説明

腫瘍および転移性疾患を処置するための方法および組成物

リンパ腫、白血病、メラノーマ、前立腺癌、および転移性疾患を処置するための組成物、方法、および併用療法を提供する。特に、抗−α4インテグリン免疫グロブリン、またはα4インテグリンリガンド(例えば、MadCAM−1およびVCAM)に結合する免疫グロブリンを含む組成物を、腫瘍の増殖および進行の阻害に使用するために、ならびに転移を阻害するために開示する。腫瘍および転移を処置する使用に好ましい免疫グロブリンは、ナタリズマブである。これらの免疫グロブリンを用いる組成物および方法は、単独で、または他の試薬および癌処置モダリティーと組み合わせて用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、α4インテグリンの発現を伴う悪性腫瘍および/または転移性疾患に罹患している対象を処置するための、抗−α4インテグリン免疫グロブリンまたはα4インテグリンリガンド(例えば、MadCAM−1およびVCAM−1)に対する免疫グロブリンを用いる方法に関する。腫瘍の増殖、および/または転移の進行、および/または転移の発生を阻害するための薬物の調製物の使用も提供する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2004年2月6日出願の米国仮特許出願第60/541946号の利権を主張するものである。
【0003】
良性の腫瘍も悪性の腫瘍も、正常の細胞に見られないパターンでタンパク質を発現することが知られている。腫瘍または悪性の細胞が発現するタンパク質のパターンは、疾患の段階(すなわち、初期または転移性疾患)を反映し得る。悪性度が進行するにつれ、細胞はそれらの起源となる組織からますます異なる傾向にある。癌が進行するにつれより未分化になり、癌の進行を決定するために用いる病期分類方式とは無関係に、細胞はより転移しがちになり、かつ/または伝統的な治療による処置に対してより不応性になる。癌治療は、1つまたは複数の以下の処置:化学療法、外科手術、放射線処置、温熱療法、免疫療法、骨髄移植、ホルモン療法、および生物学的療法を含むことができる。
【0004】
インテグリンは、細胞接着、免疫細胞の遊走および活性化に関与する細胞表面糖タンパク質のファミリーである。α−4インテグリンは、好中球以外の全ての循環白血球により発現され、β−1(β1)またはβ−7(β7)インテグリンサブユニットのいずれかと結合してヘテロ二量体の受容体を形成する。α−4β−1(α4β1)インテグリンも、α−4β−7(α4β7)インテグリンも、血管内皮細胞を越えた白血球の遊走において役割を果たし(Springerら、Cell、1994年、76巻、301〜14頁;Butcherら、Science、1996年、272巻、60〜6頁)、実質組織内での細胞の活性化および生存の一因となる(Damleら、J.Immunol.、1993年、151巻、2368〜79頁;Koopmanら、J.Immunol.、1994年、152巻、3760〜7頁;Leussinkら、Acta Neuropathol.、2002年、103巻、131〜136頁)。α4β1インテグリンは、リンパ球、単球、マクロファージ、肥満細胞、好塩基球、および好酸球上で構成的に発現される。
【0005】
α−4β−1は(最晩期抗原−4であるVLA−4としても知られ)、慢性の炎症の多くの部位で血管内皮により発現される血管細胞接着分子−1(VCAM−1)(Lobbら、J.Clin.Invest.1994年、94巻、1722〜8頁)と結合する(Bevilacquaら、1993年、Annu.Rev.Immunol.、11巻、767〜804頁;Postigoら、1993年、Res.Immunol.、144巻、723〜35頁)。α4β1インテグリンは、フィブロネクチンおよび他の細胞外マトリックス(ECM)成分を含む他のリガンドを有する。
【0006】
α−4β−7インテグリンは、粘膜アドレシン細胞接着分子(MAdCAM−1)と相互作用し、リンパ球の消化管へのホーミングを媒介する(Farstadら、1997年、Am.J.Pathol.、150巻、187〜99頁;Issekutz、1991年、J.Immunol.、147巻、4178〜84頁)。したがって、単独で、または他の物質と協力して用いて、癌、特に、典型的に転移を伴う進行した段階の腫瘍を処置することが可能な、癌の増殖および転移を阻害するこれらの物質および組成物を用いるための新規の物質、組成物および方法が必要とされている。
【特許文献1】米国仮特許出願第60/541946号
【非特許文献1】Springerら、Cell、1994年、76巻、301〜14頁
【非特許文献2】Butcherら、Science、1996年、272巻、60〜6頁
【非特許文献3】Damleら、J.Immunol.、1993年、151巻、2368〜79頁
【非特許文献4】Koopmanら、J.Immunol.、1994年、152巻、3760〜7頁
【非特許文献5】Leussinkら、Acta Neuropathol.、2002年、103巻、131〜136頁
【非特許文献6】Lobbら、J.Clin.Invest.1994年、94巻、1722〜8頁
【非特許文献7】Bevilacquaら、1993年、Annu.Rev.Immunol.、11巻、767〜804頁
【非特許文献8】Postigoら、1993年、Res.Immunol.、144巻、723〜35頁
【非特許文献9】Farstadら、1997年、Am.J.Pathol.、150巻、187〜99頁
【非特許文献10】Issekutz、1991年、J.Immunol.、147巻、4178〜84頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、腫瘍および/もしくは転移性疾患を処置し、かつ/または腫瘍の増殖を阻害するための、新規の方法、組成物、および併用療法を提供する。この方法、組成物、および併用療法は、好ましくは、リンパ腫、白血病、メラノーマ、前立腺癌、およびあらゆるα4発現性原発腫瘍の転移性疾患などの、α4発現性癌の処置のためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の一態様は、抗−α4免疫グロブリン、またはα4インテグリンリガンド(例えば、MadCAM−1およびVCAM−1)に対する免疫グロブリンをそれを必要とする対象に、腫瘍の増殖、および/または転移、および/または転移拡散を阻害するのに十分な量で投与することを含む、腫瘍の増殖、および/または転移、または転移拡散を阻害するための方法を提供する。抗−α4抗体がα4β1インテグリンおよび/またはα4β7インテグリンに結合することが好ましく、免疫グロブリンがモノクローナル抗体(例えば、ナタリズマブ)であることがより好ましい。
【0009】
本発明のまたさらなる態様では、処置する腫瘍は固形腫瘍または軟組織腫瘍である。この方法、併用療法、および抗−α4インテグリン免疫グロブリンまたはα4インテグリンリガンドに対する免疫グロブリンを用いる処置に企図される固形組織腫瘍は、メラノーマ(例えば、皮膚メラノーマ、転移性メラノーマ、または眼内メラノーマ)、前立腺癌、および他の原発腫瘍の転移性病変が含まれるがそれだけには限定されない。
【0010】
本発明の別の一態様では、処置すべき腫瘍は、骨腫瘍、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、成人急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、成熟B細胞性急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、前リンパ球性白血病、もしくはヘアリー細胞白血病)、またはリンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、もしくはホジキン病)などの軟組織腫瘍であることが企図される。
【0011】
本発明のさらなる一実施形態では、抗−α4インテグリン免疫グロブリンを、対象の体重1kg当たり約1mgから対象の体重1kg当たり約100mgの量(およびこの範囲内に入るあらゆる整数値)で対象に投与することが企図される。抗−α4インテグリン免疫グロブリンを、対象の体重1kg当たり約1mgから対象の体重1kg当たり約10mgの量で対象に投与することがより好ましい。好ましくは、免疫グロブリンはナタリズマブである。
【0012】
本発明のさらなる一態様では、免疫グロブリンを単独で、または他の癌モダリティーと組み合わせて多様式フォーマットで投与することができる。例えば、腫瘍がメラノーマである場合、メラノーマを外科手術で除去した後、対象にナタリズマブを投与することができる。腫瘍がメラノーマである場合、上記の方法を、分離式肢潅流、局所化学療法インフュージョン、全身化学療法、または二次抗体(例えば、抗−GM2ガングリオシド抗体、抗−GD2ガングリオシド抗体、抗−GD3ガングリオシド抗体)もしくは抗血清での免疫療法などの癌モダリティーとさらに組み合わせることができる。化学療法剤は、以下のあらゆる1つまたは複数であることができる:ダカルバジン、カルムスチン、ロムスチン、タウロムスチン、フォテムスチン、セムスチン、シスプラチン、カルボプラチン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、タキソール、ジブロモズルシトール、デトルビシン、ピリトレキシム、およびインターフェロン(例えば、インターフェロン−α2)。
【0013】
本発明の別の一態様では、脳、肺、肝臓、または骨への転移を処置する方法が企図される。
【0014】
本発明のさらに別の一態様では、他のリンパ腫処置モダリティーと組み合わせてα4インテグリンまたはそれらのリガンド(例えば、MadCAM−1およびVCAM−1)に対する免疫グロブリンを用いてリンパ腫を処置する方法が企図される。
【0015】
本発明の別の一態様では、α4インテグリンまたはそのリガンド(例えば、MadCAM−1およびVCAM−1)に対する免疫グロブリンを、当技術分野で周知の他の腫瘍処置モダリティーと組み合わせて使用する併用療法が企図される。本発明のまたさらなる一態様は、それを必要とする対象に投与した場合に、腫瘍の増殖を阻害し、かつ/または転移を阻害し、かつ/または疾患の進行を阻害しもしくは遅くするための、抗−α4インテグリン免疫グロブリンまたはα4インテグリンリガンド(例えば、MadCAM−1およびVCAM−1)に対する免疫グロブリンを含む薬物の調製物のための使用を提供する。
【0016】
本発明のさらなる一態様では、それを必要とする対象に投与した場合に、腫瘍の増殖、および/または転移の進行、および/または転移の発生を阻害するための、抗−α4インテグリン免疫グロブリンを含む、薬物の調製物のための使用が企図される。癌治療の有害作用を改善するために、対象を化学療法、免疫療法、外科手術、放射線療法、温熱療法、または薬物でさらに処置することが好ましい。腫瘍は、メラノーマ、白血病、前立腺癌、またはリンパ腫であることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
1.頭字語の定義
この詳細な記載によると、以下の省略形および定義が適用される。本明細書に用いられる単数形である「1つの」(“a”)、「および」(“and”)、および「その」(“the”)は、その文脈により別段に明らかに指図されなければ、複数の指示対象が含まれることに留意しなければならない。したがって、例えば、「1つの抗体」と言及する場合は、多数のそのような抗体が含まれ、「その投薬」と言及する場合は、当業者に周知の1つまたは複数の投薬およびその同等物を言及することが含まれる、などである。
【0018】
本明細書で論じられる出版物は、本出願の出願日より前に、これらを開示するためだけに提供される。本明細書は、そのような出版物が先行発明であるという理由で、本発明がそれらよりも前になされたものであることを否定していると解釈すべきではない。さらに、提供される出版物の日付は、実際の出版日とは異なることがあり、独立に確認する必要があることがある。
【0019】
1.1 定義
本明細書で用いる「対象」、または「患者」は、哺乳動物を含むことを意味する。哺乳動物は、イヌ科動物、ネコ科動物、霊長動物、ウシ属動物、ヒツジ、ブタ、ラクダ科動物、ヤギ、げっ歯動物、またはウマ科動物であることができる。哺乳動物はヒトであることが好ましい。
【0020】
「ナタリズマブ」または「Tysabri(登録商標)」は、その全文が参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5840299号および第6033665号に記載されているVLA−4に対するヒト化抗体を意味する。他のVLA−4特異的抗体も、本明細書に企図される。このような抗VLA−4抗体および免疫グロブリンには、米国特許第6602503号および第6551593号、公表された米国出願第20020197233号(Reltonら)に記載されたこれらの免疫グロブリンが含まれるが、それだけには限定されない。抗体の調製は、これらの特許および出願で開示された方法により、哺乳動物細胞の発現により、またはトランスジェニック動物の発現系(例えばヤギ)によることができる。
【0021】
本明細書に用いられる「効力」は、特定の処置レジームの有効性に関する。効力は、例えば放射線画像、腫瘍の増殖の遅延、検出可能な腫瘍関連抗原の欠乏などにより評価した腫瘍の増殖の阻害、腫瘍重量の減少、転移性病変の減少などの特徴(それだけには限定されない)に基づいて測定することができる。腫瘍の進行を評価するさらなる方法は本明細書で論じられ、処置し診断する医師には周知である。
【0022】
「薬学的に許容できる担体」および「薬学的に許容できる賦形剤」は、単に担体として働くことが意図される、すなわちそれ自体が生物学的活性を有することが意図されない、製剤の部分を形成するのに使用されるあらゆる化合物を意味するものとされる。薬学的に許容できる担体または賦形剤は、一般的に安全で、非毒性であり、生物学的にも他の面でも望ましくないものではない。本明細書で用いられる薬学的に許容できる担体または賦形剤は、1つおよび複数のそのような担体または賦形剤を含む。
【0023】
「処置する」、および「処置」などは、本明細書では、望まれる薬理学的および生理学的効果を得ることを概ね意味するために用いられる。より詳しくは、本明細書に記載される、腫瘍および転移性疾患を有する対象を処置するために用いられる試薬は、以下のいずれか1つまたは複数を達成するのに治療上有効な量で一般的に提供される:腫瘍の増殖の阻害、腫瘍重量の減少、転移病変の喪失、治療開始後の新しい転移病変の発生の阻害、または(例えば、放射線画像、生物学的な体液の分析、細胞遺伝学、in situハイブリダイゼーションの蛍光、免疫細胞化学、コロニーアッセイ、マルチパラメーターフローサイトメトリー、もしくはポリメラーゼ連鎖反応で評価して)検出できる疾患が存在しないような腫瘍の減少。本明細書で用いられる「処置」は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患のあらゆる処置を含む。
【0024】
「治療上有効な量」は、哺乳動物に投与した場合に、腫瘍に有効であるのに十分な、本明細書に開示された物質、試薬、化合物、組成物、または試薬の組合せの量を意味する。
【0025】
「腫瘍」は、良性および悪性の両方の増殖物、または癌を含むものを意味する。したがって、別段の記載がなければ、「癌」は良性の増殖物も悪性の増殖物も含むことができる。好ましくは、腫瘍は悪性である。腫瘍は、メラノーマなどの固形組織腫瘍、または、リンパ腫、白血病、もしくは骨癌などの軟組織腫瘍であってよい。
【0026】
「原発腫瘍」は、起源の新生物を意味し、患者の身体の別の組織または器官にある転移性病変を意味するものではない。「転移性疾患」、「転移」、および「転移性病変」は、原発腫瘍に対して離れた部位に遊走した細胞の群を意味する。
【0027】
1.2 頭字語
以下の頭字語は、関連する用語に通常使われるもので、当技術分野では周知である。
α4β1 α−4β−1
α4β7 α−4β−7
Ab 抗体
ABDIC ドキソルビシン、ブリオマイシン、ダカルバジン、ロムスチン、およびプレドニゾン
ALL 急性リンパ球性白血病
AML 急性骨髄性白血病
BMT 骨髄移植
CAF シクロホスファミド、アドリアマイシン、および5−フルオロウラシル
CAMP ロムスチン、ミトキサントロン、シタラビン、およびプレドニゾン
CAVP ロムスチン、メルファラン、エトポシド、およびプレドニゾン
CBVD ロムスチン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、デキサメサゾン
CCNU ロムスチン
CEFF(B) シクロホスファミド、エトポシド、プロカルバジン、プレドニゾン、およびブレオマイシン
CEM ロムスチン、エトポシド、およびメトトレキサート
CEP ロムスチン、エトポシド、およびプレドニムスチン(prednimustine)
CEVD ロムスチン、エトポシド、ビンデシン、およびデキサメタゾン
CHOP シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン
CLL 慢性リンパ球性白血病
CMF シクロホスファミド、メトトレキサート、および5−フルオロウラシル
CML 慢性骨髄性白血病
CNS 中枢神経系
CTCL 皮膚T細胞リンパ腫
DHAP デキサメタゾン、高用量シタラビン、およびシスプラチン
ECM 細胞外マトリックス
EPOCH エトポシド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、およびプレドニゾン
ESHAP エトポシド、メチルプレジソロン(methylpredisolone)、高用量(HD)シタラビン、およびシスプラチン
EVA エトポシド、ビンブラスチン、およびドキソルビシン
EVAP エトポシド、ビンブラスチン、シタラビン、およびシスプラチン
GAP−BOP シクロホスファミド、ドキソルビシン、プロカルバジン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン
HD 高用量
3H−FUDR 3H−フロクスウリジン
IFN インターフェロン
IFN−a2 インターフェロン−α2
IFNβ−1a インターフェロンβ−1a
IHC 免疫組織化学
i.m. 筋肉内
IMVP−16 イフォスファミド、メトトレキサート、およびエトポシド
i.p. 腹腔内
i.v. 静脈内
m−BACOD メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾン、およびロイコボリン
MAb モノクローナル抗体
MACOP−B メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシン、およびロイコボリン
MadCAM−1 粘膜アドレシン細胞接着分子 1(CD106としても知られる)
MeCCNU セムスチン、すなわちメチルCCNU
MF 菌状息肉腫
MIME メチル−gag(methyl−gag)、イフォスファミド、メトトレキサート、およびエトポシド
MINE ミトクアゾン(mitoquazone)、イフォスファミド、ビノレルビン、およびエトプシド(etopside)
MOPLACE シクロホスファミド、エトポシド、プレドニゾン、メトトレキサート、シタラビン、およびビンクリスチン
MOPP メクロレタミン、ビンクリスチン、プロカルバジン、およびプレドニゾン
MS 多発性硬化症
MTX メトトレキサート
MTX−CHOP メトトレキサート、およびCHOP
NAT ナタリズマブ(Tysabri(登録商標))
PBMC 末梢血単球細胞
PCVP ビンブラスチン、プロカルバジン、シクロホスファミド、およびプレドニゾン
p.o. 経口投与(per os)
ProMACE−MOPP プレドニゾン、メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド、ロイコボリン、および標準MOPP
s.c. 皮下
SDS−PAGE ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動
SCID 重症複合型免疫不全症
TNM 腫瘍、結節、および転移は米国癌病期分類合同委員会である
VABCD ビンブラスチン、ドキソルビシン、ダカルバジン、ロムスチン、およびブレオマイシン
VCAM−1 血管細胞接着分子 1(CD106およびINCAM−110としても知られる)
VLA−4 最晩期抗原4(α−4β−1、α4β1インテグリン、VLA−4a、およびCD49dとしても知られる)
【0028】
2.疾患
本発明の一態様では、本明細書に開示された方法および組成物を、悪性度の進行を阻害し、または遅らせるために用いることができる。これらの悪性疾患は、固形組織または軟組織の腫瘍であってよい。軟組織腫瘍には、骨癌、リンパ腫、および白血病が含まれる。本発明の別の一態様は、転移、または転移の進行を阻害し、または予防するための方法および組成物の使用である。
【0029】
したがって、本発明の一態様は、免疫グロブリンで腫瘍または転移性疾患を処置することである。この免疫グロブリンは、α4、ならびに好ましくはα4β1インテグリンおよび/またはα4β7インテグリンを標的にすることができる。あるいは、免疫グロブリンは、α4のリガンド(例えば、VCAM−1 MadCAM−1)を標的にすることができる。これらの免疫グロブリンを単独で、互いに組み合わせて、または他の癌モダリティー、例えば、それだけには限定されないが化学療法、外科手術、放射線治療、温熱療法、免疫療法、ホルモン療法、生物学的療法(例えば、細胞の破壊をもたらす免疫エフェクター機序、サイトカイン、免疫療法、インターフェロン、インターロイキン−2、癌ワクチン療法、および養子療法)、ならびにそのような癌モダリティーの有害副作用を改善するための薬物と組み合わせて用いることができる。
【0030】
2.1 癌治療
癌は、悪性の堆積物を包含し、各器官のそれぞれの癌は多くのサブセットからなる。通常、癌と診断するときは、「癌」は、様々な遺伝的、生化学的、免疫学的、および生物学的特徴を有する実際の多様な細胞の亜集団からなる。
【0031】
本発明の組成物および方法で処置すべきタイプの癌は、α4インテグリン(すなわち、α4β1および/またはα4β7)、あるいはそれらのリガンド(例えば、VCAM−1および/またはMadCAM−1)を表すものである。好ましい癌には、それだけには限定されないが、メラノーマ(例えば、皮膚メラノーマ、転移性メラノーマ、および眼内メラノーマ)、前立腺癌、リンパ腫(例えば、皮膚T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、ホジキンおよび非ホジキンリンパ種、および原発性中枢神経系リンパ腫)、白血病(例えば、B前駆細胞急性リンパ芽球性白血病、慢性および急性リンパ球性白血病、慢性および急性骨髄性白血病、成人急性リンパ芽球性白血病、成熟B細胞急性リンパ芽球性白血病、前リンパ球性白血病、ヘアリー細胞白血病、およびT細胞慢性リンパ球性白血病)、およびこれらのタンパク質を細胞表面上に表す転移の腫瘍が含まれる。菌状息肉腫(MF)、セザリー症候群、皮膚の細網肉腫、およびいくつかの他の皮膚のリンパ球性の悪液質は、かつては別個の状態と考えられていたが、今では皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の異なる臨床上の症状として理解され、したがってこの語に含まれる。Lynn D.Wilsonら、「Cutaneous T−Cell Lymphomas」、CANCER:PRINCIPLES & PRACTICE OF ONCOLOGY、2220〜2232(Vincent T.DeVita,Jr.ら編、第5版、1997年);Bankら、1999年、J.Cutan.Pathol.、26巻(2)、65〜71頁を参照されたい。
【0032】
2.2 転移性疾患
患者に腫瘍が診断された後、第一の問題は、腫瘍が進行し局所のリンパ節および遠位の器官に広がったか否かである。結局は、癌の死亡の殆どは、従来の癌治療を妨害する転移に起因する。転移は、様々な器官、および同一器官の異なる領域にある可能性があり、外科手術、放射線、薬物、および/または生物学的療法による完全な根絶が殆ど不可能になる。
【0033】
また、本明細書に開示された方法、併用療法、および組成物で処置することが企図されるのは、転移の癌の処置である。癌は、通常、起源となる組織のたった1つの場所でその増殖を開始する。癌が進行するにつれ、癌は患者における遠位の場所に遊走することがある。例えば、前立腺で始まった癌が肺に遊走することがある。転移性疾患に一般的であり、本明細書に企図される他の場所には、脳、肺、肝臓、および骨への転移の癌が含まれる。いくつかのインテグリンサブユニット(すなわち、α2、α4、およびβ3)は、正常の前立腺組織および正常のメラノサイトと比べて、転移で発現が上昇することが見出されている。Hartsteinら、1997年、Ophthal.Plast.Reconstr.Surg.、13巻(4)、227〜38頁。
【0034】
全ての腫瘍における転移の形成には、不可欠の段階がある。この段階は以下を含む:
(1)悪性形質転換後、新生物がある器官/組織の環境により支持される、新生物細胞の進行性の増殖。
(2)直径1から2mmを超えてさらに増殖するための、腫瘍の新血管形成または脈管形成。
(3)細胞の、運動性、または一次病巣から分離する能力を増大させる、粘着性分子の発現の下方制御。
(4)大多数の腫瘍細胞が速やかに破壊される状態での、単一の腫瘍細胞または細胞凝集物の剥離および塞栓形成。
(5)腫瘍細胞は分離および塞栓の段階を生き残った後、血管の管腔内で増殖し続けなければならない。細胞は、次いで、侵入の間中実動性のものと類似の機序により器官の実質組織中に遊出し続ける。
(6)適当な細胞表面受容体を有する腫瘍細胞は、パラクリン増殖因子に反応することができ、したがって器官の実質組織で増殖することができる。
(7)腫瘍細胞の宿主の防御の回避(特異的および非特異的な免疫反応)。
(8)転移が直径1から2mmを超えて増殖するために、転移は血管の網状構造を発達させなければならない。
【0035】
このように、原発の腫瘍がこれらの段階を通過するのに十分な時間が与えられた場合に、原発腫瘍から離れた一部位または部位に転移性病変が形成される。開示された試薬、方法、および併用療法は、転移のプロセスにおける1つまたは複数のこれらのステップを阻害し、または妨げる。腫瘍の転移の機序および病理に関するさらなる詳細については、Isaiah J.Fidler、「Molecular Biology of Cancer:Invasion and Metastasis」、CANCER:PRINCIPLES & PRACTICE OF ONCOLOGY 135〜152頁(Vincent T.DeVItaら編、第5版、1997年)を参照されたい。
【0036】
したがって、本発明の一態様は、抗−α4インテグリン免疫グロブリン、またはα4インテグリンのリガンド(例えば、VCAM−1およびMadCAM−1)を標的にする免疫グロブリンを用いた方法、およびこれらを含む組成物を提供する。好ましい抗−α4インテグリン免疫グロブリンは、ナタリズマブなどの抗−VLA−4抗体である。これらの免疫グロブリンは、単独で、あるいは他の薬剤と、または転移を予防し、もしくは転移性病変の進行を阻害するがん処置モダリティーと組み合わせて用いることができる。したがって、組成物および方法を、α4インテグリンまたはα4インテグリンのリガンドを表すあらゆる原発腫瘍のあらゆる転移を処置するために用いることができる。
【0037】
3.免疫グロブリン療法
上記の癌を処置する使用に企図される免疫グロブリンには、α4β1および/またはα4β7が、それらの同族のリガンド(例えば、VCAM−1またはMAdCAM−7)と結合するのを阻害する抗−α4インテグリン抗体が含まれる。やはり使用が企図されるものに、リガンドに対する免疫グロブリンがある。これらの免疫グロブリンは、抗体(すなわち、モノクローナル抗体、プライマタイズド抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体およびキメラ抗体、ならびに二重特異性抗体)であってよい。免疫グロブリンは、また、抗体の免疫原性フラグメント(例えば、Fab、scFv、Fab’、F(ab’)2、Fab’’、Fabc、またはリコンビナントで合成されたフラグメント)、またはリコンビナントで産生された免疫グロブリンであってよい。好ましい抗−α4抗体はナタリズマブである。しかし、α4β1およびα4β7を区別することができる免疫グロブリンを含む、他の抗−α4インテグリン免疫グロブリンも企図される。好ましい免疫グロブリンはモノクローナル抗体であり、より好ましい免疫グロブリンは、対象患者がヒトである場合、ヒト化抗体またはプライマタイズド抗体である。
【0038】
これらの抗体を、単独で、または他の抗−α4インテグリン免疫グロブリンもしくはα4インテグリンリガンドに対する免疫グロブリンと組み合わせて用いることができる。本発明の別の一態様では、併用療法の形態の、他の従来の癌処置モダリティーと組み合わせた抗−α4抗体の使用が企図される。
【0039】
4.併用療法
癌には多くの処置が存在する。癌を処置するために用いる特定の癌治療法または治療モダリティーの組合せは、癌の型、その病期、患者(例えば、体重、性別、年齢、健康状態、以前の癌など)、および患者が治療のどこにいるか(例えば、第一の処置、急性転化、最初の処置に抵抗性、癌の再発、または、数カ月もしくは数年前の第一の癌の処置によりおそらく引き起こされた第二の癌)に大いに依存する。したがって、医師は、患者が疾患と戦う上での要求、および患者の生活の質の自己決定に最も適する様々な処置モダリティーを組み合わせなければならないことが頻繁にある。処置モダリティーには、それだけには限定されないが、外科手術、放射線療法、化学療法、生物学的療法(例えば、サイトカイン、免疫療法、およびインターフェロン)、ホルモン療法、および温熱療法が含まれる。
【0040】
従来の化学療法は、ホルモン療法(例えば、抗エストロゲン、アロマターゼ阻害薬、ゴナドトロピン放出ホルモン類似物質、および抗アンドロゲン)、抗腫瘍アルキル化薬(例えば、マスタード、ニトロソ尿素、テトラジン、およびアジリジン)、シスプラチンおよびその類似物質、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、葉酸代謝拮抗薬、5−フルオロピリミジン、シタラビン、アザシチジン、ゲミシタビン、6−チプリン(thipurine)、およびヒドロキシ尿素)、トポイソメラーゼ相互作用薬、微小血管阻害薬(例えば、ビンカアルカロイド、タキサン、およびエストラムスチン)、分化誘導薬(例えば、レチノイド、ビタミンD3、極性−無極性化合物、ブチレートおよび酢酸フェニル、細胞毒性薬物、サイトカイン、およびこれらの組合せ)、ならびに、フルダラビン、2−クロロデオキシアデノシン、2’−デオキシコフォルマイシン、ホモハリングトニン(HHT)、スラミン、ブレオマイシン、およびL−アスパラギナーゼにさらに分けることができる。
【0041】
4.1 リンパ腫を処置するための併用療法
本発明の一態様では、リンパ腫を処置するための、抗−α4インテグリン免疫グロブリン、またはα4インテグリンリガンド(例えば、MadCAM−1およびVCAM−1)に結合する免疫グロブリンの使用が企図される。α4インテグリンまたはα4インテグリンに対するリガンドを発現するあらゆるリンパ腫細胞が、本明細書に開示される併用療法での治療に企図される。
【0042】
これらの併用療法による処置に企図されるリンパ腫には、それだけには限定されないが、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、T細胞性非ホジキンリンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫、抗免疫芽球性リンパ腫、およびT前駆−LBLなどのT細胞リンパ腫が含まれる。リンパ腫の処置は、また、治療する対象、疾患のタイプ、およびその病期に依存する。白血病およびリンパ腫に対する既存の処置モダリティーは、一般にCANCER:PRINCIPLES & PRACTICE OF ONCOLOGY(VincentT.DeVitaら編、第5版、1997年)に記載されている。B細胞性リンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、B−CLL/SLL、免疫細胞腫/ワルデンシュテレーム、およびMALTタイプ/単球様B細胞リンパ腫)も、処置に企図される。バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、B前駆−LBL、T前駆−LBL、未分化大細胞型リンパ腫、および末梢性T細胞リンパ腫などの小児のリンパ腫の処置も企図される。
【0043】
リンパ腫の処置に使用するための一般的な薬物の組合せには、それだけには限定されないが、CHOP(すなわち、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン)、GAP−BOP(すなわち、シクロホスファミド、ドキソルビシン、プロカルバジン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン)、m−BACOD(すなわち、メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾン、およびロイコボリン)、ProMACE−MOPP(すなわち、プレドニゾン、メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド、ロイコボリン、および標準のMOPP)、ProMACE−CytaBOM(プレドニゾン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド、シタラビン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、メトトレキサート、およびロイコボリン)、ならびにMACOP−B(メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシン、およびロイコボリン)が含まれる。再発の攻撃的な非ホジキンリンパ腫には、本明細書に記載された抗体および薬物の組合せと共に、以下の化学療法薬物の組合せを用いてもよい:IMVP−16(すなわち、イフォスファミド、メトトレキサート、およびエトポシド)、MIME(すなわち、メチル−gag、イフォスファミド、メトトレキサート、およびエトポシド)、DHAP(すなわち、デキサメタゾン、高用量シタラビン、およびシスプラチン)、ESHAP(すなわち、エトポシド、メチルプレドニゾン、高用量シタラビン、およびシスプラチン)、CEFF(B)(すなわち、シクロホスファミド、エトポシド、プロカルバジン、プレドニゾン、およびブレオマイシン)、およびCAMP(すなわち、ロムスチン、ミトキサントロン、シタラビン、およびプレドニゾン)。Margaret A.Shippら、「Non−Hodgkin’s Lymphomas」、CANCER:PRINCIPLES & PRACTICE OF ONCOLOGY、2165〜2220頁、(Vincent T.DeVitaら編、第5版、1997年)を参照されたい。
【0044】
再発の抵抗性のホジキン病などのある種のリンパ腫に用いられる救済化学療法に対する処置には、それだけには限定されないが、VABCD(すなわち、ビンブラスチン、ドキソルビシン、ダカルバジン、ロムスチン、およびブレオマイシン)、ABDIC(すなわち、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダカルバジン、ロムスチン、およびプレドニゾン)、CBVD(すなわちロムスチン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、デキサメタゾン)、PCVP(すなわち、ビンブラスチン、プロカルバジン、シクロホスファミド、およびプレドニゾン)、CEP(すなわち、ロムスチン、エトポシド、およびプレドニムスチン)、EVA(すなわち、エトポシド、ビンブラスチン、およびドキソルビシン)、MOPLACE(すなわち、シクロホスファミド、エトポシド、プレドニゾン、メトトレキサート、シタラビン、およびビンクリスチン)、MIME(すなわち、メチル−gag、イフォスファミド、メトトレキサート、およびエトポシド)、MINE(すなわち、ミトクアゾン、イフォスファミド、ビノレルビン、およびエトポシド)、MTX−CHOP(すなわち、メトトレキサート、およびCHOP)、CEM(すなわち、ロムスチン、エトポシド、およびメトトレキサート)、CEVD(すなわち、ロムスチン、エトポシド、ビンデシン、およびデキサメタゾン)、CAVP(すなわち、ロムスチン、メルファラン、エトポシド、およびプレドニゾン)、EVAP(すなわち、エトポシド、ビンブラスチン、シタラビン、およびシスプラチン)、およびEPOCH(すなわち、エトポシド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、およびプレドニゾン)が含まれる。例えば、Vincent T.DeVitaら「Hodgkin’s Disease」、CANCER:PRINCIPLES & PRACTICE OF ONCOLOGY、2242〜2283頁、(Vincent T.DeVitaら編、第5版、1997年)を参照されたい。
【0045】
CTCLでは、従来の治療法は患者の評価に依存する。したがって、TNM病期分類に基づき、患者を、本明細書に開示された方法および組成物と組み合わせて、局所化学療法、ソラレン紫外線治療、局在外部ビーム放射線療法、体外光化学療法、インターフェロン(IFN)、ヌクレオチド誘導体での全身化学療法、または光子照射で処置してもよい。さらなる処置モダリティーは、当技術分野では周知である。一般に、CANCER:PRINCIPLES & PRACTICE OF ONCOLOGY(Vincent T.DeVitaら編、第5版、1997年)を参照されたい。
【0046】
したがって、本発明の一態様では、対象におけるリンパ腫の進行、および/またはリンパ腫の転移を阻害するために用いられる、抗−α4免疫グロブリン、またはα4、α4β1、およびα4β7のリガンドに対する免疫グロブリンの使用が企図される。試薬は、単独で、または本明細書で論じられる他のリンパ腫の処置と組み合わせて用いることができる。
【0047】
4.2 メラノーマの併用療法
本発明の別の一態様では、メラノーマの増殖の阻害、および/またはメラノーマの転移の増殖または伝播の阻害が企図される。抗−α4インテグリン(すなわちα4β1、およびα4β7)免疫グロブリンまたはα4インテグリンのリガンドを認識する免疫グロブリンを、単独で、またはメラノーマを処置するための他の癌モダリティーと組み合わせて使用することができる。方法および組成物は、それだけには限定されないが、皮膚メラノーマ、転移性メラノーマ、および眼内メラノーマを処置することが企図される。これらメラノーマを処置するための従来の治療法は、当技術分野では周知である。例えば、Anthony P.Albinoら、「Molecular Biology of Cutaneous Malignant Melanoma」、CANCER:PRINCIPLES & PRACTICE OF ONCOLOGY、1935〜1947頁(Vincent T.DeVitaら編、第5版、1997年);CharlesM.Balchら、「Cutaneous Melanoma」、CANCER:PRINCIPLES & PRACTICE OF ONCOLOGY、1947〜1994頁;およびJose A.Sahelら、「Intraocular Melanoma」、CANCER:PRINCIPLES & PRACTICE OF ONCOLOGY、1995〜2012頁を参照されたい。
【0048】
例えば、転移性メラノーマを処置するために、外科手術、分離式肢潅流、局所化学療法インフュージョン(例えば、デカルバジンまたはシスプラチンと共に)、放射線療法、免疫療法(例えば、GD2およびGD3ガングリオシドに対する抗体での処置)、病巣内免疫療法、全身化学療法、温熱療法、全身免疫療法、腫瘍ワクチン、またはこれらの組合せの使用を、抗−α4免疫グロブリン、またはα4、α4β1、およびα4β7のリガンドに対する免疫グロブリンとさらに組み合わせてもよい。
【0049】
4.3 白血病を処置するための併用療法
本発明の別の一態様は、処置すべき白血病に対する従来の処置モダリティーと組み合わせて、抗−α4免疫グロブリン、またはα4リガンド(例えば、VCAM−1およびMadCAM−1)に対する免疫グロブリンを用いた、ある種の白血病の処置を提供する。
【0050】
急性骨髄性白血病(AML)の従来の処置には、それだけには限定されないが、アントラサイクリン/シタラビンベースの導入レジメン、骨髄移植(BMT)または高用量(HD)シタラビンなどの集中寛解後療法が含まれる。
【0051】
急性前骨髄球性白血病の従来の処置には、それだけには限定されないが、レチノイン酸、およびアントラサイクリン/シタラビンベースの処置が含まれる。患者には、100mg/dLを超えたフィブリノーゲンレベルを維持するように、寒冷沈降物または新鮮凍結血漿を投与することができる。ヒトの毎日の血小板計数値を>50000/μLに維持するために、血小板輸血も必要なことがある。
【0052】
急性リンパ芽球性白血病(ALL)に対する従来の処置モダリティーには、アントラサイクリン、シクロホスファミド、アスパラギナーゼ、または、ビンクリスチンおよびプレドニゾンに加えた組合せを用いた4または5個の薬物導入レジメンが含まれる。あるいは、医師は、本明細書に記載された免疫グロブリン組成物と組み合わせて、アントラサイクリン、エピドフィロトキシン(epidophillotoxin)、または代謝拮抗薬と組み合わせたシタラビンを主成分とした集中地固め療法を用いるように選択してもよい。さらに別の一態様は、メルカプトプリンおよび対象の免疫グロブリンと組み合わせた経口用メトトレキサートを用いた持続性の維持療法の使用であってよい。別の一代替では、CNSの予防のために、対象の免疫グロブリンと組み合わせた、予防上のくも膜下腔内の化学療法(頭蓋の放射線治療を伴う、またはなしの)の使用が企図される。本発明と組み合わせて用いることができる、白血病を処置するための治療モダリティーに関するさらなる情報については、Issa Khouriら、「Molecular Biology of Leukemias」、CANCER:PRINCIPLES & PRACTICE OF ONCOLOGY、2285〜2293頁(Vincent T.DeVitaら編、第5版、1997年);David A.Scheinbergら、「Acute Leukemias」、CANCER:PRINCIPLES & PRACTICE OF ONCOLOGY、2293〜2321頁;およびAlbert B.Deisserothら、「Chronic Leukemias」、CANCER:PRINCIPLES & PRACTICE OF ONCOLOGY、2321〜2343頁を参照されたい。
【0053】
4.4 転移性疾患を処置するための併用療法
転移の処置は、転移の、および転移の起源となる原発腫瘍の部位に応じて、単独で、または他の癌処置モダリティーと組み合わせて、本明細書に記載された組成物、併用療法、および方法と同じであってよい。腫瘍が転移する最も一般的な部位は、脳、肺、肝臓、骨、悪性の胸膜および心膜の浸出液、ならびに悪性の腹水である。
【0054】
4.4.1 脳転移
中枢神経系(CNS)の外の組織を起源とする腫瘍細胞が、二次的に広がって直接脳を巻き添えにする場合に脳転移が発生する。頭蓋内の転移は、脳実質組織、脳神経、血管(硬膜静脈洞を含む)、硬膜、軟膜、および頭骸内板を巻き添えにすることがある。頭蓋内の転移のうち、最も一般的なのは、実質内の転移である。原発腫瘍による脳の転移の頻度は、肺(48%)、乳房(15%)、メラノーマ(9%)、結腸(5%)、他の周知の原発腫瘍(13%)、および他の知られていない原発腫瘍(11%)である。Jay S.Loefflerら、「Metastatic Brain Cancer」、CANCER:PRINCIPLES & PRACTICE OF ONCOLOGY、2523〜2536頁(Vincent T.DeVitaら編、第5版、1997年)を参照されたい。脳の転移に関連する症状には、精神状態の変化、片側不全麻痺、片側感覚の喪失、乳頭水腫、および歩行失調が含まれる。したがって、脳転移と新たに診断された患者は、長期間、抗痙攣薬の予防法およびコルチコセテロイド(corticoseteroids)に位置づけられることが多い。このような薬物には、フェニトインナトリウム、およびフェノバルビタールが含まれる。
【0055】
脳転移は、容易に到達する場合には、転移の摘出で外科的に処置することができる。画像技術および局在化技術の発達で、脳転移の外科的切除に関連する疾病率は減少している。しかし、危険性は依然としてある。したがって、放射線治療は、脳転移を有する患者の頼みの綱となる処置である。放射線治療は、外科手術の補助的処置として、外科手術と組み合わせることができる。代わりに放射線外科を用いてもよい。放射線外科は、多数の輻合性の光線を使用して小体積に単一の高照射線量の放射線を送達する体外照射の技術である。放射線治療は、メチル−CCNUもしくはACNUなどの他の化学療法薬と組み合わせて、または放射線治療、メチル−CCNU、ACNU、およびテガフール(5’フルオロウラシルの経口投与)の併用で施すことができる。
【0056】
化学療法も、脳転移に用いることができる。原発の腫瘍に応じて、あらゆる1つまたは組合せの以下の薬剤を患者に投与することができる:シクロホスファミド、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、メトトレキサート、ドキソルビシン、プレドニゾン、およびアドリアマイシン(例えば、CAFまたはCMFと組み合わせて)。
【0057】
本明細書に開示された抗体を用いた抗体の組成物および方法を、本明細書に記載され、または当技術分野で脳転移について周知の(例えば、Jay S.Loefflerら、1997年)あらゆる従来の治療モダリティーと組み合わせることができる。
【0058】
4.4.2 肺転移
肺は、転移性疾患が二番目に頻繁に起こる部位である。解剖学的に、肺は血管に富む部位であり、原発腫瘍の静脈排出系から出るときに腫瘍細胞が循環することにより遭遇する第1の毛細血管床である。このようにして、肺は、散在する腫瘍細胞が機械的に捕捉される最初の濾過部位として作用する。しかし、そこで捕捉され、増殖し続け転移性病変を形成する細胞は、細胞が由来する最初の原発腫瘍に大きく依存する。この肺転移の血行性の過程は最も一般的な手段であるが、肺転移はリンパ系を介して起こることもあり得る。Harvey I.Passら、「Metastatic Cancer to the Lung」、CANCER:PRINCIPLES & PRACTICE OF ONCOLOGY、2536〜2551頁(Vincent T.DeVitaら編、第5版、1997年)を参照されたい。
【0059】
肺転移を有し続ける最も一般的な原発腫瘍には、軟部組織肉腫、大腸癌、胚細胞腫瘍、骨肉種、ある種の小児腫瘍(例えば、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、脂肪肉腫、胞状肉腫、滑膜肉腫、線維肉腫、神経線維肉腫、および上皮肉腫)、メラノーマ、腎細胞癌、ならびに乳癌が含まれる。これらの原発腫瘍からの転移の殆どは、外科的に処置される。しかし、化学療法と組み合わせた外科手術が推薦されることもある。例えば、肺に転移した胚細胞腫瘍は、シスプラチンベースの組合せ化学療法の治療後、外科切除で処置する。
【0060】
肺転移の処置は、転移切除(すなわち、肺転移病変の外科的切除)を頻繁に含む。したがって、本発明の一態様には、本明細書で論じられまたは当技術分野で周知の、肺転移を処置するための従来の治療法と組み合わせた、開示された抗体の使用が企図される。さらなる処置モダリティーについては、例えば、Harvey L Passら、1997年を参照されたい。
【0061】
したがって、本発明の一態様には、抗−α4インテグリン免疫グロブリン、またはα4リガンド(例えば、VCAM−1およびMadDAM−1)を認識し結合する免疫グロブリンと、肺転移を処置するためのあらゆる使用可能な処置モダリティーを使用する方法とを組み合わせることが企図される。
【0062】
4.4.3 肝臓転移
肝臓における転移性疾患は、多くの原発腫瘍部位から生じることがある。静脈排出のため、消化管の腫瘍は肝臓に優先的に広がり、したがって多くの患者は肝臓の癌と最初に診断される。肝臓に転移する殆どの消化管腫瘍では、診断は悲劇的で生存は比較的短い。しかし、大腸の肝臓への転移は、切除治療後の処置に敏感に反応することがある。
【0063】
全身化学療法は、肝臓の転移の処置に最も頻繁に用いられるモダリティーを示す。全身化学療法に対する反応は、原発腫瘍によって異なる。別の治療の選択肢として、肝動脈化学療法がある。肝臓転移は肝動脈によって殆ど独占的に還流されるが、通常の肝細胞はその血液を門脈および肝動脈から得ている。したがって、3H−フロクスウリジン(3H−FUDR)(または他の化学療法薬または薬類)を肝動脈に注入する肝動脈化学療法は、通常の肝組織よりも転移に著しい薬物濃度の上昇(15倍)をもたらす。肝動脈を介して投与するさらなる薬物には、それだけには限定されないが、フルオロウラシル、5−フルオロウラシル−2−デオキシウリジン、ビスクロルエチルニトロソウレア(bischlorethylnitrosourea)、マイトマイシンC、シスプラチン、およびドキソルビシンが含まれる。
【0064】
肝臓への転移では、処置モダリティーには、全身化学療法(例えば3H−フロクスウリジンを用いて)、肝臓内の治療法、肝動脈の結紮または塞栓形成、薬物塞栓療法、放射線療法、アルコール注入、および冷凍外科療法が含まれ得る。薬物塞栓療法では、以下の薬物レジメンを用いることができる:(1)DSMおよびマイトマイシンC、(2)コラーゲン、シスプラチン、ドキソルビシン、およびマイトマイシンC、(3)フルオロウラシル、マイトマイシンC、エチルヨウ化油、およびゼラチン、(4)アンジオスタチン(または新血管形成または脈管形成を阻害する他の薬物)、シスプラチン、ドキソルビシン、およびマイトマイシンC、(5)リピオドールおよびドキソルビシン、(6)ゲル泡沫、ドキソルビシン、マイトマイシンC、およびシスプラチン、(7)ドキソルビシン、マイトマイシンC、およびリピオドール、(8)ポリビニル、アルコール、フルオロウラシル、およびインターフェロン。さらなる処置および詳細については、John M.Dalyら、「Metastatic Cancer to the Liver」、CANCER:PRINCIPLES & PRACTICE OF ONCOLOGY、2551〜2569頁(Vincent T.DeVitaら編、第5版、1997年)を参照されたい。
【0065】
肝臓への転移では、本発明の免疫グロブリンを含む方法および組成物と組み合わせて、あらゆる入手可能な処置モダリティーを用いることができる。
【0066】
4.4.4 骨転移
骨転移の処置は、多様式法を用いて取り組むのが最良である。骨の問題点の1つに、骨折および骨折治癒機転の発生がある。骨腫瘍の腫瘍塊は、外科手術で行うことができ、四肢の切断を含むことがある。外科的処置の他に、骨格の転移に放射線を用いることができる。広範に散在した骨疾患には、限局性の体外放射線、半身照射、または全身の放射性核種療法を考慮することができる。89Srなどの骨親和性同位体は、高エネルギー同位体である32P−正リン酸よりも耐容性が良いので提唱されている。骨転移を処置するためのさらなるモダリティーおよび詳細については、例えば、John H.Healy、「Metastatic Cancer to the Bone」、CANCER:PRINCIPLES & PRACTICE OF ONCOLOGY、2570〜2586頁(Vincent T.DeVitaら編、第5版、1997年)を参照されたい。
【0067】
骨への転移では、あらゆる入手可能な処置モダリティーを、抗−α4インテグリン免疫グロブリン、またはα4インテグリンに結合するリガンド(例えば、VCAM−1およびMadCAM−1)に対する抗体を用いた方法および組成物と組み合わせて用いることができる。
【0068】
4.5 癌の処置と関連する状態を改善するための併用療法
一般に、放射線または化学療法を使用する本来の癌処置モダリティーの背後にある考えは、正常の細胞よりも早く増殖するがん細胞を毒し、がん細胞を化学療法および放射線により感受性にすることである。しかし、患者を、放射線および化学療法、またはさらにはいくつかのより新しい癌治療モダリティーで処置すると、処置する患者に有害副作用がある。したがって、本発明の一態様では、患者を処置するのに用いる処置モダリティーの組合せにより生じる負の効果を改善する化合物および組成物の使用が企図される。例えば、それだけには限定されないが、悪心、嘔吐、粘膜炎および他の口腔の合併症、膀胱炎、肺毒性、心毒性、脱毛、および性腺機能不全などの有害効果を処置する薬物を、抗癌治療と組み合わせて患者に投与することができる。これらの試薬のいくつかは、純粋に美容的(例えば、脱毛の阻害)なようであることがあるが、癌の処置に対する前向きの態度を維持し、かつ抑うつを防ぐことは、処置する患者の全般の処置反応を支援できることを研究は示している。したがって、本明細書で論じられる試薬および組合せ処置を、これらの有害効果を改善する薬物処置とさらに組み合わせ、またあらゆる従来の癌処置モダリティーと組み合わせることができる。癌処置の有害効果を改善する方法に関する詳細は、概してCANCER:PRINCIPLES & PRACTICE OF ONCOLOGY(Vincent T.DeVitaら編、第5版、1997年)を参照されたい。
【0069】
5.免疫グロブリン製剤および投与方法
本発明の一態様では、α4リガンド(例えばVCAM−1およびMadCAM−1)に結合する抗α4免疫グロブリンまたは免疫グロブリン類の使用を企図する。かかる免疫グロブリン類は、これらのポリペプチド類を認識および結合する、完全抗体類、抗体フラグメント類、または組換えによって作製された免疫グロブリン類であってもよい。
【0070】
上述した、関係する抗体類または免疫グロブリン類は、生理学的に許容される担体に溶かして対象に投与することが好ましい。抗体は、非経口的投与を含むが限定されるものではない多様な方法で投与されてもよく、皮下(s.c.)、硬膜下、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、脳脊髄膜内、腹腔内(i.p.)、大脳内、動脈内、または病巣内経路で投与、局所的(例えば外科的適用または外科的座剤)、および肺(例えば噴霧剤、吸入剤、または散剤)ならびに以下の記載を含む。抗α4免疫グロブリンまたはα4リガンドに対する免疫グロブリン類は、静脈または皮下に投与することが好ましい。
【0071】
免疫グロブリン類は、誘導方法によっては、多様な方法で処方してもよい。製剤(すなわち、それが投与される対象に対して治療上有効な製剤)中で治療上活性のある免疫グロブリンの濃度は、約0.01mg/mL〜1g/mLと変化させてもよい。免疫グロブリン組成物は、必要に応じて対象に投与されたときに、それを投与した対象の血液中の濃度が約10μg/mL以上に達することが好ましい。
【0072】
免疫グロブリンは、滅菌生理的食塩水液などの適切な不活性担体に溶かして経口投与用に処方することが好ましい。例えば、担体溶液中の免疫グロブリンの濃度は、一般に約1〜150mg/mLの間にある。投与用量は、投与経路によって決定される。好ましい投与経路には、非経口、皮下、または静脈の投与が含まれる。
【0073】
非経口的投与に対しては、本発明の免疫グロブリン類は、薬学的担体と共に、生理学的に許容される賦形剤中の本物質の溶液または懸濁液の注射可能な投与量として投与することができ、賦形剤は、サーファクタント添加または不添加で、水および油などの滅菌液であってもよい。他の許容可能な賦形剤には、動物性、植物性、または合成による油が含まれ、例えば、ピーナッツ油、大豆油、および鉱物油である。通常、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール(PEG)などのグリコール類が、特に注射液として好ましい液体担体である。本発明の抗体類および免疫グロブリン類は、デポー注射剤または埋め込み製剤の剤形で投与することが可能であり、これは、活性のある成分(類)の持続放出を可能にするような態様で処方することができる。好ましい組成物には、50mM L−ヒスチジン、150mM NaClからなりHClでpH6.0に調製した緩衝液で処方した20mg/mLのモノクローナル抗体が含まれる。
【0074】
本発明の一態様によると、α4,α4二量体、またはα4に結合するリガンド(またはその二量体)を認識または結合する免疫グロブリンは、腫瘍を治療および/または改善するために、単独で、または上述したように他剤と組み合わせて投与してもよい。これらの試薬も、患者の治療に使用するために、薬剤の調製において用いることができる。他の癌治療薬の投与は、免疫グロブリン投与の前に、同時に、または後に行うことができる。被験物である免疫グロブリンの投与は、外科治療、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法、温熱療法、または他の癌治療物理療法の前、最中、および後に行うことができる。被験物である免疫グロブリンの投与は、必要に応じて毎日、毎週、または毎月行うことができる。免疫グロブリン類は、1週または複数の週にわたって毎週投与することが好ましい。
【0075】
治療用の免疫グロブリン製剤類が、望ましい純度の免疫グロブリンを、任意の生理学的に許容可能な担体、賦形剤、保存剤、または安定剤(REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、16版、A.Osol編、1980年版および近年版)と混合することによって、凍結乾燥したケーキまたは水溶液の剤形で貯蔵するために調製される。免疫グロブリンに許容可能な担体、賦形剤、または安定化剤には、使用した投与量および濃度においてレシピエントに対して毒性がなく、治療性がなく、および/または免疫原性がなく、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン類などのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの疎水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸類;グルコース、マンノース、またはデキストリン類を含む単糖類、二糖類、および他の炭水化物;エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)などのキレート剤;マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール類;ナトリウムなどの塩形成性対イオン;および/またはツイーン(登録商標)、プルロニック類、またはポリエチレングリコール(PEG)などのサーファクタントが含まれる。担体分子類の具体例には、グリコサミノグリカン類(例えばヘパリン硫酸)、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸、コンドロイチン4−硫酸、コンドロイチン6−硫酸、ヘパラン硫酸、デルマチン硫酸、ペルレカン、およびペントポリ硫酸を含むが、これに限定されるものではない。
【0076】
免疫グロブリン類を含む薬学的組成物には、望むなら、薬学的に許容可能な、毒のない担体または賦形剤も含むことが可能であり、これは、動物やヒトに投与するための薬学的組成物を処方するために通常用いられるベヒクルである。賦形剤は、組合せの生物学的活性に影響しないように選択される。例には、蒸留水、生理的リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス液が含まれるが限定されるものではない。
【0077】
本発明の薬は、植物油類または他の同様な油類、合成脂肪族系酸グリセリド類、高級脂肪族系酸エステル類、またはプロピレングリコールなどの水溶性または非水溶性の溶剤に、薬を溶解し、懸濁し、または乳濁することによって注射用の製剤に処方することができる。製剤は、従来の添加物を含有してもよく、これは溶解補助剤、等張剤、懸濁剤、乳濁剤、安定剤、および保存剤などである。
【0078】
また免疫グロブリン類は、吸入または肺送達を通して投与するように、噴霧製剤で用いてもよい。本発明の薬は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素、および同等物などの加圧可能で許容可能なスプレー用ガス中へと処方可能である。
【0079】
また免疫グロブリンは、マイクロカプセルに内包してもよく、例えばコアセルベーション技術による、または界面重合(例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンのマイクロカプセルやポリメチルメタクリレートマイクロカプセル)による、コロイド剤送達システム(例えば、リポソーム類、アルブミン・ミクロスフィア類、マイクロエマルジョン類、ナノパーティクル類、およびナノカプセル類)やマクロエマルジョンである。かかる技術は、上記REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCESに開示される。
【0080】
in vivo投与に使用される免疫グロブリンは、無菌でなければならない。これは、凍結乾燥および再構成の前または後に、滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成される。免疫グロブリンは、通常、凍結乾燥剤形または溶液で保存される。
【0081】
治療性免疫グロブリン組成物は、無菌的なアクセスポートを有する容器、例えば点滴輸液バッグあるいは皮下注射針または同類の鋭利な器具によって穿刺可能な栓が付いたバイアルに、通常収納される。
【0082】
持続放出製剤の適切な例には、タンパク質を含む固体疎水性ポリマーである半透性マトリックス類が含まれ、このマトリックス類は成型物の剤形であり、例えばフィルムやマイクロカプセルである。持続放出マトリックス類の例には、ポリエステル類、LangerらによるJ.Biomed.Mater.Res.15:167〜277頁(1981)およびLangerによるChem.Tech.12:98〜105頁(1982)に記載されるハイドロゲル類(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート))、またはポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L−グルタミン酸−γエチル−L−グルタメート共重合体(Sidmanら、Biopolymers22:547〜556頁、1983)、非分解性エチレン酢酸ビニル(上記Langerら)、LUPEON DEPOT(商標)などの分解性乳酸−グリコール酸共重合体(すなわち、乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドで構成される注射可能なマイクロスフィア類)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州出願133988)が含まれる。
【0083】
エチレン−酢酸ビニルおよび酪酸−グリコール酸などの重合体類は、100日以上での分子の持続放出を可能にするが、ある種のヒドロゲル類は、より短い期間でタンパク質を放出する。内包された抗体類が長期間体内に留まるとき、それらは37℃で水分に曝された結果、変性または凝集することがあり、これによって生物活性を損ない、免疫原性が変化する可能性がある。内在機序によって異なる、免疫グロブリン安定化に対して、合理的な方法が考案可能である。例えば、凝集機序が、チオ−ジスルフィド相互交換による分子内S−S結合形成であると見いだされたなら、安定化は、スルフヒドリル基を修飾すること、酸性溶液から凍結乾燥すること、水分含量をコントロールすること、適切な添加物を使用すること、特有な重合体マトリックス組成物を開発すること、および同種の方法によって達成されることがある。
【0084】
持続放出性免疫グロブリン組成物類には、リポソームに内包された免疫グロブリンも含まれる。免疫グロブリンを含有するリポソーム類は、それ自体知られた方法によって調製される。Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82(1985)、3688〜92頁;Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(1980)、4030〜4頁;米国特許第4485045号、4544545号、6139869号、および6027726号参照のこと。通常リポソームは、脂質含有量がコレステロールで約30モル%(mol.%)より高く、適切な免疫グロブリン治療のために選択比率が調節された、小粒(約200〜約800Å)な単層型である。
【0085】
本発明の免疫グロブリンは、持続放出剤形で投与可能であり、例えばデポー注射剤、埋め込み製剤、または浸透ポンプであり、これらは、活性のある成分の持続放出を可能にするような方法で処方可能である。持続放出製剤のための埋め込み剤類が、当技術分野でよく知られる。埋め込み剤類が、生物分解性または非生物分解性の重合体で、マイクロスフィア、スラブなどとして処方される。例えば、乳酸および/またはグリコール酸の重合体類は、宿主による耐容性が良好な崩壊性重合体を形成する。埋め込み剤は、活性薬の局所濃度が、身体の他の部分に比較して当該部分で上昇するように、例えば固形癌の近傍に配置される。
【0086】
一般的な1日投与量は、免疫グロブリンでは、被験者体重当たり約1μg/kg〜約200mg/kgまで、またはそれ以上であり、より好ましくは被験者体重当たり約0.01mg/kg〜約150mg/kgであり、より好ましくは被験者体重当たり約0.1mg/kg〜約100mg/kgであり、より好ましくは患者体重当たり約1mg/kg〜約75mg/kgであり(およびこれらの値間の各整数値)、本願明細書において言及した要因によって異なる。一般に、臨床家は、望ましい作用を達成する投与量に到達するまで免疫グロブリンを投与する。この治療の経過は、従来のアッセイによって容易にモニター可能である。
【0087】
「安定な」免疫グロブリン、抗体、または抗体フラグメントの製剤は、保存に際して、中に含まれるタンパク質の生理学的安定性および/または化学的安定性および/または生物学的安定性を、原則的に保つ。タンパク質の安定性測定に対する多様な分析技術が、当該技術分野で利用可能であり、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery、247〜301(Vincent Lee編、Marcel Dekker、Inc.、New York、NY.、1991出版)およびA.Jones、Adv.Drug Delivery Rev.10:29〜90(1993)に論評される。安定性を、選択温度で選択期間に対して測定することができる。製剤は、室温(約30℃)または40℃で少なくとも1カ月安定、および/または約2〜8℃で少なくとも2年安定であることが好ましい。さらに、製剤は、製剤を凍結(例えば−70℃に)および乾燥の後に、安定な場合がある。
【0088】
免疫グロブリンは、所与の時に、免疫グロブリンの生物学的活性が、例えば抗原結合アッセイによる定量によって、医薬製剤の調製時に示した生物学的活性の約10%以内(アッセイ誤差内)であるなら、医薬製剤における「その生物学的活性を保持する」。
【0089】
本発明は、以下の実施例を参照して詳細に記載してきているが、多様な変更形態が、本発明の精神から解離することなく作成可能であり、当業者に容易に知られることが理解される。
【実施例】
【0090】
[実施例1]
腫瘍細胞の増殖に対するIn Vitroでのナタリズマブ(Natalizumab)の作用
ナタリズマブが、形質転換細胞の増殖および腫瘍形成する可能性のあるクローン性拡大を、誘導または抑制する可能性を評価するために、実験を行い、in vitroで受容体を発現している悪性細胞の成長をナタリズマブが刺激する能力を測定する。試験は動物腫瘍モデルで実施した。
【0091】
腫瘍細胞株の増殖に対する陽性または陰性の作用の評価は、3H−チミジンの取り込みアッセイを用いて行った。ヒト腫瘍細胞の成長および/または転移における抑制または増強作用の評価は、腫瘍を異種移植したヌード/SCIDマウスモデルを用いて測定した。32株の腫瘍細胞株をスクリーニングした。32株の腫瘍細胞株は、12株が大腸癌、大腸腺癌、結腸腺癌、または結腸癌の細胞株であり、7株が黒色腫または無メラニン性黒色腫であり、6株が膀胱移行上皮細胞癌または膀胱癌であり、3株が白血病であり、2株がリンパ腫であり、および2株が前立腺癌であった。
【0092】
α4の発現に対する試験のために、免疫組織化学(IHC)および蛍光標示式細胞分取(FACS)を行った。評価した細胞株26株のうち5株でIHCが陽性であった。免疫組織化学(IHC)で陰性または不確かと考えられた21株のうち4株が、FACS分析では強陽性(>85%)であった。IHCで陰性または不確かであった2細胞株は、FACS分析では弱陽性と中等度陽性(22.5%および77.6%)であった。6細胞株では、IHCで評価しなかった。1細胞株のみが、FACS分析で中等度陽性(68.4%)であった。
【0093】
VCAM−1の結合に対する接着アッセイも行った。評価した11細胞株のうち7株が陽性であった。細胞増殖の予備アッセイでは、評価した9細胞株全て9株が、細胞障害作用も、増殖作用も持たなかった。AS283、HT−29、MOLT−4、およびUM−UC−3の細胞株をタイサブリ(Tysabri)(登録商標)(ナタリズマブ)で処理した。トリチウム化チミジンの取り込みを測定した。1、2、3、4、および5日における、異なる8濃度(0.001〜100mg/mL)での処理で、細胞障害作用も増殖作用も証拠は見られなかった。
【0094】
[実施例2]
SCIDマウスの皮下に埋め込んだヒトMOLT−4異種移植片の成長に対するナタリズマブの作用
この試験の目的は、SCIDマウス雌において、皮下に埋め込んだヒトMOLT−4急性リンパ芽球性白血病異種移植片の成長に対するナタリズマブでの治療作用を評価することであった。
【0095】
材料および方法
生存中の実験作業を、0日に開始し、80日目に終了した。5週齢〜6週齢のSCIDマウス雌を、Taconic Farms、Inc.(Germantown、NY)から購入し、実験1週間前に、実験室で馴化した。動物はマイクロ・アイソレーター・ケージの中の無菌施設で飼育し、ケージ当たり動物5頭で、12時間の明・暗サイクルとした。動物は、濾過したバーミンガム市水道水および無菌齧歯類用飼料を自由摂取させた。マウスには、滅菌可能な齧歯類用食餌(Harlan−Teklad TD8656)を摂取させた。ケージを毎週2回交換した。動物は毎日観察し、臨床徴候に注意した。
【0096】
MOLT−4ヒト白血病の30〜40mgのフラグメントを、12ゲージのトロカール針を用いてマウスの右腋窩部近傍に移植し、成長させた。腫瘍フラグメントを移植した日は、実験第0日であった。腫瘍を、治療開始前に、重量75〜144mg(大きさ75〜144mm)に達せしめた。治療開始日(腫瘍移植後14日)に、可能な限り狭い重量範囲の腫瘍を治験のために選択できるように、十分な頭数のマウスに移植した。適切なサイズ範囲の腫瘍を伴った、それらの選択動物を、治療群に割り付けた。治療第1日目の平均腫瘍重量は、84または96mgの範囲にあり、腫瘍重量の中央値は、14日目で75または88mgであった。
【0097】
腫瘍フラグメントを移植した当日に、ドナー腫瘍の1つを採取し、半切した。腫瘍の半分をO.C.T.化合物中で凍結し、腫瘍の残る半分を10%ホルマリン緩衝液中で固定した。凍結およびホルマリン固定した半分の腫瘍のいずれも、分析のためにBiogen Idec Inc.に送付した。マウスに対する移植に使用された各ドナー腫瘍の1フラグメントを、チオグリコレート培地と共に試験管に入れ、37℃で24時間インキュベーションした。
【0098】
ナタリズマブ(20mg/mL溶液、Gensia Sicor Phrmaceuticals Inc.、ロット番号 F23014およびG23004)および賦形剤(タイサブリ(登録商標)に対するプラセボ、Gensia Sicor Phrmaceuticals Inc.、ロット番号 F85002)を、Biogen Idec Inc.から入手し、入手時に2〜8℃で保存した。0.97mg/mLのヒト免疫グロブリン(IgG4)溶液を入れたバイアルが、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO、ロット番号 122K9159)によって供給され、入手時に−84℃で保存された。タキソール(登録商標)(Taxol)(パクリタキセル)(50%クレモフォア(cremophor)−EL)/50%エタノール中6.0mg/mL、Bristol−Myers Squibb Company、Princeton、NJ;ロット番号2L57296)臨床製剤を購入し、入手時に冷蔵した。生理食塩水(動物仕様の0.9%生理食塩水液)をPhoenix Pharmaceutical、Inc.(St.Joseph、MO、ロット番号 262053F、206205F、208281F)購入し、室温で保存した。生理食塩水の新規ボトルを各製剤日に使用した。
【0099】
20mg/mLのナタリズマブ溶液を、14日目にタイサブリ(登録商標)に対するプラセボで1.0mg/mLに希釈した。以後の注射日には、0.5mg/mLのナタリズマブ溶液が、20mg/mLのストック液をタイサブリ(登録商標)に対するプラセボで希釈することによって、処方された。ナタリズマブのバイアルを振らないように注意し、バイアルは転倒して混合した。新規のナタリズマブのバイアルおよびタイサブリ(登録商標)に対するプラセボを、各製剤日に使用した。14日目に、供給された0.97mg/mLのIgG4ストック液を融解し、マウスに注射した。以後の注射日には、0.5mg/mLのIgG4液が、0.97mg/mLのストック液を0.9%の生理食塩水液で希釈することによって調製された。IgG4の新規バイアルを各製剤日に使用した。商用に処方された50%クレモフォア−EL/50%エタノール中6mg/mLのタキソール(登録商標)溶液が、注射当日に、0.9%生理食塩水で希釈されて12.5%クレモフォア−EL/12.5%エタノール/75%生理食塩水の1.5mg/mL溶液を作製した。全投与液が、製剤後2〜3時間以内に注射された。
【0100】
14、17、24、31、38、および45日目に、第1群(生理食塩水)および第2群(ナタリズマブ)に対する、投与液1mL単位量を2つ、製剤終了後直ちに投与瓶から取りだした。ナタリズマブおよび生理食塩水の各1mL単位量を、試験名、群番号、化合物名、投与量、投与経路、注射量、試験日、および用語「Prep.Lab.」を表示したバイアルに分注し、バイアルを直ちに冷蔵した。さらに、各群に対する注射開始前に、生理食塩水およびナタリズマブの同一投与液の1mL単位量2つを、群毎に2本のシリンジに吸い上げ(1mL/シリンジ)、群の動物20頭全てに投与する間、シリンジは室温に置かれた。治療完了後に、各シリンジの内容物を、試験番号、群番号、化合物名、投与量、投与経路、注射量、試験日、および用語「Animal Lab」と表示したバイアル中に分注し、バイアルを直ちに冷蔵した。実験完了後に、これらの単位量を、分析のためにCovance Laboratories、Inc.に送付した。
【0101】
薬物治療
動物は、6群各20頭および1群30頭に無作為に分割された。2群(第1および第5群)を0.9%生理食塩水液(生理食塩水)で治療した。第2、第6、および第7群の動物をナタリズマブで治療した。第3群の動物を、IgG4(イソタイプ対照)で治療した。第4群の動物を、タキソール(登録商標)(陽性対照)で治療した。生理食塩水、ナタリズマブ、およびIgG4(第1、第2、第3、第5、および第6群)治療では、14、17、21、24、28、31、35、38、42、および45日目にIP投与した(Q3D2回を5週間、金曜−月曜の計画)。第7群(30頭の群)におけるナタリズマブ治療では、14、17、21、24、28、31、35、および38日目に投与した(Q3D2回を4週間)。ナタリズマブを14日目に投与量10mg/kgで投与し、その後さらに5mg/kg/用量で治療した。IgG4を14日目に投与量9.7mg/kgで投与し、さらに5mg/kg/用量で治療した。タキソール(登録商標)を1日1回で継続して5日間(Q1Dを5回)、投与量15mg/kg/用量での静注(IV)投与で、14日目に開始した。試験化合物全てが、個別の正確な動物体重に基づいて、体重10g当たり0.1mLのベヒクル容量で各治療日に投与された。
【0102】
動物は計量され、皮下(SC)の腫瘍は、14日目に開始した治療薬投与日に測定され、注射日前日に行われた2回の測定(24日目および41日目)は例外であった。治療完了後、腫瘍および体重のデータは、週2回採取された。腫瘍容量を、カリパー測定(mm)および楕円体に対する式を使用することによって評価した。式はLxW2/2=mmであり、ここでLおよびWは、各測定で採取された長軸および短軸の垂直寸法を指す。単位密度(1mm=1mg)を仮定して、この式を腫瘍重量の計算にも使用した。
【0103】
第7群の動物の血液を、治療クールにわたって採取した。番号1〜5の動物から、14日目の注射の8時間後に採血した。動物5頭から、21日目(番号6〜10の動物)、28日目(番号11〜15の動物)、35日目(番号16〜20の動物)、および38(番号21〜25の動物)の注射前に採血した。番号26〜30の動物から、38日目の注射8時間後に採血した。血液を、CO2/O2麻酔下に後眼窩穿刺によって採取した。動物から、非コートの毛細管を用いて最大量の血液(最終放血)を採血し、血液を室温で、最後の動物から各時点において採血した時点から30分間凝血させた。次に、血液試料を4℃、10000rpmで10分遠心して血清を分離し、ドライアイス上で凍結した。全血清試料を、分析のためにBiogen Idecに送付するまで−84℃で保存した。
【0104】
第5群および第6群の動物の1次腫瘍を、第5群の腫瘍重量の中央値が466mgに達した1日後である28日目に、外科的に切除した。麻酔投与および手術/術後回復の過程を、認証された標準実験室手順にしたがって実施した。簡潔には、各動物を麻酔し、手術部位を消毒薬で準備した。腫瘍の一側縁に沿って(腫瘍直径より長く、わずか3〜4mm)切開し、皮膚を脇に寄せて腫瘍を切開部から裏返した。腫瘍を皮膚および筋肉から切り離した。切開部は、4.0mmの創傷クリップで閉じられた。各切除腫瘍を半切し、腫瘍の半分をO.C.T.化合物中で凍結し、残る半分の腫瘍を10%ホルマリン緩衝液中で保存した。切除部位は、腫瘍の再成長を週2回モニターし、新規の固形腫瘍が形成されたときに、その大きさを記録した。
【0105】
第1〜第4群の番号1〜10の動物を、腫瘍移植(2003年5月16日)後47日目に安楽死させ、第1〜第4群の番号11〜20の動物を、48日目(2003年5月17日)に安楽死させた。第5群および第6群の生存動物全て(第5群の番号12の動物および第6群の番号8の動物を除く、説明は下記を参照)を、腫瘍移植(2003年5月19日)後80日目に安楽死させた。第5群番号12の動物を、腫瘍重量過剰(>4000mg)により73日目に屠殺した。第6群の番号8の動物を、腫瘍の潰瘍形成により73日目に屠殺した。第7群の動物5頭を、14、21、28、35日目に安楽死させ、動物10頭を38日目に安楽死させた。47、48、および80日目に存命であった動物全ての死体を、剖検して完全な組織病理学的評価のために、南部研究機関の安全性評価部門に提出した。第7群の動物を、剖検および完全な組織病理学的評価から除外した。第1〜第6群の動物に対して、腫瘍移植(皮下)を0日目に行った。治療を14日目に開始し、治療を45日目に終了した。第5群および第6群では、1次腫瘍の切除を移植後28日目に行った。動物は80日目に屠殺された。非切除群の動物を、47〜48日目に屠殺した。
【0106】
【表1】

【0107】
第7〜第10群の動物に対して、腫瘍移植(皮下)を0日目に行った。治療を7日目に開始し、治療を45日目に終了した。動物は46〜47日目に屠殺された。
【0108】
【表2】

【0109】
第11群の動物に対して、腫瘍移植(皮下)を0日目に行った。治療を14日目に開始し、治療を45日目に終了した。群当たり5頭の動物を、1、7、14、21、24日目に屠殺した。本群をナタリズマブの血清中濃度の検定に使用した。
【0110】
【表3】

【0111】
ナタリズマブ投与を、配合用量10mg/kgで指定の研究日に開始した。以後の用量を、週2回(すなわち毎3〜4日)投与した。用量段階を、1用量後の薬物動態モデリングと、反復投与での薬物動態試験で確認されるトラフ血清濃度とに基づいて選択した。用量段階は、反復投与時の最小血清濃度20mg/mLを可能にするように選択された。
【0112】
MOLT−4腫瘍確立後のナタリズマブ治療では、切除群での腫瘍生育が緩慢となり、切除群の動物には、無腫瘍での後治療となったものもあった。MOLT−4腫瘍移植前に開始されたナタリズマブ治療では、腫瘍生育が有意に鈍化した。ナタリズマブ治療では、治療クールにおける体重の増加によって立証されるように、動物の健康に対する有害な影響はなかった。
【0113】
非特異的な死亡数、腫瘍の一部および完全な寛解数、腫瘍のない生存数、および個々の動物において評価サイズに到達した時間(腫瘍量の4倍化に要した時間)を評価した。個々の動物において腫瘍量の4倍化に要した時間は、平均的腫瘍における最終的な生育遅延(T−C)の計算に使用された。第1群(生理食塩水での治療動物)は、全計算において対照群(C)に使用された。腫瘍重量の中央値、腫瘍重量の平均値および標準偏差、ならびに治療群(T)における腫瘍重量の中央値および平均値を対照群(C)における腫瘍重量の中央値および平均値に対して比較したもの(それぞれMEDIAN T/C=medianT/medianCx100%およびMEAN T/C=meanT/meanCx100%)を、データ採取の各の日に各群に対して計算した(値を表8−2〜8−8に示す)。平均体重および標準偏差を、データ採取時の各群に対してそれぞれの日に計算した(値を表8−9〜8−15に示す)。
【0114】
第1、第2、第3、および第4群の番号1〜10の動物の腫瘍を、47日目に採取した。第1、第2、第3、および第4群の番号11〜20の動物の腫瘍を、48日目に採取した。第5および第6群の番号1〜20の動物の1次腫瘍を、28日目に外科的に切除した。第5および第6群の生存動物全ての2次腫瘍(1次腫瘍の部位で再成長したもの)を、80日目に採取した。第6群の番号1および15の動物は、80日目の剖検時に2次腫瘍がなかった。(第5群の番号4の動物および第6群の番号3の動物は、術後回復期である28日目に死亡し、したがって2次腫瘍はなかった。第5群の番号19の動物では、47日目に死亡が発見され、死後剖検を行った。第5群の番号12の動物を、腫瘍重量過剰(4224mg)により73日目に実験から除外した。第6群の番号8の動物を、腫瘍の潰瘍形成により73日目に実験から除外した。第5群の番号10、17、および20の動物では、73日目に死亡が発見され、有意な自己分解のため検視しなかった。)
【0115】
100mgを超える重量の各腫瘍を半切し、各腫瘍の半分をドライアイス/エタノールのスラッシュを用いてO.C.T.化合物中で凍結し、−84℃で保存した。100mg未満の重量(第4群の番号1、3、7、9、11、12、14〜18、および20の動物の腫瘍)の腫瘍全体を、O.C.T.化合物中で凍結した。第4群の番号2、4、5、6、8、13、および19の動物の腫瘍は、100mg未満であり、この全体を10%ホルマリン緩衝液中で保存した。実験完了後にO.C.T.化合物中で凍結した腫瘍試料(計145腫瘍試料)全てを、MOLT−4がin vivoでVLA−4を発現しており、したがって本試験に対する有効な腫瘍モデルであることを検証するために、免疫組織化学による検討用に、Sierra Biomedical、Division of Charles River Laboratoriesに送付した。免疫組織化学検査を、商用の抗CD49d抗体および各治療群の動物小集団からのMOLT−4腫瘍の凍結切片で行った。各腫瘍の残り半分があった場合には、これを10%ホルマリン緩衝液で固定して、組織病理学的評価のために南部研究機関の安全性評価部門に提出した。
【0116】
データ分析
個々の腫瘍の測定値および体重を採取し、南部研究機関で開発されたソフトウェアであるADAS(自動データ収集システム)を用いて処理した。次にデータは、報告目的のためにMSエクセルに転送された。シグマプロット(商標)(Sigma Plot)を、生データを図示するために使用した。終了前の最終測定日(第1〜第4群では47日目、第5群および第6群では80日目)における個々の動物の腫瘍重量を、群間の成長データを統計的に比較するためのエンドポイントとして用いた。シグマスタット(商標)(Sigma Stat)ソフトウェアを、スチューデントt−検定を行うために使用した。データが正規分散性や等分散性の検定を通らなかったときは、マン・ホイトニー順位和検定を、t−検定の代わりに使用した。統計分析結果のコピーを、本報告に添付する。
【0117】
投与溶液の分析
投与溶液2検体(MP−21520およびMP−21522)が、わずかに目標濃度を±15%超え、差はそれぞれ+16%および+19%であった。これらの差は、生理食塩水投与溶液および希釈剤に含まれる280nmでの吸収0.01〜0.04単位に起因した。本吸収は、試料容器の栓に含まれる生理食塩水可溶性物質に起因した。
【0118】
SC MOLT−4白血病異種移植片の成長
腫瘍フラグメント移植日に腫瘍フラグメントを植えて37℃で24時間インキュベートした、チオグリコレート培地のいずれのチューブでも、成長は認められなかった。腫瘍異種移植片の生着率は、対照では95%であり、生理食塩水治療群(第1群)では、20例中1例で異種移植片が成長しなかった(生着せず)。腫瘍が生着しなかった第1群の番号20の動物を、全計算から除外した。腫瘍成長および生理食塩水投与は、耐容され体重減少はなかった。腫瘍重量の中央値は、47日目に1764mgに達し、30.2日で腫瘍量の4倍化を達成した。
【0119】
生理食塩水で治療した第5群の動物20頭全ての腫瘍が、移植後徐々に成長した。腫瘍を28日目に外科的に切除した。動物1頭が、術後回復期に死亡した(番号4の動物)。動物では、術後直ちに体重が減少(最大2gの平均体重減少(10%))したが、後に再び体重が増加し、成長を持続した。観測された体重減少は、麻酔投与ならびに切除腫瘍の正味の重量減少に起因すると考えられた。動物4頭が、実験の途中で死亡し、番号19の動物は47日目に死亡が発見され、番号10、17、および20の動物は73日目に死亡が発見された。全動物の腫瘍が、切除後に1次腫瘍の部位で再び成長した。腫瘍重量の中央値は、80日目に2363mgに達し、中央値の腫瘍は、60.9日で腫瘍量が4倍化した。
【0120】
ナタリズマブの作用
ナタリズマブ投与(第2群)が、よく耐容されて死亡はなく、治療第1週目における体重のバラツキの平均1g(5%)を随伴した。腫瘍20例は全て、実験中に成長した。腫瘍重量の中央値は、47日目に1240mgに達し、中央値の腫瘍は、33.5日で腫瘍量が4倍化した。対照における個々の腫瘍重量の比較では、47日目の生理食塩水治療群(第1群)およびナタリズマブ治療群(第2群)から、生理食塩水治療群の腫瘍重量と比べたときにナタリズマブ治療群の腫瘍重量は統計的に差がない(p=0.1032、マン・ホイトニー順位和検定)ことが明らかとなり、これによっていずれの群の腫瘍も同一の速度で成長したことが示された。
【0121】
第6群のナタリズマブ治療動物20頭全ての腫瘍が、移植後に徐々に成長した。腫瘍を28日目に外科的に切除した。動物1頭が、術後の回復期間に死亡した(番号3の動物)。動物は、腫瘍切除手術後直ちに軽微な体重減少(平均体重減少の最高値1g(5%))を経験したが、以後は体重増加を維持した。19頭の動物のうち17頭の腫瘍が、切除後に1次腫瘍部位で再び成長し、2頭では試験最終日である80日目に腫瘍がなかった。腫瘍重量の中央値は、80日目に1006mgに達し、中央値の腫瘍は、腫瘍量が4倍に到達しなかった(>66.0日)。生理食塩水治療群(第5群)およびナタリズマブ治療群(第6群)における個々の動物体重の比較では、ナタリズマブ治療群の腫瘍の成長は、生理食塩水治療群の腫瘍の成長と統計的に異なる(P=0.0189、t−検定)ことが明らかとなり、これによってナタリズマブ治療をした腫瘍は、生理食塩水治療群の腫瘍より遅い速度で再成長したことが示された。第7群では、ナタリズマブ治療動物30頭全てで腫瘍が成長した。最終採血のために定期的に動物を試験から除外したため、腫瘍の成長を評価しなかった。
【0122】
IgG4の作用
IgG4投与(第3群)が、よく耐容されて死亡も体重減少もなかった。実験終了時に動物20頭全てに腫瘍があった。腫瘍重量の中央値は、47日目で1731mgに達し、中央値の腫瘍では、31.7日で腫瘍量の4倍化を達成した。対照における個々の腫瘍重量の比較では、生理食塩水治療およびIgG4治療の群では47日目において、対照群の腫瘍重量と比較したときに、IgG4治療群の腫瘍重量は統計的に差がない(p=0.8004、マン・ホイトニー順位和検定)ことが明らかとなり、これによっていずれの群の腫瘍も同一の速度で成長したことが示された。
【0123】
タキソール(登録商標)の作用
タキソール投与(第4群)は、よく耐容されて死亡も持続的体重減少もなかった。最大体重減少平均5%(1g)が、治療終了時(17日目および21日目)に観察され、細胞障害性の薬であるタキソール(登録商標)が、概ね耐容最大投与量で投与されたためと予測された。動物では、治療後の期間に体重が増加した。タキソール(登録商標)は、MOLT−4腫瘍異種移植片の成長の抑制において非常に効果的であった。動物20頭中の12頭には、実験終了時に測定可能な腫瘍はなく、8例中3例の測定可能な腫瘍のみが、実験中にその量を1回倍化させた。タキソール(登録商標)治療した腫瘍の成長は、ベヒクル治療した対照群の腫瘍成長と統計的に差があり(p<0.0001、マン・ホイトニー順位和検定)、これによってタキソール(登録商標)治療が腫瘍の成長を抑制したことが示された。
【0124】
組織病理学的評価結果の要約
要約すれば、子宮、卵巣、リンパ節、肺、肝臓、および脾臓の肥大化を含む肉眼的病変が、異なる治療群で不規則に観察されたが、治療関連と考えられるものはなかった。多様な治療群のマウスで不規則に生じる微視的損傷には、脾臓と肝臓における骨髄外造血、肝臓における病巣の壊死および炎症、腸間膜の炎症、ならびに心臓心外膜の石灰化が含まれた。これらの変化の全てが、偶発的または自然発生的であり、全試験物質の投与と関係があるわけではないと考えられた。異種移植片の成長増進は、いずれの治療群でも明白ではなかった。異種移植片成長の伸展が、第5群および第6群のマウス各4頭において腹側腹部(鼠径部)の皮膚で認められた。異種移植片の転移や伸展が、第5群のマウスでは局所リンパ節(腋下、鼠径部、腸骨、下顎、および縦隔)において、第6群のマウスでは鼠径部リンパ節において認められた。胸腺転移が第5群および第6群のマウス各1頭に見られた。ナタリズマブ治療の結果として、2次性ヒト急性リンパ芽球性白血病において成長の増悪や転移があった証拠はなかった。
【0125】
腫瘍の免疫組織化学的分析の要約
MOLT−4が、in vivoでVLA−4を発現しており、したがって本試験に対する有効な腫瘍モデルであることを確認するために、腫瘍切片を免疫組織化学によって検討した。免疫組織化学アッセイを、商用の抗CD49d抗体と各治療群の動物小集団からのMOLT−4腫瘍の凍結切片とで行った。MOLT−4細胞のCD49d特異的な免疫陽性は、明瞭な、顆粒性から不明瞭な、拡散性の細胞質の染色性および細胞表面の染色性によって特徴づけられた。細胞質が拡散性染色性の場合は、細胞質内のCD49dならびに細胞表面のCD49dが抗CD49d抗体に結合していることを示す。生理食塩水対照群およびIgG4対照群の動物腫瘍切片には明瞭な染色性があり、免疫組織化学的染色性スコアを3から4とした(それぞれ「密着した細胞塊」および「密集細胞」)。剖検前に長期の無治療期間があったナタリズマブ治療群(第6群)の動物の腫瘍切片も、明瞭な染色性を有し、免疫組織化学的染色性スコアを3から4とした。ナタリズマブで治療し、治療終了時に屠殺した動物では、CD49dに対する免疫組織化学的染色性が大きく減退して非染色となり、腫瘍切片は免疫組織化学的染色性スコアが0から2(それぞれ「無標識の細胞」および「個々の細胞は散乱して密着」)とした。腫瘍溶解薬であるタキソール治療マウスでは、治療後に、免疫組織化学的評価を可能とする十分量の腫瘍が残らないことが多かった。これらのデータから、本試験の実験条件下、MOLT−4ヒト白血病細胞株はin vivoでCD49dを確かに発現することが確認された。
【0126】
結論
SC移植されたMOLT−4ヒト急性リンパ芽球白血病異種移植片の成長が、ナタリズマブ投与によって抑制されなかった。しかし、1次腫瘍切除部位での固形腫瘍の再成長が、ナタリズマブ投与によって抑制された。IgG4投与では、異種移植片の成長に対する作用はなかった。タキソール(登録商標)治療は、1次腫瘍の成長を阻害し、これによって20頭の動物中12頭では、実験終了時に測定可能な腫瘍がなかった。本動物の組織病理学的評価では、ナタリズマブやIgG4での治療の結果、急性ヒトリンパ芽球白血病異種移植片において成長増悪や転移の証拠はないことが明らかとなった。多様な肉眼的および微視的な病変が、治療群全てにおいて不規則に分布したパターンで生じた。しかし、病変知見の全てが、自然発生的または偶発的であり、生理食塩水、ナタリズマブ、IgG4やタキソール(登録商標)での治療のいずれとも無関係と考えられた。
【0127】
上記に引用された参考文献全てが、全目的に対するその全体を、本明細書に組み込まれている。本出願は、2004年2月6日に出願した米国仮出願第60/541946号に関与し、これは、全目的に対してその全体が本明細書に組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】腫瘍を確立した後に、対照、タキソール、IgG4、またはナタリズマブを投与した際の、MOLT−4異種移植片の原発腫瘍の増殖を示す図である。SCIDマウスを、生理食塩水(N=20)、ナタリズマブ(N=20)、IgG4(N=20)、またはタキソール(N=20)で処置した。生理食塩水、ナタリズマブ、およびIgG4を、−7、−4、0、3、7、10、14、17、21、24、28、31、35、38、42、および45日目に投与した。MOLT−4白血病異種移植片を、0日目に皮下移植した。タキソールを、1〜5日目に静脈投与した。腫瘍は、週2回測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍の増殖および/または転移性進行および/または転移の進展を阻害するための方法であって、
腫瘍の増殖および/または転移を阻害するのに十分な量の抗−α4免疫グロブリンをそれを必要とする対象に投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記抗−α4抗体がα4β1インテグリンおよび/またはα4β7インテグリンに結合することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗−α4免疫グロブリンがナタリズマブであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記腫瘍は、メラノーマ、前立腺癌、白血病、またはリンパ腫であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記メラノーマは、皮膚メラノーマ、転移性メラノーマ、または眼内メラノーマであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、またはホジキン病であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記白血病は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、成人急性リンパ芽球性白血病、成熟B細胞性急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、前リンパ球性白血病、またはヘアリー細胞白血病であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記対象は約1mg/kg対象の体重から約100mg/kg対象の体重の量でナタリズマブを投与されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記対象は約1mg/kg対象の体重から約10mg/kg対象の体重の量でナタリズマブを投与されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ナタリズマブは約1mg/kg対象の体重から約20mg/kg対象の体重の量で投与されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記腫瘍はメラノーマであり、前記対象は前記メラノーマを外科手術で摘出した後に、ナタリズマブが投与されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記腫瘍はメラノーマであり、前記メラノーマを処理するために前記対象は更に外科手術、分離式肢潅流、局所化学療法インフュージョン、全身化学療法、または、二次抗体もしくは抗血清を用いる免疫療法を受けることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記二次抗体は、抗−GM2ガングリオシド抗体、抗−GD2ガングリオシド抗体、または抗−GD3ガングリオシド抗体であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
局所化学療法インフュージョンまたは全身化学療法は、ダカルバジン、カルムスチン、ロムスチン、タウロムスチン、フォテムスチン、セムスチン、シスプラチン、カルボプラチン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、タキソール、ジブロモズルシトール、デトルビシン、ピリトレキシム、およびインターフェロンからなる群から選択された少なくとも1つの化学療法剤を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記インターフェロンはインターフェロン−α2であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記転移は脳、肺、肝臓、または骨への転移であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記転移は肺への転移であり、前記腫瘍はメラノーマであることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記腫瘍はリンパ腫であり、前記対象は1つまたはそれ以上の化学療法剤または放射線療法で治療されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
腫瘍の増殖および/または転移性進行および/または転移の進展を阻害するための併用療法であって、
抗−α4免疫グロブリンまたはα4インテグリンリガンドに対する免疫グロブリンを投与する工程と、化学療法、免疫療法、および/または放射線療法と、を含むことを特徴とする併用療法。
【請求項20】
前記抗−α4免疫グロブリンは、抗−α4β1インテグリン抗体、または、抗−α4β7インテグリン抗体であることを特徴とする請求項19に記載の併用療法。
【請求項21】
前記抗−α4免疫グロブリンは、ナタリズマブであることを特徴とする請求項20に記載の併用療法。
【請求項22】
前記抗−α4免疫グロブリンは、それを必要とする対象の静脈に、髄腔内に、または皮下に投与されることを特徴とする請求項20に記載の併用療法。
【請求項23】
前記抗−α4免疫グロブリンは、ナタリズマブであり、約1mg/kg対象の体重から約100mg/kg対象の体重の量で投与されることを特徴とする請求項20に記載の併用療法。
【請求項24】
前記ナタリズマブは、約10mg/kg対象の体重から約30mg/kg対象の体重の量で投与されることを特徴とする請求項23に記載の併用療法。
【請求項25】
前記抗−α4免疫グロブリンが、毎日、毎週、または毎月投与されることを特徴とする請求項20に記載の併用療法。
【請求項26】
前記抗−α4免疫グロブリンが毎週投与されることを特徴とする請求項25に記載の併用療法。
【請求項27】
抗−α4免疫グロブリンを含む薬剤であって、それを必要とする対象に投与されると腫瘍の増殖および/または転移性進行および/または転移の進展を阻害する薬剤を調製するための使用。
【請求項28】
前記対象は更に、化学療法、免疫療法、外科手術、放射線療法、温熱療法または癌治療の有害作用を改善するために薬物で治療されることを特徴とする請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記腫瘍は、メラノーマ、白血病、前立腺癌、またはリンパ腫であることを特徴とする請求項27に記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2007−520557(P2007−520557A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552178(P2006−552178)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/002860
【国際公開番号】WO2005/076843
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(399013971)エラン ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (75)
【Fターム(参考)】