説明

膨張弁の装着構造

【課題】冷媒の外部漏れ箇所を減らした膨張弁の装着構造において、コンプレッサへのオイル戻りを良好にする。
【解決手段】エバポレータからのエバポレータ出口配管10とコンプレッサへの低圧配管13との間に膨張弁1を収容するケース11を設け、そのケース11内でレシーバからの高圧配管15と膨張弁1の入口ポート21とを接続し、エバポレータ入口配管12と膨張弁1の出口ポート22とを接続して、膨張弁1の装着位置において冷媒が大気へ漏れる可能性のある箇所をOリング17によるシール箇所だけとする。ケース11内では、エバポレータ出口配管10および低圧配管13を高圧配管15およびエバポレータ入口配管12よりも重力下方に配置し、ケース11内にオイル溜りができないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は膨張弁の装着構造に関し、特に車両用空調装置の冷凍サイクルにてコンデンサから供給された高温・高圧の冷媒を膨張して低温・低圧になった冷媒をエバポレータに送り出すようにした膨張弁の装着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置の冷凍サイクルは、一般に、循環する冷媒を圧縮するコンプレッサと、圧縮された冷媒を凝縮するコンデンサと、冷凍サイクル内の冷媒を溜めるとともに凝縮された冷媒を気液に分離するレシーバと、分離された液冷媒を絞り膨張させる膨張弁と、膨張弁で膨張された冷媒を蒸発させるエバポレータによって構成されている。膨張弁としては、たとえばエバポレータの出口における冷媒の温度および圧力を感知してエバポレータに送り出す冷媒の流量を制御するようにした温度式の膨張弁が用いられている。
【0003】
この温度式の膨張弁は、弁部を内蔵したブロックと、エバポレータから戻ってきた冷媒の温度および圧力を感知して弁部を制御するパワーエレメントとを有している。ブロックは、その側部に、レシーバから高温・高圧の冷媒が供給される高圧配管を接続する接続穴と、この膨張弁にて膨張された低温・低圧の冷媒をエバポレータへ送り出す低圧配管を接続する接続穴と、エバポレータ出口からの戻り配管を接続する接続穴と、この膨張弁を通過した冷媒をコンプレッサへ戻すための配管を接続する接続穴とを有しており、配管の継手の機能を有している。ブロックには、また、その長手方向の一方の端面にパワーエレメントを結合するためのねじ穴と、その他方の端面にセット値を外部から調整するためのアジャストねじが螺入されるねじ穴とを有している。これらの穴には、各配管が挿入され、パワーエレメントおよびアジャストねじが螺入された状態で内部を気密に保持するためOリングなどのシール部材が設けられている。
【0004】
ところで、車両用空調装置では、現在、冷媒として一般にフロン(HFC−134a)が使用されているが、このフロンは地球温暖化係数が大きいことから、大気に漏れた場合に地球温暖化に対する影響が大きいといわれている。この地球温暖化対策として、フロンを地球温暖化係数の小さな冷媒に切り換える方法と、フロンが大気に漏れないようにして不必要になったときに回収する方法とが考えられている。
【0005】
冷凍サイクルの中で、フロンが外部に漏れる部位としては、配管の接続部分などであり、そこに配置されているシール部材が外部漏れの要因になっている。特に、弁部を内蔵したブロックとこれに結合されるパワーエレメントとを備えた膨張弁では、ボディが継手を兼ねているため、配管の接続部分だけでシール部材を必要とする場所が4箇所あり、さらに、パワーエレメントの連結部分とアジャストねじが設けられている部分とが加わって、合計6箇所の外部漏れ部位が存在することになる。
【0006】
そこで、本出願人は、エバポレータからコンプレッサへ向かう戻り低圧配管内に膨張弁をそっくり収容し、その低圧配管内で膨張弁と高圧配管およびエバポレータ入口配管との接続を行うようにした膨張弁の装着構造を提案している(特願2006−139007)。この提案によれば、特に、膨張弁の入口ポートにおける高圧配管の継手部分は、出口ポートにおける低圧配管の継手部分よりもフロンがシール部材を浸透して外部に漏れる可能性が高い部位であるが、たとえ、その高圧配管の接続部分において、フロンが外部漏れしたとしても、そこは低圧配管内であるので、フロンが大気に漏れることはない。
【0007】
また、冷凍サイクルにおいては、冷媒にはコンプレッサの潤滑オイルが含有されており、冷媒と一緒に循環している。膨張弁では、液相の冷媒および潤滑オイルが供給され、そこで絞り膨張されて霧状となり、エバポレータへ送り出される。エバポレータでは、冷媒は蒸発してコンプレッサに戻されるが、潤滑オイルは、冷媒の蒸発温度では蒸発しないので液相のままで蒸発された冷媒の流速によって吹き飛ばされる形で、コンプレッサへ戻される。ところが、冷凍負荷が小さいときのように、膨張弁の開度が小さいとき、冷媒の流速は極端に遅くなるので、潤滑オイルをコンプレッサ側に押し流すことができなくなり、液相の潤滑オイルがエバポレータ内とかエバポレータからコンプレッサへの戻り低圧配管内に溜まってしまう寝込み現象が発生しやすくなる。このような潤滑オイルの寝込み現象が発生すると、コンプレッサへのオイル戻り量が不足するので、コンプレッサは、潤滑不良となって、摺動部分の焼き付き、耐久性の異常低下などの重大な悪影響を受けてしまう。このようなオイル戻り量の不足を解消する手段として、エバポレータからコンプレッサへの戻り低圧配管の流路断面積を小さくし、これにより冷媒の流速を高めるようにして滞留している潤滑オイルをコンプレッサへ押し流すようにすることが知られている(たとえば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−121886号公報(段落〔0004〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、膨張弁がエバポレータからコンプレッサへ向かう戻り低圧配管内に収容される膨張弁の装着構造では、戻り低圧配管のうち膨張弁を収容しているケースの部分がエバポレータ出口直後の配管よりも流路断面積が大きくなっているため、ケースに流入した冷媒の流速が遅くなり、ケース内に潤滑オイルが溜まりやすくなっているという問題点があった。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、冷媒の外部漏れ箇所を減らしながら、オイル戻りを良好にする膨張弁の装着構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では上記問題を解決するために、エバポレータの出口とコンプレッサの入口との間の戻り低圧配管内に膨張弁を収容し、前記膨張弁の入口ポートと高圧配管との接続および前記膨張弁の出口ポートとエバポレータ入口配管との接続を前記戻り低圧配管内において行うようにした冷凍サイクルにおける膨張弁の装着構造において、前記膨張弁を収容している前記戻り低圧配管内の位置では、前記コンプレッサへの低圧配管が前記膨張弁と接続される前記高圧配管および前記エバポレータ入口配管よりも重力下方に位置していることを特徴とする膨張弁の装着構造が提供される。
【0011】
このような膨張弁の装着構造によれば、低圧配管が高圧配管およびエバポレータ入口配管よりも下方にすることで、膨張弁を収容している部分の底部近傍に低圧配管が位置することになる。これにより、膨張弁を収容している部分に潤滑オイルが溜まったとしても、直ぐにオーバフローして低圧配管へ流出するようになる。
【0012】
また、本発明では、エバポレータの出口とコンプレッサの入口との間の戻り低圧配管内に膨張弁を収容し、前記膨張弁の入口ポートと高圧配管との接続および前記膨張弁の出口ポートとエバポレータ入口配管との接続を前記戻り低圧配管内において行うようにした冷凍サイクルにおける膨張弁の装着構造において、前記膨張弁を収容し、前記コンプレッサへの低圧配管が接続されるケースの開口端が重力下方に向けられていることを特徴とする膨張弁の装着構造が提供される。
【0013】
このような膨張弁の装着構造によれば、下方が開口されているケースに対して下から低圧配管を接続するようにしたので、ケース内に冷媒とともに流入した潤滑オイルは落下してそのまま低圧配管に入るようになる。このため、ケース内に潤滑オイルが溜まることはなく、コンプレッサがオイル不足になることもない。
【0014】
さらに、本発明では、エバポレータの出口とコンプレッサの入口との間の戻り低圧配管内に膨張弁を収容し、前記膨張弁の入口ポートと高圧配管との接続および前記膨張弁の出口ポートとエバポレータ入口配管との接続を前記戻り低圧配管内において行うようにした冷凍サイクルにおける膨張弁の装着構造において、前記膨張弁を収容するよう水平方向に置かれて前記戻り低圧配管の一部をなしているケースを有し、前記ケースには前記コンプレッサの入口に通じる低圧配管が最下端に寄せて接合したジョイント部を介して接続され、前記ケースと前記ジョイント部との接続部には一端が前記ケースの底面近傍まで延び、他端が前記低圧配管の中まで延びるようにキャピラリチューブが跨設されていることを特徴とする膨張弁の装着構造が提供される。
【0015】
このような膨張弁の装着構造によれば、ケースの底部に潤滑オイルが溜まったとしても、ほとんどはオーバフローして低圧配管へ流出するが、キャピラリチューブがその下流側端部で発生する流速差によるベンチュリー効果でケースの底部に残っている潤滑オイルを吸い出すので、ケース内に潤滑オイルが溜まることはない。
【発明の効果】
【0016】
本発明の膨張弁の装着構造は、膨張弁を収容している部分に対して重力下方向にコンプレッサへの低圧配管を配置するようにしたので、膨張弁を収容している部分において冷媒の流速が低下することで底部に溜まってしまう潤滑オイルは、オーバフローして低圧配管へ流出するので、内部に大量にオイル溜りが生じることはないという利点がある。
【0017】
また、膨張弁を収容しているケースのコンプレッサ側の開口端を下に向ける構造にすることにより、ケースに入った潤滑オイルは落下して直接低圧配管へ流れることになるので、内部にオイル溜まりは存在しない。
【0018】
さらに、キャピラリチューブを設けることで、ケースの底部に残っている潤滑オイルを吸い出すので、ケース内に潤滑オイルが溜まることを回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は第1の実施の形態に係る膨張弁の装着構造を示す断面図である。
この図では、冷凍サイクルの中で、膨張弁1が装着されている部分を示している。エバポレータの出口から延びるエバポレータ出口配管10は、その先端に一端が閉じている筒状のケース11が溶接により接合されており、そのケース11には、エバポレータ出口配管10よりも重力上方位置にエバポレータの入口から延びるエバポレータ入口配管12がその先端を内部に挿入した状態で溶接により接合されている。コンプレッサの吸入室へ至る低圧配管13は、その先端に円盤状のジョイント部14が溶接により接合されており、そのジョイント部14には、低圧配管13よりも重力上方位置にレシーバから延びる高圧配管15がその先端を内部に挿入した状態で溶接により接合されている。ケース11およびジョイント部14は、パイプクランプ16によって接続され、その接続部分は、Oリング17によって大気からシールされている。なお、エバポレータ出口配管10および低圧配管13は、それぞれ円筒状のチューブであるが、ケース11およびジョイント部14との接合部においては、楕円状に変形されて、できるだけ流路断面積の変化がないようにするとともに、ケース11が必要以上に大きくならないようにしている。
【0020】
膨張弁1は、ケース11内において、高圧配管15およびエバポレータ入口配管12に接続され、かつ、エバポレータからコンプレッサへ戻る冷媒の温度を感知するように装着されている。膨張弁1は、高圧配管15に接続されて高圧の冷媒を導入する入口ポート21と、エバポレータ入口配管12に接続されて低圧の冷媒を導出する出口ポート22とが一体に形成されたボディ23を有している。ボディ23の中には、入口ポート21と出口ポート22とが内部で連通する弁孔を有し、その弁孔を開閉する弁体24が低圧側にてスプリング25により閉弁方向に付勢された状態で配置されている。このスプリング25は、ボディ23の図の上端開口部に螺着されたアジャストねじ26に受けられており、そのアジャストねじ26のボディ23への螺入量により荷重が調整されて、この膨張弁1のセット値が調整されている。弁体24は、その開閉方向に進退自在にボディ23によって支持されたシャフト27と一体に形成されている。
【0021】
ボディ23の図の下端には、膨張弁1の感温部を構成するパワーエレメント28が取り付けられている。パワーエレメント28は、係止部29によって固定され、さらに、パワーエレメント28の露出面を覆うように断熱カバー30が係止部31によって固定されている。係止部29および係止部31は、たとえば樹脂製のボディ23と一体に形成されており、下端面の外周縁部において円周方向に交互に複数設けられている。なお、断熱カバー30は、パワーエレメント28がエバポレータ出口の冷媒を感温するまでに要する時間を調整するためのもので、冷媒の温度変化に敏感に反応することによる周期的な圧力変動(ハンチング)を防止するためのものである。
【0022】
膨張弁1は、エバポレータからコンプレッサへの戻り低圧配管のうち、水平方向に延びるストレート部分の途中に介挿されたケース11の中に配置され、そのケース11内では、その上方位置にて、入口ポート21が高圧配管15に接続され、出口ポート22がエバポレータ入口配管12に接続されている。ケース11の下方位置は、エバポレータから蒸発した冷媒がコンプレッサへ戻る通路になっていて、そこにパワーエレメント28が配置されている。
【0023】
以上の構成において、冷媒が大気へ外部漏れする可能性のある継手部分は、パイプクランプ16によって結合された1箇所だけとなる。膨張弁1に接続される高圧配管15およびエバポレータ入口配管12は、ケース11内にて入口ポート21および出口ポート22と接続されているので、その接続部分にて冷媒が微少漏れしたとしても、漏れ出るのは戻り低圧配管の中であるので、大気に漏れることはない。
【0024】
次に、膨張弁1の動作について説明する。まず、車両用空調装置が停止しているとき、パワーエレメント28の感温室に封入されたガスは凝縮されて圧力が低くなっているので、ダイヤフラムは内側(図では下方)へ変位しており、その変位はシャフト27を介して弁体24に伝達され、膨張弁1は全閉状態にある。
【0025】
ここで、車両用空調装置が起動すると、コンプレッサによって冷媒が吸引されるので、戻り低圧配管の圧力が低下し、これがパワーエレメント28により感知されてダイヤフラムが外側へ変位し弁体24をリフトさせるようになる。一方、コンプレッサによって圧縮された冷媒はコンデンサにて凝縮され、レシーバにて気液分離された液冷媒が高圧配管15を通じて膨張弁1の入口ポート21に供給されるようになる。なお、図中の矢印は、冷媒の流れ方向を示している。高温・高圧の液冷媒は、膨張弁1を通過するとき膨張され、低温・低圧の気液混合冷媒となって出口ポート22を出る。その冷媒は、エバポレータ入口配管12を介してエバポレータに供給され、その内部で蒸発されて、エバポレータから出てくる。エバポレータを出た冷媒は、エバポレータ出口配管10、ケース11および低圧配管13を介してコンプレッサに戻る。このとき、パワーエレメント28は、ケース11を通過する冷媒の温度を感知している。車両用空調装置の起動初期の段階では、車室内の高温の空気との熱交換によりエバポレータで蒸発して戻ってくる冷媒の温度は高くなっている。このため、パワーエレメント28はその温度を感知し、感温室の圧力が高くなるのでダイヤフラムは開弁方向に変位し、その変位はシャフト27を介して弁体24に伝達され、膨張弁1は全開状態になる。
【0026】
やがて、エバポレータから戻ってくる冷媒の温度が低下してくると、感温室の圧力が低くなるので、それに応じてダイヤフラムが図の下方へ変位していき、膨張弁1は、閉弁方向に動作してこれを通過する冷媒の流量を制御するようになる。このとき、膨張弁1は、エバポレータ出口の冷媒温度を感知して、その冷媒が所定の過熱度を保持するようにエバポレータに供給する冷媒の流量を制御することになる。これによって、コンプレッサには、常に過熱状態の冷媒が戻るようになるので、コンプレッサは、効率の良い運転をすることができる。
【0027】
このとき、エバポレータにて蒸発した冷媒は、エバポレータ内に溜まっているコンプレッサの潤滑オイルを押し流している。エバポレータからの冷媒がケース11内に入ると、その流路断面積がエバポレータ出口配管10よりも急激に大きくなるので、潤滑オイルを押し流していた冷媒の流速が遅くなってしまい、ケース11内に潤滑オイルが溜まるようになる。しかし、ケース11では、エバポレータ出口配管10および低圧配管13が重力下方に位置し、底面近傍に開口しているので、潤滑オイルが溜まることができる容積は少なくなっている。このため、蒸発した冷媒によってケース11まで押し流されてきた潤滑オイルは、ケース11の底部に多少溜まるが、直ぐにオーバフローして低圧配管13へと押し流されていくことになる。
【0028】
図2は第2の実施の形態に係る膨張弁の装着構造を示す断面図である。図2において、図1に示した構成要素と同じまたは同等の機能を有する要素には同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0029】
この第2の実施の形態に係る膨張弁の装着構造は、膨張弁が収容されるケース11内に潤滑オイルが溜まる場所をなくすような構成にしている。すなわち、この実施の形態においては、エバポレータ40は、その冷媒入口41および冷媒出口42が同じ側で水平方向に開口していて、冷媒入口41が冷媒出口42よりも高い位置となる姿勢で車両に設置される。低圧配管13および高圧配管15は、低圧配管13の中に高圧配管15が同心配置された二重管によって構成されている。
【0030】
エバポレータ40の冷媒出口42には、ケース11が接合されている。このケース11は、上端が閉じた筒状の形状をしており、下端は重力下方向に開口している。また、冷媒入口41には、略直角に曲げられたエバポレータ入口配管12の一端が接合され、このエバポレータ入口配管12は、その他端がケース11の閉止部を貫通してケース11内に延びた状態でケース11に接合されている。これらケース11およびエバポレータ入口配管12は、炉中でろう付加工にてエバポレータ40と一体に形成されている。
【0031】
膨張弁1aは、その出口ポート22がケース11内にてエバポレータ入口配管12と接続される。ケース11は、下から延びる低圧配管13がOリング17、バックアップリング43およびパイプクランプ16によって接続される。そのとき、膨張弁1の入口ポート21には、低圧配管13内に配置された高圧配管15が同時に接続される。
【0032】
なお、この膨張弁1aは、パワーエレメント28の感温室に凝縮ガスとともに充填される昇圧ガスの機能を皿ばね44によって行うようにしたものである。また、弁部では、ボール形状の弁体24が使用され、シャフト27の一端とスポット溶接により接合されている。シャフト27の他端には、パイプ45が嵌合されていて、シャフト27の軸線方向に摺動可能にボディ23に支持されている。また、この膨張弁1aでは、スプリング25を受けているアジャスト部材26aをボディ23に圧入しているが、その圧入量によりばね荷重を調整して、この膨張弁1aのセット値を調整している。
【0033】
この構成によれば、エバポレータ40から出た冷媒は、膨張弁を収容している広いケース11内に入るので、そこで流速が落ちるが、冷媒によってエバポレータ40から押し流された潤滑オイルは、ケース11内を落下して冷媒とともに低圧配管13に吸い込まれていくので、ケース11内に潤滑オイルが溜まることはない。
【0034】
なお、この第2の実施の形態では、エバポレータ40は、その冷媒入口41が冷媒出口42よりも高い位置に形成されている場合について説明したが、その位置関係は逆であっても良い。冷媒出口42が冷媒入口41よりも高い位置に形成されている場合には、開口端が重力下方向に向いてエバポレータに接合されるケース11は、冷媒入口41および冷媒出口42を囲うようにエバポレータに接合され、略直角に曲げられたエバポレータ入口配管12は、ケース11内にてエバポレータの冷媒入口41に接合されることになる。また、この場合、膨張弁1aのパワーエレメント28は、冷媒出口42に対面する位置ではなく、図2とは反対側に向けて装着される。
【0035】
上記の第1および第2の実施の形態では、構造的にケース11内に潤滑オイルが溜まらないようにしているが、それでも、エバポレータ40のレイアウトの関係でオイル溜りができてしまう場合がある。次に、そのような場合にオイル溜りに潤滑オイルが溜まらないようにする例について説明する。
【0036】
図3は第3の実施の形態に係る膨張弁の装着構造を示す断面図である。図3において、図1および図2に示した構成要素と同じまたは同等の機能を有する要素には同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0037】
この第3の実施の形態に係る膨張弁の装着構造は、水平方向に置かれた筒状のケース11の底部に溜まった潤滑オイルを吸い出すようにしている。すなわち、この実施の形態において、エバポレータ40は、その冷媒入口41および冷媒出口42が同じ側で水平方向に開口していて、冷媒出口42が冷媒入口41よりも高い位置となる姿勢で車両に設置される。エバポレータ40は、エバポレータ入口配管12が一体に形成され、このエバポレータ入口配管12および冷媒出口42を囲うように筒状のケース11が接合されている。このケース11は、水平方向に置かれ、戻り低圧配管の一部を構成している。水平方向に延びる二重管構成の低圧配管13は、その先端にジョイント部14が溶接され、そのジョイント部14とケース11とがパイプクランプ16によって接続されている。ジョイント部14における低圧配管13の溶接は、低圧配管13の下端とケース11の下端とにできるだけ段差が生じないよう、ジョイント部14の最下端にずらした位置にしてある。なお、この実施の形態では、冷媒の大気への外部漏れを極力減らすために2つのOリング17によってシールしている。
【0038】
膨張弁1bは、その出口ポート22がケース11内に延出されたエバポレータ入口配管12に接続され、入口ポート21が高圧配管15に接続されている。そして、高圧配管15の下方には、キャピラリチューブ46が設けられている。このキャピラリチューブ46は、ケース11とジョイント部14との接続部に跨設されていて、その一端は屈曲されて、ケース11の底面近傍まで延びており、他端は、高圧配管15と低圧配管13との間の空間まで延びている。
【0039】
この構成によれば、エバポレータ40から出た冷媒は、膨張弁を収容している広いケース11内に入ることによって流速が落ち、冷媒によってエバポレータ40から押し流された潤滑オイルは、ケース11内を落下してその底部に溜まるようになる。ケース11内の冷媒は、高圧配管15と低圧配管13との間の狭い空間に入ってコンプレッサへ流れていく。このとき、冷媒の流速が速まるので、キャピラリチューブ46の下流側の開口部近傍に負圧が発生し、この結果、キャピラリチューブ46は、ベンチュリー効果によってケース11の底部に溜まった潤滑オイルを吸い上げるようになる。キャピラリチューブ46によってケース11から吸い上げられた潤滑オイルは、低圧配管13内を流れる冷媒によってコンプレッサの方向へ押し流されていく。このように、ケース11にオイル溜りができたとしても、キャピラリチューブ46のベンチュリー効果によってオイル溜りから潤滑オイルを吸い出すことができるので、潤滑オイルがケース11内に寝込んでコンプレッサがオイル不足になることは回避される。
【0040】
このキャピラリチューブ46は、ケース11内よりも冷媒の流速が速くなる部分に設けることによって機能するので、第1の実施の形態の場合のように、ケース11の断面よりも絞られた断面を有する低圧配管13の入口のところに配置するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1の実施の形態に係る膨張弁の装着構造を示す断面図である。
【図2】第2の実施の形態に係る膨張弁の装着構造を示す断面図である。
【図3】第3の実施の形態に係る膨張弁の装着構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1,1a,1b 膨張弁
10 エバポレータ出口配管
11 ケース
12 エバポレータ入口配管
13 低圧配管
14 ジョイント部
15 高圧配管
16 パイプクランプ
17 Oリング
21 入口ポート
22 出口ポート
23 ボディ
24 弁体
25 スプリング
26 アジャストねじ
26a アジャスト部材
27 シャフト
28 パワーエレメント
29 係止部
30 断熱カバー
31 係止部
40 エバポレータ
41 冷媒入口
42 冷媒出口
43 バックアップリング
44 皿ばね
45 パイプ
46 キャピラリチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エバポレータの出口とコンプレッサの入口との間の戻り低圧配管内に膨張弁を収容し、前記膨張弁の入口ポートと高圧配管との接続および前記膨張弁の出口ポートとエバポレータ入口配管との接続を前記戻り低圧配管内において行うようにした冷凍サイクルにおける膨張弁の装着構造において、
前記膨張弁を収容している前記戻り低圧配管内の位置では、前記コンプレッサへの低圧配管が前記膨張弁と接続される前記高圧配管および前記エバポレータ入口配管よりも重力下方に位置していることを特徴とする膨張弁の装着構造。
【請求項2】
前記戻り低圧配管の水平方向に延びる部分の途中に前記膨張弁を収容するケースが介挿され、前記ケース内では、冷媒が通過する位置に感温部が配置されるように前記膨張弁が収容されていることを特徴とする請求項1記載の膨張弁の装着構造。
【請求項3】
エバポレータの出口とコンプレッサの入口との間の戻り低圧配管内に膨張弁を収容し、前記膨張弁の入口ポートと高圧配管との接続および前記膨張弁の出口ポートとエバポレータ入口配管との接続を前記戻り低圧配管内において行うようにした冷凍サイクルにおける膨張弁の装着構造において、
前記膨張弁を収容し、前記コンプレッサへの低圧配管が接続されるケースの開口端が重力下方に向けられていることを特徴とする膨張弁の装着構造。
【請求項4】
前記ケースは、冷媒入口および冷媒出口がともに水平方向に開口している側の前記エバポレータに接合されていることを特徴とする請求項3記載の膨張弁の装着構造。
【請求項5】
前記エバポレータは、前記冷媒入口が前記冷媒出口よりも高い位置に有し、前記ケースは、前記冷媒出口に接続するよう前記エバポレータに接合され、前記冷媒入口は、略直角に曲げられたエバポレータ入口配管の一端が接合され、前記エバポレータ入口配管は、その他端が前記ケース内に延びた状態で前記ケースに接合されていることを特徴とする請求項4記載の膨張弁の装着構造。
【請求項6】
前記ケースに接続される前記低圧配管は、中に前記高圧配管が同心配置された二重管であることを特徴とする請求項3記載の膨張弁の装着構造。
【請求項7】
エバポレータの出口とコンプレッサの入口との間の戻り低圧配管内に膨張弁を収容し、前記膨張弁の入口ポートと高圧配管との接続および前記膨張弁の出口ポートとエバポレータ入口配管との接続を前記戻り低圧配管内において行うようにした冷凍サイクルにおける膨張弁の装着構造において、
前記膨張弁を収容するよう水平方向に置かれて前記戻り低圧配管の一部をなしているケースを有し、前記ケースには前記コンプレッサの入口に通じる低圧配管が最下端に寄せて接合したジョイント部を介して接続され、前記ケースと前記ジョイント部との接続部には一端が前記ケースの底面近傍まで延び、他端が前記低圧配管の中まで延びるようにキャピラリチューブが跨設されていることを特徴とする膨張弁の装着構造。
【請求項8】
前記ケースは、冷媒入口および冷媒出口がともに水平方向に開口している側の前記エバポレータに接合されていることを特徴とする請求項7記載の膨張弁の装着構造。
【請求項9】
前記ジョイント部に接合される前記低圧配管は、中に前記高圧配管が同心配置された二重管であることを特徴とする請求項7記載の膨張弁の装着構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate