説明

腐食促進用簡易噴霧試験機

【課題】簡易な構成によって、木造建物に用いるアンカーボルト、羽子板金物等の接合金物に施される表面処理の耐久性を効率良く検証することのできる腐食促進用簡易噴霧試験機を提供する。
【解決手段】本発明の腐食促進用簡易噴霧試験機10は、木造建物に用いるアンカーボルト、羽子板金物等の接合金物に施される表面処理の耐久性を検証するための試験機であって、中空箱状の試験室11と、試験室11の上部に設けられた供試体保持部12と、試験室11の下部に設けられた噴霧液貯留部13と、噴霧液貯留部13に設けられた超音波噴霧器25とによって構成される。試験室11は、本体部14と噴霧発生部15とからなり、噴霧発生部15の側面15bには、第1吸気ファン16が取り付けられていて、この第1吸気ファン16の作用によって噴霧発生部15の内部を正圧にすることにより、噴霧発生部15で発生した噴霧を本体部14に送り込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食促進用簡易噴霧試験機に関し、特に、木造建物に用いるアンカーボルト、羽子板金物等の接合金物に施した表面処理の耐久性を検証する際に使用する腐食促進用簡易噴霧試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の表面やメッキ品の表面に施された表面処理の耐食性の評価試験として、JIS Z 2371に規定される塩水噴霧試験方法が知られており、このような試験方法に適合する塩水噴霧試験機も種々開発されている。塩水噴霧試験方法は、中性塩水噴霧試験、酢酸塩水噴霧試験、キャス試験等によって、金属材料や、メッキ、無機皮膜、若しくは有機皮膜を施した金属材料の耐食性について評価するものである。また塩水噴霧試験機は、噴霧装置、試験用塩溶液貯槽、試験片保持器、噴霧液採取容器、温度調節装置等を備えた噴霧室、塩水補給タンク、圧縮空気の供給器、空気飽和器、排気装置等によって構成される他、噴霧器は噴霧液を試験片に均等に噴霧する機能を備える等の種々の条件を満足する必要がある。このため、塩水噴霧試験方法に用いる塩水噴霧試験機は、比較的大型で且つ複雑な装置になると共に、コンプレッサー等の使用によって大きな振動や騒音を発生し易くなる。
【0003】
一方、例えば霧の深い沿海地帯や山岳地帯等の特定の使用条件下における材料の耐候性を評価する際に使用する、耐候性試験機の噴霧装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の耐候性試験機によれば、沿海地帯や山岳地帯等で屋外使用される電気機器は、機器内へ侵入した湿気等により、電気回路の絶縁破壊が発生して重大な事故に繋がる恐れがあるため、電解質液や雨水等により霧を発生させて疑似的に沿海地帯や山岳地帯の環境を再現して、電気機器の電気絶縁性について試験するものである。また特許文献1によれば、耐候性試験機の噴霧装置は、従来のシャワー装置や、ノズル部から噴き出す空気の吸引力でタンク内の液体を吸い上げて霧状にする構造の噴霧器では、得られる噴霧水滴の粒径が大きくて重く、噴霧気相の拡散が悪かったため、超音波振動子を用いて噴霧気相を発生させ、乾燥空気の流路から導入した乾燥空気をファンで送風することにより試験室内に噴霧を拡散させるようになっている。
【特許文献1】特開平6−117669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の耐候性試験機によれば、沿海地帯や山岳地帯等で屋外使用される電気機器の電気絶縁性について試験するものであり、超音波振動子の駆動部配線回路に設けられて異常電圧を回避するための保安器や、金属部、結線部、発火し易い弱電部等の帯電性を極力抑制するための機構等を備える必要があることから、やはり大型で且つ複雑な装置となる。
【0005】
これに対して、木造建物に用いるアンカーボルト、羽子板金物等の接合金物に施した表面処理の耐久性を検証するための試験を行う場合、これらの接合金物は、屋根裏や床下等の、熱や紫外線等の影響の少ない箇所において使用されるものであり、また実使用環境下における劣化因子として、湿度や、木材抽出液、有機酸等の塩水以外の液体の溶液成分が卓越することになるため、これらの卓越した劣化因子に絞って耐久性の試験を行うことにより、装置の大幅な簡素化と、実使用環境に即した効率の良い耐久性の試験を行うことができるものと考えらる。
【0006】
本発明は、簡易な構成によって、木造建物に用いるアンカーボルト、羽子板金物等の接合金物に施される表面処理の耐久性を効率良く検証することのできる腐食促進用簡易噴霧試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、木造建物に用いるアンカーボルト、羽子板金物等の接合金物に施される表面処理の耐久性を検証するための、腐食促進用簡易噴霧試験機であって、中空箱状の試験室と、該試験室の上部に設けられた供試体保持部と、該試験室の下部に設けられた噴霧液貯留部と、該噴霧液貯留部に設けられた超音波噴霧器とからなる腐食促進用簡易噴霧試験機を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
そして、本発明の腐食促進用簡易噴霧試験機では、前記試験室は、本体部と、該本体部の底面よりも下方に設けられて該本体部と連通する噴霧発生部とからなり、前記本体部の底面は前記噴霧発生部との連通口に向けて下方に傾斜すると共に、前記噴霧発生部の下部は前記噴霧液貯留部を構成して前記超音波噴霧器が設置されており、且つ前記噴霧発生部の側面には、外気を前記噴霧発生部に取り込む第1吸気ファンが取り付けられていて、該第1吸気ファンの作用によって前記噴霧発生部の内部を正圧にすることにより、前記噴霧発生部で発生した噴霧を前記本体部に送り込むようになっていることが好ましい。
【0009】
また、本発明の腐食促進用簡易噴霧試験機では、前記試験室は、本体部と、該本体部の底面よりも下方に設けられて該本体部と連通する噴霧発生部とからなり、前記本体部の底面は前記噴霧発生部との連通口に向けて下方に傾斜すると共に、前記噴霧発生部の下部は前記噴霧液貯留部を構成して前記超音波噴霧器が設置されており、且つ前記噴霧発生部を覆う部分の前記本体部の底面には噴霧送気ファンが取り付けられていて、該噴霧送気ファンの作用によって前記噴霧発生部で発生した噴霧を前記本体部に送り込むようになっていることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明の腐食促進用簡易噴霧試験機では、前記噴霧送気ファンの上方に噴霧拡散板が取り付けられていることが好ましい。
【0011】
さらにまた、本発明の腐食促進用簡易噴霧試験機では、前記連通口は、幅が2〜20mmのスリット開口であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の腐食促進用簡易噴霧試験機では、前記本体部の側面には、前記本体部に乾燥空気を送り込む第2吸気ファンが取り付けられていることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の腐食促進用簡易噴霧試験機では、前記第2吸気ファンの外側の外気流路に、ヒーター及び除湿部材が取り付けられていることが好ましい。
【0014】
さらにまた、本発明の腐食促進用簡易噴霧試験機では、前記第2吸気ファンの内側には、乾燥空気拡散板が取り付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の腐食促進用簡易噴霧試験機によれば、簡易な構成によって、木造建物に用いるアンカーボルト、羽子板金物等の接合金物に施される表面処理の耐久性を効率良く検証することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に示す本発明の好ましい第1実施形態に係る腐食促進用簡易噴霧試験機10は、木造建物に用いるアンカーボルト、羽子板金物等の接合金物に表面処理を施すことによって耐久性を向上させる際に、例えば屋根裏、床下、壁の内部等に取り付けて用いられるこれらの接合金物が、熱や紫外線等の影響の少ない実使用環境下で、例えば湿度や、木材抽出液、有機酸等の塩水以外の液体の溶液成分を劣化因子として、表面処理によってこれらの劣化因子に対してどの程度耐久性を向上させるかを検証するための試験装置として採用されたものである。
【0017】
すなわち、本第1実施形態の腐食促進用簡易噴霧試験機10は、木造建物に用いるアンカーボルト、羽子板金物等の接合金物に施される表面処理の耐久性を検証するための試験機であって、中空箱状の試験室11と、試験室11の上部に設けられた供試体保持部12と、試験室11の下部に設けられた噴霧液貯留部13と、噴霧液貯留部13に設けられた超音波噴霧器25とによって構成されている。
【0018】
また、本第1実施形態の腐食促進用簡易噴霧試験機10では、試験室11は、本体部14と、本体部14の底面14aよりも下方に設けられて本体部14と連通する噴霧発生部15とからなり、本体部14の底面14aは噴霧発生部15との連通口26に向けて下方に傾斜すると共に、噴霧発生部15の下部は噴霧液貯留部13を構成して超音波噴霧器25が設置されており、且つ噴霧発生部15の側面15bには、外気を噴霧発生部15に取り込む第1吸気ファン16が取り付けられていて、この第1吸気ファン16の作用によって噴霧発生部15の内部を正圧にすることにより、噴霧発生部15で発生した噴霧を本体部14に送り込むようになっている。
【0019】
さらに、本第1実施形態では、本体部14の側面14bには、本体部14に乾燥空気を送り込む第2吸気ファン17が取り付けられており、第2吸気ファン17の外側の外気流路18に、ヒーター19及び除湿部材20が取り付けられている。
【0020】
本第1実施形態では、試験室11は、噴霧液によって劣化し難い材質の、例えばガラス、合成樹脂、ステンレス板等からなる中空の箱体であって、全体として例えば縦、横、高さが50〜100cm程度の空間領域に納まる大きさを有している。試験室11は、例えば高濃度の木材有機酸によって供試体21の劣化を促進する場合には、ガラス等の劣化しにくい材質の材料を用いて形成することが好ましい。
【0021】
また、試験室11は、底面14aが傾斜面となった略6面体形状の本体部14と、本体部14の一つの側面14bと連続する側面15bを備えると共に、本体部14の底面14aから下方に突出して本体部14の片側に設けられた、本体部14よりも小さな略6面体形状の噴霧発生部15とからなる。
【0022】
本体部14は、噴霧を送り込むことにより内部の雰囲気を噴霧モードにして、内部に保持した供試体21の腐食や劣化を促進させる部分である。本第1実施形態では、本体部14の側面14bに乾燥空気を送り込む第2吸気ファン17が設けられていることにより、噴霧を送り込んで内部の雰囲気を乾燥モードにすることができると共に、噴霧モードと乾燥モードとを含めたサイクル試験を実施することができるようになっている。
【0023】
また、本体部14の天面14cには、開閉蓋が設けられていて、本体部14の内部に供試体21を交換可能に設置できるようになっており、供試体21は、本体部14の内部に架設された吊下げロッドを供試体保持部12として、この吊下げロッド12から例えばナイロン線27を用いて吊るした状態で、本体部14の内部の略中央の高さ位置に保持されるようになっている。
【0024】
ここで、供試体21は、アンカーボルト、羽子板金物等の接合金物と同様の材質の金属材料からなる、例えば縦横50〜100mm程度、厚さが数ミリ程度の矩形又は正方形の鉄板であって、その表面には、耐久性を検証するべき表面処理が施されている。また供試体21は、装置の簡略化のために、例えば固定状態の吊下げロッド12から吊り下げて、動かないようにしておくこともできるが、噴霧モードでの噴霧状態や乾燥モードでの乾燥空気に偏りが生じている惧れがある場合には、例えば吊下げロッド12を平面的に回転させる等の手段によって、供試体21を本体部14の内部で循環移動させるようにすることもできる。なお、噴霧や乾燥空気は本体部14の隅の部分には滞留し難いため、供試体21は、本体部14の略中央の高さ位置に保持しておくことが好ましい。
【0025】
本第1実施形態では、本体部14の底面14aは、第2吸気ファン17が設置された側面14bと対向する側面14dから、当該第2吸気ファン17が設置された側面14bに向って、例えば1/10〜1/100程度の下り勾配で傾斜する傾斜面となっている。また底面14aは、その下端部が側面14bとの間に例えば2〜20mm程度の幅のスリット開口を保持するように設けられており、このスリット開口によって噴霧発生部15との連通口26が形成されている。
【0026】
ここで、本体部14の底面14aが噴霧発生部15との連通口26に向けて下方に傾斜する傾斜面となっていることにより、噴霧状態から結露或いは液化して底面14aに落下した噴霧液を、噴霧発生部15の下部の噴霧液貯留部13に回収して再使用することが可能になる。また、噴霧発生部15との連通口26となるスリット開口の幅が2〜20mm程度となっていることにより、本体部14と噴霧発生部15との独立性を効果的に保持することが可能になる。ここで、スリット開口の幅が大きすぎると、発生した噴霧が本体部14の奥まで流れて行きにくくなり、またスリット開口の上部周辺と噴霧発生部15との間でショートサーキットを起こしてしまう恐れがある。
【0027】
本体部14の底面14aよりも下方に設けられた噴霧発生部15は、その上方が当該本体部14の底面14aによって覆われると共に、第1吸気ファン16が取り付けられた側面15bが、本体部14の第2吸気ファン17が取り付けられた側面14bと連続していることにより、スリット開口26を介して本体部14と連通している。また、例えば第1吸気ファン16が設置された側面15bと対向する側面15dに設けられた開閉可能な投入口を介して噴霧液を供給することにより、噴霧発生部15の下部の、超音波噴霧器25が設置された噴霧液貯留部13に所望量の噴霧液を貯留できるようになっている。
【0028】
超音波噴霧器25は、液体に超音波振動エネルギーを与えることにより、その振動加速度で液体の表面張力を減少させ、液表面の分裂を行うことによって液体を霧化(微粒化)させる機能を有する公知の噴霧器であり、例えば本体を水中に入れて電源を入れるだけの簡単な操作によって、粒子径が例えば3μm程度の微細な霧を発生させるものである。このような超音波噴霧器25は、具体的には、例えば商品名「HM−303N 投込型超音波霧化ユニット」(本多電子株式会社製)を用いることができる。
【0029】
超音波噴霧器14を用いて噴霧を発生させることにより、塩水以外の、木造建物に用いる接合金物の実使用環境に即した例えば木材抽出液、有機酸等の液体を噴霧液として、これらの溶液成分を含んだ噴霧を容易に発生させることが可能になる。
【0030】
また、本実施形態では、噴霧発生部15の側面15bには、外気を噴霧発生部15に取り込む第1吸気ファン16が取りられている。第1吸気ファン16は、吸気ファンとして公知の各種の電動ファンを用いることができ、電源を入れるだけの簡単な操作によって、噴霧発生部15に外気を容易に送り込むことができる。第1吸気ファン16は、噴霧モード運転時に作動して噴霧発生部15に外気を取り込み、超音波噴霧器25の作動により噴霧液から発生して噴霧発生部15に充満している噴霧を、当該噴霧発生部15を正圧にすることによって、噴霧発生部15から押し出すようにしてスリット開口による連通口26を介して本体部14に送り込む。これによって、噴霧液から発生した噴霧を、供試体21が保持された本体部14の内部に、木造建物に用いる接合金物の実使用環境に即した状態で均一に分散させることが可能になる。
【0031】
さらに、本実施形態では、本体部14の側面14bには、乾燥空気を本体部14に送り込む第2吸気ファン17が取り付けられている。第2吸気ファン17は、吸気ファンとして公知の各種の電動ファンを用いることができ、電源を入れるだけの簡単な操作によって、本体部14に乾燥空気を送り込むことができる。また第2吸気ファン17の外側の外気流路18には、ヒーター19及び除湿部材20が取り付けられている。
【0032】
ここで、ヒーター19は、加熱ヒーターとして公知の各種の電動ヒーターを用いることができ、電源を入れるだけの簡単な操作によって、外気流路18を通過する外気を加熱することができる。本実施形態では、ヒーター19は、除湿部材20に内蔵された状態で設けられている。除湿部材20は、例えば多孔板20aによって両面を挟まれた内部に、除湿剤22を充填収容してなるものであり、充填収容された除湿剤22の内部に埋め込まれるようにして、ヒーター19が配設されている。
【0033】
第2吸気ファン17の外側の外気流路18にヒーター19及び除湿部材20が取り付けられていることにより、乾燥モード運転時に第2吸気ファン17を作動させて送り込まれる外気は、ヒーター19及び除湿部材20を通過することにより加熱及び乾燥され、乾燥空気となった後に、本体部14に送り込まれて、本体部14の内部を効率良く乾燥状態とすることが可能になる。
【0034】
さらにまた、本実施形態では、第2吸気ファン17の内側には、本体部14の内部において第2吸気ファン17と対向するように配置されて、乾燥空気拡散板23が取り付けられている。第2吸気ファン17の内側に乾燥空気拡散板23が取り付けられていることにより、第2吸気ファン17によって送り込まれる乾燥空気を、本体部14の内部に効率良く均一に分散させることが可能になる。
【0035】
そして、上述の構成を備える本第1実施形態の腐食促進用簡易噴霧試験機10によれば、簡易な構成によって、木造建物に用いるアンカーボルト、羽子板金物等の接合金物に施される表面処理の耐久性を効率良く検証することが可能になる。
【0036】
すなわち、本第1実施形態によれば、霧試験機10は、中空箱状の試験室11と、試験室11の上部に設けられた供試体保持部12と、試験室11の下部に設けられた噴霧液貯留部13と、噴霧液貯留部13に設けられた超音波噴霧器25とからなるので、コンプレッサーや複雑な配管類を要することなく、且つ大きな振動や騒音を発生することなく、簡易な構成によって、木造建物に用いる接合金物の実使用環境に即した噴霧を発生させることにより供試体21の腐食や劣化を促進させて、接合金物に施される表面処理の耐久性を効率良く検証することが可能になる。
【0037】
また、本第1実施形態によれば、試験室11は、本体部14と、本体部14の下方に設けられて当該本体部14と連通口26を介して連通する噴霧発生部15とからなるので、本体部14と噴霧発生部15との独立性を効果的に保持して、供試体21が設置された本体部14の内部の雰囲気を実使用環境により近づけた状態で、接合金物に施される表面処理の耐久性を検証することが可能になる。
【0038】
さらにまた、本第1実施形態によれば、本体部14の側面14bには、本体部14に乾燥空気を送り込む第2吸気ファン17が取り付けられているので、例えば第1吸気ファン16と第2吸気ファン17とを交互に運転して、本体部14の内部の雰囲気を噴霧モードや乾燥モードに切換えつつサイクル試験を行うことが可能になるので、供試体21の腐食や劣化をさらに効果的に促進させて、接合金物に施される表面処理の耐久性をさらに効率良く検証することが可能になる。
【0039】
また、噴霧液から噴霧を発生する手段として超音波噴霧器25を使用しているので、例えばスチーム式のように噴霧液に熱を加えることによって生じる変質を防止することが可能になると共に、沸点の異なる噴霧液を同時に噴霧することも可能になる。
【0040】
さらに、複雑な配管類等を省略して装置が簡素化されているので、メンテナンスも容易に行うことが可能になる。
【0041】
図2は、本発明の第2実施形態に係る腐食促進用簡易噴霧試験機30を示すものである。本第2実施形態の腐食促進用簡易噴霧試験機30は、上記第1実施形態の腐食促進用簡易噴霧試験機10と略同様の構成を備える一方で、噴霧発生部15の側面15bには、第1吸気ファン16は設けられておらず、第1吸気ファン16に換えて、噴霧発生部15を覆う部分の本体部14の底面14aに、噴霧送気ファン24が取り付けられている。そして、この噴霧送気ファン24の作用によって噴霧発生部15で発生した噴霧を、連通口26を介することなく強制的に本体部14に送り込むようになっている。また、噴霧送気ファン24の上方には、本体部14の内部において噴霧送気ファン24と対向するように配置されて、噴霧送気ファン24によって送り込まれる噴霧を本体部14の内部に効率良く均一に分散させる乾燥空気拡散板28が取り付けられている。
【0042】
本第2実施形態の腐食促進用簡易噴霧試験機30によっても、簡易な構成によって、木造建物に用いる接合金物の実使用環境に即した噴霧を発生させることにより供試体21の腐食や劣化を促進させて、上記第1実施形態の腐食促進用簡易噴霧試験機10と同様の作用効果を奏することになる。
【0043】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、試験室は、本体部とこれの底面よりも下方に設けられる噴霧発生部とによって構成する必要は必ずしもなく、例えば図3に示すように、試験室11を中空の直方体形状に形成し、これの下部を噴霧液貯留部13として噴霧液を貯留すると共に、超音波噴霧器25を設置することによって、ダイレクト式の腐食促進用簡易噴霧試験機40とすることもできる。また、本体部の側面に乾燥空気を送り込む第2吸気ファンを取り付ける必要は必ずしもない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の好ましい第1実施形態に係る腐食促進用簡易噴霧試験機の構成を説明する略示断面図である。
【図2】本発明の好ましい第2実施形態に係る腐食促進用簡易噴霧試験機の構成を説明する略示断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る腐食促進用簡易噴霧試験機の構成を説明する略示断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10,30,40 腐食促進用簡易噴霧試験機
11 試験室
12 吊下げロッド(供試体保持部)
13 噴霧液貯留部
14 試験室の本体部
14a 本体部の底面
14b 本体部の側面
15 試験室の噴霧発生部
15a 噴霧発生部の側面
16 第1吸気ファン
17 第2吸気ファン
18 外気流路
19 ヒーター
20 除湿部材
21 供試体
22 除湿剤
23 乾燥空気拡散板
24 噴霧送気ファン
25 超音波噴霧器
26 スリット開口(連通口)
27 ナイロン線
28 乾燥空気拡散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建物に用いるアンカーボルト、羽子板金物等の接合金物に施される表面処理の耐久性を検証するための、腐食促進用簡易噴霧試験機であって、
中空箱状の試験室と、該試験室の上部に設けられた供試体保持部と、該試験室の下部に設けられた噴霧液貯留部と、該噴霧液貯留部に設けられた超音波噴霧器とからなる腐食促進用簡易噴霧試験機。
【請求項2】
前記試験室は、本体部と、該本体部の底面よりも下方に設けられて該本体部と連通する噴霧発生部とからなり、前記本体部の底面は前記噴霧発生部との連通口に向けて下方に傾斜すると共に、前記噴霧発生部の下部は前記噴霧液貯留部を構成して前記超音波噴霧器が設置されており、且つ前記噴霧発生部の側面には、外気を前記噴霧発生部に取り込む第1吸気ファンが取り付けられていて、該第1吸気ファンの作用によって前記噴霧発生部の内部を正圧にすることにより、前記噴霧発生部で発生した噴霧を前記本体部に送り込む請求項1に記載の腐食促進用簡易噴霧試験機。
【請求項3】
前記試験室は、本体部と、該本体部の底面よりも下方に設けられて該本体部と連通する噴霧発生部とからなり、前記本体部の底面は前記噴霧発生部との連通口に向けて下方に傾斜すると共に、前記噴霧発生部の下部は前記噴霧液貯留部を構成して前記超音波噴霧器が設置されており、且つ前記噴霧発生部を覆う部分の前記本体部の底面には噴霧送気ファンが取り付けられていて、該噴霧送気ファンの作用によって前記噴霧発生部で発生した噴霧を前記本体部に送り込む請求項1に記載の腐食促進用簡易噴霧試験機。
【請求項4】
前記噴霧送気ファンの上方に噴霧拡散板が取り付けられている請求項3に記載の腐食促進用簡易噴霧試験機。
【請求項5】
前記連通口は、幅が2〜20mmのスリット開口である請求項2〜4のいずれかに記載の腐食促進用簡易噴霧試験機。
【請求項6】
前記本体部の側面には、前記本体部に乾燥空気を送り込む第2吸気ファンが取り付けられている請求項1〜6のいずれかに記載の腐食促進用簡易噴霧試験機。
【請求項7】
前記第2吸気ファンの外側の外気流路に、ヒーター及び除湿部材が取り付けられている請求項6に記載の腐食促進用簡易噴霧試験機。
【請求項8】
前記第2吸気ファンの内側には、乾燥空気拡散板が取り付けられている請求項6又は7に記載の腐食促進用簡易噴霧試験機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−128050(P2009−128050A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300500(P2007−300500)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】