説明

膜モジュール

【課題】 分離膜の交換が容易な膜モジュールの提供。
【解決手段】 2つのヘッド11、21、2つのヘッド11、21を所望間隔で着脱自在に連結できるタイロッド31、チューブ状分離膜41、42を有しており、第1ヘッド11が入水路12と出水路13を有し、第2ヘッド21が液通路22を有し、2つのヘッド11、21とボルト34により、チューブ状分離膜41、42が支持されている膜モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理用の膜モジュール及び膜モジュール用支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
膜モジュールを用いて水処理する場合、処理対象となる原水の汚れ具合や処理量は様々であるから、原水の状態に応じた濾過能力を有する膜を選択使用することは重要である。
【0003】
膜モジュールは、分離膜と共に、ヘッダやヘッダに接続するパイプが用いられ、通常は、ヘッダに分離膜が固定され、更にヘッダにパイプが接続できるようになっている。このため、一旦取り付けると、分離膜だけを他のものに交換することは困難であるから、例えば、より処理能力の大きな分離膜を使用しようとする場合には、膜モジュール全体を交換することになる。
【0004】
このように濾過能力等を変更する必要が生じた場合には、膜モジュールごと交換する必要があるため、従来は、複数の膜モジュールを用意する必要があり、運転コストの増加等の要因にもなっている。
【特許文献1】特開平9−99222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、複数のシート状中空糸膜を案内溝に着脱自在に挿嵌できる中空糸膜モジュールユニットが開示されている。
【0006】
本発明は、分離膜エレメントを用い、要求に応じて濾過能力が異なる分離膜を選択使用できる膜モジュール、及びそれに用いる膜モジュール用支持具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、課題の解決手段として、
2つのヘッド、2つのヘッドを所望間隔で着脱自在に連結できるタイロッド、及び複数の分離膜エレメントを有する膜モジュールであり、
前記2つのヘッドの一方である第1ヘッドが、複数の分離膜エレメントを着脱自在に接続できる複数の第1液通路を有し、前記複数の第1液通路が少なくとも入水路と出水路を有しており、
前記2つのヘッドの他方である第2ヘッドが、複数の分離膜エレメントを着脱自在に接続できる1又は2以上の第2液通路を有しており、
前記2つのヘッドにより、複数の分離膜エレメントが支持されている、膜モジュールを提供する。
【0008】
分離膜エレメントは、分離膜とその支持体の組み合わせからなるもので、ヘッドの液通路に接続できる構造を有するものであれば、その形状は特に制限されない。分離膜エレメントとしては、合成樹脂や金属からなるチューブ状のケースの中に分離膜が収容されたもの、合成樹脂やFRPからなるパイプ状ケースの中に中空糸膜が端部を接着固定されて収容されたもの、或いは合成樹脂やFRPからなるパイプ状ケースの中心に集水管を設け、そこに袋状平膜が巻き付けられた状態で収容されたもの等を挙げることができるが、これらの中でもチューブ状の分離膜エレメントが好ましい。分離膜の種類や材質は制限されるものではなく、公知のチューブラー型、中空糸型、スパイラル型等の分離膜を選択使用できる。
【0009】
このように、液通路を有する2つのヘッドと分離膜エレメントとを着脱自在にすることにより、要求に応じて濾過能力等が異なる分離膜を選択使用できるため、複数の膜モジュールを用意する必要がなくなる。
【0010】
本発明は、課題の他の解決手段として、第1ヘッドが有する貫通孔にタイロッドが通されており、第1ヘッドが貫通孔においてタイロッドを軸方向に所望長さだけ摺動できる、請求項1記載の膜モジュールを提供する。
【0011】
このように第1ヘッドを軸方向に移動させることにより、分離膜エレメントを取り外し、他の分離膜エレメントに交換することができる。なお、第2ヘッドに貫通孔を設け、そこにタイロッドを通して、第1ヘッドと同様に第2ヘッドもタイロッドを軸方向に摺動可能にすることができる。
【0012】
本発明は、課題の他の解決手段として、第1ヘッドが、分離膜エレメントとの非接続面に入水路と出水路に接続された入水管と出水管を有している、請求項1又は2記載の膜モジュールを提供する。
【0013】
このように入水管と出水管を有する構造にすることで、原水用パイプや透過液用パイプの連結が容易になる。
【0014】
また本発明は、他の課題の解決手段として、
2つのヘッドと2つのヘッドを所望間隔で着脱自在に連結できるタイロッドを有しており、
2つのヘッドの一方である第1ヘッドが、複数の分離膜エレメントを着脱自在に接続できる複数の第1液通路を有し、前記複数の第1液通路が少なくとも入水路と出水路を有しており、
2つのヘッドの他方である第2ヘッドが、複数の分離膜エレメントを着脱自在に接続できる1又は2以上の第2液通路を有しており、
2つのヘッドにより、複数の分離膜エレメントを支持できる、膜モジュール用支持具を提供する。
【0015】
このように、液通路を有する2つのヘッドと分離膜エレメントとを着脱自在にすることにより、要求に応じて濾過能力が異なる分離膜を選択使用できるため、複数の膜モジュールを用意する必要がなくなる。
【0016】
本発明は、他の課題の他の解決手段として、第1ヘッドが有する貫通孔にタイロッドが通されており、第1ヘッドが貫通孔においてタイロッドを軸方向に所望長さだけ摺動できる、請求項4記載の膜モジュール用支持具を提供する。
【0017】
このように第1ヘッドを軸方向に移動させることにより、分離膜エレメントを取り外し、他の分離膜エレメントに交換することができる。なお、第2ヘッドに貫通孔を設け、そこにタイロッドを通して、第1ヘッドと同様に第2ヘッドもタイロッドを軸方向に摺動可能にすることができる。
【0018】
本発明は、他の課題の他の解決手段として、第1ヘッドが、分離膜エレメントとの非接続面に入水路と出水路に接続された入水管と出水管を有している、請求項4又は5記載の膜モジュール用支持具を提供する。
【0019】
このように入水管と出水管を有する構造にすることで、原水用パイプや透過液用パイプの連結が容易になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の膜モジュール及び膜モジュール用支持具によれば、要求に応じて濾過能力が異なる分離膜や種類(用途や膜構造)の異なる分離膜を選択使用できるため、複数の膜モジュールを用意する必要がなくなり、運転コストも低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図面により、膜モジュール及び膜モジュール用支持具を説明する。図1は、膜モジュール(分離膜エレメントとなるチューブ状分離膜を除いた部分が膜モジュール用支持具となる)の平面図、図2及び図3は、図1の膜モジュール(及び膜モジュール用支持具)における分離膜エレメントの交換方法を説明するための平面図である。
【0022】
膜モジュール10は、第1ヘッド11と第2ヘッド21、タイロッド31、及び2本の分離膜エレメントとなるチューブ状分離膜41、42を有している。ここで、2本のチューブ状分離膜41、42を除いたものが膜モジュール用支持具となる。
【0023】
第1ヘッド11の内部には、チューブ状分離膜41、42の一端側が接続された入水路12と出水路13が設けられており、入水路12には原水用の入水管14が接続され、出水路13には濃縮液用の出水管15が接続されている。
【0024】
入水路12と出水路13の形状及び径は、チューブ状分離膜41、42が接続できるような形状及び径に調整されている。
【0025】
入水管14は、フランジ14aから先の部分に螺子部14bを有しており、この螺子部14bにおいて原水用のパイプと接続される。出水管15は、フランジ15aから先の部分に螺子部15bを有しており、この螺子部15bにおいて透過液用のパイプと接続される。
【0026】
第2ヘッド21の内部には、入口23と出口24を有する1つの液通路22が設けられている。入口23及び出口24の形状及び径は、チューブ状分離膜41、42が接続できるような形状及び径に調整されている。
【0027】
第1ヘッド11及び第2ヘッド21の大きさは、接続するチューブ状分離膜の本数に応じて設定される。また、例えば、第1ヘッド11に入水路12(及び入水管14)を設け、第2ヘッド21に出水路13(及び出水管15)を設けてもよいし、その逆でもよい。
【0028】
タイロッド31は、一端31a側の所要長さ部分に螺子部32が設けられており、一端31a側は第1ヘッド11に設けられた支持孔17に通され、他端側は第2ヘッド21に取り付けられている。支持孔17の内表面は平滑面であり、第1ヘッド11は、支持孔17においてタイロッド31上を摺動させることができる。タイロッド31の第2ヘッド21への取付部位は、固着されていてもよいし、螺子合わせ等により着脱自在であってもよい。
【0029】
チューブ状分離膜41、42は、一端側先端部41a、42aが第1ヘッド11の入水路12、出水路13に嵌め込まれており、他端側先端部が第2ヘッド21の入口23、出口24に嵌め込まれている。第2ヘッド21の入口23、出口24側は、螺子合わせて接続する方式でもよい。チューブ状分離膜41、42と、入水路12、出水路13の接続部、及び入口23、出口24との接続部には、シール部材を介在させることができる。
【0030】
チューブ状分離膜の本数は、膜モジュール10のバランスを保つ観点から、タイロッド31を挟んで両側が同数になるように、即ち全体が偶数になるようにすることが好ましいが、全体が奇数になるようにしてもよい。
【0031】
第1ヘッド11は、チューブ状分離膜41、42が第1ヘッド11と第2ヘッド21で両側から挟み込まれて支持されるように、タイロッド31の端部31a側からねじ込んだボルト34で締め付けることにより、所定位置において固定されている。
【0032】
膜モジュール10では、ボルト34を端部31a側に移動させ、第1ヘッド11を軸方向に移動させることにより、第1ヘッド11と第2ヘッド21の間隔が所望間隔(使用するチューブ状分離膜41、42の長さ)に調整できる。このため、チューブ状分離膜の着脱が容易であるから、所望のチューブ状分離膜を選択使用することができる。
【0033】
次に、膜モジュール10において、チューブ状分離膜41、42を異なるチューブ状分離膜51、52に交換する方法を説明する。
【0034】
図1において、ボルト34を緩めて、タイロッド32の端部31a側に移動させ、第1ヘッド11も移動させる。このとき、図2に示すように、ボルト34をタイロッド34から外し、第1ヘッド11もタイロッド34から外してもよいし、図3に示すように、ボルト34と第1ヘッド11を端部31a付近で留めておいてもよい。なお、図3のチューブ状分離膜51、52よりも長さの長いものに交換する場合には、図2の状態にした方が作業性はよくなる。
【0035】
次に、チューブ状分離膜41、42を第2ヘッド21から外し、より長い(より有効膜面積の大きい)チューブ状分離膜51、52に取り替える(図3)。
【0036】
その後、図3の状態ではそのまま第1ヘッド11を押し込んで(図2の状態では端部31aから第1ヘッド11を嵌め込み、更に第1ヘッド11を押し込んで)、入水路12をチューブ状分離膜51の端部51aに嵌め込み、出水路13をチューブ状分離膜52の端部52aに嵌め込む。そして、ボルト34をねじ込んで行き、図1のような状態になるように第1ヘッド11を固定する。
【0037】
なお、チューブ状分離膜として、太さの異なるものを交換使用する場合には、第1ヘッド11側の入水路12、出水路13、第2ヘッド21側の入口23、出口24に、径調整用のアダプターを接続した上で、アダプターを介して径の異なるチューブ状分離膜を接続する方法を適用できる。
【0038】
また、交換前後のチューブ状分離膜の長さが大きく異なり、最初に用いていたタイロッドが使用できない場合には、タイロッド自体もより長いものに交換することができる。
【0039】
本発明の膜モジュール及び膜モジュール用支持具は、各種分野の水処理用途に適用できるが、特に処理量の少ない場合、例えば、1又は複数の少量のサンプル液を複数の分離膜で処理するような場合に好適である。
【実施例】
【0040】
図1に示す膜モジュールを組み立てた。各部の詳細は以下のとおりである。
第1ヘッド11
材質:SUS
入水路12の径:1.7cm
出水路13の径:1.7cm
第2ヘッド21
材質:SUS
入口23の径:1.7cm
出口24の径:1.7cm
タイロッド31
材質:SUS
直径:1.4cm
長さ:50cm
螺子部32長さ:端部31aから0.5〜25.5cmまでの範囲に設けられている
チューブ状分離膜41、42
チューブ状ケース(ノリル樹脂製,直径1.7cm、長さ25.5cm)内に表面分離膜としてポリアクリロニトリル膜が収容されたもの(商品名DUYL010,ダイセン・メンブレ・システムズ社製)
タイロッド31の螺子部32の全長が25.0cmであるから、ボルト34による固定を考慮すると、長さが約25〜45cmの範囲の分離膜エレメントを選択使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】膜モジュールの平面図。
【図2】膜モジュールにおける膜の交換方法の説明図。
【図3】膜モジュールにおける膜の交換方法の説明図。
【符号の説明】
【0042】
10 膜モジュール
11 第1ヘッド
21 第2ヘッド
31 タイロッド
41、42、51、52 チューブ状分離膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのヘッド、2つのヘッドを所望間隔で着脱自在に連結できるタイロッド、及び複数の分離膜エレメントを有する膜モジュールであり、
前記2つのヘッドの一方である第1ヘッドが、複数の分離膜エレメントを着脱自在に接続できる複数の第1液通路を有し、前記複数の第1液通路が少なくとも入水路と出水路を有しており、
前記2つのヘッドの他方である第2ヘッドが、複数の分離膜エレメントを着脱自在に接続できる1又は2以上の第2液通路を有しており、
前記2つのヘッドにより、複数の分離膜エレメントが支持されている、膜モジュール。
【請求項2】
第1ヘッドが有する貫通孔にタイロッドが通されており、第1ヘッドが貫通孔においてタイロッドを軸方向に所望長さだけ摺動できる、請求項1記載の膜モジュール。
【請求項3】
第1ヘッドが、分離膜エレメントとの非接続面に入水路と出水路に接続された入水管と出水管を有している、請求項1又は2記載の膜モジュール。
【請求項4】
2つのヘッドと2つのヘッドを所望間隔で着脱自在に連結できるタイロッドを有しており、
2つのヘッドの一方である第1ヘッドが、複数の分離膜エレメントを着脱自在に接続できる複数の第1液通路を有し、前記複数の第1液通路が少なくとも入水路と出水路を有しており、
2つのヘッドの他方である第2ヘッドが、複数の分離膜エレメントを着脱自在に接続できる1又は2以上の第2液通路を有しており、
2つのヘッドにより、複数の分離膜エレメントを支持できる、膜モジュール用支持具。
【請求項5】
第1ヘッドが有する貫通孔にタイロッドが通されており、第1ヘッドが貫通孔においてタイロッドを軸方向に所望長さだけ摺動できる、請求項4記載の膜モジュール用支持具。
【請求項6】
第1ヘッドが、分離膜エレメントとの非接続面に入水路と出水路に接続された入水管と出水管を有している、請求項4又は5記載の膜モジュール用支持具。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate