説明

膜材料及びその製造方法

【課題】製塩技術において濃縮効率を向上させるイオン交換膜用材料又は電解質膜用材料などの提供。イオン伝導度を向上させる一方、膜材料の一方の面に接触する媒体の膜材料透過を抑制したイオン伝導性膜材料及びその製法の提供。
【解決手段】細孔径が10nm〜10μm、好ましくは10nm〜1μm、より好ましくは10nm〜100nmである第1の連通細孔を有する多孔性基材;少なくとも2種の成分を有して成る相分離体であって、多孔性基材の第1の連通細孔内に配置される相分離体;及び少なくとも2種の成分のいずれか一方又は双方に設けられるイオン官能基;を有する膜材料により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜材料及びその製造方法に関する。特に、本発明は、イオン伝導性膜材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気透析法による製塩技術は、イオン交換膜の性能に大きく依存する。例えば、カチオン交換基をスルホン酸基からリン酸基へと変化させるなどの手法、導電性ポリマーとコンポジット化することにより1価イオンと2価イオンとの選択性を向上させるなどの手法を用いて、イオン交換膜の性能を向上させ、塩濃縮技術を向上させている(非特許文献1などを参照のこと)。
【非特許文献1】Toshikazu Sata et al., Journal of Membrane Science, 2002(206), 31-60。
【非特許文献2】Yoshio Oda et al., Bulletin of the Chemical Society of Japan, 1957(30), 213-218。
【非特許文献3】Russell B. Hodgdon, Jr. et al., Journal of Polymer Science: Part A, Vol. 3(1965), 1468-1472。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、本質的に製塩プロセスの効率を支配するイオン伝導度・塩濃縮効率を向上させるために、イオン交換膜中でのイオン交換基量を多くすると、膜が膨潤し、膜中含水率が高くなるため、イオンの移動に伴う電気浸透水流束も増加し、逆に濃縮効率が低下してしまう。このため、例えば、非特許文献2では、架橋密度を増加させることによって膨潤を抑制し、含水率を低く保たせることを行っている。また、非特許文献3では、電気浸透係数を低減させることが考えられた。実際、現行プロセスで使用されているイオン交換膜(電解質膜)は架橋法で膨潤の抑制を行っているが、抑制が十分でないため、濃縮効率の向上はこれ以上望めない現状にある。
【0004】
そこで、本発明の目的は、製塩技術において濃縮効率を向上させるイオン交換膜用材料又は電解質膜用材料を提供することにある。
また、本発明の目的は、製塩技術に留まらず、イオン伝導度を向上させると共に、膜材料の一方の面に接触する媒体の膜材料透過を抑制した膜材料を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、上記目的に加えて、上記膜材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、次の発明を見出した。
<1> 細孔径が10nm〜10μm、好ましくは10nm〜1μm、より好ましくは10nm〜100nmである第1の連通細孔を有する多孔性基材;
少なくとも2種の成分を有して成る相分離体であって、多孔性基材の第1の連通細孔内に配置される相分離体;及び
少なくとも2種の成分の少なくとも1種の成分に由来する部分に設けられるイオン官能基;を有する膜材料。
【0006】
<2> 上記<1>において、相分離体が第2の連通細孔を有するのがよい。第2の連通細孔の細孔径は、0.1〜100nm、好ましくは0.1〜50nm、より好ましくは0.1〜20nmであるのがよい。
<3> 上記<1>又は<2>において、膜材料は、イオン官能基に由来するイオンを、該膜材料の一方の表面から他方の表面へと伝導するイオン伝導性を有するのがよい。
<4> 上記<3>において、イオンが、H、Li、Na、K、Fe2+、Fe3+、Zn2+、Cu、Cu2+、Mn2+、Mn3+、Mn4+、Mn6+、及びCr3+からなる群から選ばれるカチオン;又はCl及びOHからなる群から選ばれるアニオンであるのがよい。カチオンは、好ましくはLi、Na、K、Fe2+、Fe3+、Zn2+、Cu、Cu2+、Mn2+、Mn3+、Mn4+、Mn6+、及びCr3+からなる群、より好ましくはLi、Na及びKからなる群から選ばれるのがよい。
<5> 上記<3>又は<4>において、膜材料は、一方の面に接触する媒体を他方の面へと透過させない透過抑制能を有するのがよい。
【0007】
<6> 細孔径が10nm〜10μmである第1の連通細孔を有する多孔性基材;
第1の連通細孔内に配置される充填体であって第2の連通細孔を有する充填体;及び
充填体の第2の連通細孔の細孔内に設けられるイオン官能基;を有する膜材料であって、
該膜材料は、該膜材料の一方の表面から他方の表面へとイオンを伝導するイオン伝導性を有し、
該イオン伝導性が、イオン官能基の存在により、伝導するイオンの並進運動に由来する、膜材料。
【0008】
<7> 上記<6>において、イオンが、H、Li、Na、K、Fe2+、Fe3+、Zn2+、Cu、Cu2+、Mn2+、Mn3+、Mn4+、Mn6+、及びCr3+からなる群から選ばれるカチオン;又はCl及びOHからなる群から選ばれるアニオンであるのがよい。カチオンは、好ましくはLi、Na、K、Fe2+、Fe3+、Zn2+、Cu、Cu2+、Mn2+、Mn3+、Mn4+、Mn6+、及びCr3+からなる群、より好ましくはLi、Na及びKからなる群から選ばれるのがよい。
<8> 上記<6>又は<7>において、膜材料は、一方の面に接触する媒体を他方の面へと透過させない透過抑制能を有するのがよい。
【0009】
<9> 第1の連通細孔を有する多孔性基材;前記多孔性基材の前記第1の連通細孔内に配置される相分離体であって、少なくとも2種の成分を有して成る相分離体;及び前記少なくとも2種の成分の少なくとも1種の成分に由来する部分に設けられるイオン官能基;を有する膜材料の製造方法であって、
a)第1の連通細孔を有する多孔性基材の該細孔内に、相分離体を形成する少なくとも1種の物質を充填する工程;
b)第1の連通細孔内に前記相分離体を形成する工程;
c) i) a)工程前に前記少なくとも2種の成分のうち少なくとも1種の成分にイオン官能基を導入するか、もしくはii) b)工程後に相分離体のうち前記少なくとも2種の成分の少なくとも1種の成分に由来する部分にイオン官能基を導入する工程;
を有する、上記方法。
【0010】
<10> 上記<9>において、b)工程の、少なくとも1種の物質がモノマー、オリゴマー及びポリマー、並びにこれらの等価物から成る群から選ばれるのがよい。
<11> 上記<9>において、a)工程が、a’)少なくとも2種の成分を前記第1の連通細孔内に充填する工程であり、前記b)工程が、b’)該少なくとも2種の成分を重合させ、第1の連通細孔内に前記相分離体を形成する工程であるのがよい。
【0011】
<12> 上記<9>において、膜材料は、イオン官能基に由来するイオンを、該膜材料の一方の表面から他方の表面へと伝導するイオン伝導性を有するのがよい。
<13> 上記<12>において、膜材料は、一方の面に接触する媒体を他方の面へと透過させない透過抑制能を有するのがよい。
【0012】
<14> 上記<9>〜<13>のいずれかにおいて、c)工程後、d)膜材料の一方の面から他方の面へのイオン伝導性を改良するイオン伝導改良工程をさらに有するのがよい。
<15> 上記<14>において、d)イオン伝導改良工程が、膜材料の一方の面から他方の面へと通電させる工程であるのがよい。
【0013】
<16> 上記<9>〜<15>のいずれかにおいて、b)工程中又は該b)工程後、e)相分離体に第2の連通細孔を設ける工程;をさらに有するのがよい。第2の連通細孔の細孔径が0.1〜100nm、好ましくは0.1〜50nm、より好ましくは0.1〜20nmであるのがよい。
<17> 上記<16>において、第2の連通細孔内にイオン官能基を設けるのがよい。
<18> 上記<9>〜<17>のいずれかにおいて、第1の連通細孔の細孔径が10nm〜10μm、好ましくは10nm〜1μm、より好ましくは10nm〜100nmであるのがよい。
【0014】
<18> 第1の連通細孔を有する多孔性基材;前記第1の連通細孔内に配置される充填体であって第2の連通細孔を有する充填体;及び前記充填体の前記第2の連通細孔の細孔内に設けられるイオン官能基;を有する膜材料であって、該膜材料は、該膜材料の一方の表面から他方の表面へとイオンを伝導するイオン伝導性を有し、該イオン伝導性が、前記イオン官能基の存在により、伝導するイオンの並進運動に由来する、膜材料の製造方法であって、
a”)第1の連通細孔を有する多孔性基材の該細孔内に、充填体を形成する少なくとも1種の物質を充填する工程;
b”)第2の連通細孔を有する充填体を形成する工程;
c”) i”) a”)工程前に前記少なくとも1種の物質にイオン官能基を導入するか、もしくはii”) b”)工程後に充填体の第2の連通細孔内にイオン官能基を導入する工程;
を有する、上記方法。
【0015】
<19> 上記<18>において、イオンが、H、Li、Na、K、Fe2+、Fe3+、Zn2+、Cu、Cu2+、Mn2+、Mn3+、Mn4+、Mn6+、及びCr3+からなる群から選ばれるカチオン;又はCl及びOHからなる群から選ばれるアニオンであるのがよい。カチオンは、好ましくはLi、Na、K、Fe2+、Fe3+、Zn2+、Cu、Cu2+、Mn2+、Mn3+、Mn4+、Mn6+、及びCr3+からなる群、より好ましくはLi、Na及びKからなる群から選ばれるのがよい。
<20> 上記<18>又は<19>において、膜材料は、一方の面に接触する媒体を他方の面へと透過させない透過抑制能を有するのがよい。
【0016】
<21> 上記<18>〜<20>のいずれかにおいて、c”)工程後、d)膜材料の一方の面から他方の面へのイオン伝導性を改良するイオン伝導改良工程をさらに有するのがよい。
<22> 上記<21>において、d)イオン伝導改良工程が、膜材料の一方の面から他方の面へと通電させる工程であるのがよい。
【0017】
<23> 上記<18>〜<22>のいずれかにおいて、第2の連通細孔の細孔径が0.1〜100nm、好ましくは0.1〜50nm、より好ましくは0.1〜20nmであるのがよい。
<24> 上記<18>〜<23>のいずれかにおいて、第1の連通細孔の細孔径が10nm〜10μm、好ましくは10nm〜1μm、より好ましくは10nm〜100nmであるのがよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、製塩技術において濃縮効率を向上させるイオン交換膜用材料又は電解質膜用材料を提供することができる。
また、本発明により、製塩技術に留まらず、イオン伝導度を向上させると共に、膜材料の一方の面に接触する媒体の膜材料透過を抑制した膜材料を提供することができる。
さらに、本発明により、上記効果に加えて、上記膜材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、膜材料及び該膜材料の製造方法を提供する。
まず、膜材料について述べ、その後、その製造方法について述べる。
【0020】
<膜材料>
本発明の第1の面は、第1の連通細孔を有する多孔性基材;少なくとも2種の成分を有して成る相分離体であって多孔性基材の第1の連通細孔内に配置される相分離体;及び少なくとも2種の成分の少なくともいずれか一方に由来する部分に設けられるイオン官能基;を有する膜材料を提供する。
また、本発明の第2の面として、第1の連通細孔を有する多孔性基材;第1の連通細孔内に配置される充填体であって第2の連通細孔を有する充填体;及び第2の連通細孔の細孔内に設けられるイオン官能基;を有する膜材料であって、該膜材料は、該膜材料の一方の表面から他方の表面へとイオンを伝導するイオン伝導性を有し、該イオン伝導性が、伝導するイオンの並進運動に由来する、膜材料を提供する。
以下、第1及び第2の面の膜材料を説明する。説明に際し、第1及び第2の面に共通する部分、及び共通しない部分は、その旨を記載する。
【0021】
<多孔性基材>
本発明の第1及び第2の面の膜材料に用いられる多孔性基材は、該膜材料を用いる環境、即ち膜材料と接触させる媒体に対して不活性であり、膨潤しない膨潤抑制能を有するものであれば、特に限定されない。
例えば、製塩技術において、多孔性基材は、各種の塩の水溶液、特に塩化ナトリウム水溶液に対して不活性であり、該水溶液によって膨潤しない特性を有するのがよい。
また、多孔性基材は、機械的強度を有するのがよい。
このように、多孔性基材が、膜材料と接触する媒体に対して不活性であり、該媒体に対して膨潤抑制能を有し、さらに機械的強度を有することにより、後述の相分離体又は充填体と相俟って、膜材料と接触する媒体の膜材料の透過性能を低下(透過抑制能を向上)させることができる。
【0022】
このような多孔性基材として、次のものを挙げることができるが、これらに限定されない。即ち、ポリエチレン多孔膜、ポリプロピレン多孔膜などポリオレフィン系多孔膜;ポリアミド系多孔膜;ポリイミド系多孔膜;及びポリカーボネート系多孔膜;などを挙げることができるが、これらに限定されない。なお、上記で挙げた多孔膜の具体例は例示列挙しないが、上記に含まれる従来公知の多孔膜を挙げることができる。
【0023】
多孔性基材は、第1の連通細孔を有する。ここで、「連通」とは、膜材料とした場合、一方の面から他方の面へと連通することを意味する。
第1の連通細孔の平均細孔径は、10nm〜10μm、好ましくは10nm〜1μm、より好ましくは10nm〜100nmであるのがよい。
【0024】
<相分離体>
本発明の第1の面の膜材料において、多孔性基材の第1の連通細孔内に相分離体が配置される。なお、本発明の第2の面の膜材料において、多孔性基材の第1の連通細孔内に充填体が配置されるが、該充填体は、相分離体であってもよい。
相分離体は、該膜材料を用いる環境、即ち膜材料と接触させる媒体に対して不活性であるのがよい。
相分離体は、いわゆる従来公知の「相分離」により得られる材料であり、少なくとも2種の成分を有して成る。少なくとも2種の成分は、該少なくとも2種の成分のうちの第1成分由来の第1の部分と第2成分由来の第2の部分とから、種々の構造(例えば海−島構造など)を採る。該第1の部分及び第2の部分(並びに、必要であるならば第nの部分(nは、相分離体形成のために用いる成分が3種以上の場合、3以上の整数を意味する)のうち、少なくとも1つの部分に、後述するように、イオン交換基を設ける。これにより、単に第1の連通細孔内にイオン交換基を設けるよりも、局所的なイオン交換基濃度を高めることができ、ひいては膜材料のイオン伝導性を向上させることができる。
【0025】
相分離体は、後に詳述するが、第1の成分、例えば第1のモノマー成分と、第2の成分、例えば第2のモノマー成分とを混合し、該混合物を第1の連通細孔内に充填し、その後、重合することによって、得ることができる。また、第1のモノマー成分と第2のモノマー成分との双方を有するモノマー(いわゆる2元モノマー)、該モノマーからなるオリゴマー、該モノマーからなるポリマーを第1の連通細孔内に充填し、その後、適宜処理することによって得ることもできる。
また、相分離体が多孔性基材の第1の連通細孔に配置されることにより、膜材料の一方の面に接触する媒体が、第1の連通細孔内を透過することを抑制する作用をも有する。したがって、上述のイオン伝導性の向上と相俟って、接触する媒体の透過を抑制することができる。
【0026】
相分離体を形成する、少なくとも2種の成分の組合せとして、次のものを挙げることができるが、これらに限定されない。即ち、スチレン/メチルメタクリレート、スチレン/イソプレン、スチレン/ビニルメチルエーテル、スチレン/プロピレン、スチレン/カーボネート、及びこれらの共重合体、即ちポリスチレン(PS)/ポリメチルメタクリレート(PMMA)、PS/ポリイソプレン(PI)、PS/ポリビニルメチルエーテル(PVME)、PS/ポリプロピレン(PP)、PS/ポリカーボネート(PC)などを挙げることができる。なお、上記の系では、コンパティビライザーを混合することが好ましい。また、アクリロニトリルゴム(NBR)などのエラストマーをPSに混合した系、PS/天然ゴム、PS/ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン系共重合体、スチレン−イソプレン系共重合体、PS/ブチルゴム、PS/エチレン−プロピレン系共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0027】
相分離体は、第2の連通細孔を有してもよい。ここで、「連通」とは、上述したのと同じ意味を有する。
第2の連通細孔の製造工程は、後述の製造方法で詳細に述べるが、相分離体の製造と同時に第2の連通細孔が調製される場合、相分離体の製造後、第2の連通細孔を製造するための工程(例えば、いわゆるスピノーダル分解とその後の一方の相の溶解などの工程)を設ける場合がある。
第2の連通細孔の平均細孔径は、0.1〜100nm、好ましくは0.1〜50nm、より好ましくは0.1〜20nmであるのがよい。
【0028】
<充填体>
本発明の第2の面の膜材料において、多孔性基材の第1の連通細孔内に充填体が配置される。なお、上述のように、充填体は、上述の相分離体であってもよい。
充填体は、該膜材料を用いる環境、即ち膜材料と接触させる媒体に対して不活性であるのがよい。また、充填体は、第2の連通細孔を有するのであれば、特に限定されない。第2の連通細孔は、上述のように、その平均細孔径は、0.1〜100nm、好ましくは0.1〜50nm、より好ましくは0.1〜20nmであるのがよい。
【0029】
<イオン官能基>
本発明の第1の面の膜材料において、イオン官能基が、相分離体に設けられる。特に、イオン官能基は、相分離体を形成する少なくとも2種の成分のうち、少なくとも1種の成分に由来する部分に設けられる。
また、本発明の第2の面の膜材料において、イオン官能基が、充填体の第2の連通細孔内に設けられる。
このように、イオン官能基を設けることにより、上述したように、膜材料において局所的にイオン官能基濃度を高めることができ、ひいては膜材料のイオン伝導性を向上させることができる。
【0030】
本発明のイオン官能基として、イオン伝導性を奏する基を用いることができる。イオン伝導は、カチオンであってもアニオンであってもよい。
カチオン伝導性を奏するイオン官能基として、次のものを挙げることができるが、これらに限定されない。即ち、スルホン酸基(−SOH)、各種リン酸基(−PO)、カルボン酸基(−COOH)などを挙げることができる。また、上記の基は、一部アルキル基により置換されていてもよく、例えばアルキルスルホン酸基(−(CHSOH)アルキルホスホン酸基(−(CHPO)、アルキルカルボン酸基(−(CHCOOH)なども含まれる(nは1以上の整数であり、例えば1〜10)。
アニオン伝導性を奏するイオン官能基として、次のものを挙げることができるが、これらに限定されない。即ち、各種アミノ基(−NH、アルキル基などにより置換されたアミノ基−NRH(Rはアルキル基などを示す)など)などを挙げることができる。
【0031】
上述の構成要素を有する膜材料は、上述のイオン官能基に由来するイオンを、該膜材料の一方の表面から他方の表面へと伝導するイオン伝導性を有することができる。特に、本発明の第1及び第2の面の膜材料は、イオン官能基の存在により、伝導するイオンの並進運動に由来するイオン伝導性を有することができる。
例えば、イオン官能基としてスルホン酸基を用いた場合、本発明の膜材料は、Naイオン伝導性を有することができる。
本発明の膜材料は、次のものに限定されないが、例えば、イオン官能基としてカチオン伝導性を奏するイオン官能基を用いた場合、カチオン伝導性、即ちプロトン;Li;Na;K;Fe2+;Fe3+;Zn2+;Cu;Cu2+;Mn2+;Mn3+;Mn4+;Mn6+;及びCr3+からなる群から選ばれるイオンの伝導性、好ましくはLi;Na;K;Fe2+;Fe3+;Zn2+;Cu;Cu2+;Mn2+;Mn3+;Mn4+;Mn6+;及びCr3+からなる群から選ばれるイオンの伝導性、より好ましくはLi;Na;Kの導電性を有することができる。
また、イオン官能基としてアニオン伝導性を奏するイオン官能基を用いた場合、本発明の膜材料は、アニオン伝導性、即ちOHイオン、Clイオンなどの伝導性を有することができる。なお、アニオン伝導性として、上記イオンに限定されない。
【0032】
本発明の第2の面の膜材料は、イオン官能基の存在により、伝導するイオンの並進運動に由来するイオン伝導性を有するのがよい。また、本発明の第1の面の膜材料も、イオン官能基の存在により、伝導するイオンの並進運動に由来するイオン伝導性を有するのがよい。
自由水などを有し且つプロトン伝導性を有する材料は、並進運動でイオンが移動できるかわり、大量の電気浸透水が同時に移動してしまうために製塩プロセスにおいては濃縮効率が低下する。さらには燃料電池用電解質膜などにおいては並進運動による燃料のクロスオーバーが問題になる。このため細孔中に電解質を閉じ込めることによって、膨潤を抑制し、自由水を減らした膜では、並進運動が抑えられる代わりに、プロトンのホッピング運動によりによりイオン伝導度が維持され、例えば燃料電池用膜としては、高プロトン伝導度かつ低燃料クロスオーバーの膜を実現している(Takeo Yamaguchi, Zhou Hua, Tetsu Nakazawa, Nobuo Hara, A novel all aromatic pore-filling electrolyte membrane with extremely low methanol crossover characteristic for DMFC, Advanced Materials, 19(4), 592-596 (2007))。しかしながらホッピングによる移動が起こらず、並進運動だけで移動すると考えられているプロトン以外のイオンの伝導性を高めることは、上記文献に記載されるような膜では難しい。
本発明の膜材料の場合、後述するように、基材で膨潤を抑制して自由水量を低減しながら、並進運動でしか移動しないと考えられるイオン(後述の実施例においてはNa)の伝導度が非常に高い値を示す。さらに、本発明の膜材料は、媒体の透過抑制能(後述の実施例においては、非常に低い電気浸透水の量)を示す。したがって、媒体の透過抑制能を有し且つ高いイオン伝導性を有する本発明の膜材料は、伝導するイオンの並進運動に由来するイオン伝導性を有することができる。
【0033】
また、本発明の第1及び第2の面の膜材料は、膜材料の一方の面に接触する媒体を他方の面へと透過させない透過抑制能を有することができる。
媒体として、水、メタノール、エタノール、アンモニア、ヒドラジンなどの液状媒体;水素、酸素、二酸化炭素などの気体状媒体;を挙げることができる。
例えば、本発明の膜材料を製塩用材料として用いる場合、水の透過抑制能を有しつつ、Naイオン伝導性を有することができる。また、他の例として、本発明の膜材料をメタノール型燃料電池の電解質膜として用いる場合、メタノールの透過抑制能を有しつつ、プロトン伝導性を有する材料を提供することができる。
なお、ここで、「透過抑制能」は、それぞれ媒体の透過係数[kg・μm/(m・h)]により表すことができる。透過係数によって表された「透過抑制能」は、それぞれの媒体に依存するが、その値が小さければ小さいほど良い。
【0034】
本発明の第1及び第2の面の膜材料は、イオン伝導性を有しつつ、膜材料に接触する媒体の透過抑制能を有するため、次のものに応用することができるが、これに限定されない。即ち、製塩用材料(具体的には電気透析法におけるイオン交換膜);各種電池(燃料電池を含む)の電解質膜を含む電池用材料;医薬・食品精製用膜;金属廃液の酸回収用膜又は有価物回収用膜;などに応用することができる。
【0035】
本発明の第1の面の膜材料は、次の方法で製造することができる。
即ち、a)第1の連通細孔を有する多孔性基材の該細孔内に、相分離体を形成する少なくとも1種の物質を充填する工程;
b)第1の連通細孔内に前記相分離体を形成する工程;
c) i) a)工程前に前記少なくとも2種の成分のうち少なくとも1種の成分にイオン官能基を導入するか、もしくはii) b)工程後に相分離体のうち前記少なくとも2種の成分の少なくとも1種の成分に由来する部分にイオン官能基を導入する工程;
を有することにより、本発明の第1の面の膜材料を製造することができる。
【0036】
なお、「多孔性基材」、「相分離体」、及び「イオン官能基」については、上述と同様の特性を有するので、詳述は省略する。
【0037】
上記a)工程は、多孔性基材の第1の連通細孔内に、相分離体を形成する少なくとも1種の物質を充填する工程である。
少なくとも1種の物質とは、1種の物質を充填しても、2種以上の成分を充填してもよい。なお、1種の物質を充填する場合、該1種の物質が後に相分離すべき2種以上の領域又は2種以上の部分から成るのがよい。例えば、2種以上の領域又は2種以上の部分を有する、1種の物質として、2種以上の成分から成る2元(多元)モノマー、2元(多元)オリゴマー、2元(多元)ポリマーなどを挙げることができるが、これらに限定されない。なお、少なくとも2種の成分又は2種以上の成分の組合せについては、上述の<相分離体>で記載した通りである。
【0038】
a)工程は、具体的には、少なくとも1種の物質を有する液状物に多孔性基材を浸漬すること、少なくとも1種の物質を有する液状物を多孔性基材に塗布し第1の連通細孔内に充填すること、などにより、行うことができる。
なお、上述の浸漬条件(温度、時間、圧力など)、上述の塗布条件(温度、時間、圧力など)を適宜、修正することにより、最適な充填を行うことができる。
【0039】
b)工程は、第1の連通細孔内に相分離体を形成する工程である。例えば、a)工程で充填された少なくとも1種の物質が、少なくとも2種のモノマー成分である場合、該モノマー成分を重合させることにより、第1の連通細孔内に相分離体を形成することができる。この際の重合条件は、用いる少なくとも2種の成分、及びa)工程で用いた溶媒などに依存し、適宜、修正することができる。
また、少なくとも1種の物質が2種以上の成分から成る2元(多元)モノマーの場合、該モノマーを重合させ、その後、相分離すべき条件、例えば加熱・冷却を行い、2種以上の成分からなる領域又は部分を相分離させることにより、第1の連通細孔内に相分離体を形成することができる。なお、2元(多元)モノマーの代わりに、2元(多元)オリゴマー又は2元(多元)ポリマーを用いた場合にも、ほぼ同様に、加熱・冷却などの相分離させる工程を設ける。なお、相分離すべき条件は、用いる2元(多元)モノマー、2元(多元)オリゴマー又は2元(多元)ポリマーに依存する。
b)工程、即ち相分離体形成工程により、相分離体が形成される。また、この工程で、重合条件、相分離すべき条件などにより、相分離体内に第2の連通細孔が形成される場合もある。
【0040】
c)工程は、膜材料にイオン官能基を導入する工程である。
c)工程は、i) a)工程前に、少なくとも2種の成分のうち少なくとも1種の成分にイオン官能基を導入し、該イオン官能基が維持されたまま、該少なくとも1種の成分が相分離体の第1の部分となることにより、該イオン官能基を導入することができる。
c)−i)工程は、いわゆるモノマーに所望のイオン官能基を導入し、該モノマーのイオン官能基が維持されたまま重合体を形成する手法である。モノマーへの所望のイオン官能基の導入は、種々の手法により行うことができる。
【0041】
また、c)工程は、ii) b)工程後に相分離体のうち、少なくとも2種の成分の少なくとも1種の成分に由来する第1の部分にイオン官能基を導入する工程;により行うことができる。即ち、c)−ii)工程は、重合体形成後に、イオン官能基の修飾を行う工程である。形成後の修飾工程の条件は、所望のイオン官能基、用いる相分離体などにより依存するが、種々の条件下で行うことができる。
【0042】
上記a)〜c)工程で、本発明の第1の面の膜材料を製造することができるが、以下の工程をさらに設けてもよい。
c)工程後、d)膜材料の一方の面から他方の面へのイオン伝導性を改良するイオン伝導改良工程をさらに有してもよい。この工程として、イオン官能基の再配列などを促す手法などを挙げることができ、例えば、膜材料の一方の面から他方の面へと通電させる工程;膜材料を適宜加熱(及び/又は冷却)し、官能基の再配列を促す工程;などにより、行うことができる。
【0043】
また、e)相分離体に第2の連通細孔を設ける工程;をさらに有してもよい。この工程は、上述のように、重合条件などによりb)工程中に行うことができる。また、少なくともb)工程後に、相分離体に第2の連通細孔を設ける工程;を有してもよい。相分離体に第2の連通細孔を設ける工程として、相分離体を形成する、少なくとも2種の成分の少なくとも1種の成分に由来する第1の部分又は第2の部分を、選択的に一部又は全部溶解して第2の連通細孔とする手法;などを挙げることができるが、これらに限定されない。
なお、第2の連通細孔内にイオン官能基を設けてもよい。
【0044】
本発明の第2の面の膜材料は、次の方法で製造することができる。
即ち、a”)第1の連通細孔を有する多孔性基材の該細孔内に、充填体を形成する少なくとも1種の物質を充填する工程;
b”)第2の連通細孔を有する充填体を形成する工程;
c”) i”) a”)工程前に前記少なくとも1種の物質にイオン官能基を導入するか、もしくはii”) b”)工程後に充填体の第2の連通細孔内にイオン官能基を導入する工程;
を有することにより、本発明の第2の面の膜材料、即ち、第1の連通細孔を有する多孔性基材;前記第1の連通細孔内に配置される充填体であって第2の連通細孔を有する充填体;及び前記充填体の前記第2の連通細孔の細孔内に設けられるイオン官能基;を有する膜材料であって、該膜材料は、該膜材料の一方の表面から他方の表面へとイオンを伝導するイオン伝導性を有し、該イオン伝導性が、前記イオン官能基の存在により、伝導するイオンの並進運動に由来する、膜材料を製造することができる。
なお、本発明の第2の面の膜材料において、充填体は、上述の相分離体であってもよい。この場合、上述の、第1の面の膜材料の製造方法により、本発明の第2の面の膜材料を製造することができる。
【0045】
a”)工程は、第1の連通細孔を有する多孔性基材の該細孔内に、充填体を形成する少なくとも1種の物質を充填する工程である。充填体が、上述のように、第2の連通細孔を有するのであれば、少なくとも1種の物質は、特に限定されない。第2の連通細孔は、上述のように、その平均細孔径は、0.1〜100nm、好ましくは0.1〜50nm、より好ましくは0.1〜20nmであるのがよい。
【0046】
b”)工程は、第2の連通細孔を有する充填体を形成する工程である。
c”)工程は、i”)少なくとも1種の物質に、a”)工程前に、予めイオン官能基を設けておき、それが維持されてイオン官能基を導入するか、又はii”) b”)工程後に充填体の第2の連通細孔内にイオン官能基を導入する工程;である。
なお、この方法においても、c”)工程後、d)膜材料の一方の面から他方の面へのイオン伝導性を改良するイオン伝導改良工程をさらに有してもよい。この工程として、イオン官能基の再配列などを促す手法などを挙げることができ、例えば、膜材料の一方の面から他方の面へと通電させる工程;膜材料を適宜加熱し、官能基の再配列を促す工程;などにより、行うことができる。
【0047】
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0048】
<基材の細孔内での相分離体の形成>
開始剤としてアゾビスイロブチロニトリルを含み、スチレン92重量部、ジビニルベンゼン8重量部及びNBR26(アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、日本ゼオン社製、商品名「NBR26」、以下、単に「NBR26」と表記する)8重量部を含む混合溶液を準備した。この混合溶液に、架橋ポリエチレン製多孔性基材(CLPE:日東電工社製、膜厚20μm、平均細孔径60〜80nm)を一昼夜、浸漬した。その後、浸漬体をガラス板に挟み、80℃の熱風オーブン中で一昼夜ラジカル重合を行った。その後、得られた膜をトルエンに浸漬し、未反応物を除去し、その後、乾燥し、ポリエチレン製多孔性基材の細孔内に、相分離体を形成した。
【0049】
<スルホン酸基の導入>
上記で得られた、相分離体を細孔内に配置させた架橋ポリエチレン製多孔性基材を、メチルクロロスルホン酸:四塩化炭素=2:1(体積比)に、4時間浸漬して、相分離体のうちのポリスチレン部をクロロスルホン化した。さらに、Toshikatsu Sata, Ryuji Izuo, Kuniaki Takata, J Memb. Sci., 45, 197-208 (1989)に記載される手法を用いて、クロロスルホン化したものを、2N NaOH水溶液に浸漬し、クロロスルホン基をスルホン酸基に変換した。得られた膜を塩酸洗浄後、再度、Na型にして乾燥し、スルホン酸基を導入した膜、NSAF 1−4hを得た。
【実施例2】
【0050】
実施例1の<スルホン酸基の導入>において、メチルクロロスルホン酸:四塩化炭素=2:1(体積比)への浸漬時間を4時間から24時間に変更した以外、実施例1と同じ方法により、膜、NSAF 1−24hを得た。
【実施例3】
【0051】
実施例1の<基材の細孔内での相分離体の形成>において、NBR26の量を、8重量部から4重量部へと変更した以外、実施例1と同じ方法により、膜、NSAF 0.5−4hを得た。
【実施例4】
【0052】
実施例3において、メチルクロロスルホン酸:四塩化炭素=2:1(体積比)への浸漬時間を4時間から24時間に変更した以外、実施例3と同じ方法により、膜NSAF 0.5−24hを得た。
【0053】
実施例1〜4の膜をFT−IR測定した結果、1135cm−1において、スルホン酸基由来のピークが確認された。また、スルホン酸基量は、浸漬時間(4時間又は24時間)によりコントロール可能であることが確認できた。
【0054】
(比較例1)
従来より製塩技術に用いられるスチレン−スルホン酸系膜(商品名「セレミオンCSO」、AGCエンジニアリング(株)社製、http://www.selemion.com/参照)を市販購入して準備した。
【0055】
(比較例2)
従来より製塩技術に用いられるNafion117(Du Pont社製)を市販購入して準備した。
【0056】
(比較例3)
実施例1において、NBR26の量を、8重量部から「0重量部」へと変更した以外、即ちNBRを用いなかった以外、実施例1と同じ方法により、膜SAFを得た。
【0057】
<電気透析実験>
カチオン交換膜として上述の実施例1〜4又は比較例1〜3のいずれかを用い、アニオン交換膜としてセレミオンASA(AGCエンジニアリング(株)社製、商品名「セレミオンASA」、http://www.selemion.com/参照)を用いて、濃度0.5MのNaCl水溶液に3.0Adm−2電の一定電流を流す電気透析実験を行い、用いたカチオン交換膜とアニオン交換膜との合計抵抗と、濃縮後のNaCl水溶液濃度を測定した。その結果を図1に示す。
図1において、横軸は用いたカチオン交換膜とアニオン交換膜との合計抵抗(Ωcm)であり、縦軸は濃縮後のNaCl水溶液濃度(M、即ちmol/L)を示す。
【0058】
また、図1中、◇は比較例1を、□は比較例2を、△は比較例3を、◆は実施例1を、*は実施例2を、▲は実施例3を、×は実施例4を、それぞれ示す。また、図1中、実線で引いた線は、現行のイオン交換膜での性能(比較例1の経験式)を示す。
図1から、次のことがわかる。即ち、実施例1〜4の膜は、合計抵抗が小さく、NaCl濃度が高いことがわかる。合計抵抗が小さいことは、カチオン交換膜のイオン伝導性が高いことを示す。また、NaCl濃度が高いことは、Naイオンのみが伝導し、水の流入を抑制できていることを示している。即ち、実施例1〜4の膜は、Naイオン伝導性が高く、且つ膜に接触する媒体である水の透過抑制能を有することがわかる。
また、実施例1〜4の膜は、高いNaイオン伝導性を有し且つ膜に接触する媒体である水の透過抑制能を有することから、Naイオンの並進運動に由来するNaイオン伝導性を有する膜であることがわかる。
【0059】
一方、比較例1は、現行のイオン交換膜での性能と同様であることがわかる。
比較例2は、現行のイオン交換膜での性能を上回るが、実施例1〜4が示す性能までは生じないことを示している。
比較例3は、現行のイオン交換膜での性能を若干上回るが、実施例1〜4が示す性能にはほど遠いことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例1〜4又は比較例1〜3の膜を用いた、電気透析実験の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔径が10nm〜10μmである第1の連通細孔を有する多孔性基材;
少なくとも2種の成分を有して成る相分離体であって、前記多孔性基材の前記第1の連通細孔内に配置される相分離体;及び
前記少なくとも2種の成分の少なくとも1種の成分に由来する部分に設けられるイオン官能基;を有する膜材料。
【請求項2】
前記相分離体が第2の連通細孔を有する請求項1記載の材料。
【請求項3】
前記膜材料は、前記イオン官能基に由来するイオンを、該膜材料の一方の表面から他方の表面へと伝導するイオン伝導性を有する請求項1又は2記載の材料。
【請求項4】
前記イオンが、H、Li、Na、K、Fe2+、Fe3+、Zn2+、Cu、Cu2+、Mn2+、Mn3+、Mn4+、Mn6+、及びCr3+からなる群から選ばれるカチオン;又はCl及びOHからなる群から選ばれるアニオンである請求項3記載の材料。
【請求項5】
前記膜材料は、前記一方の面に接触する媒体を他方の面へと透過させない透過抑制能を有する請求項3又は4記載の材料。
【請求項6】
細孔径が10nm〜10μmである第1の連通細孔を有する多孔性基材;
前記第1の連通細孔内に配置される充填体であって第2の連通細孔を有する充填体;及び
前記充填体の前記第2の連通細孔の細孔内に設けられるイオン官能基;を有する膜材料であって、
該膜材料は、該膜材料の一方の表面から他方の表面へとイオンを伝導するイオン伝導性を有し、
該イオン伝導性が、前記イオン官能基の存在により、伝導するイオンの並進運動に由来する、膜材料。
【請求項7】
前記イオンが、H、Li、Na、K、Fe2+、Fe3+、Zn2+、Cu、Cu2+、Mn2+、Mn3+、Mn4+、Mn6+、及びCr3+からなる群から選ばれるカチオン;又はCl及びOHからなる群から選ばれるアニオンである請求項6記載の材料。
【請求項8】
前記膜材料は、前記一方の面に接触する媒体を他方の面へと透過させない透過抑制能を有する請求項6又は7記載の材料。
【請求項9】
第1の連通細孔を有する多孔性基材;前記多孔性基材の前記第1の連通細孔内に配置される相分離体であって、少なくとも2種の成分を有して成る相分離体;及び前記少なくとも2種の成分の少なくとも1種の成分に由来する部分に設けられるイオン官能基;を有する膜材料の製造方法であって、
a)第1の連通細孔を有する多孔性基材の該細孔内に、相分離体を形成する少なくとも1種の物質を充填する工程;
b)第1の連通細孔内に前記相分離体を形成する工程;
c) i) a)工程前に前記少なくとも2種の成分のうち少なくとも1種の成分にイオン官能基を導入するか、もしくはii) b)工程後に相分離体のうち前記少なくとも2種の成分の少なくとも1種の成分に由来する部分にイオン官能基を導入する工程;
を有する、上記方法。
【請求項10】
前記b)工程の、少なくとも1種の物質がモノマー、オリゴマー及びポリマー、並びにこれらの等価物から成る群から選ばれる請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記a)工程が、a’)少なくとも2種の成分を前記第1の連通細孔内に充填する工程であり、前記b)工程が、b’)該少なくとも2種の成分を重合させ、第1の連通細孔内に前記相分離体を形成する工程である請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記膜材料は、前記イオン官能基に由来するイオンを、該膜材料の一方の表面から他方の表面へと伝導するイオン伝導性を有する請求項9〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記膜材料は、前記一方の面に接触する媒体を他方の面へと透過させない透過抑制能を有する請求項12記載の方法。
【請求項14】
c)工程後、d)膜材料の一方の面から他方の面へのイオン伝導性を改良するイオン伝導改良工程をさらに有する請求項9〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記d)イオン伝導改良工程が、膜材料の一方の面から他方の面へと通電させる工程である請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記b)工程中又は該b)工程後、e)相分離体に第2の連通細孔を設ける工程;をさらに有する、請求項9〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記第2の連通細孔内にイオン官能基を設ける、請求項16記載の方法。
【請求項18】
第1の連通細孔を有する多孔性基材;前記第1の連通細孔内に配置される充填体であって第2の連通細孔を有する充填体;及び前記充填体の前記第2の連通細孔の細孔内に設けられるイオン官能基;を有する膜材料であって、該膜材料は、該膜材料の一方の表面から他方の表面へとイオンを伝導するイオン伝導性を有し、該イオン伝導性が、前記イオン官能基の存在により、伝導するイオンの並進運動に由来する、膜材料の製造方法であって、
a”)第1の連通細孔を有する多孔性基材の該細孔内に、充填体を形成する少なくとも1種の物質を充填する工程;
b”)第2の連通細孔を有する充填体を形成する工程;
c”) i”) a”)工程前に前記少なくとも1種の物質にイオン官能基を導入するか、もしくはii”) b”)工程後に充填体の第2の連通細孔内にイオン官能基を導入する工程;
を有する、上記方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−108114(P2009−108114A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278737(P2007−278737)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】