説明

膜分離装置用集合管およびその組立方法

【課題】ノズル3へのチューブ差込作業および運転時の散気によるチューブの振動で折れた集合管1のノズル3を交換することができる膜分離装置用集合管およびその組立方法を提供する。
【解決手段】複数の膜エレメントからのろ過水を集合する膜分離装置用集合管1であって、膜分離装置用集合管1の集合管本体2と接合するように設けられたノズル3の内壁の少なくとも一部の断面が、非円形である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に廃水処理および浄水処理に利用される膜分離装置の集合管およびその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃水処理において、図6のような、活性汚泥を充填した処理槽121内に複数の平板状の膜エレメント103を収納した膜分離装置101を浸漬して、膜エレメント103の透過側をポンプ123で吸引あるいはサイホンなどのように水位差を利用してろ過水を得る技術が知られている。活性汚泥処理では、処理槽121内で好気性の微生物を飼育するために散気が必要である。この散気装置104を膜分離装置101の下部に据え付ければ、散気による気液混合流で膜の膜面の汚れをかきとりながら安定した固液分離を行うことができる。
【0003】
特許文献1のように、膜分離装置には各膜エレメントのろ過水を集合させる集合管が付設され、各膜エレメントのろ過水口と集合管本体に接合されたノズルがチューブ等で接続されている。また、特許文献2および特許文献3のように各膜エレメントのろ過水ノズルを集合管本体に直接接続した構造も開示されている。
【0004】
特許文献1は、フレキシブルなチューブで接続することから、膜エレメントの配置や集合管の製作に厳密な精度を必要とせず、また透明チューブを使用した場合には膜エレメントの損傷による活性汚泥の漏れを目視で確認することができるため、一般に採用されている構成である。
【0005】
図7(a)は膜分離装置101の上面の一部を示した模式図、図7(b)はその膜分離装置用集合管1の側面模式図であるが、膜分離装置用集合管1はろ過水口5とほぼ同様の構造を持つ複数個のノズル3を、膜エレメント103と同じ配列間隔で集合管本体2の表面に固定した構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−157848号公報
【特許文献2】特開平11−300176号公報
【特許文献3】特開2000−157976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の構成では以下の問題があった。
【0008】
(i)ノズル3へのチューブ7差込作業および運転時の散気によるチューブ7の振動で、図9(b)のように曲げモーメントが最も大きくなる集合管本体2とノズル3の接合部分6であるノズル根元が折れ、膜分離装置用集合管1内に活性汚泥が漏れ込む場合があるが、根元で折れていることおよびノズル3の内壁4の断面が円形であり嵌合する工具の適用が難しいことから、集合管本体2内に残ったノズル破片32を除去するのが困難であり、漏れを止めるためには膜分離装置用集合管1全体を交換しなければならない。塩濃度が高い廃水を処理する場合には、腐食を防止するために樹脂製のノズル3が使用されるが、ステンレス等に比べ機械的強度が低いため、特にこのトラブルが発生し易い。
【0009】
(ii)膜分離装置101は、単位面積当たりの処理量を高くするため、膜エレメント103をできるだけ狭い間隔で配列する方が好ましいが、ノズル3を集合管本体2にネジ接合する場合、ノズル間に締込み用の工具を入れるスペースが必要であるためノズル間隔を狭くすることにも限界がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の目的を達成するために、以下に述べる構成からなる。
【0011】
(1)複数の膜エレメントからのろ過水を集合する膜分離装置用集合管であって、膜分離装置用集合管の集合管本体と接合するように設けられたノズルの内壁の少なくとも一部の断面が、非円形であることを特徴とする膜分離装置用集合管。
【0012】
(2)前記断面が十二角形以下の多角形である(1)に記載の膜分離装置用集合管。
【0013】
(3)前記非円形の断面が、集合管本体との接合部分に設けられている(1)または(2)に記載の膜分離装置用集合管。
【0014】
(4)複数の膜エレメントからのろ過水を集合する膜分離装置用集合管の組立方法であって、膜分離装置用集合管の集合管本体と接合するように設けられ、内壁の少なくとも一部の断面が非円形であるノズルの内側に、前記非円形の断面と略同一形状の外周部を有する棒状物を差込み、棒状物を回転させることで、ノズルを集合管本体と脱着することを特徴とする膜分離装置用集合管の組立方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ノズル3の内壁4の少なくとも一部の断面を非円形とすることで、ノズル3の折れが発生した場合にも、非円形断面部42と略同一形状の棒状物を、集合管本体2側の接合部分6に残ったノズル3の内側に差込み、回転させることで取り外すことができる。また、取り外した部分に新たなノズル3を接合する場合にもノズル3の内側に棒状物を差込み、回転させることで接合できる。その結果、ノズル3が折れた場合でも膜分離装置用集合管1全体を交換する必要がなく、さらにノズル3の周りに工具を入れるスペースを必要としないため、狭い間隔でノズル3を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の集合管の一例を示した、(a)集合管のノズル接続部分を示した断面図、(b)ノズルの底面図、である。
【図2】本発明の集合管に用いられるノズルの一例を示した、(a)一部破断した正面図、(b)集合管本体との接合方向の内壁の底面図、(c)集合管本体との接合位置と反対側の内壁の上面図、である。
【図3】本発明の集合管に用いられる別のノズルの一例を示した、(a)一部破断した正面図、(b)集合管本体との接合方向の内壁の底面図、(c)集合管本体との接合位置と反対側の内壁の上面図、である。
【図4】ノズルの内壁の断面の一例を示した模式図である。
【図5】本発明の集合管の組立方法の一例を示した、(a)集合管のノズル接続部分を示した断面図、(b)ノズルの底面図、である。
【図6】従来の集合管を使用した膜分離装置および水処理装置を表した模式図である。
【図7】従来の膜分離装置を示した、(a)集合管周辺の一部上面模式図、(b)集合管の一部側面図、である。
【図8】従来の集合管に用いられるノズルの一例を示した、(a)一部破断した正面図、(b)集合管本体との接合方向の内壁の底面図、(c)集合管本体との接合位置と反対側の内壁の上面図、である。
【図9】従来の集合管の一例を示した、(a)集合管のノズル接続部分を示した断面図、(b)ノズルが折れた状況を表した断面図、(c)ノズルの底面図、である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に示す実施態様に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。図1は本発明の膜分離装置用集合管1の一実施態様を示した断面模式図、図2および図3は本発明の膜分離装置用集合管1に使用するノズル3の一実施態様を示した模式図、図4は本発明の膜分離装置用集合管1に使用するノズル3の内壁4で非円形断面部42を表した模式図、である。
【0018】
本発明の膜分離装置用集合管1は、図1のようにパイプ状の集合管本体2の側面に、内壁4の少なくとも一部を非円形断面部42とした複数のノズル3を接合した構造である。
【0019】
ノズル3の内壁4の非円形断面部42は、図2(a)(b)(c)のように内壁4の全体であっても良いが、円形断面部41とこの円形に外接する非円形断面部42とを比較した場合、非円形断面部42の方が高い流路抵抗となりろ過水を吸引する際に高い圧力を必要とするため、図3(a)(b)(c)のように出来るだけ流路が短くなるよう内壁4の一部に設置する方が好ましく、特に図9(b)のように、ノズル3が折れて集合管本体2にノズル破片32が残った場合にも取り外せるように、非円形断面部42が集合管本体2との接合部分6に設けられていることが好ましい。非円形断面部42としては、図4に示す六角形に代表される多角形、円形の一部を切り欠いた形状、楕円形、また、円形断面の一部に突起を設けた形状、例えば、キー形状、スプライン形状、歯車形状、等が例示できるが、非円形であればいずれの形状であっても本発明の効果が得られ特に限定されるものではない。しかしこれらの中で、ノズル3および締込み用工具8の製作が容易で、ろ過水の流路抵抗となり難く、かつノズル破片32の取り外し作業でノズル内の非円形断面部に締込み用工具8を挿入する際の位置決めが容易であり、締込み用工具8を回転させる際にノズル内壁との接触部が潰れて空回りし難い正六〜十二角形が好ましく使用できる。この範囲であれば、円形断面部41に内接する形状の非円形断面部42を設置した場合、円形断面部41に対して82%以上の断面積を確保できる(正六角形の場合)ため著しい流路抵抗とならず、また95%以下の断面積である(正十二角形の場合)ため接触部の潰れによる空回りの懸念がない。

ノズル3は、内壁4の少なくとも一部が非円形であり、かつ集合管本体2とチューブ7への接続が可能な形状であれば特に限定されるものではない。また、集合管本体2も内部に空間を持ち、集合させたろ過水を流動させられるものであれば限定されず、断面円形のパイプや矩形管等が好ましく使用できる。
【0020】
集合管本体2へのノズル3の接合方法としては、シール材を介したネジ接合、接着・溶着等の手法で設置されるが、ノズル3が折れた場合の集合管本体2からの破片除去の容易さからシール材を介したネジ接合が好ましく用いられる。また、接合部分6の集合管本体2側のノズル取付穴の形状およびノズル外形は、円形であれば破片除去が容易であり好ましい。
【0021】
集合管本体2およびノズル3の材質は、活性汚泥中で使用されることから腐食が起き難い材料を選定することが好ましく、ステンレス鋼やプラスチックス類が例示できる。プラスチックス類は塩濃度が高い活性汚泥であっても腐食の恐れが無く、また軽量・低コストという面からも特に好ましく使用することができる。一方で、ステンレス鋼に対し機械的強度が低くノズル折れが発生し易いという特徴をもつことから本発明の形態による高い効果を得ることが出来る。著しく低強度のものは頻繁にノズル交換する必要があるため、ASTM試験法のD790における曲げ弾性率が300MPa程度以上の剛性を持つ材質を選定することが好ましい。アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合(ABS)樹脂、ポリ塩化ビニル、ハイインパクトポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、繊維強化プラスチック(FRP)などが例示できる。
【0022】
チューブ7と接続される部分のノズル3の構造も特に限定されず、ホースニップルのような柔軟なチューブ7との接続構造、チューブコネクタのような構造、またチューブ7側にネジ構造を設けたネジ接合、等が例示できる。チューブ7の材質、剛性、に対する接続の容易さ等で適宜選択することができる。
【0023】
次に、集合管本体2からのノズル3の取付・取外しに使用する締込み用工具8、および組立方法を説明する。
【0024】
図5(a)は、折れたノズル破片32を集合管本体2から除去する様子を表した断面模式図であり,図5(b)は折れたノズル破片32および締込み用工具8を下方から見た模式図である。
【0025】
締込み用工具8は、ノズル3の内壁4の非円形断面部42と嵌め合わせることが出来る構造であり、少なくとも嵌め合う部分の断面が、ノズル3の非円形断面部42と略同一の断面形状であれば、特に限定されるものでは無い。
【0026】
ノズル3の非円形断面部42と嵌め合わせる部分の形状は、前述の通り略同一の断面形状であることが好ましいが、同一断面形状で無くとも、非円形断面部42内で締込み用工具8を回転させた場合に空回りしない形状であればよい。例えば、非円形断面部42が多角形の場合、その対角線と同等長さの板状物とすることが例示できる。また、非円形断面部42と嵌め合う部分よりも先端側を、内壁4の円形断面部41や非円形断面部42よりも小径にし、挿入を容易にする構造も好ましく使用することができる。締込み用工具8の一部分には、非円形断面部42へ挿入した後に回転を容易とする構造を持たせることが好ましい。例えば図5(a)に示すように、接合部分6の他端側にハンドルを設置した構造、他端側に電動ドリルのような回転工具と接続できる構造、が例示できる。
【0027】
本発明の組立方法の一例、すなわちノズル破片32を取り外す手順は以下の通りである。
(1)集合管本体2に残ったノズル破片32に締込み用工具8を挿入する。
(2)締込み用工具8を回転させ、集合管本体2との接合力を緩め、集合管本体2からノズル破片32を除去する。
【0028】
従来は、ノズル破片32を膜分離装置用集合管1外部から掴むことが出来ないこと、および内壁4が円形断面部41であり嵌合する工具の適用が難しいため除去が困難であったが、本発明の構成および方法であれば容易に除去することができる。
【0029】
また、本発明のノズル3の非円形断面部42が内壁4の全体に渡って設置されている場合、または接合部分6の他端側の内壁4の断面が非円形部分42よりも大きくした場合には、ノズル3と集合管本体2との接合部分6にシール材を取り付け、内壁4に締込み用工具8を挿入した状態で締込み工具8を回転させ、集合管本体2に取り付けることができる。このような構成にした場合には、ノズル3を集合管本体2にネジ接合する際に、ノズル3の外周側に工具を入れ、ノズル外周部分の多角形部分31で締付固定する必要が無い。膜分離装置用集合管1を新規に製作する場合には、一方向から順序よくノズル3を取り付けていけば、ノズル外周側にも工具を入れるための十分なスペースを取る事ができるが、ノズル3が全て取り付けられた後に、その一部のノズル3が破損した場合には、隣接したノズル3で工具を入れることができない。このことから、従来の膜分離装置用集合管1よりもノズル間の間隔を狭くすることができる。
【0030】
本発明に使用される膜分離装置101は、内部に設置された膜エレメント103にろ過水口5が設置されており、各膜エレメント103から取出したろ過水を集合させる膜分離装置用集合管1を有す構造であれば特に限定されるものではない。例えば、ステンレスもしくは樹脂製のハウジング102内に、複数の中空糸タイプや平膜タイプの膜エレメント103を装填したものを例示することができる。
【0031】
膜エレメント103には分離したろ過水を排出するろ過水口5が設けられているが、チューブ7の取付けおよび取外し時の負荷や、運転中の散気による負荷に耐える材質であることが好ましく、かつチューブ7との接続が容易な形状であることが好ましい。
【符号の説明】
【0032】
1 膜分離装置用集合管
2 集合管本体
3 ノズル
4 内壁
5 ろ過水口
6 接合部分
7 チューブ
8 締込み用工具
31 多角形部分
32 ノズル破片
41 円形断面部
42 非円形断面部
101 膜分離装置
102 ハウジング
103 膜エレメント
104 散気装置
121 処理槽
122 ブロア
123 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の膜エレメントからのろ過水を集合する膜分離装置用集合管であって、膜分離装置用集合管の集合管本体と接合するように設けられたノズルの内壁の少なくとも一部の断面が、非円形であることを特徴とする膜分離装置用集合管。
【請求項2】
前記断面が十二角形以下の多角形である請求項1に記載の膜分離装置用集合管。
【請求項3】
前記非円形の断面が、集合管本体との接合部分に設けられている請求項1または2に記載の膜分離装置用集合管。
【請求項4】
複数の膜エレメントからのろ過水を集合する膜分離装置用集合管の組立方法であって、膜分離装置用集合管の集合管本体と接合するように設けられ、内壁の少なくとも一部の断面が非円形であるノズルの内側に、前記非円形の断面と略同一形状の外周部を有する棒状物を差込み、棒状物を回転させることで、ノズルを集合管本体と脱着することを特徴とする膜分離装置用集合管の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−187555(P2012−187555A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55027(P2011−55027)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】