腐食監視装置
【課題】現地から遠く離れた中央監視センターからでも、橋梁などの構造物の腐食の監視や腐食環境の腐食促進性の計測を自動的に行うことが可能であり、構造物の維持管理に係る人件費を大幅に低減することができる腐食監視装置を提供する。
【解決手段】長手方向にテンションが加えられた歪測定用光ファイバー芯線4と、この歪測定用光ファイバー芯線4の歪を保つように、歪測定用光ファイバー芯線4に接合された腐食監視用部材5とを備え、歪測定用光ファイバー芯線4は、散乱光分析装置6に連絡用光ファイバー芯線7を介して光学的に接続され、散乱光分析装置6は、腐食監視用部材5が腐食した状態において緩和される歪測定用光ファイバー芯線4の歪の変化を検出することにより、腐食監視用部材5の腐食を判定可能に構成されている。
【解決手段】長手方向にテンションが加えられた歪測定用光ファイバー芯線4と、この歪測定用光ファイバー芯線4の歪を保つように、歪測定用光ファイバー芯線4に接合された腐食監視用部材5とを備え、歪測定用光ファイバー芯線4は、散乱光分析装置6に連絡用光ファイバー芯線7を介して光学的に接続され、散乱光分析装置6は、腐食監視用部材5が腐食した状態において緩和される歪測定用光ファイバー芯線4の歪の変化を検出することにより、腐食監視用部材5の腐食を判定可能に構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば橋梁などの構造物の腐食を監視したり、腐食環境の腐食促進性を計測するために採用される腐食監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、橋梁などの構造物は、長い間、風雨に曝されるうちに、腐食が進行し、構造物としての強度が低下するという現象が避けられない。
【0003】
そのため、このような構造物においては、構造部材の腐食を定期的に監視したり、腐食環境の腐食促進性を計測しなければならないが、従来、構造部材の腐食の監視や腐食環境の腐食促進性の計測は、目視による外観検査やハンマリングによる点検に頼らざるを得なかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような目視による外観検査やハンマリングによる点検などは、現地において人手で行われなければならず、橋梁などの構造物を維持管理するのに多大な費用を要するという問題があった。
【0005】
本発明は上記不具合に鑑みてなされたものであり、現地から遠く離れた中央監視センターなどからでも、橋梁などの構造物の腐食の監視や腐食環境の腐食促進性の計測を自動的かつ連続的に行うことが可能であり、構造物の維持管理に係る人件費を大幅に低減することができる腐食監視装置を提供することを課題としている。
【0006】
なお、本願に記載する腐食監視装置は、上述の腐食監視装置の従来技術のいずれにも該当せず、出願人の知る限りでは本願出願に類する公知例が無いため、本出願の時点では開示すべき先行技術文献情報は保有していない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、光ファイバコアおよびクラッドを有し、長手方向にテンションが加えられた歪測定用光ファイバー芯線と、この歪測定用光ファイバー芯線に加えられたテンションによる歪を保つように、歪測定用光ファイバー芯線に接合された腐食監視用部材とを備え、上記歪測定用光ファイバー芯線の光ファイバコアに不連続のレーザー光からなるポンプ光を入射して歪測定用光ファイバー芯線の歪に由来する散乱光を発生させるとともに、この光ファイバコアの散乱光を検出して歪測定用光ファイバー芯線の歪を分析する散乱光分析装置に、上記歪測定用光ファイバー芯線が連絡用光ファイバー芯線を介して光学的に接続され、上記散乱光分析装置は、上記腐食監視用部材が腐食した状態において緩和される歪測定用光ファイバー芯線の歪の変化を検出可能に構成されていることを特徴とする腐食監視装置である。
【0008】
本発明によれば、腐食監視用部材が、歪測定用光ファイバー芯線の歪を保つように歪測定用光ファイバー芯線に接合されているので、腐食のために腐食監視用部材の強度が低下すると、歪測定用光ファイバー芯線のあらかじめ加えられていたテンションが緩和されて歪が減少する。
【0009】
そして、連絡用光ファイバー芯線を介して歪測定用光ファイバー芯線に接続されている散乱光分析装置が、この歪測定用光ファイバー芯線の歪の変化を検出することができるので、現地から遠く離れた中央監視センターなどからでも、橋梁などの構造物の腐食の監視や腐食環境の腐食促進性の計測を自動的かつ連続的に行うことが可能となる。また、その結果、人手による外観検査や点検などを現地で行う必要がないので、構造物の維持管理に係る人件費を大幅に低減することができるようになる。
【0010】
ここで、上記腐食監視用部材は、歪測定用光ファイバー芯線を連続的に拘束するように構成されていることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、腐食監視用部材が、歪測定用光ファイバー芯線を連続的に拘束しているので、この歪測定用光ファイバー芯線を連続的に拘束する範囲内であれば、腐食監視用部材のいずれの部分であっても腐食が発生した位置とその腐食の程度とを精度良く判定することができる。
【0012】
また、上記腐食監視用部材は、歪測定用光ファイバー芯線の被覆層として形成されることにより歪測定用光ファイバー芯線を連続的に拘束するように構成されていることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、腐食監視用部材を歪測定用光ファイバー芯線の被覆層として形成するという簡単な構成で、保管と取り扱いが容易な精度が良い腐食監視装置を実現することができる。
【0014】
また、上記腐食監視用部材は、歪測定用光ファイバー芯線を挟持する板材として形成されることにより歪測定用光ファイバー芯線を連続的に拘束するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の腐食監視装置。
【0015】
このようにすれば、腐食監視用部材を歪測定用光ファイバー芯線を挟持する板材として形成するという簡単な構成で、保管と取り扱いが容易な精度が良い腐食監視装置を実現することができる。また、構造物への取り付けが容易になる。
【0016】
また、上記腐食監視用部材は、歪測定用光ファイバー芯線を断続的に拘束するように構成されていることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、歪測定用光ファイバー芯線を連続的に拘束する必要がないので、腐食監視装置の製造に係るコストを低減して、安価な腐食監視装置を実現することができる。
【0018】
なお、この場合は、拘束と拘束との間の範囲内において歪測定用光ファイバー芯線の歪が一様になるので、この範囲内の位置を特定することはできないが、範囲内のいずれかの部分で腐食が発生すれば、歪測定用光ファイバー芯線に一様な歪の変化が現れるので、この範囲内で腐食が発生していることを判定することができる。
【0019】
このように、腐食が発生している位置を精度良く判定する必要が無い場合は、腐食監視用部材に歪測定用光ファイバー芯線を断続的に拘束させることにより、腐食監視装置の製造に係るコストを低減して、安価な腐食監視装置を実現することができる。
【0020】
上記腐食監視用部材は、管状に形成され、この管状の腐食監視用部材の絞り加工部が、歪測定用光ファイバー芯線を断続的に拘束するように構成されていることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、腐食監視用部材を管状に形成して、この管状の腐食監視用部材の絞り加工部で歪測定用光ファイバー芯線を断続的に拘束するという簡単な構成で、腐食監視装置の製造に係るコストを低減して、安価な腐食監視装置を実現することができるようになる。
【0022】
また、この本発明に係る腐食監視装置は、上記歪測定用光ファイバー芯線に概ね平行して設けられ、光ファイバコアおよびクラッドを有する温度測定用光ファイバー芯線と、この温度測定用光ファイバー芯線を腐食監視用部材に対して変位可能に保持する歪緩衝手段と、をさらに備えていることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、歪緩衝手段が、温度測定用光ファイバー芯線を腐食監視用部材に対して変位可能に保持しているので、歪の少ない状態に温度測定用光ファイバー芯線を保つことができる。その結果、歪の影響の少ない正確な温度測定をすることができる。そして、この温度測定の結果を用いて正確に歪測定用光ファイバー芯線の測定結果の温度補正をすることができるので、腐食の程度をさらに精度良く判定することができるようになる。
【0024】
また、上記歪緩衝手段は、上記温度測定用光ファイバー芯線を内部に保持する合成樹脂管を上記腐食監視用部材の中に備え、この合成樹脂管は、温度測定用光ファイバー芯線を腐食監視用部材に対して変位可能に滑らかに保持していることが好ましい。
【0025】
このようにすれば、合成樹脂管を腐食監視用部材の中に設け、この合成樹脂管の内部に温度測定用光ファイバー芯線を保持させるという簡単な構成で、歪緩衝手段を実現して、正確に歪測定用光ファイバー芯線の測定結果の温度補正をすることができる。
【0026】
また、上記腐食監視用部材は、補強材により、複合・補強された状態の歪測定用光ファイバー芯線に接合されていることが好ましい。
【0027】
このようにすれば、歪測定用光ファイバー芯線が、補強材により、複合・補強されているので、単体では強度が不足する光ファイバー芯線も歪測定用光ファイバー芯線として用いることができるようになる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、現地から遠く離れた中央監視センターなどからでも、橋梁などの構造物の腐食の監視を自動的かつ連続的に行うことが可能となる。また、その結果、人手による外観検査や点検などを現地で行う必要がないので、構造物の維持管理に係る人件費を大幅に低減することができるようになるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る腐食監視装置1の構成を示す斜視図であり、図2は、本発明の第1の実施形態に係る腐食監視装置1の腐食監視ユニット2の構成を示す斜視図である。また、図3は、本発明の第1の実施形態に係る腐食監視装置1の腐食監視ユニット2の構成を示す断面図であり、図4は、腐食監視ユニット2の製作の要領を示す斜視図である。
【0030】
図1を参照して、図示の本発明の第1の実施形態に係る腐食監視装置1は、例えば、橋梁3の構造物の腐食を複数の地点において監視したり計測するために構成された装置であって、複数の腐食監視ユニット2と、散乱光分析装置6とを備え、これら複数の腐食監視ユニット2と散乱光分析装置6とは、相互に連絡用光ファイバー芯線7を介して光学的に接続されている。
【0031】
上記腐食監視ユニット2は、橋梁3の長手方向に沿う複数の地点に設置され、橋梁3の構造物の腐食を監視したり計測する装置であって、図2に示すように、それぞれ歪測定用光ファイバー芯線4と、歪測定用光ファイバー芯線4に接合された腐食監視用部材5とを備えている。また、この歪測定用光ファイバー芯線4は、連絡用光ファイバー芯線7を介して光学的に散乱光分析装置6(図1)に接続されている。
【0032】
そして、散乱光分析装置6は、詳細については後述するが、腐食監視用部材5が腐食した状態において緩和される歪測定用光ファイバー芯線4の歪の変化を検出するように構成され、腐食監視用部材5の腐食に基づく歪測定用光ファイバー芯線4の歪の変化により、腐食監視用部材5と同じ材質の橋梁3の構造物の腐食の程度を推定することができるようになっている。
【0033】
上記橋梁3(図1)は、腐食を監視すべき構造物であって、本実施形態では腐食監視ユニット2は、この橋梁3に用いられる鋼材を監視の対象としている。
【0034】
上記歪測定用光ファイバー芯線4は、図示しないが、光を伝達する光ファイバコアと、光を反射するクラッドと、光ファイバコアおよびクラッドを外界から保護する被覆層とを有し、補強材により、複合・補強されている。この歪測定用光ファイバー芯線4は、図4に示すように、あらかじめ長手方向に歪Tが加えられ、上側部材5aと下側部材5bとからなる腐食監視用部材5に挟持されて接合されることにより、腐食監視用部材5の接合後も加えられた歪が残存するように構成されている。
【0035】
また、腐食監視ユニット2のこれら歪測定用光ファイバー芯線4は、それぞれ連絡用光ファイバー芯線7に光学的に接続され、連続する1つの光学的経路を形成している。
【0036】
上記腐食監視用部材5は、歪測定用光ファイバー芯線4に加えられたテンションによる歪を保つように、歪測定用光ファイバー芯線4に接合された部材であり、腐食を監視しようとする橋梁3の構造物と同じ材質が選択されている。本実施形態では橋梁3を構成している鋼材と同じ組成の鋼板が対象となっている。
【0037】
この腐食監視用部材5は、本実施形態では、図4に示すように、歪測定用光ファイバー芯線4を挟持する上側部材5aと下側部材5bとを有し、互いに接合される鋼製の板材として形成されることにより歪測定用光ファイバー芯線4を連続的に拘束するように構成されている。
【0038】
上記散乱光分析装置6(図1)は、歪測定用光ファイバー芯線4の光ファイバコアに不連続のレーザー光からなるポンプ光を入射して歪測定用光ファイバー芯線4の歪に由来する散乱光を発生させるとともに、この光ファイバコアの散乱光を検出して歪測定用光ファイバー芯線4の歪を分析するものであり、歪測定用光ファイバー芯線4に連絡用光ファイバー芯線7を介して光学的に接続されている。
【0039】
この散乱光分析装置6は、腐食監視用部材5が腐食した状態において緩和される歪測定用光ファイバー芯線4の歪の変化を検出することができるように構成され、その分析結果を隣接するパーソナルコンピュータ10aに出力し、このパーソナルコンピュータにおいて、各地点の腐食の程度が歪測定用光ファイバー芯線4の歪の変化に比例する値として表示されるように構成されている。
【0040】
連絡用光ファイバー芯線7は、散乱光分析装置6からのレーザー光と歪測定用光ファイバー芯線4からの散乱光とを伝達するものであり、歪測定用光ファイバー芯線4と同様に、光を伝達する光ファイバコアと、光を反射するクラッドと、光ファイバコアおよびクラッドを外界から保護する被覆層とを有している。そして、散乱光分析装置6と歪測定用光ファイバー芯線4とに互いに光学的に接続されている。
【0041】
次に図5と図6とを参照して、本発明の実施の形態に係る腐食監視装置1の作用について説明する。
【0042】
図5は、腐食監視ユニット2の作用を示す断面図であり、(a)は、歪が加えられる前の長さがDの状態の歪測定用光ファイバー芯線4を、(b)は、あらかじめ長手方向にテンションが加えられた後の長さがD+ΔDとなった状態の歪測定用光ファイバー芯線4を、それぞれ示している。また、(c)は、歪測定用光ファイバー芯線4に歪が加えられた状態で腐食監視用部材5が接合された状態の歪測定用光ファイバー芯線4を、(d)は、歪測定用光ファイバー芯線4の歪による応力と腐食監視用部材5の歪による応力とが均衡し、(c)の状態から寸法dだけ収縮して歪が残存した状態を、(e)は、腐食監視用部材5が腐食して寸法がδだけ収縮し、歪測定用光ファイバー芯線4の歪が緩和された状態を、それぞれ示している。
【0043】
ここで、図6は、歪測定用光ファイバー芯線4におけるブリルアン散乱光の周波数シフトと歪測定用光ファイバー芯線4の歪との関係を示すグラフである。
【0044】
散乱光分析装置6が連絡用光ファイバー芯線7を介して腐食監視ユニット2の歪測定用光ファイバー芯線4にポンプ光を入射すると、歪測定用光ファイバー芯線4の歪に由来する散乱光が発生するので、この散乱光を検出することにより、歪測定用;光ファイバー芯線4の歪を判定してこの歪に応じた腐食の程度を容易に測定することができるようになる。
【0045】
散乱光分析装置6は、本実施形態では、特に歪測定用光ファイバー芯線4におけるブリルアン散乱光の周波数シフトと歪測定用光ファイバー芯線4の歪とが、図6に示すように比例関係になることを利用して歪測定用光ファイバー芯線4の歪を分析する。図6は、レーザ光の周波数が493MHz、波長が1.55μmの場合のブリルアン散乱光の周波数シフトのグラフであり、周波数が493MHzのレーザ光のパルスを歪測定用光ファイバー芯線4に入射すると、ブリルアン散乱光が、歪測定用光ファイバー芯線4から逆向きに散乱光分析装置6に到達する。このブリルアン散乱光の時間遅れから歪の発生している場所が特定される。また、ブリルアン散乱光の周波数シフトが検出され、図6の関係からその場所の歪が分析される。
【0046】
そして、この分析データが隣接するパーソナルコンピュータ6aに入力され、このパーソナルコンピュータにおいて、各地点の腐食の程度が歪測定用光ファイバー芯線4の歪の変化に比例する値として表示され、この歪の値が一定の値以下になった時に、その箇所で腐食が許容値以上に進んでいるということがわかる。
【0047】
このようにして、この腐食監視装置1は、橋梁3の構造物の腐食を複数の地点において監視したり計測することができるようになっている。
【0048】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態に係る腐食監視装置1によれば、腐食監視用部材5が、歪測定用光ファイバー芯線4の歪を保つように歪測定用光ファイバー芯線4に接合されているので、腐食のために腐食監視用部材5の強度が低下すると、歪測定用光ファイバー芯線4のあらかじめ加えられていたテンションが緩和されて歪が減少する。
【0049】
そして、連絡用光ファイバー芯線7を介して歪測定用光ファイバー芯線4に接続されている散乱光分析装置6が、この歪測定用光ファイバー芯線4の歪の変化を検出することができるので、現地から遠く離れた中央監視センターなどからでも、橋梁3などの構造物の腐食の監視や腐食環境の腐食促進性の計測を自動的に行うことが可能となる。また、その結果、人手による外観検査や点検などを現地で行う必要がないので、構造物の維持管理に係る人件費を大幅に低減することができるようになる。
【0050】
また、腐食監視用部材5が、歪測定用光ファイバー芯線4を連続的に拘束しているので、この歪測定用光ファイバー芯線4を連続的に拘束する範囲内であれば、腐食監視用部材5のいずれの部分であっても腐食が発生した位置とその腐食の程度とを精度良く判定することができる。
【0051】
また、腐食監視用部材5を歪測定用光ファイバー芯線4を挟持する板材として形成するという簡単な構成で、保管と取り扱いが容易な精度が良い腐食監視装置1を実現することができる。また、構造物への取り付けが容易になる。
【0052】
また、歪測定用光ファイバー芯線が、補強材により、複合・補強されているので、単体では強度が不足する光ファイバー芯線も歪測定用光ファイバー芯線として用いることができる。
【0053】
次に図7と図8とを参照して、本発明の第2の実施形態に係る腐食監視ユニット22について説明する。図7は、本発明の第2の実施形態に係る腐食監視ユニット22の構成を示す斜視図であり、図8は、本発明の第2の実施形態に係る腐食監視ユニット22の構成を示す断面図である。なお以下の説明では、本発明の第1の実施の形態に係る腐食監視装置1と同様の部材には同一の符号を付し、重複する説明を省略するものとする。
【0054】
図7と図8とに示すように、本発明の第2の実施形態に係る腐食監視ユニット22は、第1の実施形態に係る腐食監視ユニット2と異なり、温度測定用光ファイバー芯線8と、この温度測定用光ファイバー芯線8を腐食監視用部材5に対して変位可能に保持する歪緩衝手段9とをさらに備えている。
【0055】
上記温度測定用光ファイバー芯線8は、歪測定用光ファイバー芯線4と同様に、光を伝達する光ファイバコアと、光を反射するクラッドと、光ファイバコアおよびクラッドを外界から保護する被覆層とを有している。また、この温度測定用光ファイバー芯線8は、散乱光分析装置6において歪測定用光ファイバー芯線4とは別のチャンネルに連絡用光ファイバー芯線7aを介して接続されている。
【0056】
なお、この温度測定用光ファイバー芯線8は、歪測定用光ファイバー芯線4とは異なり、長手方向に歪が加えられることはない。
【0057】
上記歪緩衝手段9は、温度測定用光ファイバー芯線8を内部に保持する合成樹脂管10を腐食監視用部材5の中に備え、この合成樹脂管10は、温度測定用光ファイバー芯線8を滑らかに保持することにより、温度測定用光ファイバー芯線8が、腐食監視用部材5に対して変位することができるようになっている。すなわち、温度測定用光ファイバー芯線8は、温度測定用光ファイバー芯線8と腐食監視用部材5との間に設けられた歪緩衝手段9により、腐食監視用部材5と接合されずに、腐食監視用部材5に対して変位可能に保持されているので、歪が少なくなっている。
【0058】
このように第2の実施形態に係る腐食監視ユニット22によれば、温度測定用光ファイバー芯線8をさらに備え、しかも歪緩衝手段9が、この温度測定用光ファイバー芯線8を腐食監視用部材5に対して変位可能に保持しているので、歪の少ない状態に温度測定用光ファイバー芯線8を保つことができる。その結果、歪の影響の少ない正確な温度測定をすることができる。
【0059】
しかも、合成樹脂管10を腐食監視用部材5の中に設け、この合成樹脂管10の内部に温度測定用光ファイバー芯線8を保持させるという簡単な構成で、歪緩衝手段9を実現して、正確に歪測定用光ファイバー芯線4の測定結果の温度補正をすることができるようになっている。その結果、この温度測定の結果を用いて正確に歪測定用光ファイバー芯線4の測定結果の温度補正をすることができるので、腐食の程度をさらに精度良く判定することができるようになる。
【0060】
また、図9を参照して、本発明の第3の実施形態に係る腐食監視ユニット32について説明する。図9は、本発明の第3の実施形態に係る腐食監視ユニット32の構成を示す斜視図である。なお以下の説明では、本発明の第1の実施の形態に係る腐食監視ユニット2と同様の部材には同一の符号を付し、重複する説明を省略するものとする。
【0061】
図9に示すように、本発明の第3の実施形態に係る腐食監視ユニット32は、第1の実施形態に係る腐食監視ユニット2と異なり、腐食監視用部材35が、歪測定用光ファイバー芯線4を断続的に拘束するように構成されている。すなわち、第3の実施形態に係る腐食監視ユニット32においては、腐食監視用部材35が、管状に形成され、この管状の腐食監視用部材35の絞り加工部36が、歪測定用光ファイバー芯線4を断続的に拘束するようになっている。
【0062】
このように第3の実施形態に係る腐食監視ユニット32によれば、歪測定用光ファイバー芯線4を連続的に拘束する必要がないので、腐食監視ユニット32の製造に係るコストを低減して、安価な腐食監視装置を実現することができる。
【0063】
また、この場合は、拘束と拘束との間の範囲内において歪測定用光ファイバー芯線4の歪が一様になるので、この範囲内の位置を特定することはできないが、範囲内のいずれかの部分で腐食が発生すれば、歪測定用光ファイバー芯線4に一様な歪の変化が現れるので、この範囲内で腐食が発生していることを判定することができる。
【0064】
すなわち、腐食が発生している位置を精度良く判定する必要が無い場合は、このように、腐食監視用部材35に歪測定用光ファイバー芯線4を断続的に拘束させることにより、腐食監視装置の製造に係るコストを低減して、安価な腐食監視装置を実現することができる。
【0065】
特に、この第3の実施形態に係る腐食監視ユニット32によれば、腐食監視用部材35を管状に形成して、この管状の腐食監視用部材35の絞り加工部36で歪測定用光ファイバー芯線4を断続的に拘束するという簡単な構成で、腐食監視装置の製造に係るコストを低減して、安価な腐食監視装置を実現することができるようになる。
【0066】
上述した実施形態は本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は上述した実施形態に限定されない。
【0067】
例えば、橋梁3は、新幹線など鉄道の橋梁3に限定されない。自動車その他の橋梁3などにも適用可能である。また、腐食を監視すべき構造物であれば、橋梁3に限らず、どのような構造物にも適用可能である。また、腐食促進性を計測すべき腐食環境であれば、どのような環境にも適用可能である。
【0068】
また、腐食監視用部材5も鋼板に限らない。腐食を監視したり計測しようとする構造物と同じ材質であれば、どのような材料にも適用可能である。
【0069】
また、腐食監視用部材5は、必ずしも板材として形成される必要はない。例えば、図10は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る腐食監視ユニット42の斜視図を示し、腐食監視用部材として金属被覆層45が設けられた状態を示している。また、図11は、もう一つの本発明の第1の実施形態の変形例に係る腐食監視ユニット52の斜視図を示し、腐食監視用部材として繊維材料のテープ状の被覆層55が設けられた状態を示している。また、図12は、本発明の第2の実施形態の変形例に係る腐食監視ユニット62の変形例を示し、腐食監視用部材として金属被覆層65が設けられた状態を示している。これらの変形例に係る腐食監視ユニット42、52、62においては、腐食監視用部材45、55、65は、それぞれ歪測定用光ファイバー芯線4の被覆層として形成されることにより歪測定用光ファイバー芯線4を連続的に拘束するように構成されている。
【0070】
このようにすれば、腐食監視用部材を歪測定用光ファイバー芯線4の被覆層として形成するという簡単な構成で、保管と取り扱いが容易な精度が良い腐食監視装置を実現することができる。
【0071】
また、散乱光分析装置6も、さまざまな散乱光分析装置6が採用可能であり、必ずしもブリルアン散乱光の周波数シフトと歪測定用光ファイバー芯線4の歪との関係によるものである必要はない。ラマン散乱光など、種々の散乱光が採用可能である。また、種々の周波数のレーザ光が採用可能である。
【0072】
また、歪緩衝手段9は、温度測定用光ファイバー芯線8を内部に保持する合成樹脂管10に限定されない。温度測定用光ファイバー芯線8を、腐食監視用部材5に対して変位可能に保持するものであれば、種々の設計変更が可能である。
【0073】
また、本発明の第3の実施形態に係る腐食監視ユニット32も、必ずしも図示のように、腐食監視用部材35が、管状に形成され、この管状の腐食監視用部材35の絞り加工部36が、歪測定用光ファイバー芯線4を断続的に拘束するようになっているものに限定されない。例えば、図13は、本発明の第3の実施形態の第1の変形例に係る腐食監視ユニット72を示している。この第3の実施形態の第1の変形例に係る腐食監視ユニット72においては、腐食監視用部材75は、歪測定用光ファイバー芯線4を緩やかに覆うフレキシブルな被覆管として形成されるとともに、このフレキシブルな被覆管の腐食監視用部材75がところどころ樹脂76で固められることにより、歪測定用光ファイバー芯線4を断続的に拘束するようになっている。
【0074】
また、図14は、本発明の第3の実施形態の第2の変形例に係る腐食監視ユニット82を示す斜視図であり、図15は、その分解斜視図である。
【0075】
図14と図15とに示すように、第3の実施形態の第2の変形例に係る腐食監視ユニット72においては、図2の本発明の第1の実施形態に係る腐食監視ユニット2において、腐食監視用部材5は、歪測定用光ファイバー芯線4に加えられたテンションによる歪を保つように、歪測定用光ファイバー芯線4に合成樹脂のような接合材81で断続的に拘束されている。
【0076】
また、図16は、本発明の第3の実施形態の第3の変形例に係る腐食監視ユニットを示す斜視図である。
【0077】
図16に示すように、第3の実施形態の第3の変形例に係る腐食監視ユニット92においては、図7の本発明の第2の実施形態に係る腐食監視ユニット22において、腐食監視用部材5が、歪測定用光ファイバー芯線4に加えられたテンションによる歪を保つように、歪測定用光ファイバー芯線4に合成樹脂のような接合材91で断続的に拘束されている。
【0078】
これら第3の実施形態の第1から第3の変形例に係る腐食監視ユニット72、82、92によれば、構造が簡単なので、腐食監視装置の製造に係るコストをさらに低減して、より安価な腐食監視装置を実現することができる。
【0079】
また、同様に、図10、図11の第1の実施形態の変形例に係る腐食監視ユニットにおいて、歪測定用光ファイバー芯線4を断続的に拘束することも採用可能である。
【0080】
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る腐食監視装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る腐食監視装置の腐食監視ユニットの構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る腐食監視装置の腐食監視ユニットの構成を示す断面図である。
【図4】腐食監視ユニットの製作の要領を示す斜視図である。
【図5】腐食監視ユニットの作用を示す断面図であり、(a)は、歪が加えられる前の長さがDの状態の歪測定用光ファイバー芯線4を、(b)は、あらかじめ長手方向にテンションが加えられた後の長さがD+ΔDとなった状態の歪測定用光ファイバー芯線を、それぞ示している。また、(c)は、歪測定用光ファイバー芯線に歪が加えられた状態で腐食監視用部材が接合された状態の歪測定用光ファイバー芯線を、(d)は、歪測定用光ファイバー芯線の歪による応力と腐食監視用部材の歪による応力とが均衡し、(c)の状態から寸法だけ収縮して歪が残存した状態を、(e)は、腐食監視用部材が腐食して寸法がだけ収縮し、歪測定用光ファイバー芯線の歪が緩和された状態を、それぞれ示している。
【図6】歪測定用光ファイバー芯線におけるブリルアン散乱光の周波数シフトと歪測定用光ファイバー芯線の歪との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る腐食監視ユニットの構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る腐食監視ユニットの構成を示す断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る腐食監視ユニットの構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の第1の実施形態の変形例に係る腐食監視ユニットの斜視図を示し、腐食監視用部材として金属被覆層が設けられた状態を示している。
【図11】もう一つの本発明の第1の実施形態の変形例に係る腐食監視ユニットの斜視図を示し、腐食監視用部材として繊維材料のテープ状の被覆層が設けられた状態を示している。
【図12】本発明の第2の実施形態の変形例に係る腐食監視ユニットの変形例を示し、腐食監視用部材として金属被覆層が設けられた状態を示している。
【図13】本発明の第3の実施形態の第1の変形例に係る腐食監視ユニットを示す斜視図である。
【図14】本発明の第3の実施形態の第2の変形例に係る腐食監視ユニットを示す斜視図である。
【図15】本発明の第3の実施形態の第2の変形例に係る腐食監視ユニットを示す分解斜視図である。
【図16】本発明の第3の実施形態の第3の変形例に係る腐食監視ユニットを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0082】
1 腐食監視装置
4 歪測定用光ファイバー芯線
5 腐食監視用部材
6 散乱光分析装置
7 連絡用光ファイバー芯線
8 温度測定用光ファイバー芯線
9 歪緩衝手段
10 合成樹脂管
36 絞り加工部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば橋梁などの構造物の腐食を監視したり、腐食環境の腐食促進性を計測するために採用される腐食監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、橋梁などの構造物は、長い間、風雨に曝されるうちに、腐食が進行し、構造物としての強度が低下するという現象が避けられない。
【0003】
そのため、このような構造物においては、構造部材の腐食を定期的に監視したり、腐食環境の腐食促進性を計測しなければならないが、従来、構造部材の腐食の監視や腐食環境の腐食促進性の計測は、目視による外観検査やハンマリングによる点検に頼らざるを得なかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような目視による外観検査やハンマリングによる点検などは、現地において人手で行われなければならず、橋梁などの構造物を維持管理するのに多大な費用を要するという問題があった。
【0005】
本発明は上記不具合に鑑みてなされたものであり、現地から遠く離れた中央監視センターなどからでも、橋梁などの構造物の腐食の監視や腐食環境の腐食促進性の計測を自動的かつ連続的に行うことが可能であり、構造物の維持管理に係る人件費を大幅に低減することができる腐食監視装置を提供することを課題としている。
【0006】
なお、本願に記載する腐食監視装置は、上述の腐食監視装置の従来技術のいずれにも該当せず、出願人の知る限りでは本願出願に類する公知例が無いため、本出願の時点では開示すべき先行技術文献情報は保有していない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、光ファイバコアおよびクラッドを有し、長手方向にテンションが加えられた歪測定用光ファイバー芯線と、この歪測定用光ファイバー芯線に加えられたテンションによる歪を保つように、歪測定用光ファイバー芯線に接合された腐食監視用部材とを備え、上記歪測定用光ファイバー芯線の光ファイバコアに不連続のレーザー光からなるポンプ光を入射して歪測定用光ファイバー芯線の歪に由来する散乱光を発生させるとともに、この光ファイバコアの散乱光を検出して歪測定用光ファイバー芯線の歪を分析する散乱光分析装置に、上記歪測定用光ファイバー芯線が連絡用光ファイバー芯線を介して光学的に接続され、上記散乱光分析装置は、上記腐食監視用部材が腐食した状態において緩和される歪測定用光ファイバー芯線の歪の変化を検出可能に構成されていることを特徴とする腐食監視装置である。
【0008】
本発明によれば、腐食監視用部材が、歪測定用光ファイバー芯線の歪を保つように歪測定用光ファイバー芯線に接合されているので、腐食のために腐食監視用部材の強度が低下すると、歪測定用光ファイバー芯線のあらかじめ加えられていたテンションが緩和されて歪が減少する。
【0009】
そして、連絡用光ファイバー芯線を介して歪測定用光ファイバー芯線に接続されている散乱光分析装置が、この歪測定用光ファイバー芯線の歪の変化を検出することができるので、現地から遠く離れた中央監視センターなどからでも、橋梁などの構造物の腐食の監視や腐食環境の腐食促進性の計測を自動的かつ連続的に行うことが可能となる。また、その結果、人手による外観検査や点検などを現地で行う必要がないので、構造物の維持管理に係る人件費を大幅に低減することができるようになる。
【0010】
ここで、上記腐食監視用部材は、歪測定用光ファイバー芯線を連続的に拘束するように構成されていることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、腐食監視用部材が、歪測定用光ファイバー芯線を連続的に拘束しているので、この歪測定用光ファイバー芯線を連続的に拘束する範囲内であれば、腐食監視用部材のいずれの部分であっても腐食が発生した位置とその腐食の程度とを精度良く判定することができる。
【0012】
また、上記腐食監視用部材は、歪測定用光ファイバー芯線の被覆層として形成されることにより歪測定用光ファイバー芯線を連続的に拘束するように構成されていることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、腐食監視用部材を歪測定用光ファイバー芯線の被覆層として形成するという簡単な構成で、保管と取り扱いが容易な精度が良い腐食監視装置を実現することができる。
【0014】
また、上記腐食監視用部材は、歪測定用光ファイバー芯線を挟持する板材として形成されることにより歪測定用光ファイバー芯線を連続的に拘束するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の腐食監視装置。
【0015】
このようにすれば、腐食監視用部材を歪測定用光ファイバー芯線を挟持する板材として形成するという簡単な構成で、保管と取り扱いが容易な精度が良い腐食監視装置を実現することができる。また、構造物への取り付けが容易になる。
【0016】
また、上記腐食監視用部材は、歪測定用光ファイバー芯線を断続的に拘束するように構成されていることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、歪測定用光ファイバー芯線を連続的に拘束する必要がないので、腐食監視装置の製造に係るコストを低減して、安価な腐食監視装置を実現することができる。
【0018】
なお、この場合は、拘束と拘束との間の範囲内において歪測定用光ファイバー芯線の歪が一様になるので、この範囲内の位置を特定することはできないが、範囲内のいずれかの部分で腐食が発生すれば、歪測定用光ファイバー芯線に一様な歪の変化が現れるので、この範囲内で腐食が発生していることを判定することができる。
【0019】
このように、腐食が発生している位置を精度良く判定する必要が無い場合は、腐食監視用部材に歪測定用光ファイバー芯線を断続的に拘束させることにより、腐食監視装置の製造に係るコストを低減して、安価な腐食監視装置を実現することができる。
【0020】
上記腐食監視用部材は、管状に形成され、この管状の腐食監視用部材の絞り加工部が、歪測定用光ファイバー芯線を断続的に拘束するように構成されていることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、腐食監視用部材を管状に形成して、この管状の腐食監視用部材の絞り加工部で歪測定用光ファイバー芯線を断続的に拘束するという簡単な構成で、腐食監視装置の製造に係るコストを低減して、安価な腐食監視装置を実現することができるようになる。
【0022】
また、この本発明に係る腐食監視装置は、上記歪測定用光ファイバー芯線に概ね平行して設けられ、光ファイバコアおよびクラッドを有する温度測定用光ファイバー芯線と、この温度測定用光ファイバー芯線を腐食監視用部材に対して変位可能に保持する歪緩衝手段と、をさらに備えていることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、歪緩衝手段が、温度測定用光ファイバー芯線を腐食監視用部材に対して変位可能に保持しているので、歪の少ない状態に温度測定用光ファイバー芯線を保つことができる。その結果、歪の影響の少ない正確な温度測定をすることができる。そして、この温度測定の結果を用いて正確に歪測定用光ファイバー芯線の測定結果の温度補正をすることができるので、腐食の程度をさらに精度良く判定することができるようになる。
【0024】
また、上記歪緩衝手段は、上記温度測定用光ファイバー芯線を内部に保持する合成樹脂管を上記腐食監視用部材の中に備え、この合成樹脂管は、温度測定用光ファイバー芯線を腐食監視用部材に対して変位可能に滑らかに保持していることが好ましい。
【0025】
このようにすれば、合成樹脂管を腐食監視用部材の中に設け、この合成樹脂管の内部に温度測定用光ファイバー芯線を保持させるという簡単な構成で、歪緩衝手段を実現して、正確に歪測定用光ファイバー芯線の測定結果の温度補正をすることができる。
【0026】
また、上記腐食監視用部材は、補強材により、複合・補強された状態の歪測定用光ファイバー芯線に接合されていることが好ましい。
【0027】
このようにすれば、歪測定用光ファイバー芯線が、補強材により、複合・補強されているので、単体では強度が不足する光ファイバー芯線も歪測定用光ファイバー芯線として用いることができるようになる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、現地から遠く離れた中央監視センターなどからでも、橋梁などの構造物の腐食の監視を自動的かつ連続的に行うことが可能となる。また、その結果、人手による外観検査や点検などを現地で行う必要がないので、構造物の維持管理に係る人件費を大幅に低減することができるようになるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る腐食監視装置1の構成を示す斜視図であり、図2は、本発明の第1の実施形態に係る腐食監視装置1の腐食監視ユニット2の構成を示す斜視図である。また、図3は、本発明の第1の実施形態に係る腐食監視装置1の腐食監視ユニット2の構成を示す断面図であり、図4は、腐食監視ユニット2の製作の要領を示す斜視図である。
【0030】
図1を参照して、図示の本発明の第1の実施形態に係る腐食監視装置1は、例えば、橋梁3の構造物の腐食を複数の地点において監視したり計測するために構成された装置であって、複数の腐食監視ユニット2と、散乱光分析装置6とを備え、これら複数の腐食監視ユニット2と散乱光分析装置6とは、相互に連絡用光ファイバー芯線7を介して光学的に接続されている。
【0031】
上記腐食監視ユニット2は、橋梁3の長手方向に沿う複数の地点に設置され、橋梁3の構造物の腐食を監視したり計測する装置であって、図2に示すように、それぞれ歪測定用光ファイバー芯線4と、歪測定用光ファイバー芯線4に接合された腐食監視用部材5とを備えている。また、この歪測定用光ファイバー芯線4は、連絡用光ファイバー芯線7を介して光学的に散乱光分析装置6(図1)に接続されている。
【0032】
そして、散乱光分析装置6は、詳細については後述するが、腐食監視用部材5が腐食した状態において緩和される歪測定用光ファイバー芯線4の歪の変化を検出するように構成され、腐食監視用部材5の腐食に基づく歪測定用光ファイバー芯線4の歪の変化により、腐食監視用部材5と同じ材質の橋梁3の構造物の腐食の程度を推定することができるようになっている。
【0033】
上記橋梁3(図1)は、腐食を監視すべき構造物であって、本実施形態では腐食監視ユニット2は、この橋梁3に用いられる鋼材を監視の対象としている。
【0034】
上記歪測定用光ファイバー芯線4は、図示しないが、光を伝達する光ファイバコアと、光を反射するクラッドと、光ファイバコアおよびクラッドを外界から保護する被覆層とを有し、補強材により、複合・補強されている。この歪測定用光ファイバー芯線4は、図4に示すように、あらかじめ長手方向に歪Tが加えられ、上側部材5aと下側部材5bとからなる腐食監視用部材5に挟持されて接合されることにより、腐食監視用部材5の接合後も加えられた歪が残存するように構成されている。
【0035】
また、腐食監視ユニット2のこれら歪測定用光ファイバー芯線4は、それぞれ連絡用光ファイバー芯線7に光学的に接続され、連続する1つの光学的経路を形成している。
【0036】
上記腐食監視用部材5は、歪測定用光ファイバー芯線4に加えられたテンションによる歪を保つように、歪測定用光ファイバー芯線4に接合された部材であり、腐食を監視しようとする橋梁3の構造物と同じ材質が選択されている。本実施形態では橋梁3を構成している鋼材と同じ組成の鋼板が対象となっている。
【0037】
この腐食監視用部材5は、本実施形態では、図4に示すように、歪測定用光ファイバー芯線4を挟持する上側部材5aと下側部材5bとを有し、互いに接合される鋼製の板材として形成されることにより歪測定用光ファイバー芯線4を連続的に拘束するように構成されている。
【0038】
上記散乱光分析装置6(図1)は、歪測定用光ファイバー芯線4の光ファイバコアに不連続のレーザー光からなるポンプ光を入射して歪測定用光ファイバー芯線4の歪に由来する散乱光を発生させるとともに、この光ファイバコアの散乱光を検出して歪測定用光ファイバー芯線4の歪を分析するものであり、歪測定用光ファイバー芯線4に連絡用光ファイバー芯線7を介して光学的に接続されている。
【0039】
この散乱光分析装置6は、腐食監視用部材5が腐食した状態において緩和される歪測定用光ファイバー芯線4の歪の変化を検出することができるように構成され、その分析結果を隣接するパーソナルコンピュータ10aに出力し、このパーソナルコンピュータにおいて、各地点の腐食の程度が歪測定用光ファイバー芯線4の歪の変化に比例する値として表示されるように構成されている。
【0040】
連絡用光ファイバー芯線7は、散乱光分析装置6からのレーザー光と歪測定用光ファイバー芯線4からの散乱光とを伝達するものであり、歪測定用光ファイバー芯線4と同様に、光を伝達する光ファイバコアと、光を反射するクラッドと、光ファイバコアおよびクラッドを外界から保護する被覆層とを有している。そして、散乱光分析装置6と歪測定用光ファイバー芯線4とに互いに光学的に接続されている。
【0041】
次に図5と図6とを参照して、本発明の実施の形態に係る腐食監視装置1の作用について説明する。
【0042】
図5は、腐食監視ユニット2の作用を示す断面図であり、(a)は、歪が加えられる前の長さがDの状態の歪測定用光ファイバー芯線4を、(b)は、あらかじめ長手方向にテンションが加えられた後の長さがD+ΔDとなった状態の歪測定用光ファイバー芯線4を、それぞれ示している。また、(c)は、歪測定用光ファイバー芯線4に歪が加えられた状態で腐食監視用部材5が接合された状態の歪測定用光ファイバー芯線4を、(d)は、歪測定用光ファイバー芯線4の歪による応力と腐食監視用部材5の歪による応力とが均衡し、(c)の状態から寸法dだけ収縮して歪が残存した状態を、(e)は、腐食監視用部材5が腐食して寸法がδだけ収縮し、歪測定用光ファイバー芯線4の歪が緩和された状態を、それぞれ示している。
【0043】
ここで、図6は、歪測定用光ファイバー芯線4におけるブリルアン散乱光の周波数シフトと歪測定用光ファイバー芯線4の歪との関係を示すグラフである。
【0044】
散乱光分析装置6が連絡用光ファイバー芯線7を介して腐食監視ユニット2の歪測定用光ファイバー芯線4にポンプ光を入射すると、歪測定用光ファイバー芯線4の歪に由来する散乱光が発生するので、この散乱光を検出することにより、歪測定用;光ファイバー芯線4の歪を判定してこの歪に応じた腐食の程度を容易に測定することができるようになる。
【0045】
散乱光分析装置6は、本実施形態では、特に歪測定用光ファイバー芯線4におけるブリルアン散乱光の周波数シフトと歪測定用光ファイバー芯線4の歪とが、図6に示すように比例関係になることを利用して歪測定用光ファイバー芯線4の歪を分析する。図6は、レーザ光の周波数が493MHz、波長が1.55μmの場合のブリルアン散乱光の周波数シフトのグラフであり、周波数が493MHzのレーザ光のパルスを歪測定用光ファイバー芯線4に入射すると、ブリルアン散乱光が、歪測定用光ファイバー芯線4から逆向きに散乱光分析装置6に到達する。このブリルアン散乱光の時間遅れから歪の発生している場所が特定される。また、ブリルアン散乱光の周波数シフトが検出され、図6の関係からその場所の歪が分析される。
【0046】
そして、この分析データが隣接するパーソナルコンピュータ6aに入力され、このパーソナルコンピュータにおいて、各地点の腐食の程度が歪測定用光ファイバー芯線4の歪の変化に比例する値として表示され、この歪の値が一定の値以下になった時に、その箇所で腐食が許容値以上に進んでいるということがわかる。
【0047】
このようにして、この腐食監視装置1は、橋梁3の構造物の腐食を複数の地点において監視したり計測することができるようになっている。
【0048】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態に係る腐食監視装置1によれば、腐食監視用部材5が、歪測定用光ファイバー芯線4の歪を保つように歪測定用光ファイバー芯線4に接合されているので、腐食のために腐食監視用部材5の強度が低下すると、歪測定用光ファイバー芯線4のあらかじめ加えられていたテンションが緩和されて歪が減少する。
【0049】
そして、連絡用光ファイバー芯線7を介して歪測定用光ファイバー芯線4に接続されている散乱光分析装置6が、この歪測定用光ファイバー芯線4の歪の変化を検出することができるので、現地から遠く離れた中央監視センターなどからでも、橋梁3などの構造物の腐食の監視や腐食環境の腐食促進性の計測を自動的に行うことが可能となる。また、その結果、人手による外観検査や点検などを現地で行う必要がないので、構造物の維持管理に係る人件費を大幅に低減することができるようになる。
【0050】
また、腐食監視用部材5が、歪測定用光ファイバー芯線4を連続的に拘束しているので、この歪測定用光ファイバー芯線4を連続的に拘束する範囲内であれば、腐食監視用部材5のいずれの部分であっても腐食が発生した位置とその腐食の程度とを精度良く判定することができる。
【0051】
また、腐食監視用部材5を歪測定用光ファイバー芯線4を挟持する板材として形成するという簡単な構成で、保管と取り扱いが容易な精度が良い腐食監視装置1を実現することができる。また、構造物への取り付けが容易になる。
【0052】
また、歪測定用光ファイバー芯線が、補強材により、複合・補強されているので、単体では強度が不足する光ファイバー芯線も歪測定用光ファイバー芯線として用いることができる。
【0053】
次に図7と図8とを参照して、本発明の第2の実施形態に係る腐食監視ユニット22について説明する。図7は、本発明の第2の実施形態に係る腐食監視ユニット22の構成を示す斜視図であり、図8は、本発明の第2の実施形態に係る腐食監視ユニット22の構成を示す断面図である。なお以下の説明では、本発明の第1の実施の形態に係る腐食監視装置1と同様の部材には同一の符号を付し、重複する説明を省略するものとする。
【0054】
図7と図8とに示すように、本発明の第2の実施形態に係る腐食監視ユニット22は、第1の実施形態に係る腐食監視ユニット2と異なり、温度測定用光ファイバー芯線8と、この温度測定用光ファイバー芯線8を腐食監視用部材5に対して変位可能に保持する歪緩衝手段9とをさらに備えている。
【0055】
上記温度測定用光ファイバー芯線8は、歪測定用光ファイバー芯線4と同様に、光を伝達する光ファイバコアと、光を反射するクラッドと、光ファイバコアおよびクラッドを外界から保護する被覆層とを有している。また、この温度測定用光ファイバー芯線8は、散乱光分析装置6において歪測定用光ファイバー芯線4とは別のチャンネルに連絡用光ファイバー芯線7aを介して接続されている。
【0056】
なお、この温度測定用光ファイバー芯線8は、歪測定用光ファイバー芯線4とは異なり、長手方向に歪が加えられることはない。
【0057】
上記歪緩衝手段9は、温度測定用光ファイバー芯線8を内部に保持する合成樹脂管10を腐食監視用部材5の中に備え、この合成樹脂管10は、温度測定用光ファイバー芯線8を滑らかに保持することにより、温度測定用光ファイバー芯線8が、腐食監視用部材5に対して変位することができるようになっている。すなわち、温度測定用光ファイバー芯線8は、温度測定用光ファイバー芯線8と腐食監視用部材5との間に設けられた歪緩衝手段9により、腐食監視用部材5と接合されずに、腐食監視用部材5に対して変位可能に保持されているので、歪が少なくなっている。
【0058】
このように第2の実施形態に係る腐食監視ユニット22によれば、温度測定用光ファイバー芯線8をさらに備え、しかも歪緩衝手段9が、この温度測定用光ファイバー芯線8を腐食監視用部材5に対して変位可能に保持しているので、歪の少ない状態に温度測定用光ファイバー芯線8を保つことができる。その結果、歪の影響の少ない正確な温度測定をすることができる。
【0059】
しかも、合成樹脂管10を腐食監視用部材5の中に設け、この合成樹脂管10の内部に温度測定用光ファイバー芯線8を保持させるという簡単な構成で、歪緩衝手段9を実現して、正確に歪測定用光ファイバー芯線4の測定結果の温度補正をすることができるようになっている。その結果、この温度測定の結果を用いて正確に歪測定用光ファイバー芯線4の測定結果の温度補正をすることができるので、腐食の程度をさらに精度良く判定することができるようになる。
【0060】
また、図9を参照して、本発明の第3の実施形態に係る腐食監視ユニット32について説明する。図9は、本発明の第3の実施形態に係る腐食監視ユニット32の構成を示す斜視図である。なお以下の説明では、本発明の第1の実施の形態に係る腐食監視ユニット2と同様の部材には同一の符号を付し、重複する説明を省略するものとする。
【0061】
図9に示すように、本発明の第3の実施形態に係る腐食監視ユニット32は、第1の実施形態に係る腐食監視ユニット2と異なり、腐食監視用部材35が、歪測定用光ファイバー芯線4を断続的に拘束するように構成されている。すなわち、第3の実施形態に係る腐食監視ユニット32においては、腐食監視用部材35が、管状に形成され、この管状の腐食監視用部材35の絞り加工部36が、歪測定用光ファイバー芯線4を断続的に拘束するようになっている。
【0062】
このように第3の実施形態に係る腐食監視ユニット32によれば、歪測定用光ファイバー芯線4を連続的に拘束する必要がないので、腐食監視ユニット32の製造に係るコストを低減して、安価な腐食監視装置を実現することができる。
【0063】
また、この場合は、拘束と拘束との間の範囲内において歪測定用光ファイバー芯線4の歪が一様になるので、この範囲内の位置を特定することはできないが、範囲内のいずれかの部分で腐食が発生すれば、歪測定用光ファイバー芯線4に一様な歪の変化が現れるので、この範囲内で腐食が発生していることを判定することができる。
【0064】
すなわち、腐食が発生している位置を精度良く判定する必要が無い場合は、このように、腐食監視用部材35に歪測定用光ファイバー芯線4を断続的に拘束させることにより、腐食監視装置の製造に係るコストを低減して、安価な腐食監視装置を実現することができる。
【0065】
特に、この第3の実施形態に係る腐食監視ユニット32によれば、腐食監視用部材35を管状に形成して、この管状の腐食監視用部材35の絞り加工部36で歪測定用光ファイバー芯線4を断続的に拘束するという簡単な構成で、腐食監視装置の製造に係るコストを低減して、安価な腐食監視装置を実現することができるようになる。
【0066】
上述した実施形態は本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は上述した実施形態に限定されない。
【0067】
例えば、橋梁3は、新幹線など鉄道の橋梁3に限定されない。自動車その他の橋梁3などにも適用可能である。また、腐食を監視すべき構造物であれば、橋梁3に限らず、どのような構造物にも適用可能である。また、腐食促進性を計測すべき腐食環境であれば、どのような環境にも適用可能である。
【0068】
また、腐食監視用部材5も鋼板に限らない。腐食を監視したり計測しようとする構造物と同じ材質であれば、どのような材料にも適用可能である。
【0069】
また、腐食監視用部材5は、必ずしも板材として形成される必要はない。例えば、図10は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る腐食監視ユニット42の斜視図を示し、腐食監視用部材として金属被覆層45が設けられた状態を示している。また、図11は、もう一つの本発明の第1の実施形態の変形例に係る腐食監視ユニット52の斜視図を示し、腐食監視用部材として繊維材料のテープ状の被覆層55が設けられた状態を示している。また、図12は、本発明の第2の実施形態の変形例に係る腐食監視ユニット62の変形例を示し、腐食監視用部材として金属被覆層65が設けられた状態を示している。これらの変形例に係る腐食監視ユニット42、52、62においては、腐食監視用部材45、55、65は、それぞれ歪測定用光ファイバー芯線4の被覆層として形成されることにより歪測定用光ファイバー芯線4を連続的に拘束するように構成されている。
【0070】
このようにすれば、腐食監視用部材を歪測定用光ファイバー芯線4の被覆層として形成するという簡単な構成で、保管と取り扱いが容易な精度が良い腐食監視装置を実現することができる。
【0071】
また、散乱光分析装置6も、さまざまな散乱光分析装置6が採用可能であり、必ずしもブリルアン散乱光の周波数シフトと歪測定用光ファイバー芯線4の歪との関係によるものである必要はない。ラマン散乱光など、種々の散乱光が採用可能である。また、種々の周波数のレーザ光が採用可能である。
【0072】
また、歪緩衝手段9は、温度測定用光ファイバー芯線8を内部に保持する合成樹脂管10に限定されない。温度測定用光ファイバー芯線8を、腐食監視用部材5に対して変位可能に保持するものであれば、種々の設計変更が可能である。
【0073】
また、本発明の第3の実施形態に係る腐食監視ユニット32も、必ずしも図示のように、腐食監視用部材35が、管状に形成され、この管状の腐食監視用部材35の絞り加工部36が、歪測定用光ファイバー芯線4を断続的に拘束するようになっているものに限定されない。例えば、図13は、本発明の第3の実施形態の第1の変形例に係る腐食監視ユニット72を示している。この第3の実施形態の第1の変形例に係る腐食監視ユニット72においては、腐食監視用部材75は、歪測定用光ファイバー芯線4を緩やかに覆うフレキシブルな被覆管として形成されるとともに、このフレキシブルな被覆管の腐食監視用部材75がところどころ樹脂76で固められることにより、歪測定用光ファイバー芯線4を断続的に拘束するようになっている。
【0074】
また、図14は、本発明の第3の実施形態の第2の変形例に係る腐食監視ユニット82を示す斜視図であり、図15は、その分解斜視図である。
【0075】
図14と図15とに示すように、第3の実施形態の第2の変形例に係る腐食監視ユニット72においては、図2の本発明の第1の実施形態に係る腐食監視ユニット2において、腐食監視用部材5は、歪測定用光ファイバー芯線4に加えられたテンションによる歪を保つように、歪測定用光ファイバー芯線4に合成樹脂のような接合材81で断続的に拘束されている。
【0076】
また、図16は、本発明の第3の実施形態の第3の変形例に係る腐食監視ユニットを示す斜視図である。
【0077】
図16に示すように、第3の実施形態の第3の変形例に係る腐食監視ユニット92においては、図7の本発明の第2の実施形態に係る腐食監視ユニット22において、腐食監視用部材5が、歪測定用光ファイバー芯線4に加えられたテンションによる歪を保つように、歪測定用光ファイバー芯線4に合成樹脂のような接合材91で断続的に拘束されている。
【0078】
これら第3の実施形態の第1から第3の変形例に係る腐食監視ユニット72、82、92によれば、構造が簡単なので、腐食監視装置の製造に係るコストをさらに低減して、より安価な腐食監視装置を実現することができる。
【0079】
また、同様に、図10、図11の第1の実施形態の変形例に係る腐食監視ユニットにおいて、歪測定用光ファイバー芯線4を断続的に拘束することも採用可能である。
【0080】
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る腐食監視装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る腐食監視装置の腐食監視ユニットの構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る腐食監視装置の腐食監視ユニットの構成を示す断面図である。
【図4】腐食監視ユニットの製作の要領を示す斜視図である。
【図5】腐食監視ユニットの作用を示す断面図であり、(a)は、歪が加えられる前の長さがDの状態の歪測定用光ファイバー芯線4を、(b)は、あらかじめ長手方向にテンションが加えられた後の長さがD+ΔDとなった状態の歪測定用光ファイバー芯線を、それぞ示している。また、(c)は、歪測定用光ファイバー芯線に歪が加えられた状態で腐食監視用部材が接合された状態の歪測定用光ファイバー芯線を、(d)は、歪測定用光ファイバー芯線の歪による応力と腐食監視用部材の歪による応力とが均衡し、(c)の状態から寸法だけ収縮して歪が残存した状態を、(e)は、腐食監視用部材が腐食して寸法がだけ収縮し、歪測定用光ファイバー芯線の歪が緩和された状態を、それぞれ示している。
【図6】歪測定用光ファイバー芯線におけるブリルアン散乱光の周波数シフトと歪測定用光ファイバー芯線の歪との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る腐食監視ユニットの構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る腐食監視ユニットの構成を示す断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る腐食監視ユニットの構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の第1の実施形態の変形例に係る腐食監視ユニットの斜視図を示し、腐食監視用部材として金属被覆層が設けられた状態を示している。
【図11】もう一つの本発明の第1の実施形態の変形例に係る腐食監視ユニットの斜視図を示し、腐食監視用部材として繊維材料のテープ状の被覆層が設けられた状態を示している。
【図12】本発明の第2の実施形態の変形例に係る腐食監視ユニットの変形例を示し、腐食監視用部材として金属被覆層が設けられた状態を示している。
【図13】本発明の第3の実施形態の第1の変形例に係る腐食監視ユニットを示す斜視図である。
【図14】本発明の第3の実施形態の第2の変形例に係る腐食監視ユニットを示す斜視図である。
【図15】本発明の第3の実施形態の第2の変形例に係る腐食監視ユニットを示す分解斜視図である。
【図16】本発明の第3の実施形態の第3の変形例に係る腐食監視ユニットを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0082】
1 腐食監視装置
4 歪測定用光ファイバー芯線
5 腐食監視用部材
6 散乱光分析装置
7 連絡用光ファイバー芯線
8 温度測定用光ファイバー芯線
9 歪緩衝手段
10 合成樹脂管
36 絞り加工部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバコアおよびクラッドを有し、長手方向にテンションが加えられた歪測定用光ファイバー芯線と、
この歪測定用光ファイバー芯線に加えられたテンションによる歪を保つように、歪測定用光ファイバー芯線に接合された腐食監視用部材とを備え、
上記歪測定用光ファイバー芯線の光ファイバコアに不連続のレーザー光からなるポンプ光を入射して歪測定用光ファイバー芯線の歪に由来する散乱光を発生させるとともに、この光ファイバコアの散乱光を検出して歪測定用光ファイバー芯線の歪を分析する散乱光分析装置に、上記歪測定用光ファイバー芯線が連絡用光ファイバー芯線を介して光学的に接続され、
上記散乱光分析装置は、上記腐食監視用部材が腐食した状態において緩和される歪測定用光ファイバー芯線の歪の変化を検出することにより、腐食監視用部材の腐食を判定可能に構成されていることを特徴とする腐食監視装置。
【請求項2】
上記腐食監視用部材は、歪測定用光ファイバー芯線を連続的に拘束するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の腐食監視装置。
【請求項3】
上記腐食監視用部材は、歪測定用光ファイバー芯線の被覆層として形成されることにより歪測定用光ファイバー芯線を連続的に拘束するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の腐食監視装置。
【請求項4】
上記腐食監視用部材は、歪測定用光ファイバー芯線を挟持する板材として形成されることにより歪測定用光ファイバー芯線を連続的に拘束するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の腐食監視装置。
【請求項5】
上記腐食監視用部材は、歪測定用光ファイバー芯線を断続的に拘束するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の腐食監視装置。
【請求項6】
上記腐食監視用部材は、管状に形成され、この管状の腐食監視用部材の絞り加工部が、歪測定用光ファイバー芯線を断続的に拘束するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の腐食監視装置。
【請求項7】
上記歪測定用光ファイバー芯線に概ね平行して設けられ、光ファイバコアおよびクラッドを有する温度測定用光ファイバー芯線と、
この温度測定用光ファイバー芯線を腐食監視用部材に対して変位可能に保持する歪緩衝手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の腐食監視装置。
【請求項8】
上記歪緩衝手段は、上記温度測定用光ファイバー芯線を内部に保持する合成樹脂管を上記腐食監視用部材の中に備え、
この合成樹脂管は、温度測定用光ファイバー芯線を腐食監視用部材に対して変位可能に滑らかに保持していることを特徴とする請求項7に記載の腐食監視装置。
【請求項9】
上記腐食監視用部材は、補強材により、複合・補強された状態の歪測定用光ファイバー芯線に接合されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の腐食監視装置。
【請求項1】
光ファイバコアおよびクラッドを有し、長手方向にテンションが加えられた歪測定用光ファイバー芯線と、
この歪測定用光ファイバー芯線に加えられたテンションによる歪を保つように、歪測定用光ファイバー芯線に接合された腐食監視用部材とを備え、
上記歪測定用光ファイバー芯線の光ファイバコアに不連続のレーザー光からなるポンプ光を入射して歪測定用光ファイバー芯線の歪に由来する散乱光を発生させるとともに、この光ファイバコアの散乱光を検出して歪測定用光ファイバー芯線の歪を分析する散乱光分析装置に、上記歪測定用光ファイバー芯線が連絡用光ファイバー芯線を介して光学的に接続され、
上記散乱光分析装置は、上記腐食監視用部材が腐食した状態において緩和される歪測定用光ファイバー芯線の歪の変化を検出することにより、腐食監視用部材の腐食を判定可能に構成されていることを特徴とする腐食監視装置。
【請求項2】
上記腐食監視用部材は、歪測定用光ファイバー芯線を連続的に拘束するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の腐食監視装置。
【請求項3】
上記腐食監視用部材は、歪測定用光ファイバー芯線の被覆層として形成されることにより歪測定用光ファイバー芯線を連続的に拘束するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の腐食監視装置。
【請求項4】
上記腐食監視用部材は、歪測定用光ファイバー芯線を挟持する板材として形成されることにより歪測定用光ファイバー芯線を連続的に拘束するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の腐食監視装置。
【請求項5】
上記腐食監視用部材は、歪測定用光ファイバー芯線を断続的に拘束するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の腐食監視装置。
【請求項6】
上記腐食監視用部材は、管状に形成され、この管状の腐食監視用部材の絞り加工部が、歪測定用光ファイバー芯線を断続的に拘束するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の腐食監視装置。
【請求項7】
上記歪測定用光ファイバー芯線に概ね平行して設けられ、光ファイバコアおよびクラッドを有する温度測定用光ファイバー芯線と、
この温度測定用光ファイバー芯線を腐食監視用部材に対して変位可能に保持する歪緩衝手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の腐食監視装置。
【請求項8】
上記歪緩衝手段は、上記温度測定用光ファイバー芯線を内部に保持する合成樹脂管を上記腐食監視用部材の中に備え、
この合成樹脂管は、温度測定用光ファイバー芯線を腐食監視用部材に対して変位可能に滑らかに保持していることを特徴とする請求項7に記載の腐食監視装置。
【請求項9】
上記腐食監視用部材は、補強材により、複合・補強された状態の歪測定用光ファイバー芯線に接合されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の腐食監視装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−191076(P2008−191076A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27890(P2007−27890)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(597178489)
【出願人】(303021609)ニューブレクス株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(597178489)
【出願人】(303021609)ニューブレクス株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
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