膜電極接合体とその製造方法および燃料電池
【課題】膜電極接合体の低温環境下における耐久性を向上させる。
【解決手段】膜電極接合体20は、電解質膜22の一方の膜面に単層のアノード触媒電極30を接合し、他方の膜面に接合したカソード触媒電極40を第1の触媒層41と第2の触媒層42の2層構造とする。第1の触媒層41と第2の触媒層42は、Pt触媒を担持したカーボンとアイオノマとを含有し、それぞれ、カーボンに対するアイオノマの重量比I/Cが0.75とされ、第2の触媒層42は、第1の触媒層41よりも小さい剥離強度とされている。これにより、第2の触媒層42での触媒層破壊時のプロトン伝導性を確保した上で、温度変化による触媒破壊を電解質膜22から離れた第2の触媒層42に起こす。
【解決手段】膜電極接合体20は、電解質膜22の一方の膜面に単層のアノード触媒電極30を接合し、他方の膜面に接合したカソード触媒電極40を第1の触媒層41と第2の触媒層42の2層構造とする。第1の触媒層41と第2の触媒層42は、Pt触媒を担持したカーボンとアイオノマとを含有し、それぞれ、カーボンに対するアイオノマの重量比I/Cが0.75とされ、第2の触媒層42は、第1の触媒層41よりも小さい剥離強度とされている。これにより、第2の触媒層42での触媒層破壊時のプロトン伝導性を確保した上で、温度変化による触媒破壊を電解質膜22から離れた第2の触媒層42に起こす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に用いられる膜電極接合体とその製造方法、および、膜電極接合体を備える燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応によって発電する燃料電池として、プロトン伝導性を有する電解質膜の両面に触媒電極を接合した膜電極接合体を備えたものが知らせている。従来、こうした膜電極接合体の構造について、種々の技術が提案されている(例えば、下記特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−236631号公報
【0004】
この特許公報では、電解質膜と触媒電極との界面におけるカーボン担体の劣化抑制、或いは界面から電解質膜への触媒溶出抑制に着目して、触媒電極構成を提案している。つまり、カソード側の触媒電極を2層構成とし、カーボン担体に対するアイオノマの比率を電解質膜側の触媒層で高めている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、燃料電池の発電時に伴う上記の電気化学反応によって水が生成され、この生成水は触媒電極に留まることが有り得る。その一方、燃料電池は、一般に、屋外で使用されることが多く、様々な温度環境下に晒される。このため、膜電極接合体の触媒電極には、温度変化による膨張・収縮によって比較的大きな応力が作用する。そして、燃料電池が氷点下の低温環境下に繰り返し晒されると、触媒電極の生成水の触媒電極内部での凍結による膨張や氷解による収縮が繰り返される。よって、上記した応力の作用も顕著となって触媒電極の劣化を招き、こうした劣化による性能低下が危惧されるに到った。上記の特許文献では、生成水の凍結・氷解が繰り返し起きる低温環境下での運転を想定した対処が十分とは言えないのが実情である。
【0006】
本発明は、上記した課題を踏まえ、膜電極接合体の低温環境下における耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的の少なくとも一部を達成するために、本発明では、以下の構成を採用した。
【0008】
[適用1:膜電極接合体]
電解質膜の両面に触媒電極を接合した膜電極接合体であって、
少なくとも一方の前記触媒電極は、前記電解質膜に接合した第1の触媒層と、該第1の触媒層に接合した第2の触媒層とを備え、
前記第1、第2の触媒層は、触媒担持担体とアイオノマとを含み、前記触媒担持担体に対する前記アイオノマの重量比が0.7〜1.1に調整され、
前記第2の触媒層は、前記第1の触媒層より層の剥離強度が小さい性質を備える
ことを要旨とする。
【0009】
上記構成の膜電極接合体では、温度変化に伴う応力が作用した場合、剥離強度が小さい性質の第2の触媒層を、第1の触媒層の応力緩和層として機能させることが可能となる。よって、電解質膜に接合した側の第1の触媒層において、応力の作用による劣化を抑制できる。そして、応力緩和層として機能する第2の触媒層に仮に応力作用による劣化が起きても、この第2の触媒層が電解質膜から離れて位置することと、第1の触媒層と同じように触媒担持担体に対するアイオノマの重量比が0.7〜1.1に調整されていることから、低温環境下での発電性能の低下を抑制できる。これは次の理由による。触媒層の劣化はアイオノマにおけるプロトンの通り道の寸断を招くのでプロトン伝導性は低下する。ところが、第2の触媒層では、アイオノマ重量比が第1の触媒層と同程度に高い分だけプロトンの通り道自体の数が多いため、触媒層劣化によりプロトンの通り道の寸断が起きても寸断されないプロトンの通り道を確保できる。プロトンの通り道の確保は、触媒担持担体における三相界面の確保にも繋がるため、第2の触媒層でのプロトン伝導性の低下を抑制できる。この結果、上記構成の膜電極接合体は、低温環境下での高い耐久性を備えるものとなる。
【0010】
この場合、第2の触媒層におけるアイオノマ重量比が0.7〜1.1の範囲を低い側に逸脱すると、プロトンの通り道の数が少なくなって触媒層劣化により寸断されないプロトンの通り道の確保が困難となる。よって、第2の触媒層でのプロトン伝導性の低下抑制の実効性が低くなる。その一方、第2の触媒層におけるアイオノマ重量比が0.7〜1.1の範囲を高い側に逸脱すると、触媒担持担体の表面を覆うアイオノマの厚みや範囲が増えてガスの通り道の減少を招き、ガス拡散性が低下する。しかも、触媒層の濡れ性が高まって、高電流域でのフラッディングを招きやすくなり、ガス拡散性が低下する。
【0011】
上記した膜電極接合体は、次のような態様とすることができる。例えば、前記第1の触媒層については、これを、含有する前記アイオノマのガラス転移温度より高い温度による熱履歴を受けたものとし、前記第2の触媒層については、これを、含有する前記アイオノマのガラス転移温度より低い温度による熱履歴を受けたものとする。こうすれば、第1の触媒層と第2の触媒層とで、熱履歴の温度によりアイオノマの結晶性に差を持たせ、ガラス転移温度より低い温度による熱履歴を受けた第2の触媒層を、ガラス転移温度より高い温度による熱履歴を受けた第1の触媒層より、結晶性を低くできる。この結果、第2の触媒層では、アイオノマの結晶によりアイオノマの高分子の伸びが制限されるので、第2の触媒層の剥離強度を第1の触媒層より容易且つ確実に小さくできる。
【0012】
また、前記第1の触媒層を2〜10μmの厚みとすれば、第2の触媒層に劣化が起きてもその劣化箇所を、上記の厚み分は電解質膜から離すことができる。このため、触媒層の劣化による発電性能の低下抑制の上から望ましい。この場合、第1の触媒層の厚みが2〜10μmの範囲を低い側に逸脱すると、第2の触媒層の劣化箇所が電解質膜に近くなりすぎ、プロトン伝導性の確保の信頼性が性化する。また、第1の触媒層の厚みが2〜10μmの範囲を高い側に逸脱すると、触媒電極、延いては膜電極接合体自体の薄肉化が阻害される。
【0013】
また、前記触媒担持担体をカーボンとすることもでき、こうすれば汎用性が高まる。なお、触媒担持担体をカーボンの他、酸化ケイ素などとすることもできる。
【0014】
[適用2:膜電極接合体の製造方法]
膜電極接合体の製造方法であって、
電解質膜と、電解質膜に接合される触媒電極とを準備する工程と、
前記電解質膜の両面に前記触媒電極を接合する工程とを備え、
前記触媒電極の少なくとも一方を、触媒担持担体とアイオノマとを含有し前記電解質膜に接合した第1の触媒層と、触媒担持担体とアイオノマとを含有し前記第1の触媒層に接合した第2の触媒層とから形成し、
前記第1、第2の触媒層の形成に際しては、前記触媒担持担体に対する前記アイオノマの重量比を0.7〜1.1に調整し、
前記触媒電極の接合に際して、前記第1の触媒層を、含有する前記アイオノマのガラス転移温度より高い温度による熱処理に処し、前記第2の触媒層を、含有する前記アイオノマのガラス転移温度より低い温度による熱処理に処する
ことを要旨とする。
【0015】
上記構成の膜電極接合体の製造方法によれば、上記したように低温環境下での高い耐久性を備える膜電極接合体を容易に製造できる。しかも、前記第1の触媒層を、前記第2の触媒層が含有する前記アイオノマのガラス転移温度より低いガラス転移温度の前記アイオノマを含有するものとし、前記触媒電極の接合に際しての前記熱処理を、前記第1の触媒層の前記アイオノマのガラス転移温度と前記第2の触媒層の前記アイオノマのガラス転移温度との間の温度で行うようにできる。こうすれば、第1、第2の触媒層のアイオノマのガラス転移温度の間の温度で熱処理を一度行うだけで、第1、第2のそれぞれの触媒層において、アイオノマの結晶性に差を持たせた上で、第2の触媒層を、低い結晶性による低剥離強度の触媒層とできる。
【0016】
[適用3:燃料電池]
燃料ガスと酸素含有ガスの供給を受けて発電する燃料電池であって、
上記したいずれかの膜電極接合体と、
該膜電極接合体の一方の側の触媒電極であるアノードに前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給系と、
前記膜電極接合体の他方の側の触媒電極であるカソードに前記酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給系とを備える
ことを要旨とする。
【0017】
上記構成の燃料電池では、上記したように低温環境下での高い耐久性を備える膜電極接合体を用いていることから、低温環境下での電池性能の維持もしくは向上を図ることができる。そして、前記第1、第2の触媒層を有する前記触媒電極を、発電時に生成水が生成されるカソード側の触媒電極に適用すれば、電池性能の維持等の実効性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。図1は本発明の実施例としての燃料電池10の概略構成を示す説明図、図2は燃料電池10が有する発電単位セル12における膜電極接合体20を模式的に断面視して示す説明図である。
【0019】
図示するように、燃料電池10は、発電単位セル12を対向するエンドプレート14の間に積層させたスタック構造を備え、水素ガス供給系16と、空気供給系18と、図示しない冷却系とを備える。発電単位セル12は、水素ガスと酸素含有ガス(空気)の供給を水素ガス供給系16と空気供給系18とから受け、水素と酸素との電気化学反応によって発電する。この発電単位セル12は、プロトン伝導性を有する電解質膜の両面にアノード側の触媒電極とカソード側の触媒電極を接合してなる後述の膜電極接合体20を、図示しないセパレータによって挟持して構成されている。なお、上記したガス供給径からのそれぞれのガスは、積層されたそれぞれの発電単位セル12が形成するセル内流路(図示略)を経て、個々の発電単位セル12のアノード、カソードに供給される。
【0020】
膜電極接合体20は、図2に模式的に示すように、プロトン伝導性を有する電解質膜22の一方の膜面に単層のアノード触媒電極30を接合し、他方の膜面に複層のカソード触媒電極40を接合して構成されている。本実施例では、電解質膜22として、プロトン伝導性を有する固体高分子型の電解質膜(例えば、フッ素系樹脂のパーフルオロスルホン酸ポリマー)を用いるものとした。電解質膜22として、他の電解質膜を用いるものとしてもよい。
【0021】
カソード触媒電極40は、第1の触媒層41と第2の触媒層42の2層構造とされ、図2に示すように、電解質膜22の側から、第1の触媒層41、第2の触媒層42の順に接合して形成されている。カソード触媒電極40を構成する第1の触媒層41と第2の触媒層42、およびアノード触媒電極30は、それぞれ、触媒とカーボンとアイオノマとを含んでいる。そして、これらは、触媒としての白金(Pt)を担持したカーボンと、アイオノマとしての電解質溶液であるパーフルオロスルホン酸ポリマー溶液と、アルコールと、水とを調合してなる触媒インクを塗布することによって、それぞれ形成され、次のような性質を有する。なお、カソード触媒電極40の第1、第2の触媒層およびアノード触媒電極30の形成手順については後述する。
【0022】
本実施例のアノード触媒電極30は、5μmの厚みで形成され、Pt担持密度が60wt%のカーボンと、ガラス転移温度(Tg温度)が110℃程度のアイオノマ(パーフルオロスルホン酸ポリマー)とを含み、カーボン(C)に対するアイオノマ(I)の重量比(I/C)は、I/C=1.0である。カソード触媒電極40における第1の触媒層41は、2μmの厚みで形成され、Pt担持密度が60wt%のカーボンと、ガラス転移温度(Tg温度)が110℃程度のアイオノマ(パーフルオロスルホン酸ポリマー)とを含み、I/C=0.75である。第2の触媒層42は、10μmの厚みで形成され、Pt担持密度が30wt%のカーボンと、ガラス転移温度(Tg温度)が150℃程度のアイオノマ(パーフルオロスルホン酸ポリマー)とを含み、I/C=0.75である。このように、第1の触媒層41と第2の触媒層42においてアイオノマのガラス転移温度を相違させることは、アイオノマとしてのパーフルオロスルホン酸ポリマーの組成を変えたり、イオン交換当量(EW)において差を持たせることで可能となる。例えば、第1の触媒層41のアイオノマのEWを1000とし、第2の触媒層42ではEWを700とすること等により、第2の触媒層42のアイオノマのガラス転移温度を第1の触媒層41より高くできる。
【0023】
上記した膜電極接合体20の製造手順について説明する。図3は膜電極接合体(MEA)の製造手順を示す工程図である。図示するように、まず、セルサイズの電解質膜22を準備する(ステップS100)。この際、セルサイズに裁断済みの電解質膜22を準備するほか、製膜済みの電解質膜をセルサイズに裁断して準備したり、電解質溶液からの製膜・裁断を行っても良い。
【0024】
次いで、カソード触媒電極40における第1の触媒層41の形成のため、第1触媒層インクの調整と当該インクのスプレー塗布による触媒層形成を行う(ステップS110)。このステップでは、Pt担持密度が60wt%のカーボンと、アイオノマとしてのパーフルオロスルホン酸ポリマー溶液(Tg=110℃)と、アルコールと、水とを調合してI/C=0.75となるよう触媒インクを調整し、膜厚が2μmとなるよう上記触媒インクを電解質膜22の一方の膜面にスプレー塗布する。その後、カソード触媒電極40における第2の触媒層42の形成のため、第2触媒層インクの調整と当該インクのスプレー塗布による触媒層形成を行う(ステップS120)。このステップでは、Pt担持密度が30wt%のカーボンと、アイオノマとしてのパーフルオロスルホン酸ポリマー溶液(Tg=150℃)と、アルコールと、水とを調合してI/C=0.75となるよう触媒インクを調整し、膜厚が10μmとなるよう上記触媒インクを第1の触媒層41に重ねてスプレー塗布する。
【0025】
次に、アノード触媒電極30を別途に薄膜形成する(ステップS130)。このステップでは、Pt担持密度が60wt%のカーボンと、アイオノマとしてのパーフルオロスルホン酸ポリマー溶液(Tg=110℃)と、アルコールと、水とを調合してI/C=1.0となるよう触媒インクを調整する。そして、この触媒インクを、フッ素系樹脂からなる樹脂シートに膜厚が5μmとなるようスプレー塗布し、乾燥を経て、樹脂シート上にアノード触媒電極30を薄膜形成する。
【0026】
続くステップ140では、ステップS110〜120により第1の触媒層41と第2の触媒層42がこの順に塗布済みの電解質膜22の他方の膜面に、樹脂シート上で形成済みのアノード触媒電極30を接合して、ホットプレスにて転写する。この転写の際のホットプレス処理により、アノード触媒電極30およびカソード触媒電極40の第1の触媒層41と第2の触媒層42とは、熱履歴を受けて接合し、膜電極接合体20が得られる。本実施例では、上記したホットプレスの際の熱温度を、第1の触媒層41のアイオノマのガラス転移温度(110℃)と第2の触媒層42のアイオノマのガラス転移温度(150℃)との間の温度、例えば、130℃とした。
【0027】
こうした製造手順で得られた膜電極接合体20において、カソード触媒電極40の第1の触媒層41は、含有するアイオノマのガラス転移温度(110℃)より高い温度(130℃)による熱履歴を受けて電解質膜22に接合形成され、第2の触媒層42は、含有するアイオノマのガラス転移温度(150℃)より低い温度(130℃)による熱履歴を受けて第1の触媒層41に接合形成される。よって、カソード触媒電極40における第1の触媒層41と第2の触媒層42とでは、熱履歴の温度によりアイオノマの結晶性に差が生じ、ガラス転移温度より低い温度による熱履歴を受けた第2の触媒層42は、ガラス転移温度より高い温度による熱履歴を受けた第1の触媒層41より、低い結晶性となる。このため、第2の触媒層42では、アイオノマの結晶により得られた高分子の伸びが制限されるので、第2の触媒層42の剥離強度は第1の触媒層41より小さくなる。
【0028】
ここで、上記のようにして得られた本実施例の膜電極接合体20の性能評価について説明する。図4は本実施例品の膜電極接合体20と比較例品の膜電極接合体とを対比して説明する説明図である。
【0029】
図示するように、比較例品1は、実施例品の膜電極接合体20と同じアノード触媒電極30を有するものの、カソード触媒電極40においては、第2の触媒層42を備えず、第1の触媒層41のみのカソード触媒電極40である。この比較例品1における第1の触媒層41は、その厚みが8μmとされている以外は、実施例品の膜電極接合体20における第1の触媒層41と、TgやI/CおよびカーボンのPt担持密度等は同じとされている。比較例品2は、実施例品の膜電極接合体20と同じアノード触媒電極30を有する点と、カソード触媒電極40が2層構造である点と、同じ第1の触媒層41を有する点と、第2の触媒層42の厚みが実施例品と同一であるものの、カソード触媒電極40の第2の触媒層42は、実施例品の膜電極接合体20における第1の触媒層41と、TgとI/Cにおいて相違する。つまり、比較例品2は、図4に示すように、第2の触媒層42のアイオノマのガラス転移温度が110℃でありI/C=0.5である点で、実施例品の膜電極接合体20と相違する。この場合、実施例品、比較例品1および比較例品2とも、図3に示した製造工程でそれぞれ膜電極接合体を製造し(ホットプレス温度=130℃)、比較例品1においては、ステップS110において厚みを上記した8μmとし、ステップS120については省略した。
【0030】
上記の実施例品と比較例品1および比較例品2での膜電極接合体をセパレータで挟持して図1の発電単位セル12とした後、それぞれの発電単位セル12を80℃と−20℃の環境下に置く冷熱試験に供した。この冷熱試験は、〈1〉発電単位セル12のアノードおよびカソードに80℃で加湿した窒素(加湿窒素)を0.5L/minの流量で10分間供給する加温サイクルと、〈2〉ガス供給を停止した上で発電単位セル12を−20℃に1時間に亘って冷却する冷却サイクルとを繰り返し発電単位セル12に処し、この加温サイクルと冷却サイクルを200回繰り返した。図5は冷熱試験前と試験後における実施例品と比較例品の性能低下の様子を示す説明図、図6は性能低下の様子を示すグラフである。電池性能は、電流・電圧特性で行うこととし、上記の冷熱試験前と試験後とにおいて、単位面積当たりのセル電流を0.8A/cm2とした場合のセル電圧を測定してその測定電圧を電池性能評価に用いた。
【0031】
図示するように、実施例品と比較例品1および比較例品2のいずれについても、冷熱試験後では電池性能の低下が起きているが、実施例品は、性能低下の程度が一番低く、5%ほどしか性能低下が見られなかった。これに対し、比較例品では、12%を超える性能低下が見られた。こうした冷熱試験結果から、本実施例の膜電極接合体20は低温環境下での高い耐久性を発揮すると言える。
【0032】
上記した冷熱試験における加温サイクルと冷却サイクルの繰り返しの際には、実施例品と比較例品1および比較例品2での膜電極接合体に対して、温度変化に伴う応力が作用し、この応力により触媒電極層の劣化が起き、この劣化により上記した電池性能の低下が起きると予想される。この触媒電極層の劣化の有無を実施例品と比較例品1の膜電極接合体について調べた。図7は実施例品と比較例品1の膜電極接合体の断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を模式的に示す説明図である。この図7に示すように、実施例品と比較例品1の膜電極接合体に部分的な触媒層の破壊が観察され、比較例品1では電解質膜22の膜面から1μm以内の箇所で第1の触媒層41に破壊が起き、実施例品では第2の触媒層42に破壊が観察された。そして、この第2の触媒層42の破壊箇所は、電解質膜22の膜面から3μm以上離れていた。なお、カソード触媒電極40が2層構造の比較例品2にあっても、図7の実施例品と同様な箇所に破壊が観察された。
【0033】
こうした触媒層の破壊と電池性能の低下の関係について考察する。比較例品1と実施例品とでは、触媒層の破壊箇所と電解質膜の膜面との隔たりに違いがあり、比較例品1では、電解質膜の膜面から1μm以内に破壊が起きている。電池性能に直結する電気化学反応でのプロトン授受は電解質膜の膜面において起きることから、電解質膜の膜面近傍に触媒層の破壊が見られた比較例品1では、触媒層でのプロトン伝導性が膜面近傍で阻害されるため電池性能の低下が大きい。よって、実施例品のように、少なくとも第1の触媒層41の厚み(本実施例では2μm)だけ隔てた箇所での触媒層の破壊は、比較例品1よりも電池性能の低下程度を小さくできる。
【0034】
カソード触媒電極40が2層構造の比較例品2では、実施例品とほぼ同じ箇所に触媒層の破壊が起きているものの、電池性能の低下は比較例品1よりは少なく、実施例品よりは大きい。このことは次のように説明できる。
【0035】
実施例品と比較例品2とは第2の触媒層42においてほぼ同じ箇所で触媒層が破壊し、この第2の触媒層42の破壊は、第2の触媒層42が有するアイオノマにおけるプロトンの通り道の寸断を招いてプロトン伝導性を低下させるので、実施例品も比較例品2も既述したように電池性能の低下をもたらす。ところが、実施例品の第2の触媒層42ではI/Cが0.75であるのに対し、比較例品2は0.5であることから、実施例品は、I/Cが高い分だけプロトンの通り道自体の数が多いため、触媒層破壊によりプロトンの通り道の寸断が起きても寸断されないプロトンの通り道を確保できる。プロトンの通り道の確保は、Ptを触媒したカーボンにおける三相界面の確保にも繋がるため、第2の触媒層42でのプロトン伝導性の低下を抑制できる。この結果、実施例品は、第2の触媒層42のI/Cを比較例品2より大きくした分だけ冷熱サイクルの繰り返しに対する電池性能の低下程度が低くなり、低温環境下での高い耐久性を備えるものとなる。
【0036】
一方、I/Cが0.5と実施例品より低い比較例品では、I/Cが低い分だけプロトンの通り道の数が少なくなって触媒層破壊により寸断されないプロトンの通り道の確保が困難となる。よって、比較例品2では、第2の触媒層42でのプロトン伝導性の低下抑制の実効性が低くなるため、I/Cが0.75の実施例品より電池性能の低下が大きくなる。これらのことから、第1の触媒層41と第2の触媒層42とを積層させた2層のカソード触媒電極40とする場合、第1の触媒層41については、触媒層破壊箇所を電解質膜の膜面から離すために厚みを2μm以上とすることが望ましく、第2の触媒層42については、プロトン伝導性の低下抑制の実効性を確保するため、I/Cを0.7以上(本実施例では0.75)とすることが望ましい。この場合のI/Cの下限値0.7と上限値について説明する。
【0037】
図8はカソード触媒電極40を第2の触媒層42のみとした場合の膜電極接合体について第2の触媒層42のI/Cと電池性能低下との関係を示すグラフである。この図8に示すように、I/C0.5から大きくなるに従って電池性能の低下は著しく抑制され、0.7程度のI/Cであれば性能低下の観点から実用上大きな問題はない。つまり、I/Cが0.7以上であれば、第2の触媒層42でのプロトン伝導性の低下抑制の実効性を確保できる。その一方、1.1以下のI/Cであれば、Pt触媒を担持したカーボンの表面を覆うアイオノマの厚みや範囲が過剰とならずに、ガスの通り道の減少を抑制でき、ガス拡散性についても確保できる。また、1.1以下のI/Cであれば、第2の触媒層42の濡れ性を不用意に高めることがないので、高電流域でのフラッディング抑制とガス拡散性の確保の上から望ましいと言える。
【0038】
次に、上記した電池性能の推移を触媒層の機械的特性から説明する。既述した冷熱サイクルの繰り返しによる触媒層の破壊を電解質膜の膜面から離れた第2の触媒層42にて起きるようにすることは、第1の触媒層41と第2の触媒層42の剥離強度のバランスを取ることで可能となる。つまり、冷熱サイクルの繰り返しの際の温度変化に伴う応力が作用した場合、第2の触媒層42の剥離強度を小さくすれば、この剥離強度の小さい第2の触媒層42を、第1の触媒層41の応力緩和層として機能させることが可能となる。よって、電解質膜22に接合した側の第1の触媒層41において応力の作用による破壊を抑制して、触媒層破壊を電解質膜の膜面から離れた第2の触媒層42にて起きるようにできる。このため、触媒層破壊を電解質膜の膜面から離すことで、既述したように低温環境下での耐久性を高めることができる。
【0039】
ここで、上記した剥離強度の観点から実施例品を説明する。図9は実施例品が有する第1の触媒層41と第2の触媒層42の剥離強度とホットプレス温度との関係を示すグラフ、図10は実施例品が有する第1の触媒層41の剥離強度とI/Cとの関係を示すグラフである。剥離強度は、JISK6854の2(接着剤の剥離強度試験)に準じて計測し、図9には、実施例品が有する第1の触媒層41の触媒インク(Tg=110℃のアイオノマ含有で)で形成した試験片の剥離強度と、実施例品が有する第2の触媒層42の触媒インク(Tg=150℃のアイオノマ含有)で形成した試験片の剥離強度とを、剥離強度試験器の接着対象片に110℃、130℃および150℃でホットプレス接合して計測値をプロットした。つまり、ホットプレス温度が130℃のプロットは、図3の製造工程で得た実施例品における第1の触媒層41と第2の触媒層42の剥離強度をそれぞれ示している。図10には、実施例品が有する第1の触媒層41の触媒インク(Tg=110℃のアイオノマ含有)におけるI/Cを変化させた場合の試験片の剥離強度をプロットした。なお、この場合の試験片のホットプレス温度は130℃である。
【0040】
図9に示すように、Tg=110℃のアイオノマ含有の触媒層は、Tg(=110℃)以上の熱履歴を受けている。よって、Tg=110℃のアイオノマ含有の触媒層は、アイオノマの高分子(パーフルオロスルホン酸ポリマー)の結晶化が進んで高分子結晶の伸びが起きやすい。その一方、Tg=150℃のアイオノマ含有の触媒層は、Tg(=150℃)以下の熱履歴を受けているので、アイオノマの高分子(パーフルオロスルホン酸ポリマー)の結晶化が進まず結晶の伸びは制限される。このため、図9に示すように、第2の触媒層42に相当するTg=150℃のアイオノマ含有の触媒層は、第1の触媒層41に相当するTg=110℃のアイオノマ含有の触媒層よりも確実に小さな剥離強度となる。このことは、第1の触媒層41と第2の触媒層42とを積層したカソード触媒電極40を有する実施例品の膜電極接合体20では、第2の触媒層42の方が第1の触媒層41よりも小さな剥離強度を有することを意味する。よって、冷熱サイクルの繰り返しの際の温度変化に伴う応力が作用した場合、実施例品では、剥離強度の小さい第2の触媒層42を、第1の触媒層41の応力緩和層として機能させることができ、既述したように、電解質膜22に接合した側の第1の触媒層41の破壊を抑制できる。このため、触媒層破壊を電解質膜の膜面から離すことで、既述したように低温環境下での耐久性を高めることができる。
【0041】
第1の触媒層41に相当するTg=110℃のアイオノマ含有の触媒層を130℃で剥離強度試験器の接着対象片にホットプレスした場合、当該触媒層はTgより高い温度の熱履歴を受けることから、既述したように結晶化が進み剥離強度は高まる。そして、触媒層のI/Cが大きくなれば、結晶化が進む高分子も増えることから、図10に示すように、剥離強度は触媒層のI/Cに依存して大きくなる。この図10は、第2の触媒層42をTg=110℃のアイオノマ含有の触媒層とした比較例比2における第2の触媒層42の剥離強度(I/C=0.5)を示すことになる。図11は図9と図10の剥離強度を実施例品と比較例品の触媒層毎に示した説明図である。
【0042】
図11に示すように、2層構造のカソード触媒電極40を有する実施例品と比較例品2とは、既述したように電解質膜22から離れた第2の触媒層42において冷熱サイクルの繰り返しによる温度変化により破壊する。つまり、この両者のように、第2の触媒層42の破壊強度が第1の触媒層41の破壊強度より0.02N以上小さければ、触媒層の破壊を、電解質膜22から離れた第2の触媒層42においてより確実に起こすことができる。よって、電解質膜22から離れた第2の触媒層42での触媒層破壊をもたらす上では、第2の触媒層42の破壊強度を第1の触媒層41の破壊強度より0.02N以上小さくする必要があると言える。ところで、比較例2では、第2の触媒層42のI/Cが0.5と低いために、図5や図6で説明したように電池性能の低下が起きる。これらを勘案すると、カソード触媒電極40を第1の触媒層41と第2の触媒層42の2層で構成するに当たっては、それぞれの触媒層をI/Cが0.7以上に調整することが、低温環境下での耐久性の向上の上から必要となる。
【0043】
以上説明したように、カソード触媒電極40を第1の触媒層41と第2の触媒層42の2層で構成した本実施例では、第1、第2の両触媒層のI/Cを0.7〜1.1の範囲に調整し、更に、第2の触媒層42の破壊強度を第1の触媒層41の破壊強度より0.02N以上小さくした。こうすることで、本実施例によれば、触媒層の破壊を電解質膜22から離れた第2の触媒層42においてより確実に起こすこと、および、第2の触媒層42での破壊によるプロトン伝導性の低下抑制を行うことで、低温環境下での耐久性を向上できる。
【0044】
この場合、第1の触媒層41の剥離強度を0.05N以上とすれば、この第1の触媒層41での温度変化に基づく触媒破壊の回避の実効性を高めることができ、望ましい。そして、図3で示した本実施例の製造方法によれば、低温環境下での高い耐久性を有する膜電極接合体20を、一度のホットプレス処理という熱処理にて容易且つ簡便に製造できる。
【0045】
次に、他の実施例に係る膜電極接合体の製造方法について説明する。図12は他の実施例における膜電極接合体(MEA)の製造手順を示す工程図である。図示するように、まず、先の実施例と同様、セルサイズの電解質膜22の準備(ステップS100)と、カソード触媒電極40における第1の触媒層41の形成のための第1触媒層インクの調整(Tg=110℃、I/C=0.75)と当該インクのスプレー塗布による触媒層形成(ステップS110)とを行う。続くステップ115では、先の実施例におけるステップS130と同様にしてアノード触媒電極30を別途に薄膜形成し、その後、先の実施例におけるステップS140と同様にして電解質膜22の他方の膜面に薄膜形成済みのアノード触媒電極30を接合して、ホットプレスにて転写する(ステップS125)。このホットプレスの際の温度は、第1の触媒層41のアイオノマのTgより高い例えば130℃である。よって、ステップS125により、第1の触媒層41は、その含有するアイオノマのTgより高い熱履歴を受けて電解質膜22に接合形成されると共に、この熱履歴により、既述したように結晶性が進んで高い剥離強度を有することになる。
【0046】
続くステップ135では、先の実施例におけるステップS120と同様にして、カソード触媒電極40における第2の触媒層42の形成のための第2触媒層インクの調整(Tg=110℃、I/C=0.75)と当該インクのスプレー塗布による触媒層形成を行う。次に、第2の触媒層42をスプレー塗布形成した状態で、この第2の触媒層42の側から、第2の触媒層42のTgより低い例えば105℃でホットプレスする(ステップS145)。こうすれば、第2の触媒層42は、その含有するアイオノマのTgより低い熱履歴を受けて第1の触媒層41に接合形成されると共に、この熱履歴により、既述したように結晶性が進まずに第1の触媒層41より小さい剥離強度を有することになる。なお、このステップS145での熱処理は、第1の触媒層41のTgよりも低く、第1の触媒層41はそのTgより高い熱履歴を既に受けていることから、第1の触媒層41の剥離強度等に影響を与えない。
【0047】
上記した実施例の製造方法によれば、第1の触媒層41と第2の触媒層42を同じアイオノマ、具体的には同じTgのアイオノマとした上で、第1の触媒層41と第2の触媒層42とで熱履歴に差を持たせ、第2の触媒層42を第1の触媒層41より小さい剥離強度とできる。よって、この製造方法によっても、低温環境下での高い耐久性を有する膜電極接合体20を容易且つ簡便に製造できる。
【0048】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記した実施の形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。例えば、触媒担持担体をカーボンの他、酸化ケイ素などとすることもできる。また、2層構造の触媒電極をカソード触媒電極40に適用したが、アノード触媒電極30についても2層構造とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施例としての燃料電池10の概略構成を示す説明図である。
【図2】燃料電池10が有する発電単位セル12における膜電極接合体20を模式的に断面視して示す説明図である。
【図3】膜電極接合体(MEA)の製造手順を示す工程図である。
【図4】本実施例品の膜電極接合体20と比較例品の膜電極接合体とを対比して説明する説明図である。
【図5】冷熱試験前と試験後における実施例品と比較例品の性能低下の様子を示す説明図である。
【図6】性能低下の様子を示すグラフである。
【図7】実施例品と比較例品1の膜電極接合体の断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を模式的に示す説明図である。
【図8】カソード触媒電極40を第2の触媒層42のみとした場合の膜電極接合体について第2の触媒層42のI/Cと電池性能低下との関係を示すグラフである。
【図9】実施例品が有する第1の触媒層41と第2の触媒層42の剥離強度とホットプレス温度との関係を示すグラフである。
【図10】実施例品が有する第1の触媒層41の剥離強度とI/Cとの関係を示すグラフである。
【図11】図9と図10の剥離強度を実施例品と比較例品の触媒層毎に示した説明図である。
【図12】他の実施例における膜電極接合体(MEA)の製造手順を示す工程図である。
【符号の説明】
【0050】
10…燃料電池
12…発電単位セル
14…エンドプレート
16…水素ガス供給系
18…空気供給系
20…膜電極接合体
22…電解質膜
30…アノード触媒電極
40…カソード触媒電極
41…第1の触媒層
42…第2の触媒層
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に用いられる膜電極接合体とその製造方法、および、膜電極接合体を備える燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応によって発電する燃料電池として、プロトン伝導性を有する電解質膜の両面に触媒電極を接合した膜電極接合体を備えたものが知らせている。従来、こうした膜電極接合体の構造について、種々の技術が提案されている(例えば、下記特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−236631号公報
【0004】
この特許公報では、電解質膜と触媒電極との界面におけるカーボン担体の劣化抑制、或いは界面から電解質膜への触媒溶出抑制に着目して、触媒電極構成を提案している。つまり、カソード側の触媒電極を2層構成とし、カーボン担体に対するアイオノマの比率を電解質膜側の触媒層で高めている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、燃料電池の発電時に伴う上記の電気化学反応によって水が生成され、この生成水は触媒電極に留まることが有り得る。その一方、燃料電池は、一般に、屋外で使用されることが多く、様々な温度環境下に晒される。このため、膜電極接合体の触媒電極には、温度変化による膨張・収縮によって比較的大きな応力が作用する。そして、燃料電池が氷点下の低温環境下に繰り返し晒されると、触媒電極の生成水の触媒電極内部での凍結による膨張や氷解による収縮が繰り返される。よって、上記した応力の作用も顕著となって触媒電極の劣化を招き、こうした劣化による性能低下が危惧されるに到った。上記の特許文献では、生成水の凍結・氷解が繰り返し起きる低温環境下での運転を想定した対処が十分とは言えないのが実情である。
【0006】
本発明は、上記した課題を踏まえ、膜電極接合体の低温環境下における耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的の少なくとも一部を達成するために、本発明では、以下の構成を採用した。
【0008】
[適用1:膜電極接合体]
電解質膜の両面に触媒電極を接合した膜電極接合体であって、
少なくとも一方の前記触媒電極は、前記電解質膜に接合した第1の触媒層と、該第1の触媒層に接合した第2の触媒層とを備え、
前記第1、第2の触媒層は、触媒担持担体とアイオノマとを含み、前記触媒担持担体に対する前記アイオノマの重量比が0.7〜1.1に調整され、
前記第2の触媒層は、前記第1の触媒層より層の剥離強度が小さい性質を備える
ことを要旨とする。
【0009】
上記構成の膜電極接合体では、温度変化に伴う応力が作用した場合、剥離強度が小さい性質の第2の触媒層を、第1の触媒層の応力緩和層として機能させることが可能となる。よって、電解質膜に接合した側の第1の触媒層において、応力の作用による劣化を抑制できる。そして、応力緩和層として機能する第2の触媒層に仮に応力作用による劣化が起きても、この第2の触媒層が電解質膜から離れて位置することと、第1の触媒層と同じように触媒担持担体に対するアイオノマの重量比が0.7〜1.1に調整されていることから、低温環境下での発電性能の低下を抑制できる。これは次の理由による。触媒層の劣化はアイオノマにおけるプロトンの通り道の寸断を招くのでプロトン伝導性は低下する。ところが、第2の触媒層では、アイオノマ重量比が第1の触媒層と同程度に高い分だけプロトンの通り道自体の数が多いため、触媒層劣化によりプロトンの通り道の寸断が起きても寸断されないプロトンの通り道を確保できる。プロトンの通り道の確保は、触媒担持担体における三相界面の確保にも繋がるため、第2の触媒層でのプロトン伝導性の低下を抑制できる。この結果、上記構成の膜電極接合体は、低温環境下での高い耐久性を備えるものとなる。
【0010】
この場合、第2の触媒層におけるアイオノマ重量比が0.7〜1.1の範囲を低い側に逸脱すると、プロトンの通り道の数が少なくなって触媒層劣化により寸断されないプロトンの通り道の確保が困難となる。よって、第2の触媒層でのプロトン伝導性の低下抑制の実効性が低くなる。その一方、第2の触媒層におけるアイオノマ重量比が0.7〜1.1の範囲を高い側に逸脱すると、触媒担持担体の表面を覆うアイオノマの厚みや範囲が増えてガスの通り道の減少を招き、ガス拡散性が低下する。しかも、触媒層の濡れ性が高まって、高電流域でのフラッディングを招きやすくなり、ガス拡散性が低下する。
【0011】
上記した膜電極接合体は、次のような態様とすることができる。例えば、前記第1の触媒層については、これを、含有する前記アイオノマのガラス転移温度より高い温度による熱履歴を受けたものとし、前記第2の触媒層については、これを、含有する前記アイオノマのガラス転移温度より低い温度による熱履歴を受けたものとする。こうすれば、第1の触媒層と第2の触媒層とで、熱履歴の温度によりアイオノマの結晶性に差を持たせ、ガラス転移温度より低い温度による熱履歴を受けた第2の触媒層を、ガラス転移温度より高い温度による熱履歴を受けた第1の触媒層より、結晶性を低くできる。この結果、第2の触媒層では、アイオノマの結晶によりアイオノマの高分子の伸びが制限されるので、第2の触媒層の剥離強度を第1の触媒層より容易且つ確実に小さくできる。
【0012】
また、前記第1の触媒層を2〜10μmの厚みとすれば、第2の触媒層に劣化が起きてもその劣化箇所を、上記の厚み分は電解質膜から離すことができる。このため、触媒層の劣化による発電性能の低下抑制の上から望ましい。この場合、第1の触媒層の厚みが2〜10μmの範囲を低い側に逸脱すると、第2の触媒層の劣化箇所が電解質膜に近くなりすぎ、プロトン伝導性の確保の信頼性が性化する。また、第1の触媒層の厚みが2〜10μmの範囲を高い側に逸脱すると、触媒電極、延いては膜電極接合体自体の薄肉化が阻害される。
【0013】
また、前記触媒担持担体をカーボンとすることもでき、こうすれば汎用性が高まる。なお、触媒担持担体をカーボンの他、酸化ケイ素などとすることもできる。
【0014】
[適用2:膜電極接合体の製造方法]
膜電極接合体の製造方法であって、
電解質膜と、電解質膜に接合される触媒電極とを準備する工程と、
前記電解質膜の両面に前記触媒電極を接合する工程とを備え、
前記触媒電極の少なくとも一方を、触媒担持担体とアイオノマとを含有し前記電解質膜に接合した第1の触媒層と、触媒担持担体とアイオノマとを含有し前記第1の触媒層に接合した第2の触媒層とから形成し、
前記第1、第2の触媒層の形成に際しては、前記触媒担持担体に対する前記アイオノマの重量比を0.7〜1.1に調整し、
前記触媒電極の接合に際して、前記第1の触媒層を、含有する前記アイオノマのガラス転移温度より高い温度による熱処理に処し、前記第2の触媒層を、含有する前記アイオノマのガラス転移温度より低い温度による熱処理に処する
ことを要旨とする。
【0015】
上記構成の膜電極接合体の製造方法によれば、上記したように低温環境下での高い耐久性を備える膜電極接合体を容易に製造できる。しかも、前記第1の触媒層を、前記第2の触媒層が含有する前記アイオノマのガラス転移温度より低いガラス転移温度の前記アイオノマを含有するものとし、前記触媒電極の接合に際しての前記熱処理を、前記第1の触媒層の前記アイオノマのガラス転移温度と前記第2の触媒層の前記アイオノマのガラス転移温度との間の温度で行うようにできる。こうすれば、第1、第2の触媒層のアイオノマのガラス転移温度の間の温度で熱処理を一度行うだけで、第1、第2のそれぞれの触媒層において、アイオノマの結晶性に差を持たせた上で、第2の触媒層を、低い結晶性による低剥離強度の触媒層とできる。
【0016】
[適用3:燃料電池]
燃料ガスと酸素含有ガスの供給を受けて発電する燃料電池であって、
上記したいずれかの膜電極接合体と、
該膜電極接合体の一方の側の触媒電極であるアノードに前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給系と、
前記膜電極接合体の他方の側の触媒電極であるカソードに前記酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給系とを備える
ことを要旨とする。
【0017】
上記構成の燃料電池では、上記したように低温環境下での高い耐久性を備える膜電極接合体を用いていることから、低温環境下での電池性能の維持もしくは向上を図ることができる。そして、前記第1、第2の触媒層を有する前記触媒電極を、発電時に生成水が生成されるカソード側の触媒電極に適用すれば、電池性能の維持等の実効性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。図1は本発明の実施例としての燃料電池10の概略構成を示す説明図、図2は燃料電池10が有する発電単位セル12における膜電極接合体20を模式的に断面視して示す説明図である。
【0019】
図示するように、燃料電池10は、発電単位セル12を対向するエンドプレート14の間に積層させたスタック構造を備え、水素ガス供給系16と、空気供給系18と、図示しない冷却系とを備える。発電単位セル12は、水素ガスと酸素含有ガス(空気)の供給を水素ガス供給系16と空気供給系18とから受け、水素と酸素との電気化学反応によって発電する。この発電単位セル12は、プロトン伝導性を有する電解質膜の両面にアノード側の触媒電極とカソード側の触媒電極を接合してなる後述の膜電極接合体20を、図示しないセパレータによって挟持して構成されている。なお、上記したガス供給径からのそれぞれのガスは、積層されたそれぞれの発電単位セル12が形成するセル内流路(図示略)を経て、個々の発電単位セル12のアノード、カソードに供給される。
【0020】
膜電極接合体20は、図2に模式的に示すように、プロトン伝導性を有する電解質膜22の一方の膜面に単層のアノード触媒電極30を接合し、他方の膜面に複層のカソード触媒電極40を接合して構成されている。本実施例では、電解質膜22として、プロトン伝導性を有する固体高分子型の電解質膜(例えば、フッ素系樹脂のパーフルオロスルホン酸ポリマー)を用いるものとした。電解質膜22として、他の電解質膜を用いるものとしてもよい。
【0021】
カソード触媒電極40は、第1の触媒層41と第2の触媒層42の2層構造とされ、図2に示すように、電解質膜22の側から、第1の触媒層41、第2の触媒層42の順に接合して形成されている。カソード触媒電極40を構成する第1の触媒層41と第2の触媒層42、およびアノード触媒電極30は、それぞれ、触媒とカーボンとアイオノマとを含んでいる。そして、これらは、触媒としての白金(Pt)を担持したカーボンと、アイオノマとしての電解質溶液であるパーフルオロスルホン酸ポリマー溶液と、アルコールと、水とを調合してなる触媒インクを塗布することによって、それぞれ形成され、次のような性質を有する。なお、カソード触媒電極40の第1、第2の触媒層およびアノード触媒電極30の形成手順については後述する。
【0022】
本実施例のアノード触媒電極30は、5μmの厚みで形成され、Pt担持密度が60wt%のカーボンと、ガラス転移温度(Tg温度)が110℃程度のアイオノマ(パーフルオロスルホン酸ポリマー)とを含み、カーボン(C)に対するアイオノマ(I)の重量比(I/C)は、I/C=1.0である。カソード触媒電極40における第1の触媒層41は、2μmの厚みで形成され、Pt担持密度が60wt%のカーボンと、ガラス転移温度(Tg温度)が110℃程度のアイオノマ(パーフルオロスルホン酸ポリマー)とを含み、I/C=0.75である。第2の触媒層42は、10μmの厚みで形成され、Pt担持密度が30wt%のカーボンと、ガラス転移温度(Tg温度)が150℃程度のアイオノマ(パーフルオロスルホン酸ポリマー)とを含み、I/C=0.75である。このように、第1の触媒層41と第2の触媒層42においてアイオノマのガラス転移温度を相違させることは、アイオノマとしてのパーフルオロスルホン酸ポリマーの組成を変えたり、イオン交換当量(EW)において差を持たせることで可能となる。例えば、第1の触媒層41のアイオノマのEWを1000とし、第2の触媒層42ではEWを700とすること等により、第2の触媒層42のアイオノマのガラス転移温度を第1の触媒層41より高くできる。
【0023】
上記した膜電極接合体20の製造手順について説明する。図3は膜電極接合体(MEA)の製造手順を示す工程図である。図示するように、まず、セルサイズの電解質膜22を準備する(ステップS100)。この際、セルサイズに裁断済みの電解質膜22を準備するほか、製膜済みの電解質膜をセルサイズに裁断して準備したり、電解質溶液からの製膜・裁断を行っても良い。
【0024】
次いで、カソード触媒電極40における第1の触媒層41の形成のため、第1触媒層インクの調整と当該インクのスプレー塗布による触媒層形成を行う(ステップS110)。このステップでは、Pt担持密度が60wt%のカーボンと、アイオノマとしてのパーフルオロスルホン酸ポリマー溶液(Tg=110℃)と、アルコールと、水とを調合してI/C=0.75となるよう触媒インクを調整し、膜厚が2μmとなるよう上記触媒インクを電解質膜22の一方の膜面にスプレー塗布する。その後、カソード触媒電極40における第2の触媒層42の形成のため、第2触媒層インクの調整と当該インクのスプレー塗布による触媒層形成を行う(ステップS120)。このステップでは、Pt担持密度が30wt%のカーボンと、アイオノマとしてのパーフルオロスルホン酸ポリマー溶液(Tg=150℃)と、アルコールと、水とを調合してI/C=0.75となるよう触媒インクを調整し、膜厚が10μmとなるよう上記触媒インクを第1の触媒層41に重ねてスプレー塗布する。
【0025】
次に、アノード触媒電極30を別途に薄膜形成する(ステップS130)。このステップでは、Pt担持密度が60wt%のカーボンと、アイオノマとしてのパーフルオロスルホン酸ポリマー溶液(Tg=110℃)と、アルコールと、水とを調合してI/C=1.0となるよう触媒インクを調整する。そして、この触媒インクを、フッ素系樹脂からなる樹脂シートに膜厚が5μmとなるようスプレー塗布し、乾燥を経て、樹脂シート上にアノード触媒電極30を薄膜形成する。
【0026】
続くステップ140では、ステップS110〜120により第1の触媒層41と第2の触媒層42がこの順に塗布済みの電解質膜22の他方の膜面に、樹脂シート上で形成済みのアノード触媒電極30を接合して、ホットプレスにて転写する。この転写の際のホットプレス処理により、アノード触媒電極30およびカソード触媒電極40の第1の触媒層41と第2の触媒層42とは、熱履歴を受けて接合し、膜電極接合体20が得られる。本実施例では、上記したホットプレスの際の熱温度を、第1の触媒層41のアイオノマのガラス転移温度(110℃)と第2の触媒層42のアイオノマのガラス転移温度(150℃)との間の温度、例えば、130℃とした。
【0027】
こうした製造手順で得られた膜電極接合体20において、カソード触媒電極40の第1の触媒層41は、含有するアイオノマのガラス転移温度(110℃)より高い温度(130℃)による熱履歴を受けて電解質膜22に接合形成され、第2の触媒層42は、含有するアイオノマのガラス転移温度(150℃)より低い温度(130℃)による熱履歴を受けて第1の触媒層41に接合形成される。よって、カソード触媒電極40における第1の触媒層41と第2の触媒層42とでは、熱履歴の温度によりアイオノマの結晶性に差が生じ、ガラス転移温度より低い温度による熱履歴を受けた第2の触媒層42は、ガラス転移温度より高い温度による熱履歴を受けた第1の触媒層41より、低い結晶性となる。このため、第2の触媒層42では、アイオノマの結晶により得られた高分子の伸びが制限されるので、第2の触媒層42の剥離強度は第1の触媒層41より小さくなる。
【0028】
ここで、上記のようにして得られた本実施例の膜電極接合体20の性能評価について説明する。図4は本実施例品の膜電極接合体20と比較例品の膜電極接合体とを対比して説明する説明図である。
【0029】
図示するように、比較例品1は、実施例品の膜電極接合体20と同じアノード触媒電極30を有するものの、カソード触媒電極40においては、第2の触媒層42を備えず、第1の触媒層41のみのカソード触媒電極40である。この比較例品1における第1の触媒層41は、その厚みが8μmとされている以外は、実施例品の膜電極接合体20における第1の触媒層41と、TgやI/CおよびカーボンのPt担持密度等は同じとされている。比較例品2は、実施例品の膜電極接合体20と同じアノード触媒電極30を有する点と、カソード触媒電極40が2層構造である点と、同じ第1の触媒層41を有する点と、第2の触媒層42の厚みが実施例品と同一であるものの、カソード触媒電極40の第2の触媒層42は、実施例品の膜電極接合体20における第1の触媒層41と、TgとI/Cにおいて相違する。つまり、比較例品2は、図4に示すように、第2の触媒層42のアイオノマのガラス転移温度が110℃でありI/C=0.5である点で、実施例品の膜電極接合体20と相違する。この場合、実施例品、比較例品1および比較例品2とも、図3に示した製造工程でそれぞれ膜電極接合体を製造し(ホットプレス温度=130℃)、比較例品1においては、ステップS110において厚みを上記した8μmとし、ステップS120については省略した。
【0030】
上記の実施例品と比較例品1および比較例品2での膜電極接合体をセパレータで挟持して図1の発電単位セル12とした後、それぞれの発電単位セル12を80℃と−20℃の環境下に置く冷熱試験に供した。この冷熱試験は、〈1〉発電単位セル12のアノードおよびカソードに80℃で加湿した窒素(加湿窒素)を0.5L/minの流量で10分間供給する加温サイクルと、〈2〉ガス供給を停止した上で発電単位セル12を−20℃に1時間に亘って冷却する冷却サイクルとを繰り返し発電単位セル12に処し、この加温サイクルと冷却サイクルを200回繰り返した。図5は冷熱試験前と試験後における実施例品と比較例品の性能低下の様子を示す説明図、図6は性能低下の様子を示すグラフである。電池性能は、電流・電圧特性で行うこととし、上記の冷熱試験前と試験後とにおいて、単位面積当たりのセル電流を0.8A/cm2とした場合のセル電圧を測定してその測定電圧を電池性能評価に用いた。
【0031】
図示するように、実施例品と比較例品1および比較例品2のいずれについても、冷熱試験後では電池性能の低下が起きているが、実施例品は、性能低下の程度が一番低く、5%ほどしか性能低下が見られなかった。これに対し、比較例品では、12%を超える性能低下が見られた。こうした冷熱試験結果から、本実施例の膜電極接合体20は低温環境下での高い耐久性を発揮すると言える。
【0032】
上記した冷熱試験における加温サイクルと冷却サイクルの繰り返しの際には、実施例品と比較例品1および比較例品2での膜電極接合体に対して、温度変化に伴う応力が作用し、この応力により触媒電極層の劣化が起き、この劣化により上記した電池性能の低下が起きると予想される。この触媒電極層の劣化の有無を実施例品と比較例品1の膜電極接合体について調べた。図7は実施例品と比較例品1の膜電極接合体の断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を模式的に示す説明図である。この図7に示すように、実施例品と比較例品1の膜電極接合体に部分的な触媒層の破壊が観察され、比較例品1では電解質膜22の膜面から1μm以内の箇所で第1の触媒層41に破壊が起き、実施例品では第2の触媒層42に破壊が観察された。そして、この第2の触媒層42の破壊箇所は、電解質膜22の膜面から3μm以上離れていた。なお、カソード触媒電極40が2層構造の比較例品2にあっても、図7の実施例品と同様な箇所に破壊が観察された。
【0033】
こうした触媒層の破壊と電池性能の低下の関係について考察する。比較例品1と実施例品とでは、触媒層の破壊箇所と電解質膜の膜面との隔たりに違いがあり、比較例品1では、電解質膜の膜面から1μm以内に破壊が起きている。電池性能に直結する電気化学反応でのプロトン授受は電解質膜の膜面において起きることから、電解質膜の膜面近傍に触媒層の破壊が見られた比較例品1では、触媒層でのプロトン伝導性が膜面近傍で阻害されるため電池性能の低下が大きい。よって、実施例品のように、少なくとも第1の触媒層41の厚み(本実施例では2μm)だけ隔てた箇所での触媒層の破壊は、比較例品1よりも電池性能の低下程度を小さくできる。
【0034】
カソード触媒電極40が2層構造の比較例品2では、実施例品とほぼ同じ箇所に触媒層の破壊が起きているものの、電池性能の低下は比較例品1よりは少なく、実施例品よりは大きい。このことは次のように説明できる。
【0035】
実施例品と比較例品2とは第2の触媒層42においてほぼ同じ箇所で触媒層が破壊し、この第2の触媒層42の破壊は、第2の触媒層42が有するアイオノマにおけるプロトンの通り道の寸断を招いてプロトン伝導性を低下させるので、実施例品も比較例品2も既述したように電池性能の低下をもたらす。ところが、実施例品の第2の触媒層42ではI/Cが0.75であるのに対し、比較例品2は0.5であることから、実施例品は、I/Cが高い分だけプロトンの通り道自体の数が多いため、触媒層破壊によりプロトンの通り道の寸断が起きても寸断されないプロトンの通り道を確保できる。プロトンの通り道の確保は、Ptを触媒したカーボンにおける三相界面の確保にも繋がるため、第2の触媒層42でのプロトン伝導性の低下を抑制できる。この結果、実施例品は、第2の触媒層42のI/Cを比較例品2より大きくした分だけ冷熱サイクルの繰り返しに対する電池性能の低下程度が低くなり、低温環境下での高い耐久性を備えるものとなる。
【0036】
一方、I/Cが0.5と実施例品より低い比較例品では、I/Cが低い分だけプロトンの通り道の数が少なくなって触媒層破壊により寸断されないプロトンの通り道の確保が困難となる。よって、比較例品2では、第2の触媒層42でのプロトン伝導性の低下抑制の実効性が低くなるため、I/Cが0.75の実施例品より電池性能の低下が大きくなる。これらのことから、第1の触媒層41と第2の触媒層42とを積層させた2層のカソード触媒電極40とする場合、第1の触媒層41については、触媒層破壊箇所を電解質膜の膜面から離すために厚みを2μm以上とすることが望ましく、第2の触媒層42については、プロトン伝導性の低下抑制の実効性を確保するため、I/Cを0.7以上(本実施例では0.75)とすることが望ましい。この場合のI/Cの下限値0.7と上限値について説明する。
【0037】
図8はカソード触媒電極40を第2の触媒層42のみとした場合の膜電極接合体について第2の触媒層42のI/Cと電池性能低下との関係を示すグラフである。この図8に示すように、I/C0.5から大きくなるに従って電池性能の低下は著しく抑制され、0.7程度のI/Cであれば性能低下の観点から実用上大きな問題はない。つまり、I/Cが0.7以上であれば、第2の触媒層42でのプロトン伝導性の低下抑制の実効性を確保できる。その一方、1.1以下のI/Cであれば、Pt触媒を担持したカーボンの表面を覆うアイオノマの厚みや範囲が過剰とならずに、ガスの通り道の減少を抑制でき、ガス拡散性についても確保できる。また、1.1以下のI/Cであれば、第2の触媒層42の濡れ性を不用意に高めることがないので、高電流域でのフラッディング抑制とガス拡散性の確保の上から望ましいと言える。
【0038】
次に、上記した電池性能の推移を触媒層の機械的特性から説明する。既述した冷熱サイクルの繰り返しによる触媒層の破壊を電解質膜の膜面から離れた第2の触媒層42にて起きるようにすることは、第1の触媒層41と第2の触媒層42の剥離強度のバランスを取ることで可能となる。つまり、冷熱サイクルの繰り返しの際の温度変化に伴う応力が作用した場合、第2の触媒層42の剥離強度を小さくすれば、この剥離強度の小さい第2の触媒層42を、第1の触媒層41の応力緩和層として機能させることが可能となる。よって、電解質膜22に接合した側の第1の触媒層41において応力の作用による破壊を抑制して、触媒層破壊を電解質膜の膜面から離れた第2の触媒層42にて起きるようにできる。このため、触媒層破壊を電解質膜の膜面から離すことで、既述したように低温環境下での耐久性を高めることができる。
【0039】
ここで、上記した剥離強度の観点から実施例品を説明する。図9は実施例品が有する第1の触媒層41と第2の触媒層42の剥離強度とホットプレス温度との関係を示すグラフ、図10は実施例品が有する第1の触媒層41の剥離強度とI/Cとの関係を示すグラフである。剥離強度は、JISK6854の2(接着剤の剥離強度試験)に準じて計測し、図9には、実施例品が有する第1の触媒層41の触媒インク(Tg=110℃のアイオノマ含有で)で形成した試験片の剥離強度と、実施例品が有する第2の触媒層42の触媒インク(Tg=150℃のアイオノマ含有)で形成した試験片の剥離強度とを、剥離強度試験器の接着対象片に110℃、130℃および150℃でホットプレス接合して計測値をプロットした。つまり、ホットプレス温度が130℃のプロットは、図3の製造工程で得た実施例品における第1の触媒層41と第2の触媒層42の剥離強度をそれぞれ示している。図10には、実施例品が有する第1の触媒層41の触媒インク(Tg=110℃のアイオノマ含有)におけるI/Cを変化させた場合の試験片の剥離強度をプロットした。なお、この場合の試験片のホットプレス温度は130℃である。
【0040】
図9に示すように、Tg=110℃のアイオノマ含有の触媒層は、Tg(=110℃)以上の熱履歴を受けている。よって、Tg=110℃のアイオノマ含有の触媒層は、アイオノマの高分子(パーフルオロスルホン酸ポリマー)の結晶化が進んで高分子結晶の伸びが起きやすい。その一方、Tg=150℃のアイオノマ含有の触媒層は、Tg(=150℃)以下の熱履歴を受けているので、アイオノマの高分子(パーフルオロスルホン酸ポリマー)の結晶化が進まず結晶の伸びは制限される。このため、図9に示すように、第2の触媒層42に相当するTg=150℃のアイオノマ含有の触媒層は、第1の触媒層41に相当するTg=110℃のアイオノマ含有の触媒層よりも確実に小さな剥離強度となる。このことは、第1の触媒層41と第2の触媒層42とを積層したカソード触媒電極40を有する実施例品の膜電極接合体20では、第2の触媒層42の方が第1の触媒層41よりも小さな剥離強度を有することを意味する。よって、冷熱サイクルの繰り返しの際の温度変化に伴う応力が作用した場合、実施例品では、剥離強度の小さい第2の触媒層42を、第1の触媒層41の応力緩和層として機能させることができ、既述したように、電解質膜22に接合した側の第1の触媒層41の破壊を抑制できる。このため、触媒層破壊を電解質膜の膜面から離すことで、既述したように低温環境下での耐久性を高めることができる。
【0041】
第1の触媒層41に相当するTg=110℃のアイオノマ含有の触媒層を130℃で剥離強度試験器の接着対象片にホットプレスした場合、当該触媒層はTgより高い温度の熱履歴を受けることから、既述したように結晶化が進み剥離強度は高まる。そして、触媒層のI/Cが大きくなれば、結晶化が進む高分子も増えることから、図10に示すように、剥離強度は触媒層のI/Cに依存して大きくなる。この図10は、第2の触媒層42をTg=110℃のアイオノマ含有の触媒層とした比較例比2における第2の触媒層42の剥離強度(I/C=0.5)を示すことになる。図11は図9と図10の剥離強度を実施例品と比較例品の触媒層毎に示した説明図である。
【0042】
図11に示すように、2層構造のカソード触媒電極40を有する実施例品と比較例品2とは、既述したように電解質膜22から離れた第2の触媒層42において冷熱サイクルの繰り返しによる温度変化により破壊する。つまり、この両者のように、第2の触媒層42の破壊強度が第1の触媒層41の破壊強度より0.02N以上小さければ、触媒層の破壊を、電解質膜22から離れた第2の触媒層42においてより確実に起こすことができる。よって、電解質膜22から離れた第2の触媒層42での触媒層破壊をもたらす上では、第2の触媒層42の破壊強度を第1の触媒層41の破壊強度より0.02N以上小さくする必要があると言える。ところで、比較例2では、第2の触媒層42のI/Cが0.5と低いために、図5や図6で説明したように電池性能の低下が起きる。これらを勘案すると、カソード触媒電極40を第1の触媒層41と第2の触媒層42の2層で構成するに当たっては、それぞれの触媒層をI/Cが0.7以上に調整することが、低温環境下での耐久性の向上の上から必要となる。
【0043】
以上説明したように、カソード触媒電極40を第1の触媒層41と第2の触媒層42の2層で構成した本実施例では、第1、第2の両触媒層のI/Cを0.7〜1.1の範囲に調整し、更に、第2の触媒層42の破壊強度を第1の触媒層41の破壊強度より0.02N以上小さくした。こうすることで、本実施例によれば、触媒層の破壊を電解質膜22から離れた第2の触媒層42においてより確実に起こすこと、および、第2の触媒層42での破壊によるプロトン伝導性の低下抑制を行うことで、低温環境下での耐久性を向上できる。
【0044】
この場合、第1の触媒層41の剥離強度を0.05N以上とすれば、この第1の触媒層41での温度変化に基づく触媒破壊の回避の実効性を高めることができ、望ましい。そして、図3で示した本実施例の製造方法によれば、低温環境下での高い耐久性を有する膜電極接合体20を、一度のホットプレス処理という熱処理にて容易且つ簡便に製造できる。
【0045】
次に、他の実施例に係る膜電極接合体の製造方法について説明する。図12は他の実施例における膜電極接合体(MEA)の製造手順を示す工程図である。図示するように、まず、先の実施例と同様、セルサイズの電解質膜22の準備(ステップS100)と、カソード触媒電極40における第1の触媒層41の形成のための第1触媒層インクの調整(Tg=110℃、I/C=0.75)と当該インクのスプレー塗布による触媒層形成(ステップS110)とを行う。続くステップ115では、先の実施例におけるステップS130と同様にしてアノード触媒電極30を別途に薄膜形成し、その後、先の実施例におけるステップS140と同様にして電解質膜22の他方の膜面に薄膜形成済みのアノード触媒電極30を接合して、ホットプレスにて転写する(ステップS125)。このホットプレスの際の温度は、第1の触媒層41のアイオノマのTgより高い例えば130℃である。よって、ステップS125により、第1の触媒層41は、その含有するアイオノマのTgより高い熱履歴を受けて電解質膜22に接合形成されると共に、この熱履歴により、既述したように結晶性が進んで高い剥離強度を有することになる。
【0046】
続くステップ135では、先の実施例におけるステップS120と同様にして、カソード触媒電極40における第2の触媒層42の形成のための第2触媒層インクの調整(Tg=110℃、I/C=0.75)と当該インクのスプレー塗布による触媒層形成を行う。次に、第2の触媒層42をスプレー塗布形成した状態で、この第2の触媒層42の側から、第2の触媒層42のTgより低い例えば105℃でホットプレスする(ステップS145)。こうすれば、第2の触媒層42は、その含有するアイオノマのTgより低い熱履歴を受けて第1の触媒層41に接合形成されると共に、この熱履歴により、既述したように結晶性が進まずに第1の触媒層41より小さい剥離強度を有することになる。なお、このステップS145での熱処理は、第1の触媒層41のTgよりも低く、第1の触媒層41はそのTgより高い熱履歴を既に受けていることから、第1の触媒層41の剥離強度等に影響を与えない。
【0047】
上記した実施例の製造方法によれば、第1の触媒層41と第2の触媒層42を同じアイオノマ、具体的には同じTgのアイオノマとした上で、第1の触媒層41と第2の触媒層42とで熱履歴に差を持たせ、第2の触媒層42を第1の触媒層41より小さい剥離強度とできる。よって、この製造方法によっても、低温環境下での高い耐久性を有する膜電極接合体20を容易且つ簡便に製造できる。
【0048】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記した実施の形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。例えば、触媒担持担体をカーボンの他、酸化ケイ素などとすることもできる。また、2層構造の触媒電極をカソード触媒電極40に適用したが、アノード触媒電極30についても2層構造とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施例としての燃料電池10の概略構成を示す説明図である。
【図2】燃料電池10が有する発電単位セル12における膜電極接合体20を模式的に断面視して示す説明図である。
【図3】膜電極接合体(MEA)の製造手順を示す工程図である。
【図4】本実施例品の膜電極接合体20と比較例品の膜電極接合体とを対比して説明する説明図である。
【図5】冷熱試験前と試験後における実施例品と比較例品の性能低下の様子を示す説明図である。
【図6】性能低下の様子を示すグラフである。
【図7】実施例品と比較例品1の膜電極接合体の断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を模式的に示す説明図である。
【図8】カソード触媒電極40を第2の触媒層42のみとした場合の膜電極接合体について第2の触媒層42のI/Cと電池性能低下との関係を示すグラフである。
【図9】実施例品が有する第1の触媒層41と第2の触媒層42の剥離強度とホットプレス温度との関係を示すグラフである。
【図10】実施例品が有する第1の触媒層41の剥離強度とI/Cとの関係を示すグラフである。
【図11】図9と図10の剥離強度を実施例品と比較例品の触媒層毎に示した説明図である。
【図12】他の実施例における膜電極接合体(MEA)の製造手順を示す工程図である。
【符号の説明】
【0050】
10…燃料電池
12…発電単位セル
14…エンドプレート
16…水素ガス供給系
18…空気供給系
20…膜電極接合体
22…電解質膜
30…アノード触媒電極
40…カソード触媒電極
41…第1の触媒層
42…第2の触媒層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両面に触媒電極を接合した膜電極接合体であって、
少なくとも一方の前記触媒電極は、前記電解質膜に接合した第1の触媒層と、該第1の触媒層に接合した第2の触媒層とを備え、
前記第1、第2の触媒層は、触媒担持担体とアイオノマとを含み、前記触媒担持担体に対する前記アイオノマの重量比が0.7〜1.1に調整され、
前記第2の触媒層は、前記第1の触媒層より層の剥離強度が小さい性質を備える
膜電極接合体。
【請求項2】
請求項1記載の膜電極接合体であって、
前記第1の触媒層は、含有する前記アイオノマのガラス転移温度より高い温度による熱履歴を受けており、
前記第2の触媒層は、含有する前記アイオノマのガラス転移温度より低い温度による熱履歴を受けている
膜電極接合体。
【請求項3】
前記第1の触媒層は、2〜10μmの厚みとされている請求項1または請求項2に記載の膜電極接合体。
【請求項4】
前記触媒担持担体はカーボンである請求項1ないし請求項3いずれかに記載の膜電極接合体。
【請求項5】
膜電極接合体の製造方法であって、
電解質膜と、電解質膜に接合される触媒電極とを準備する工程と、
前記電解質膜の両面に前記触媒電極を接合する工程とを備え、
前記触媒電極の少なくとも一方を、触媒担持担体とアイオノマとを含有し前記電解質膜に接合した第1の触媒層と、触媒担持担体とアイオノマとを含有し前記第1の触媒層に接合した第2の触媒層とから形成し、
前記第1、第2の触媒層の形成に際しては、前記触媒担持担体に対する前記アイオノマの重量比を0.7〜1.1に調整し、
前記触媒電極の接合に際して、前記第1の触媒層を、含有する前記アイオノマのガラス転移温度より高い温度による熱処理に処し、前記第2の触媒層を、含有する前記アイオノマのガラス転移温度より低い温度による熱処理に処する
膜電極接合体の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の膜電極接合体の製造方法であって、
前記第1の触媒層は、前記第2の触媒層が含有する前記アイオノマのガラス転移温度より低いガラス転移温度の前記アイオノマを含有し、
前記触媒電極の接合に際しての前記熱処理を、前記第1の触媒層の前記アイオノマのガラス転移温度と前記第2の触媒層の前記アイオノマのガラス転移温度との間の温度で行う
膜電極接合体の製造方法。
【請求項7】
燃料ガスと酸素含有ガスの供給を受けて発電する燃料電池であって、
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の膜電極接合体と、
該膜電極接合体の一方の側の触媒電極であるアノードに前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給系と、
前記膜電極接合体の他方の側の触媒電極であるカソードに前記酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給系とを備える
燃料電池。
【請求項8】
前記第1、第2の触媒層を有する前記触媒電極は、カソード側の触媒電極である請求項7に記載の燃料電池。
【請求項1】
電解質膜の両面に触媒電極を接合した膜電極接合体であって、
少なくとも一方の前記触媒電極は、前記電解質膜に接合した第1の触媒層と、該第1の触媒層に接合した第2の触媒層とを備え、
前記第1、第2の触媒層は、触媒担持担体とアイオノマとを含み、前記触媒担持担体に対する前記アイオノマの重量比が0.7〜1.1に調整され、
前記第2の触媒層は、前記第1の触媒層より層の剥離強度が小さい性質を備える
膜電極接合体。
【請求項2】
請求項1記載の膜電極接合体であって、
前記第1の触媒層は、含有する前記アイオノマのガラス転移温度より高い温度による熱履歴を受けており、
前記第2の触媒層は、含有する前記アイオノマのガラス転移温度より低い温度による熱履歴を受けている
膜電極接合体。
【請求項3】
前記第1の触媒層は、2〜10μmの厚みとされている請求項1または請求項2に記載の膜電極接合体。
【請求項4】
前記触媒担持担体はカーボンである請求項1ないし請求項3いずれかに記載の膜電極接合体。
【請求項5】
膜電極接合体の製造方法であって、
電解質膜と、電解質膜に接合される触媒電極とを準備する工程と、
前記電解質膜の両面に前記触媒電極を接合する工程とを備え、
前記触媒電極の少なくとも一方を、触媒担持担体とアイオノマとを含有し前記電解質膜に接合した第1の触媒層と、触媒担持担体とアイオノマとを含有し前記第1の触媒層に接合した第2の触媒層とから形成し、
前記第1、第2の触媒層の形成に際しては、前記触媒担持担体に対する前記アイオノマの重量比を0.7〜1.1に調整し、
前記触媒電極の接合に際して、前記第1の触媒層を、含有する前記アイオノマのガラス転移温度より高い温度による熱処理に処し、前記第2の触媒層を、含有する前記アイオノマのガラス転移温度より低い温度による熱処理に処する
膜電極接合体の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の膜電極接合体の製造方法であって、
前記第1の触媒層は、前記第2の触媒層が含有する前記アイオノマのガラス転移温度より低いガラス転移温度の前記アイオノマを含有し、
前記触媒電極の接合に際しての前記熱処理を、前記第1の触媒層の前記アイオノマのガラス転移温度と前記第2の触媒層の前記アイオノマのガラス転移温度との間の温度で行う
膜電極接合体の製造方法。
【請求項7】
燃料ガスと酸素含有ガスの供給を受けて発電する燃料電池であって、
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の膜電極接合体と、
該膜電極接合体の一方の側の触媒電極であるアノードに前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給系と、
前記膜電極接合体の他方の側の触媒電極であるカソードに前記酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給系とを備える
燃料電池。
【請求項8】
前記第1、第2の触媒層を有する前記触媒電極は、カソード側の触媒電極である請求項7に記載の燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−55980(P2010−55980A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220860(P2008−220860)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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