説明

腹水処理システムおよびこれを用いた腹水処理方法

【課題】腹水有用物質の回収率を保ちつつ、濃縮器における目詰まりを抑制して所定の処理量を短時間で確実に処理することが可能な腹水処理システムを提供する。
【解決手段】腹水を貯留する貯留容器と、前記貯留容器から供給された腹水中の特定の物質を選択的に除去する濾過器と、前記濾過器で濾過された濾過腹水を濾過して濃縮する濃縮器と、前記濃縮器の廃液ポートから廃液を吸引する廃液吸引装置と、前記濃縮器における、前記廃液ポートよりも下流側の回収ポートから、前記濃縮器で濃縮された濃縮腹水を回収する回収容器とを備える腹水処理システムに、前記濃縮器の回収ポートに接続されて、少なくとも前記廃液ポートよりも下流側に陰圧を発生させる陰圧発生装置を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者から採取した腹水から有害物質を除去して患者の体内に戻すために、腹水を濾過・濃縮処理して回収する腹水処理システム、および、当該システムを用いた腹水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、肝硬変、内臓病、癌性腹膜炎などでみられる難治性腹水に対して、腹水中の有害物質である細菌や癌細胞などの細胞成分を除去し、有用物質であるアルブミンなどの自己蛋白質を濃縮して患者に再利用する腹水濾過濃縮再静注治療が、緩和医療の一環として行われている。かかる治療法において腹水を濾過・濃縮処理するための装置として、腹水から有害物質を除去する濾過器および腹水を濃縮する濃縮器の上流側から、送液用ポンプによって腹水を送液するとともに、濃縮器の濃縮膜に真空ポンプなどにより陰圧を加え、濃縮器での濃縮膜における圧力勾配のみによる限外ろ過作用を利用して腹水の濃縮回収を行う腹水処理システムが知られている(例えば、特許文献1及び2)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来のシステムでは、腹水の濃縮倍率を一定に保つことを前提に考えているため、濃縮器の濃縮膜における圧力勾配を制御するので、濃縮器内の濃縮膜の膜内表面部分で目詰まりが起こりやすい。このような目詰まりが起こった場合、腹水の濃縮倍率を一定に保つために、濃縮器の濃縮膜に対してさらに圧力勾配を付加する必要があり、その結果、膜の目詰まりが助長されて充分な濃縮率を得ることができないことにより、あるいは、濃縮器が濾過不能に陥ることにより、目標処理量を達成できないという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開昭55−16674号公報
【特許文献2】特開昭57−31867号公報
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、腹水の濃縮率を確保しかつ腹水有用物質の回収率を保ちつつ、濃縮器における目詰まりを抑制して所定の処理量の腹水を短時間で確実に処理することが可能な腹水処理システム、および、該システムを用いた腹水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するために、本発明に係る腹水処理システムは、腹水中の特定の物質を選択的に除去する濾過器と、前記濾過器で濾過された濾過腹水を濾過して濃縮する濃縮器と、前記濃縮器の廃液ポートから廃液を吸引する廃液吸引装置と、前記濃縮器における前記廃液ポートよりも下流側に設けられた濃縮腹水回収用の回収ポートに接続されて、少なくとも前記廃液ポートよりも下流側に陰圧を発生させる陰圧発生装置とを備えている。
【0007】
この構成によれば、廃液ポートよりも下流側に設けられた回収ポートに、陰圧を発生させる陰圧発生装置を接続したので、廃液吸引装置の吸引圧によって濃縮器の濾過部材の濾過面に付着する付着物に、陰圧発生装置による陰圧を作用させることができる。したがって、濾過面における付着物の堆積を抑制して目詰まりを防止することが可能となるので、腹水有用物質の回収率を保ちつつ、濃縮器における目詰まりを抑制して所定の処理量の腹水を短時間で確実に処理することが可能となる。
【0008】
上記の腹水処理システムは、さらに、前記廃液ポートと前記廃液吸引装置とを連通する廃液通路の中途に接続されて、前記廃液吸引装置によって発生する前記廃液通路内の陰圧を開放する陰圧開放通路を備えていることが好ましい。このように構成することにより、濃縮器の濾過部材の濾過面において付着物が堆積し、濃縮器の目詰まりによる廃液流量の低下が起こった場合にも、陰圧開放通路によって廃液通路の陰圧を開放することで、付着物の堆積を解消することができ、濃縮器の目詰まりを一層効果的に防止することが可能となる。
【0009】
上記の腹水処理システムに用いられる前記濾過器は、濾過部材として、例えば、中空糸膜を備えている。また、上記の腹水処理システムに用いられる前記濃縮器もまた、濾過部材として、例えば、中空糸膜を備えている。腹水処理における濾過部材として中空糸膜を使用することにより、目詰まりの発生を抑制しつつ効果的に腹水の処理を行うことができる。
【0010】
また、上記した目的を達成するために、本発明に係る腹水処理方法は、上記の腹水処理システムを用いる腹水処理方法であって、前記濾過器で濾過されて、前記濃縮器に導入された濾過腹水を濾過によって濃縮する濃縮ステップと、前記廃液吸引装置によって、前記濃縮器から廃液を吸引する廃液吸引ステップと、前記陰圧発生装置によって少なくとも前記濃縮器の廃液ポートよりも下流側に陰圧を発生させて、前記濃縮器の濾過部材の濾過面における目詰まりを抑制する陰圧発生ステップとを含んでいる。この腹水処理方法によれば、上記の腹水処理システムを用いて、腹水有用物質の回収率を保ちつつ、濃縮器における目詰まりを抑制して所定の処理量の腹水を短時間で確実に処理することが可能となる。
【0011】
また、上記の腹水処理方法は、さらに、前記濃縮器の濾過部材の濾過面において目詰まりが発生した場合に、前記陰圧開放通路によって前記廃液通路内の陰圧を開放するステップを含んでいることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明に係る腹水処理システムおよび腹水処理方法によれば、腹水有用物質の回収率を保ちつつ、濃縮器における目詰まりを抑制して所定の処理量の腹水を短時間で確実に処理することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る腹水処理システム1の構成を示す概略図である。この腹水処理システム1は、人体から採取した腹水から有害物質を除去して患者の体内に戻すために、腹水を濾過・濃縮処理して回収するためのシステムであり、主要な構成要素として、濾過器5、濃縮器7、廃液吸引装置9、および陰圧発生装置13を備えており、濾過器5に貯留容器3が接続され、濃縮器7に回収容器11が接続される。
【0015】
人体から採取した腹水A1は、まず貯留容器3に貯留され、貯留容器3から腹水A1が供給される。貯留容器3の下流には、濾過器5および濃縮器7がこの順に、連通路を形成する第1連通チューブ15および第2連通チューブ17を介して接続されている。すなわち、貯留容器3から腹水A1を排出する腹水供給ポート3aと、濾過器5に貯留容器3からの腹水A1を導入する腹水導入ポート5aとが、第1連通チューブ15を介して接続されており、さらに、濾過器5から濾過された腹水A2を排出する腹水排出ポート5bと、濃縮器7に濾過器5からの濾過腹水A2を導入する濾過腹水導入ポート7aとが、第2連通チューブ17を介して接続されている。
【0016】
濃縮器7の下流側には、廃液を排出する廃液ポート7bと、濃縮器7で濃縮処理された濃縮腹水A3を排出する回収ポート7cとが設けられている。廃液ポート7bおよび回収ポート7cの構造については後述する。廃液ポート7bには、濃縮器7から廃液Wを吸引するための廃液吸引装置9が、廃液通路を形成する廃液チューブ21を介して接続されている。一方、回収ポート7cには、濃縮腹水A3を回収するための回収容器11が、回収通路を形成する回収チューブ23を介して接続されている。さらに、回収チューブ23の中途には、陰圧を発生させる陰圧発生装置13が配設されている。
【0017】
また、廃液チューブ21の中途には、陰圧開放通路を形成する陰圧開放チューブ25が接続されている。陰圧開放チューブ25は、チューブ内と外部とを連通させることが可能な開放弁27を有している。
【0018】
濾過器5は、濾過により、腹水A1中の細菌やガン細胞などの有害物質を選択的に除去するための装置である。濾過器5としては、腹水A1中の有用物質であるアルブミン、グロブリン等のタンパク質を通過させ、かつ、上記有害物質を捕捉することのできるものであればどのようなものを用いてもよいが、本実施形態においては、樹脂製の筒状のハウジング31内に、濾過部材として最大孔径約0.2μmの中空糸膜33を収容したものを用いている。
【0019】
濾過器5に用いる濾過部材としては、中空糸膜のほかに平膜を用いることもできるが、単位体積あたりの膜面積をより大きく取ることができるという観点から、多孔性の中空糸膜が好ましく用いられる。濾過器5に使用する中空糸膜の素材には特に制限はないが、実用性のある強度および耐圧性を有し、滅菌が可能であるポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが好ましく使用される。
【0020】
なお、本実施形態における濾過器5は、その上流端にエアー導入ポート5cが設けられており、このエアー導入ポート5cには、開放弁35を有するエアー導入通路を形成するエアー導入チューブ37が接続されている。エアー導入チューブ37の開放弁35は、腹水の処理中には閉塞されているが、処理後に開放して濾過器5に空気を導入することにより、濾過器5や濃縮器7に残された腹水を回収することができる。
【0021】
濃縮器7は、濾過腹水A2から、有用物質であるアルブミン等を含まない水を廃液Wとして除去し、濾過腹水A2の有用物質濃度を高めるための装置である。濃縮器7としては、分子量が6.6万程度であるアルブミンを含む濾過腹水A2から、水および水に溶解した電解質のみを分離して排出することのできるものであればどのようなものを用いてもよいが、本実施形態においては、樹脂製の筒状のハウジング39内に、濾過部材として分画分子量が約5000以下の中空糸膜41を収容したものを用いている。
【0022】
図2に示すように、濃縮器7の回収ポート7cは、濃縮器7の下流端部に設けた接続用突起に形成された、濃縮腹水A3の流れ方向Yに沿って延びる排出孔からなる。一方、廃液ポート7bは、濃縮器7の周壁7dに設けた、回収ポート7cの上流側に位置する接続用突起72に形成された排出孔7baからなる。廃液ポート7bの排出孔7baは、回収ポート7cの排出孔7caとほぼ直交する向きに延びるように形成されている。
【0023】
濃縮器7に使用する濾過部材としては、中空糸膜のほかに平膜を用いることもできるが、目詰まりを起こしにくい多孔性の中空糸膜が好ましく用いられる。濃縮器7に使用する中空糸膜41の素材としては、実用性のある強度及び耐久性を有する濃縮膜を得ることができることから、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが好ましく使用できる。
【0024】
廃液吸引装置9としては、任意に吸引圧を設定でき、特には吸引圧を0〜−400mmHgの範囲で設定することが可能であり、また、設定した圧力を一定に保つことができるものが好ましい。病院施設に一般的に設置されている壁掛け式吸引器を用いることも可能であり、その場合、−200mmHg程度に吸引圧を設定して良好に濃縮器7からの排水処理を行うことができる。
【0025】
貯留容器3および回収容器11は、患者から採取した腹水A1または濃縮腹水A3を無菌的に貯留することができるものであって、患者から採取した腹水A1および濃縮腹水A3を変性させたり、これらの中に有害な物質が溶出しないもので、かつ、滅菌可能なものであればその材質および形状には制限はない。一般的に、塩化ビニル系やポリプロピレン、ポリエチレン等の軟質材質による輸液バッグで、1〜3L程度の容量のものが好ましく使用される。
【0026】
陰圧発生装置13は、任意に流量を設定して陰圧を発生することができ、特には0〜20mL/分の範囲で流量を設定することが可能であり、また設定した流量を一定に保つことができるものが好ましい。病院施設に一般的に設置されている輸液ポンプを使用することも可能であり、その場合、10mL/分程度に流量を設定して陰圧を発生することで、良好に濃縮器7から腹水を回収することができる。
【0027】
次に、本実施形態に係る腹水処理システム1の動作について説明する。
【0028】
図1に示す腹水処理システム1の、貯留容器3、第1連通チューブ15、濾過器5、第2連通チューブ17、濃縮器7、および回収チューブ23によって形成される腹水処理通路51内は、陰圧発生装置13および廃液吸引装置9を起動することにより、陰圧状態となる。この陰圧により、貯留容器3内の腹水A1が、腹水導入ポート5aを介して濾過器5に導入される。濾過器5では、腹水A1中の有害物質が、中空糸膜33によって除去され、有用物質であるアルブミン等を含む濾過腹水A2が、腹水排出ポート5bから排出される。
【0029】
濾過器5から排出された濾過腹水A2は、次に、濃縮器7に導入される。濃縮器7の内部では、濾過腹水A2が中空糸膜41の内側を通過する。このとき、濾過腹水A2の、アルブミン等の有用物質を含まない水の一部が、廃液ポート7bに連通している廃液吸引装置9によって吸引されて、廃液Wとして廃液ポート7bから排出される。濾過腹水A2の廃液Wが除かれた部分は、濃縮腹水A3として、回収ポート7cから排出されて回収容器11に回収される。
【0030】
上記のように、濃縮器7において、廃液Wが廃液吸引装置9によって廃液ポート7bを介して吸引される際、濾過腹水A2中のアルブミンなどの有用物質は、廃液吸引装置9の吸引圧により、濃縮器7の濾過部材の濾過面、つまり中空糸膜41の内表面41aに、付着物Dとして付着しやすい。
【0031】
本実施形態のように回収ポート7cの下流に接続された陰圧発生装置13を有していない、従来の腹水処理装置であれば、中空糸41の内表面部分に堆積する付着物Dに対して、廃液ポート7bよりも腹水処理通路51の下流側へ作用する圧力がないか、またはきわめて弱い。したがって、図3(a)に示すように、中空糸膜41の内表面部分に、廃液吸引装置9の吸引圧P1によって多量の付着物Dが堆積し、中空糸膜41の目詰まりが起こる。
【0032】
しかしながら、本実施形態に係る腹水処理システム1においては、図3(b)に示すように、回収ポート7cの下流に接続された陰圧発生装置13が発生させる陰圧により、中空糸41の内表面部分に堆積する付着物Dに対して、廃液ポート7bよりも腹水処理通路51の下流側へ圧力P2が作用する。その結果、中空糸膜41の内表面部分への付着物Dの堆積が抑制されるので、中空糸膜41の目詰まりが防止される。したがって、確実に、かつ、短時間で所定量の腹水の処理を行うことができる。
【0033】
さらには、陰圧発生装置13が発生させる陰圧によってもなお中空糸膜41の内表面部分において付着物Dの堆積が解消せず、中空糸膜41の目詰まりが起こった場合には、陰圧開放チューブの開放弁を一時的に開いて、廃液吸引装置9による吸引圧を開放することができる。これにより、中空糸膜41の内表面部分における付着物Dの堆積を解消し、中空糸膜41の目詰まりを一層効果的に防止することが可能となる。
【0034】
なお、本実施形態においては、陰圧発生装置13を、回収チューブを介して濃縮器7の回収ポート7cに接続するように構成したが、陰圧発生装置13は、回収ポート7cに直接的に接続してもよい。
【0035】
また、本実施形態においては、濾過器5の下流側に濃縮器7を配置したが、濃縮器7を濾過器5よりも上流側に配置してもよい。その場合、陰圧発生装置13は、濃縮器7と濾過器5とを連通させる連通路の中途に接続してもよく、濾過器5の下流側に接続してもよい。
【0036】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
(実施例1および比較例1)
図1に示す、陰圧発生装置13が設置された腹水処理システム1を使用した場合(実施例1)と、図4に示す、陰圧発生装置13が設置されていない腹水処理システム81を使用した場合(比較例1)とについて、後述する疑似腹水を用いて処理を行なった。なお、貯留容器3および回収容器11には市販の塩化ビニル製腹水処理バッグを、各チューブとしては市販の塩化ビニル製血液回路の一部を使用した。また、廃液吸引装置9としては病院施設の壁掛け式吸引器を使用し、陰圧発生装置13には市販の輸液ポンプを使用した。濾過器5としては最大孔径が0.2μmのポリスルホン中空糸膜を膜面積1.3m内蔵したものを使用し、濃縮器7としては分画分子量が5000以下のポリスルホン中空糸膜を膜面積1.3m内蔵したものを使用した。疑似腹水には総蛋白質濃度が3.2g/dLの血漿と1.2g/dLの血漿を使用した。
【0038】
疑似腹水約3Lと腹水処理システム1,81を上記のように用意したのち、実施例1および比較例1のいずれにおいても、廃液吸引装置9としての壁掛け式吸引器による陰圧を−200mmHgに定圧設定した。また、陰圧発生装置を使用する実施例1においては、その輸液ポンプ流量を500mL/時の定流量設定とした。用意した疑似腹水が無くなった時点、あるいは膜が詰まり処理ができなくなった時点で実験を終了し、処理した疑似腹水液量、疑似腹水の総蛋白、疑似腹水の処理に使用した処理時間、回収腹水液量及び回収腹水液の総蛋白質濃度を測定し、総蛋白質回収率を計算により求めた。これらの結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1に示すように、陰圧発生装置13を使用しなかった比較例1においては、処理開始後約6分程度で濃縮膜が目詰まりを起こして濃縮器7から廃液Wが出なくなり、処理を中止せざるを得ないのに対して、陰圧発生装置13を使用した実施例1では3300mLの疑似腹水を全て処理することができ、処理時間も1時間以内で終えることができた。さらに、総蛋白質の回収量も80%以上であり、すぐれた腹水処理能力を示した。
【0041】
本発明の腹水処理システムは濃縮腹水回収回路に陰圧発生装置を設けることにより、総蛋白質濃度が3%以上の高蛋白質濃度の腹水もろ過膜が目詰まりを起こすことなく短時間で処理を行うことができる。また、使用する陰圧発生装置および廃液吸引装置の器材についても、病院に一般的に装備されている器材を使用することが可能であり経済的である。
【0042】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係る腹水処理システムを示す概略構成図である。
【図2】図1の腹水処理システムに用いられる濃縮器を示す縦断面図である。
【図3】本発明の効果を説明するための模式図である。
【図4】陰圧発生装置を使用しない腹水処理システムを示す概略構造図である。
【符号の説明】
【0044】
1 腹水処理システム
3 貯留容器
5 濾過器
7 濃縮器
9 廃液吸引装置
11 回収容器
13 陰圧発生装置
A1 腹水
A2 濾過腹水
A3 濃縮腹水
W 廃液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹水中の特定の物質を選択的に除去する濾過器と、
前記濾過器で濾過された濾過腹水を濾過して濃縮する濃縮器と、
前記濃縮器の廃液ポートから廃液を吸引する廃液吸引装置と、
前記濃縮器における前記廃液ポートよりも下流側に設けられた濃縮腹水回収用の回収ポートに接続されて、少なくとも前記廃液ポートよりも下流側に陰圧を発生させる陰圧発生装置と、
を備える腹水処理システム。
【請求項2】
請求項1において、さらに、前記廃液ポートと前記廃液吸引装置とを連通する廃液通路の中途に接続されて、前記廃液吸引装置によって発生する前記廃液通路内の陰圧を開放する陰圧開放通路を備える腹水処理システム。
【請求項3】
請求項1または2において、前記濾過器が、濾過部材としての中空糸膜を備えている腹水処理システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項において、前記濃縮器が、濾過部材としての中空糸膜を備えている腹水処理システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の腹水処理システムを用いる腹水処理方法であって、
前記濾過器で濾過されて、前記濃縮器に導入された濾過腹水を濾過によって濃縮する濃縮ステップと、
前記廃液吸引装置によって、前記濃縮器から廃液を吸引する廃液吸引ステップと、
前記陰圧発生装置によって少なくとも前記濃縮器の廃液ポートよりも下流側に陰圧を発生させて、前記濃縮器の濾過部材の濾過面における目詰まりを抑制する陰圧発生ステップとを含む腹水処理方法。
【請求項6】
請求項5において、さらに、前記濃縮器の濾過部材の濾過面において目詰まりが発生した場合に、前記陰圧開放通路によって前記廃液通路内の陰圧を開放するステップを含む腹水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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