説明

腐食電位測定装置

【課題】 プラント配管に接続したままで校正を行うことを可能とした腐食電位測定装置を提供する。
【解決手段】 プラント配管内を流れる水中における材料の腐食電位を測定するための装置であって、プラント配管に接続しプラント配管内を流れる水中における材料の腐食電位を測定する腐食電位計と、腐食電位計に接続し酸素濃度の既知な校正用の純水を貯水した腐食電位校正用大気飽和水注入部とを備え、腐食電位計の校正時には、腐食電位校正用大気飽和水注入部は、校正用の純水とプラント配管内の水とを各々単独あるいは混合して腐食電位計に注入し、腐食電位計は、前記プラント配管に接続したままで校正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント配管内を流れる水中における材料の腐食電位を測定するための装置に関し、特に、プラント配管に接続したままで校正を行うことを可能とした腐食電位測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加圧水型原子力発電所(以下、PWR発電所とする)の二次系の構造材料として用いられている炭素鋼配管の腐食(全面腐食、流れ加速型腐食など)に伴い、厳密な肉厚測定に基づく減肉管理や配管取替えに多大な費用や労力を要しており、また、一方で、配管から冷却材が流出した事例も報告されている。
【0003】
更に、炭素鋼配管の腐食によって生成した腐食生成物が、蒸気発生器伝熱管や、その他の熱交換器の伝熱管にスケールとして付着することで、伝熱管の腐食環境を形成するほか、発電所の熱効率を低下させるなどの原因ともなっているため、PWR二次系において、炭素鋼配管の腐食を抑制することは極めて重要な課題となっている。
【0004】
このように、PWR発電所二次冷却系では炭素鋼配管の腐食を抑制する必要があるが、そのためには、まず、配管内を流れる水中における材料の腐食電位を監視するためのモニタリングが必要となる。
【0005】
加圧水型原子炉等のプラントの腐食電位をモニタリングする技術としては特許文献1に記載の技術がある。特許文献1には、一次冷却水出口水壁から一次冷却水の一部を導入する容器、導入配管、容器内の一次冷却水を一次冷却水戻り配管に戻す排出配管、容器内の一次冷却水に浸漬された伝熱管材料、外部照合電極、キャピラリ、および容器の外部のディジタル電圧計で構成された腐食電位測定系が開示されている。
【特許文献1】特開平8−304589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、腐食電位計は工場試験では校正されているが、実機に設置した場合にはセンサー毎に差が生じる場合もある。また、腐食電位計の校正を行う場合には、PWR発電所二次冷却系から取り外す必要があるため校正には時間が必要となる。
【0007】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、プラント配管に接続したままで校正を行うことを可能とした腐食電位測定装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、プラント配管内を流れる水中における材料の腐食電位を測定するための装置であって、プラント配管に接続し、プラント配管内を流れる水中における材料の腐食電位を測定する腐食電位計と、腐食電位計に接続し、酸素濃度の既知な校正用の純水を貯水した腐食電位校正用大気飽和水注入部とを備え、腐食電位計の校正時には、腐食電位校正用大気飽和水注入部は、校正用の純水とプラント配管内の水とを各々単独あるいは混合して腐食電位計に注入し、腐食電位計は、プラント配管に接続したままで校正を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の腐食電位測定装置によれば、酸素濃度の既知な校正用の純水を貯水した腐食電位校正用大気飽和水注入部を備えるため、プラント配管に接続したままで校正を行うことが可能となる。これにより、実機に設置した場合のセンサー毎の差を低減することが可能となり、校正に必要な時間を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態である腐食電位測定装置について、図を参照して詳細に説明をする。
【0011】
図1は、本実施形態の腐食電位測定装置の構成を示す図である。なお、以下の説明においては、具体例として、PWR発電所の二次冷却系に取り付けた場合について説明をするが、適用可能なプラントはこれに限られるものではなく、一般的なプラントの配管に取り付けることも当然に可能である。
【0012】
本実施形態の腐食電位測定装置100は、PWR発電所の二次冷却系の高圧給水加熱器(HPH)1の入口部配管10から分岐したサンプリング配管117を有し、さらに、サンプリング配管117から分岐したサンプリング配管119に第1の腐食電位計104が設置される。サンプリング配管117の末端はサンプリングラック107に接続する。バルブ109、111、及び113は上記サンプリング配管117、119への系統水の流量を調節する。
【0013】
また、本実施形態の腐食電位測定装置100は、高圧給水加熱器(HPH)1の出口部配管11から分岐したサンプリング配管118を有し、さらに、サンプリング配管118から分岐したサンプリング配管120に第2の腐食電位計105が設置される。サンプリング配管118の末端はサンプリングラック108に接続する。バルブ110、112、及び114は上記サンプリング配管118、120への二次冷却材の流量を調節する。
【0014】
本実施形態の腐食電位測定装置100の校正用配管121の一端は、サンプリング配管119の第1の腐食電位計104の入口側に接続しており、他端は、サンプリング配管120の第2の腐食電位計105の入口側に接続している。そして、校正用配管121のほぼ中間部には腐食電位校正用大気飽和水注入部106が備わる。
【0015】
本実施形態の腐食電位測定装置100は、二次冷却材中の腐食電位を正確に把握するために、系統母管10、11から分岐し、且つ、できるだけ直近(好ましくは1m以内、本実施形態では50cmとする)の位置に第1の腐食電位計104及び第2の腐食電位計105を設置し、また、第1の腐食電位計104及び第2の腐食電位計105の上流には、腐食電位計を校正するために酸素濃度の既知な純水を注入できる腐食電位校正用大気飽和水注入部106を設ける。
【0016】
第1のECP計104及び第2のECP計105は、例えば銀/塩化銀等の、環境と腐食電位の関係が既知な標準電極と、測定対象である炭素鋼あるいはステンレス鋼を電極とする試料電極から構成される。この2つの電極に系統水を通水して腐食電位を測定し、その対比を行うことにより、試料の腐食速度、および腐食状態を間接的に把握することができる。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の腐食電位測定装置100の第1の腐食電位計104及び第2の腐食電位計105を高圧給水加熱器(HPH)1の入口部配管10および出口部配管11の少なくとも2箇所に設置することで、2箇所の腐食電位を同時にモニタリングすることを可能としている。
【0018】
また、腐食電位校正用大気飽和水注入部106は、腐食電位計の個体差および経時的なドリフトにより指示値の信頼性が低いという腐食電位計の特性を補うものであり、酸素濃度の既知な純水を注入することにより、第1の腐食電位計104及び第2の腐食電位計105のそれぞれに任意の酸素を供給し、その酸素濃度における正確な腐食電位値を知ることができる。
【0019】
このように、本実施形態の腐食電位測定装置100は、PWR発電所二次冷却系配管に接続し、PWR発電所二次冷却系内を流れる二次冷却材中における材料の腐食電位を測定する第1の腐食電位計104及び第2の腐食電位計105と、第1の腐食電位計104及び第2の腐食電位計105に接続し、酸素濃度の既知な校正用の純水を貯水した腐食電位校正用大気飽和水注入部106とを有する。
【0020】
そして、第1の腐食電位計104及び第2の腐食電位計105の校正時には、腐食電位校正用大気飽和水注入部106は、校正用の純水とPWR発電所二次冷却系内を流れる二次冷却材とを各々単独あるいは混合して第1の腐食電位計104及び第2の腐食電位計105に注入することにより、第1の腐食電位計104及び第2の腐食電位計105については、PWR発電所二次冷却系に接続したままで校正を行うことが可能となる。
【0021】
また、腐食電位測定装置100内のサンプリング配管117〜120については、系統母管10、11に対して配管径を細くすることにより、第1の腐食電位計104及び第2の腐食電位計105内のセンサー表面を通過する水を高流速にし、PWR発電所二次冷却系配管との分岐部から第1の腐食電位計104及び第2の腐食電位計105の間の配管内での酸素の消費等による水の状態の変化を低減すると共に、測定結果の精度(ばらつき,微量な酸素濃度の変化を検知する)を高めている。
【0022】
以上説明したように、本実施形態の腐食電位測定装置によれば、酸素濃度の既知な校正用の純水を貯水した腐食電位校正用大気飽和水注入部を備えるため、プラント配管に接続したままで腐食電位計の校正を行うことが可能となる。
【0023】
また、同一の校正用の純水を使用して複数の腐食電位計の校正を行うため、腐食電位計毎に腐食電位の測定値の誤差が生じることを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の腐食電位測定装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
100:腐食電位測定装置
104:第1の腐食電位計
105:第2の腐食電位計
106:腐食電位校正用大気飽和水注入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント配管内を流れる水中における材料の腐食電位を測定するための装置であって、
前記プラント配管に接続し、前記プラント配管内を流れる水中における材料の腐食電位を測定する腐食電位計と、
前記腐食電位計に接続し、酸素濃度の既知な校正用の純水を貯水した腐食電位校正用大気飽和水注入部とを備え、
前記腐食電位計の校正時には、
前記腐食電位校正用大気飽和水注入部は、前記校正用の純水と前記プラント配管内の水とを各々単独あるいは混合して前記腐食電位計に注入し、
前記腐食電位計は、前記プラント配管に接続したままで校正を行う
ことを特徴とする腐食電位測定装置。
【請求項2】
前記腐食電位計に接続する配管の口径を、前記プラント配管に対して細めることによって前記プラント配管から分岐した水の流速を増し、前記プラント配管との分岐部から前記腐食電位計との間における配管内での水の状態の変化を低減すると共に、前記腐食電位の測定値の精度を向上させることを特徴とする請求項1に記載の腐食電位測定装置。


【図1】
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