説明

腐食モニタリングセンサ

【課題】 試料電極4の温度上昇を従来のものよりも抑えることができる腐食モニタリングセンサを提供する。
【解決手段】 腐食モニタリングセンサ31は、冷却空気が流れる冷却通路40aを有する金属製のサポート管40と、電気化学計測用の試料電極45、参照電極46及び対極47とを備えている。前記サポート管40には、各電極45,46,47が夫々挿入された第1乃至第3のスリーブ42,43,44が埋め込まれている。第1乃至第3のスリーブ42,43,44は、絶縁性を有しており、各電極45,46,47とサポート管40と絶縁している。また、各スリーブ42,43,44は、互いに間隔をあけてサポート管40に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒が流れる金属製のサポート管と電気化学計測用の試料電極、対極及び参照電極と備える腐食モニタリングセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ごみ焼却炉、ソーダ回収ボイラ及び石炭ボイラ等の炉内では、焼却灰に含まれる高温溶融塩や結露水により、水管及び過熱器管等の金属部品が腐食しやすい。このような金属部品の腐食状態を検出するために、例えば電気化学計測法を利用した特許文献1のような腐食モニタリングセンサ1が用いられている。
【0003】
図6は、この従来の技術の腐食モニタリングセンサ1を示す断面図である。腐食モニタリングセンサ1は、円筒状のプローブ2の先端側の部分に開口部2aが形成され、そこにセラミック基板3が埋め込まれている。セラミック基板3には、プローブ2の先端側から順に試料電極4、参照電極5及び対極6が取り付けられている。各電極4,5,6は、リード線7a,7b,7cを介して図示しない電気化学計測器に接続されている。電気化学計測器では、公知の電気化学インピーダンス法により、試料電極4の界面の分極抵抗(インピーダンス)が求められ、パーソナルコンピュータなどの端末機によりこの分極抵抗から試料電極4の腐食速度が求められる。
【0004】
またブローブ2内の冷却通路9には、図示しない送風機から冷却空気が送られており、送風機の流量が図示しない流量調整器により調整されている。流量調整器は、熱電対8を介して試料電極4と接続されており、熱電対8からの出力に応じて送風機の流量を制御して試料電極4の温度を調整する。試料電極4の温度を調整することで、試料電極4の状態を炉内に配置された水管及び過熱器管等の金属部材と同じような状態にしている。
【特許文献1】特開2005−91281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
腐食モニタリングセンサ1では、試料電極4、参照電極5及び対極6とプローブ2との絶縁をするためにセラミック基板3が用いられているが、このセラミック基板3は絶縁性だけでなく断熱性も有する。そのため、冷却通路9に冷却空気を流してもセラミック基板3の外表面温度が下がらず試料電極4の温度より高くなってしまう。そのため、試料電極4に対してその周辺温度が高くなってしまう。これに対して水管及び過熱器管等の金属部品は、熱伝導性を有する金属材料により構成されているため、その外表面全体が略均一な温度となる。
【0006】
高温溶融塩や結露水は、部材及びその周辺の温度が高くなればなる程、試料電極4の周辺に付着しにくくなる。そのため、腐食モニタリングセンサ1の試料電極4の周辺に付着し堆積する高温溶融塩や結露水は、金属部材に実際に付着し堆積する高温溶融塩や結露水に比べて少なくなる。つまり、試料電極4の周辺と金属部品とでは、腐食状態が異なることがある。それ故、前記試料電極4の腐食状態を検出したことにより前記金属部材の腐食状態を推測したとは言えない可能性がある。前記金属部材の腐食状態をより正確に推測するため、試料電極4だけでなく、その周辺の部位についてもできる限り前記金属部材の温度に近づけるために、試料電極4の周辺温度を抑制する必要がある。
【0007】
そこで本発明の目的は、試料電極の周辺温度の上昇を従来のものよりも抑えることができる腐食モニタリングセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の腐食モニタリングセンサは、冷媒が流れる金属製のサポート管と、電気化学計測用の試料電極、参照電極及び対極とを備える腐食モニタリングセンサであって、前記試料電極、前記参照電極及び前記対極が夫々取り付けられて前記サポート管に埋設され、前記試料電極、前記参照電極及び前記対極と前記サポート管とを絶縁する3つの絶縁構造を備え、前記3つの絶縁構造は、互いに間隔をあけて配置されているものである。
【0009】
本発明に従えば、サポート管に堆積する堆積物によって試料電極、前記参照電極及び前記対極が覆われても、試料電極周辺の堆積物の熱を互いに隣り合う絶縁構造の間を通してサポート管内の冷媒へと逃がすことができる。これにより、試料電極4の周辺温度を上昇させる堆積物の温度を下げることができ、従来のものより試料電極4の周辺の温度上昇が抑えられる。
【0010】
上記発明において、前記各絶縁構造は、絶縁スリーブであることが好ましい。
【0011】
上記構成に従えば、絶縁構造の外側への露出面積を低減することができるので、サポート管に堆積する堆積物の熱を更にサポート管内の冷媒へと逃がすことができ、堆積物の温度を更に下げることができる。これにより試料電極の周辺温度の上昇が更に抑えられる。
【0012】
上記発明において、前記絶縁スリーブは、前記サポート管に螺着することで埋設されるように構成されていることが好ましい。
【0013】
上記構成に従えば、試料電極のサポート管への取付けが容易であり、圧入等する場合に比べて、取付け時の試料電極の損傷が抑えられる。これにより、腐食状態を検出し後に試料電極自体を取り出してその高さ及び重量等を計測する際、試料電極の損傷に伴う誤差を防ぐことができ、より正確な試料電極の腐食状態を検出することが可能となる。
【0014】
上記発明において、前記サポート管は、その内壁に1又は複数のフィンを有することが好ましい。
【0015】
上記構成に従えば、冷媒によりサポート管の冷却性能を向上させることができる。これにより、堆積物の冷却性能も向上し、更に試料電極の周辺温度上昇が抑えられる。
【0016】
上記発明において、前記各フィンは、前記3つの絶縁スリーブが設けられる前記サポート管の先端側領域だけに設けられていることが好ましい。
【0017】
上記構成に従えば、サポート管内の流路抵抗を小さくすることができ、且つサポート管の先端側領域以外の領域における冷媒の吸熱量を少なくすることができる。これにより、冷媒は、流速を落とすことなく、且つサポート管の先端側領域で充分に吸熱することができる。従って、堆積物の冷却性能も向上し、更に試料電極の周辺温度の上昇が抑えられる。
【0018】
本発明のモニタリング装置は、前述の何れか1つに記載の腐食モニタリングセンサと、前記サポート管内に冷媒を送る送風機と、前記試料電極と熱電対により接続され、前記試料電極が予め定められた目標温度になるように前記熱電対からの出力に応じて前記送風機の流量を調整する流量調整器と、前記試料電極、前記参照電極及び前記対極と電気的に接続され、電気化学インピーダンス法により前記試料電極の腐食状態を検出する腐食状態検出器とを備えるものである。
【0019】
本発明に従えば、例えば、試料電極の目標温度を、腐食状態を検出すべき対象部材と同じ温度に予め定めることにより、試料電極を前記対象部材と略同じ状態にすることができる。これにより、電気化学計測器によって、より正確に前記対象部材の腐食状態を推定することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来のものより試料電極の周辺温度の上昇が抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下では、金属部品が高温溶融塩に晒されるプラントの一例であるごみ焼却炉に、本件発明の実施形態の腐食モニタリング装置30を使用した場合について説明する。
【0022】
図1は、ごみ焼却炉10の構成の概略を示す概略図である。ごみ焼却炉10は、所謂ストーカ式のごみ焼却炉であり、焼却炉の廃熱を利用して発電する発電機11を備えている。ごみ焼却炉10は、ごみを投入するホッパ12を備えている。ホッパ12は、シュート13を介して主燃焼室14に繋がっており、ホッパ12から投入されたごみは、シュート13を通って主燃焼室14に送られる。主燃焼室14には、乾燥ストーカ15、燃焼ストーカ16及び後燃焼ストーカ17が設けられている。各ストーカ15,16,17の下方から一次空気が送られており、また主燃焼室14の天井14aから二次空気が送られている。
【0023】
主燃焼室14のごみは、まず乾燥ストーカ15に送られ、一次空気及び主燃焼室14の輻射熱により乾燥され着火される。着火したごみは、燃焼ストーカ16に送られる。また着火したごみからは、熱分解により可燃性ガスを発生する。この可燃性のガスは、一次空気により主燃焼室14の上部のガス層に送られ、このガス層にて二次空気と共に炎燃焼する。この炎燃焼に伴う熱輻射によりごみは、更に昇温される。着火したごみの一部は、燃焼ストーカ16にて燃焼し、残りの未燃焼分は、後燃焼ストーカ17へと送られる。未燃焼分のごみは、後燃焼ストーカ17で燃焼させられ、燃焼後に残った焼却灰は、シュート18から外部へと排出される。
【0024】
また主燃焼室14は、ごみ焼却炉10に備わる廃熱ボイラ19の第1放射室20に接続されており、ごみの燃焼により生じた燃焼排ガスが、主燃焼室14から第1放射室20に送られてくる。この燃焼排ガスは、第1放射室20で再度燃焼させられてから、廃熱ボイラ19の第2放射室21を通って冷却室22へと導かれ、その後、図示しない排ガス処理設備で無害化の処理が成されてから大気に放出される。
【0025】
廃熱ボイラ19では、第1放射室20及び第2放射室21を規定する壁の各々に、ボイラドラム24に接続された複数の水管23が設けられている。水管23は、炭素鋼(例えば、STB340)から成り、その中にボイラドラム24から送られてくる水が流れている。水管23内の水は、第1又は第2放射室20,21の廃熱を回収して、その一部が蒸発して汽水となりボイラドラム24へと戻される。ボイラドラム24に戻った汽水は、一部が気化して蒸気となっている。蒸気は、ボイラドラム24から冷却室22に設けられた過熱器25へと送られて、過熱される。このように過熱されて高温高圧となった蒸気は、タービン26へと送られ、発電機を駆動する。
【0026】
このように構成されるごみ焼却炉10では、焼却灰の一部が燃焼排ガスにより舞い上がって第1及び第2放射室20,21並びに冷却室22へと運ばれる、そして水管23及び過熱器25の過熱器管27に付着し堆積する。焼却灰は、高温溶融塩を含むため高い腐食性を有しており、水管23及び過熱器25の過熱器管27を腐食させる。水管23及び過熱器管27の腐食状態を検出するために、ごみ焼却炉10には、腐食モニタリング装置30を設ける。以下では、腐食モニタリング装置30の構成について説明する。
【0027】
図2は、腐食モニタリング装置30の構成を概略的に示す概略構成図である。腐食モニタリング装置30は、腐食モニタリングセンサ31と、電気化学計測器32と、端末機33と、送風機34と、流量調整器35と、バルブ36を備えている。腐食モニタリングセンサ31は、廃熱ボイラ19の壁19aに形成される開口部19bから挿入されて、廃熱ボイラ19の壁19aに固定されている。本実施形態では、腐食モニタリングセンサ31の先端側が廃熱ボイラ19の第1放射室20に配置されるように挿入されている。
【0028】
図3は、図2の腐食モニタリングセンサ31の先端を紙面に向って右方から見た右側面図である。なお、図3では、後述するフランジ60が省略されている。以下では、図2も参照しつつ説明する。腐食モニタリングセンサ31は、ステンレス鋼(SUS310J1)から成る長尺円筒のサポート管40を備えている。サポート管40は、その内壁により冷却空気を流すための冷却通路40aが規定されている。またサポート管40の先端側の部分には、半径方向内方に突出する複数のフィン41を内壁に備えている。本実施形態では、サポート管40の先端から軸線方向中間部の先端寄りの部分にかけて8枚のフィン41が形成されている。8枚のフィン41は、サポート管40の内壁に周方向に等間隔に配置されて、サポート管40の軸線L1に平行に延びている。
【0029】
図4は、図2に示す腐食モニタリングセンサ31の先端側領域Xを拡大した断面図である。図5(a)〜(c)は、腐食モニタリングセンサ31を図4の切断線A−A,B−B及びC−Cで夫々切断して見たときの断面図である。図5(a)〜(c)では、後述するフランジ60が省略されている。サポート管40の外周部の先端側の部分には、開口部40bが形成されており、その周方向反対側に略円筒状の第1乃至第3の3つのスリーブ42,43,44がサポート管40を内外方向に貫通するように埋設されている。
【0030】
各スリーブ42,43,44は、平面視で互いに所定の間隔をあけてサポート管40の軸線L1に平行に並んでおり、各スリーブ42,43,44の各々の軸線がサポート管40の軸線L1と直交している。なお、各スリーブ42,43,44は、サポート管40の先端側から第1、第2及び第3の順で並んでいる。各スリーブ42,43,44は、フランジ部42a,43a,44aが形成される一端部を除いて、外周部に雄ねじが螺刻されており、前記サポート管40に螺着されている。螺着して埋設された各スリーブ42,43,44は、接着剤等でサポート管40に固定されている。
【0031】
更に、第1乃至第3のスリーブ42,43,44には、試料電極45、参照電極46及び対極47が夫々挿入されており、試料電極45及び参照電極46が溶接スパッタで固着され、対極47が接着剤で固着されている。第1乃至第3のスリーブ42,43,44は、絶縁性を有するセラミック材からなり、試料電極45、参照電極46及び対極47とサポート管40とを夫々絶縁している。
【0032】
試料電極45は、腐食状態を検出すべき対象部材と同じ材料、本実施形態では水管23と同じ炭素鋼(STB340)から成り、一端部にフランジ45aを有する円柱形状を成している。試料電極45は、その一端が第1のスリーブ42の一端と面一になっており、他端部が第1のスリーブ42から突出している。また試料電極45は、その他端部に白金から成る試料電極用リード線51が接続された取付け部材52が挿入されて取り付けられ、試料電極用リード線51と電気的に接続されている。更に試料電極45の他端部には、試料電極用熱電対53も取付けられている。なお、試料電極用熱電対53の他にサポート管40の温度を検出するためのサポート管用熱電対56がサポート管40の先端部に設けられており、また図示はしないが、腐食モニタリングセンサ31は、その周辺のガスの温度を検出するためのガス温度用熱電対も備えている。
【0033】
参照電極46は、一端がドーム状を成すムライト製タンマン管46aを備える。この管46aは、第2のスリーブに挿入された際、その一端側が第2スリーブ43から外方に突出するように構成されている。また、管46a内には、溶媒となる電解質(NaCl,KCl等に1/10モル比のAgClを混合したもの)が充填され、管46aの他端が蓋体46bにより閉じられる。更に、管46a内には、螺旋状の銀線46cが封入されており、銀線46cは、蓋体46bに形成される貫通孔を通して白金から成る参照電極用リード線54に電気的に接続されている。
【0034】
対極47は、白金から成り、一端部にフランジ47aを有する円柱形状を成している。対極47は、その一端が第3のスリーブ44の一端と面一になっており、他端部が第3のスリーブ44から突出している。また対極47は、その他端部に白金から成る対極用リード線55が電気的に接続されている。
【0035】
スリーブ42,43,44の取り付けは、まずスリーブ42,43,44に電極45,46,47を夫々装着し、それらをサポート管40の外側から螺着して、各スリーブ42,43,44の他端部がサポート管40内に出てくるまで回し続ける。スリーブ42,43,44の他端部が出たところ、サポート管40の開口部40bから図示しない冶具又は手を挿入し、各スリーブ42,43,44の一端がサポート管40の外周部と面一になるまで3つのスリーブ42,43,44の他端部を冶具又は手で回す。全てのスリーブ42,43,44の一端が面一なったところで、蓋体40cで開口部40bを塞ぎ、蓋体40cをサポート管本体40dに溶接する。
【0036】
このような方法であれば、サポート管40に電極45,46,47を容易に取り付けることができ、圧入等する場合に比べて、取付け時の試料電極45の損傷が抑えられる。これにより、腐食状態の検出の後、試料電極自体を取り出してその高さ及び重量等を計測する際、試料電極45の損傷に伴う誤差を防ぐことができ、より正確な試料電極45の腐食状態を検出することが可能となる。
【0037】
このようにして取り付けられた試料電極45、参照電極46及び対極47は、サポート管40の長手方向に沿って配置され、試料電極45、参照電極46及び対極47が周方向の同じ角度位置に取り付けられることとなる。そのため、サポート管40の外周面への焼却灰の付着状況が周方向の位置に異なるにもかかわらず、試料電極45、参照電極46及び対極47に付着する焼却灰の付着状況が一致し、試料電極45の腐食状態を良好に検出することが可能となる。
【0038】
再び、図2に戻って、サポート管40の基端側の構成について説明する。サポート管40の外周部の基端側の部分には、円板状のフランジ60がサポート管40の半径方向外方に向って突出するように形成されている。さらにサポート管40の基端部は、T字管61の第1の開口部61aに螺着されている。T字管61は、第1の開口部61aと反対側にある第2の開口部61bに封止栓62が螺着されて封止され、もう一つの開口部である第3の開口部61cが管継手63を介して送風機34と繋がっている。
【0039】
封止栓62は、円筒状の螺着部材62aと封止板62bを有する。螺着部材62aの先端部は、第2の開口部61bに螺着され、螺着部材62aの他端部には、螺着部材62aの基端側の開口を塞ぐように封止板62bが固着されている。各リード線51,54,55及び各熱電対53,56は、サポート管40内を通って封止板62bまで引かれており、更に封止板62bに形成される貫通孔を通して外方に取り出されている。そして、リード線51,54,55は、電気化学計測器32に電気的に接続され、各熱電対53,56は、流量調整器35に電気的に接続されている。なお、各リード線51,54,55は、互いが短絡しないように碍子製のスリーブ管57に夫々挿入されてサポート管40内を通されている。
【0040】
電気化学計測器32は、公知の電気化学インピーダンス法により試料電極45の腐食速度を計測する装置である。具体的には、電気化学計測器32は、周波数応答アナライザーにより試料電極45及び対極47に様々な周波数の微弱な交流信号を流して周波数毎の参照電極に流れる電流を検出し、試料電極45と参照電極46との間のインピーダンスの周波数応答特性を求める。このインピーダンスの周波数応答特性は、低周波側(f−0)及び高周波側(f+∞)で共に収束し、これらの収束値の差が試料電極45の界面の分極抵抗(インピーダンス)に相当する。電気化学計測器32は、前述のような関係から前述のインピーダンスの周波数応答特性から試料電極45の界面の分極抵抗(インピーダンス)を求める。
【0041】
また、腐食速度と試料電極45の界面の分極抵抗とは、前記分極抵抗の逆数に依存して腐食速度が減少するという相関関係を有している。端末機33では、予め求められた試料電極45と同じ材料から成る部材の分極抵抗と腐食速度との相関関係が予め記憶されており、この相関関係と電気化学測定器32で求めた分極抵抗とに基づき試料電極45の腐食速度が算出される。腐食速度は、所定時間毎に端末機33で演算される。端末機33は、演算されたこれら腐食速度を蓄積し、蓄積された腐食速度を積算することで試料電極45の腐食量を検出する。このように試料電極45の腐食速度及び腐食量を検出することで、水管23若しくは過熱器管27の腐食速度及び腐食量が推定できる。
【0042】
送風機34は、サポート管40の冷却通路40aに冷却空気を送るためのものであり、送風機34には、送風機34からの流量を制御するための流量調整器35が設けられている。流量調整器35は、前述の通り、熱電対53,56に接続されており、熱電対53からの出力に応じて、試料電極45の温度が予め定められた温度、本実施形態では水管23の温度である300℃になるように、送風機34からの冷却空気の流量を制御する。これにより、試料電極45を前記水管23と略同じ状態にすることができ、より正確な水管23の腐食状態を推定することできる。また送風機34と管継手63との間には、空気量を調整するためのバルブ36が設けられている。
【0043】
腐食モニタリング装置30は、流量調整器35が熱電対53からの出力に応じて送風機34の流量を調整して試料電極45の温度を300℃に調整しつつ、電気化学計測器32と端末機33により試料電極45の腐食速度を所定時間毎に検出する。検出された腐食速度は端末機33にて蓄積され、蓄積された腐食速度に基づいて試料電極45の腐食量が演算される。このように検出された試料電極45の腐食速度及び腐食量により、水管23の腐食速度及び腐食量を推定することができる。
【0044】
計測中、腐食モニタリングセンサ31には、サポート管40の外周面上部に第1放射室20を舞う焼却灰が降積もり堆積する。これにより、試料電極45、参照電極46及び対極47が焼却灰により覆われることになる。試料電極45、参照電極46及び対極47を覆う焼却灰は、腐食モニタリングセンサ31配置される位置が第1放射室20と主燃焼室14に近いため充分に冷却されず、温度が充分に下がらない。また、サポート管40上に堆積する焼却灰の内部では、特に試料電極45、参照電極46及び対極47に面する部分では、それを覆うように焼却灰が堆積しているため熱が逃げにくく、特に温度が下がらない。そのため試料電極45、参照電極46及び対極47が高温になりやすい。
【0045】
そして、従来の腐食モニタリングセンサ1では、焼却灰が堆積する部分にサポート管40等の金属部品よりも断熱性がかなり高いセラミック基板3があり、更に熱が逃げにくい構成となっている。そのため、第1放射室20に腐食モニタリングセンサ1を設けた場合、試料電極4、参照電極5及び対極6が高温となり、700℃以下にすることが難しい。
【0046】
これに対して、本実施形態の腐食モニタリングセンサ31では、スリーブ42,43,44がセラミック製のため断熱性を有するものの、それらの間に熱伝導性のあるサポート管40の金属材が介在している。そのため、焼却灰の熱が、それらの間を通して冷却通路40aの冷却空気に逃げることができ、サポート管40上の焼却灰を冷却することができる。焼却灰を冷却することで、試料電極45、参照電極46及び対極47の周辺温度の上昇、具体的にはスリーブ42,43,44の温度上昇を抑えることができる。このようにスリーブ42,43,44の温度上昇を抑えることにより、試料電極45及びその周辺状態を、第1放射室20のように主燃焼室14に近い室温が高い場所に配置された水管23と同じ状態にすることができ、前記水管23の腐食状態をより正確に推定することができる。
【0047】
なお、互いに隣接するスリーブ42,43,44の軸線の間隔は、電気化学インピーダンス法で得られる分極抵抗が良好な値を示し、且つ焼却灰の冷却機能を果たす程度の間隔であり、例えば、20mm〜30mmである。またスリーブ42,43,44の厚みは、例えば2mm〜3mmである。ただし、これら間隔及び厚みは、好ましい一例を示したに過ぎず、この範囲に限定するものではない。
【0048】
また、サポート管40の内壁にフィン41を備えることにより、サポート管40の冷却機能が向上している。これにより、更に焼却灰の熱を冷却空気に逃がすことができ、焼却灰の冷却機能が更に向上する。送風機の流量を調整することで試料電極45の温度が調整できるので、焼却灰の冷却機能が向上することで、試料電極45の温度の調整可能な範囲が広がり、種々の環境に用いることができる。
【0049】
また、腐食モニタリングセンサ31は、サポート管40の先端側の部分、具体的にはスリーブ42,43,44が設けられている部分にしかフィン41を形成しないことで、冷却通路40aの流路抵抗を小さくし、且つサポート管40の先端から中間部分以外の部分で冷却空気が熱吸収をできるだけしないようにさせている。これにより、冷却空気の流速を落とすことがなく、且つサポート管40の先端側において充分な吸熱が可能となり、焼却灰の冷却機能が更に向上する。これにより、試料電極45の温度の調整可能な範囲が広がる。
【0050】
本実施形態では、電極45,46,47毎にスリーブ42,43,44が設けられているが、参照電極46及び対極47は絶縁性を有するセラミック基板に設け、このセラミック基板を第1のスリーブ42と間隔をあけてサポート管40の外周部に埋設するような構成であってもよい。このような構成であれば、第1のスリーブ42とセラミック基板との間から堆積する焼却灰の熱を逃がすことができ、試料電極45近傍の焼却灰の温度を下げることができ、試料電極の温度上昇を抑えることができる。
【0051】
本実施形態では、設けられるフィン41の枚数が8枚であるが、8枚は最も好ましい枚数であり、7枚以下及び9枚以上であってもサポート管40の冷却機能を向上させることができる。従って、フィン41の枚数を8枚に限定するのではない。また、本実施形態では、サポート管40に形成される冷却通路40aは、1つであるが、2つ以上であってもよく、冷却通路40aに流すものは、冷却空気に限定されず、冷却気体及び冷却液であってもよい。冷却液の場合、本実施形態の冷却空気のように第1放射室20に排出されるものでなく、冷却液を循環させることが好ましい。
【0052】
本実施形態では、水管23の腐食状態を検出するために腐食モニタリングセンサ31が第1放射室20に配置されているけれども、過熱器25の過熱器管27の腐食状態を検出するために、第2放射室21又は冷却室22に配置してもよく、同様の作用効果を奏する。
【0053】
本実施形態では、ごみ焼却炉10で腐食モニタリング装置30を使用する場合について説明したが、使用箇所をごみ焼却炉10に限定するものではない。例えば、ソーダ回収ボイラ及び石炭焚ボイラ等、高温用溶融塩を含む堆積物が金属部品に堆積して金属部品を腐食させるような環境を有するプラントであれば、腐食モニタリング装置30は使用でき、適用することできる。またごみ焼却炉10の構成も、単に一例を示したに過ぎず、前述の構成と異なる構成であっても適用することができる。さらに、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、又は削除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ごみ焼却炉の構成の概略を示す概略図である。
【図2】腐食モニタリング装置の構成を概略的に示す概略構成図である。
【図3】図2の腐食モニタリングセンサの先端を紙面に向って右方から見た右側面図である。
【図4】図2に示す腐食モニタリングセンサの先端側領域Xを拡大した断面図である。
【図5】(a)〜(c)は、腐食モニタリングセンサを図4の切断線A−A,B−B及びC−Cで夫々切断して見たときの断面図である。
【図6】従来の技術の腐食モニタリング装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
30 モニタリング装置
31 腐食モニタリングセンサ
32 電気化学計測器
33 端末機
34 送風機
35 流量調整器
40 サポート管
40a 冷却通路
41 フィン
42 第1のスリーブ
43 第2のスリーブ
44 第3のスリーブ
45 試料電極
46 参照電極
47 対極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が流れる金属製のサポート管と、電気化学計測用の試料電極、参照電極及び対極とを備える腐食モニタリングセンサであって、
前記試料電極、前記参照電極及び前記対極が夫々取り付けられて前記サポート管に埋設され、前記試料電極、前記参照電極及び前記対極と前記サポート管とを絶縁する3つの絶縁構造を備え、
前記3つの絶縁構造は、互いに間隔をあけて配置されていることを特徴とする腐食モニタリングセンサ。
【請求項2】
前記各絶縁構造は、絶縁スリーブであることを特徴とする請求項1に記載の腐食モニタリングセンサ。
【請求項3】
前記絶縁スリーブは、前記サポート管に螺着することで埋設されるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の腐食モニタリングセンサ。
【請求項4】
前記サポート管は、その内壁に1又は複数のフィンを有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の腐食モニタリングセンサ。
【請求項5】
前記各フィンは、前記3つの絶縁スリーブが設けられる前記サポート管の先端側領域だけに設けられていることを特徴とする請求項4に記載の腐食モリタニングセンサ。
【請求項6】
請求項1乃至5に何れか1つに記載の腐食モニタリングセンサと、
前記サポート管内に冷媒を送る送風機と、
前記試料電極と熱電対により接続され、前記試料電極が予め定められた目標温度になるように前記熱電対からの出力に応じて前記送風機の流量を調整する流量調整器と、
前記試料電極、前記参照電極及び前記対極と電気的に接続され、電気化学インピーダンス法により前記試料電極の腐食状態を検出する腐食状態検出器とを備えることを特徴とする腐食モニタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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