説明

腫瘍部位の特定装置

【課題】腫瘍が形成された部位を特定するにおいて、なるべく患者の身体を傷付けないものとし、患者に負担の少ない腫瘍部位特定装置を提供する。
【解決手段】腫瘍部位特定装置1は、腫瘍6の位置を特定するにあたり、磁性体2を腫瘍またはその周辺に埋め込んだ状態で、検出器3を水平面に対して垂直の姿勢にしてX−Y方向(二次元方向)の走査をさせる。そして検出器3が磁性体2の直上位置に位置した場合、報知器4が最大レベルの報知をすることになり、これによって腫瘍6の部位を容易に特定することができる。この結果、磁性体2を埋め込むことで腫瘍部位を特定することができるため、患者への負担を軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍を切除するにあたり、腫瘍のある部位を特定するための腫瘍部位の特定装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種腫瘍部位の特定装置の中には、腫瘍部位に、X線の画像等を視ながら探り針の先端を刺し入れ、該探り針の先端を、X線、超音波で探って腫瘍部位を特定するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、このものは、先端がフック状になっているものの単に刺し入れたものであり、患者が動くと探り針が簡単に位置ズレや外れを起こしてしまうため、腫瘍の位置を正確に特定することが困難である。この結果、腫瘍の取り残しを防ぐため、どうしても切除範囲が広くなり患者の身体への負担が大きくなるといった問題がある。
【0003】
ところで、探り針を螺旋状に巻いた形状とすることにより、刺し入れた部位からの位置ズレや外れを防止したものもある(例えば、特許文献2参照。)が、探り針は、体内に挿入されるとX線、超音波に反応し難いといったもんだいがある。
そこで、探り針を異なる方向から複数本刺し入れることにより、腫瘍部位の特定を容易にすることが提唱されている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平2−302253号公報
【特許文献2】特開平4−263869号公報
【特許文献3】特許第3605078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献3のものは、刺し入れた探り針の数だけ患者の身体を傷つけることになるため、患者の身体の負担を考慮すると好ましくないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、腫瘍の位置を特定するための装置であって、
腫瘍またはその周辺に埋め込まれ磁性を有する磁性体と、該磁性体の磁界の強弱を体外から検出するための検出器と、該検出器の検出した磁界の強弱を報知するための報知器とを備えて構成されることを特徴とする腫瘍部位の特定装置である。
請求項2のい発明の前記報知器は磁界の強弱を、表示することを特徴とする請求項1記載の腫瘍部位の特定装置である。
請求項3の発明は、前記報知器は磁界の強弱に伴って変化する音を発生することを特徴とする請求項1または2記載の腫瘍部位の特定装置である。
請求項4の発明の前記検出器は、磁界を検出する検出部の一部を残して磁界を遮断するシールド材で覆ったことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の腫瘍部位の特定装置である。
請求項5の発明のシールド材はパーマロイであることを特徴とする請求項4記載の腫瘍部位の特定装置である。
請求項6の発明の腫瘍部位の特定装置は、磁性体を腫瘍部位に挿入するための挿入具を備え、該挿入具は腫瘍部位に刺し入れるための円筒状の針部と、該針部の磁性体を押し出して腫瘍部位に挿入するための押し出し部と、該押し出し部を内装するシリンダ部とを有し、該シリンダ部には、磁性体を押し出した押し出し姿勢の押し出し部を、係止するための係止手段が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の腫瘍部位の特定装置である。
請求項7の発明の係止手段は、押し出し部に押し出し方向の反対方向かつ、外方向に向かって突出形成された係止片を、シリンダ部に形成された係止孔に挿入することにより係止されていることを特徴とする請求項6に記載の腫瘍部位の特定装置である。
請求項8の発明の針部は、磁性体をセットするための貫通孔を、筒周部に形成したことを特徴とする請求項7に記載の腫瘍部位の特定装置。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、患者の体内に磁性体を配置し、該磁性体の磁界を検出した検出器の検出値に応じた報知器の報知によって腫瘍部位を特定することができるため、腫瘍の切除を正確で切除範囲の小いものとすることができる上、腫瘍部位の特定にあたり必要な傷口は、磁性体を挿入する部分だけであるため、患者の負担の少ないものである。
請求項2の発明とすることにより、報知器の報知を確認しやすいものとすることができる。
請求項3の発明とすることにより、報知器を見ることなく腫瘍部位を特定することができる。
請求項4の発明とすることにより、主に前方からの磁界のみを検出することになるので、磁性体が挿入されている方向を探し易くすることができる。
請求項5の発明とすることにより、磁性体を検出し易いものとすることができる。
請求項6の発明とすることにより、磁性体の体内への挿入を容易に行うことができる。
請求項7の発明とすることにより、使用済み挿入具の再使用を防止することができる結果、院内感染等を防止することができる。
請求項8の発明とすることにより、磁性体の針部へのセットを容易に行うことができ、例えば、針部先端から挿入してセットする場合のように針部先端を傷めることがないものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1は、腫瘍のある部位を特定するための腫瘍部位特定装置であって、該腫瘍部位特定装置1は、磁性を有する磁性体2と、該磁性体2から発生する磁界の強弱を検出するための検出器3と、該検出器3の検出結果を医師に報知するための報知器4とを備えて構成されている。
【0008】
磁性体2は、体内に挿入した場合に患者の負担にならないように配慮して、検出器3で検出できる大きさにすることが好ましく、本実施の形態では、約5mmである。また、本実施の形態の磁性体2は、磁石で構成している。
【0009】
検出器3は、ホール素子等の磁気センサ3aを先端に備え、基端部3bを持って使用されるが、例えば、図2に示すように、基端から二股に分かれたピンセット状のものとすることもできる。因みに、磁気センサ3aの磁界検出感度を適宜調節することもできこの場合、検出器3に感度調節用の摘み3cを設けると検出器の操作をしながら検出感度を調節することができる。また磁気センサ3aを含む先端部分を付け替え自在なものとして、衛生面に配慮することができる。
【0010】
さらに、磁気センサ3aは、図3(A)に示すように、外部の磁界を遮断するための磁性シールド材3dで先端を残して覆われており、これにより先端方向からの磁界を、指向性の良い状態で検出できるようになっている。因みに、本実施の形態で採用した磁性シールド材3dはパーマロイである。尚、磁気センサ3aは、磁性シールド材3dの先端よりも少し奥まったところに配することが雑音となる周囲の磁気を拾ってしまうことを回避できるが、この場合に磁気センサ3aと磁性シールド材3dの先端までの中空部分に磁気シールドをしない樹脂材3eを充填しておくことで、磁気センサ3aの保護が図れることになる。本実施の形態の磁性シールド3dは、基端部3bを覆うように形成されているが、磁気センサ3a付近を覆うように形成することもできる。
【0011】
報知器4は、検出器3に配線され連結されたガウスメータ等からなり、検出器3の検出値の大小に応じて報知するものであるが、報知の方法としては、前記検出値をメータ表示するメータ表示部4aや、検出値に応じて段階的にデジタル表示するデジタル表示部4bにより表示することができる。さらに前記報知器4は、検出値に応じた音を発することで報知することもでき、この場合、医師が報知器4の表示を見ることなく磁界の強弱を知ることができるため、検出器3の表示を助手が見て医師に報知する場合のように、時間的な誤差が生じることの少ないものである。
因みに、報知器4は、入力された信号を増幅するためのオペアンプ回路4aを有しており、該オペアンプ回路は、例えば、図4に示すような回路を用いることができる。
【0012】
そして、腫瘍部位特定装置1の使用方法として、胸部5に形成された腫瘍6を切除する場合について説明する。
先ず、X線画像等を基に腫瘍6または腫瘍6の周辺に磁性体2を挿入して配置するが、該挿入は、磁性体2を内装する注射器状の操作具7を胸部5から刺した状態で押し出してなされる。因みに、挿入具7は、先端に磁性体2を内装した円筒状の針部7aを有するシリンダ部7bが、針部7aに内装された磁性体2を押し込むための押し部7cを、基端側に弾機7fで付勢しながら遊嵌する構成になっているが、押し部7cはシリンダ部7bとのあいだに係止片7dを有しており、磁性体2を針部7aから押し出した姿勢で前記係止片7dがシリンダ部7bに形成された係止孔7eに挿入して係止される。
【0013】
係止片7dは、押し部7bの基端側(押し出し方向に対して反対方向)に向かって突出形成され、かつ、前記基端側に向かうほど外方に延出して突出しており、係止孔7eに先端側を挿入して係止されることになるが、該係止姿勢では、突出先端側が係止孔7eから外方に飛び出ることになるため、押し部7bを戻そうとしても、押し部7bの係止片7d形成部位が、係止孔7eの基端側縁に引っ掛かって、これ以上の戻りを規制することになる。この結果、挿入具7を使いきりの使い捨てのディスポーザブル用のものとし、再使用されることを防止することができる。
【0014】
7iは係止片7dを係止孔7eに誘導するための誘導部であって、該誘導部7iは、係止孔7eに連結されシリンダ部7bの内側の先端側から基端側に至って溝状に形成されているが、該溝は、係止片7dを押し部7cの外面側に押し付け状に変形させたときの係止片7dの厚みを許容できる深さに形成されており、押し部7cを押して係止片7dが係止孔7eと対向する位置に到達すると、係止片7dが戻り変形して先端が係止孔7eから飛び出すように突出して係止される。尚、係止片7dが係止孔7eと対向する位置において、押し部7cは、シリンダ部7bの先部7jに当接する姿勢になっている。
【0015】
7gは針部7aの周面である筒周部7kに貫通孔として形成された挿入口であって、磁性体2を針部7aにセットするにあたり、前記挿入口7gから磁性体2を挿入してセットすることができるので、例えば、針部7aの先端からセットして針先を破損、変形させる等の心配が無いものとすることができる。因みに、針部7aは、磁性を有する磁性材料、例えば、鉄、ニッケルこれらを含む磁性合金等の磁性金属(例えば、有磁性ステンレス等)で構成することができ、この場合、磁石で構成される磁性体2を磁着して安定したセットをすることができる。
7hは押し部7bを押すときに指を引っ掛けるための指掛け部であって、該指掛け部7hは、シリンダ部7bに形成されている。
【0016】
次いで、検出器3を胸部5に当てて操作しながら報知器4の反応を手がかりに、磁性体2の磁界を最も強く検出できる部分を探り、該部分(皮膚)にマーキングする。
続いて、該マーキングから胸部5を切開し腫瘍6を切除するが、このとき、検出器3を操作して報知器4の反応を見ながら磁性体2の位置を探り切除することで、腫瘍6の位置を的確に特定しながら切除することができる。
【0017】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、腫瘍部位特定装置1は、腫瘍6の位置を特定するにあたり、磁性体2を腫瘍またはその周辺に埋め込んだ状態で、図1に示す如く、検出器3を水平面に対して垂直の姿勢にしてX−Y方向(二次元方向)の走査をさせる。そして検出器3が磁性体2の直上位置に位置した場合、報知器4が最大レベルの報知をすることになり、これによって腫瘍6の部位を容易に特定することができる。
【0018】
このように本発明が実施された形態のものでは、腫瘍6の部位がどこにあるかを、腫瘍6またはその周辺に埋め込んだ磁性体2から発せられる磁界の強弱を、胸部5の外から検出器3で検出し、該検出レベルに基づいて腫瘍6の部位を確実に特定できることになる。しかもこのものでは、検出器3の先端部に磁性シールド材3dを用いて覆っているため、周囲から雑音となる磁性を拾うことが僅かで、指向性のよい優れた感度の高い検出ができることになるため、従来に比べて、患者の負担が少ないものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】胸部の腫瘍部位に磁性体を挿入した状態で検出器を用いて検出している状態とそのときの検出レベルとを示した概略図である。
【図2】検出器の一例を示す検出器の斜視図である。
【図3】(A)、(B)はそれぞれ、検出器の断面図、オペアンプ回路の一例を示す回路図である。
【図4】(A)、(B)はそれぞれ挿入具の分解斜視図、挿入した磁性体を押し出した状態の挿入具の斜視図である。
【図5】(A)、(B)はそれぞれ磁性体を押し出す前の挿入具の縦断面図、磁性体を押し出した後の挿入具の縦断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 腫瘍部位特定装置
2 磁性体
3 検出器
3a 磁気センサ
3b 基端部
3d 磁性シールド材
4 報知器
4a メータ表示部
4b デジタル表示部
5 胸部
6 腫瘍
7 操作具
7a 針部
7b シリンダ部
7c 押し部
7d 係止片
7e 係止孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍の位置を特定するための装置であって、
腫瘍またはその周辺に埋め込まれ磁性を有する磁性体と、
該磁性体の磁界の強弱を体外から検出するための検出器と、
該検出器の検出した磁界の強弱を報知するための報知器とを備えて構成されることを特徴とする腫瘍部位の特定装置。
【請求項2】
前記報知器は磁界の強弱を、表示することを特徴とする請求項1記載の腫瘍部位の特定装置。
【請求項3】
前記報知器は磁界の強弱に伴って変化する音を発生することを特徴とする請求項1または2記載の腫瘍部位の特定装置。
【請求項4】
前記検出器は、磁界を検出する検出部の一部を残して磁界を遮断するシールド材で覆ったことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の腫瘍部位の特定装置。
【請求項5】
シールド材はパーマロイであることを特徴とする請求項4記載の腫瘍部位の特定装置。
【請求項6】
腫瘍部位の特定装置は、磁性体を腫瘍部位に挿入するための挿入具を備え、該挿入具は腫瘍部位に刺し入れるための円筒状の針部と、該針部の磁性体を押し出して腫瘍部位に挿入するための押し出し部と、該押し出し部を内装するシリンダ部とを有し、該シリンダ部には、磁性体を押し出した押し出し姿勢の押し出し部を、係止するための係止手段が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の腫瘍部位の特定装置。
【請求項7】
係止手段は、押し出し部に押し出し方向の反対方向かつ、外方向に向かって突出形成された係止片を、シリンダ部に形成された係止孔に挿入することにより係止されていることを特徴とする請求項6に記載の腫瘍部位の特定装置。
【請求項8】
針部は、磁性体をセットするための貫通孔を、筒周部に形成したことを特徴とする請求項7に記載の腫瘍部位の特定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−43368(P2008−43368A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218894(P2006−218894)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(506273984)
【出願人】(304053979)株式会社共伸 (10)