説明

腐食環境センサおよびセンサシステム

【課題】 専用設備を使用せず、また構成部材として貴金属を用いることなく簡易かつ安価に製造でき、構造が単純でかつ耐久性が高く履歴情報の取得も可能な腐食環境センサおよびセンサシステムを提供する。
【解決手段】 この腐食環境センサ1は、成分、組成、または表面処理状態等の種類が互いに異なり、電解質の介在により電位差を生じる2種類の金属電極2,3を有する。これら金属電極2,3の隙間に絶縁材料4を介在させ、前記両金属電極2,3と絶縁材料4を固定手段5で固定する。被検出物となる水分を前記2種類の金属電極2,3にわたって触れさせる検出部7を設ける。前記絶縁材料4が介在した前記2種類の金属電極2,3間の隙間における前記検出部7の周縁部分は、防水性材8で密封する。前記検出部7に水分が付着することで前記電極2,3間で生じる腐食電流を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、風力発電所などの設備内機器の設置場所の環境モニタ、輸送機器などの周囲環境のモニタ、鉄道・船舶などに搭載される輸送用コンテナや車両用台車の設置場所の環境モニタなどに利用される腐食環境センサ、およびその腐食環境センサを用いたセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の腐食環境センサの従来例として、例えば、検出部の一部または全部と所定の隙間をもって対向した隙間形成部材を設けることにより、前記検出部と隙間形成部材との間にセンサ外部と通じた腐食環境の擬似空間を形成したもの(特許文献1)がある。また、少なくとも一部が金属材料で構成される移動体に、成分あるいは組成が異なる2種以上の金属電極を絶縁体を介して配置し、電極間の電流または電位差を計測するようにしたもの(特許文献2)などがある。
【特許文献1】特開2005−134161号公報
【特許文献2】特開2005−134162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記した構成の腐食環境センサを含めて、従来の腐食環境センサでは、以下に挙げる問題点がある。
・ 印刷技術や科学的堆積技術により製造されるものが多く、製造に専用設備が必要である。
・ イオン化傾向の低い金や銀などの貴金属を構成部材として用いることが多く、コスト高となる。
・ 形状が複雑で、パターニングが必要となり、製造が容易でない。
・ 腐食情報の履歴を取得する機能を持つものはほとんどない。
【0004】
この発明の目的は、専用設備を使用せず、また構成部材として貴金属を用いることなく簡易かつ安価に製造でき、構造が単純でかつ耐久性が高く履歴情報の取得も可能な腐食環境センサおよびセンサシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の腐食環境センサは、成分、組成、または表面処理状態等の種類が互いに異なり、電解質の介在により電位差を生じる2種類の金属電極を有し、これら金属電極間の隙間に絶縁材料を介在させ、上記両金属電極と絶縁材料を固定手段にて固定し、被検出物となる水分を上記2種類の金属電極にわたって触れさせる検出部を設け、上記絶縁材料が介在した上記2種類の金属電極間の隙間における上記検出部の周縁部分を防水性材で密封し、上記検出部に水分が付着することで上記電極間で生じる腐食電流を計測するものとしたことを特徴とする。
この構成によると、電位差を生じる2種類の金属電極間の隙間に絶縁材料を介在させ、被検出物となる水分を上記2種類の金属電極にわたって触れさせる検出部を設け、この検出部の周縁部分を防水性材で密封したものであるため、印刷技術や化学的堆積技術用の専用設備を使用せず、また構成部材としてイオン化傾向が低い金や銀などの貴金属を用いることなく、簡易かつ安価に腐食環境センサを製造できる。また、使用する金属の厚さを厚くすることができ、耐久性を向上させることもできる。また、形状が単純でパターニングが不要であり、かつ構造も単純であるため、この点からも腐食環境センサを簡易かつ安価に製造できる。
【0006】
この発明の腐食環境センサにおいて、上記2種類の金属電極のうちの第1の種類となる金属電極を2枚設け、これら2枚の第1の種類となる金属電極の間に第2の種類の金属電極を介在させ、かつ第2の種類の金属電極とその両側の第1の種類の金属電極との間の隙間にそれぞれ上記絶縁材料を介在させ、これら互いに重ねられた2枚の第1の金属電極と、第2の金属電極と、2枚の絶縁材料とを、これらの間にわたって貫通する固定手段により相互に固定し、この固定手段の回りで上記2枚の第1の金属電極と第2の金属電極と絶縁材料とを相互に密封する固定手段回り防水性材を設け、上記2枚の第1の金属電極のうちの一方の金属電極およびこの一方の金属電極側の絶縁材料に、第2の金属電極を露出させる検出部となる開口孔を設け、この検出部の周囲で、上記一方の第1の金属電極と第2の金属電極との間の隙間を防水材料で密封した構造としても良い。
【0007】
この発明の腐食環境センサにおいて、上記2種類の金属電極のうち、少なくとも1種類は腐食環境センサを配置する機械、この機械を構成する部品、この腐食環境センサと同じ場所に保管した仕掛品、半製品、製品、またはこれらを保管している設備のいずれかで用いられている金属を有するものとしても良い。
この構成の場合、腐食環境センサの周囲環境を正しく反映した検出結果を得ることができる。
【0008】
この発明の腐食環境センサシステムは、この発明の上記いずれかの構成の腐食環境センサと、この腐食環境センサの測定出力を電荷量などの物理量に換算し、その換算した値を単独、または累積させて設定値と比較することで、上記腐食環境センサが設置された環境の劣悪さを検出する判定手段とを備えたものである。
この構成によると、腐食環境センサが設置されている場所の環境状態を、高精度で信頼性高く検出できる。
【0009】
この発明の腐食環境センサシステムにおいて、上記腐食環境センサの測定出力、またはこの測定出力を電荷量などに換算した物理量を履歴として保存する記憶手段を設けても良い。
【0010】
この発明の他の腐食環境センサシステムは、この発明の上記いずれかの構成の腐食環境センサと、この腐食環境センサの測定出力、またはこの測定出力を電荷量などに換算した物理量を履歴として保存する記憶手段を設けたものである。
この構成によると、製品の段階や、倉庫など輸送・保管の段階での環境を前記腐食環境センサでモニタし、記憶手段で腐食情報の履歴を記録することができる。
【0011】
この発明の上記構成の腐食環境センサシステムにおいて、上記腐食環境センサの測定出力、またはこの測定出力から得られた腐食に関する情報を、有線または無線により、この腐食環境センサシステムとは別の装置と送受信する送受信手段を設けても良い。この構成の場合、製品の段階や、倉庫など輸送・保管の段階での環境を前記腐食環境センサでモニタし、さらに、送受信手段の送受信で得られる他の検出装置(温度、湿度センサ、およびセンサシステムなど)や表示装置からの情報を加味して、このセンサシステムが設置されている場所の環境状態を判定することにより、高精度で信頼性の高い腐食環境検出を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明の腐食環境センサは、電解質の介在により電位差を生じる2種類の金属電極を有し、これら金属電極間の隙間に絶縁材料を介在させ、上記両金属電極と絶縁材料を固定手段にて固定し、被検出物となる水分を上記2種類の金属電極にわたって触れさせる検出部を設け、上記絶縁材料が介在した上記2種類の金属電極間の隙間における上記検出部の周縁部分を防水性材で密封し、上記検出部に水分が付着することで上記電極間で生じる腐食電流を計測するものとしたため、専用設備を使用せず、また構成部材として貴金属を用いることなく簡易かつ安価に製造でき、構造が単純でかつ耐久性の高い腐食環境センサとすることができる。
この発明の腐食環境センサシステムは、この発明の腐食環境センサと、この腐食環境センサの測定出力を電荷量などの物理量に換算し、その換算した値を単独、または累積させて設定値と比較することで、上記腐食環境センサが設置された環境の劣悪さを検出する判定手段とを備えたため、腐食環境センサが設置されている場所の環境状態を、高精度で信頼性高く検出できる。
この発明の他の腐食環境センサシステムは、この発明の腐食環境センサと、この腐食環境センサの測定出力、またはこの測定出力を電荷量などに換算した物理量を履歴として保存する記憶手段を設けたため、製品の段階や、倉庫など輸送・保管の段階での環境を上記腐食環境センサでモニタし、記憶手段で腐食情報の履歴を記録することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の一実施形態を図1ないし図5と共に説明する。図1はこの実施形態の腐食環境センサの概略構成図を示し、図2はその部分拡大断面図を示す。この腐食環境センサ1は、成分、組成等の種類が互いに異なり、電解質の介在により電位差を生じさせる2種類の金属電極2,3を有する。ここでは前記2種類の金属電極2,3としてイオン化傾向の異なる金属が用いられている。すなわち、例えば第1の種類の金属電極2として鉄が、第2の種類の金属電極3として亜鉛が用いられる。なお、ここで言う種類が互いに異なる金属電極2,3とは、同種の金属であっても表面処理状態や不純物添加などにより特性が異なるものも含まれる。
【0014】
図2のように、前記2種類の金属電極2,3はそれぞれ板状とされ、そのうちの第1の種類となる金属電極2は2枚設けられ、これら2枚の第1の種類となる金属電極2,2の間に第2の種類となる1枚の金属電極3が介在させられる。図1では、これら金属電極2,3を平面視でリング状とした場合を例示しているが、このような形状に限定するものではない。さらに、第2の種類の金属電極3とその両側の第1の種類の金属電極2との間の隙間には、それぞれ絶縁材料4が介在させられる。これら互いに重ねられた2枚の第1の種類の金属電極2,2と、1枚の第2の種類の金属電極3と、2枚の絶縁材料4,4とは、これらの間にわたって貫通する固定手段5により、相互に固定される。ここでは固定手段5としてボルトが用いられている。この固定手段5の回りには、前記2枚の第1の種類の金属2,2と、第1の種類の金属電極3と、2枚の絶縁材料4,4とを相互に密封する円筒状の絶縁性の固定手段回り防水性材6が設けられる。
【0015】
前記2枚の第1の種類の金属電極2,2のうちの一方の金属電極2、およびこの一方の金属電極2側の絶縁材料4には、これら両部材にわたって貫通する開口孔が第2の種類の金属電極3を露出させる検出部7として設けられている。この検出部7の周縁部分であって、検出部7が形成される第1の種類の金属電極2と、検出部7により露出する第2の種類の金属電極3との間の絶縁材料4が介在した隙間は、絶縁性を有する防水材料8で密封されている。ここでは防水材料8として、第1の種類の金属電極2における裏面の検出部7の周縁部分に設けた溝9にOリングを嵌合させている。
【0016】
前記検出部7は、被検出物となる水分を前記2種類の金属電極2,3にわたって触れさせる部位となるものであり、この検出部7に水分が付着すると電池作用により前記両金属電極2,3間に電流(腐食電流)が発生する。前記両金属電極2,3にはそれぞれ端子12,13が設けられ、これらの端子12,13に接続した電流検出増幅回路10により、前記腐食電流を計測するようにされている。
【0017】
前記電流検出増幅回路10は、例えば図3に示すように、前記両金属電極2,3間での電池作用で生じた腐食電流を負荷抵抗Rに流すことで電圧信号に変換し、その電圧信号を増幅器14で増幅して電圧計15で検出する構成とされる。この腐食環境センサ1を機器や設備に固定して使用する場合、図3のように外側に配置される第1の種類の金属電極2を接地し、内側に配置される第2の種類の金属電極3とアースとなる金属電極2の間に流れる腐食電流を検出する回路構成とするのが望ましい。この回路構成によると、ノイズを低減することができる。
【0018】
この腐食環境センサ1を例えば任意の機械に配置して、機械の周囲の腐食環境をモニタする場合、前記2種類の金属電極2,3のうち、少なくとも一種類の金属電極には、前記機械、この機械を構成する部品、この腐食環境センサ1と同じ場所に保管した仕掛品、半製品、製品、またはこれらを保管している設備のいずれかで用いられている金属を用いるのが望ましい。この場合、上記製品や保管している設備の周囲環境を正しく反映した検出結果を得ることができる。
【0019】
図1では、腐食環境センサ1の電流検出増幅回路10の次段に信号記録判断回路11を接続して、センサシステムを構成した例を示している。信号記録判断回路11は、腐食環境センサ1の測定出力を電荷量などの物理量に換算し、その換算した値を単独、または累積させて設定値と比較することで、前記腐食環境センサ1が設置された環境の劣悪さを検出する判断手段となるものである。
【0020】
図4は、前記信号記録判断回路11による判断処理の一例の説明図を示す。この判断処理では、同図に波形図で示す電流検出増幅回路10の出力(電流値データ)が、予め設定されている電流しきい値Ithより大きくなった場合、「環境が劣悪化した」と判断して警告信号を出力する。
【0021】
また、前記電流値から電荷量を換算して判断することもできる。図5は、この判断処理の例の説明図を示す。この判断処理では、電流検出増幅回路10の出力(電流値データ)を、次式 q=∫(Vout/R−Icorr)dt……(1)
に従い、一定時間で積算することで電荷量qを算出し、それを累積し電荷量Qを求める。求めた電荷量Qが予め設定されている電荷量しきい値Qthより大きくなった場合、「環境が劣悪化した」と判断して警告信号を出力する。
なお、前記(1)式において、Voutは電流検出増幅回路10の出力電圧、Rは負荷抵抗Rの値、Icorrは腐食電流基準値である。この腐食電流基準値Icorrは、腐食反応に関係しない電流値を示し、測定条件によっては無視しても良い。さらに、前記(1)式で求めた電荷量qは環境の劣悪さを判断するために累積せずに用いても良い。前記(1)式による積算処理はフィルタ効果を与えるため、電流そのものを用いて判断する場合と比べて、電流に含まれるノイズ成分が抑制され、安定した測定が可能になる。
【0022】
図6は、前記信号記録判断回路11の具体的な構成例を示す。この信号記録判断回路11は、演算装置16、記憶装置17、送受信回路18,電源回路19を備え、信号記録判断回路11で得られた情報は送受信装置20により監視システムなどへ送信される。電流検出増幅回路10の出力は、演算装置16により例えば図4と共に前述した判断処理が行われる。また、その処理結果は記憶装置7で保存される。なお、電源回路19は、信号記録判断回路11の外部に設けても良いし、内部にバッテリなどの電源を設けても良い。
このように、センサシステムを構成した場合、製品の段階や、倉庫など輸送・保管の段階での環境を前記腐食環境センサ1でモニタし、前記信号記録判定回路11で腐食情報の履歴を記録することができる。さらに、送受信装置20の送受信で得られる他の検出装置(温度、湿度センサ、およびセンサシステムなど)や、図示しない表示装置からの情報を加味して、このセンサシステムが設置されている場所の環境状態を判定することにより、高精度で信頼性の高い腐食環境検出を行うことができる。
【0023】
図7は、前記センサシステムと外部との間でのデータ転送構成の一例を示す。このデータ転送構成例は無線で送受信する例であり、信号記録判断回路11で扱われたデータは送受信装置20から例えば電波21により送受信端末22に送信され、また電波21により送信された送受信端末22のデータが送受信装置20で受信される。
図8は、前記センサシステムと外部との間でのデータ転送構成の他の例を示す。このデータ転送構成例は有線で送受信する例であり、信号記録判断回路11で扱われたデータは有線23および通信網24を経て送受信端末22に送信され、また送受信端末22より送信されたデータが有線23および通信網24を経て送受信装置20で受信される。
【0024】
図7や図8のようなデータ転送構成で前記センサシステムと送受信端末22とを接続することにより、風力発電所などの設備内機器の設置場所に対する環境検出モニタ、輸送機器などの周囲環境モニタ、鉄道・船舶などの輸送用コンテナや輸送車両用荷台などの設置場所に対する環境モニタなどのように、遠隔地に設定された測定対象や移動手段を備えている測定対象に対しても、容易にデータ収集が可能となる。
また、内部電源(例えばバッテリ)や無線送受信装置(例えば無線タグ装置)を備えることにより、風力発電所などの設備内機器のように、有線での接続が困難な移動部を備えている製品や部品に対しても、データ収集が可能となる。
【0025】
図9および図10は、図1で示した形状の腐食環境センサ1を、風力発電用の風車主軸軸受装置に搭載した例の断面図および正面図を示す。この軸受装置31は、風車主軸40が回転自在に支持される転がり軸受32をハウジング36で保持したものである。転がり軸受32は自動調心ころ軸受からなり、複列のころ35,35に対して設けた2個の内輪33と一体型の外輪34とを備える。内輪33は回転側輪となるものであって、その内周面に風車主軸40が嵌合して支持される。外輪34は固定側輪となるものであって、ハウジング36の内周面に嵌合して固定される。ハウジング36は、外輪34の嵌合するハウジング本体37と、転がり軸受32の両端部を覆う2つの蓋部材38,38とでなる。その一方の蓋部材38の表面に、図10のように転がり軸受32と同心に前記腐食環境センサ1が固定される。この場合の固定手段には、金属電極2,3および絶縁部材4を固定する固定手段5が兼用される。
【0026】
このように、風力発電用の風車主軸軸受装置31に腐食環境センサ1を搭載することにより、軸受部品などが設置された環境のモニタが可能となる。すなわち、腐食環境センサ1の検出部7(図1)に水分が付着したときに生じる腐食電流が、異なる2種類の金属電極2,3の端子12,13を介して電流検出増幅回路10(図3)で増幅され、その出力信号に基づき信号記録判断回路11(図6)で環境劣化が判断される。
【0027】
このように、この実施形態の腐食環境センサ1では、電解質の介在により電位差が生じる2種類の金属電極2,3間の隙間に絶縁材料4を介在させ、これら両金属電極2,3と絶縁材料4を固定手段5で固定し、前記両金属電極2,3にわたって被検出物となる水分を触れさせる検出部7を設け、前記絶縁部材4が介在した両金属電極2,3間の隙間における前記検出部7の周縁部分を防水性材8で密封し、前記検出部7に水分が付着することで前記両金属電極2,3間で生じる腐食電流を計測するようにしているので、印刷技術や化学的堆積技術用の専用設備を使用せず、また構成部材としてイオン化傾向が低い金や銀などの貴金属を用いることなく、簡易かつ安価に製造できる。また、使用する金属の厚さを厚くすることができ、耐久性を向上させることもできる。また、形状が単純でパターニングが不要であり、かつ構造も単純であるため、この点からも腐食環境センサ1を簡易かつ安価に製造できる。
【0028】
また、この実施形態では、前記腐食環境センサ1に、その測定出力を電荷量などの物理量に換算し、その換算した値を単独、または累積させて設定値と比較することで、前記腐食環境センサ1が設置された環境の劣悪さを検出する判定手段として、信号記録判断回路11を付加することでセンサシステムを構成しているので、腐食に関する履歴情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の一実施形態に係る腐食環境センサを用いたセンサシステムの概略構成図である。
【図2】同腐食環境センサの部分拡大断面図である。
【図3】同腐食環境センサにおける電流検出増幅回路の一例を示す構成図である。
【図4】前記センサシステムにおける信号記録判断回路による判断処理の一例の説明図である。
【図5】同センサシステムにおける信号記録判断回路による判断処理の他の例の説明図である。
【図6】同センサシステムにおける信号記録判断回路の一例の構成図である。
【図7】同センサシステムと外部との間でのデータ転送の一例の構成図である。
【図8】同センサシステムと外部との間でのデータ転送の他の例の構成図である。
【図9】前記腐食環境センサを搭載した風力発電用の風車主軸軸受装置の断面図である。
【図10】同風車主軸軸受装置の正面図である。
【符号の説明】
【0030】
1…腐食環境センサ
2…第1の種類の金属電極
3…第2の種類の金属電極
4…絶縁材料
5…固定手段
6…固定手段回り防水性材
7…検出部
8…防水材料
10…電流検出増幅回路
11…信号記録判断回路(判定手段)
12,13…端子
17…記憶装置
20…送受信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分、組成、または表面処理状態等の種類が互いに異なり、電解質の介在により電位差を生じる2種類の金属電極を有し、これら金属電極間の隙間に絶縁材料を介在させ、上記両金属電極と絶縁材料を固定手段にて固定し、被検出物となる水分を上記2種類の金属電極にわたって触れさせる検出部を設け、上記絶縁材料が介在した上記2種類の金属電極間の隙間における上記検出部の周縁部分を防水性材で密封し、上記検出部に水分が付着することで上記電極間で生じる腐食電流を計測するものとしたことを特徴とする腐食環境センサ。
【請求項2】
請求項1において、上記2種類の金属電極のうちの第1の種類となる金属電極を2枚設け、これら2枚の第1の種類となる金属電極の間に第2の種類の金属電極を介在させ、かつ第2の種類の金属電極とその両側の第1の種類の金属電極との間の隙間にそれぞれ上記絶縁材料を介在させ、これら互いに重ねられた2枚の第1の金属電極と、第2の金属電極と、2枚の絶縁材料とを、これらの間にわたって貫通する固定手段により相互に固定し、この固定手段の回りで上記2枚の第1の金属電極と第2の金属電極と絶縁材料とを相互に密封する固定手段回り防水性材を設け、上記2枚の第1の金属電極のうちの一方の金属電極およびこの一方の金属電極側の絶縁材料に、第2の金属電極を露出させる検出部となる開口孔を設け、この検出部の周囲で、上記一方の第1の金属電極と第2の金属電極との間の隙間を防水材料で密封した腐食環境センサ。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、上記2種類の金属電極のうち、少なくとも1種類は腐食環境センサを配置する機械、この機械を構成する部品、この腐食環境センサと同じ場所に保管した仕掛品、半製品、製品、またはこれらを保管している設備のいずれかで用いられている金属を有する腐食環境センサ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の腐食環境センサと、この腐食環境セン
サの測定出力を電荷量などの物理量に換算し、その換算した値を単独、または累積させて設定値と比較することで、上記腐食環境センサが設置された環境の劣悪さを検出する判定手段とを備えた腐食環境センサシステム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の腐食環境センサと、この腐食環境センサの測定出力、またはこの測定出力を電荷量などに換算した物理量を履歴として保存する記憶手段を設けた腐食環境センサシステム。
【請求項6】
請求項4において、上記腐食環境センサの測定出力、またはこの測定出力を電荷量などに換算した物理量を履歴として保存する記憶手段を設けた腐食環境センサシステム。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6のいずれか1項において、上記腐食環境センサの測定出力、またはこの測定出力から得られた腐食に関する情報を、有線または無線により、この腐食環境センサシステムとは別の装置と送受信する送受信手段を設けた腐食環境センサシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−164467(P2008−164467A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354924(P2006−354924)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】