説明

膜濾過装置

【課題】 各膜ユニットに設けられている各膜モジュールの濾過膜に透過水を濁らせないような小さな破れが発生したとき、早期にこれを検出して、透過水側に病原性微生物が混入するのを防止する。
【解決手段】 各膜ユニット4a〜4nの1つを順次、選択して、この膜ユニット4a〜4nを構成している各膜モジュール7a〜7mに空気を供給し、各膜モジュール7a〜7mが破損して空気が自由に通過するとき、気体流量計15と、気体圧力計16とによってこれを検知して、破損している膜モジュールの使用を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水浸漬状態で使用される濾過膜の破損や目詰まりなどを正確、かつ迅速に検出する膜濾過装置に関する。
【0002】
【従来の技術】水浸漬状態で濾過膜を使用して処理対象となっている水、例えば上水を濾過する膜濾過装置では、濾過処理時間の経過とともに、濾過膜が目詰まりを起こす。このため、30分〜1時間くらいの周期で、濾過処理方向と逆方向に逆洗水を流す逆圧洗浄を行って濾過膜を洗浄し、濾過膜の各膜孔を閉塞している濁質分を物理的に取り除くようにしている。
【0003】例えば、濾過膜として中空糸膜を使用している膜濾過装置において逆圧洗浄を行う場合には、濾過膜が納められているモジュール内に空気を噴射し、これによって生じた多数の泡によって、モジュール内に納められている濾過膜に物理的な振動を与え、目詰まりの原因となっている物質を除去し易くしている。
【0004】また、このような逆圧洗浄を行っても、濾過膜の各膜孔を閉塞している濁質分を物理的に取り除くことができないときには、薬品を使用した薬品洗浄を行って、濾過膜の各膜孔を閉塞している濁質分を化学的に取り除くようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような膜濾過装置では、原水側に大腸菌O−157やクリプトスポジウムなどが含まれているときに濾過膜が破損すると、原水側に含まれている大腸菌O−157やクリプトスポジウムなどが濾過膜を通過して透過水側に入り込んでしまう恐れがある。このため、濾過膜の寿命(通常、半年〜2年)が経過する前に定期点検を行って、破損する恐れがある濾過膜を交換するようにしている。
【0006】しかしながら、従来の膜濾過装置では、濾過膜の各膜孔に濁質分が詰まったとき、逆圧洗浄あるいは薬品洗浄を行って、濾過膜の各膜孔を閉塞している濁質分を物理的、化学的に取り除くようにしているので、逆圧洗浄や薬品洗浄を行う回数を多くし過ぎたり、過大な逆圧をかけたりして、濾過膜に過大なストレスをかけてしまうことがあった。
【0007】このため、濾過膜の平均的な寿命が来る前に、濾過膜が破損して、透過水に大腸菌O−157やクリプトスポジウムなどが入り込んでしまう恐れがあった。
【0008】特に、濾過膜として中空糸膜を使用した膜濾過装置などのように、モジュール内に空気を噴射し、これによって生じた多数の泡によって、モジュール内に納められている濾過膜に物理的な振動を与えて、目詰まりの原因となっている物質を除去し易くしている膜濾過装置では、濾過膜が固定されている部分に過大な負荷がかかり、濾過膜の寿命が来る前に、濾過膜が破損して、透過水に大腸菌O−157やクリプトスポジウムなどが混じり込んでしまう恐れがあった。
【0009】そこで、このような問題を解決する方法として、従来、特開平6−182164号公報に示す「膜分離装置」、特開平6−170365号公報に示す「上水道における上水方式」などが提案されている。
【0010】特開平6−182164号公報に示す「膜分離装置」では、図4に示すように、加圧ポンプ103を動作させて、原水槽102に貯留されている原水を汲み出し、膜分離装置本体104によって、原水を濾過するとともに、濾過膜ユニット105によって、膜分離装置本体104から排出される透過水をさらに濾過している。最中に、膜分離装置本体104の濾過膜が破れて、濾過膜ユニット105に供給される透過水に濁質が混入し、この濾過膜ユニット105に濁質が捕捉されて通圧損が増大したとき、圧損検出装置106によってこれを検知して、膜分離装置本体104に取り込まれた原水を原水槽に戻し、膜分離装置本体104から濁質を含む透過水が排出されないようにする。
【0011】特開平6−170365号公報に示す「上水道における上水方式」では、図5に示すように、各膜分離装置112のうち、複数の膜分離装置112を選択して、原水供給主管113を介して供給される原水を濾過させ、これによって得られた透過水に対し、薬剤添加ステーション114から薬剤を投入して、殺菌した後、浄水池115に貯留する処理を行っている最中に、各膜分離装置112のいずれかに設けられている濾過膜が破損して、濾過膜が破損した膜分離装置112から排出される透過水の水質が変化したとき、この膜分離装置112に対応する透過水質モニタ116、各膜分離装置112の全てに対応する透過水質モニタ118によって、透過水の水質変化を検知して、濾過膜が破損した膜分離装置112を停止させながら、この膜分離装置112から排出される透過水を透過水貯槽117に導いて、濁っている透過水が浄水池115に流れ込まないようにするとともに、各膜分離装置112のうち、予備として休止させていた膜分離装置112の1つを選択して、運転を開始させ、これによって原水の濾過速度が低下しないようにする。
【0012】しかしながら、特開平6−182164号公報に示す「膜分離装置」、特開平6−170365号公報に示す「上水道における上水方式」では、膜分離装置本体104、各膜分離装置112の濾過膜が破損しても、濾過膜の破れが進行して、大きな破れになり、これに対応して透過水が濁った後でしか、膜分離装置本体104、各膜分離装置112の濾過膜が破損していることを検知することができないことから、濾過膜の破れが小さいとき、透過水中に病原性微生物が入り込んでしまう恐れがあった。
【0013】本発明は上記の事情に鑑み、請求項1では、濾過膜に、透過水を濁らせないような小さな破れ、目詰まりが発生したとき、早期にこれを検出して、透過水側に病原性微生物などが混入するのを防止することができる膜濾過装置を提供することを目的としている。
【0014】請求項2では、複数の濾過膜のいずれかが破損または目詰まりを起こしているとき、少ない検出回数で、どの濾過膜が破損または目詰まりを起こしているかを検出することができ、これによって濾過膜の使用枚数が多いときでも、濾過膜に、透過水を濁らせないような小さな破れ、目詰まりが発生したとき、早期にこれを検出して、透過水側に病原性微生物などが混入するのを防止することができる膜濾過装置を提供することを目的としている。
【0015】請求項3では、破損していると判定した濾過膜または目詰まりを起こしている濾過膜が見つかったとき、この濾過膜の使用を禁止するとともに、他の正常な濾過膜の使用を開始して、濾過処理を継続することができる膜濾過装置を提供することを目的としている。
【0016】請求項4では、破損していると判定した濾過膜または目詰まりを起こしている濾過膜が見つかったとき、これを音声または画面などでオペレータに知らせ、濾過膜の洗浄時期、濾過膜の交換時期、あるいは濾過膜のメンテナンス時期などを判断させることができる膜濾過装置を提供することを目的としている。
【0017】請求項5では、濾過膜の破損有無、目詰まり有無を検出する際に使用する気体によって、濾過膜、透過水、および周囲の環境などに何ら、悪影響を与えないようにすることができる膜濾過装置を提供することを目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本発明は、請求項1では、供給された原水を濾過する濾過膜と、当該濾過膜の濾過休止時において、前記濾過膜に対して濾過方向と逆側に圧力気体を供給する気体供給手段と、この気体供給手段から前記濾過膜に供給される気体圧力とその気体流量とを測定し、この測定結果に基づき、前記濾過膜の破損有無または目詰まり有無を判定する膜状態判定手段とを備えたことを特徴としている。
【0019】請求項2では、請求項1に記載の膜濾過装置において、前記膜状態判定手段は、複数の濾過膜を複数のグループに分け、各グループに供給される気体圧力とその気体流量とを測定し、この測定結果に基づき、前記濾過膜の破損有無または目詰まり有無を判定することにより劣化した濾過膜が存在するグループを特定し、特定されたグループをさらに複数のグループに分け、各グループに供給される気体圧力とその気体流量とを測定し、この測定結果に基づき、前記濾過膜の破損有無または目詰まり有無を判定する処理を繰り返すことによって劣化した濾過膜を特定する手段であることを特徴としている。
【0020】請求項3では、請求項1または2に記載の膜濾過装置において、前記膜状態判定手段は、破損していると判定した濾過膜または目詰まりを起こしていると判定した濾過膜の使用を禁止状態にする禁止手段を含むことを特徴としている。
【0021】請求項4では、請求項1または2に記載の膜濾過装置において、前記膜状態判定手段は、各濾過膜のいずれかが破損していると判定したとき、または目詰まりを起こしていると判定したとき、その判定結果を音声、または画面でオペレータに提示することを特徴としている。
【0022】請求項5では、請求項1または2に記載の膜濾過装置において、前記気体供給手段は、各濾過膜に供給する気体として、空気、希ガス、窒素ガスのいずれかを使用することを特徴としている。
【0023】上記の構成により、請求項1では、濾過膜に原水の濾過を行わせていないとき、気体供給手段によって、濾過膜に濾過方向と逆側に圧力気体を供給するとともに、膜状態判定手段によって、濾過膜に供給された気体圧力と気体流量とを測定し、この測定結果に基づき、前記濾過膜の破損有無または目詰まり有無を判定する。これにより、濾過膜に透過水を濁らせないような小さな破れや、目詰まりが発生したとき、早期にこれを検出して透過水側に病原性微生物などが混入するのを防止する。
【0024】請求項2では、各濾過膜に原水の濾過を行わせていないとき、前記各濾過膜を複数のグループに分けながら、気体供給手段によって、各グループに含まれる濾過膜に圧力気体を供給するとともに、膜状態判定手段によって、前記各空間に供給された気体圧力とその気体流量とを測定し、この測定結果に基づき、前記濾過膜の破損有無または目詰まり有無をグループ単位で判定する処理を繰り返して劣化した濾過膜を特定する。これにより、複数の濾過膜のいずれかが破損または目詰まりを起こしているとき、少ない検出回数で、どの濾過膜が破損または目詰まりを起こしているかを検出し、濾過膜の使用数が多いときでも、濾過膜に透過水を濁らせないような小さな破れや、目詰まりが発生したとき、早期にこれを検出して透過水側に病原性微生物などが混入するのを防止する。
【0025】請求項3では、膜状態判定手段によって、破損していると判定した濾過膜または目詰まりを起こしていると判定した濾過膜の使用を禁止状態にする。これにより、破損していると判定した濾過膜または目詰まりを起こしている濾過膜が見つかったとき、この濾過膜の使用を禁止するとともに、他の正常な濾過膜の使用を開始して、濾過処理を継続する。
【0026】請求項4では、膜状態判定手段によって、各濾過膜のいずれかが破損していると判定したとき、または目詰まりを起こしていると判定したとき、判定結果を音声、または画面でオペレータに提示する。これにより、破損していると判定した濾過膜または目詰まりを起こしている濾過膜が見つかったとき、これを音声または画面などでオペレータに知らせ、濾過膜の洗浄時期、濾過膜の交換時期、あるいは濾過膜のメンテナンス時期などを判断させる。
【0027】請求項5では、各濾過膜に供給する気体として、空気、希ガス、窒素ガスのいずれかを使用することにより、濾過膜、透過水、および周囲の環境などに何ら、悪影響を与えないようにする。
【0028】
【発明の実施の形態】図1は本発明による膜濾過装置の実施の形態を示す構成図である。
【0029】この図に示す膜濾過装置1は、濾過指示信号の入力により動作して処理対象となる原水を汲み出す供給水ポンプ2と、弁開指示信号の入力により弁開状態となって供給水ポンプ2から供給される原水を通過させる複数の濾過ラインユニット入口側電磁弁3a〜3nと、各濾過ラインユニット入口側電磁弁3a〜3nを介して供給される原水を濾過して透過水を生成する複数の膜ユニット4a〜4nと、弁開指示信号の入力により弁開状態となって各膜ユニット4a〜4nから排出される透過水を通過させて浄水池などの次段設備に導く複数の濾過ラインユニット出口側電磁弁5a〜5nとを備えている。
【0030】この膜濾過装置1では、濾過処理が指定されているとき、供給水ポンプ2を動作させて原水を汲み出すとともに、必要とする透過水の量に応じて、各膜ユニット4a〜4nが複数組み合わされて駆動される。このため、組み合わせに対応する複数の濾過ラインユニット入口側電磁弁3a〜3nと、対応する複数の濾過ラインユニット出口側電磁弁5a〜5nとが開状態にされ、これにより供給水ポンプ2によって汲み出された原水が濾過処理されるようになっている。
【0031】各膜ユニット4a〜4nは、図2に示すように、弁開指示信号の入力により弁開状態となり、濾過ラインユニット入口側電磁弁3a(または、濾過ラインユニット入口側電磁弁3b〜3nのいずれか)を介して供給される原水を通過させる複数の濾過ラインモジュール入口側電磁弁6a〜6mと、膜孔径が10μm以下の濾過膜を有し、各濾過ラインモジュール入口側電磁弁6a〜6mを通過した原水をそれぞれ濾過して透過水を生成する複数の膜モジュール7a〜7mと、弁開指示信号が入力されているとき、弁を開状態にして各膜モジュール7a〜7mから排出される各透過水をそれぞれ通過させて濾過ラインユニット出口側電磁弁5a(または、濾過ラインユニット出口側電磁弁5b〜5nのいずれか)に導く複数の濾過ラインモジュール出口側電磁弁8a〜8mとを備えている。
【0032】また、各膜ユニット4a〜4nは、逆圧洗浄指示信号が入力されているとき、逆洗水を汲み出す逆洗水供給ポンプ9と、弁開指示信号が入力されているとき、弁を開状態にして逆洗水供給ポンプ9から供給される逆洗水を通過させて各膜モジュール7a〜7mにそれぞれ供給する複数の逆洗ライン入口側電磁弁10a〜10mと、弁開指示信号が入力されているとき、弁を開状態にして各膜モジュール7a〜7mから排出される逆洗水を各ドレン管に導いて排出させる複数の逆洗ライン出口側電磁弁11a〜11mとを備えている。
【0033】さらに、各膜ユニット4a〜4nは、弁開指示信号が入力されているとき、弁を開状態にしてガス供給管12を介して供給される空気(または、アルゴンなどの希ガス、窒素などの気体)を通過させて各膜モジュール7a〜7mにそれぞれ供給する複数の気体供給ライン入口側電磁弁13a〜13mと、弁開指示信号が入力されているとき、弁を開状態にして各膜モジュール7a〜7mから排出される空気を大気中などに逃がす複数の気体供給ライン出口側電磁弁14a〜14mと、各気体供給ライン入口側電磁弁13a〜13mを通過して各膜モジュール7a〜7mに供給された空気の流量を測定する気体流量計15と、各気体供給ライン入口側電磁弁13a〜13mを通過して各膜モジュール7a〜7mに供給された空気の圧力を測定する気体圧力計16とを備えている。
【0034】そして、各膜ユニット4a〜4nは、各濾過ラインモジュール入口側電磁弁6a〜6mと、各濾過ラインモジュール出口側電磁弁8a〜8mと、各逆洗ライン入口側電磁弁10a〜10mと、各逆洗ライン出口側電磁弁11a〜11mと、各気体供給ライン入口側電磁弁13a〜13mと、各気体供給ライン出口側電磁弁14a〜14mと、逆洗水供給ポンプ9とを制御することにより、各膜モジュール7a〜7m単位で、濾過処理、逆圧洗浄処理、膜破損検出処理などを実行する。
【0035】次に、図1、図2に示す各構成図を参照しながら、この実施の形態の動作について説明する。
【0036】<濾過処理>まず、原水の濾過指示が入力されると、供給水ポンプ2が駆動されて、原水が汲み出されるとともに、必要な透過水の量に応じて各膜ユニット4a〜4nのいずれか、例えば膜ユニット4aに対応する濾過ラインユニット入口側電磁弁3aと、濾過ラインユニット出口側電磁弁5aとが開状態にされる。さらに膜ユニット4aを構成する膜モジュール7a〜7mのうち、必要な透過水の量に応じて、例えば膜モジュール7a、膜モジュール7bに対応した濾過ラインモジュール入口側電磁弁6a、6bと、濾過ラインモジュール出口側電磁弁8a、8bとが開状態にされる。この状態において、供給水ポンプ2を介して供給される原水は膜モジュール7a、7bに導かれ、各膜モジュール7a、7bに設けられている濾過膜によって、原水が濾過され、この濾過処理で得られた透過水が濾過ラインユニット出口側電磁弁5aを介して浄水池などの次段設備に供給される。
【0037】<逆圧洗浄処理>予め設定されている逆洗周期が到来すると、各膜ユニット4a〜4nの1つが順次に選択されて、次に述べる手順で逆圧洗浄処理が行われる。
【0038】まず、各膜ユニット4a〜4nのいずれか、例えば膜ユニット4aが逆圧洗浄処理対象に選択されると、この膜ユニット4aに設けられた逆洗水供給ポンプ9が起動されて、逆洗水の汲み出しが開始される。さらにこの膜ユニット4aを構成する各膜モジュール7a〜7mのうちの1つ、例えば膜モジュール7aが逆圧洗浄処理対象に選択されて、この膜モジュール7aに対応する濾過ラインモジュール入口側電磁弁6aと、濾過ラインモジュール出口側電磁弁8aとが閉状態にされるとともに、逆圧洗浄処理対象となっている膜モジュール7aに対応する逆洗ライン入口側電磁弁6aと、逆洗ライン出口側電磁弁11aとが開状態にされる。
【0039】これによって、逆洗水供給ポンプ9→逆洗ライン入口側電磁弁10a→膜モジュール7a→逆洗ライン出口側電磁弁11a→ドレン管なる経路で、逆洗水が流れて、膜モジュール7aに設けられている濾過膜が逆洗される。この逆洗処理により、濾過膜の各膜孔に詰まっている濁質分が除去されてドレン管から外部に排出される。
【0040】逆洗を開始してから一定の時間が経過すると、逆圧洗浄処理対象となっている膜モジュール7aに対応する逆洗ライン入口側電磁弁6aと、逆洗ライン出口側電磁弁11aとが閉状態にされるとともに、膜モジュール7aに対応する濾過ラインモジュール入口側電磁弁6aと、濾過ラインモジュール出口側電磁弁8aとが開状態される。
【0041】以下、膜ユニット4aを構成している各膜モジュール7a〜7mのうち、残っている各膜モジュール7b〜7mが1つずつ順次に選択され、上述した膜モジュール単位の逆圧洗浄処理が行われ、各膜モジュール7b〜7mの濾過膜の各膜孔に詰まっている濁質分が除去され、ドレン管から外部に排出される。
【0042】膜ユニット4aを構成している全ての膜モジュール7a〜7mの逆圧洗浄処理が終了すると、残っている他の膜ユニット4b〜4nが1つずつ順次、選択されて、上述した膜モジュール単位の逆圧洗浄処理が行われ、各膜ユニット4b〜4nに構成する各膜モジュール7b〜7mの濾過膜に詰まっている濁質分が除去されて、ドレン管から外部に排出される。
【0043】<膜破損検出処理>上述した濾過処理を行っている途中で、膜破損検出処理が指定されると、各膜ユニット4a〜4nの1つ、例えば膜ユニット4aが選択されて、この膜ユニット4aを構成する濾過ラインモジュール入口側電磁弁6a〜6mと、濾過ラインモジュール出口側電磁弁8a〜8mとが全て閉状態にされた後、膜ユニット4aを構成する全ての気体供給ライン入口側電磁弁13a〜13mと、全ての気体供給ライン出口側電磁弁14a〜14mとが開状態にされて、ガス供給管12→各気体供給ライン入口側電磁弁13a〜13m→各膜モジュール7a〜7mなる経路で、各膜モジュール7a〜7mに空気が供給される。このとき、気体流量計15と、気体圧力計16とによって各膜モジュール7a〜7mに供給された空気の量と、圧力とが測定される。
【0044】この際、各膜モジュール7a〜7mに設けられている各濾過膜のいずれかが破れていれば、破れている部分を通って空気が流出する。このため、図3に示すように、各膜モジュール7a〜7mに供給した空気の量と、空気の圧力との関係に基づき、各膜モジュール7a〜7mが破損しているか否かが判定できる。
【0045】膜ユニット4aを構成する各膜モジュール7a〜7mのいずれも破損していなければ、この膜ユニット4aを構成する全ての気体供給ライン入口側電磁弁13a〜13mと、全ての気体供給ライン出口側電磁弁14a〜14mとが閉状態にされて、この膜モユニット4aによる上述した濾過処理が再開される。
【0046】また、膜ユニット4aの各膜モジュール7a〜7mのいずれかが破損していると判定されると、この膜ユニット4aを構成している各膜モジュール7a〜7mが2つのグループに分けられる。そして、一方のグループに含まれる各膜ユニット7a〜7i(但し、i≒(m−a)/2)の各気体供給ライン入口側電磁弁13a〜13iと、各気体供給ライン出口側電磁弁14a〜14iとが開状態にされたまま、他方のグループに含まれる各膜モジュール7(i+1)〜7mの各気体供給ライン入口側電磁弁13(i+1)〜13mと、各気体供給ライン出口側電磁弁14(i+1)〜14mとが閉状態にされる。次いで、ガス供給管12→一方のグループに属する各気体供給ライン入口側電磁弁13a〜13i→一方のグループに属する各膜モジュール7a〜7iなる経路で、一方のグループを構成する各膜モジュール7a〜7iのみに空気が供給されるとともに、気体流量計15と、気体圧力計16とによって各膜モジュール7a〜7iに供給された空気の量と、圧力とが測定される。
【0047】そして、一方のグループに含まれている各膜モジュール7a〜7iに供給された空気の量と、圧力とに基づき、各膜モジュール7a〜7iのいずれかが破損していると判定されると、このグループがさらに2つのグループに分けられて、一方のグループに含まれる各膜ユニット7a〜7e(但し、e≒(i−a)/2)の各気体供給ライン入口側電磁弁13a〜13eと、各気体供給ライン出口側電磁弁14a〜14eとが開状態にされたまま、他方のグループに含まれる各膜モジュール7(e+1)〜7iの各気体供給ライン入口側電磁弁13(e+1)〜13iと、各気体供給ライン出口側電磁弁14(e+1)〜14iとが閉状態にされる。そして、ガス供給管12→一方のグループに属する各気体供給ライン入口側電磁弁13a〜13e→一方のグループに属する各膜モジュール7a〜7eなる経路で、一方のグループを構成する各膜モジュール7a〜7eのみに空気が供給されるとともに、気体流量計15と、気体圧力計16とによって各膜モジュール7a〜7eに供給された空気の量と、圧力とが測定され、一方のグループに含まれている各膜モジュール7a〜7eのいずれかが破損しているか否かが判定される。
【0048】以下、このようなグループ分けと、各膜モジュール7a〜7iに供給された空気量の測定処理、空気圧力の測定処理とが順次、繰り返される。そして、破損している膜モジュールが特定されたとき、開状態にされていた各気体供給ライン入口側電磁弁13a〜13iと、各気体供給ライン出口側電磁弁14a〜14iとが全て閉状態にされるとともに、破損していると判定された膜モジュール、例えば膜モジュール7aに対応する濾過ラインモジュール入口側電磁弁6aと、濾過ラインモジュール出口側電磁弁6aとが閉状態にされて、この膜モジュール7aの濾過処理が禁止されるとともに、他の正常な膜モジュール7b〜7iの濾過処理が再開される。
【0049】その後、他方のグループに含まれる各膜ユニット7(i+1)〜7mについても、同じ手順で、グループ分けと、各膜モジュール7(i+1)〜7mに供給された空気量の測定処理、および空気圧力の測定処理とが順次、繰り返され、破損している膜モジュールが特定されたとき、開状態にされていた各気体供給ライン入口側電磁弁13(i+1)〜13mと、各気体供給ライン出口側電磁弁14(i+1)〜14mとが全て閉状態にされるとともに、破損していると判定された膜モジュール、例えば膜モジュール7mに対応する濾過ラインモジュール入口側電磁弁6mと、濾過ラインモジュール出口側電磁弁8mとが閉状態にされて、この膜モジュール7mの濾過処理が禁止されるとともに、他の正常な膜モジュール7(i+1)〜7(m−1)の濾過処理が再開される。
【0050】以下、残っている各膜ユニット4b〜4nが順次、選択されて、各膜ユニット4b〜4nを構成する濾過ラインモジュール入口側電磁弁6a〜6mと、濾過ラインモジュール出口側電磁弁8a〜8mとが全て閉状態にされた後、全ての気体供給ライン入口側電磁弁13a〜13mと、全ての気体供給ライン出口側電磁弁14a〜14mとが開状態にされて、ガス供給管12→各気体供給ライン入口側電磁弁13a〜13m→各膜モジュール7a〜7mなる経路で、各膜モジュール7a〜7mに空気が供給されるとともに、気体流量計15と、気体圧力計16とによって各膜モジュール7a〜7mに供給された空気の量と、圧力とが測定され、この測定結果に基づき、膜ユニット4b〜4nを構成している各膜モジュール7a〜7mのいずれかが破損しているか否かが判定される。
【0051】そして、各膜ユニット4b〜4nのいずれかに設けられている各膜モジュール7a〜7mのいずれかが破損していると判定された時点で、上述したグループ分けと、各膜モジュール7a〜7mに供給された空気量の測定処理、空気圧力の測定処理とが順次、繰り返されて、破損している膜モジュールがあるか否かが判定され、この判定処理によって破損している膜モジュールが特定されたとき、開状態にされていた各気体供給ライン入口側電磁弁13a〜13mと、各気体供給ライン出口側電磁弁14a〜14mとが全て閉状態にされるとともに、破損していると判定された膜モジュール、例えば膜モジュール7aに対応する濾過ラインモジュール入口側電磁弁6aと、濾過ラインモジュール出口側電磁弁6aとが閉状態にされて、この膜モジュール7aの濾過処理が禁止されるとともに、他の正常な膜モジュール7b〜7mの濾過処理が再開される。
【0052】このように、この実施の形態では、各膜ユニット4a〜4nの1つを順次、選択して、この膜ユニット4a〜4nを構成している各膜モジュール7a〜7mに空気を供給し、各膜モジュール7a〜7mが破損して空気が自由に通過するとき、これを検知して、破損している膜モジュールの使用を禁止するようにしているので、各膜ユニット4a〜4nに設けられている各膜モジュール7a〜7mの濾過膜に、透過水を濁らせないような小さな破れが発生したとき、早期にこれを検出して、透過水側に病原性微生物などが混入するのを防止することができる(請求項1の効果)。
【0053】また、この実施の形態では、各膜ユニット4a〜4nを構成している各膜モジュール7a〜7mのいずれかが破損しているとき、各膜モジュール7a〜7mをグループに分けて、各膜モジュール7a〜7mに対する空気の供給処理と、空気量の測定処理、圧力測定処理とを行って、破損している膜モジュールを特定するようにしているので、少ない検出回数で、どの膜モジュールが破損しているかを特定することができ、これによって各膜ユニット4a〜4nの数が多いときでも、各膜ユニット4a〜4nで使用している各膜モジュール7a〜7mの数が多いときでも、各膜ユニット4a〜4nに設けられている各膜モジュール7a〜7mの濾過膜に、透過水を濁らせないような小さな破れが発生したとき、破損している膜モジュールを早期に特定して、透過水側に病原性微生物などが混入するのを防止することができる(請求項2の効果)。
【0054】また、この実施の形態では、各膜ユニット4a〜4nで使用している各膜モジュール7a〜7mのいずれかが破損しているとき、破損している膜モジュールの濾過ラインモジュール入口側電磁弁と、濾過ラインモジュール出口側電磁弁とを閉状態にして、破損している膜モジュールのみの濾過処理を禁止して、他の正常な膜モジュールの濾過処理を再開するようにした。このため、破損している膜モジュールが見つかったとき、各膜ユニット4a〜4nで使用している各膜モジュール7a〜7mのうち、休止させている正常な膜モジュールの使用を開始して、指定された透過速度で、原水の濾過処理を継続させることができる(請求項3の効果)。
【0055】また、この実施の形態では、各膜ユニット4a〜4nで使用している各膜モジュール7a〜7mが破損しているか否かを検出する際に使用する気体として、空気、またはアルゴンなどの不活性の希ガス、窒素などを使用するようにしているので、各膜ユニット4a〜4nで使用している各膜モジュール7a〜7mの破損有無を検出する際、各膜モジュール7a〜7mに何らの悪影響を与えないようにすることができるとともに、空気、またはアルゴンなどの不活性の希ガス、窒素などが透過水に溶け込んでも、また各気体供給ライン出口側電磁弁14a〜14mを通って、大気中に排出されても、透過水や周囲に何ら、悪影響を与えないようにすることができる(請求項5の効果)。
【0056】なお、上述した実施の形態では、各膜ユニット4a〜4nの膜破損検出処理を行い、破損している膜ユニットが見つかったとき、この膜ユニットを構成している各膜モジュール7a〜7mを2つのグループにわけて、各グループ毎に膜モジュールが破損していないかどうを検出するようにしているが、破損している膜ユニットを構成する各膜モジュール7a〜7mを順次、1つずつ選択して、膜モジュールが破損していないかどうを検出するようにしても良い。
【0057】このようにしても、各膜モジュール7a〜7mに対する検査回数が増加するものの、各膜ユニット4a〜4nを構成する各膜モジュール7a〜7mのうち、どの膜モジュールが破損しているかを特定することができる。
【0058】上述した実施の形態では、各膜ユニット4a〜4nの各膜モジュール7a〜7mが破損しているか否かを判定するようにしているが、各膜ユニット4a〜4nの各膜モジュール7a〜7mが目詰まりを起こしているか否かを判定するようにしても良い。
【0059】この場合、各膜モジュール7a〜7mの濾過膜に形成されている各膜孔が目詰まりを起こせば、濾過膜が新品であるときに比べて、気体を通過させ難くなることから、上述した膜破損検出処理と同様な手順で、各膜モジュール7a〜7mに空気を供給しているとき、空気の圧力を増大させても、各膜モジュール7a〜7mに供給される空気の量が極端に少なくいとき、各膜モジュール7a〜7mの濾過膜が目詰まりを起こしていると判定する。
【0060】また、上述した実施の形態では、破損していると判定された膜モジュール、目詰まりを起こしている膜モジュールが見つかったとき、この膜モジュールに対応する濾過ラインモジュール入口側電磁弁と、濾過ラインモジュール出口側電磁弁とを閉状態にして、この膜モジュールの使用を禁止するようにしているが、破損していると判定された膜モジュール、目詰まりを起こしている膜モジュールが見つかったとき、音声や画面表示などによって、破損や目詰まりを起こしている膜モジュールの番号をオペレータに知らせるようにしても良い。
【0061】これにより、破損や目詰まりを起こしている膜モジュールの情報に基づき、各膜ユニット4a〜4nを構成している各膜モジュール7a〜7mの洗浄時期、停止期間、交換時期を適切に設定させることができ、これによってメンテナンスの負荷を軽減させて、システムの運転効率を向上させることができる(請求項4の効果)。
【0062】なお、上述した実施の形態では、膜破損検出処理を行うとき、各膜モジュール7a〜7mの濾過ラインモジュール出口側に空気を供給して、各膜モジュール7a〜7mが破損しているか否か、または目詰まりを起こしているか否かを検出するようにしているが、各膜モジュール7a〜7mの濾過ラインモジュール入口側に空気を供給して、各膜モジュール7a〜7mが破損しているか否かを検出するようにしても良い。
【0063】このようにしても、上述した実施の形態と同様に、各膜ユニット4a〜4nに設けられている各膜モジュール7a〜7mの濾過膜に、透過水を濁らせないような小さな破れが発生したとき、早期にこれを検出して、透過水側に病原性微生物などが混入するのを防止することができる(請求項1の効果)。
【0064】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、請求項1の膜濾過装置では、濾過膜に透過水を濁らせないような小さな破れ、目詰まりが発生したとき、早期にこれを検出して、透過水側に病原性微生物などが混入するのを防止することができる。
【0065】請求項2の膜濾過装置では、複数の濾過膜のいずれかが破損または目詰まりを起こしているとき、少ない検出回数で、どの濾過膜が破損または目詰まりを起こしているかを検出することができ、これによって濾過膜の使用枚数が多いときでも、濾過膜に、透過水を濁らせないような小さな破れ、目詰まりが発生したとき、早期にこれを検出して、透過水側に病原性微生物などが混入するのを防止することができる。
【0066】請求項3の膜濾過装置では、破損していると判定した濾過膜または目詰まりを起こしている濾過膜が見つかったとき、この濾過膜の使用を禁止するとともに、他の正常な濾過膜の使用を開始して、濾過処理を継続することができる。
【0067】請求項4の膜濾過装置では、破損していると判定した濾過膜または目詰まりを起こしている濾過膜が見つかったとき、これを音声または画面などでオペレータに知らせ、濾過膜の洗浄時期、濾過膜の交換時期、あるいは濾過膜のメンテナンス時期などを判断させることができる。
【0068】請求項5の膜濾過装置では、濾過膜の破損有無、目詰まり有無を検出する際に使用する気体によって、濾過膜、透過水、および周囲の環境などに何ら、悪影響を与えないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による膜濾過装置の実施の形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す各膜ユニットの詳細な構成例を示す図である。
【図3】図1に示す膜濾過装置の膜破損検出処理例を示すグラフである。
【図4】特開平6−182164号公報に示す「膜分離装置」で開示されている膜分離装置の概要を示す構成図である。
【図5】特開平6−170365号公報に示す「上水道における上水方式」で開示されている浄水設備の概要を示す構成図である。
【符号の説明】
1:膜濾過装置
2:供給水ポンプ
3a〜3n:濾過ラインユニット入口側電磁弁
4a〜4n:膜ユニット
5a〜5n:濾過ラインユニット出口側電磁弁
6a〜6m:濾過ラインモジュール入口側電磁弁
7a〜7m:膜モジュール
8a〜8m:濾過ラインモジュール出口側電磁弁
9:逆洗水供給ポンプ
10a〜10m:逆洗ライン入口側電磁弁
11a〜11m:逆洗ライン出口側電磁弁
12:ガス供給管
13a〜13m:気体供給ライン入口側電磁弁
14a〜14m:気体供給ライン出口側電磁弁
15:気体流量計
16:気体圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】 供給された原水を濾過する濾過膜と、当該濾過膜の濾過休止時において、前記濾過膜に対して濾過方向と逆側に圧力気体を供給する気体供給手段と、この気体供給手段から前記濾過膜に供給される気体圧力とその気体流量とを測定し、この測定結果に基づき、前記濾過膜の破損有無または目詰まり有無を判定する膜状態判定手段と、を備えたことを特徴とする膜濾過装置。
【請求項2】 請求項1に記載の膜濾過装置において、前記膜状態判定手段は、複数の濾過膜を複数のグループに分け、各グループに供給される気体圧力とその気体流量とを測定し、この測定結果に基づき、前記濾過膜の破損有無または目詰まり有無を判定することにより劣化した濾過膜が存在するグループを特定し、特定されたグループをさらに複数のグループに分け、各グループに供給される気体圧力とその気体流量とを測定し、この測定結果に基づき、前記濾過膜の破損有無または目詰まり有無を判定する処理を繰り返すことによって劣化した濾過膜を特定する手段である、ことを特徴とする膜濾過装置。
【請求項3】 請求項1または2に記載の膜濾過装置において、前記膜状態判定手段は、破損していると判定した濾過膜または目詰まりを起こしていると判定した濾過膜の使用を禁止状態にする禁止手段を含む、ことを特徴とする膜濾過装置。
【請求項4】 請求項1または2に記載の膜濾過装置において、前記膜状態判定手段は、各濾過膜のいずれかが破損していると判定したとき、または目詰まりを起こしていると判定したとき、その判定結果を音声、または画面でオペレータに提示する、ことを特徴とする膜濾過装置。
【請求項5】 請求項1または2に記載の膜濾過装置において、前記気体供給手段は、各濾過膜に供給する気体として、空気、希ガス、窒素ガスのいずれかを使用する、ことを特徴とする膜濾過装置。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2000−93765(P2000−93765A)
【公開日】平成12年4月4日(2000.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−270245
【出願日】平成10年9月24日(1998.9.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】