説明

膝サポータ

【課題】膝関節の回旋を防止して膝関節が内側に向くことや、大腿骨に対する脛骨の前方への引き出しを防止することのできる膝サポータを提供する。
【解決手段】膝蓋骨22下方外側から膝関節内側を通って大腿下部後側へ掛け回される伸縮性の内側締付ベルト12と、膝蓋骨22下方内側から膝関節外側を通って大腿下部後側へ掛け回される伸縮性の外側締付ベルト13とをサポータ本体11に設けて構成され、内側締付ベルト12は、外側締付ベルト13に比べて相対的に高い伸縮性素材を用いていることを特徴とする膝サポータ1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝関節を傷める原因となる「ニーイントゥーアウト(以下、KITO)」を制限する膝サポータに関する。
【背景技術】
【0002】
膝サポータは、様々な目的により膝に装着される外科用コルセットの一種である。例えば特許文献1は、大腿部に装着される伸縮性の上部ベルトと、下腿部(ふくらはぎ部)に装着される伸縮性の下部ベルトと、前記上部ベルト及び下部ベルトに連結され、膝の表面および裏面のうちいずれかを覆うように設けられた伸縮性の中央部とを備えた膝サポータを開示する(特許文献1[請求項1])。これにより、膝蓋骨の左右方向のずれを有効に防止できると共に、膝関節の屈曲角に関係なく、膝に均一な圧迫を与えることができ、更に補助ベルトを用いれば、必要に応じて膝蓋骨や側副靱帯を補強できるとされる(特許文献1[0080])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-065711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スポーツでは、接触プレイ等により膝関節の前十字靭帯(ACL)や内側側副靭帯(MCL)を傷めることが多く、前記靭帯の損傷は再発頻度も高いため、膝サポータによる保護の要請が強い。特に、前記靭帯の損傷の原因は、KITOにあるとされるため、膝サポータに前記KITOを防止する働きが求められる。KITO防止の対策は、膝関節の回旋を防止して膝関節が内側に向くことや、大腿骨に対する脛骨の前方への引き出しを防止するとよい。この点、特許文献1が開示する膝サポータは、補助ベルトを提案するが、前記補助ベルトは従来様のテーピングと変わるところがなく、KITO防止の対策として不十分である。そこで、膝関節の回旋を防止して膝関節が内側に向くことや、大腿骨に対する脛骨の前方への引き出しを防止することのできる膝サポータを提供するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
検討の結果開発したものが、膝関節を挟んで大腿下部から下腿上部までに装着されるサポータ本体に、膝関節周囲に掛け回す締付ベルトを備えた膝サポータにおいて、膝蓋骨下方外側から膝関節内側を通って大腿下部後側へ掛け回される伸縮性の内側締付ベルトと、膝蓋骨下方内側から膝関節外側を通って大腿下部後側へ掛け回される伸縮性の外側締付ベルトとをサポータ本体に設けて構成され、内側締付ベルトは、下端及び上端に設けた面ファスナーの一方とサポータ本体に設けた面ファスナーの他方とを係脱自在にし、外側締付ベルトは、下端及び上端に設けた面ファスナーの一方とサポータ本体に設けた面ファスナーの他方とを係脱自在にし、内側締付ベルトは、外側締付ベルトに比べて相対的に高い伸縮性素材を用いていることを特徴とする膝サポータである。内側締付ベルトは、膝関節内側に当たる部分に非伸縮性の弾性プレートを有する構成がより好ましい。
【0006】
サポータ本体は、従来の膝サポータと同様、伸縮性素材による完全な筒体としたり、全体を伸縮性素材で構成しながら、膝関節を挟んで大腿下部前側又は下腿下部前側の一方又は双方を係脱自在な開閉部として、部分的に開いた筒体として構成できる。開閉部は、従来公知の各種係脱手段を用いることができるが、最も簡易には一対の面ファスナーを用いる。サポータ本体は、伸縮性素材の働きにより膝関節を挟んだ範囲を締め付け、膝関節の左右方向のずれを抑制又は防止する。このほか、サポータ本体は、膝頭を囲む範囲に押圧パッドを設けて大腿四頭筋を押さえ込んだり、大腿下部から膝関節にかけて弾性ステーを内蔵して大腿骨に対する膝関節の揺動を抑制又は防止するとより好ましい。
【0007】
本発明の膝サポータは、内側締付ベルト及び外側締付ベルトを膝蓋骨下方で交差させて大腿下部後側へ掛け回す(大腿下部後側を過ぎて大腿下部内側又は外側まで延びてもよい)ことにより、膝関節を拘束して回旋を防止する。そして、伸縮性の違いにより、掛け回して伸びた外側締付ベルトが縮まろうとして膝関節を内側に押し込もうとする力に比べて、掛け回して伸びた内側締付ベルトが縮まろうとして膝関節を外側に押し出そうとする力が大きくなるので、膝関節が外向きに押される。このとき、内側締付ベルトが膝関節内側に当たる部分に非伸縮性の弾性プレートを有すると、外側に押し出そうとする力を膝関節に対して適切かつ確実に加えることができる。
【0008】
内側締付ベルト及び外側締付ベルトは、一体化された膝蓋骨下方で交差した部分を引き上げるようにして脛骨上部を押し込み、脛骨の前方への引き出しを抑制又は防止する。ここで、内側締付ベルト及び外側締付ベルトは、膝蓋骨下方で交差した部分を一体化しておくと、脛骨上部を押し込みやすくなる。内側締付ベルト及び外側締付ベルトの膝蓋骨下方で交差した部分は、例えば面ファスナーによる係脱自在に一体化してもよいし、縫着により分離不能に一体化してもよい。また、膝蓋骨下方に宛てがう正面視X字状のフラップから内側締付ベルト及び外側締付ベルトを引き出すようにして、前記フラップを一体化した部分として扱うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、KITO防止の対策として、膝関節の回旋を防止して膝関節が内側に向くことや、大腿骨に対する脛骨の前方への引き出しを防止することのできる膝サポータが提供できる。膝関節の回旋防止は、内側締付ベルト及び外側締付ベルトを、膝関節を囲む範囲に掛け回して締め付けることによる効果である。また、内側締付ベルト及び外側締付ベルトそれぞれの伸縮性の違いにより、膝関節を外側に押し出そうとする力が勝り、更に内側締付ベルトが有する弾性プレートの働きにより、膝関節が内側に向くことをよりよく防止できる。
【0010】
脛骨の前方引き出し制限は、膝蓋骨下方で交差した部分が脛骨上部を押し込むことによる効果である。また、前記交差した部分を一体化しておくと、脛骨上部を押し込むこみやすくなる。このとき、内側締付ベルト及び外側締付ベルトは、斜め上に向いた角度で膝関節を中心に掛け回されるところ、前記角度を前十字靭帯の延びる角度に揃えておくと、脛骨に対して後方への圧力をかけやすく、脛骨上部をより確実に押し込める。
【0011】
このほか、サポータ本体の膝蓋骨に当たる付近に押圧パッドを設けておくと、膝関節に掛け回した内側締付ベルト及び外側締付ベルトにより、前記押圧パッドが膝関節を押圧し、回旋を制限したり、半月板に掛かる負担を軽減できるようになる。更に、膝関節を挟んだ内外両側に、大腿下部から膝関節にかけて延びる弾性ステーを、サポータ本体に内蔵させて膝関節を挟むと、大腿骨に対する膝関節の揺動を抑制又は防止できる。こうした弾性ステーの働きは、内側締付ベルト及び外側締付ベルトにより膝関節が拘束されることにより、よりよく発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に基づく膝サポータの一例を装着した状態を正面方向から見た斜視図である。
【図2】本発明に基づく膝サポータの一例を装着した状態を背面方向から見た斜視図である。
【図3】本発明に基づく膝サポータの一例を展開した状態を表す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の膝サポータ1について図を参照しながら説明する。本発明の膝サポータ1は、例えば図1〜図3にみられるように、筒状のサポータ本体11の下部筒状本体114に、膝蓋骨22下方で交差した部分を一体化した内側締付ベルト12及び外側締付ベルト13を、前記交差した部分の下縁で縫着して構成される(図3参照)。これにより、サポータ本体11と内側締付ベルト12及び外側締付ベルト13とが分離不能な一体物として扱えるようになり、膝サポータ1を装着解除した際に内側締付ベルト12及び外側締付ベルト13を紛失する虞をなくすことができる。
【0014】
サポータ本体11は、膝関節を挟んで大腿下部から下腿上部までに装着される。本例のサポータ本体11は、表面に面ファスナーのメス面を有する上部筒状メス面113と、通気性を備えた下部筒状本体114とを上下に繋ぎ合わせた筒状で、上部筒状メス面113及び下部筒状本体114のいずれもが伸縮性素材で構成されている。上部筒状メス面113は、膝関節を挟んで大腿下部前側を内外に分割し、分割した一方を更に上下に分けて上下一対の開閉フラップ115,115を構成している。開閉フラップ115は、内面にフラップオス面116を設けてあり、分割した他方のメス面に係脱自在にしている。
【0015】
サポータ本体11は、開閉フラップ115を開いた状態(図3参照)で脚2を上方から差し込み、上部筒状メス面113を持って引き上げ、開閉部位の下端となる下部筒状本体114の上縁が膝蓋骨22下方に達した段階で、下の開閉フラップ115のフラップオス面116、上の開閉フラップ115のフラップオス面116の順に上部筒状メス面に係合させていくことにより、容易に装着できる。また、上部筒状メス面113及び下部筒状本体114のいずれもが伸縮性素材で構成されていることから、膝関節を挟んだ範囲、大腿骨21、膝蓋骨22、脛骨24及び腓骨25を締め付け、膝関節の左右方向のずれを抑制又は防止する。
【0016】
本例のサポータ本体11は、膝頭を囲む範囲で、上部筒状メス面113及び下部筒状本体114の内面に、正面視円弧状の押圧パッド117を設けている。これにより、サポータ本体11を装着した状態で、大腿四頭筋を押さえ込むことができる。また、膝関節を内外に挟んで、大腿下部から膝関節にかけて2本一組の弾性ステー111,111を左右一対に配し、各弾性ステー111を袋状になったステー被覆メス面112に内蔵している。こうして、膝関節は左右一対の弾性ステー111に挟まれることにより、大腿骨21に対する膝関節の揺動を抑制又は防止される。
【0017】
内側締付ベルト12は、下端に面ファスナーの内側下端オス面121、上端に面ファスナーの内側上端オス面123、そして膝蓋骨22下方で外側締付ベルト13と交差した部分を挟んで前記内側下端オス面121と点対称位置に面ファスナーの内側基端オス面122をそれぞれ設けた伸縮性素材からなる帯体である。内側上端オス面123は、大腿下部を囲む上部筒状メス面113に係脱され、内側下端オス面121及び内側基端オス面122は、正面視右側のステー被覆メス面112に係脱される。本例の内側締付ベルト12は、内側基端オス面122と同位置に弾性変形する弾性プレート124を内蔵している。弾性プレート124の位置は、内側基端オス面122をステー被覆メス面112のどこに係合するかにより特定され、位置ズレが防止される。
【0018】
外側締付ベルト13は、上述した内側締付ベルト12同様、下端に面ファスナーの外側下端オス面131、上端に面ファスナーの外側上端オス面133、そして膝蓋骨22下方で外側締付ベルト13と交差した部分を挟んで前記外側下端オス面131と点対称位置に面ファスナーの外側基端オス面132をそれぞれ設けた伸縮性素材からなる帯体である。外側上端オス面133は、大腿下部を囲む上部筒状メス面113に係脱され、外側下端オス面131及び内側基端オス面122は、正面視左側のステー被覆メス面112に係脱される。
【0019】
本例の内側締付ベルト12及び外側締付ベルト13は、膝蓋骨22下方で交差した部分を1枚の伸縮性生地からなるフラップで構成し、一体化している。フラップは、下方左右に内側下端オス面121及び外側下端オス面131を設けた突片を張り出し、また内側下端オス面121を設けた突片と点対称な位置から内側締付ベルト12を延ばし、同じく外側下端オス面131を設けた突片と点対称な位置から外側締付ベルト13を延ばした正面視X字状になっている。これにより、内側締付ベルト12及び外側締付ベルト13を膝関節に掛け回すとフラップが持ち上げられ、脛骨上部を押し込まれる(図1中黒塗矢印参照)。
【0020】
本発明の膝サポータ1は、大腿下部後側へ掛け回す内側締付ベルト12及び外側締付ベルト13それぞれの伸縮性の違いにより、掛け回して伸びた外側締付ベルト13が縮まろうとして膝関節を内側に押し込もうとする力(図1中左側白抜矢印参照)に比べて、掛け回して伸びた内側締付ベルト12が縮まろうとして膝関節を外側に押し出そうとする力(図1中右側白抜矢印参照)が大きくなるので、膝関節が外向きに押される。本例の膝サポータ1は、内側締付ベルト12が膝関節内側に当たる部分に非伸縮性の弾性プレート124を内蔵しているので、外側に押し出そうとする力を膝関節に対して適切かつ確実に加えることができる。
【0021】
また、本例の内側締付ベルト12及び外側締付ベルト13は、前十字靭帯26の延びる角度に揃えて膝関節を中心に掛け回されるようにしており、脛骨24下方に宛てがわれるX字状のフラップと相俟って、内側締付ベルト12及び外側締付ベルト13の収縮力による後方への圧力を脛骨24にかけやすく、脛骨24上部をより確実に押し込めるようにしている。このように、本発明の膝サポータ1は、膝関節を挟んだ範囲、大腿骨21、膝蓋骨22、脛骨24及び腓骨25をサポータ本体11で包み込むことにより締め付け、更に膝関節を中心に掛け回す内側締付ベルト12及び外側締付ベルト13により、膝関節の左右方向のずれを抑制又は防止し、膝関節の回旋を防止して膝関節が内側に向くことや、大腿骨に対する脛骨の前方への引き出しを防止する。
【符号の説明】
【0022】
1 膝サポータ
11 サポータ本体
12 内側締付ベルト
13 外側締付ベルト
2 脚
21 大腿骨
22 膝蓋骨
24 脛骨
25 腓骨
26 前十字靭帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝関節を挟んで大腿下部から下腿上部までに装着されるサポータ本体に、膝関節周囲に掛け回す締付ベルトを備えた膝サポータにおいて、
膝蓋骨下方外側から膝関節内側を通って大腿下部後側へ掛け回される伸縮性の内側締付ベルトと、膝蓋骨下方内側から膝関節外側を通って大腿下部後側へ掛け回される伸縮性の外側締付ベルトとをサポータ本体に設けて構成され、
内側締付ベルトは、下端及び上端に設けた面ファスナーの一方とサポータ本体に設けた面ファスナーの他方とを係脱自在にし、
外側締付ベルトは、下端及び上端に設けた面ファスナーの一方とサポータ本体に設けた面ファスナーの他方とを係脱自在にし、
内側締付ベルトは、外側締付ベルトに比べて相対的に高い伸縮性素材を用いている
ことを特徴とする膝サポータ。
【請求項2】
内側締付ベルトは、膝関節内側に当たる部分に非伸縮性の弾性プレートを有する請求項1記載の膝サポータ。
【請求項3】
内側締付ベルト及び外側締付ベルトは、膝蓋骨下方で交差した部分を一体化した請求項1又は2いずれか記載の膝サポータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−143311(P2012−143311A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2336(P2011−2336)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(591016460)ダイヤ工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】