説明

膝関節サポーター

【課題】 膝関節の安定性を向上して、着用者の疲労を減少すると共に、膝蓋腱への負荷を減少することができる膝関節サポーターを提供する。
【解決手段】 膝関節サポーター10は、略U字形状に編成され、当該着用者の膝蓋骨を支持する支持部4と、着用者の膝蓋骨に対応する膝蓋骨対応部5と、を備え、膝蓋骨対応部5が、メッシュ編地により編成される第1のメッシュ部5aと、縦格子状の編地により編成される第1の縦格子部5bと、横格子状の編地により編成される第1の横格子部5cとからなり、筒状編地の周方向における第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3の伸縮抵抗が、筒状編地の周方向におけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きく、筒状編地の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗が、筒状編地の長さ方向Lにおける支持部4の伸縮抵抗より小さく、筒状編地の長さ方向における第1のメッシュ部5aの伸縮抵抗より大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、着用者の日常動作を支援することのできる膝関節サポーターに関し、特に、膝関節の安定性を向上して、着用者の疲労を減少すると共に、膝蓋腱への負荷を減少するテーピング機能を具備する膝関節サポーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
膝関節の筋力(特に、大腿四頭筋)の低下は、歩行、椅子からの立ち上がり、座り込み、又は階段の昇降などの日常動作が困難になる。
【0003】
また、筋力が低下した状態や相対的筋力不足(施行動作と筋力とのバランスで筋肉に過負荷がかかった場合)の状態では、受動要素(腱、靭帯など)によって支持し、受動要素による支持を繰り返すことで、関節軟骨の磨り減りや腱又は靭帯の炎症を引き起こす。特に、膝蓋骨(膝の皿周辺)の疼痛は、膝蓋腱炎の場合もあり、膝蓋骨のサポートが必要である。
【0004】
これに対し、従来のサポータは、伸縮性素材からなる筒状の本体と、これに一体的に設けられ、本体よりも低伸縮性素材からなるサポート部分とを有する。サポート部は、本体を人体に対して固定するアンカー部と、膝と係合する係合部と、アンカー部と係合部とを連結することにより肢軸に対する膝の体幹側への変位を抑制する連結部とを具備している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、従来のコンプレッションサポーターは、伸縮性素材からなる筒状の本体と、これに伸縮性素材より成り膝部に着用し得る形態の本体を具備し、上記本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域を本体に設け、上記低伸縮領域と本体の伸縮性の相違により膝関節部及び周囲筋腱をサポートするサポーターとして、低伸縮領域として、膝蓋靭帯を圧迫するために、膝蓋骨の下部を取り囲むほぼU字型に、本体正面に設けた正面吊り領域を具備し、上記低伸縮領域は、樹脂より成る低伸縮性材料を本体に固着する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−106404号公報
【特許文献2】特開2010−13765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のサポータは、過度の内旋や外反による膝の故障を有効に防止、保護し得るサポータであり、脚の外側面に沿って係合部とアンカー部とを直線的に連結するように連結部が設けられているが、脚の内側面には連結部が設けられていない。このため、従来のサポータは、脚の外側面及び内側面に掛かる連結部による押圧力のバランスに欠けるものであり、膝関節の安定性を向上するものではなく、着用者の疲労を減少するものではない。
【0008】
特に、従来のサポータは、本体よりも低伸縮性の素材からなるサポート部分(アンカー部、係合部、連結部)が、本体に裏打ち逢着されるために、筒状の本体を構成した後に、サポート部分を縫合する工程が必要であり、製造工程が複雑であるという課題がある。
【0009】
また、従来のサポータは、着用者の膝に対して内側面から外側面に向けて強い押圧力を
与えるものではないため、脚の外側面側から膝に外力を受けた場合に、外力を緩和する膝部の内側面から外側面に向けての反発力が得られず、内側側副靭帯の損傷を抑制するために十分ではないという課題がある。
【0010】
また、従来のコンプレッションサポーターは、正面吊り領域が、膝蓋骨の下部を取り囲む湾曲部を有することにより、膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋に好適な作用を及ぼすものとしている。しかしながら、従来のコンプレッションサポーターは、着用者の大腿を周回して正面吊り領域(側面圧迫領域)を係止するための低伸縮領域(アンカー)を備えていないため、膝蓋骨を吊り上げる作用が十分でないという課題がある。
【0011】
特に、従来のコンプレッションサポーターは、樹脂より成る低伸縮性材料を本体に固着して各伸縮性領域を構成するために、筒状の本体を構成した後に、低伸縮性材料を固着する工程が必要であり、製造工程が複雑であるという課題がある。
【0012】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、膝関節の安定性を向上して、着用者の疲労を減少すると共に、膝蓋腱への負荷を減少することができる膝関節サポーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係る膝関節サポーターにおいては、丸編で編み立てられる筒状編地からなり、着用者の体表に密着して膝関節を補助する膝関節サポーターにおいて、筒状編地の一端を周回して編成され、着用者の大腿に当該筒状編地を締着させる第1のアンカー部と、筒状編地の他端を周回して編成され、着用者の下腿に当該筒状編地を締着させる第2のアンカー部と、第1のアンカー部に連結し、着用者の膝蓋骨に対応する部分を包囲する略U字形状に編成され、当該着用者の膝蓋骨を支持する支持部と、筒状編地の正面側に編成され、着用者の膝蓋骨に対応する膝蓋骨対応部と、を備え、膝蓋骨対応部が、メッシュ編地により編成される第1のメッシュ部と、筒状編地の長さ方向に併設されて第1のメッシュ部を複数の領域に区分する縦格子状の編地により編成される第1の縦格子部と、筒状編地の周方向に併設されて第1のメッシュ部を複数の領域に区分する横格子状の編地により編成される第1の横格子部とからなり、筒状編地の周方向における第1のアンカー部及び第2のアンカー部の伸縮抵抗が、筒状編地の周方向におけるベース生地部の伸縮抵抗より大きく、筒状編地の長さ方向における支持部の伸縮抵抗が、筒状編地の長さ方向におけるベース生地部の伸縮抵抗より大きく、筒状編地の長さ方向における第1のメッシュ部の伸縮抵抗が、筒状編地の長さ方向におけるベース生地部の伸縮抵抗より小さいものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る膝関節サポーターにおいては、支持部が着用者の膝部を挟持すると共に、膝蓋骨対応部が着用者の膝頭の曲面にフィットして着用者の膝頭を包み込むことで、膝関節サポーターの着用者の膝部が必要以上に左右にぶれずに安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は第1の実施形態に係る膝関節サポーターの概略構成を示す正面図であり、(b)は図1(a)に示す膝関節サポーターの背面図であり、(c)は図1(a)に示す膝関節サポーターの左側面図及び右側面図であり、(d)は図1(a)に示す膝関節サポーターの平面図であり、(e)は図1(a)に示す膝関節サポーターの底面図である。
【図2】(a)は図1に示す膝関節サポーターの着用状態を示す左前方から見た斜視図であり、(b)は図1に示す膝関節サポーターの着用状態を示す左側面図であり、(c)は図1に示す膝関節サポーターの着用状態を示す左後方から見た斜視図である。
【図3】(a)は図1(a)に示す膝蓋骨対応部の編地を説明するための説明図であり、(b)は図1(a)に示す膝蓋骨対応部による作用効果を説明するための説明図であり、(c)は図1(a)に示す膝蓋骨対応部による作用効果を説明するための他の説明図である。
【図4】(a)は図1(b)に示す膝窩当接部の一例を示す正面図であり、(b)は図1(b)に示す膝窩当接部の他の例を示す正面図であり、(c)は図1(b)に示す膝窩当接部のさらに他の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本発明の第1の実施形態)
図1、図2及び図3において、膝関節サポーター10は、靴下編機(例えば、ロナティ社製の編み機種(針数:256本))により丸編で編み立てられる筒状編地からなり、着用者の体表に密着して着用者の膝関節を補助するサポーターである。
【0017】
膝関節サポーター10は、表糸、裏糸及びゴム糸を編糸とし、平編、リブ編、タック編、浮き編又はパイル編などで編成されてなる伸縮性のある編地であるベース生地部1に対して、異なる編み立てを施すことで、テーピング機能などの所望の機能性を具備する。なお、本実施形態に係るベース生地部1は、タック編により編成してなる編地(以下、タック編地と称す)である。
【0018】
なお、タック編地とは、生地を編成するときに、一時ある編み目を作らないで、次のコースを編むときに一緒に編み目を作る編地である。本実施形態においては、度目とのバランスを考慮して、タックする回数を1回(1×1タック編地)としているが、この回数に限られるものではない。
【0019】
また、膝関節サポーター10は、筒状編地の一端(上端10a)を周回して編成され、着用者の大腿に膝関節サポーター10を締着させる第1のアンカー部2と、筒状編地の他端(下端10b)を周回して編成され、着用者の下腿に膝関節サポーター10を締着させる第2のアンカー部3とを備える。
【0020】
この第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3は、膝関節サポーター10(筒状編地)の周方向Hにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の周方向Hにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、素材に伸長を与えない状態から一定の伸長を与えた場合の張力をFとして、膝関節サポーター10の周方向Hにおけるベース生地部1の張力をFH1とし、膝関節サポーター10の周方向Hにおける第1のアンカー部2の張力をFH2とし、膝関節サポーター10の周方向Hにおける第2のアンカー部3の張力をFH3とした場合に、第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3がベース生地部1と比較して、膝関節サポーター10の周方向Hに強い締付力を持つような、FH2≒FH3>FH1という大小関係を有する。
【0021】
具体的には、第1のアンカー部2を、1×1鹿の子編で編成された編地(以下、1×1鹿の子編地と称す)を、膝関節サポーター10の上端10aで膝関節サポーター10の内側に折り返してベース生地部1及び後述する支持部4との境界で他の糸(例えば、ウーリーナイロン糸)で縫製した二重の1×1鹿の子編地(以下、二重鹿の子編地と称す)にすることにより、ベース生地部1に対して、膝関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗を大きくすることができる。また、第2のアンカー部3は、膝関節サポーター10の下端10bで膝関節サポーター10の内側に1×1鹿の子編地を折り返してベース生地部1及び後述する支持部4との境界で他の糸(例えば、ウーリーナイロン糸)で縫製した二重の1×1鹿の子編地(二重鹿の子編地)にすることにより、ベース生地部1に対して、膝関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗を大きくすることができる。
【0022】
なお、鹿の子編地とは、コース方向及びウェール方向に、平編とタック(あるコースで編み目を脱出させずに、その後のコースで複数ループを脱出させる組織)とが交互に、又は数コースごとに表れる編地である。このため、第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3には、平編とタックとを併用することで、編地の表面に隆起や透かし目を作ることができ、鹿の子のような網目柄が表れる。
【0023】
このように、第1のアンカー部2は、着用者の大腿を周回して編成され、膝関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の周方向Hにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きいことにより、着用者の大腿に膝関節サポーター10を固定し、膝関節の屈曲時における膝関節サポーター10の上端10aのずり下がりを抑制することができる。また、第1のアンカー部2は、後述する支持部4が連結され、この支持部4のアンカーとしても機能する。
【0024】
また、第2のアンカー部3は、着用者の下腿を周回して編成され、膝関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の周方向Hにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きいことにより、着用者の下腿に膝関節サポーター10を固定し、膝関節の屈曲時における膝関節サポーター10の下端10bのずり上がりを抑制することができる。
【0025】
なお、第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3による着用者の大腿及び下腿に対する締付力を強くしすぎると、大腿及び下腿における血流阻害を生じさせ、着用者に不快感を起こさせる。特に、この不快感は、下腿に比べ、大腿において顕著である。
【0026】
このため、本実施形態に係る膝関節サポーター10は、第2のアンカー部3に対して、着用者の体表に接触する第1のアンカー部2の面積を広げ、第1のアンカー部2による体表にかかる圧力を分散させると共に、第1のアンカー部2の一部において度目を調整(例えば、第2のアンカー部3に対して締付力を10%程度小さく)することで、着用者に与える不快感を緩和している。すなわち、本実施形態に係る膝関節サポーター10は、膝関節サポーター10の周方向Hに適度な締付力を持つように、FH3>FH2>FH1という大小関係を有することが好ましい。
【0027】
支持部4は、第1のアンカー部2に連結し、着用者の膝蓋骨に対応する部分(後述する膝蓋骨対応部5)を包囲する略U字形状に編成され、着用者の膝蓋骨を支持する。なお、支持部4は、略U字形状内の内側辺4aが略U字形状であれば、略U字形状外の外側辺4bが略U字形状である必要はなく、例えば、図1に示すように、略U字形状の湾曲部分を屈曲部分に変更した略コの字形状の外側辺4bであってもよい。
【0028】
特に、支持部4は、第2のアンカー部3に連結し、着用者の内側側副靭帯及び外側側副靭帯に対応して、第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3間に延在する。すなわち、支持部4は、着用者の大腿側における第1のアンカー部2で係止されており、着用者の下腿側における第2のアンカー部3で係止されている。
【0029】
なお、支持部4を第2のアンカー部3に連結しない場合には、支持部4と第2のアンカー部3との間に、伸縮性のあるベース生地部1が存在することになり、着用者の膝蓋骨に対して支持部4の位置ずれが生じる恐れがある。このため、支持部4は、第2のアンカー部3に連結することにより、安定した着用が可能となる。
【0030】
また、支持部4は、支持部4の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、支持部4の幅方向における伸縮抵抗と比較して大きくなるように、形成することが望ましいのであるが、この伸
縮抵抗の違いを持たせた編地を丸編で編み立てることは困難である。そこで、本実施形態においては、この伸縮抵抗との違いを持たせた編地に近似するように、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗と比較して大きい、支持部4を形成している。
【0031】
また、支持部4は、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の張力をFL1とし、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける支持部4の張力をFL4とした場合に、支持部4がベース生地部1と比較して、膝関節サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つような、FL4>FL1という大小関係を有する。
【0032】
具体的には、支持部4を、2×1鹿の子編により編成した編地(以下、2×1鹿の子編地と称す)にすることにより、1×1タック編地のベース生地部1に対して、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗を大きくすることができる。
【0033】
このように、支持部4は、第1のアンカー部2に連結し、着用者の膝蓋骨に対応する部分を包囲する略U字形状に編成され、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きいことにより、以下の作用効果を奏する。
【0034】
支持部4は、着用者の膝蓋骨を下腿側から大腿側に向かって支持すると共に、内側側副靭帯を支持することにより、大腿四頭筋の動きを円滑にでき、膝の左右の振れを抑制することができる。すなわち、支持部4は、着用者の膝蓋骨を略U字状内で下腿側から支えることにより、大腿四頭筋の動きと一体化させ、膝の左右の振れを抑制する副木のような役割を果すことができる。
【0035】
また、支持部4における特殊な機能編み(2×1鹿の子編地)は、第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3における二重鹿の子編地に繋がり、着用者の膝蓋骨に対する支持部4の位置ずれを防止して、適正な位置に支持部4を固定することができる。
【0036】
さらに、支持部4は、膝関節サポーター10の着用者の膝に対して内側面から外側面に向けて強い押圧力を与えることで、膝関節サポーター10の外側面側から膝に外力を受けた場合に、外力を緩和する内側面から外側面に向けての反発力を生じさせることができ、外力により膝が内側に入り込まず、内側側副靭帯の損傷を抑制することができる。
【0037】
また、支持部4は、膝関節サポーター10の着用者の大腿及び膝の外側面を支持することで、支持部4による内側面に掛かる押圧力とのバランスを取り、着用者の安定した起立状態を維持することができる。特に、支持部4によって、後述する膝蓋骨対応部5を挟持することで、膝関節サポーター10の着用者の膝が必要以上に左右にぶれずに安定性を確保することができる。
【0038】
膝蓋骨対応部5は、膝関節サポーター10の正面側に編成され、着用者の膝蓋骨に対応する部分である。
この膝蓋骨対応部5は、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より小さく編成されている。すなわち、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける膝蓋骨対応部5の張力をFL5とした場合に、膝蓋骨対応部5がベース生地部1と比較して、膝関節サポーター10の長さ方向Lに弱い締付力を持つような、FL1>FL5という大小関係を有する。
【0039】
具体的には、膝蓋骨対応部5として、通気性のよい編組織であるメッシュ編で編成された編地(以下、メッシュ編地と称す)を主の編地にすることにより、タック編地のベース生地部1に対して、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける膝蓋骨対応部5の伸縮抵抗を小さくすることができる。
【0040】
なお、メッシュ編地とは、生地を編成するときに、一時ある編み目を作らないで、次のコースを編むときに一緒に編み目を作り、メッシュ形態の編みでよく伸びる編地である。
【0041】
このように、膝蓋骨対応部5は、着用者の膝蓋骨に対応しており、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より小さいことにより、膝関節の屈伸運動や回旋運動における着用者の皮膚の膨張及び収縮に伴う力を高伸縮機能により吸収することができる。
【0042】
なお、本実施形態に係る膝蓋骨対応部5は、メッシュ編地により編成される第1のメッシュ部5aと、膝関節サポーター10の長さ方向Lに併設されて第1のメッシュ部5aを複数の領域に区分する縦格子状の編地により編成される第1の縦格子部5bと、膝関節サポーター10の周方向Hに併設されて第1のメッシュ部5aを複数の領域に区分する横格子状の編地により編成される第1の横格子部5cとからなる。
【0043】
そして、第1の縦格子部5bを、1×1リブ編により編成した編地(以下、リブ編地と称す)にし、第1の横格子部5cを、1×1タック編により編成した編地(タック編地)にすることにより、メッシュ編地(第1のメッシュ部5a)のみからなる膝蓋骨対応部5の場合と比較して、膝関節サポーター10の長さ方向L及び周方向Hにおける膝蓋骨対応部5の伸縮抵抗を変化させることができる。
【0044】
特に、本実施形態に係る膝蓋骨対応部5は、図3(a)に示すように、第1の縦格子部5bにおける隣り合う縦格子間の間隔(H1,H2,H3)が膝蓋骨対応部5の中心Oから離間するにつれて狭くなり(H1>H2>H3)、第1の横格子部5cにおける隣り合う横格子間の間隔(L1,L2,L3)が膝蓋骨対応部5の中心Oから離間するにつれて狭くなる(L1>L2>L3)ように編成される。
【0045】
この編地により、膝蓋骨対応部5は、膝関節サポーター10の長さ方向L及び周方向Hに対して、中央部で最も伸長率が大きく、中央部から周縁部に向かうにつれて伸長率が小さくなり、着用者の膝頭の曲面に添うことになる。すなわち、膝蓋骨対応部5は、図3(b)及び図3(c)に示すように、膝関節の屈曲時に着用者の膝頭を包み込むように確実に把持することができ、膝関節サポーター10のあらゆる方向への位置ずれを防止して、前述した支持部4による作用効果を向上することができる。
【0046】
なお、リブ編地とは、たて方向に表目のウェールと裏目のウェールとが交互に並ぶ編み目で、本実施形態においては、1ウェール毎に表目と裏目とを配列した1×1の編地である。
【0047】
膝窩当接部6は、膝関節サポーター10の背面側における膝蓋骨対応部5に対向する位置に編成され、着用者の膝窩に当接する部分である。
【0048】
この膝窩当接部6は、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より小さく編成されている。すなわち、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける膝窩当接部6の張力をFL6とした場合に、膝窩当接部6がベース生地部1と比較して、膝関節サポーター10の長さ方向Lに弱い締付力を持つような、FL1>FL6という大小関係を有する。
【0049】
具体的には、膝窩当接部6が、メッシュ編地を主の編地にすることにより、タック編地のベース生地部1に対して、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける膝窩当接部6の伸縮抵抗を小さくすることができる。
【0050】
このように、膝窩当接部6は、着用者の膝窩に当接する部分であり、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より小さいことにより、着用者の体表に密着した膝関節サポーター10の体表からの浮き上がりを防止することができる。また、膝窩当接部6は、メッシュ編地を主の編地にすることにより、通気性が良く、着用者の膝裏における曲げ伸ばしが円滑になるという作用効果を奏する。
【0051】
なお、本実施形態に係る膝窩当接部6は、メッシュ編地により編成される第2のメッシュ部6aと、膝関節サポーター10の長さ方向Lに併設されて第2のメッシュ部6aを複数の領域に区分する縦格子状の編地により編成される第2の縦格子部6bと、膝関節サポーター10の周方向Hに併設されて第2のメッシュ部6aを複数の領域に区分する横格子状の編地により編成される第2の横格子部6cとからなる。
【0052】
そして、第2の縦格子部6bを、1×1リブ編により編成した編地(リブ編地)にし、第2の横格子部6cを、1×1タック編により編成した編地(タック編地)にすることにより、メッシュ編地(第2のメッシュ部6a)のみからなる膝窩当接部6の場合と比較して、膝関節サポーター10の長さ方向L及び周方向Hにおける膝窩当接部6の伸縮抵抗を変化させることができる。
【0053】
特に、本実施形態に係る膝窩当接部6は、図1(b)に示すように、第2の縦格子部6bにおける隣り合う縦格子間の間隔が等しく、第2の横格子部6cにおける隣り合う横格子間の間隔が等しく編成される。
【0054】
この編地により、膝窩当接部6は、膝関節の屈曲時における膝関節サポーター10の屈曲部分へのしわの発生を抑制して、しわにより着用者の皮膚を挟む等による痛みの発生を防止することができる。
【0055】
なお、膝窩当接部6の格子状の編地は、図4(a)に示すように、膝関節サポーター10の周方向Hに併設される横格子を構成する第2の横格子部6cのみからなり、第2の横格子部6cにおける隣り合う横格子間の間隔(L')が全て等しくてもよい。
【0056】
また、膝窩当接部6の格子状の編地は、図4(b)に示すように、膝関節サポーター10の周方向Hに併設される横格子を構成する第2の横格子部6cのみからなり、第2の横格子部6cにおける隣り合う横格子間の間隔(L'1,L'2,L'3)が膝窩当接部6の中心O'から離間するにつれて狭くなってもよい(L'1>L'2>L'3)。
【0057】
この場合には、膝窩当接部6が、膝関節サポーター10の長さ方向Lに対して、中央部で最も伸長率が大きく、中央部から上端部及び下端部に向かうにつれて伸長率が小さくなり、着用者の脚の長さ方向における膝裏の曲面に添うことになり、膝関節の屈曲時に着用者の膝裏にフィットすることになる。
【0058】
また、膝窩当接部6の格子状の編地は、図4(c)に示すように、第2の縦格子部6bにおける隣り合う縦格子間の間隔(H'1,H'2,H'3)が膝窩当接部6の中心O'から離間するにつれて狭くなり(H'1>H'2>H'3)、第2の横格子部6cにおける隣り合う横格子間の間隔(L'1,L'2,L'3)が膝窩当接部6の中心O'から離間するにつ
れて狭くなってもよい(L'1>L'2>L'3)。
【0059】
この場合には、膝窩当接部6が、膝関節サポーター10の長さ方向L及び周方向Hに対して、中央部で最も伸長率が大きく、中央部から周縁部に向かうにつれて伸長率が小さくなり、着用者の膝窩の曲面に添うことになり、膝関節の屈曲時に着用者の膝窩にフィットすることになる。
【0060】
なお、本実施形態に係る膝関節サポーター10は、前述した各部位の編地により、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける支持部4の伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第2のアンカー部3の伸縮抵抗より大きい。また、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第2のアンカー部3の伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1のアンカー部2の伸縮抵抗より大きい。また、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1のアンカー部2の伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きい。
【0061】
したがって、本実施形態に係る膝関節サポーター10は、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける張力Fにおいて、次式(1)に示す大小関係を満たすものである。ただし、次式(1)において、FL2は膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1のアンカー部2の張力であり、FL3は膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第2のアンカー部3の張力である。
【0062】
(数1)
L4>FL3>FL2>FL1>FL5≒FL6 ・・・(1)
なお、本実施形態においては、タック編、鹿の子編、メッシュ編及びリブ編に用いられる地編糸として、太さ70デニールのウーリーナイロン糸であり、編み本数2本からなる表糸と、太さ30デニールのウーリーナイロン糸であり、編み本数2本からなる裏糸と、太さ260デニールのポリウレタンの芯糸に太さ40デニールのナイロンの巻き糸を2本巻きつけたカバーリング・ヤーン(DCY:double covered yarn)であるゴム糸とを用いているが、この材質に限られるものではない。
【0063】
例えば、表糸としては、綿、毛(カシミヤ、ラム、アンゴラなど)、絹若しくは麻などの天然繊維、アクリルなどの化学繊維、又は吸汗、速乾若しくは体温調整機能を持つ素材などを、膝関節サポーター10のコスト又は着用者のニーズに合わせて選択することが好ましい。また、裏糸としては、エステル若しくはFTY(filament twisted yarn)、又は抗菌、防臭若しくは消臭素材を、膝関節サポーター10のコスト又は着用者のニーズに合わせて選択することが好ましい。
【符号の説明】
【0064】
1 ベース生地部
2 第1のアンカー部
3 第2のアンカー部
4 支持部
4a 内側辺
4b 外側辺
5 膝蓋骨対応部
5a 第1のメッシュ部
5b 第1の縦格子部
5c 第1の横格子部
6 膝窩当接部
6a 第2のメッシュ部
6b 第2の縦格子部
6c 第2の横格子部
10 膝関節サポーター
10a 上端
10b 下端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸編で編み立てられる筒状編地からなり、着用者の体表に密着して膝関節を補助する膝関節サポーターにおいて、
前記筒状編地の一端を周回して編成され、前記着用者の大腿に当該筒状編地を締着させる第1のアンカー部と、
前記筒状編地の他端を周回して編成され、前記着用者の下腿に当該筒状編地を締着させる第2のアンカー部と、
前記第1のアンカー部に連結し、前記着用者の膝蓋骨に対応する部分を包囲する略U字形状に編成され、当該着用者の膝蓋骨を支持する支持部と、
前記筒状編地の正面側に編成され、前記着用者の膝蓋骨に対応する膝蓋骨対応部と、
を備え、
前記膝蓋骨対応部が、メッシュ編地により編成される第1のメッシュ部と、前記筒状編地の長さ方向に併設されて前記第1のメッシュ部を複数の領域に区分する縦格子状の編地により編成される第1の縦格子部と、前記筒状編地の周方向に併設されて前記第1のメッシュ部を複数の領域に区分する横格子状の編地により編成される第1の横格子部とからなり、
前記筒状編地の周方向における前記第1のアンカー部及び第2のアンカー部の伸縮抵抗が、前記筒状編地の周方向におけるベース生地部の伸縮抵抗より大きく、
前記筒状編地の長さ方向における前記支持部の伸縮抵抗が、前記筒状編地の長さ方向における前記ベース生地部の伸縮抵抗より大きく、
前記筒状編地の長さ方向における前記第1のメッシュ部の伸縮抵抗が、前記筒状編地の長さ方向における前記ベース生地部の伸縮抵抗より小さいことを特徴とする膝関節サポーター。
【請求項2】
前記請求項1に記載の膝関節サポーターにおいて、
前記第1の縦格子部が、前記膝蓋骨対応部の中心から離間するにつれて隣り合う縦格子間の間隔が狭くなり、
前記第1の横格子部が、前記膝蓋骨対応部の中心から離間するにつれて隣り合う横格子間の間隔が狭くなることを特徴とする膝関節サポーター。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の膝関節サポーターにおいて、
前記筒状編地の背面側に編成され、前記着用者の膝窩に当接する膝窩当接部を備え、
前記膝窩当接部が、メッシュ編地により編成される第2のメッシュ部と、前記筒状編地の長さ方向に併設されて前記第2のメッシュ部を複数の領域に区分する縦格子状の編地により編成される第2の縦格子部と、前記筒状編地の周方向に併設されて前記第2のメッシュ部を複数の領域に区分する横格子状の編地により編成される第2の横格子部とからなり、
前記筒状編地の長さ方向における前記第2のメッシュ部の伸縮抵抗が、前記筒状編地の長さ方向における前記ベース生地部の伸縮抵抗より小さいことを特徴とする膝関節サポーター。
【請求項4】
前記請求項3に記載の膝関節サポーターにおいて、
前記第2の縦格子部が、前記膝窩当接部の中心から離間するにつれて隣り合う縦格子間の間隔が狭くなり、
前記第2の横格子部が、前記膝窩当接部の中心から離間するにつれて隣り合う横格子間の間隔が狭くなることを特徴とする膝関節サポーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−245117(P2012−245117A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118301(P2011−118301)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(500294888)株式会社 アドヴァンシング (26)
【出願人】(593065110)イイダ靴下株式会社 (22)
【Fターム(参考)】