説明

膜吸着装置

【課題】 効率的であり、その能力を使用し、高い処理量を有し、好ましくは、再使用前の装置の清浄化および再確認の必要性を除去するように使い捨て可能である、膜吸着装置を提供する。
【解決手段】 膜および装置は、生物薬学産業で存在するような蛋白質を含む流れの中の微量汚染物質を除去するように構成されている。好ましい膜は、密な孔径分布と、高い処理量の分離を可能にする高い透過性を有する。装置の1つは、一連のディスクで形成され、それぞれのディスクは、ディスクの2つの大きな表面のそれぞれに対して密封されている8つの層の膜を有する。これらのディスクは、一方の端部に入口を、他方の端部に出口を有する密封されたカプセル内に配置されている。ディスクは、出口から出るすべての流体が、ディスクの片側の膜を最初に通過させることによって出るように密封されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択された成分を液体流から除去するための吸着膜、および吸着膜を含む装置に関する。より具体的には、本発明は、それぞれが100よりも大きいペクレ数(Pe)を有する、膜および1つまたは複数のこのような膜を含む装置を有する、膜ベースの吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
膜クロマトグラフィまたは垂直方向流れの膜ベースの吸着器の使用は、良く知られている。米国特許第4,895,806号、およびMembrane Chromatography:Preparation and Application to Protein Separation,Zeng,X,Biotechnol.Prog1999,vol15,p.1003-1019参照。
【0003】
これらの装置はすべて、入口および出口を有するハウジングと、入口に入るすべての液体が、出口に到達する前に1つまたは複数の膜層を通って流れなければならないように、入口と出口との間に配置された吸着性の膜の1つまたは複数の層とで基本的に形成されている。膜は、通常、表面修飾、現位置での共重合またはグラフト化、吸着性の材料からの直接形成によって、または膜の形成中に膜マトリックス内に吸着性の粒子(クロマトグラフィ媒体など)を含むことによって吸着性になる。この方法により、液体流の1つまたは複数の構成物質が、膜表面に結合され、流れから除去される。濾過ステップの完了後、結合された物質は、異なる溶液を追加すること、またはpH状態を変更すること、またはその他の当技術分野で良く知られている方法によって溶出され、廃棄か処理のいずれかをされて、どんな目的のためにも使用される。
【0004】
通常、除去される物質は、関心対象の蛋白質である。ウイルス、内毒素、核酸、宿主細胞蛋白質、および類似のものなどの、流れの中の物質の残りのものは、妨害されずに装置を通過し、システムから除去される。
【0005】
当該蛋白質を除去する代わりに、ウイルス、内毒素、核酸、宿主細胞蛋白質、および類似のものなどの微量の汚染物質を、流れから除去することも提案されてきた。従来は、このことは、第4級アミンの化学的性質を備える媒体を含むクロマトグラフィカラムの使用を通じて行われてきた。この方法は、関心対象の製品のより高い収率などのいくつかの利点を有する。しかし、この方法は、いくつかの欠点を有する。一例として、カラムの使用は、カラム構成要素の能力をあまり十分に利用しない結果となり、通常1%未満である。また、処理は時間を消費し、主に流れがクロマトグラフィ媒体に面しているのに必要な長い滞留時間のため、完了するのにしばしば数時間かかる。最後に、媒体、追加の緩衝溶液のコストは、品質管理およびその使用に付随する検証コストとともに、この用途のためにクロマトグラフィカラムを使用することの経済性にかなり影響を与える。
【0006】
上記の問題点を克服するために、クロマトグラフィ媒体の代わりに膜ベースの吸着器を使用する可能性が、述べられてきた。しかし、現在の装置は、克服する必要があるそれ自体の問題点を有する。これらの装置の問題点は、これらが効率的ではなく、そのため作製および操作するのに費用がかかるということである。単に層を追加することだけでは効率は増加しない。その代わりに、装置の製造およびその操作の費用を単に追加するに過ぎない。効率を改善するために、クロマトグラフィカラムで従来使用されているものと同様のテーパ付きエンドプレートおよびスクリーンなどの様々な流れ分配装置が試されてきた。しかし、全体的な結果は満足のいくものではなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
効率的であり、その能力を使用し、高い処理量を有し、好ましくは、再使用前の装置の清浄化および再確認の必要性を除去するように使い捨て可能である、膜吸着装置が必要である。本発明は、特に微量汚染物質除去のためのこのような膜および装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、吸着膜、および1つまたは複数のこのような膜を含む装置である。膜および装置の両方は、少なくとも100のペクレ数(Pe)を有する。膜および装置は、たとえば生物薬学産業で存在するような蛋白質を含む流れの中の微量汚染物質を除去するように構成されている。好ましい膜は、密な孔径分布と、(捕捉機構が配位子ベースであるか否かにかかわらず)一様な捕捉機構の密度および容量と、高い処理量の分離を可能にする高い透過性を有する。
【0009】
本発明の装置は、プリーツフィルタ、接線流フィルタ、またはらせん状に巻かれたフィルタなどの平膜を含むことができる。好ましくは、装置は、1つまた複数の層の膜が、ディスクの2つの大きな表面のそれぞれに対して密封される、積層ディスク構成で形成される。このような装置の1つは、一連のディスクで形成され、それぞれのディスクは、ディスクの2つの大きな表面のそれぞれに対して密封されている8つの層の膜を有する。これらのディスクは、一方の端部に入口を、他方の端部に出口を有する密封されたカプセル内に配置されている。ディスクは、出口から出るすべての流体が、ディスクの片側の膜を最初に通過させることによって出るように密封されている。このような装置は線形に拡大縮小可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
供給流内の微量汚染物質のレベルは、様々であり得るが、通常は低く、ほぼ百万分率(ppm)の範囲またはそれ未満であり、望まれているのは、ウイルス、内毒素、DNA、宿主細胞蛋白質などの汚染物質を、検知できないレベルまで除去することである。たとえば、通常の供給流中には、1から10ppmのウイルスレベル、100ピコグラム/mLのDNA、10EU(内毒素単位)/mLの内毒素、および約10から約100ナノグラム/mLの宿主細胞蛋白質がある。これらの汚染物質を効果的、効率的に除去することは困難な作業である。
【0011】
効率的な膜ベースの吸着装置を、それぞれが少なくとも100のペクレ数(Pe)を有する膜および装置構成の使用によって、蛋白質精製での使用のために作製できることが見出された。膜および装置が両方とも、100以上のPeを有するとき、高い保持率および効率が、良好な流れおよび収率特性と共に達成される。また、使用者にとって非常に有用である線形に拡張可能である装置を作製することができる。
【0012】
ペクレ数(Pe)は、ペクレ解析から導かれ、汚染物質に対する破過曲線の生成に関連している。基本的に、試験材料(すなわち微量汚染物質を代表するもの)が、選択された吸着性の膜または装置を通って流され、濾液中の試験材料の量が測定される。X軸上に容積、Y軸上に破過%で、値がグラフ上にプロットされる。10未満のものなどの低いPe値に対しては、試験材料の破過は、膜装置の能力のかなり下でほぼ直ちに出現し、すなわち不十分な効率を示す。100を超える、および好ましくは1000を超えるものなどの高いPe値に対しては、破過曲線は、理想値に近づき始め、破過は、装置の能力、すなわち高い効率に対応する。
【0013】
図1は、上記で説明したPe値の理論上のプロットを示している。理想のプロットは垂直な線である。曲線が垂直に近いほど、Pe値はより高くなる。
【0014】
確証された生物薬剤学的な用途での微量汚染物質の除去などの、吸着性の用途に対しては、いかなる感知可能なレベルでの濾液の汚染も許されないため、破過は重要な問題である。Pe値は、膜およびそれを含む装置の吸着性能の重要な予測変数であることが見出された。
【0015】
また、ウイルス除去では、Pe値は、膜および装置のLRVと相関関係がある。LRVは、対数減少値を意味しており、2つの数の比によって表される。ウイルスの用途では、これは、濾液中に見出されるウイルス粒子の数に対するフィルタの上流側に含まれるウイルス粒子の数によって表される。したがって、4のLRVは、膜が、10の粒子で攻撃され(challenged)、1つのみが濾液中で見出されたことを意味している。この比の対数は4である。このことは、膜が、すべてのウイルス粒子の99.99%を除去することが可能であることを意味している。
【0016】
イオン交換能力は、すべての装置が、除去される汚染物質の量に対して過度の能力を有するため、微量汚染物質の除去のための吸着装置での満足できる性能の予測変数ではない。問題は、しばしばppmの範囲で存在する汚染物質を、効率的に、かつできる限り完全に除去することを確実にすることである。
【0017】
(全膜領域を効果的に攻撃するために十分な流体分布を与えながら、上流側および下流側の死容積を最小化するように最適に構成された装置内に収容されている)膜のペクレ数、または1つまたは複数の膜を含む装置のペクレ数を決定するために、出願人が使用する方法は、以下の通りである。
【0018】
(1)膜または膜吸着装置を、知られているpHおよび導電率で平衡緩衝液で平衡化させること。
【0019】
(2)膜または膜吸着装置を、平衡緩衝液内で知られている濃度の特定の溶質で攻撃すること。特定の溶質の選択は、通常、その特定の機構によっての吸着器と結合の可能性(または不可能性)、およびその下流側での容易な検知の可能性に基づく(UV検知のための様々な発色団、蛍光的にラベル付けされた溶質など)。攻撃溶質の濃度の選択は、通常、溶質吸着に関連する熱力学原理(吸着等温特性)および試験の特定の目的の両方に基づく。たとえば、試験の目的が、特定の膜吸着装置の性能を特徴付けることである場合、緩衝液および溶質の状態および濃度を、溶質の膜吸着器との結合特性が溶質の吸着等温線の線形部分内にあるように選択することになる。しかし、試験の目的が、膜のみを通る流れの特性を特徴付けることである場合(それによって、上流側の死容積の影響を最小化する)、通常、緩衝液および溶質の状態および濃度を、溶質の膜吸着器との結合特性が、溶質の吸着等温線の非線形部分内にあるように選択することになる。
【0020】
(3)適切な検知器を使用して、時間、攻撃容積、またはその他の膜吸着器に攻撃される材料の全体量に関連する適切な変数に応じて、膜吸着器の下流側の溶質の破過を監視すること。
【0021】
(4)膜吸着装置の直接関連がある流れ特性を決定するために、溶質破過曲線を解析すること。この解析は、以下を含むことができる。
【0022】
(a)破過曲線の鋭さを計算すること。破過曲線の鋭さを計算するための手段の1つは、有効ペクレ数(Pe)を計算することによる。その詳細は以下で説明する。高いPe値は、膜吸着器を通る一様な流れ、捕集機構の一様な密度および分布、および膜吸着器の表面全体への効率的な流れの分布に関連している。高いPe値を有する装置は、良好な微量不純物の保持特性を有する傾向がある。低いPe値は、膜吸着装置に関連する不十分な流れ分布特性、膜吸着器の過度に大きな流れ分散特性、不十分な捕集機構の分布および/または密度、またはこれらのうちの2つ以上の組合せに関連している。低いPe値は、微量不純物の保持特性が弱められたことを示す。
【0023】
(b)溶質破過の最初の開始か、溶質破過の特定の一部分(たとえば5%または10%)のいずれかで、時間(またはその他の膜吸着器に攻撃される材料の全体量に関する適切な変数)を監視すること。ある標準値(たとえば50%破過)と比較した溶質の早すぎる破過は、微量不純物の保持特性を弱くすることがある欠陥の存在を示す。早すぎる破過を検知する能力は、上記ステップ(a)で計算した破過曲線の鋭さに大いに依存する。たとえば、極めて鋭い破過曲線を呈する膜吸着装置での欠陥の検知は、破過曲線が極めて広がった装置よりもずっと容易である。破過曲線の鋭さは、高いPe数を本質的に有する膜を使用し、低い死容積および良好な流れ分布特性を有する膜吸着器を構成することによって、非線形な吸着の熱力学特性を利用することによって、または上記のいずれかの組合せによって強められる。
【0024】
(c)破過曲線の鋭さと、溶質の破過の最初の開始の両方を計算すること(ステップ(a)および(b)の組合せ)。このようにして、微量不純物の保持特性を弱くすることがある欠陥および/または流れ分布特性(膜または装置のいずれかに関連する)を、検知することができる。
【0025】
(5)ステップ(4)で計算された結果を、知られている一体型装置による結果と比較し、それによって、膜吸着器または膜吸着装置の完全性、またはこのような装置の微量不純物を除去する能力のいずれかを決定すること。
【0026】
上記で述べたように、破過曲線の鋭さを決定するこのような手段の1つは、有効ペクレ数(Pe)を計算することによる。破過曲線は、通常S字型の形状である(S字型)。LapidusおよびAmundson(Lapidus,L. and N.R.Amundson,“Mathematics of adsorption in beds.VI. The effect of longitudinal diffusion in ion-exchange and chromatographic columns”,J.Phys.Chem.,56, 984 (1952))は、破過曲線の鋭さに関する数学的モデルを、様々なモデルパラメータに対して開発した。これは以下で示される。
【数1】

【0027】
ここで、
は、廃液溶質濃度である。
は、入口溶質濃度である。
Vは、攻撃容積である。
barは、50%破過(C/C=0.5)での攻撃容積である。
Peは、ペクレ数である。
【0028】
技術的な観点から見ると、この等式は、線形システムに対して導かれた。しかし、いかなる破過曲線を説明するためにもこの形の等式を使用することができる。したがって、この等式を、実験的に決定された破過曲線に単にフィッティングすることによって、有効Peを決定することができる。破過曲線データをこの等式にフィッティングさせるための様々な手段は、(a)すべてのデータを同時に使用して最良のフィッティング(最小二乗誤差を最小化するもの)を決定する最小二乗フィット、(b)離散した複数の点(2または3)が使用されるマルチポイント法、または(c)他のいくつかの方法のいずれかを含む。方法(b)の例は、Pe対
【数2】

の総括的なプロットを作製するために等式(1)を使用することである。ここで、V10、V50、およびV90は、それぞれ10、50、および90%溶質破過に対応する破過容積である。その後、実験破過曲線から、V10、V50、およびV90の値を決定する。その後、総括的なPeプロットから、有効Pe数を決定する。しかし、これは、破過曲線の鋭さを定量化することができる1つの手段に過ぎないことに留意されたい。
【0029】
上記のプロセスは、膜または装置のPeを得るための好ましい手段であるが、破過曲線の鋭さを定量化し、それによって同じタイプの関連する情報を提供する他の方法を開発することもできる。本発明は、これらの方法を本発明の教示の中に包含されかつ含まれることを意味している。
【0030】
本装置の膜は、所望の汚染物質除去レベルを達成するのに十分に高いペクレ数を有さなければならない。通常、膜自体は、約100から10,000を超えるまでのPeを有する。好ましくは、Peは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、さらに好ましくは少なくとも500または少なくとも1000、および最も好ましくは少なくとも10,000またはそれ以上である。
【0031】
装置のPeは、通常、膜のPe以下であることが見い出されている。現在まで、膜のPeよりも高いPeを有することが可能である装置は見い出されていない。不十分な流れ分布、膜を装置内に組み込む方法(プリーツ化、積層ディスク、その他の方法)、および類似のものなどの様々な装置特性が、装置のPe数に不利な影響を与え得る。したがって、所望の装置Peよりも高いPeを有する膜の使用が推奨される。
【0032】
膜は、超高分子量ポリエチレンを含むポリエチレン、ポリプロピレン、EVAコポリマーおよびアルファオレフィン、メタロセンオレフィン系ポリマーなどオレフィン、PFA、MFA、PTFE、ポリカーボネート、PVCなどビニルコポリマー、ナイロンなどポリアミド、ポリエステル、セルロース、セルロースアセテート、再生セルロース、セルロース複合材料、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリルサルホン、ポリフェニルサルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、およびそれらの混合物から選択された、ポリマーで形成された微孔質またはマクロ孔質の膜とすることができる。また、デラウェア州ウィルミントンのE.I.DuPont de Nemours and Companyから市販されている、Tyvek(登録商標)ペーパーなどの同じ材料の不織布および織布、セルロースパッド、マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore Corporationから市販されているMILLISTAK+(商標)濾過媒体などの類似の繊維媒体を使用することができる。選択される膜は、Pe、所望の濾過特性、濾過される粒子のタイプおよびサイズ、および所望の流れに応じる。
【0033】
選択される膜は、所望の液体流から1つまたは複数の種を吸着することが可能でなければならない。再生セルロース膜などの膜は、本質的に機能性であり、したがってさらなる処理は必要ない。しかし、大部分の場合、選択される膜は、機能化されていないか、または不十分に機能化されているかのいずれかであり、したがって膜を追加処理することが必要である。膜を機能的にするいくつかの良く知られている方法がある。“Membrane Chromatography: Preparation and Applications to Protein Separation”,Zeng,X.Biotechnol.Prog 1999,vol 15,p.1003-1019参照。機能上の特徴は、親水性、疎水性、帯電性(正または負)、親油性、疎油性、および配位子の化学的性質のうちの1つまたは複数であることができる。
【0034】
膜材料を機能的にする最も一般的な方法は、形成中に膜構造内に機能的な材料を組み込むこと、機能化する材料で膜の表面を処理すること、および機能的な材料を表面上に、グラフト化または重合および架橋させること、および膜表面と結合した配位子を使用することを含む。
【0035】
形成中に膜構造内にイオン交換樹脂またはクロマトグラフィ媒体などの固体様材料を追加することができる。米国特許第5,531,899号参照。別法として、所望の機能性を提供するために、膜を作製するために使用されるバッチ材料内にPVPなどの液体の成分を追加することができる。
【0036】
好ましくは、事前成形された膜の表面処理を使用する。表面は、膜のすべての表面、上面および下面、ならびに膜構造内の孔の内壁を意味している。これは、米国特許第4,944,879号で教示されているように適切な位置で重合および架橋されたモノマーであってもよく、または、米国特許第5,629,084号および米国特許第5,814,372号で教示されているようなポリマーであってもよい。米国特許第5,137,633号は、2つの成分、親性のためのモノマー、および膜に正の帯電性を追加するエピクロロヒドリンを追加すること教示している。
【0037】
別法として、米国特許第4,340,482号で教示されているように、膜表面上でポリマーをグラフト化することもできるが、これは、厳しい処理条件を強いられること、およびこのような条件下で生じる膜構造の劣下のために好ましくはない。
【0038】
処理された上記の膜は、そのままで使用されてもよい、または必要に応じて、第4級アミンなどの配位子を、異なるまたは増加した選択性を与えるために、その表面に結合させることができる。通常、この膜表面は、最初に、親水性を与えるために処理され、次に、配位子がリンカーアームを介して膜表面に付着される。米国特許第4,923,901号、米国特許第5,547,760号、米国特許第5,618,433号、および米国特許第5,980,987号参照。
【0039】
上記の方法のいずれか、ならびに吸着する膜を結果として生じるその他の方法を、本発明で使用することができる。
【0040】
所要のPeおよび所望の能力を提供するのに十分な膜が装置内にあるべきである。装置の構成に応じて、このことは通常、装置内の1つ以上の層の膜を意味する。所与の装置構成で所望のPeを達成するために必要な最少数の膜層があることが見出された。必要な数は、選択される膜および装置構成に応じる。通常、2層から4層が、所望のPeを与えるのに十分であることが見い出されている。例3に示すような本発明の好ましい実施形態では、1つの層が十分に高いPe数を提供し、3つの層が、選択された膜で得ることができる最大のPeを提供した。その後、所望の能力を提供するためにさらなる層を追加することができる。
【0041】
また、特定の汚染物質に対して最も効果的な膜を選択することによって、さらに大きな効果を達成するために2つ以上の異なる層を使用することができる。
【0042】
本発明に有用な市販製品は、マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore Corporationから市販されているDurapore(登録商標)膜として知られている、公称孔径0.65ミクロンの膜を含む。この膜は、親性を与え、正の電荷を担持するように改良されている。この膜は、8層構成で以下で説明するペクレ試験で試験したとき、少なくとも2000、好ましくは4000のPeを有する。本発明で有用な他の膜は、マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore Corporationから市販されているCHEMPURE1膜、およびミネソタ州ミネアポリスの3Mから市販されているEMPOR膜を含む。これらは両方、膜構造に粒子状クロマトグラフィ媒体を組み込んだ膜である。また、マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore Corporationから市販されている帯電PLシリーズの膜、マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore Corporationから市販されているICDM膜、ニューヨーク州イーストヒルズのPall Corporationから市販されているMustang膜、およびドイツのSartorius株式会社から市販されているSartobind膜などの再生セルロース膜である。
【0043】
本発明に適した装置を構成する際、いくつかの要因が、装置の成功および高いPe値の達成に寄与することがわかった。第1に、膜は、本明細書で規定されるPe試験で少なくとも100のPeを有さなければならない。第2に、選択される膜は、比較的に本質的に狭い孔径の分布を有するべきである。このことは、所与のタイプの膜に対して達成可能である最大のPe数を達成することを可能にする。また、このことは、分離を行うために必要とされる層の最小数を決定する。さらに、膜は、膜全体を通してできる限り均等な捕集部位の密度を有するべきである。Peは、膜内の不十分なまたは一様でない捕集機構分布(たとえば不十分な配位子分布)によって、不利な影響を受けることがあると考えられている。
【0044】
また、できる限り均等で一様な流れを維持するために、上流側の死容積および混合ゾーンを最小化する装置構成を選択するように努めるべきである。最後に、様々な流路の滞留時間分布を最小化し、それによって、流れを最大にし、装置内のある点から別の点への流れをできる限り一様に保つように、上流側および下流側の流路を構成すべきである。
【0045】
本発明の適切に構成された装置の追加の利点は、装置が線形に拡大縮小可能であることである。「線形に拡大縮小可能であること」は、研究、パイロット、および生産の拡大縮小プロセスに有用であるサイズの所与のPeを有する装置を構成すること、および装置のすべての性能を、使用されるプロセスのサイズにかかわらず本質的に同一にすることが可能であることを意味している。たとえば、このことは、小規模の装置で行われる作業が、追加の面積および体積を有する同一の装置構成を選択し、かつ使用することを可能にし、パイロットおよび生産スケールでのPeで作業させることを可能にすることを意味している。このことは、それぞれの規模で装置を再設計する必要性を除去し、そのプロセスを生産レベルにまで拡大しようとするとき、選択された装置がすべての使用のために作動する知識および安全性を提供することにおいて大きな利点である。このことは、拡大に必要なコストおよび時間を削減し、プロセスおよび装置の検証を単純化する。
【0046】
本発明の装置は、プリーツフィルタ、接線流フィルタ、またはらせん状に巻かれたフィルタなどの平膜を含むことができる。好ましくは、装置は、ディスク構成で、より好ましくは、1つまた複数の層の膜が、ディスクの2つの大きな表面のそれぞれに対して密封される積層ディスク構成で形成される。このような装置の1つは、一連のディスクで形成され、それぞれのディスクは、ディスクの2つの大きな表面のそれぞれに対して密封されている2つ以上、好ましくは8つの層の膜を有する。これらのディスクは、一方の端部に入口を、他方の端部に出口を有する密封されたカプセル内に配置されている。ディスクは、出口から出るすべての流体が、ディスクの片側の膜を最初に通過させることによって出るように密封されている。ディスクの配置は、一様で平行な流体分布、および混合または死容積のほとんどない比較的低い圧力降下での流れを提供する膜の平行な配置を提供する。
【0047】
図2は、本発明の装置の第1の実施形態を示している。この装置は、マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore Corporationから市販されているMILLEX(登録商標)装置を基にした小規模の装置である。この装置は、入口12を有する上部部分10と、出口16および有孔の膜支持プラットホーム18を有する底部部分14とを備える。膜のパケット20が、すべての流体が、出口16に到達する前に膜パケット20を通過しなければならないように、上部部分12と底部部分14が互いに密封される前に底部部分14に対して密封される。選択された膜の能力および装置の所望の能力に応じて、パケット20内で2つ以上の層の膜を使用することができることが見出された。好ましい実施形態では、25mm直径のMILLEX(登録商標)装置が、3.5cmの前面面積および0.35mlの底容積(bed volume)を有する装置になるように、8層の0.65親水性帯電DURAPORE(登録商標)膜が載置された。
【0048】
パケットは、内縁および外縁の周囲を密封される。これは、ヒートシールを使用して達成されたが、エポキシおよびウレタン接着剤、振動溶接、ポリオレフィンオーバーモールドなどの他の方法を使用することもできる。必要に応じて、装置密封プロセスの一部としてではなく、装置内でパケットを別個に密封することができる。
【0049】
図3は、本発明で有用な積層ディスク装置の一部分を示している。これは、大規模(パイロットまたは生産)プロセスで使用される。図示した装置は、マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore Corporationから市販されているMILLIDISK(登録商標)を基にしている。この図3では、1連のディスク30は、その2つの主面のそれぞれに結合された1つまたは複数の吸着性の膜の層を有する。ディスク30は、互いに離隔され、スペーシングラグ32によって変形を防止するために、その外縁で互いに付着されている。ディスクはまた、図5に示す内側密封リム33によって互いに密封され、装置の出口プレート34に取り付けられている。この出口プレート34は、表面の中央の出口(図示せず)を有する比較的平坦な表面(図示せず)と、この場合その外表面上のOリングである密封部38を含む出口ネック36とから成る。出口ネック36は、装置の下側ハウジング部片40の装置出口38の内部表面に嵌合し、かつ内部表面を密封する。
【0050】
図4は、装置全体を拡大図で示している。図中ですでに説明した部品は、図3と同じ番号を有する。ディスク30に加えて、出口プレート34(装置出口38内に装着されて示されている)、本体41および上部ハウジング部片42がある。2つのベント/ドレイン44Aおよび44Bも示されている。装置入口が46として示されている。上部ハウジング部片42、本体41、および下部ハウジング部片40は、漏密なハウジングを形成するように、すべて互いに密封されている。金属の場合、セクションを互いに溶接することができる。好ましくは、これらはすべてプラスチック製であり、互いに溶剤接合、熱接合、または互いにプラスチック溶接されている。ハウジングは3つの部片で示されているが、その成形型の構成に応じて、それ以上またはそれ以下の部片で容易に作製することができる。
【0051】
図5は、図4の実施形態で使用されているディスク50を示している。内側リム52が、ディスクの出口として作用する中央開口54、および図3に関連して議論した内側密封リム33と隣接して形成されている。外側リム56および内側リム52は、膜のための密封点として作用する平坦な領域57および58を有する。また、膜を支持し、膜間の通路として働く役割をする一連の半径方向リブ60および同心リブ62と、膜を通過した流体のための開口54とが示されている。また、図3に関連して議論したラグ32も示されている。
【0052】
図6は、流体流路を有する図4の装置の部分横断面を示している。流体は、入口(図示せず)を通ってディスク50の外側へ供給される。流体は、ディスク50の両側で密封された膜64に入る。流体は、リブ60および62によって形成された通路に沿って、中央開口54に隣接する流体窓66まで通過し、そこから出口38を通って装置から出る。
【0053】
図7は、図4の装置の1枚のディスクを通る流路のさらに詳細な横断面を示している。流体窓66をより明確に見ることができ、流体が遮られずに中央開口54へ流れることを可能にしている。
【0054】
好ましい実施形態では、3.25インチ(82.55mm)直径のMILLIDISK(登録商標)装置が、6枚のディスクを有し、それぞれが、各ディスクの両側に8層の0.65親水性帯電DURAPORE(登録商標)膜を載置され、0.045mの前面面積と0.045Lの底容積を有する装置にされている。
【0055】
別の実施形態では、3.25インチ(82.55mm)直径のMILLIDISK(登録商標)装置が、60枚のディスクを有し、それぞれが、各ディスクの両側に8層の0.65親水性帯電DURAPORE(登録商標)膜を載置され、0.45mの前面面積と0.45Lの底容積を有する装置にされている。
【0056】
本発明で有用である他の形式の装置は、プリーツ状平膜カートリッジ、特に2つ以上の層の膜を有するものと、米国特許第5,147,542号、米国特許第5,176,828号、米国特許第5,824,217号、および米国特許第5,922,200号に示されているような、PROSTAK(登録商標)、Pellicon(登録商標)、PelliconII(登録商標)、PelliconXL(登録商標)カセットとして、マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore Corporationから市販されている接線流カセットと、米国特許第5,128,037号で教示されて、マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore CorporationからHELICON(登録商標)カートリッジとして市販されているものなどのらせん状にまかれたカートリッジとを含む。
【0057】
エンドキャップ、入口、出口、ハウジング、ディスクなどの装置の構成部品は、金属、セラミック、ガラス、またはプラスチックなどの様々な材料から作製することができる。好ましくは、構成部品は、比較的低コストおよび良好な化学的安定性のため、ステンレス鋼、特に316ステンレス鋼またはアルミニウムなどの金属、または、より好ましくは、ポリオレフィン、特にポリエチレンおよびポリプロピレン、ホモポリマーまたはコポリマー、およびエチレンビニルアセテート(EVA)コポリマー、ポリカーボネート、スチレン、PTFE樹脂、PFAなどの熱可塑性のペルフルオル化されたポリマー、PVDF、ナイロンおよびその他のポリアミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、および上記のいずれかの混合物などのプラスチックで形成される。
【0058】
膜、および/または1つまたは複数の膜を含む装置の完全性を決定するための方法も、本発明の一部であり、それは以下のようである。
【0059】
膜または装置が、吸着する溶質で攻撃される。攻撃緩衝液および溶質の濃度は、溶質の膜との結合が、ラングミュア吸着式に従い、溶質濃度が、吸着等温線の非線形部分にあるのに十分であるように選択される。等温線の非線形部分で動作するための理由は、好ましい吸着熱力学が、溶質の破過の鋭さを強調するからである(試験の感受性を向上させるために、破過はできる限り鋭いことが重要である)。試験の出力は、所定の低い破過レベル(通常10%未満、好ましくは約1から約5%)での破過時間と、破過フロントの広さ(通常、50%破過に対する、5%破過から95%破過までの時間によって測定される)である。この試験は、本明細書で説明したような8層積層ディスク装置の1層での欠陥を検知することが可能である。一体型の膜および装置については、低いレベルの破過は、極めて鋭い。欠陥が存在するとき、早すぎる破過が生じ、それによって低いレベルの破過時間が減少し、いくつかの例では、破過フロントの広さに不利な影響を与える。データをプロットすることによって、欠陥が存在するかを見つけることができる。
【0060】
図8は、本発明の膜を有する上記で説明した8層積層ディスク構成を使用して、本完全性試験によって得られたプロットの例を示している。攻撃溶液は、pH8.0での2.5mMトリス緩衝液中の50マイクログラム/mlのトシルグルタミン酸から成る。曲線100は、一体型膜の破過曲線を示している。鋭い、連続した溶質破過が、約160秒の開始時間で生じていることに留意されたい。曲線102は、最上部の膜層に意図的に誘発された欠陥を有する8層の装置を示している。102で見られるように、トシルグルタミン酸の早すぎる破過が観察され、約120秒の破過時間で生じている。この早すぎる破過は、膜吸着器内のある流路のイオン交換能力が、他の流路よりも早く使い果たされる(すなわち、7つの膜層しか横切らない流路対8つの膜層すべてを横切る流路)ために生じる。吸着床の残りの部分は、160秒の時間枠内で使い果たされる。小さな欠陥の存在を検知するための感受性は、以下のことによって強化することができることに留意されたい。
【0061】
(a)より一様な流れ特性を有する膜(高いPe数を有する膜)を用いること、これは、たとえばDurapore膜のような極めて狭い孔径分布の膜を使用することによって得ることができる。膜が、破過曲線調査を達成できる最大の鋭さを本質的に決定するため、これは好ましい方法である。以下で説明する方法は、膜吸着器が装置内に配置されたとき生じる、観測可能な破過曲線の鋭さの減少を最小化することしかできない。
【0062】
(b)溶質の吸着が、さらに、吸着等温線(ラングミュア動力学を振舞う吸着等温線に対して)の非線形部分にあるように、溶質攻撃条件を変更すること(すなわち、溶質濃度を増加させること)。
【0063】
(c)溶質および検知システムを、より低い溶質濃度をより容易に検知できるように変更すること。
【0064】
(d)より良好な流れ分布特性を有するように装置を構成すること。
【0065】
[例]
[例1]
トシルグルタミン酸の破過曲線が、3つの異なる膜吸着器、8層の正帯電された0.65μm Durapore膜(発明と記載)と、2つの他の市販されている膜吸着器(60層の膜を含む膜Xと、3層の膜を含む膜Yと記載)とで作製された3.5cm装置で測定された。すべての膜吸着器が、良好な流れ分布特性を有するように構成されたハウジング内で試験された。装置は、最初に、装置を完全に濡らして、結果に負の影響を与えるあらゆる潜在する溜まった空気も除去するためにDI水を勢いよく流された。次に、膜吸着器が、pH8.0、約20mLの2.5mMトリス緩衝液を勢いよく流された。緩衝液の平衡化後、膜吸着器は、次に、pH8.0、2.5mMトリス中の50μg/mlの濃度のトシルグルタミン酸を攻撃された。結果として得られた破過曲線が、図9に示されている。図で見られるように、本発明の膜吸着器は、約4000のPe数(上記の等式(1)で測定したように)で、極めて鋭い破過を示した。膜Xおよび膜Yは、それぞれ100および20程度の測定Pe数で、ずっと広がった破過を示した。これらのデータは、Durapore膜に固有の流れ特性が、他の試験された膜吸着器よりもずっと良好であることを示している。このことは2つの重要な意味を有する。第1に、微量不純物の除去が、Durapore膜吸着器によってより活発になることが予想される。実際、ウイルス除去データ(例2で示される)は、この膜吸着器が、1秒未満の滞留時間で5LRVを超えるウイルスを除去することが可能であることを示している。第2に、微量不純物の保持に負の影響を与える可能性がある欠陥の存在は、Durapore膜吸着器で検知するのがかなり容易である。Durapore膜吸着器は、完全性試験をより容易に行うことができ、ウイルス検証実験にかなり役立つ。
【0066】
[例2]
8層の正に帯電された0.65μm Durapore膜で作製されている4つの異なる3.5cm膜吸着器が、φX−174、28nm直径バクテリオファージで攻撃された。実験結果(図示せず)は、バクテリオファージが、微量レベルの哺乳類ウイルスを除去するための膜吸着器の能力を理解するための優れたマーカーであることを示している。装置は、最初に、装置を完全に濡らして、結果に負の影響を与えるあらゆる潜在する溜まった空気も除去するためにDI水を勢いよく流された。次に、膜吸着器が、pH8.0、約20mLの25mMトリス緩衝液を勢いよく流された。緩衝液の平衡化後、膜吸着器は次に、pH8.0、25mMトリス中の300mLの1.5×10pfu/mL φX−174を攻撃された。4つの装置はそれぞれ、異なる流速で攻撃された(10、20、40、または60mL/分のいずれか)。バクテリオファージで攻撃した後、供給部および廃液だめのサンプルについて、バクテリオファージ濃度が検査された。最後に、バクテリオファージLRV値が、log10(供給部濃度/廃液濃度)として計算された。バクテリオファージLRVが、図10に、攻撃線形速度の関数としてプロットされた。図に見られるように、ウイルス除去は、常に5LRVよりも大きい。この結果は、本質的に流速と無関係である。60mL/分の流速(約1050cm/時の線形速度)で、膜吸着器内での溶液の滞留時間は、0.35秒程度のであることに留意されたい。これらのデータは、ウイルス除去に負の影響を与える可能性がある最小の質量移動および動力学的限界が存在することを示している。これらのデータはまた、この特定の膜の固有の分布特性が極めて良好であることを示している。
【0067】
[例3]
トシルグルタミン酸破過曲線が、様々な層数の正に帯電された0.65μm Durapore膜(1、3、5、7および8層)から成る、5つの異なる膜吸着器で測定された。膜吸着器は、最初に、装置を完全に濡らして、結果に負の影響を与えるあらゆる潜在する溜まった空気も除去するためにDI水を勢いよく流された。次に、膜吸着器は、pH8.0、約20mLの2.5mMトリス緩衝液を勢いよく流された。緩衝液の平衡化後、膜吸着器は、次に、pH8.0、2.5mMトリス中の50μg/mlの濃度のトシルグルタミン酸で攻撃された。膜吸着器のPe数が、(上記で説明したように)10%、50%、および90%破過時間に基づいて計算された。データを以下に表にした。添付の表に見られるように、測定Pe数のすべてが極めて高く、この膜吸着器の極めて良好な流れ分布特性を示している。このことは、1層の装置のPe数が500よりも大きいという事実でさらに強調されている。これらのデータに基づいて、この膜が、微量不純物除去用の膜吸着器として使用するための理想的な候補となることが期待される。
【表1】

【0068】
[例4]
異なる層数の正に帯電された0.65μm Durapore膜の膜層で作製されている7つの異なる3.5cm膜吸着器が、φX−174、28nm直径バクテリオファージで攻撃された。装置は、最初に、装置を完全に濡らして、結果に負の影響を与えるあらゆる潜在する溜まった空気も除去するためにDI水を勢いよく流された。次に、膜吸着器が、pH8.0、約20mLの25mMトリス緩衝液を勢いよく流された。緩衝液の平衡化後、膜吸着器は、次に、流速20mL/分で、pH8.0、25mMトリス中の300mLの1.5×10pfu/mL φX−174で攻撃された。バクテリオファージで攻撃された後、供給部および廃液だめのサンプルについて、バクテリオファージ濃度が検査された。最後に、バクテリオファージLRV値が、log10(供給部濃度/廃液濃度)として計算された。バクテリオファージLRVが、図11に、膜吸着層数の関数としてプロットされた。図に見られるように、3膜層よりも多い膜層を含む装置については、ウイルス除去は、常に5LRVよりも大きい。この結果は、高い膜Re数によるものであろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】一連のPe値のグラフを示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による本発明の装置の切断図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による本発明の装置の一部分の分解図である。
【図4】本発明の第2の実施形態による本発明の装置の分解図である。
【図5】本発明の実施形態の1つで有用なディスクの平面図である。
【図6】図3の実施形態による装置、および該装置を通る流体流路の代表的な断面図である。
【図7】図3の実施形態による装置および図6の装置を通る流体流路の代表的な断面詳細図である。
【図8】一体型の膜パケット、および弱められた1つの層を有する膜パケットによって得られたPe値を示す図である。
【図9】現在市販されている吸着膜に対するPeデータのグラフである。
【図10】線形攻撃速度の関数としてプロットされたバクテリオファージLRVを示す図である。
【図11】膜吸着層の数の関数としてプロットされたバクテリオファージLRVを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口および出口を有するハウジングと、1つまたは複数の層の吸着膜とを備える膜吸着装置であって、少なくとも100のペクレ数(Pe)を有する装置。
【請求項2】
前記Peが少なくとも150である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記Peが少なくとも200である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記Peが少なくとも500である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記Peが少なくとも2000である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記Peが約100から約4000である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記1つまた複数の層の膜が、1つまたは複数の有孔ディスク上に形成され、前記膜の内縁および外縁が前記有孔ディスクに対して密封され、濾過された液体が流れることができる前記膜と前記ディスクとの間の空間と、前記濾過された液体のためのディスクからの出口とを形成している、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記1つまたは複数の膜が少なくとも100のPeを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記1つまたは複数の膜が少なくとも200のPeを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記1つまたは複数の膜が少なくとも500のPeを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記1つまたは複数の膜が少なくとも1000のPeを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記1つまたは複数の膜が約100から約4000までの範囲のPeを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記入口と前記1つまた複数の層の膜との間に配置された流れ分配器をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
膜および装置がそれぞれ少なくとも100のPeを有する、膜ベースの吸着装置を選択するステップと、あらゆる微量汚染物質も除去するために前記装置の前記膜を通って水溶性蛋白質を含む流れを流すステップと含む、水溶性蛋白質を含む流れから微量汚染物質を除去するためのプロセス。
【請求項15】
前記微量汚染物質が、ウイルス、内毒素、DNA、RNA、およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
(a)膜または膜吸着装置を、知られているpHおよび導電率で平衡緩衝液で平衡化させるステップと、(b)前記膜を、平衡緩衝液中で知られている濃度の特定の溶質で攻撃するステップと、(c)時間、攻撃容積、およびその他の膜へ攻撃される材料の全体量に関連する適切な変数から成る群から選択される値に応じて、前記膜の下流側の溶質の破過を監視するステップと、(d)前記膜吸着装置に直接関連がある流れ特性を決定するために、溶質破過曲線を解析するステップと、(e)ステップ(d)で計算された結果を、知られている一体型装置による結果と比較するステップとを含む、膜吸着器のペクレ数を決定するためのプロセス。
【請求項17】
前記(d)の解析が、破過曲線の鋭さを計算することによる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ステップ(c)の監視が、検知器による、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記(d)の解析が、溶質破過の時間を監視することによる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ステップ(d)の解析が、溶質破過の最初の開始と溶質破過の一部分から成る群から選択されたある時点で、膜吸着器へ攻撃される材料の全体量に関する変数を監視することによる、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記ステップ(d)の解析が、溶質破過の特定の一部分で、膜吸着器へ攻撃される材料の全体量に関する変数を監視することによる、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記ステップ(d)の解析が、溶質破過の約5%から約50%である特定の一部分で、膜吸着器へ攻撃される材料の全体量に関する変数を監視することによる、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記ステップ(d)の解析が、溶質破過の約5%から約20%である特定の一部分で、膜吸着器へ攻撃される材料の全体量に関する変数を監視することによる、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記ステップ(d)の解析が、溶質破過の約5%から約10%である特定の一部分で、膜吸着器へ攻撃される材料の全体量に関する変数を監視することによる、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記ステップ(d)の解析が、破過曲線の鋭さと、溶質破過の最初の開始を計算することによる、請求項16に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−188595(P2008−188595A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−100002(P2008−100002)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【分割の表示】特願2003−542211(P2003−542211)の分割
【原出願日】平成14年10月31日(2002.10.31)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】