説明

腰部の筋肉及び腹筋を刺激するための方法及び装置

患者の腰部の筋肉及び腹筋を刺激するための装置及び方法であって、第1の電極A1/A2を前記患者の身体の腰下部の実質的に中心に適用することと、第2及び第3の電極B, Cの各々を前記患者の身体の対向する脇腹に適用することを含む。
前記第2電極と前記第3電極との間に流れる筋肉刺激電流パルスの第1群と、前記第1の電極と前記第2及び第3の電極との間に流れる筋肉刺激電流パルスの第2群とを交互に与えるように、前記電極にエネルギーを与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の腰部の筋肉及び腹筋を刺激するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
癌、感染症、骨折等に伴うものではない非病的な腰痛、例えば体幹を支持する筋肉の筋力低下(weakness)、抑制(inhibition)、消耗(wasting)、失弧(misfiring)/ミスタイミング(タイミングを逃す)又は異常に関連する腰痛(背部痛)は、罹患率、病気休暇、医師の診察の主要な原因である。
【0003】
その要因には、筋肉活動の抑制(おそらく痛み自体に伴うもの)、患者が特定の筋肉を自発的に制御してリハビリ運動を適切に行うことができないこと、及び運動療法の順守の欠如が含まれる。
【0004】
それらの筋肉は、多裂筋(multifidus muscle)、腹斜筋(obliques abdominis muscle)及び腹横筋(transversus abdominis)を含む。脊柱の安定化には、多裂筋の深部線維(deep fibres)が特に重要であると考えられている。それらの筋線維は、以下のものを含む従来の技術によって回復すること(recruit)及び訓練する(train)ことは、歴史的に見て難しかった。
【0005】
(a)自発的な運動(機器を用いる又は用いない)
これらを適切に行うことは困難で、特に、(費用の高い)訓練された人材の付き添いなしでは困難である。筋肉自体は適切に回復しないだろう。順守は不十分になるだろう。結果は変動的である。
【0006】
(b)経皮電気的神経刺激(Transcutaneous electrical nerve stimulation:TENS)
TENSは、症状軽減の一種である。希望は、痛みが軽減すると、筋肉が再び正常に機能し始めて、持続する痛みが軽減されるかもしれない、ということである。研究から、1/3の人は痛みがかなり軽減され、1/3の人はいくらか改善され、残りの人はほとんど効果がないことが示唆されている。
【0007】
(c)埋め込み刺激技術(Implanted stimulation techniques)
これらは、その性質ゆえに侵略的であり、そして、典型的な患者のための他の技術を越える明確な効果を有していることは示されていない。
【0008】
(d)神経筋電気刺激(Neuromuscular electrical stimulation:NMES)
NMESは何十年もの間行われてきた。NMESは腰痛の治療に日常的に使用されてはいないが、それはTENSを越える治療の効果が示されていないためである。使用されるNMESは、比較的浅層にある腰部の筋線維の収縮を引き起こすが、背部の支持及び安定化の多くが生じると考えられている深層の筋繊維をターゲットにしない、という傾向にある。通常、電流は腰部に置かれたパッドの間を伝わる。電流は1つの面を通って、すなわち皮膚に沿って実質的に伝わるので、電流は、深部の筋線維を刺激するのに必要な強度で深部を伝わらない傾向にある。
【0009】
それに加えて、腰部を選択的に(相対的に分離して (in comparative isolation))刺激するのは不快なので、収縮は痛みを伴う傾向にあり、腰部の過伸展を引き起こすおそれがある。これにより電流強度は制限され、よって、深層の傍脊柱筋線維(deep paraspinal fibres)を直接刺激する可能性は低い。腹筋は、活性化されにくい傾向にあり、それゆえ訓練を受けにくく、脊柱を支持している内部線維(inner fibres)は比較的不活性なままである。
【0010】
さらに、パルス及びパッド位置は従来のNMESとバランスが取れているにもかかわらず、その結果である筋肉の収縮はバランスが取れていないかもしれない。これは、大きい筋肉(greater muscle)の片側の筋力低下に起因するだろう---腰痛の共通する知見である。このことは、患者に潜在的に有害な歪みを引き起こすだろう。
【0011】
RussekのUS4,381,012には、脊柱に隣接して位置決めされた電極と、脊柱のより外側(lateral)にある電極とを備えたTENSベルトが開示されている。しかしながら、Russekは、効果的な腰痛治療法でも、標準的な治療法から進展したものでもなく、標準的な治療法を適用することから単に離れているだけである。提案された位置はTENS用であり、ユーザーが耐えられ且つ安全なレベルでのセットアップの使用では、深層の多裂筋の収縮を引き起こさないだろう。
【0012】
慢性的な腰痛の高い罹患率は、現在の治療アプローチが何らかの意味で不十分であることを示唆している。本発明は、腰痛を治療するための改善された方法及び装置を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0013】
本発明によれば、患者の腰部の筋肉及び腹筋を刺激する方法であって、第1の電極を前記患者の身体の腰下部に適用すること、第2及び第3の電極の各々を前記患者の身体の対向する脇腹に適用すること、及び前記第2電極と前記第3電極との間に流れる筋肉刺激電流パルスの第1群と、前記第1の電極と前記第2及び第3の電極との間に流れる筋肉刺激電流パルスの第2群とを与えるように、前記電極にエネルギーを与ること、を含む方法を提供する。
【0014】
好ましくは、前記第1の電極は、少なくとも前記患者の仙骨上部と第5腰椎との間に延在して、前記仙骨上部と前記第5腰椎とを覆っている。より好ましくは、前記第1の電極の下端は、臀裂を指し示すV字形状にされている。
【0015】
前記第1の電極は、前記患者の脊柱に対してほぼ対称的に配置された個々にエネルギー付与可能な2つのセグメントを含むことができる。
【0016】
好ましくは、前記第2及び第3の電極の各々は、前記患者の腸骨稜と肋骨との間に位置決めされる。前記第2及び第3の電極の少なくとも一方は、個々にエネルギー付与可能な複数のセグメントを含むことができる。
【0017】
好ましい実施の形態では、前記電極は、該電極を前記患者の皮膚に対して所望の位置に位置決めする衣類に組み込まれている。
【0018】
本発明はさらに、患者の腰部の筋肉及び腹筋を刺激する装置であって、前記患者の身体の腰下部に適用される第1の電極と、前記患者の身体の対向する脇腹に各々適用される第2及び第3の電極と、前記第2電極と前記第3電極との間に流れる筋肉刺激電流パルスの第1群と、前記第1の電極と前記第2及び第3の電極との間に流れる筋肉刺激電流パルスの第2群とを与えるように、前記電極にエネルギーを与えるように準備された駆動回路と、を含む装置を提供する。
【0019】
好ましくは、前記電極は、該電極を前記患者の皮膚に対して所望の位置に位置決めする衣類に組み込まれている。
【0020】
本発明の実施の形態を、例示として、図を参照しながら以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、実施の形態に係る電極のセットを装着した患者の概略図であり、(a)は左側の概略図、(b)は右側の概略図、(c)は背中側の概略図である。
【図2】図2は、図1の電極を組み込んだ衣類の平面図である。
【図3】図3は、治療パルスの経路を示す患者の腰部の断面の概略図である((a)〜(c))。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<好ましい実施の形態の説明>
図1を参照すると、本実施の形態では、患者の腰部の筋肉及び腹筋を刺激する方法は、大面積の電極A〜Cのセットを、患者の身体の腰下部に外用すること(applying externally)を含む。電極は、患者の皮膚の上に、患者の正中線(midline)(図1(c)の破線の垂直線であり、この線は脊柱も示している)に対して少なくともほぼ対称的に配置される。
【0023】
電極Aは、互いに絶縁された2つのセグメントA1, A2を含んでおり、腰部に位置決めされている。電極B, Cは、右側及左側にそれぞれ配置されている。電極セグメントA1, A2の各々は、長さ約10cm、幅約5cm、面積約25cm2である。電極B, Cは矩形であり、各々の面積は約180cm2である(各々は、寸法12cm×15cmである)。電極B, Cの各々の面積は、電極Aの面積(すなわち、セグメントA1, A2を合わせた面積)の約3〜4倍である。この比率は、後述するように、CからABへの又はDからABへの単一のパルスによって、健康な人にとって快適なバランスのとれた刺激を与えることが見いだされている。一般に、電極Aの面積は、電極B, Cの面積の半分未満である。
【0024】
電極セグメントA1, A2は垂直に整列され且つ互いに近接しており、患者の脊柱に対して実質的に対称的である。本明細書では、「垂直に(vertical)」及び「水平に(horizontal)」などの方向の表現は、立っているときの患者を参照する。電極セグメントA1, A2間の数ミリメートルの狭い隙間(ギャップ)が適切であることを見いだした。患者は、電極が背中の上で適切に配列しているかどうかの判断基準(check)として機能する垂直ギャップを容易に触知(palpate)することができるので、セグメント間のこのギャップは、電極Aの配置に役立つ。(椎骨の棘突起も容易に感じられる。)これらの電極用の裏張り(backing) の畝(ridge)又は適用する衣類(図2)の畝もまた、電極Aの適切な位置決め及び方向付けを容易にするだろう。最適なギャップは、電極のセットや、特に電極ジェルを使う場合にはその電気的・機械的特性を含む多くの要因に依存するだろう。
【0025】
電極A、すなわち2つのセグメントA1, A2を組み合わせたものの下端全体は、V字形状(wedge shape)にされている。この形状は、腰部によく合う。V字は、臀裂に向かって真っすぐ下を指す(これはまた、適切な方向付け及び位置決めに役立つ)。電極Aの下部は、仙骨上部を少し越えて延在している。V字形状とは、臀筋上には直接位置しないことを意味している。特に、仙骨より上側の外側にあるアーチ状の中殿筋上端よりも上に(すなわち、中殿筋上端から離れて)位置する。
【0026】
電極Aの高さ(垂直方向の長さ)は、少なくとも第5腰椎と仙骨上部との間に延在して、第5腰椎と仙骨上部とを覆うことができ、好ましくは、第4及び第5腰椎まで延在して覆うことができるようにされている。第4及び第5腰椎は、腰痛に関連する筋肉消耗の最も典型的な場所である。この高さ限定は、多くの脊柱起立筋(脊柱起立筋の肉付きの良い部分は、第4腰椎の上で徐々に隆起する)を電流で回復できる可能性が低いことを意味している。消耗しているターゲットが上方に位置している場合には、医師の判断により、電極Aをさらに上の位置でより直接的にターゲットに位置付けてもよい。電極Aの幅は、多裂筋(multifidus)及び椎骨の幅に近い。
【0027】
必要に応じて、電極のセグメントA1, A2を結合して、1つの電極Aを形成してもよい。しかしながら以下に説明するように、完全に別々のセグメントとすることにより、筋肉の収縮のさらなる左右バランスを可能にする。
【0028】
電極B, Cは、患者の対向する脇腹上で腸骨稜と肋骨との間に位置決めされる。腰部の電極Aと同様に、それらの電極は骨の特徴(bony point)に関連して位置決めされる。これにより、正確で再現可能な電極の位置決めが保証される。
【0029】
接続ワイヤ(図示せず)は、電極B, Cと電極セグメントA1, A2とに個々に接続され、それにより患者に筋肉刺激電流パルスを与えることができる。
【0030】
電極は、例えばヒドロゲルを用いて、電極の望ましい位置の患者の皮膚上に個々に付着させてもよいが、好ましくは、電極をより確実に所望の位置に位置決めでき且つ不注意な電極の誤配線を防止できる予備配線された衣類(prewired garment)に組み込まれる。
【0031】
一例が図2に示されており、それは、患者の上腹部周りに適した幅広ベルト状の巻き布(wide belt-like wrap)10の内側の平面図である。使用時には、電極A1, A2, B, Cが患者の身体上の適切な位置で患者の皮膚を圧迫する(bear)ように、電極を内側にして、巻き布10を患者のウエスト領域に巻き付ける。巻き布がウエスト領域にぴったりと適合(フィット)するように、巻き布の全部又は選択された部分は伸縮性を有していてもよい。伸縮能の異なる領域を有することにより、より良く適合(フィット)させることができる。巻き布10は、他端側の面テープ(ベルクロ(登録商標))のループ領域(図示せず)に係合する一端側の面テープのフック12によって、適所に固定される。
【0032】
電極への配線(図示せず)は巻き布10に組み込まれており、そのための技術は知られている。電極は、製造時に巻き布に予め固定されていてもよく、又は巻き布に予め印刷された位置にユーザーが固定してもよい。後者のケース(ユーザーによる電極固定)では、各電極の配線は、電極領域の中心に露出したスタッド(stud)で終端する。その後、粘着性の電極を、巻き布上の指定領域内に設置する。電極の片面は巻き布の内表面に貼り付けられ、反対面は、巻き布を着用したときに皮膚を圧迫する。配線によって、必要に応じて各電極に個々にエネルギーを与えることができる。
【0033】
必要とされる巻き布のサイズ数(the number of wrap sizes required)を少なくするために、電極の位置の印刷を、小/中/大の身体サイズごとに異ならせてもよい。
【0034】
巻き布の材料は、弾性的に変形可能な材料(例えばネオプレンなど)にすることができる。巻き布を対象物の周りに引き伸ばしたときに電極が巻き布10から分離するのを回避するために、巻き布は、電極領域内に非弾性的な材料を含むことができる。
【0035】
もちろん、延伸したベルトタイプの衣類を使用することは、容易かつ正確な電極配置を可能にする多くの衣服のうちの1つに過ぎない。衣服上の追加の切り目(nick)、ひだ(folds)等は、正確な配置を助けるだろう。これは背中側の電極の正確な配置にとって特に重要であり、それは背中側の電極は容易に視角化することができないためである。さらに、粘着性の電極を使用する場合、それら(電極)を再位置決めするのはより難しくなる。腰部のTENSで使用されているように、腰部の追加クッション/パッドは電極を皮膚に対向させておくのを助けるだろう---非粘着性の電極を使用するときには特に重要である。
【0036】
図2では、駆動回路100も概略的に図示されており、これはNMESの分野で周知の原理に沿って構成されてもよい。PCT/IB02/03309には、身体中の電流路を構成するために電極アレイ(配列)から電極を選択する電気コントローラが開示されている。
【0037】
好ましい実施形態では、電極に与えられる電流パルスは、2つの群(グループ)に分けられ、持続時間と強度を個々に制御することができる。
【0038】
図3(a)のように、第1群(グループ1)のパルスは、電極Bと電極Cとの間を伝わり、主に腹筋を刺激すると考えることができる。グループ1のパルスの周波数は、30Hzである。グループ1の一連のパルス(successive Group 1 pulses)は、電極Bと電極Cとの間を交互に逆方向に、すなわち、B→C、C→B、B→C等のように伝わる。
【0039】
第2群(グループ2)のパルスは、電極A(単一の電極と見なされたセグメントA1, A2)と電極B, Cとの間を交互に伝わる。グループ2のパルスは、4パルスから成る一連のセット(successive sets of four pulses)にさらに分けられる。各セットにおいて、最初の2つのパルスの強度は、後の2つのパルスの強度の50%である。4パルスのセットの各々において、第1パルスは電極Aから電極Bへ、第2パルスは電極Aから電極Cへ、第3パルスは電極Aから電極Bへ、そして第4パルスは電極Aから電極Cへと伝わる。グループ2のパルスの各々は、10msの遅延後に先のパルスに続く。4パルスセットの周波数は20Hzであり、言い換えれば、1秒あたり80個の離散的な(discrete) グループ2のパルスが存在する。
【0040】
グループ1及びグループ2のいずれにおいても、パルス幅=480μsである。
【0041】
グループ1及びグループ2のパルスは、電極に連続的に与えられない。どちらかといえば、各グループのパルスは、それらのグループのパルスが与えられない緩和期間と交互に起こる一連の治療(収縮)期間に与えられる。典型的には、各グループのパルスは、以下のような各サイクルの収縮−緩和特性で周期的に与えられる。
上昇(Ramp-Up)=0.50秒(強度増加時のパルス)
収縮期間=4.00秒(最大強度時のパルス)
降下(Ramp-Down)=1.00秒(強度減少時のパルス)
緩和=3.00秒(パルスなし)
【0042】
グループ1のパルスは体幹を安定させ且つ支持し、そしてグループ2のパルスの収縮をマスクする。この理由から、グループ1のパルスが与えられる期間は、グループ2のパルスが与えられる期間と、少なくとも一時的に共延長(co-extensive)されるのが好ましい。選択されたパルスのパラメータ、周波数及び領域の神経構造により、体幹を支持する筋肉は、上述の伸縮−緩和サイクルによってかなり最初に収縮し始める傾向にある。
【0043】
グループ1及びグループ2のパルスの強度を個々に制御することにより、彼の最適な相対強度を個々に見つけることができることに注目すべきである。これは、絶対強度によって、及び患者の治療の進行につれて、変化してもよい。典型的には、満足することが知られている電流レベルは、A-B経路及びA-C経路では50mAであり、B-C経路では70mAである。
【0044】
バランスの取れたパルスとセットアップは、バランスの取れていない(アンバランスな)筋肉の収縮を引き起こすかもしれない。例えば、患者が右側の腰部(電極セグメントA1側)の筋力低下を有していると仮定する。電極セグメントA1, A2に同様の電流を通すと、左側の腰部がより強く収縮されて、患者の左側に向かう斜めの負荷(skewing strain)がかかるだろう。これを弱める(counteract)ために、グループ2のパルスは、よりバランスの取れた収縮を与えるように調節されてもよい。この場合、グループ2のパルスの1つ以上では、電極セグメントA1を通る電流が電極セグメントA2を通る電流より大きく設定される(図3C)。これは、電極セグメントA1を通るパルスが、電極セグメントA1を通るパルスよりもパルス持続時間が長く、及び/又は相対的に高い強度であることに起因してもよい。代わりに、セグメントA1, A2の一方のみを通して電流を流してもよい。
【0045】
バランスの取れた収縮を与えるためにアンバランスなパルスを用いた別の例は、電極Bの領域内でグループ1のパルスを拡散させることにより、電極Bの領域内での体幹の収縮を低減する。グループ1のパルスは、通常は電極Bと電極Cとの間を伝わる。しかしながら、パルス期間の一部において、電極Cと、電極B及びAとの間の電流経路を有することにより、電極Bでの相対的な収縮が低減される。
【0046】
適切にアンバランスなパルスをもたらすことのできる多くの組合せ(又は順列:permutation)が存在する。我々は、片側から反対側へのアンバランスさを変化させる10通りの組合せが、多くの患者に対してほぼバランスの取れた収縮をもたらすのに十分であることを見いだした。患者は、予めプログラムされた種々のオプションを単純に循環させて、患者にとって最良な収縮を与えるも1つを選択する。これ(選択する1つ)は変化することが認められた。患者の治療が進むにつれ、より対称的なパターンに向かう傾向がみられた。
【0047】
図示していないが、他の実施形態では、電極C, Dを2つ以上のセグメントC1, C2等に分けている。各セグメントは、例えばA1からC1へ、A2からC2へ、A1からB2へなどの分離した電極経路を確立できるように、個々にアドレス可能(電気的にエネルギー付与可能)である。そのようなセグメントC1, C2は、電極セグメントA1, A2に対して異なる角度で位置決めされるので、脊柱近傍の電流経路は、異なるセグメントにエネルギーを与えることによって変更できるだろう。各電極B又はCでは、グループ1及びグループ2のパルスの1つ以上において、強度及び/又は持続時間の異なる複数の電流を2つ以上のセグメントを通して同時に流すこともでき、又は1つの電流を1つのセグメントだけを通して流すこともできる。
【0048】
本発明の実施形態は、快適に刺激し且つ効果的に訓練するための、並びに腰部の筋肉及び腹筋を再教育するための、装置及び方法を提供する。これらの筋肉は、腰痛(背部痛)の予防及び治療の両方において重要である。多裂筋の深層傍脊柱筋線維は、特に重要であり、そして本発明以前は、訓練が困難であると考えられている。有効性は、目的とする筋肉の収縮を引き起こすためにパルスを電極間に通す方法のみならず、刺激電極の具体的なサイズ、配列及び解剖学的位置決めに基づく。
【0049】
本発明は本明細書に記載された実施形態に限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく修正又は変更することができる。
【図1(a)】

【図1(b)】

【図1(c)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の腰部の筋肉及び腹筋を刺激する装置であって、
前記患者の身体の腰下部に適用される第1の電極と、
前記患者の身体の対向する脇腹に各々適用される第2及び第3の電極と、
前記第2電極と前記第3電極との間に流れる筋肉刺激電流パルスの第1群と、前記第1の電極と前記第2及び第3の電極との間に流れる筋肉刺激電流パルスの第2群とを与えるように、前記電極にエネルギーを与えるために準備された駆動回路と、を含む装置。
【請求項2】
前記電極は、該電極を前記患者の皮膚に対して所望の位置に位置決めする衣類に組み込まれている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記衣類を装着したときに、前記電極は、前記患者の正中線に対して少なくともほぼ対称的に配置される請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記衣類を装着したときに、前記第1の電極は、少なくとも前記患者の仙骨上部と第5腰椎との間に延在して、前記仙骨上部と前記第5腰椎とを覆う請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の電極の下端は、前記衣類を装着したときに臀裂を指し示すV字形状にされている請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の電極は、衣類を装着したときに前記患者の脊柱に対してほぼ対称的に配置された個々にエネルギー付与可能な2つのセグメントを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記第2及び第3の電極の各々は、衣類を装着したときに前記患者の腸骨稜と肋骨との間に位置決めされる請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記第2及び第3の電極の少なくとも一方は、個々にエネルギー付与可能な複数のセグメントを含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の電極の面積は、前記第2又は第3の電極の面積の半分未満である請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記駆動回路によって、ユーザーは予めプログラムされた多数のパルス特性から選択することができ、対称的な収縮を達成するために前記パルス特性のいくつかは非対称的である請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
患者の腰部の筋肉及び腹筋を刺激する方法であって、
第1の電極を前記患者の身体の腰下部に適用すること、
第2及び第3の電極の各々を前記患者の身体の対向する脇腹に適用すること、及び
前記第2電極と前記第3電極との間に流れる筋肉刺激電流パルスの第1群と、前記第1の電極と前記第2及び第3の電極との間に流れる筋肉刺激電流パルスの第2群とを与えるように、前記電極にエネルギーを与ること、を含む方法。
【請求項12】
前記第1群の一連のパルスが、前記第2の電極と前記第3の電極との間で、交互に逆方向に流れる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2群の一連のパルスが、前記第1の電極と前記第2及び第3の電極との間で交互に流れる請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記電極は、前記患者の正中線に対して少なくともほぼ対称的に配置される請求項11、12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の電極は、少なくとも前記患者の仙骨上部と第5腰椎との間に延在して、前記仙骨上部と前記第5腰椎とを覆う請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の電極の下端は、臀裂を指し示すV字形状にされている請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の電極は、前記患者の脊柱に対してほぼ対称的に配置された個々にエネルギー付与可能な2つのセグメントを含む請求項11〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記第2群の前記パルスの少なくともいくつかは、前記2つのセグメントを通る強度及び/又は持続時間の異なる電流を含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2群の前記パルスの少なくともいくつかは、前記2つのセグメントの一方のみを通る電流を含む請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第2及び第3の電極の各々は、前記患者の腸骨稜と肋骨との間に位置決めされる請求項11〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記第2及び第3の電極の少なくとも一方は、個々にエネルギー付与可能な複数のセグメントを含む請求項11〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1群の前記パルスの少なくともいくつかは、前記第2又は第3の電極の前記セグメントの2つ以上を通る強度及び/又は持続時間の異なる電流を含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1群の前記パルスの少なくともいくつかは、前記第2及び第3の電極の前記セグメントの1つのみを通る電流を含む請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記パルスの第1群及び第2群の各々は周期的に与えられ、パルスを与える期間は、パルスが与えられない期間と交互に起こる請求項11〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記電極は、該電極を前記患者の皮膚に対して所望の位置に位置決めする衣類に組み込まれている請求項11〜24のいずれか1項に記載の方法。

【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【公表番号】特表2012−531990(P2012−531990A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518863(P2012−518863)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058465
【国際公開番号】WO2011/003709
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(501339171)ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン,ナショナル・ユニバーシティ・オブ・アイルランド,ダブリン (7)
【出願人】(511180329)バイオ−メディカル・リサーチ・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Bio−Medical Research Ltd.
【Fターム(参考)】