説明

腐食モニタリングセンサ

【課題】再利用可能でモニタリング期間中における取得データの補正を可能とする腐食モニタリングセンサを提供する。
【解決手段】腐食環境にある被評価金属と同一材料で形成される試料電極21と、試料電極21と対をなす対極22と、試料電極21の基準電位となる参照電極23とが支持管11に設けられた腐食モニタリングセンサ10であって、試料電極21と同一材料で形成された腐食試験片31が支持管11に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食環境にある被評価金属の腐食状態を測定するための腐食モニタリングセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴミ焼却炉では、ゴミの燃焼によって生じる排熱をエネルギー源として有効利用すべく、燃料ガスをボイラに導き、当該ボイラで生成される高圧蒸気により蒸気タービンを作動させて発電を行うものがある。ゴミ焼却炉で発生する焼却灰には高温溶融塩などが含まれているため、ボイラの伝熱管に焼却灰が付着すると、金属からなる伝熱管は腐食しやすくなる。このような腐食環境にある伝熱管(被評価金属)の腐食状態を測定するための装置として、電気化学計測を利用した腐食モニタリングセンサが提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この腐食モニタリングセンサは、金属からなる支持管の管壁の一部に、試料電極、対極及び参照電極が絶縁基板を介して取り付けられたものである。このセンサによれば、試料電極と対極との間に外部から交流電圧を印加した状態で、試料電極と参照電極との間の電流を計測することにより、試料電極の界面における分極抵抗(インピーダンス)が求められる。そして、この分極抵抗は腐食速度と所定の相関関係にあることが分かっているため、その相関関係に基づいて分極抵抗から試料電極の腐食速度を導き出すことができる。
【特許文献1】特開2005−91281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、腐食モニタリングセンサにより取得されるデータは、ゴミ焼却炉の運転状況やゴミの性状により、当初想定した腐食量からズレが生じることがある。そこで、その腐食モニタリングセンサをボイラから取り外して試料電極の腐食量(例えば、減肉量や減重量など)を実測し、取り外し時におけるデータがその実測値に一致するように蓄積されたデータを補正する作業を行っている。
【0005】
当該補正を行う場合には、支持管を切断して試料電極を取り出しており、その後にセンサを再利用することはできず、補正結果をその後の計測に有効に活用することができない。また、補正を行うまでの間は誤差を含む可能性のあるデータに基づいて腐食状態の監視を行わなければならない。
【0006】
そこで本発明は、モニタリング期間中において取得データの補正を可能とする腐食モニタリングセンサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係る腐食モニタリングセンサは、試料電極と対極と参照電極とが支持部材に設けられた腐食モニタリングセンサであって、前記試料電極と同一材料で形成された腐食試験片が前記支持部材に設けられていることを特徴とする。
【0008】
前記構成によれば、腐食試験片を取り外してその腐食量を実測すれば、それと同一材料である試料電極の腐食量を実測したことと同じになるため、試料電極を支持部材から取り外すことなく試料電極の実際の腐食量を把握することが可能となる。これにより、腐食モニタリングセンサにより取得されるデータを補正すべく腐食試験片を取り外した後も、腐食モニタリングセンサによる計測を再開継続することが可能となり、モニタリング期間中にセンサからの取得データの補正を適宜行うことができる。したがって、補正結果をその後の計測に反映させることができ、精度良い計測を実現することが可能となる。また、腐食試験片を取替え可能な構成とすることにより、計測の再開後においても、当該腐食試験片もしくは新しい腐食試験片を腐食モニタリングセンサに取り付けることにより、更なる補正に備えることができる。
【0009】
前記支持部材は、金属からなり、前記腐食試験片、前記試料電極、前記対極及び前記参照電極は、絶縁部材を介して前記支持部材に取り付けられていてもよい。
【0010】
前記構成によれば、電極ではない腐食試験片も絶縁部材を介して支持部材に取り付けられており、腐食試験片の置かれる環境(例えば、絶縁部材を介して伝達される熱)が試料電極のそれと同様となるため、腐食試験片と試料電極との腐食状態を良好に一致させることができる。
【0011】
前記腐食試験片は、好ましくは前記試料電極に隣接して配置されているとよい。
【0012】
前記構成によれば、腐食試験片が試料電極に隣接しており、腐食試験片の置かれる環境(例えば、雰囲気温度)が試料電極のそれと同様となるため、腐食試験片と試料電極との腐食状態を良好に一致させることができる。なお、前記腐食試験片は、前記試料電極に離れて配置されていてもよい。
【0013】
前記支持部材は、管状であり、前記腐食試験片は、前記支持部材の外周面における周方向の角度位置が前記試料電極と同じになるように、前記支持部材の長手方向に沿って前記試料電極と並んで配置されていてもよい。
【0014】
前記構成によれば、支持部材が管状であり、その外周面への空間浮遊物(例えば、焼却灰)の付着状況が周方向の位置によって異なることとなるが、腐食試験片は試料電極と周方向の同じ角度位置に取り付けられているため、腐食試験片に対する空間浮遊物の付着状況が試料電極のそれと同様となり、腐食試験片と試料電極との腐食状態を良好に一致させることができる。
【0015】
前記腐食試験片には、アダプタ収容部が形成されており、前記アダプタ収容部には、熱電対を保持する熱電対アダプタが着脱可能に収容されていてもよい。
【0016】
前記構成によれば、アダプタ収容部に対して熱電対アダプタを着脱させるだけで、腐食試験片に対して熱電対を容易に着脱させることができ、腐食モニタリングセンサの再利用を容易に行うことができる。
【0017】
前記熱電対アダプタは、前記熱電対の先端部を露出させた状態で前記熱電対を保持しており、前記熱電対の前記先端部を前記アダプタ収容部の内壁面に接触させた状態で位置決めされていてもよい。
【0018】
前記構成によれば、熱電対アダプタがアダプタ収容部に位置決めされた状態で、熱電対の先端部が腐食試験片に接触するので、熱電対と腐食試験片との接触が安定する。
【0019】
前記腐食試験片は、円柱部と、前記円柱部の先端にフランジ状に設けられた試験板部とを有し、前記アダプタ収容部は、前記円柱部の前記試験板部と反対側の端面に凹設されており、前記円柱部の前記試験板部と反対側の端部を露出させた状態でスリーブ状の絶縁部材が前記円柱部に外嵌されており、前記腐食試験片の前記端部には、前記円柱部の軸線方向と直交する方向に貫通するピン挿通孔が形成され、かつ、前記熱電対アダプタには、前記ピン挿通孔と連通するピン挿通孔が形成されており、前記腐食試験片の前記端部の外周面には、前記ピン挿通孔よりも前記試験板部から離反する位置に係止溝部が形成されており、前記腐食試験片及び前記熱電対アダプタの前記ピン挿通孔にピンが挿通され、前記係止溝部にスナップリングが嵌められ、前記ピンの前記円柱部の外部に露出した両端部と前記スナップリングとの間に弾性部材が介設されていてもよい。
【0020】
前記構成によれば、スナップリングで支持された弾性部材がピンの両端部に押し付けられることにより、ピン挿通孔からピンが離脱することが防がれ、熱電対アダプタをアダプタ収容部から離脱しないように位置決めすることができる。さらに、円柱部に外嵌された絶縁部材は、腐食試験片の試験板部とピンの両端部との間に配置されるため、絶縁部材を腐食試験片から離脱しないように位置決めすることもできる。
【発明の効果】
【0021】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、腐食モニタリングセンサにより取得されるデータを補正すべく試料電極の実際の腐食量を把握した後も、そのセンサによる計測を継続することが可能となり、モニタリング期間中にセンサからの取得データの補正を適宜行うことができる。したがって、補正結果をその後の計測に反映させることができ、精度良い計測を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0023】
図1は本発明の実施形態に係る腐食モニタリングセンサを適用するゴミ焼却施設1を示す部分断面斜視図である。図1に示すように、ゴミ焼却施設1は、ゴミ投入ホッパ2、ゴミ焼却炉3、ボイラ本体4、水管5及び過熱器管6などから構成されている。ゴミ焼却炉3でのゴミDの燃焼により排出される高温の燃焼ガスGは、ボイラ本体4に導かれ、一次加熱用の水管5内を流れる水を加熱して蒸気を発生させる。この蒸気は二次加熱用の過熱器管6内を流れ、水管5を加熱した後の燃焼ガスG’がさらに過熱器管6内の蒸気を加熱し、その高温高圧の蒸気が発電用蒸気タービン7に供給される。
【0024】
ボイラ本体4の内部の上流側には、ドラム8に接続された伝熱管である多数の水管5が配設されている。燃焼ガスGには、ゴミDに含まれる塩化ビニル等が燃焼することにより高温溶融塩などの腐食成分が存在しており、金属からなる水管5はこの腐食性を有する燃焼ガスGに高温環境下で晒されることになる。そこで、この水管5などの腐食速度を推定評価するために、ボイラ本体4には以下に説明する腐食モニタリングセンサ10が取り付けられる。
【0025】
図2は本発明の実施形態に係る腐食モニタリングセンサ10を用いた腐食モニタリング装置9の全体構成を示す概略図である。図2に示すように、腐食モニタリング装置9は、腐食モニタリングセンサ10、電気化学測定器15、パソコン16、ブロワ17及び流量調節器18を備えている。腐食モニタリングセンサ10は、先端部に検出部12を有する支持管11(支持部材)を有している。なお、検出部12は、後で詳述する試料電極21、対極22、参照電極23及び腐食試験片31(図3参照)を有するものである。
【0026】
支持管11はボイラ本体4の壁に形成された開口部4aを通してボイラ本体4内部に挿入され、支持管11に設けられたフランジ13をボイラ本体4の壁に固定することで開口部4aが閉鎖される。支持管11のボイラ外部に突出した部分には、パソコン16に接続された電気化学測定器15、ブロワ17及び流量調節器18が接続されている。電気化学測定器15及びパソコン16は、検出部12で検出された信号に基づいて水管5(図1参照)の腐食速度を推定する。ブロワ17は、支持管11内に冷却空気を送風することにより検出部12の温度管理を行う。流量調節器18は、検出部12の温度を水管5の温度に近似させるためにブロワ17の流量制御を行う。
【0027】
図3は図2に示す腐食モニタリングセンサ10の要部断面図である。図4は図2に示す腐食モニタリングセンサ10の要部平面図である。図3及び4に示すように、腐食モニタリングセンサ10の支持管11は、例えばステンレス鋼(例えば、SUS310S)からなり、その先端には冷気流出孔11fを有する閉鎖壁11eが設けられている。なお、支持管11は、ニッケル基合金などの他の耐食性金属で形成してもよい。また、支持管11は、閉鎖壁11eを設けずに、その先端がボイラ本体4内に開放していてもよい。支持管11の先端部の外周壁には、4つの取付穴11a〜11dが支持管11の長手方向に沿って1列に形成されており、そのうち3つの取付穴11a〜11cには、試料電極21、参照電極23及び対極22がそれぞれセラミック製の略円筒状の絶縁スリーブ25〜27(絶縁部材)を介して取り付けられている。
【0028】
試料電極21は、ボイラ本体4(図1参照)内の被評価金属である水管5と同一材料である炭素鋼(例えば、STB340)からなり、上端にフランジ状の円板部を有する円柱形状に形成されている。対極22は、試料電極21と対をなす白金からなるものであり、その上端にフランジ状の円板部を有する円柱形状に形成されている。参照電極23は、ドーム状のセラミックであるムライト製タンマン管に溶媒となる電解質(NaCl、KClなどに1/10モル比のAgClを入れたもの)を充填し、銀線を挿入したものである。この参照電極23は、試料電極21と対極22との間の中間位置に設けられており、試料電極21の基準電位となる。
【0029】
絶縁スリーブ25〜27は、支持管11に対して螺着されていると共に接着剤によっても固定されている。試料電極21及び対極22は、絶縁スリーブ25,26に対して点溶接により固定されている。参照電極23は、絶縁スリーブ27に対して接着剤により固定されている。試料電極21、対極22及び参照電極23は、支持管11の内部空間を通した電気化学測定用のリード線41〜43を介して電気化学測定器15(図1参照)に電気的に接続されている。また、試料電極21、後述する腐食試験片31は、支持管11の内部空間を通した熱電対51〜53を介して流量調節器18(図1参照)に接続されている。
【0030】
支持管11の最も先端側の取付穴11dには、腐食試験片ユニット30が取り付けられている。腐食試験片ユニット30は、試料電極21に隣接して参照電極23の反対側に配置されている。また、腐食試験片ユニット30は、試料電極21、対極22及び参照電極23とともに、支持管11の長手方向に沿って上端に並設されており、支持管11の外周面における周方向の角度位置が試料電極21と同じになっている。このような構成により、腐食試験片ユニット30の腐食試験片31のおかれる環境(例えば、雰囲気温度、焼却灰の付着状況など)が試料電極21のそれと同様となるため、腐食試験片31の腐食状態と試料電極21の腐食状態とが良好に一致することとなる。
【0031】
図5は図3のV−V線断面図である。図6は図3に示す腐食モニタリングセンサ10に設けられた腐食試験片ユニット30の分解断面図である。図5及び6に示すように、腐食試験片ユニット30は、腐食試験片31、絶縁スリーブ32、熱電対アダプタ33、熱電対52、ピン34、皿バネ35(弾性部材)及びスナップリング36を備えている。腐食試験片31は、試料電極21と同一材料で形成されている。腐食試験片31は、円柱部31aと、円柱部31aの上端にフランジ状に設けられた試験板部31bとを有している。試験板部31bは外部、即ち、ボイラ本体4内部に露出する部分であり、腐食試験片31の外部に露出した部分の面積は、試料電極21の外部に露出した部分の面積と同一である。
【0032】
円柱部31aには、試験板部31bと反対側の下端面にアダプタ収容部31cが凹設されている。アダプタ収容部31cは、その上端面が上方に向けて先細った形状となっており、その上端面の頂点には熱電対接触部31dがさらに凹設されている。円柱部31aには、その軸線方向に直交する方向(水平方向)に貫通する直線状のピン挿通孔31eが形成されている。円柱部31aの下部の外周面には、ピン挿通孔31eよりも下方に環状の係止溝部31fが形成されている。
【0033】
腐食試験片31に設ける絶縁スリーブ32は、試料電極21に設ける絶縁スリーブ25と同一形状・同一サイズである。具体的には、絶縁スリーブ32は、円筒部32aと、円筒部32aの先端(上端)に設けられたフランジ部32bとを有している。円筒部32aの外周面には、取付穴11dに螺着するための雄ネジ部32cが刻設されている。絶縁スリーブ32の内周面には、上方側の内径が下方側の内径よりも大きくなるような段差部32dが形成されている。フランジ部32bの側面には、対向する一対の切欠部32e(図4及び5参照)が形成されている。この切欠部32eは、外面が円周面である支持管11の長手方向に直交する方向に対向して配置されているため、切欠部32eは支持管11の外周面よりも若干上方に突出するように配置されている(図5参照)。
【0034】
熱電対アダプタ33は、腐食試験片31のアダプタ収容部31cに収まる上端側が先細ったペンシル形状であり、腐食試験片31と同一材料からなる。熱電対アダプタ33には、その軸線方向(上下方向)に沿って貫通する貫通孔33aが形成されている。その貫通孔33aには熱電対52が挿通しており、熱電対52はその先端部を露出させた状態で熱電対アダプタ33に取り付けられていて、熱電対52の先端は熱電対接触部31dに所定の力をもって圧接されている。また、熱電対アダプタ33には、腐食試験片31のピン挿通孔31eと連通する直線状のピン挿通孔33bがアダプタ収容部31cを避ける位置に形成されている。
【0035】
ピン34は、ピン挿通孔31e,33bに挿通可能な金属棒であり、その全長は支持管11の取付穴11dの内径よりも小さい。スナップリング36は、平面視馬蹄形状であり、腐食試験片31の係止溝部31fに嵌められる。皿バネ35は、円環状であり、図6中の上下方向に向けた弾発力を有している。また、皿バネ35及びスナップリング36の外径は、支持管11の取付穴11dの内径よりも小さい。
【0036】
図7は図6に示す腐食試験片ユニット30の組立後の断面図である。図7に示すように、組立後の腐食試験片ユニット30では、腐食試験片31の円柱部31aの下端部を露出させた状態で絶縁スリーブ32が円柱部31aに外嵌されている。このように電極ではない腐食試験片31も絶縁スリーブ32を介して支持管11に取り付けられることで、腐食試験片31のおかれる環境(例えば、絶縁スリーブ32を介して伝達される熱)が試料電極21のそれと同様となり、腐食試験片31の腐食状態と試料電極21の腐食状態とが良好に一致する。
【0037】
腐食試験片31に絶縁スリーブ32が外嵌された状態では、試験板部31bが段差部32dに上方から載置されているとともに、ピン挿通孔31eが絶縁スリーブ32の下方で露出した状態となっている。また、熱電対アダプタ33は、アダプタ収容部31cに下方から着脱可能に収容されている。熱電対アダプタ33の先端に露出した熱電対52の先端部は、腐食試験片31の内壁面である熱電対接触部31dに接触している。
【0038】
腐食試験片31のピン挿通孔31eと熱電対アダプタ33のピン挿通孔33bとは、互いに連通しており、その連通したピン挿通孔31e,33bにピン34が挿通されている。これにより、絶縁スリーブ32は、ピン34と試験板部31bとにより位置決め保持されているとともに、熱電対アダプタ33がアダプタ収容部31c内に位置決め保持されている。円柱部31aの外部に露出したピン34の両端部の下方には、皿バネ35が円柱部31aを外嵌するように配置されている。そして、円柱部31aの係止溝部31fにはスナップリング36が嵌められており、そのスナップリング36が皿バネ35を下方から支持している。これにより、皿バネ35がピン34の両端部を上方に向けて押し付けることとなり、ピン34がピン挿通孔31e,33bから抜けることが防止されている。
【0039】
次に、腐食モニタリング装置9の機能について説明する。図2及び3に示すように、腐食モニタリング装置9では、流量調節器18が、熱電対51を用いて腐食モニタリングセンサ10の試料電極21の温度を検出し、試料電極21の温度が水管5の温度と略同一となるようにブロワ17の送風量を制御している。また、流量調節器18は、熱電対52を用いて腐食試験片31の温度を検出し、腐食試験片31の温度が試料電極21の温度と略同一になっているか確認している。なお、流量調節器18は、参考用に支持管11の温度も熱電対53を用いて検出している。
【0040】
試料電極21及び腐食試験片31は、水管5と同様にボイラ本体4内に配置されているため、焼却灰に含まれる高温溶融塩などが付着して腐食が進行する。この状態で、電気化学測定器15は、試料電極21の腐食速度を求めるために公知の交流インピーダンス法を用いた計測を行う。具体的には、電気化学測定器15は、試料電極21及び対極22に周波数の異なる微小交流電圧を印加した状態で、試料電極21と参照電極23との間に流れる電流を計測することにより、試料電極21の界面における分極抵抗を算出する。
【0041】
腐食速度は、この分極抵抗が減少するほど増加するという相関関係を有している。パソコン16には、試料電極21と同じ材料からなる部材の分極抵抗と腐食速度との相関関係が予め記憶されており、その相関関係を用いることで、算出された分極抵抗から試料電極21の腐食速度が求められる。パソコン16は、その求められた腐食速度データを順次保存するとともに、保存された腐食速度データを積算することで求められる試料電極21の腐食量データを保存する。このように試料電極21の腐食速度及び腐食量を求めることで、試料電極21と同一環境下にある水管5の腐食速度及び腐食量が推定できる。また、これらのデータは、交流インピーダンス法による計測誤差が含まれている可能性があるため、ある程度の期間が経過して腐食速度及び腐食量のデータが蓄積されると、以下のように腐食試験片31の実際の腐食量を実測し、その実測値に基づいてデータの補正を行う。
【0042】
図8は図3に示す腐食モニタリングセンサ10から腐食試験片ユニット30を取り外した状態を示す要部断面図である。図8に示すように、腐食試験片31の腐食量を実測する際には、腐食モニタリングセンサ10をボイラ本体4から取り外し、支持管11の取付穴11dから腐食試験片ユニット30を取り出す。具体的には、絶縁スリーブ32の切欠部32e(図4及び5参照)を工具で挟んでネジ回すことにより、腐食試験片ユニット30を取付穴11dから上方に取り出す。次いで、スナップリング36及び皿バネ35を取り外したうえでピン34をピン挿通孔31e,33bから抜き出すことで、熱電対アダプタ33及び絶縁スリーブ32を腐食試験片31から取り外す(図6参照)。
【0043】
次いで、腐食試験片31の試験板部31bの表面に付着したスケールを薬剤で化学的に除去し、腐食試験片31の腐食量(例えば、減肉量や減重量)を実測する。そして、腐食試験片ユニット30を支持管11から取り外す直前における腐食量データがその実測値に一致するように、パソコン16内に順次保存された腐食量データをシフト補正する。そして、腐食試験片31を新しいものに交換したうえで腐食試験片ユニット30を組み立てなおして支持管11の取付穴11dに取り付け、その腐食モニタリングセンサ10を再びボイラ本体4に取り付けて計測を継続する。
【0044】
以上に説明した構成によれば、腐食試験片31を取り外してその腐食量を実測すれば、それと同一材料である試料電極21の腐食量を実測したことと同じになるため、試料電極21を支持管11から取り外すことなく試料電極21の実際の腐食量を把握することが可能となる。これにより、腐食モニタリングセンサにより取得されるデータを補正すべく腐食試験片を取り外した後も、腐食モニタリングセンサによる計測を再開継続することが可能となり、モニタリング期間中にセンサからの取得データの補正を適宜行うことができる。したがって、補正結果をその後の計測に反映させることができ、精度良い計測を実現することが可能となる。また、腐食試験片31のアダプタ収容部31cに対して熱電対アダプタ33を着脱させる構成としているので、腐食試験片31に対して熱電対52を容易に着脱させることができ、腐食モニタリングセンサ10の再利用を容易に行うことができる。
【0045】
なお、本実施形態では、電極21〜23及び腐食試験片31の夫々に絶縁スリーブ25〜27,32が設けられているが、1つの絶縁部材で電極21〜23及び腐食試験片31を互いに絶縁する構成としてもよい。また、本実施形態では、支持管11は管状であるが、電極21〜23及び腐食試験片31が取り付けられる支持部材は管状に限られない。また、本実施形態では、腐食モニタリング装置9をゴミ焼却施設1に適用する例について説明したが、腐食環境にある被評価金属が存在する施設(例えば、ソーダ回収ボイラや石炭焚ボイラ等)であれば、腐食モニタリング装置9を適用することができる。また、本実施形態では、被評価金属を水管5としているが、過熱器管6を被評価金属としてもよい。また、本実施形態では、絶縁部材として略円筒状の絶縁スリーブ25〜27,32を用いているが、他の形状の絶縁部材を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明に係る腐食モニタリングセンサは、モニタリング期間中にセンサからの取得データの補正を適宜行うことができる。したがって、補正結果をその後の計測に反映させることができ、精度良い計測を実現することが可能となる。
る優れた効果を有し、腐食環境にある被評価金属の腐食状態を測定するために広く適用すると有益である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係る腐食モニタリングセンサを適用するゴミ焼却施設を示す部分断面斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る腐食モニタリングセンサを用いた腐食モニタリング装置の全体構成を示す概略図である。
【図3】図2に示す腐食モニタリングセンサの要部断面図である。
【図4】図2に示す腐食モニタリングセンサの要部平面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】図3に示す腐食モニタリングセンサに設けられた腐食試験片ユニットの分解断面図である。
【図7】図6に示す腐食試験片ユニットの組立後の断面図である。
【図8】図3に示す腐食モニタリングセンサから腐食試験片ユニットを取り外した状態を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0048】
10 腐食モニタリングセンサ
11 支持管(支持部材)
15 電気化学測定器
21 試料電極
22 対極
23 参照電極
25〜27,32 絶縁スリーブ(絶縁部材)
31 腐食試験片
31a 円柱部
31b 試験板部
31c アダプタ収容部
31e ピン挿通孔
31f 係止溝部
33 熱電対アダプタ
33b ピン挿通孔
34 ピン
35 皿バネ(弾性部材)
36 スナップリング
51〜53 熱電対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料電極と対極と参照電極とが支持部材に設けられた腐食モニタリングセンサであって、
前記試料電極と同一材料で形成された腐食試験片が前記支持部材に設けられていることを特徴とする腐食モニタリングセンサ。
【請求項2】
前記支持部材は、金属からなり、
前記腐食試験片、前記試料電極、前記対極及び前記参照電極は、絶縁部材を介して前記支持部材に取り付けられている請求項1に記載の腐食モニタリングセンサ。
【請求項3】
前記腐食試験片は、前記試料電極に隣接して配置されている請求項1又は2に記載の腐食モニタリングセンサ。
【請求項4】
前記支持部材は、管状であり、
前記腐食試験片は、前記支持部材の外周面における周方向の角度位置が前記試料電極と同じになるように、前記支持部材の長手方向に沿って前記試料電極と並んで配置されている請求項1乃至3のいずれかに記載の腐食モニタリングセンサ。
【請求項5】
前記腐食試験片には、アダプタ収容部が形成されており、
前記アダプタ収容部には、熱電対を保持する熱電対アダプタが着脱可能に収容されている請求項1乃至4のいずれかに記載の腐食モニタリングセンサ。
【請求項6】
前記熱電対アダプタは、前記熱電対の先端部を露出させた状態で前記熱電対を保持しており、前記熱電対の前記先端部を前記アダプタ収容部の内壁面に接触させた状態で位置決めされている請求項5に記載の腐食モニタリングセンサ。
【請求項7】
前記腐食試験片は、円柱部と、前記円柱部の先端にフランジ状に設けられた試験板部とを有し、
前記アダプタ収容部は、前記円柱部の前記試験板部と反対側の端面に凹設されており、
前記円柱部の前記試験板部と反対側の端部を露出させた状態でスリーブ状の絶縁部材が前記円柱部に外嵌されており、
前記腐食試験片の前記端部には、前記円柱部の軸線方向と直交する方向に貫通するピン挿通孔が形成され、かつ、前記熱電対アダプタには、前記ピン挿通孔と連通するピン挿通孔が形成されており、
前記腐食試験片の前記端部の外周面には、前記ピン挿通孔よりも前記試験板部から離反する位置に係止溝部が形成されており、
前記腐食試験片及び前記熱電対アダプタの前記ピン挿通孔にピンが挿通され、前記係止溝部にスナップリングが嵌められ、前記ピンの前記円柱部の外部に露出した両端部と前記スナップリングとの間に弾性部材が介設されている請求項5又は6に記載の腐食モニタリングセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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