜70%コンフルエンスまでプレート培養した。同時に、40,000個のC17.2もしくはTR−10細胞を、付着されたCNS−1細胞の上部に直接置かれた5mm筒中に置いた。翌日、筒を除去し、そしてプレートをPBSで十分にすすいでいかなる浮遊細胞も除去し、培地を置き換え、そしてプレートを5日間インキュベーションした。プレートをその後、0.5%グルタルアルデヒド固定後に一夜β−ガラクトシダーゼについて染色した(注:C17.2およびTR−10細胞双方がX−gal染色で>90%青色である)。インビボ研究;移植48時間前にC17.2およびTR−10細胞を10μMの濃度のBUdR(シグマ(Sigma))とともにインキュベーションした。プレート培養された細胞をPBSですすぎ、トリプシン処理し、培地に再懸濁しそしてコールターカウンター上で計数した。所望の数の細胞を遠心分離器中で4分間かつ1100rpmで4℃で回転させてペレットを得た。培地を除去し;細胞をPBSに再懸濁することによりすすぎ、そして再回転した。PBSを除去し、そして適切な量のPBSを添加して最終の所望の濃度で細胞を再懸濁した。細胞を氷上に保ち、そして各動物注入に先立ち穏やかに摩砕した。BUdRで標識されなかった細胞を類似の様式での注入のため調製した。
【0029】
動物:
動物研究は動物治療に関するマサチューセッツ総合病院小委員会(Massachusetts General Hospital Subcommittee on Animal Care)により出された指針に従って実施した。使用された動物:成体CD−フィッシャー(Fisher)ラット(チャールズ リバー(Charles River))および8〜10週齢の成体のおよそ20グラムの雌性ヌードマウス(コックス(Cox)7、MGH−イースト(East)から得られた無作為繁殖されたスイス(Swiss)白色)。
【0030】
外科手術および殺傷:
動物を0.15mlの20%ケタミン塩酸塩(ケタラール(KETALAR)100mg/ml;パーク・デービス(Parke−Davis)、ニュージャージー州モリスプレインズ)、20%キシラジン(ロムプン(ROMPUN)20mg/ml;マイルズ インク(Miles Inc.)、カンサス州スワニーミッション)、60%塩化ナトリウム(0.9%;アボット ラボラトリーズ(Abbott Laboratories)、イリノイ州ノースシカゴ)のi.p.注入により麻酔し、そして定位装置(コフ(Kopf)、カリフォルニア州チュジュンガ)中に固定した。脳内注入を、頭蓋の頂上に直線状のメス皮膚切開を作成することにより定位的に実施した。バーホールを冠状縫合上のブレグマに対し2mm側方に高速ドリルで頭蓋中にドリルで穴をあけた。滅菌針で硬膜を切開しそして止血を得た後に1μlの1×ダルベッコのリン酸緩衝塩溶液(PBS pH7.4;メディアテック(Mediatech)、ヴァージニア州ヘルンドン)に懸濁された所望の数の腫瘍細胞を、3ないし5分の期間にわたって特定された位置(下のプロトコルを参照)に26ゲージの5μlハミルトン(Hamilton)シリンジで注入した。針を2〜4分の期間にわたって引っ込めた後に骨蝋(bone−wax)(エチコン(Ethicon)、ニュージャージー州ソマーヴィル)を使用してバーホールを閉塞し、ベタジンを手術領域に適用し、そして皮膚を縫合して封鎖した。後日2回目の注入を受領する動物を、特別のプロトコルにより(下を参照)麻酔し、定位装置中に固定しそして細胞を注入した。動物を提示された(stated)日に麻酔薬の過剰投与およびその後のPBS次いで4%パラホルムアルデヒド+2mMMgCl2(pH7.4)での頭蓋内灌流で殺した。脳を取り出しそして4℃で一夜後固定し、そしてその後3〜7日間PBS+2mMMgCl2(pH7.4)中30%ショ糖に移して凍結保護した(cryoprotect)。脳を−80℃で貯蔵し、そしてその後10〜15ミクロンの冠状連続切片を低温槽に切断した(ライカ(Leica)CM3000)。
【0031】
移植されたC17−2細胞のBUdR標識:
選択された動物は殺す前24時間にわたって1ml/100g体重の20μMBUdRストック溶液(シグマ(Sigma))の3回の腹腔内注入を受領した(20gのマウスあたり0.2ml/注入)。
【0032】
組織病理学的および免疫組織化学的研究:
組織切片を(1)Xgalおよびニュートラルレッドで対染色(2)ヘマトキシリンおよびエオシン(3)で染色し、二重免疫蛍光標識をテキサスレッド抗β−ガラクトシダーゼおよびFITC抗GFPで実施した。スライドガラスを光学顕微鏡検査、蛍光顕微鏡検査で検査した。CNS−1腫瘍細胞もまた共焦点蛍光顕微鏡検査下で染色なしで検査した。
【0033】
実施例1.培養物中のNSCの移動能力
神経膠腫細胞とともにのNSCの特性を決定するため、神経膠腫細胞と共培養された場合の線維芽細胞(lacZ発現TR−10線維芽細胞系)に対するNSC(クローンC17.2)の相対的移動能力を比較する研究を最初に培養物中で実施した。C17.2およびTR−10細胞を10%ウシ胎児血清(FCS;シグマ(Sigma)、ミズーリ州セントルイス)、5%ウマ血清(HS;ギブコ(Gibco))、1%グルタミン(2mM;ギブコ(Gibco))、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(シグマ(Sigma))で補充されたダルベッコの改変イーグル培地(DMEM;メディアテック(Mediatech)、ワシントンDC)中で維持した。CNS−1細胞は既に記述されたとおり(アブーディ・グーテルマン(Aboody−Guterman)ら、1997を参照)緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するようにPGK−GFP−IRES−NeoRレトロウイルスベクター構築物を用いて安定に導入し、そして10%FCSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシン(シグマ(Sigma))で補充されたRPMI−1640(バイオ ウィッタカー(Bio Whittaker))中で維持した。細胞構造の研究を、標準的条件すなわち加湿、37℃、5%CO2インキュベーター下で100mmペトリ皿中で実施した。CNS−1神経膠腫細胞を、その中に40,000個のC17.2もしくはTR−10細胞が一夜プレート培養された5mm筒(すなわちCNS−1細胞を含まない)の周囲におよそ60〜70%コンフルエンスまでプレート培養した。同時に、40,000個のC17.2もしくはTR−10細胞を、付着されたCNS−1細胞の上部に直接置かれた5mm筒中に置いた。翌日、筒を除去し、そしてプレートをPBSで十分にすすいでいかなる浮遊細胞も除去し、培地を置き換え、そしてプレートを5日間インキュベーションした。プレートをその後、0.5%グルタルアルデヒド固定後に一夜β−ガラクトシダーゼについて染色した(注:C17.2およびTR−10細胞双方がX−gal染色で>90%青色である)。
【0034】
C17.2細胞の広範な分布が存在し(図1B)、それらが筒中の当初の植付けの領域に局在されたままであったTR−10細胞(図1A)に比較して筒中のそれらの当初の部位から離れて移動していたことを示唆した。これらのパターンは、細胞が神経膠腫細胞の上部に直接プレート培養された(右のわきに置かれた(right-sided)筒[矢印])にしろ、単にそれらに並んだ(中央の筒[矢印])にしろ観察された。
【0035】
実施例2.インビボの侵襲性腫瘍塊全体でおよびそれを越えてのトランスジーンを発現するNSCの移動
脳腫瘍中に導入されたクローンC17.2のNSCの挙動を決定するため、実験動物(同系の成体ラット)が最初に右前頭葉に注入された1μl中の4×104個のD74ラット神経膠腫細胞の移植片を受領した。4日後、1.5μlのPBS中の1×105個のC17.2のNSCをD74腫瘍床中に直接同一座標で注入した。動物をその後、腫瘍内注
入後第2、6、および10日に殺し、そして脳の低温槽切片を、β−ガラクトシダーゼ(βgal)活性についてXgal組織化学で処理して供与体由来細胞を検出し、かつ、ニュートラルレッドで対染色して腫瘍細胞を検出した。
【0036】
供与体C17.2 NSCは注入後2日と同じくらい迅速に腫瘍の約8mm幅にわたって数日以内に腫瘍全体に広範囲に分散されて見出された(図2A、2B)。これは実験的脳腫瘍に移植された3T3線維芽細胞の以前の報告33に比較してずっとより広範囲かつ迅速な分散である。第10日までに、C17.2細胞は、変性性の環境によりいくぶん引かれ、浸潤する腫瘍の縁にはっきりと沿ってかつそれをわずかに越えて腫瘍の大部分全体でみられ、移動性腫瘍細胞の「跡をたどる」ように思われた(図2C、2D)。C17.2細胞それら自身は腫瘍原性にならなかった。
【0037】
(図2A)4×で示される第2日;矢尻は腫瘍塊のおおよその縁の境界を定め;より低出力でさえ腫瘍は青色のNSCで混合されることが見られ得る[矢印]。これは10×で(図2B)でより高出力でより劇的に認識され、ここでXgal+すなわち青色に染色するNSC[矢印]は暗赤色に染色する腫瘍細胞の間に点在される。(図2C)腫瘍内注入10日後の腫瘍塊のこの眺めは、Xgal+青色のC17.2のNSCは腫瘍に浸潤したがしかし青色に染色するNSCが「逃れる」腫瘍細胞[矢印]の「後を追って」かつ侵襲しているように見える場合に周囲組織への若干の移動を伴った暗赤色に染色された腫瘍組織の縁(境界が矢尻により示される)で大部分は停止することを申し分なく示す(10×)。この現象は、ヌードマウスの脳中の実験的CNS−1星状細胞腫D74よりなおより毒性の侵襲性かつ攻撃的腫瘍でさえC17.2のNSCの挙動を検査する場合により劇的にさえなる(図2D)。CNS−1腫瘍細胞を成体ヌードマウスの前頭皮質に移植した(第0日)。第6日に4×104個のC17.2細胞を腫瘍床に直接移植した。(図2D)に写真で示された動物を腫瘍移植後第12日、腫瘍内注入後第6日に殺した。写真で示された低温槽切片を、β−ガラクトシダーゼ活性についてXgalの組織化学で処理して青色のC17.2のNSCを検出し、また、ニュートラルレッドで対染色して暗赤色の腫瘍細胞を示した。浸潤性の実験的腫瘍床全体に浸潤する腫瘍の縁[白色矢印]までそしてそれに沿って青色のC17.2細胞の広範囲の移動および分布が存在し、そしてここで多くの腫瘍細胞が攻撃性腫瘍細胞[矢印]と実際に並んで周囲の組織中に正常組織に侵襲する(10×)。
【0038】
実施例3.NSCは浸潤性腫瘍細胞の「跡をたどる」
CNS−1腫瘍細胞を主腫瘍床から離れた単一の細胞をより良好に区別するために移植に先立ち緑色蛍光タンパク質(GFP)をもつレトロウイルス導入により標識した17。1μlのPBS中のGFPを発現するCNS−1神経膠腫細胞(3×104個)を定位座標でブレグマに対し2mm側方に冠状縫合上に硬膜から深さ3mmに右前頭葉に注入した。1μlのPBS中の4×104個のC17.2もしくはTR−10細胞を第6日に腫瘍床中に直接同一座標で注入した。3〜4匹のC17.2動物(2匹はBUdR標識された、1匹はBUdRを間歇的に投与された)および1〜2匹のTR−10対照動物(1匹はBUdR標識された)。動物を腫瘍移植後第9、12、16および21日に殺した。低温槽切片にされた固定された脳組織をβ−ガラクトシダーゼ(C17.2細胞青色)およびニュートラルレッド(腫瘍細胞暗赤色)、またはテキサスレッド抗β−ガラクトシダーゼ(C17.2細胞赤色)およびFITC抗GFP(腫瘍細胞緑色)での二重免疫蛍光のいずれかで染色した。
(図3A、3B)平行切片:低出力のC17.2細胞は腫瘍全体および周囲の縁に分布した[図3A)Xgalおよびニュートラルレッド、図3B)テキサスレッドおよびFITCでの二重免疫蛍光標識]。
(図3C、3D)C17.2細胞に並んだ単一の移動性腫瘍細胞の低および高出力(Xgalおよびニュートラルレッド)。
(図3E、3F)C17.2細胞に並んだ単一の移動性腫瘍細胞の低および高出力(Xgalおよびニュートラルレッド)
(図3G、3H)C17.2細胞に並んだ単一の移動性細胞の低および高出力(テキサスレッドおよびFITCでの二重免疫蛍光標識)。
【0039】
実施例4.離れた部位に移植されたNSCは腫瘍に向かって移動する
正常組織およびとりわけを標的の腫瘍細胞を通って移動するNSCの能力を検査するため、供与体NSCを3種の別個の状況すなわち同一半球、反対半球もしくは側脳室への主腫瘍床から離れた巻き込まれていない部位に注入した。
【0040】
同一半球:1μlPBS中のCNS−1神経芽腫細胞(3×104個)を、定位座標で冠状縫合上でブレグマに対し2mm側方の硬膜から深さ3mmに右前頭葉に注入した。1μlのPBS中の4×104個のC17.2もしくはTR−10細胞を第6日に定位座標でブレグマに対し3mm側方かつ4mm尾側に硬膜から深さ3mmに右前頭頭頂葉に注入した。2匹の動物を第12および21日に殺した。全時間点で、NSCは主腫瘍床内にならびに周囲組織中の移動性腫瘍細胞に並んで分布されて見出された(図4A、4B)。
【0041】
反対半球:1μlPBS中の3×104個のCNS−1腫瘍細胞を、定位座標で冠状縫合上でブレグマに対し2mm側方に硬膜から深さ3mmに左前頭葉に注入し、1μlのPBS中の5×104個のCNS−1腫瘍細胞を、ブレグマに対し3mm側方かつ4mm尾側に硬膜から深さ3mmに左前頭頭頂葉に注入し、2μlのPBS中の8×104個のC17.2細胞を第6日にブレグマに対し2mm側方かつ2mm尾側に硬膜から深さ3mmに右前頭葉に注入した。2匹の動物を第12および21日に殺した(対照−腫瘍なし 座標:ブレグマの2mmR、2mm尾側、3mm深)。NSCは脳の反対側の腫瘍に向かって中央交連を横断して能動的に移動し、そしてその後腫瘍に進入してみられた(図4C、4D、4E)。
【0042】
CNS−1腫瘍床から離れた移植(脳室内):
この最後の状況では、1μlのPBS中の5×104個のCNS−1腫瘍細胞をブレグマに対し2mm側方に冠状縫合上に硬膜から3mm深さで右前頭葉に注入した。2μlのPBS中の8×104個のC17.2細胞を第6日にブレグマに対し1mm側方かつ3mm尾側に硬膜から2mm深さに左もしくは右脳室に注入した。2匹の動物を第12および21日に殺した。NSCは、再度、主腫瘍床内ならびに移動性腫瘍細胞と並んでみられた(図4F、4G)。
【0043】
各場合で、供与体NSCは正常組織を通って移動しかつ腫瘍に「標的を定める」ことが見出された。
【0044】
(本発明の主要な態様または特徴)
本発明の主要な態様または特徴として次のものを挙げることができる。
態様1:少なくとも異なる型の神経細胞に分化する能力を有する単離された多分化能のニューロン細胞であって、
a.移動能力を有し、それにより当該細胞がニューロン細胞が投与される第一の位置から最低1個の腫瘍細胞が存在する第二の位置まで移動することが可能であり;
b.腫瘍を通ってかつそれの周囲を移動する能力を有し、それにより複数のニューロン細胞が腫瘍を取り囲むことが可能であり;そして
c.最低1個の浸潤性腫瘍細胞の跡をたどる能力を有し、それにより浸潤性かつ転移性の腫瘍を治療する、
ことをさらなる特徴とするニューロン細胞。
態様2:ニューロン細胞が単離された神経幹細胞を含んで成る、態様1のニューロン細胞

態様3:ニューロン細胞が細胞傷害性物質を分泌するよう処理されている、態様1のニューロン細胞
態様4:ニューロン細胞が腫瘍性細胞の分化を直接促進する因子で形質転換されている、態様1のニューロン細胞。
態様5:ニューロン細胞が腫瘍細胞により組み込まれるべき治療遺伝子をコードするウイルスで形質転換されている、態様1のニューロン細胞。
態様6:ニューロン細胞が腫瘍細胞中に組み込まれるべき自殺遺伝子、分化剤もしくはトロフィンに対するレセプターをコードするウイルスで形質転換されている、態様1のニューロン細胞。
態様7:腫瘍から脳の同一の側もしくは反対側に投与されたニューロン細胞が腫瘍に達することが可能である、態様1のニューロン細胞。
態様8:移動性ニューロン細胞の移動性パッケージング/プロデューサー細胞への転化方法であって、
a.β−galのようなマーカーを構成的に産生するニューロン細胞を提供すること;
b.両栄養性pPAM3パッケージングプラスミドおよびピューロマイシン選択プラスミドpPGKpuroでニューロン細胞をコトランスフェクションすること;
c.トランスフェクションされた細胞をピューロマイシン中で選択すること;
d.両栄養性エンベロープ糖タンパク質コートの細胞表面の発現について選択すること;e.モノクローナル抗体83A25を使用して蛍光活性化細胞選別により細胞を単離すること;
f.どのコロニーが感染性ウイルス粒子中にlacZをパッケージングしたかを評価することによりそれらのパッケージング能力について段階eの細胞をスクリーニングすること;
を含んで成り、
それにより選択の遺伝子でトランスフェクションされることが可能な移動性ニューロン細胞を産生し、その結果選択の遺伝子を発現するウイルス粒子が産生され、そして複数のトランスフェクションされたパッケージング細胞により中枢神経系の広範な領域にわたって播種される前記方法。
態様9:段階fがβ−gal産生についてのウイルスフォーカスアッセイにより実施される、態様1の方法。
態様10:選択の遺伝子がプロドラッグ活性化酵素である、態様8の方法。
態様11:プロドラッグ活性化酵素が、大腸菌(E.coli)シトシンデアミナーゼ(CD)、HSV−TKもしくはチトクロームp450である、態様10の方法。
態様12:プロドラッグ活性化酵素が大腸菌(E.coli)シトシンデアミナーゼ(CD)である、態様10の方法。
態様13:中枢神経系のための新規細胞パッケージング系であって、
β−galのようなマーカーを構成的に産生するニューロン細胞を含んで成り、
当該ニューロン細胞は両栄養性pPAM3パッケージングプラスミドおよびピューロマイシン選択プラスミドpPGKpuroでコトランスフェクションされており;
当該トランスフェクションされた細胞が、モノクローナル抗体83A25を使用して両栄養性エンベロープ糖タンパク質コートの細胞表面の発現および蛍光について、ならびにどのコロニーが感染性ウイルス粒子中にlacZをパッケージングしたかを評価することによりそれらのパッケージング能力について、ピューロマイシンの存在下で選択され;
生じる細胞は、粒子もしくはベクターをパッケージングかつ放出することが可能であり、それらは順に中枢神経系細胞への遺伝子導入のためのベクターとして役立ちうるものである、新規細胞パッケージング系。
態様14:粒子が複製欠損レトロウイルス粒子である、態様13:の新規細胞パッケージング系。
態様15:ベクターが複製が条件的なヘルペスウイルスベクターを含んで成る、態様13
の新規細胞パッケージング系。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きている宿主被験者へ要求に応じてインビボ(in vivo)で移植するのに適する個々の明確な細胞系としてインビトロ(in vitro)で安定に維持される遺伝子的に改変されたヒト神経幹細胞のクローンであって、(i)遺伝的に改変されたヒト神経幹細胞に由来し、単一の該ヒト神経幹細胞の子孫であり、(ii)有糸分裂性で、自己再生性細胞系としてインビトロで継代する間に未前駆及び未分化のまま残存し、(iii)未前駆細胞としてインビボで移植可能であり、(iv)移植後に、移植部位から他の解剖学的部位へ移動して生きている宿主被験者の神経系内に組込まれてもよく、(v)生きている宿主被験者の局所解剖学的部位の実質組織中に移植後その場で組込まれ、(vi)ニューロン、希突起膠細胞及び星状膠細胞からなる群より選ばれる基本細胞型の少なくとも一種に組込まれた後その場で分化し、(vii)共通に前記遺伝子的に改変されたヒトゲノムDNAを有する、複数の始原ヒト神経幹細胞を含んでなり、かつ、前記DNAが特定のタンパク質をコードする外来の遺伝子を含有する少なくとも一つのDNAセグメントを保持するウイルスベクターを含有するように遺伝的に改変されたものである、上記クローン。
【請求項2】
生きている宿主被験者へ要求に応じてインビボ(in vivo)で移植するのに適する個々の明確な細胞系としてインビトロ(in vitro)で安定に維持される遺伝子的に改変されたヒト神経幹細胞子孫のクローンであって、(i)遺伝的に改変されたヒト神経幹細胞に由来し、単一の該ヒト神経幹細胞の下行性の子孫であり、(ii)有糸分裂性細胞としてインビトロで継代する間に未分化のまま残存し、(iii)未分化細胞としてインビボで移植可能であり、(iv)移植後に、移植部位から他の解剖学的部位へ移動して生きている宿主被験者の神経系内に組込まれてもよく、(v)生きている宿主被験者の局所解剖学的部位の実質組織中に移植後その場で組込まれ、(vi)ニューロン、希突起膠細胞及び星状膠細胞からなる群より選ばれる基本細胞型の少なくとも一種に組込まれた後その場で分化し、(vii)共通に前記遺伝子的に改変されたヒトゲノムDNAを有する、複数の多能性生存子孫細胞を含んでなり、かつ、前記DNAが特定のタンパク質をコードする外来の遺伝子を含有する少なくとも一つのDNAセグメントを保持するウイルスベクターを含有するように遺伝的に改変されたものである、上記クローン。
【請求項3】
ウイルスベクターが両種性レトロウイルスベクターである、請求項1または2記載のクローン。
【請求項4】
ウイルスベクターが外来のvmyc DNA配列を含有し、かつ、(i)該vmyc DNA配列が、インビトロで高度に発現されて、インビトロで維持されている間に増殖細胞周期にあり、迅速に増殖するヒト神経幹細胞をもたらし、(ii)該vmyc DNA配列が、インビボ細胞移植後に、インビボで細胞増殖を中止するように生きている宿主被験者の構成組織により制御され、ダウンレギュレーションされる、請求項1または2記載のクローン。
【請求項5】
インビトロ(in vitro)で安定な細胞系として維持され、生きている宿主被験者へ要求に応じてインビボ(in vivo)で移植するのに適する遺伝子的に改変されたヒト神経幹細胞の生きている子孫細胞であって、(i)有糸分裂細胞としてインビトロで維持されている間に未分化のまま残存し、(ii)未前駆細胞として選択された移植部位においてインビボで移植可能であり、(iii)移植後に、移植部位から他の解剖学的部位へ移動して生きている宿主被験者の神経系内に組込まれてもよく、(iv)生きている宿主被験者の局所解剖学的部位の実質組織中に移植後その場で組込まれ、(v)ニューロン、希突起膠細胞及び星状膠細胞からなる群より選ばれる基本細胞型の少なくとも一種に組込まれた後その場で分化するヒト神経幹細胞起源の多能性子孫細胞を含んでなり、か
つ、前記DNAが特定のタンパク質をコードする異種遺伝子を含有する少なくとも一つのDNAセグメントを保持するウイルスベクターを含有するように遺伝的に改変されたものである、上記遺伝子的に改変されたヒト神経幹細胞の生きている子孫細胞。
【請求項6】
ウイルスベクターが両種性レトロウイルスベクターである、請求項5記載の遺伝子的に改変されたヒト神経幹細胞の生きている子孫細胞。
【請求項7】
ウイルスベクターが異種vmyc DNA配列を保持し、かつ、(i)該vmyc DNA配列が、インビトロで高度に発現されて、インビトロで維持されている間に増殖細胞周期にあり、迅速に増殖する多能性子孫細胞をもたらし、(ii)該vmyc DNA配列が、インビボで移植後に、インビボで多能性細胞増殖を明らかに低減するように生きている宿主被験者の構成組織により制御され、ダウンレギュレーションされる、請求項5記載のクローン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−62206(P2011−62206A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245454(P2010−245454)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【分割の表示】特願2000−574658(P2000−574658)の分割
【原出願日】平成11年9月17日(1999.9.17)
【出願人】(501060806)ザ・チルドレンズ・メデイカル・センター・コーポレーシヨン (3)
【出願人】(591004940)ザ・ジエネラル・ホスピタル・コーポレーシヨン (1)
【出願人】(500129812)ノースイースタン・オハイオ・ユニバーシテイーズ・カレツジ・オブ・メデイシン (1)
【Fターム(参考)】