説明

膜状太陽光発電装置

【課題】太陽光発電装置において、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する変換効率を向上できるようにし、かつ、太陽光発電装置の寿命を向上できるようにする。
【解決手段】膜状太陽光発電装置は、固定側部材2に支持されて張設される膜体4と、膜体4の面方向に沿って延びると共に膜体4の外面上に配置される可撓性板形状の太陽電池5と、太陽電池5を膜体4に取り付ける取付具6とを備える。取付具6は、太陽電池5の外縁部5aに形成された貫通孔9と、一端部10aが膜体4に接合され、他端部10b側が貫通孔9に挿通された状態で上記他端部10bが膜体4に接合される取付膜材10とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物など固定側部材に支持されて張設される膜体に対し、取付具により可撓性板形状の太陽電池を取り付けるようにした膜状太陽光発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記膜状太陽光発電装置には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、膜状太陽光発電装置は、固定側部材に支持されて張設される膜体と、この膜体の面方向に沿って延びると共にこの膜体の外面上に配置される可撓性板形状の太陽電池と、この太陽電池を上記膜体に取り付ける取付具とを備えている。また、この取付具は、上記太陽電池をその外方から全体的に覆って、外縁部が上記膜体に溶着される樹脂製の透明カバー体で構成されている。
【0003】
そして、上記太陽電池が太陽光を受光するとき、この太陽電池により、太陽光の光エネルギーが電気エネルギーに変換される。そして、この電気エネルギーはバッテリに充電されたり、その他の電気機器に供給されたりして、自然エネルギーの有効利用が図られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−107871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の技術では、上記したように、カバー体は太陽電池をその外方から全体的に覆うものであるため、太陽電池に向かう太陽光は、その全てが上記カバー体を一旦透過した後、上記太陽電池に受光される。よって、上記カバー体を太陽光が透過する分、この太陽光の光エネルギーが減衰させられることから、この太陽光発電装置では、光エネルギーを電気エネルギーに変換する変換効率が低下しがちとなる。
【0006】
また、上記したように、カバー体は太陽電池をその外方から全体的に覆うものであるため、上記カバー体の面積が大きくなって、質量が大きくなりがちである。よって、このカバー体から膜体に与えられる負荷が大きくなることに因り、太陽光発電装置の寿命が低下するおそれもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、太陽光発電装置において、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する変換効率を向上できるようにし、かつ、この太陽光発電装置の寿命を向上できるようにすることである。
【0008】
請求項1の発明は、固定側部材2に支持されて張設される膜体4と、この膜体4の面方向に沿って延びると共にこの膜体4の外面上に配置される可撓性板形状の太陽電池5と、この太陽電池5を上記膜体4に取り付ける取付具6とを備えた膜状太陽光発電装置において、
上記取付具6が、上記太陽電池5の外縁部5aに形成された貫通孔9と、一端部10aが上記膜体4に接合W1され、他端部10b側が上記貫通孔9に挿通された状態で上記他端部10bが上記膜体4に接合W2される取付膜材10とを有したことを特徴とする膜状太陽光発電装置である。
【0009】
請求項2の発明は、上記取付膜材10の一端部10aが上記太陽電池5の裏面側に配置され、上記取付膜材10の他端部10bが上記太陽電池5の面方向の外方に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の膜状太陽光発電装置である。
【0010】
請求項3の発明は、上記太陽電池5の外縁部5aに沿って上記取付膜材10の他端部10b側が所定間隔をあけて複数配設され、上記各取付膜材10の一端部10a同士が一体的に連結されたことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の膜状太陽光発電装置である。
【0011】
請求項4の発明は、上記膜体4の面方向で、この膜体4の傾斜した方向Aに直交する方向Bの上記太陽電池5の各外縁部5aがそれぞれ上記取付具6により上記膜体4に取り付けられ、上記傾斜した方向Aにおける上記太陽電池5の上部の外縁部5bと上記膜体4との間の隙間13を覆うカバー膜材14が設けられたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載の膜状太陽光発電装置である。
【0012】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明による効果は、次の如くである。
【0014】
請求項1の発明は、固定側部材に支持されて張設される膜体と、この膜体の面方向に沿って延びると共にこの膜体の外面上に配置される可撓性板形状の太陽電池と、この太陽電池を上記膜体に取り付ける取付具とを備えた膜状太陽光発電装置において、
上記取付具が、上記太陽電池の外縁部に形成された貫通孔と、一端部が上記膜体に接合され、他端部側が上記貫通孔に挿通された状態で上記他端部が上記膜体に接合される取付膜材とを有している。
【0015】
このため、第1に、上記太陽電池に向かう太陽光は、上記取付具を透過したり、この取付具に邪魔されたりすることなく、上記太陽電池に、より直接受光される。よって、その分、この太陽光発電装置によれば、光エネルギーを電気エネルギーに変換する変換効率を向上させることができる。
【0016】
また、第2に、上記膜体に太陽電池を取り付ける取付具は、従来の技術のように太陽電池を全体的に覆うものではないため、その形状を小さくして質量を小さく抑制できる。よって、上記取付具から膜体に与えられる負荷を小さく抑制できるため、太陽光発電装置の寿命の向上を達成できる。
【0017】
しかも、上記したように、取付具の取付膜材は、その一端部が膜体に接合され、他端部側が上記太陽電池の外縁部に形成された貫通孔に挿通された状態で上記他端部が膜体に接合されている。このため、上記取付膜材の可撓性によって、上記太陽電池は、膜体に対しある程度の相対移動が許容された状態でこの膜体に取り付けられる。よって、仮に、上記固定側部材に支持されて張設される膜体側から上記太陽電池に張力など外力が与えられようとしても、これは、上記した膜体に対する太陽電池の相対移動によって抑制されるのであり、この点でも、太陽光発電装置の寿命の向上が達成される。
【0018】
更に、第3に、上記したように、太陽電池は膜体に対し、この膜体に接合される取付具の取付膜材よって取り付けられる。このため、仮に、これらのそれぞれの材質の相違や、溶融温度が互いに相違すること等により、膜体に太陽電池を直接接合して取り付けることはできないとしても、上記膜体への太陽電池の取り付けは、上記した取付具の取付膜材によって可能となる。よって、上記発明によれば、膜体と太陽電池との各材質など構成上の相違にかかわらず、膜体への太陽電池の取り付けができるため、これら膜体と太陽電池とについて、それぞれ構成上の選択の自由度が向上する。
【0019】
請求項2の発明は、上記取付膜材の一端部が上記太陽電池の裏面側に配置され、上記取付膜材の他端部が上記太陽電池の面方向の外方に配置されている。
【0020】
このため、上記膜体に太陽電池を取付具により取り付けた場合、この取付具の取付膜材の一端部は上記太陽電池の裏面側に配置されていて、外観上、容易に見えることは防止される。よって、上記太陽光発電装置の外観上の見栄えが向上する。
【0021】
また、上記膜体に太陽電池を取付具により取り付ける場合、この取付具の取付膜材の他端部は太陽電池の外方に配置されているため、上記膜体への上記取付具の取付膜材の他端部の接合は、上記太陽電池に邪魔されることなく円滑にできる。よって、上記取付具による膜体への太陽電池の取り付けは容易にできる。
【0022】
請求項3の発明は、上記太陽電池の外縁部に沿って上記取付膜材の他端部側が所定間隔をあけて複数配設され、上記各取付膜材の一端部同士が一体的に連結されている。
【0023】
このため、上記膜体から上記取付具の取付膜材を介し太陽電池に引張力など外力が与えられるとしても、この外力は上記取付膜材の各他端部側を介し分散して上記太陽電池に与えられる、よって、上記外力により太陽電池が損傷することは防止されるため、太陽光発電装置の寿命の向上を、より確実に達成できる。
【0024】
また、上記したように、取付具の各取付膜材の一端部同士は一体的に連結されているため、膜体に太陽電池を取付具により取り付けようとして、この取付具の取付膜材の各一端部を膜体に取り付ける場合には、これら各一端部をそれぞれ膜体に接合することを避けて、この接合工程を少なくすることができる。よって、上記膜体への取付膜材の各一端部の接合作業が容易にできるため、上記膜体への太陽電池の取り付けが容易にできる。
【0025】
請求項4の発明は、上記膜体の面方向で、この膜体の傾斜した方向に直交する方向の上記太陽電池の各外縁部がそれぞれ上記取付具により上記膜体に取り付けられ、上記傾斜した方向における上記太陽電池の上部の外縁部と上記膜体との間の隙間を覆うカバー膜材が設けられている。
【0026】
このため、上記膜体上を上記傾斜した方向の下方に向かって雪が滑落する場合、この雪が上記膜体と太陽電池との間に入り込むことは上記各取付具とカバー膜材とによって防止される。よって、上記膜体上に雪が滞留することは防止されて、膜体に与えられる負荷が小さく抑制されるため、この点でも、太陽光発電装置の寿命の向上を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1を示し、図2のI−I線矢視拡大断面図である。
【図2】実施例1を示し、太陽光発電装置の部分平面部分破断図である。
【図3】実施例1を示し、図2のIII−III線矢視拡大断面図である。
【図4】実施例2を示し、図1に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の膜状太陽光発電装置に関し、太陽光発電装置において、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する変換効率を向上できるようにし、かつ、この太陽光発電装置の寿命を向上できるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0029】
即ち、膜状太陽光発電装置は、固定側部材に支持されて張設される膜体と、この膜体の面方向に沿って延びると共にこの膜体の外面上に配置される可撓性板形状の太陽電池と、この太陽電池を上記膜体に取り付ける取付具とを備える。上記取付具は、上記太陽電池の外縁部に形成された貫通孔と、一端部が上記膜体に接合され、他端部側が上記貫通孔に挿通された状態で上記他端部が上記膜体に接合される取付膜材とを有している。
【0030】
なお、上記接合は、接着剤による接着や、熱による溶着により接合することが可能である。
【実施例1】
【0031】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例1を添付の図1〜3に従って説明する。
【0032】
図1〜3において、符号1は膜状太陽光発電装置である。この太陽光発電装置1は、建造物などの固定側部材2に支持具3により支持されて張設される膜体4と、この膜体4の外面(上面)に沿って延びると共にこの外面上に配置される可撓性板形状の複数の太陽電池5と、これら各太陽電池5をそれぞれ上記膜体4に取り付ける取付具6とを備えている。
【0033】
上記膜体4は、その上面が太陽光に向かうよう水平面に対し下方に向かって傾斜した方向Aに延びている。この膜体4は、ケナフ繊維等の天然繊維、ポリエステル繊維等の合成繊維、もしくはガラス繊維等の無機繊維等により形成される織物である基材と、この基材の各外面に被覆(コーティング)されるポリ塩化ビニル(PVC)やフッ素樹脂など熱可塑性樹脂製の表面材(コーティング材)とを備えている。なお、上記膜体4の表面材は、少なくとも熱により溶着する部分の表面がポリ塩化ビニルやフッ素樹脂等の熱可塑性樹脂であればよく、その他の部分の外面には、汚れ防止のための光触媒層を設けていてもよいし、もしくは、上記熱可塑性樹脂に光触媒粒子を含有させることにより光触媒層としてもよい。
【0034】
上記太陽電池5はそれぞれ矩形をなし、互いに同形同大とされて、上記膜体4の面方向での上記傾斜した方向Aと、この傾斜した方向Aに直交する方向(傾斜の無い方向)Bとに碁盤目状となるよう上記膜体4の外面上に配置されている。上記各太陽電池5の表面材(カバー材)は、フッ素樹脂、例えばテトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)等により形成されている。
【0035】
上記取付具6は、上記直交する方向Bにおける上記太陽電池5の外縁部5aにそれぞれ形成されたスリット状貫通孔9と、一端部10aが上記膜体4に熱溶着により接合W1され、他端部10b側が上記貫通孔9に挿通された状態で上記他端部10bが上記膜体4に熱溶着により接合W2される取付膜材10とを有している。
【0036】
上記取付膜材10の少なくとも表面材は、上記膜体4と接着剤による接着や熱溶着可能な素材であれば特に限定されないが、例えば、上記膜体4の少なくとも表面材がポリ塩化ビニルであれば、ポリ塩化ビニルが好ましく、上記膜体4の少なくとも表面材がフッ素樹脂であれば、上記取付膜材10の少なくとも表面材がフッ素樹脂というように、熱可塑性樹脂の中でも同じ素材であることが好ましい。特に上記膜体4の表面材がフッ素樹脂の場合は、接合強度を高めるために上記取付膜材10との間に溶融粘度の低いテトラフルオロエチレン−へキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)からなるテープを介在させて溶着してもよいし、上記取付膜材10自体をFEPにより作成してもよく、これにより実用上十分な溶着強度を得ることが可能となる。
【0037】
上記貫通孔9は、上記太陽電池5の各外縁部に沿う方向(傾斜した方向A)に所定の等間隔をあけて複数(4つ)形成されている。一方、上記取付膜材10は、各貫通孔9毎に個別に複数(4つ)設けられている。上記各取付膜材10は上記直交する方向Bに長い長方形状をなして互いに同形同大とされている。上記各取付膜材10は、上記太陽電池5の各外縁部に沿う方向(傾斜した方向A)で上記貫通孔9と同様に所定の等間隔をあけて配置されている。上記取付膜材10の構造、材質は上記膜体4と同様とされる。
【0038】
上記各取付膜材10の長手方向の一端部10aは上記太陽電池5の外縁部5aの裏面側、つまり、太陽電池5の外縁部5aと膜体4との間に配置されて上記膜体4に接合W1されている。また、上記各取付膜材10の長手方向の他端部10bは上記太陽電池5の面方向(膜体4の面方向)の外方近傍に配置されて上記膜体4に接合W2されている。
【0039】
なお、図2中一点鎖線で示すように、上記した太陽電池5の各外縁部5a毎における複数(4つ)の取付膜材10の各一端部10a同士を一体的に連結し、上記太陽電池5の各外縁部5a毎に設けられる取付具6をそれぞれ櫛形状となるようにしてもよい。
【0040】
図2,3において、上記傾斜した方向Aにおける上記太陽電池5の上部の外縁部5bと上記膜体4との間の隙間13をその外方から覆うカバー膜材14が設けられている。具体的には、このカバー膜材14は上記太陽電池5の上部の外縁部5bに沿って上記直交する方向Bに長く延びる帯形状とされている。上記カバー膜材14の構造、材質は上記膜体4と同様とされる。上記カバー膜材14における上記傾斜した方向Aでの上端縁部と長手方向の各端部とはそれぞれ上記膜体4に熱溶着により接合W3されている。上記カバー膜材14の上記傾斜した方向Aでの下端縁部は、上記傾斜した方向Aにおける上記太陽電池5の上端縁部にその外方から重ねられている。
【0041】
なお、上記取付具6の取付膜材10とカバー膜材14とについても、前記膜体44と同様に、熱により溶着する部分の表面がポリ塩化ビニル(PVC)等の熱可塑性樹脂であればよく、その他の部分の外面には、汚れ防止のための光触媒層を設けてもよいし、もしくは、上記熱可塑性樹脂に光触媒粒子を含有させることにより光触媒層としてもよい。
【0042】
また、上記各溶着による接合W1〜W3は、熱板溶着、高周波溶着、熱風溶着、および熱コテ式溶着などにより達成可能である。なお、上記各接合W1〜W3は、溶着の代わりに接着剤による接合も可能である。
【0043】
上記固定側部材2に支持されて張設された膜体4に太陽電池5を取付具6により取り付ける場合、次のようにすることができる。
【0044】
即ち、図1中実線で示すように、まず、上記膜体4に取付膜材10の一端部10aを接合W1する。次に、図1中一点鎖線で示すように、上記膜体4の外方に向けて突出させた上記取付膜材10の他端部10bに対し上記太陽電池5を膜体4の外方から接近Cさせ、上記取付膜材10の他端部10b側を上記太陽電池5の貫通孔9に挿通させる。次に、図1中実線で示すように上記取付膜材10の他端部10bを屈曲Dさせて膜体4に重ね、この膜体4に接合W2する。以下、上記のようにして各取付膜材10を膜体4にそれぞれ接合W1,W2すれば、上記膜体4への太陽電池5の取り付けができる。
【0045】
上記構成によれば、取付具6が、上記太陽電池5の外縁部5aに形成された貫通孔9と、一端部10aが上記膜体4に接合W1され、他端部10b側が上記貫通孔9に挿通された状態で上記他端部10bが上記膜体4に接合W2される取付膜材10とを有している。
【0046】
このため、第1に、上記太陽電池5に向かう太陽光は、上記取付具6を透過したり、この取付具6に邪魔されたりすることなく、上記太陽電池5に、より直接受光される。よって、その分、この太陽光発電装置1によれば、光エネルギーを電気エネルギーに変換する変換効率を向上させることができる。
【0047】
また、第2に、上記膜体4に太陽電池5を取り付ける取付具6は、従来の技術のように太陽電池5を全体的に覆うものではないため、その形状を小さくして質量を小さく抑制できる。よって、上記取付具6から膜体4に与えられる負荷を小さく抑制できるため、太陽光発電装置1の寿命の向上を達成できる。
【0048】
しかも、上記したように、取付具6の取付膜材10は、その一端部10aが膜体4に接合W1され、他端部10b側が上記太陽電池5の外縁部5aに形成された貫通孔9に挿通された状態で上記他端部10bが膜体4に接合W2されている。このため、上記取付膜材10の可撓性によって、上記太陽電池5は、膜体4に対しある程度の相対移動が許容された状態でこの膜体4に取り付けられる。よって、仮に、上記固定側部材2に支持されて張設される膜体4側から上記太陽電池5に張力など外力が与えられようとしても、これは、上記した膜体4に対する太陽電池5の相対移動によって抑制されるのであり、この点でも、太陽光発電装置1の寿命の向上が達成される。
【0049】
更に、第3に、上記したように、太陽電池5は膜体4に対し、この膜体4に接合W1,W2される取付具6の取付膜材10よって取り付けられる。このため、仮に、上記膜体4の表面材を溶着温度が150〜180℃程度であるポリ塩化ビニル樹脂(PVC)とする一方、上記太陽電池5の表面材を溶着温度が250〜300℃程度であるフッ素樹脂(ETFE)とし、つまり、これら4,5のそれぞれの材質の相違や、溶融温度が互いに相違すること等により、膜体4に太陽電池5を直接溶着など接合して取り付けることはできないとしても、上記膜体4への太陽電池5の取り付けは、上記した取付具6の取付膜材10によって可能となる。よって、上記構成によれば、膜体4と太陽電池5との各材質など構成上の相違にかかわらず、膜体4への太陽電池5の取り付けができるため、これら膜体4と太陽電池5とについて、それぞれ構成上の選択の自由度が向上する。
【0050】
また、前記したように、取付膜材10の一端部10aが上記太陽電池5の裏面側に配置され、上記取付膜材10の他端部10bが上記太陽電池5の面方向の外方に配置されている。
【0051】
このため、上記膜体4に太陽電池5を取付具6により取り付けた場合、この取付具6の取付膜材10の一端部10aは上記太陽電池5の裏面側に配置されていて、外観上、容易に見えることは防止される。よって、上記太陽光発電装置1の外観上の見栄えが向上する。
【0052】
また、上記膜体4に太陽電池5を取付具6により取り付ける場合、この取付具6の取付膜材10の他端部10bは太陽電池5の外方に配置されているため、上記膜体4への上記取付具6の取付膜材10の他端部10bの接合W2は、上記太陽電池5に邪魔されることなく円滑にできる。よって、上記取付具6による膜体4への太陽電池5の取り付けは容易にできる。
【0053】
また、前記したように、太陽電池5の外縁部5aに沿って上記取付膜材10の他端部10b側が所定間隔をあけて複数配設され、上記各取付膜材10の一端部10a同士が一体的に連結されている。
【0054】
このため、上記膜体4から上記取付具6の取付膜材10を介し太陽電池5に引張力など外力が与えられるとしても、この外力は上記取付膜材10の各他端部10b側を介し分散して上記太陽電池5に与えられる、よって、上記外力により太陽電池5が損傷することは防止されるため、太陽光発電装置1の寿命の向上を、より確実に達成できる。
【0055】
また、前記した図2中一点鎖線で示すように、取付具6の各取付膜材10の一端部10a同士は一体的に連結されているため、膜体4に太陽電池5を取付具6により取り付けようとして、この取付具6の取付膜材10の各一端部10aを膜体4に取り付ける場合には、これら各一端部10aをそれぞれ膜体4に接合W1することを避けて、この接合W1工程を少なくすることができる。よって、上記膜体4への取付膜材10の各一端部10aの接合作業が容易にできるため、上記膜体4への太陽電池5の取り付けが容易にできる。
【0056】
また、前記したように、膜体4の面方向で、この膜体4の傾斜した方向Aに直交する方向Bの上記太陽電池5の各外縁部5aがそれぞれ上記取付具6により上記膜体4に取り付けられ、上記傾斜した方向Aにおける上記太陽電池5の上部の外縁部5bと上記膜体4との間の隙間13を覆うカバー膜材14が設けられている。
【0057】
このため、上記膜体4上を上記傾斜した方向Aの下方に向かって雪が滑落する場合、この雪が上記膜体4と太陽電池5との間に入り込むことは上記各取付具6とカバー膜材14とによって防止される。よって、上記膜体4上に雪が滞留することは防止されて、膜体4に与えられる負荷が小さく抑制されるため、この点でも、太陽光発電装置1の寿命の向上を達成できる。
【0058】
なお、以上は図示の例によるが、上記太陽電池5は三角形や五角形など多角形であってもよく、円形や楕円形であってもよい。また、上記取付具6の貫通孔9は長孔や円形であってもよい。また、上記傾斜した方向Aの太陽電池5の各外縁部をそれぞれ取付具6により膜体4に取り付けるようにしてもよい。
【0059】
また、上記貫通孔9の数は特に限定されず、上記太陽電池5の上記傾斜した方向Aの長さ等に応じて、適宜必要に応じて設定される。また、上記傾斜した方向Aに沿う方向に限らず、直行する方向Bに沿う方向、あるいは上記太陽電池の形状等によってどの外縁部に設けてもよい。
【0060】
さらに、上記取付膜材10の一端部10aを上記膜体4に取り付ける場合の一例として、工場で先に膜体4と溶着しておいてもよく、このようにすれば、施工現場での太陽電池5の取り付けが、より容易となる。
【0061】
以下の図4は、実施例2を示している。この実施例2は、前記実施例1と構成、作用効果において多くの点で共通している。そこで、これら共通するものについては、図面に共通の符号を付してその重複した説明を省略し、異なる点につき主に説明する。また、これら実施例における各部分の構成を、本発明の目的、作用効果に照らして種々組み合せてもよい。
【実施例2】
【0062】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例2を添付の図4に従って説明する。
【0063】
図4において、上記取付膜材10は二枚重ねとなるよう屈曲されており、その一端部10aと他端部10bとは共に上記太陽電池5の面方向の外方に配置されている。また、上記取付膜材10の一端部10aは、この取付膜材10の長手方向の中途部の裏面側に配置されている。
【0064】
上記構成によれば、上記膜体4に太陽電池5を取付具6により取り付ける場合、次のようにすることができる。
【0065】
即ち、まず、上記太陽電池5に形成された貫通孔9に取付膜材10を挿通させて二枚重ねとなるよう屈曲させ、これら組み合わせ体5,10を上記膜体4の外面に重ねる。次に、この膜体4に上記取付膜材10の一端部10aと他端部10bとを順次接合W1,W2する。以下、上記のようにして各取付膜材10を膜体4にそれぞれ接合W1,W2すれば、上記膜体4への太陽電池5の取り付けができる。
【符号の説明】
【0066】
1 太陽光発電装置
2 固定側部材
3 支持具
4 膜体
5 太陽電池
5a 外縁部
5b 外縁部
6 取付具
9 貫通孔
10 取付膜材
10a 一端部
10b 他端部
13 隙間
14 カバー膜材
A 傾斜した方向
B 直交する方向
C 接近
D 屈曲
W1 接合
W2 接合
W3 接合

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側部材に支持されて張設される膜体と、この膜体の面方向に沿って延びると共にこの膜体の外面上に配置される可撓性板形状の太陽電池と、この太陽電池を上記膜体に取り付ける取付具とを備えた膜状太陽光発電装置において、
上記取付具が、上記太陽電池の外縁部に形成された貫通孔と、一端部が上記膜体に接合され、他端部側が上記貫通孔に挿通された状態で上記他端部が上記膜体に接合される取付膜材とを有したことを特徴とする膜状太陽光発電装置。
【請求項2】
上記取付膜材の一端部が上記太陽電池の裏面側に配置され、上記取付膜材の他端部が上記太陽電池の面方向の外方に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の膜状太陽光発電装置。
【請求項3】
上記太陽電池の外縁部に沿って上記取付膜材の他端部側が所定間隔をあけて複数配設され、上記各取付膜材の一端部同士が一体的に連結されたことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の膜状太陽光発電装置。
【請求項4】
上記膜体の面方向で、この膜体の傾斜した方向に直交する方向の上記太陽電池の各外縁部がそれぞれ上記取付具により上記膜体に取り付けられ、上記傾斜した方向における上記太陽電池の上部の外縁部と上記膜体との間の隙間を覆うカバー膜材が設けられたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載の膜状太陽光発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−256735(P2012−256735A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129175(P2011−129175)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】