説明

膝蓋骨切除アセンブリ

【課題】ハンドルと、摺動部材と、2つの爪部材とを備える膝蓋骨切除アセンブリを提供する。
【解決手段】摺動部材は、移動可能にハンドルに取り付けられ、2つの分岐アームを含む。それらの分岐アームの内縁は、摺動部材の遠位移動によって爪部材が互いに向かって移動して膝蓋骨の周囲で閉じるように爪部材の外縁に接する。爪部材及び摺動部材は、爪部材がともに移動するにつれて膝蓋骨を把持するための歯を有する。爪部材はまた、膝蓋骨の切除中に鋸刃の通り道を案内するための平らな同一平面上の表面も有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、「Patella Resection Assembly」と題する2011年9月28日付の米国特許仮出願第61/540061号に対する優先権を主張し、その全すべてを参考として本明細書に組み込む。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、広義には整形外科用手術器具に関し、より具体的には膝蓋骨切除ガイドに関する。
【背景技術】
【0003】
関節形成術は、疾患及び/又は損傷した本来の関節を人工関節で置き換える周知の外科手術である。通常の人工膝関節は、脛骨トレー、大腿骨構成要素、及び脛骨トレーと大腿骨構成要素との間に配置されるポリマーインサート又はベアリングを含む。いくつかの場合では、人工膝関節は、人工膝蓋骨構成要素を含んでもよく、この構成要素は、手術により準備された患者の膝蓋骨の後部側に固定される。膝蓋骨の準備のために、整形外科医は最初に患者の本来の膝蓋骨の後方ドーム側を切除して、そこに義足構成要素を固定する。使用時、膝蓋骨構成要素は、患者の膝の伸張及び屈曲中に、患者本来の又は人工の大腿骨と関節で繋がっている。
【0004】
本来の関節を人工膝関節で置き換えることを容易にするために、整形外科医は、例えば切断ブロック、ドリルガイド、ミリングガイド、及び他の手術器具等の様々な整形外科用手術器具を使用する。通常、整形外科用手術器具は患者に関して一般的であるため、類似する整形外科手術中に、同一の整形外科用手術器具が多数の異なる患者に使用され得る。
【0005】
膝蓋骨を切除する際、外科医はしばしばフリーハンドで切除を実施する。しかしながら、フリーハンドでの膝蓋骨の切断は、ガイド付きの切除ほど正確なものではない。更に、膝蓋骨義足用の定着手段を受容するために、かつ残存する膝蓋骨の完全性を維持するために、十分な量の骨ストックが切除後にも残存することが重要である。膝蓋骨移植片が適切に配置され、適当な量の骨が切除後に残存するようにするためには、切除ガイドが必要となる。
【0006】
患者の体の大きさなどを含んだ多数の要因により、本来の膝蓋骨はかなり大きさが異なる。したがって、切除ガイドが使用される場合、膝蓋骨の大きさの変動性に対応するようにガイドが複数の大きさで提供されるか、あるいは調節可能な切除ガイドが使用されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、膝蓋骨がしっかりと把持されている間に切除が行えるように外科医を支援する調節式膝蓋骨切除ガイドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
代表的実施形態では、本発明は、ハンドルと摺動部材と第1及び第2の爪部材とを備える膝蓋骨切除アセンブリを提供する。ハンドルは、近位端と、遠位端と、長手方向平面を画定する近位端と遠位端の間の長手方向軸とを有する。摺動部材は、移動可能にハンドル上に取り付けられ、第1の骨把持部材と、基部と、第1のアーム及び第2のアームとを含む。第1のアーム及び第2のアームは、基部から遠位方向に向かって自由遠位端まで延在する。第1のアームは、長手方向平面の片側に位置づけられ、第2のアームは、その反対側の長手方向平面に位置づけられる。第1のアームは、長手方向平面に面する内側縁部を有し、第2のアームは、長手方向平面に面する内側縁部を有し、それらの縁部は、遠位方向に向かって分岐している。摺動部材は、ハンドルの長手方向軸に沿って直線方向に第1の位置と第2の位置との間でハンドルの近位端に向かって及びハンドルの遠位端から離れるように選択的に移動可能である。第2の位置は、第1の位置より遠位にある。第1の爪部材は、ハンドルの遠位端から自由端まで延在する。第1の爪部材は、長手方向平面の片側に位置づけられ、鋸刃を案内するための平らな平面と、第1の自由端にある第2の骨把持部材と、曲がった外縁と、ハンドルに取り付けられた第2の端とを有する。第2の爪部材は、ハンドルの遠位端から自由端まで延在する。第2の爪部材は、第1の爪部材の位置と反対側の長手方向平面上に位置づけられ、第1の爪部材の平らな平面と同一平面上の平らな平面と、自由端にある第3の把持部材と、曲がった外縁と、ハンドルに取り付けられた第2の端とを有する。第1の爪部材の自由端及び第2の爪部材の自由端は、ハンドルの遠位端から遠位に離間している。第1の骨把持部材、第1の爪部材及び第2の爪部材は、膝蓋骨を受け取るためにそれらの間に開口部を画定する。摺動部材の第1のアームの内縁と第1の爪部材の外縁は、互いに接触しており、摺動部材の第2のアームの内縁と第2の爪部材の外縁は、互いに接触している。第1の位置から第2の位置への摺動部材の長手方向の移動は、第1の骨把持部材の遠位方向への移動を引き起こし、第1の爪部材の自由端と第2の爪部材の自由端を互いに向けて移動させる。第1の骨把持部材、第1の爪部材及び第2の爪部材が画定する開口部は、摺動部材が第1の位置であるときは、ある1つの寸法、及び摺動部材が第2の位置であるときは、より小さい寸法を有する。
【0009】
より具体的な実施形態では、第4の把持部材は、第1の爪部材の自由端から離間した位置で第1の爪部材から開口部に向かって延在し、第5の把持部材は、第2の爪部材の自由端から離間した位置で第2の爪部材から開口部に向かって延在する。
【0010】
より具体的な別の実施形態では、第1及び第2の爪部材は、枢動可能にハンドルに接続され、第1の位置から第2の位置への摺動部材の長手方向の移動は、第1の爪部材及び第2の爪部材の枢動を引き起こす。
【0011】
別の代替実施形態では、第1の位置から第2の位置への摺動部材の長手方向の移動によって第1の爪部材及び第2の爪部材が互いに向かって直線的に移動するように、第1及び第2の爪部材は、直線運動コネクタによってハンドルに接続される。
【0012】
別のより具体的な実施形態では、摺動部材は、ハンドルの長手方向軸に沿って基部から遠位端まで延在する中間アームを含み、第1の骨把持部材は、中間アームの遠位端にある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
「発明を実施するための形態」において、特に以下の図面を参照する。
【図1】本発明の原理が組み込まれた膝蓋骨切除アセンブリの一実施形態の斜視図。
【図2】図1の膝蓋骨切除アセンブリの平面図であり、第1の位置、すなわち開いた位置でのアセンブリを図示している。
【図3】図1〜2の膝蓋骨切除アセンブリの平面図であり、第2の位置、すなわち閉じた位置でのアセンブリを図示している。
【図4】第1の位置、すなわち開いた位置での図1〜3の膝蓋骨切除アセンブリの側面図。
【図5】図1〜4の膝蓋骨切除アセンブリのハンドルの平面図。
【図6】代替的ハンドルの平面図。
【図7】図6のハンドルを利用した本発明の原理を具現化した膝蓋骨切除アセンブリの第2の実施形態の平面図であり、第1の位置、すなわち開いた位置での膝蓋骨切除アセンブリを図示している。
【図8】図7の膝蓋骨切除アセンブリの平面図であり、第2の位置、すなわち閉じた位置での膝蓋骨切除アセンブリを図示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の概念には様々な改変及び代替的形態が考えられるが、その特定の代表的な実施形態を図面に例として示し、本明細書において詳細に述べる。ただし、本開示の概念を開示される特定の形態に限定することを何ら意図するものではなく、その逆に、本発明は、添付の「特許請求の範囲」において定義される発明の趣旨及び範囲に包含されるすべての改変物、均等物及び代替物を網羅することを意図するものである点を理解すべきである。
【0015】
解剖学的参照を表す、前、後、内側、外側、上、下などの用語は、本明細書の全体を通じて、本明細書において述べられる整形外科用インプラント及び外科器具に関して、並びに患者の本来の解剖学的構造に関して使用され得る。これらの用語は、解剖学的構造の研究及び整形外科学の分野の両方において広く理解された意味を有するものである。明細書及び特許請求の範囲におけるこれらの解剖学的参照用語の使用は、特に断らないかぎりは、それらの広く理解されている意味と一貫性を有するものとする。
【0016】
図の膝蓋骨切除アセンブリに関して参照される「近位」及び「遠位」は、器具の使用者に対する関係である。したがって、近位は使用者により近い場所を指し、遠位は使用者からより遠い場所を指す。
【0017】
図1を参照すると、膝蓋骨切除アセンブリ10の第1の実施形態が図示されている。図の膝蓋骨切除アセンブリ10は、ハンドル12と、摺動部材20と、2つの爪部材40、52とを備える。
【0018】
ハンドル12は、近位端14と、遠位端16と、長手方向軸18を有する。長手方向軸18は、長手方向平面17に置かれ、アセンブリ10を内側半分と外側半分に分割する。
【0019】
摺動部材20は、第1の骨把持部材24と、基部26と、第1の外側アーム28及び第2の外側アーム30とを含む。第1のアーム28は、基部26から遠位に自由遠位端32まで延在し、第2のアーム30は基部26から遠位に自由遠位端34まで延在する。摺動部材20はまた、基部26から長手方向平面17に沿って遠位に延在する中間アーム35も有する。第1の例示した摺動部材20はまた、基部26から上方に延在するタブ27も含む。
【0020】
摺動部材20は、ハンドルの長手方向軸18に沿って直線方向にハンドル12に対して選択的に、図2に図示した第1の位置と図3に図示した第2の位置との間を移動可能である。図3の第2の位置で、摺動部材20は、図1の第1の位置より遠位にある。
【0021】
第1の爪部材40は、長手方向平面17の片側に沿ってハンドル12の遠位端16から第1の自由端42まで延在する。第1の爪部材40は、鋸刃(図示せず)を案内するための平らな平面44、第1の自由端42にある第2の骨把持部材46、曲がった外縁48、及びハンドル12に取り付けられた第2の端50を有する。
【0022】
第2の爪部材52は、第1の爪部材40の反対側の長手方向平面17に沿ってハンドル12の遠位端16から第2の自由遠位端54まで延在する。第2の爪部材52は、第1の爪部材40の平らな平面44と同一平面上の平らな平面56、第2の自由遠位端54にある第3の骨把持部材58、曲がった外縁60、及びハンドル12に取り付けられた第2の端62を有する。
【0023】
図1〜3に図示したように、第1の爪部材40の第1の自由端42及び第2の爪部材52の第2の自由端54は、ハンドル12の遠位端16から遠位に離間している。第1の爪部材40、第2の爪部材52、及び第1の骨把持部材24は、膝蓋骨を受け取るためにそれらの間に開口部64を画定する。図の実施形態は、内縁の最も内側及び最も外側部分に沿って爪部材40、52の内縁から開口部64に延出している第4及び第5の骨把持部材47、59もまた含む。
【0024】
図の実施形態では、すべての骨把持部材24、46、47、58、59は、開口部64に面する1つ以上の先の尖った歯又は鋭い歯を備えている。骨把持部材24、46、47、58、59の歯のすべては、長手方向平面17に対して垂直な平面に横たわっている。それらの歯は、膝蓋骨が歯の間に受容され、歯に係合されるとき、膝蓋骨上の複数の点が係合され(離間した3つの点など)、その結果、膝蓋骨と膝蓋骨切除ガイドとの間の相対的移動を伴うことなく膝蓋骨が保持されるように方向付けられている。骨把持部材24、46、47、58、59のすべては、それらのそれぞれ対応する部品と一体形成されてよく、それぞれ対応する部品に固定される分離した要素として形成されてもよい。
【0025】
アセンブリ10において、摺動部材20が図2の第1の位置にあるとき及び摺動部材20が図3の第2の位置にあるとき、摺動部材20のサイドアーム28、30の内縁36、38は、爪部材40、52の曲がった外縁48、60に接触している。図1〜3に見られるように、爪部材40、52の曲がった外縁48、60は、それらの第2の端50、62からそれらの最も幅広の点まで外方に曲がってから遠位端42、54に向かって内方に曲がるほぼ楕円形である。爪部材の内縁は、同様の形である。
【0026】
図1〜3に示したように、サイドアーム28、30の内縁36、38は、概ね真っ直ぐであり、基部26から遠位方向に外方に分岐している。したがって、内縁36、38の間の空間は、自由遠位端32、34で最大であり、サイドアーム28、30と基部26の接合部において最小である。図2及び3に見られるように、摺動部材20が図2に示した位置から図3に示した位置へと遠位に移動するにつれて、サイドアーム28、30の分岐する内縁36、38と爪部材40、52の曲がった外縁48、60との間の接触は、変化し、サイドアーム28、30の内縁36、38のより近位部分、すなわちそれらの内縁36、38間の空間がより狭い場所で接触するようになる。したがって、摺動部材20の遠位移動は、爪部材40、52を互いに向かって移動させ、開口部64内に位置づけられた膝蓋骨の周辺に骨把持部材が接触するまで、すべての骨把持部材24、46、58の間の間隙を減少させる。
【0027】
爪部材40、52のそのような動きを可能にするために、第1の例示した実施形態は、爪部材40、52とハンドル12の間に枢動接続を用いる。この枢動接続は、円筒形の穴に受け入れられる図1〜3の70、72に示したようなピンを備えてよい。図の実施形態では、ピン70、72は、ハンドル12の遠位端16から外方に延在するショルダ74、76から上方に延在し、円筒形の穴は、爪部材40、52の近位端50、62に形成される。このピンと穴の配列は、第1の実施形態に用いることが可能な枢動接続の一例として提供されており、爪部材の枢動を可能にする他の型式の枢動接続を採用してもよく、請求項に明示的に記載されない限り、本発明がこの例示の枢動接続機構に限定されることはない。
【0028】
摺動部材20の近位−遠位移動を可能にするために、第1の例示した実施形態は、対のピンと、近位−遠位方向に延在する対の細長いスロットと、を備える摺動接続を用いる。図1〜3において、ピン78、80及びスロット82、84は、点線で示されている。図4〜5に示したように、第1の例示の実施形態のピン78、80は、ハンドル12に固定され、そこから直立に延出し、スロット82、84は、摺動部材20内に形成される。このアセンブリは、摺動部材がハンドル12から持ち上げられて外れることを防ぐ構造体を含んでよいことを理解されたい。あるいは、摺動接続は、細長いダブテール接続を含むこことができる。
【0029】
膝蓋骨切除アセンブリの代替実施形態を図7〜8の10Aに示す。この実施形態では、第1の実施形態に関して上述した部品と同様の部品が、第一の実施形態に関して使用した参照番号に対応する参照番号の末尾に「A」を付して示されている。第2の例示の実施形態では、摺動部材の代わりにハンドル12内に細長いスロット82A、84Aが形成されており、摺動部材20Aをハンドル12Aに摺動接続を通して取り付けるためにピン78A、80Aが摺動部材20Aから下方に延在している。第2の例示の膝蓋骨切除アセンブリ10Aのハンドル12Aのショルダ74A、76Aもまた、第1の例示の膝蓋骨切除アセンブリ10のショルダ74、76と異なる形である。摺動部材20Aの滑る動きは、摺動部材20の滑る動きとほぼ同じである。摺動部材20Aがハンドル12Aから持ち上げられて外れるのを防ぐ構造体もまた、含まれてよい。
【0030】
第2の例示の膝蓋骨切除アセンブリ10Aでは、摺動部材20Aの動きによる爪部材40A、52Aの動きは、旋回ではなく直線的である。この直線的な動きを達成するために、第2の実施形態は、ピン及びスロットを備える直線動作接続を提供する。この実施形態では、ピン92、93、94、95は、ハンドル12Aのショルダ又はツバ74A、76Aから上方に延在し、爪部材40A、52Aの細長いスロット96、97に受け取られる。2つのピン92、93は、直線的に整列してハンドル12Aのショルダ又はツバ74Aに固定される。2つのピン94、95は、互いに整列し、かつ最初の2つのピン92、93とも直線的に整列し、ハンドル12Aのショルダ又はツバ76Aに固定される。細長いスロット96、97は、互いに直線的に整列されて、爪部材40A、52Aの第2の端50A、62Aに形成される。スロット96、97は、ハンドルの長手方向軸18Aに対して垂直である。
【0031】
図7及び8に示すように、摺動部材20Aが図7に示した位置から図8に示した位置へと遠位に移動するにつれて、サイドアーム28A、30Aの分岐する内縁36A、38Aと爪部材40A、52Aの曲がった外縁48A、60Aとの間の接触は、変化し、それらは、サイドアーム28A、30Aの内縁のより近位部分で接触するようになり、内縁36A、38A間の空間は、狭くなっていく。したがって、摺動部材の遠位移動は、爪部材40A、52Aを互いの方へ移動し、開口部64A内に位置づけられた膝蓋骨の周辺に骨把持部材が接触するまで、すべての骨把持部材24A、46A、58Aの間の間隙を減少させる。第2の例示の実施形態では、摺動部材20Aの遠位移動は、爪部材40A、52Aを長手方向平面17Aの方へ押して、膝蓋骨周囲に開口部を閉じる。
【0032】
例示の実施形態のいずれにも追加的な特徴を組み込むことができる。例えば、バネ又は同様のものを提供して、図1、2及び7に示した位置へと爪部材40、40A、52、52Aを付勢してよい。更に、追加的な平らな部材を表面44、44A、56、56Aに平行に重ねて提供して同一平面上のスロットを画定し、膝蓋骨の切除に使用される鋸刃を受け取ってよい。ハンドル12、12A及び摺動部材20、20Aは、予め選択された位置に摺動部材20、20Aをロックするために多様な構造体を含んでもよい。例えば、解除可能な直線的なラチェットと爪の機構を採用することができる。膝蓋骨の切除レベルを設定するのを助けるために、膝蓋骨切除アセンブリ10、10Aのいずれかとともにスタイラスをまた、組み立てることができる。
【0033】
本発明の膝蓋骨切除ガイドアセンブリ10、10Aを使用するために、外科医は、標準的な切開を行い、次いで患者の膝蓋骨を部分的にあるいは完全に裏返して、膝蓋骨の後方側を露出させる。図1、2及び7に示した位置に摺動部材20、20Aが近位に引き戻された状態で爪部材40、52、40A、52Aを手術部位に導入し、開口部64、64Aが膝蓋骨を受け取るまで膝蓋骨に対して移動させてよい。次いで外科医は、タブ27、27Aを押して、骨把持部材24、46、47、58、59、24A、46A、47A、58A、59Aが膝蓋骨の周辺に接触するまで摺動部材を遠位に滑らせてよい。次いで外科医は、引き続きタブ27、27Aを押して、骨把持部材24、46、47、58、59、24A、46A、47A、58A、59Aが膝蓋骨の周辺と完全に係合するまで摺動部材を遠位に滑らせてよい。このようにして、多数の間隔の開いた接点によって多様な寸法の膝蓋骨を締め付け、同一平面上の表面44、56、44A、56Aが(摺動部材の上面とともに)切除レベルを画定しながら保持することができる。膝蓋骨を切除するために、外科医は、平らな同一平面上の表面44、56、44A、56Aの1つに沿って手術用鋸刃の平らな縁を置き、鋸刃が反対側のガイド表面上で止まるまで鋸刃を案内することができる。
【0034】
図示した膝蓋骨切除アセンブリ10、10Aの設計は、構成要素を作製するために最も適切かつ経済的な材料を選択して使用することを可能にする。例えば、ハンドル12は、金属、プラスチック又は他の材料で作製することができ、ハンドル12は、好適なポリマーの射出成形によって比較的安価に作製してもよい。爪部材40、40A、52、52Aはまた、金属、プラスチック又は他の材料で作製することができるが、鋸刃に適切な支持が提供されるように少なくとも表面44、44A及び56、56Aは、金属で構築することが好ましい。加えて、「Orthopaedic Cutting Block Having a Chemically Etched Metal Insert and Method of Manufacturing」と題する米国特許公開第2010168753号(A1)に記載されているようなプロセスを使用してポリマーと金属の組み合わせの爪部材40、40A、52、52Aを作製してよく、その開示は、すべて本明細書に参考として組み込まれる。機器用の標準的な金属及びポリマーを使用してよい。
【0035】
以上、図面及び上記の説明文において本開示内容を詳細に図示、説明したが、こうした図示、説明はその性質上、例示的なものとみなすべきであって、限定的なものとみなすべきではなく、あくまで例示的実施形態を示し、説明したものにすぎないのであって、本開示の趣旨の範囲に含まれる変更及び改変はすべて保護されることが望ましい点は理解されるであろう。
【0036】
本開示は、本明細書において述べた方法、装置、及びシステムの様々な特徴に基づく多くの利点を有するものである。本開示の方法、装置、及びシステムの代替的実施形態は、ここで述べた特徴のすべてを含むわけではないが、こうした特徴の利点の少なくとも一部から利益を享受するものであることに留意されよう。当業者であれば、本発明の1つ以上の特徴を取り入れた、「特許請求の範囲」において定義される本開示の趣旨及び範囲に包含される方法、装置、及びシステムを独自に実施することが容易に可能であろう。
【0037】
〔実施の態様〕
(1) 膝蓋骨切除アセンブリであって、
近位端と、遠位端と、前記近位端と前記遠位端との間の、長手方向平面を画定する長手方向軸とを有するハンドルと、
前記ハンドルに移動可能に取り付けられた摺動部材であって、第1の骨把持部材と、基部と、第1のアームと、第2のアームとを含み、前記第1のアーム及び前記第2のアームは、前記基部から自由遠位端まで遠位方向に延在し、前記第1のアームは、前記長手方向平面の片側に位置づけられ、前記第2のアームは、その反対側の前記長手方向平面に位置づけられ、前記第1のアームは、前記長手方向平面に面する内縁を有し、前記第2のアームは、前記長手方向平面に面する内縁を有し、前記内縁が前記遠位方向に分岐しているこの摺動部材が、
前記ハンドルの前記長手方向軸に沿って直線方向に第1の位置と第2の位置との間で前記ハンドルの前記近位端及び前記遠位端に向かって及びそれらから離れるように選択的に移動可能であり、前記第2の位置が、前記第1の位置より遠位にある、摺動部材と、
前記ハンドルの前記遠位端から自由端まで延在し、前記長手方向平面の片側に位置づけられた第1の爪部材であり、鋸刃を案内するための平らな平面と、その第1の自由端にある第2の把持部材と、曲がった外縁と、前記ハンドルに取り付けられた第2の端とを有する、第1の爪部材と、
前記ハンドルの前記遠位端から自由端まで延在し、前記第1の爪部材の位置と対向する側の前記長手方向平面に位置づけられた第2の爪部材であって、前記第1の爪部材の前記平らな平面と同一平面上にある平らな平面と、前記自由端にある第3の把持部材と、曲がった外縁と、前記ハンドルに取り付けられた第2の端と、を有する第2の爪部材と、を備えるこのアセンブリにおいて、
前記第1の爪部材の前記自由端及び前記第2の爪部材の前記自由端は、前記ハンドルの前記遠位端から遠位に離間して置かれ、
前記第1の骨把持部材、前記第1の爪部材及び前記第2の爪部材は、膝蓋骨を受け取るためにそれらの間に開口部を画定し、
ここで、
前記摺動部材の前記第1のアームの前記内縁は、前記第1の爪部材の前記外縁と接触し、前記摺動部材の前記第2のアームの前記内縁は、前記第2の爪部材の前記外縁と接触し、
前記第1の位置から前記第2の位置への前記摺動部材の長手方向の移動は、前記第1の骨把持部材の遠位方向への移動を引き起こし、前記第1の爪部材の前記自由端と前記第2の爪部材の前記自由端を互いに向けて移動させ、
前記第1の骨把持部材、前記第1の爪部材、及び前記第2の爪部材が画定する前記開口部は、前記摺動部材が前記第1の位置であるときに1つの寸法を有し、前記摺動部材が前記第2の位置であるときはより小さい寸法を有する、膝蓋骨切除アセンブリ。
(2) 前記第1の爪部材の前記自由端から間隔を開けた位置で前記開口部に向かって前記第1の爪部材から延出する第4の把持部材と、
前記第2の爪部材の前記自由端から間隔を開けた位置で前記開口部に向かって前記第2の爪部材から延出する第5の把持部材と、を更に備える、実施態様1に記載の膝蓋骨切除アセンブリ。
(3) 前記第1の爪部材が、前記ハンドルに枢動可能に接続され、
前記第2の爪部材が、前記ハンドルに枢動可能に接続され、
前記第1の位置から前記第2の位置への前記摺動部材の長手方向の移動が、前記第1の爪部材及び前記第2の爪部材の枢動を引き起こす、実施態様1に記載の膝蓋骨切除アセンブリ。
(4) 前記第1の位置から前記第2の位置への前記摺動部材の長手方向の移動によって前記第1の爪部材及び前記第2の爪部材が互いに向かって直線的に移動するように、前記第1の爪部材と前記第2の爪部材が、直線運動接続部によって前記ハンドルに接続される、実施態様1に記載の膝蓋骨切除アセンブリ。
(5) 前記直線運動接続部が、ピンとスロットとを備える、実施態様4に記載の膝蓋骨切除アセンブリ。
(6) 前記摺動部材が、前記ハンドルの前記長手方向軸に沿って前記基部から遠位端まで延在する中間アームを含み、
前記第1の骨把持部材が、前記中間アームの前記遠位端にある、実施態様1に記載の膝蓋骨切除アセンブリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝蓋骨切除アセンブリであって、
近位端と、遠位端と、前記近位端と前記遠位端との間の、長手方向平面を画定する長手方向軸とを有するハンドルと、
前記ハンドルに移動可能に取り付けられた摺動部材であって、第1の骨把持部材と、基部と、第1のアームと、第2のアームとを含み、前記第1のアーム及び前記第2のアームは、前記基部から自由遠位端まで遠位方向に延在し、前記第1のアームは、前記長手方向平面の片側に位置づけられ、前記第2のアームは、その反対側の前記長手方向平面に位置づけられ、前記第1のアームは、前記長手方向平面に面する内縁を有し、前記第2のアームは、前記長手方向平面に面する内縁を有し、前記内縁が前記遠位方向に分岐しているこの摺動部材が、
前記ハンドルの前記長手方向軸に沿って直線方向に第1の位置と第2の位置との間で前記ハンドルの前記近位端及び前記遠位端に向かって及びそれらから離れるように選択的に移動可能であり、前記第2の位置が、前記第1の位置より遠位にある、摺動部材と、
前記ハンドルの前記遠位端から自由端まで延在し、前記長手方向平面の片側に位置づけられた第1の爪部材であり、鋸刃を案内するための平らな平面と、その第1の自由端にある第2の把持部材と、曲がった外縁と、前記ハンドルに取り付けられた第2の端とを有する、第1の爪部材と、
前記ハンドルの前記遠位端から自由端まで延在し、前記第1の爪部材の位置と対向する側の前記長手方向平面に位置づけられた第2の爪部材であって、前記第1の爪部材の前記平らな平面と同一平面上にある平らな平面と、前記自由端にある第3の把持部材と、曲がった外縁と、前記ハンドルに取り付けられた第2の端と、を有する第2の爪部材と、を備えるこのアセンブリにおいて、
前記第1の爪部材の前記自由端及び前記第2の爪部材の前記自由端は、前記ハンドルの前記遠位端から遠位に離間して置かれ、
前記第1の骨把持部材、前記第1の爪部材及び前記第2の爪部材は、膝蓋骨を受け取るためにそれらの間に開口部を画定し、
ここで、
前記摺動部材の前記第1のアームの前記内縁は、前記第1の爪部材の前記外縁と接触し、前記摺動部材の前記第2のアームの前記内縁は、前記第2の爪部材の前記外縁と接触し、
前記第1の位置から前記第2の位置への前記摺動部材の長手方向の移動は、前記第1の骨把持部材の遠位方向への移動を引き起こし、前記第1の爪部材の前記自由端と前記第2の爪部材の前記自由端を互いに向けて移動させ、
前記第1の骨把持部材、前記第1の爪部材、及び前記第2の爪部材が画定する前記開口部は、前記摺動部材が前記第1の位置であるときに1つの寸法を有し、前記摺動部材が前記第2の位置であるときはより小さい寸法を有する、膝蓋骨切除アセンブリ。
【請求項2】
前記第1の爪部材の前記自由端から間隔を開けた位置で前記開口部に向かって前記第1の爪部材から延出する第4の把持部材と、
前記第2の爪部材の前記自由端から間隔を開けた位置で前記開口部に向かって前記第2の爪部材から延出する第5の把持部材と、を更に備える、請求項1に記載の膝蓋骨切除アセンブリ。
【請求項3】
前記第1の爪部材が、前記ハンドルに枢動可能に接続され、
前記第2の爪部材が、前記ハンドルに枢動可能に接続され、
前記第1の位置から前記第2の位置への前記摺動部材の長手方向の移動が、前記第1の爪部材及び前記第2の爪部材の枢動を引き起こす、請求項1に記載の膝蓋骨切除アセンブリ。
【請求項4】
前記第1の位置から前記第2の位置への前記摺動部材の長手方向の移動によって前記第1の爪部材及び前記第2の爪部材が互いに向かって直線的に移動するように、前記第1の爪部材と前記第2の爪部材が、直線運動接続部によって前記ハンドルに接続される、請求項1に記載の膝蓋骨切除アセンブリ。
【請求項5】
前記直線運動接続部が、ピンとスロットとを備える、請求項4に記載の膝蓋骨切除アセンブリ。
【請求項6】
前記摺動部材が、前記ハンドルの前記長手方向軸に沿って前記基部から遠位端まで延在する中間アームを含み、
前記第1の骨把持部材が、前記中間アームの前記遠位端にある、請求項1に記載の膝蓋骨切除アセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−71013(P2013−71013A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−213840(P2012−213840)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【出願人】(501384115)デピュイ・プロダクツ・インコーポレイテッド (216)
【Fターム(参考)】