説明

膜モジュール

【課題】膜モジュールにおいて高圧気体の導入時の中空糸膜の損傷を防止しつつ、中空糸膜の材質や構造の自由度を確保する。
【解決手段】膜モジュール1は、中空糸膜Aが収容された膜収容部10と、膜収容部10の壁面に形成され、中空糸膜Aの一次側に通じる第1のノズル20及び第2のノズル21と、膜収容部10の壁面に形成され、中空糸膜Aの二次側に通じる第3のノズル22及び第4のノズル23と、を有している。第2のノズル21の流路径D2は、第1のノズル20の流路径D1の1/5〜1/3である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、血液浄化療法、血漿交換療法などの医療分野、水の浄化や水質の調整などの水処理分野、血漿分画製剤やバイオ医薬品などの製造工程におけるウィルス除去などの濾過処理には、内部に中空糸膜を内蔵した膜モジュールが用いられている。この種の膜モジュールには、中空糸膜が収容された筒状の膜収容部を有し、当該膜収容部に中空糸膜の一次側に通じる2つのノズルと、中空糸膜の二次側に通じる2つのノズルが形成されているものがある。
【0003】
上記膜モジュールを用いた濾過処理は、濾過処理用回路に膜モジュールを接続し、例えば膜モジュールの中空糸膜の一次側の一方のノズルから濾過原液を流入し、中空糸膜を通過させ、中空糸膜で濾過された濾過液を二次側のノズルから流出させることによって行われている。
【0004】
ところで、上述のような膜モジュールは、一般的に高い中空糸膜の膜性能が要求されるため、膜モジュールの製造時には、高圧のエアを膜モジュールに導入して中空糸膜の膜性能を検査するリーク試験が行われる。また、濾過処理を行う際には、処理開始前に高圧、高温の蒸気を膜モジュールに導入して膜モジュール内を滅菌する滅菌処理を行う場合もある(特許文献1参照)。これらのリーク試験や滅菌処理では、例えば高圧の気体を少なくとも中空糸膜の一次側の一方のノズルから導入し他方のノズルから排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−207744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のようなリーク試験時や滅菌処理時には、中空糸膜の一次側の一方のノズルから他方のノズルに向けて膜収容部内を気体が高速で流れる。このため、その高速気流により中空糸膜が暴れて、中空糸膜が損傷する恐れがある。中空糸膜の損傷を防止するため、強度の高い中空糸膜を使用すると、その分中空糸膜の材質や構造が制限され、膜性能やコストに影響を与える。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、高圧気体の導入時の中空糸膜の損傷を防止しつつ、中空糸膜の材質や構造の自由度を確保することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明は、膜モジュールであって、中空糸膜が収容された膜収容部と、前記膜収容部の壁面に形成され、前記中空糸膜の一次側に通じる第1のノズル及び第2のノズルと、前記膜収容部の壁面に形成され、前記中空糸膜の二次側に通じる第3のノズル及び第4のノズルと、を有し、前記第2のノズルの流路径が、前記第1のノズルの流路径の1/5〜1/3である。
【0009】
本発明によれば、中空糸膜の一次側に通じる第2のノズルの流路径が第1のノズルの流路径の1/5〜1/3であるので、例えばリーク試験時や滅菌処理時に第1のノズルから第2のノズルに向けて高圧の気体が導入されても、膜収容部内で気流の速度が低下し、気流による中空糸膜の損傷を防止できる。また、強度が低い中空糸膜も使用することができ、中空糸膜の材質や構造の自由度を確保できる。
【0010】
また、上記膜モジュールは、前記第1のノズルから濾過原液を流入し、前記第3のノズル又は第4のノズルの少なくとも一方から濾過液を流出する濾過用のモジュールであってもよい。
【0011】
前記中空糸膜は、ウィルス除去用の膜であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高圧気体の導入時の中空糸膜の損傷を防止しつつ、中空糸膜の材質や構造の自由度を確保できるので、膜モジュールの信頼性を向上し、またコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】膜モジュールの構成の概略を示す断面図である。
【図2】濾過処理用回路の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる膜モジュール1の構成の概略を示す縦断面の説明図である。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
膜モジュール1は、例えば図1に示すように中空糸膜Aを収容する円筒状の膜収容部10を有している。中空糸膜Aの両端部は、膜収容部10の内壁にポッティング剤Bによって固定されている。中空糸膜Aは、数本から数千本、更には数万本が固定されることもある。中空糸膜Aは、その両端部の固定面において均一に分散されて固定されることが望ましい。膜収容部10は、例えば筒状部10aの両側の開口を蓋部10bで閉鎖する構造を有している。
【0016】
膜収容部10の長手方向の両端部(蓋部10b)の壁面には、中空糸膜Aの一次側(膜の内側)に通じ、通液可能な第1のノズル20と第2のノズル21が形成されている。また、膜収容部10の筒状部10aの側壁面には、中空糸膜Aの二次側(膜の外側)に通じ、通液可能な第3のノズル22と第4のノズル23が形成されている。
【0017】
第2のノズル21の流路径D2は、第1のノズル20の流路径D1の1/5〜1/3に形成されている。
【0018】
また、第4のノズル23の流路径D4と第3のノズル22の流路径D3は、第1のノズル20の流路径D1と同程度であってもよい。
【0019】
なお、ノズル20〜23は、内径が一定であってもよいし、テーパ形状などにより内径が変動していてもよい。内径が変動する場合、流路径は最小の内径とする。ここで、ノズル20〜23の流路がテーパー形状の場合、その勾配の角度は0.5〜2度程度である。モジュール1の材質は、一般的にプラスチックであることが多く、その製造は射出成形によって行われることが多い。ノズル20〜23の流路部分は、射出成形においては、例えばそれに合った金型を抜くように成形されるが、抜く際にスムーズに抜けるようにテーパーが施されている。テーパーは、金型を抜く方向に向けて広がっている。その角度が0.5〜2度程度である。同じように、ハウジング本体(筒状部10a)やヘッダー(蓋部10b)なども射出成形で製造されるが、射出成形で金型を抜くような部位には、0.1〜2度程度のテーパーの勾配角度が施されている。テーパーは、ノズルと同じように金型を抜く方向に向けて広がっている。例えばハウジング本体のテーパーは、膜収容部10の中心から長手方向の両端部に向けて広がっている。
【0020】
以上のように構成された膜モジュール1がリーク試験又は滅菌処理される場合には、高圧の気体(エアや蒸気)が第1のノズル20から膜収容部10内に供給され、第2のノズル21から排出される。このとき、第2のノズル21の流路径D2が第1のノズル20の流路径D1の1/5〜1/3程度と狭く、第2のノズル21の流路径D2の流路抵抗が相対的に大きくなるので、膜収容部10の中空糸膜Aの内側(一次側)を通る気流速度は遅くなる。
【0021】
膜モジュール1を用いて濾過処理を行う際には、例えば図2に示すように膜モジュール1が濾過処理用回路30に接続される。濾過処理用回路30は、例えば濾過原液のタンク40と、当該タンク40から膜モジュール1の第1のノズル20に接続されたチューブ41と、膜モジュール1の第3のノズル22及び第4のノズル23に接続されたチューブ42を有している。なお、このとき、第2のノズル21にはキャップが取り付けられ、第2のノズル21は閉鎖されるが、濾過を開始する前に、中空糸内部に存在する空気などを抜く空気抜き穴として利用しても良い。
【0022】
そして、タンク40からチューブ41を通じて膜モジュール1に供給された濾過原液は、第1のノズル20から膜収容部10に導入され、中空糸膜Aの一次側から二次側に流れ出ることによってウィルスが除去されて濾過される。濾過液は、例えば第3のノズル22と第4のノズル23のいずれからかチューブ42に排出される。
【0023】
本実施の形態によれば、中空糸膜Aの一次側に通じる第2のノズル21の流路径D2が第1のノズル20の流路径D1の1/5〜1/3であるので、例えばリーク試験時や滅菌処理時に第1のノズル20から第2のノズル21に向けて高圧の気体が導入されても、膜収容部10内で気流の速度が低下し、気流による中空糸膜Aの損傷を防止できる。また、強度が低い中空糸膜Aも使用することができ、中空糸膜Aの材質や構造の自由度を確保できる。
【0024】
なお、上述のように膜モジュール1を濾過用のモジュールとして用いる場合、濾過原液を第1のノズル20から流入させ、第3のノズル22又は第4のノズル23の両方から流出させてもよい。
【0025】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0026】
例えばノズル20〜23の形状においては、例えば、フェルール、ルアーロックフィッティング、フランジなどが使用できる。フェルールはASME規格(ASME BPE)、ルアーロックフィッティングはISO 594規格などを使用することができる。
【0027】
モジュール1の材質には、ステンレスなどの金属や熱可塑性樹脂などが使用できる。熱可塑性樹脂を用いる場合、例えば、強度や透明性で優れるポリカーボネート、更に耐熱性や耐薬品性に優れるポリスルホンなどが使用される。例えば、ポリカーボネートの引張降伏応力は60〜69MPa(ISO 527−1/−2、50mm/min)、荷重たわみ温度138〜145℃(ISO 179−1/−2、0.45MPa)、125〜132℃(ISO 179−1/−2、1.80MPa)、光線透過率88〜92(ASTM D 1003、厚さ3mm)などの物性を持ったものが使用できる。また、例えば、ポリスルホンの引張降伏応力は70〜100MPa(ISO 527−1/−2、50mm/min)、荷重たわみ温度180〜220℃(ISO 179−1/−2、0.45MPa)、170〜210℃(ISO 179−1/−2、1.80MPa)などの物性を持ったものが使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、高圧気体が導入される膜モジュールの中空糸膜の損傷を防止する際に有用である。
【符号の説明】
【0029】
1 膜モジュール
10 膜収容部
20 第1のノズル
21 第2のノズル
22 第3のノズル
23 第4のノズル
D1 第1のノズルの流路径
D2 第2のノズルの流路径
D3 第3のノズルの流路径
D4 第4のノズルの流路径
A 中空糸膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜モジュールであって、
中空糸膜が収容された膜収容部と、
前記膜収容部の壁面に形成され、前記中空糸膜の一次側に通じる第1のノズル及び第2のノズルと、
前記膜収容部の壁面に形成され、前記中空糸膜の二次側に通じる第3のノズル及び第4のノズルと、を有し、
前記第2のノズルの流路径が、前記第1のノズルの流路径の1/5〜1/3である、膜モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の膜モジュールは、前記第1のノズルから濾過原液を流入し、前記第3のノズル又は第4のノズルの少なくとも一方から濾過液を流出する濾過用のモジュールである。
【請求項3】
前記中空糸膜は、ウィルス除去用の膜である、請求項1又は2に記載の膜モジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−13885(P2013−13885A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−29568(P2012−29568)
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【出願人】(507365204)旭化成メディカル株式会社 (65)
【Fターム(参考)】