説明

膨化米飯食品及びその製造方法

【課題】膨化米飯食品、特に乾燥焦飯又はトッピング原料等としての製品について、簡略な製造工程で短時間に製造することができ、かつ任意の形状に簡単に成型、加工することが可能な、新しい食味の膨化米飯食品、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】原料米として米粒の乾燥アルファ化米を使用し、炊飯調理工程、寝かし工程、乾燥工程のいずれか又は全てを省略し、油揚げ処理を行って膨化米飯食品を製造する。これにより膨化米飯食品の製造工程簡略化を図ることができ、かつ低コストで、大量に、30分以内という短時間で任意の形状に簡単に成型、加工することができる。また、得られた膨化米飯食品は、米の組織、形状が壊れずに短時間でよく膨化しているため、米の風味や米粒感、クリスピー感のあるものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米粒の乾燥アルファ化米を原料とした膨化米飯食品、特に乾燥焦飯(乾燥中華おこげ)やトッピング原料等としての膨化米飯食品に関するもの、及び乾燥アルファ化米を原料とした上記膨化米飯食品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の食の多様化、欧米化に伴い、日本人の米の消費量は年々減少傾向にある。そのため、米の消費拡大のための米加工食品開発が強く求められており、即席食品(粥、雑炊、リゾット等)に使用する乾燥米飯(特許文献1)や米粉を使用した食品(特許文献2)などが提供されている。
【0003】
特に即席食品に使用する乾燥米飯は、その復元性を高めることが強く求められており、乾燥米飯の復元時間短縮や復元性向上のために、アルファ化米を即席食品用に加工して利用する方法なども研究、開発されている(特許文献3、4)。ここでアルファ化米とは、精白米を組織が壊れないように炊飯調理後、澱粉をアルファ化させたままの状態で急速に水分を17%以下まで乾燥させたものをさす。これにより、澱粉がアルファ化状態のまま長時間保持することができ、また水又は熱湯を加えるだけで通常数十分以内で炊飯米のような状態に復元することができるため、従来より気圧の低い高地での米飯調理食としてや、学校給食用などとして用いられている。
【0004】
一方、他の米加工食品として、米飯類を急速発泡乾燥(膨化)させることで米の内部に空洞を形成させ、独特の食感を持たせた膨化米飯食品がある。この膨化米飯食品の代表的なものとしては、せんべい、おかきなどの米菓類や乾燥焦飯(乾燥中華おこげ)がある。また米飯食品の膨化方法としては、油で揚げる方法(特許文献5)、エクストルーダーによる加圧加熱方法(特許文献6)、焙煎等の数百度の熱風雰囲気下処理方法(特許文献7)などがある。
【0005】
乾燥焦飯については通常、米を水浸漬し、炊飯調理(加水バッチ式炊飯、連続蒸し上げ炊飯等)した後一定の形状に成型し、一定の水分以下に乾燥した後油で揚げて作られる。この乾燥焦飯に具入りの中華餡などをかけて食べる中華おこげ料理は、本格中華料理店などで多くの種類が提供されているだけでなく、家庭でも手軽に中華おこげ料理を提供できるように業務用、市販用の乾燥焦飯自体の提供が行われている。
【0006】
しかし乾燥焦飯を製造する際には、米飯を油で揚げる前に炊飯成型米を乾燥するという工程を必要とする。この乾燥工程は自然乾燥では2−4日間必要であるため、時間的、衛生的な部分で工業生産上等の問題点となり、熱風乾燥や真空乾燥では製造コストの問題が生じる。またこの乾燥工程を省略することは、膨化性に影響を与え食味を損なうため通常はできない。また場合によっては、水分を均一にして米粒が芯のない食感とするために、乾燥工程後に一定温度(冷蔵から常温の温度範囲)、一定湿度(20〜50%程度)の条件化で一定時間放置する寝かし工程が必要なこともある(特許文献8)。
【0007】
さらに、通常の乾燥焦飯の製造方法では、炊飯調理後に行う成型作業で板状に伸ばすことによる米組織の破壊、米粒どうしの過度の付着、餅状化が起こる場合がある。これは、成型品の形状保持性(割れにくさ、壊れにくさ)を高めることにはなるが、乾燥焦飯の米粒感を損なうだけでなく、膨化状態が不充分となる原因となり、得られる乾燥焦飯の食味を大きく損ねてしまう。
【0008】
加えて、通常の乾燥焦飯の製造方法での成型作業では、作業中に炊飯米が冷えて固まってしまったりして作業の困難性、長時間化を伴う。そのため、炊飯後の米を水にさらす方法(特許文献5)、水浸漬後、炊飯調理前に米を成型する方法(特許文献8、9)などが提案されているが、いずれも工程を増やしたり、工程順を入れ替えているだけで簡略な方法とはいえない。
【0009】
これらから、業務用、市販用の乾燥焦飯等については、製造に時間、コストがかかり、かつ形状等が規定のものしか提供することができないため、食シーン等に合わせた利用ができず一部の中華おこげ料理に限定したものが主となっている。また、米粒(バラ形状)の膨化米飯食品(乾燥焦飯、トッピング原料等)が提供されている例はない。従って、簡単に任意の形状に作ることができ、かつ新しい食味の乾燥焦飯等の膨化米飯食品の製造方法を開発することができれば、膨化米飯食品の利用方法が大きく広がり、ひいては米の消費拡大につながると考えられる。
【特許文献1】特開平9−294554号公報
【特許文献2】特開2007−215401号公報
【特許文献3】特開平7−31389号公報
【特許文献4】特開平7−115927号公報
【特許文献5】特開2000−67号公報
【特許文献6】特開2005−27586号公報
【特許文献7】特開2007−111038号公報
【特許文献8】特開2004−57085号公報
【特許文献9】特開2000−300195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、膨化米飯食品、特に乾燥焦飯又はトッピング原料等としての製品について、簡略な製造工程で短時間に大量に製造することができ、かつ低コストで任意の形状に簡単に成型、加工することが可能な、米粒感の残る新しい食味の膨化米飯食品、及びその製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究の結果、膨化米飯食品の原料米として一定の形状に成型されていない米粒(バラ形状)の乾燥アルファ化米を使用し、この乾燥アルファ化米を炊飯調理、寝かし、乾燥の工程を行うことなく油揚げ処理するという従来技術に見られない製造方法で、炊飯調理、寝かし、乾燥のうちいずれか1工程以上又はすべての工程を省略することができ、かつ米粒のまま、あるいは任意の形状(六角形状、星型、円型、ハート型、ブロック状、スティック状等)に簡単に成型、加工した膨化米飯食品を30分以内という短時間で大量に製造することができることを見いだし、本発明に至った。
【0012】
すなわち本発明の実施態様は、次のとおりである。
(1)米粒の乾燥アルファ化米を原料として用い、合わせると2〜3時間以上(場合によっては半日〜1日以上)となる長時間の工程である炊飯調理工程、寝かし工程、乾燥工程のいずれか1つ以上の工程を経ないで(いずれか2工程省略、及び3工程全て省略を含む)油揚げ処理することを特徴とする、膨化米飯食品を30分以内、更には10分以内、更には5分以内という非常に短時間で工業的に大量製造する方法。
(2)米粒の乾燥アルファ化米を原料として用い、その乾燥アルファ化米を炊飯調理工程、寝かし工程、乾燥工程のいずれの工程も経ないで油揚げ処理することを特徴とする、膨化米飯食品の製造方法。
(3)原料となる米粒の乾燥アルファ化米を型枠内に充填し、水分30%以下となるように調湿処理を行った後に油揚げ処理することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)原料となる米粒の乾燥アルファ化米を、水分30%以下となるように調湿処理を行った後に型枠内に充填し、油揚げ処理することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の方法。
(5)原料となる米粒の乾燥アルファ化米を、型枠内に充填前又は充填後に水分30%以下となるように調湿処理して成型することを特徴とする、膨化米飯食品のもと(膨化処理前原料)の製造方法。
(6)水分を10〜25%、好ましくは10〜20%となるように調湿処理し、成型した膨化米飯食品の硬さを調整することを特徴とする、(3)〜(5)のいずれか1つに記載の方法(あるいは、油揚げ前のアルファ化米の水分を高めることによる油揚げ後の成型膨化米飯食品の硬さ調整方法(強度を高める方法))。
(7)原料となる乾燥アルファ化米がもち米100%であること、又はもち米とうるち米をブレンドしたものであることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれか1つに記載の方法。
(8)米粒の乾燥アルファ化米を原料とし、その乾燥アルファ化米を炊飯調理工程、寝かし工程、乾燥工程を1工程以上又は全て経ないで油揚げ処理して製造された膨化米飯食品。
(9)原料となる米粒の乾燥アルファ化米を水分30%以下、好ましくは10〜25%、更に好ましくは10〜20%となるように調湿処理を行った後に油揚げ処理して製造された、米粒状でない一定の形状に成型された(8)に記載の膨化米飯食品。
(10)原料となる乾燥アルファ化米がもち米100%であること、又はもち米とうるち米をブレンドしたものであることを特徴とする(8)又は(9)に記載の膨化米飯食品。
(11)原料となる乾燥アルファ化米に、さらに米以外のアルファ化した穀物及び/又は生の穀物を混合することを特徴とする、(1)〜(10)のいずれか1つに記載の膨化米飯食品又はその製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、膨化米飯食品の製造工程を大幅に簡略化することができ、それにより製造工場での製造時間短縮、製造コスト軽減、大量生産を実現できる。また、米粒の乾燥アルファ化米を原料として用いるため、米粒(バラ形状)のまま、あるいは米粒の乾燥アルファ化米に調湿処理を行うのみで、六角形状、球状、星型、円型、ハート型、ブロック状、スティック状等の任意の形状に簡単に成型加工することも可能である。さらに、得られた膨化米飯食品は、米の組織、形状が壊れずに短時間でよく膨化しているため、米の風味や米粒感、クリスピー感のあるものとなり、これにより膨化米飯食品の多様化を図ることができ、膨化米飯食品の使用用途が大きく広がる。
【0014】
つまり本発明によって、簡略な製造工程で低コストかつ30分以内の短時間で膨化米飯食品を製造することができ、さらに調湿工程を経ることで任意の形状に簡単に成型、加工することが可能な、新しい食味の膨化米飯食品、及びその製造方法を提供することができる。これにより膨化米飯食品の利用方法が大きく広がるため、日本人の米の消費拡大につながり、米生産業、米加工食品製造業の発達に大きく寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明で使用する乾燥アルファ化米の種類は、うるち米、もち米、玄米、胚芽米、分搗き米、黒米、赤米、及びこれらから2種以上をブレンドしたブレンド米などが使用できる。特に限定はされないが、使用する乾燥アルファ化米の種類がもち米100%、又はもち米とうるち米のブレンドであることが好ましい。もち米にうるち米をブレンドすることで、膨化米飯食品を成型した場合に形がよりしっかりしたり、膨化米飯食品の食感がよりしっかりするため、求める食感等によりこのブレンド比率を調整して膨化米飯食品の物性、食感をコントロールし、製品のバリエーションを持たせることができる。
【0016】
形や食感のしっかりした膨化米飯食品を得るためのもち米とうるち米の配合比としては、通常うるち米を5〜10%配合するのが好ましいが、よりしっかりした膨化米飯食品を得るために、うるち米の配合比を20〜30%程度とすることも可能である。さらに、もち米又はもち米とうるち米のブレンド米に黒米、赤米などを1〜10%程度配合することも好ましい。
【0017】
原料となる乾燥アルファ化米の種類のうち、うるち米については、通常のアミロース含量の種類の他に、高アミロース米、低アミロース米なども使用することができる。特に限定はされないが、うるち米のアミロース含量は13〜18%であることが好ましく、さらに好ましくは、15%より多く17%以下である。
【0018】
当該乾燥アルファ化米を加工する方法は、米粒の形状のまま加工する方法であれば特に限定されず、公知の手段を用いることができる。例えば、生米を洗米、浸漬後に炊飯調理し、即時に熱風、マイクロ波、加熱蒸気などで乾燥させる方法で行うことができる。このときの乾燥アルファ化米は、水分が好ましくは3−17%、さらに好ましくは8−15%のものを使用する。なお、アルファ化されていない生米の水分も約15%であるため、生米をそのまま油揚げ処理して膨化米飯食品とすることもできるとも思われるが、生米自体が油揚げ処理で膨化しづらく、得られる膨化米飯食品が求める品質とならないため、生米を直接使用することは適さない。
【0019】
また、本発明の膨化米飯食品が乾燥焦飯、米粒感を残したトッピング原料としての製品など、主に湯又は水で復元する過程を経ずに食されるものであるため、当該乾燥アルファ化米に吸水性、復元性をコントロールするための成分や米粒同士の結着性を防止する成分、例えばトレハロース、その他の糖類、アルファ化澱粉、寒天、その他の多糖類、ゼラチンなどを含むことを必要としないことが特徴である。なお、上記吸水性(復元性)、結着性の制御に関するもの以外の成分、例えばビタミン類、ミネラル、アミノ酸などの栄養成分、ポリフェノール、高度不飽和脂肪酸、補酵素などの機能性成分などは当該乾燥アルファ化米に任意に含まれてよい。また、当該乾燥アルファ化米が添加成分を含まない、米と油のみの成分無添加の状態でもよい。
【0020】
さらに、特に成型された膨化米飯食品の製造の場合には、当該乾燥アルファ化米に少量(1〜10%程度)の米以外の穀物(麦、小豆、大豆、緑豆、黒豆、とうもろこし、ソバ、ゴマ、アワ、ヒエ、キビ、アマランサス、キヌア等)を配合することも可能である。この場合、アルファ化した穀物又はアルファ化していない生の穀物、あるいはこれらの併用のいずれの構成でも良い。これにより、独特の風味、食感、色などをもつ膨化米飯食品を得ることもできる。
【0021】
原料となる乾燥アルファ化米は、米粒のままであること、つまり米粒以外の一定の形状に成型されていないものであることが必要であり、これをそのまま、又は成型に際して水分30%以下、好ましくは10〜25%、更に好ましくは10〜20%となるように加熱加水する調湿処理を行い、得られる製品の硬さの調整を行ったものを、次の工程で油揚げすることで、任意の形状で壊れにくい膨化米飯食品を製造することができる。成型加工のための調湿処理は、例えば原料の乾燥アルファ化米を目的の形状の型枠にそのまま充填し、水噴霧、又は蒸気雰囲気中を数分間通過させることによって行う。また、型枠への充填前に調湿処理を行うこともできる。通常、炊飯米の成型には伸ばし工程での米粒の付着による餅状化や冷えて固まってしまうなどの品質上、作業上の問題点があるが、本発明の方法では乾燥アルファ化米をそのまま、あるいは少し水分を増やして成型するため、餅状化などはみられず簡単に成型が可能である。
【0022】
なお、乾燥アルファ化米は粒がしっかりしているため、成型時に通常の炊飯米のように米が潰れず米粒どうしの接触面積が少ないことから、成型、油揚げ後の膨化米飯食品が非常に割れやすい(壊れやすい)ものになると考えられていた。したがって、乾燥アルファ化米を成型膨化米飯食品に使用することは通常は難しいと考えられていた。しかし、本発明では、成型前あるいは成型後に調湿処理を行うことで、油揚げ前の成型品の水分を10〜30%とやや高めて、油揚げ後の成型品の強度を高くするよう調整し成型保持性を付与している。さらには、この油揚げ前の成型品を膨化米飯食品のもと(膨化処理前原料)として製品供給することもできる。
【0023】
米の膨化方法については、形状の維持や膨化の制御のしやすさという点から油揚げ処理方法を用いる。油揚げ処理を行う前又は後に他の膨化方法(焙煎、加圧加熱等)を行うことも可能であるが、好ましい品質の膨化米飯食品を得るためには、油揚げ処理のみによって膨化するのがよい。
【0024】
使用する油は特に限定はされないが、得られる膨化米飯食品の風味や消費者の嗜好の観点から植物油が好ましい。植物油の種類は、コーン油、菜種油、パーム油、米油、大豆油、胡麻油、サフラワー油、ひまわり油等が使用でき、これらから2種以上をブレンドしたブレンド油も使用可能である。油揚げ処理は公知の手段を用いることができ、例えば電気連続フライヤーにより、油温180〜190℃、揚げ時間1〜2分の処理を行う。油揚げ温度及び時間は、製品水分を4.0%前後とするために、処理する成型米等の大きさ、形状、厚み等により適宜変更してよい。
【0025】
油揚げ処理後の膨化米飯食品は、油切り処理を行う。油切り処理についても公知の手段を用いることができ、例えば100℃に近い熱風を製品に吹き付ける、過熱水蒸気中を通過させるなどを行う。油切り処理は、製品の風味向上、吸油率低下等の目的のため、できるだけ行うことが好ましいが、場合によっては省略しても差し支えない。
【0026】
油切り後の製品は、冷却後公知の手段により包装する。例えば、油切り後の製品を専用トレーに詰め、窒素ガス置換及び/又は脱酸素剤添付を実施しながらピロー包装を行う。風味保持及び品質劣化防止の観点から、製品包装時に窒素ガス置換及び/又は脱酸素剤添付を行うことが好ましい。
【0027】
一般に、業務用や市販用として製造ラインで乾燥焦飯等の膨化米飯食品を作る場合、生米を洗米、浸漬後に炊飯調理し、目的の形状に成型し、必要に応じて一定時間寝かし工程を経た後に乾燥し、油揚げ工程により膨化させて提供される。この中で、最も時間、コストのかかる工程は油揚げ前の乾燥工程である。また寝かし工程は、炊飯米の成型品の水分を均一化し、乾燥ムラを発生させないための工程であり、この工程を省略することは可能であるが、乾燥ムラの発生による品質低下が懸念される。さらに、成型作業は工程上かなり時間及び労力を有する部分であり困難を伴うと共に、米粒の破壊など品質に少なからず影響を与える。
【0028】
しかし、本発明の製造方法により米の炊飯調理工程、乾燥工程、寝かし工程のうちいずれか1工程以上(1又は2工程)、あるいはすべてを省略することも可能となる。また、成型を行う場合でも、この工程の時間及び労力を大幅に軽減化でき、かつ米の組織が壊れないため米粒感のある膨化米飯食品の製造が可能となる。これにより、膨化米飯食品の製造時間の大幅な短縮や製造ラインの省力化、及び製品の品質向上を図ることができる。特に製造時間は、生米から乾燥焦飯などの膨化米飯食品を製造する場合、炊飯調理工程、乾燥工程、寝かし工程などの煩雑で長時間(合わせて2〜3時間以上、場合によっては半日〜1日以上)の工程が必要となるが、本発明では、製造時間が30分以内と非常に短時間で大量に膨化米飯食品を製造できる。さらには、形状等により10分以内、あるいは5分以内の製造時間も可能である。これにより、量販店などの店舗内調理場(バックヤード)での膨化米飯食品の加工なども可能となり、消費者等のニーズに合わせた多様化した食品の提供が可能となる。
【0029】
さらに、本発明の膨化米飯食品は米粒状や成型して任意の形状に簡単に即時に加工することが可能であるため、乾燥焦飯だけでなく、六角形状、星型、円型、ハート型、ブロック状、スティック状、バラ形状(バラタイプ)等に加工して、トッピング原料等としての製品とすることもできる。これらにより、米加工食品の使用用途が広がり、ひいては米の消費拡大につながると考えられる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0031】
(実施例1:米粒状の膨化米の製造)
米粒の乾燥アルファ化米(もち米100%)300gを直接、電気連続フライヤー(FECF2082:フジマック社製品)にて180〜190℃に加熱した植物油(コーン油、菜種油、パーム油混合品:昭和産業社製品)で1分30秒油揚げ処理を行った。その後、95℃の熱風を数十秒吹きつけ油切りし、冷却後窒素ガス置換を行いながら袋に充填、包装してトッピング原料としての製品(米粒状の膨化米)を得た。得られた製品の水分は、3.0%であり、製造時間は3分であった。
【0032】
(実施例2:成型膨化乾燥焦飯の製造)
米粒の乾燥アルファ化米(もち米90%、うるち米(アミロース含量16%)10%のブレンド米)300gのうち、半量の150gをザルに入れて常温の水に瞬時に浸漬する。これと浸漬していない残りの150gの米を十分に混合し、ここから15gづつ取り出して六角形状の型に均一に充填する。これを、スチームクリーナー(圧力0.03MPa)で発生させたウェット蒸気雰囲気中(湿度75%)を2分間通過(調湿)させ成型させた。この成型米(水分20%)を型枠から取り出し、電気連続フライヤー(FECF2082:フジマック社製品)にて180℃〜190℃に加熱した植物油(コーン油、菜種油、パーム油混合品:昭和産業社製品)で1分30秒油揚げ処理を行った。その後、95℃の熱風を数十秒吹きつけ油切りし、冷却後トレーに充填して、窒素ガス置換を行いながらピロー包装し六角形状に成型された乾燥焦飯を得た。得られた製品の水分は、4.0%、成型品1個当たりの重量は9.0gであり、製造時間は5分であった。
【0033】
(実施例3:成型膨化米飯食品(黒米配合品)の製造)
米粒の乾燥アルファ化米(もち米95%、黒米5%のブレンド米)300gのうち、半量の150gをザルに入れて常温の水に瞬時に浸漬する。これと浸漬していない残りの150gの米を十分に混合し、ここから15gづつ取り出して六角形状の型に均一に充填する。これを、スチームクリーナー(圧力0.03MPa)で発生させたウェット蒸気雰囲気中(湿度75%)を2分間通過(調湿)させ成型させた。この成型米(水分20%)を取り出し、電気連続フライヤー(FECF2082:フジマック社製品)にて180℃〜190℃に加熱した植物油(コーン油、菜種油、パーム油混合品:昭和産業社製品)で1分30秒油揚げ処理を行った。その後、95℃の熱風を数十秒吹きつけ油切りし、冷却後トレーに充填して、窒素ガス置換を行いながらピロー包装し六角形状に成型された黒米入り乾燥焦飯を得た。得られた製品の水分は、4.5%、成型品1個当たりの重量は9.2gであり、製造時間は5分であった。
【0034】
(実施例4:米粒状の膨化米を使用した食品の製造)
実施例1で製造した米粒状の膨化米50gをそのまま容器に入れ、その上から片栗粉でとろみを付け加熱した中華スープ100gを直接かけ、中華風おこげスープを製造した。
【0035】
(実施例5:成型膨化乾燥焦飯を使用した食品の製造)
実施例2で製造した六角形状の乾燥焦飯を5個容器に入れ、電子レンジ(500W)で90秒加熱した。別に用意したエビ、イカ、たけのこ、きくらげ、にんじん、絹さやを配合した中華餡120gを加熱し、上記加熱調理した乾燥焦飯の上からかけ、中華風餡かけおこげを製造した。
【0036】
本発明を要約すれば、次の通りである。
本発明は、膨化米飯食品、特に乾燥焦飯又はトッピング原料等としての製品について、簡略な製造工程で短時間に製造することができ、かつ任意の形状に簡単に成型、加工することが可能な、新しい食味の膨化米飯食品、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0037】
本発明は、原料米として米粒の乾燥アルファ化米を使用し、炊飯調理工程、寝かし工程、乾燥工程のいずれか又は全てを省略し、油揚げ処理を行って膨化米飯食品を製造することにより上記課題を解決するものであり、これによって、膨化米飯食品の製造工程簡略化を図ることができ、かつ低コストで、大量に、30分以内という短時間で任意の形状に簡単に成型、加工することができる。また、得られた膨化米飯食品は、米の組織、形状が壊れずに短時間でよく膨化しているため、米の風味や米粒感、クリスピー感のあるものとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米粒の乾燥アルファ化米を原料として用い、長時間の工程である炊飯調理工程、寝かし工程、乾燥工程のいずれか1つ以上の工程を経ないで油揚げ処理することを特徴とする、膨化米飯食品を30分以内という非常に短時間で大量製造する方法。
【請求項2】
米粒の乾燥アルファ化米を原料として用い、炊飯調理工程、寝かし工程、乾燥工程のいずれの工程も経ないで油揚げ処理することを特徴とする、膨化米飯食品の製造方法。
【請求項3】
原料となる米粒の乾燥アルファ化米を型枠内に充填し、水分30%以下となるように調湿処理を行った後に油揚げ処理することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
原料となる米粒の乾燥アルファ化米を、水分30%以下となるように調湿処理を行った後に型枠内に充填し、油揚げ処理することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
原料となる米粒の乾燥アルファ化米を、型枠内に充填前又は充填後に水分30%以下となるように調湿処理して成型することを特徴とする、膨化米飯食品のもとの製造方法。
【請求項6】
水分を10〜25%となるように調湿処理することを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
原料となる乾燥アルファ化米がもち米100%であること、又はもち米とうるち米をブレンドしたものであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
米粒の乾燥アルファ化米を原料とし、その乾燥アルファ化米を炊飯調理工程、寝かし工程、乾燥工程を経ないで油揚げ処理して製造された膨化米飯食品。
【請求項9】
原料となる米粒の乾燥アルファ化米を水分30%以下となるように調湿処理を行った後に油揚げ処理して製造された、米粒状でない一定の形状に成型された請求項8に記載の膨化米飯食品。
【請求項10】
原料となる乾燥アルファ化米がもち米100%であること、又はもち米とうるち米をブレンドしたものであることを特徴とする請求項8又は9に記載の膨化米飯食品。
【請求項11】
原料となる乾燥アルファ化米に、米以外のアルファ化した穀物及び/又は生の穀物を混合することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の膨化米飯食品又はその製造方法。

【公開番号】特開2010−130958(P2010−130958A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310539(P2008−310539)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(599047457)アルファー食品株式会社 (2)
【Fターム(参考)】