説明

膨張性組成物または膨張材とその製造方法、および用途

【課題】生石灰の製造工程等において発生するキルンコーチングを原料とし、安価であって従来の膨張材に匹敵する膨張効果を有し、コンクリートのひび割れを抑制する膨張材料等として有用な膨張性組成物ないし膨張材とその製造方法および用途を提供する。
【解決手段】焼成キルンから取り出されたコーチングからなる粉末であって、遊離生石灰含有量40%以上、および粉末度3000cm2/g以上であることを特徴とする膨張性組成物、および、焼成キルンから取り出されたコーチング粉末および生石灰を含有し、粉末度3000cm2/g以上であって、遊離生石灰含有量40%以上であることを特徴とする膨張材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生石灰のキルンコーチング(下灰)を原料とした膨張性組成物ないし該膨張性組成物を含む膨張剤、およびその用途に関し、詳しくは、生石灰等を製造する工程において発生する下灰を有効なリサイクル原料とし、モルタルやコンクリートなどのセメント成形物に使用される膨張性組成物ないし膨張材と、その用途に関する。
【背景技術】
【0002】
生石灰は、製鋼用(フラックス等)、製銑用(焼結原料)、水酸化マグネシウム原料、土質安定材、水質・底質改善剤、紙・パルプ用(苛性ソーダ回収、パルプ蒸解用)、乾燥剤、混和材料、カルシウム化合物用、その他一般化学工業用等として幅広い用途で使用されており、通常、原料の石灰石をロータリーキルンやシャフトキルン等の焼成炉で焼成することによって製造されている。
【0003】
生石灰の製造やセメントクリンカー等の製造において、石灰石原料を焼成する際の燃料として、重油が主に使用されてきた。しかしながら、近年の原燃料の高騰により、多くの製造会社は、製造コスト削減が大きな課題となり、安価な再生重油およびコークス(石炭コークスや石油コークス)等の固形燃料の使用を余儀なくされている状況である。
【0004】
焼成燃料として、石炭コークス等の固形燃料を用いた場合、重油と比較して不燃焼性鉱物質が多く発生し、焼成キルン内の炉壁等にコーチングが付着するという問題が起こる。このコーチングは下灰とも云われ、焼結した状態で炉壁等に付着した固結物であり、ロングラン焼成をしていくとコーチングの付着量が増えて焼成キルンの閉塞を招き、焼成効率が著しく低下し、あるいは目標の焼結物が得られない可能性が生じる。そのため、一定期間(焼成時間)で焼成キルンを停止(火止め)し、付着したコーチング(下灰)を取り除く作業が必要になる。
【0005】
焼成キルンから取り出されるコーチングの量は、使用原燃料や焼成設備によって異なるが、生石灰の生産量に対して概ね1〜5%と言われており、除去されたコーチングは、通常、産業廃棄物として処分されるか、土壌改質剤やセメントの増量材として一部が利用されているだけであり、最近、再資源化の方法が提案されているが(特許文献1)、十分な効果が得られず、これまでコーチング(下灰)の有効なリサイクル手段がなかった。
【0006】
従来、提案されている下灰の再資源化方法として、キルン燃焼室や炉壁から取り出した下灰を粉末化または粒状化し、更に必要に応じて静的破砕剤成分を加え、静的破砕剤またはその基材として用いることが提案されている(特許文献1)。
【0007】
しかし、従来の上記静的破砕剤は、キルン燃焼室や炉壁から取り出した下灰について、その遊離生石灰含有量や粉末度が全く考慮されていないため十分な効果を得ることができなかった。
【0008】
具体的には、生石灰を主基材とする静的破砕剤は、基材の化学組成や鉱物組成、環境温度等による諸条件に生石灰が敏感に反応するため、安易に灰分や灰分と硬焼生石灰を併用した破砕剤では、例えば、夏場の高温度下での使用や穿孔径の大きい大孔径に適用した場合、孔内に充填した破砕剤スラリーが噴出する可能性が高くなるなど、安全性に大きな課題があった。
【0009】
また、生石灰のキルンコーチング(下灰)をそのまま粉末化して膨張材と使用した場合には、下灰の焼結性が高いため膨張性能が低く、過度に成長した遊離生石灰結晶を含むものは遅れ膨張を生じる問題があった。
【0010】
この他に、石灰石の焼成により生石灰を製造したときに発生する焼成ダストを処理し、焼成ダストに含まれる未燃Cを分離除去することによりCaO分を回収し、焼成ダストの再資源化を可能にする方法が知られている(例えば特許文献2)。
【0011】
しかし、上記方法は焼成ダストに含まれる未燃Cを分離除去して白色度を高める方法であり、処理対象のダストは、集塵機で回収された細粉状の焼成ダストあり、焼成キルン内の炉壁等にコーチングとして付着する塊状物の下灰は処理対象とされていない。
【特許文献1】特開2004−181289号公報
【特許文献2】特開2008−142646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、主に生石灰の製造工程において発生する生石灰のキルンコーチング(下灰)の処理に関して従来の上記課題を解決したものであり、これを原料として有効利用した膨張性組成物ないし膨張材を提供することを目的とし、安価であって従来の膨張材に匹敵する膨張効果を有し、コンクリートのひび割れを抑制する膨張材料等として有用な膨張性組成物ないし膨張材と、その製造方法および用途に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は以下に示す構成を有することによって上記課題を解決した膨張性組成物ないし膨張材、その製造方法および用途に関する。
〔1〕焼成キルンから取り出されたコーチングからなる粉末であって、遊離生石灰含有量40%以上、および粉末度3000cm2/g以上であることを特徴とする膨張性組成物。
〔2〕焼成キルンから取り出されたコーチング粉末および生石灰を含有し、粉末度3000cm2/g以上であって、遊離生石灰含有量40%以上であることを特徴とする膨張材。
〔3〕焼成キルンから取り出された粉末度3000cm2/g以上のコーチング粉末15%〜50%、および生石灰30%〜70%を含有し、コーチング粉末と生石灰の合計量が70%以上であって、遊離生石灰含有量40%以上である上記[2]に記載する膨張材。
〔4〕上記[1]の膨張性組成物、上記[2]の膨張材、または上記[3]の膨張材を含有するモルタル・コンクリート用膨張材。
〔5〕上記[1]の膨張性組成物、上記[2]の膨張材、または上記[3]の膨張材を含有する静的破砕材。
〔6〕上記[1]の膨張性組成物、上記[2]の膨張材、または上記[3]の膨張材を含有する膨張コンクリート。
〔7〕生石灰の焼成キルンから取り出された遊離生石灰含有量40%以上のコーチングを粉末度3000cm2/g以上に粉砕することを特徴とする膨張性組成物の製造方法。
〔8〕生石灰の焼成キルンから取り出されたコーチングを粉末度3000cm2/g以上に粉砕し、該コーチング粉末に生石灰、石膏、およびシリカ質原料を含む副原料を添加して、遊離生石灰含有量40%以上、およびコーチング粉末と生石灰の合計量70%以上に調整し、この調合原料を焼成し、得られたクリンカーを粉末度2100〜4000cm2/gに粉砕することを特徴とする膨張材の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の膨張材は、リサイクル原料となる生石灰のキルンコーチング(下灰)を使用していながら従来品と同程度の膨張性能を有し、しかも従来品に比べて安価に製造することができる。
【0015】
本発明の膨張性組成物ないし膨張材は生石灰のキルンコーチング(下灰)を膨張材の原料として用いているので、コーチング(下灰)を大量に消費することができる。従って、下灰を産廃処分することなく、有効に再資源化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施例と共に具体的に説明する。なお、%は特に示す場合および単位固有の場合を除き質量%であり、粉末度はブレーン比表面積である。
【0017】
本発明の膨張性組成物は、焼成キルンから取り出されるコーチングからなる粉末であって、遊離生石灰含有量40%以上、および粉末度3000cm2/g以上であることを特徴とする。また、本発明の膨張材は、焼成キルンから取り出されたコーチング粉末および生石灰を含有し、粉末度3000cm2/g以上であって、遊離生石灰含有量40%以上であることを特徴とする。なお、以下の説明において、本発明の膨張性組成物および膨張材を含めて膨張性材料と云うことがある。
【0018】
本発明において用いるコーチングは、石灰石を焼成原料として製造する生石灰やセメントクリンカー等を製造する工程において発生する生石灰のキルンコーチング(下灰)などである。例えば、焼成原料である石灰石をロータリーキルンで焼成した際に、焼成窯の炉壁等に付着しアンザツ化(焼結固化)した下灰である。
【0019】
上記下灰は、一般的に焼成窯での滞留時間が長く、非常に焼結性が高く、高密度で且つ硬いクリンカあるいは塊状物となっている。そのため、下灰中の膨張物質である遊離生石灰結晶が大きく成長しており、生石灰の水和制御が有効であり、膨張材原料として使用することができる。
【0020】
上記下灰に含まれる膨張物質である遊離生石灰は、結晶が大きく成長しており、生石灰の水和制御が有効であるが、結晶粒が60μm以上の過度に成長したものは死焼石灰ともいわれ、膨張性能が乏しく、しかも著しく水和が遅く、高温環境下で後れ膨張として反応する。そのため、本発明の膨張性材料では、キルン等から取り出した下灰を粉砕して過度に成長した遊離生石灰結晶を小さくしたものを用い、生石灰の水和制御を効果的かつ膨張性能を高める。
【0021】
本発明で使用する下灰は、具体的には、粉末度3000cm2/g以上が適当であり、粉末度4500cm2/g以上が好ましい。下灰の粉末度が3000cm2/g未満では下灰中に存在する遊離生石灰が粒径60μm以上に成長したものを含むようになり、膨張成分として使用した場合に遅れ膨張を生じ、また諸条件により異常膨張や強度低下を招く原因になる可能性があるので好ましくない。
【0022】
生石灰のキルンコーチングなどには、遊離生石灰以外の不純物として、主に二酸化珪素や酸化マグネシウム等が含まれ、不純物の割合により膨張性能が大きく影響を受ける。そこで、本発明の膨張性組成物は遊離生石灰含有量40%以上のものが用いられる。また、本発明の膨張材においては、コーチング粉末に生石灰等の成分を配合し、コーチング粉末と生石灰の合計量70%以上、および遊離生石灰含有量を40%以上に調整する。遊離生石灰含有量が40%未満では、膨張量が不足し所望の膨張性能が得られないので好ましくない。
【0023】
なお、コーチング(下灰)に含まれる上記不純物は膨張効果を実質的に失わない成分であり、例えば、二酸化珪素は初期強度の増進作用となるエーライト等の鉱物組成となり、また酸化マグネシウムは遊離生石灰と同様に膨張作用の役目を果たす成分であり、これらの二酸化珪素や酸化マグネシウムが含まれていても、遊離生石灰などの膨張成分の含有量を調整することによって下灰を有効に利用することができる。
【0024】
焼成キルンから取り出されたコーチング(下灰)は、これを遊離生石灰含有量40%以上に調整し、粉末度3000cm2/g以上に粉砕して膨張性組成物として用いる。また、焼成キルンから取り出されたコーチング粉末を粉末度3000cm2/g以上粉砕し、生石灰および必要に応じて他の成分を加え、遊離生石灰含有量40%以上に調整して膨張材として用いることができる。
【0025】
具体的には、上記コーチング(下灰)を粉末度3000cm2/g以上に粉砕して主にカルシウム質原料として使用し、これに他の膨張成分などを添加して膨張材として利用することができる。コーチング粉末に添加する成分としては、例えば、酸化カルシウム、カルシウムサルフォアルミネート(例えばCaO・Al23・SO4)、カルシウムアミノフェライト(例えば4CaO・Al23・Fe23)、石膏等の膨張成分である。
【0026】
例えば、粉末度3000cm2/g以上のコーチング粉末に、必要に応じ、シリカ質原料、アルミナ質原料、鉄原料、アルカリ質原料、硫黄原料、ハロゲン原料、他のカルシウム質原料などを添加混合して、遊離生石灰含有量40%以上、およびコーチング粉末と生石灰の合計量70%以上に調整し、この調合原料を焼成し、酸化カルシウム、カルシウムサルフォアルミネート(例えばCaO・Al23・SO4)、石膏のうちの一種又は二種以上を主成分とした膨張材が製造される。
【0027】
上記調合原料は1200℃以上、好ましくは1350〜1500℃で焼成する。焼成温度が1200℃より低いと焼結性が低く、遊離生石灰の結晶も十分に成長しないため良好な膨張性能が得られない。なお、焼成時間は焼成釜の諸条件にもよるが30分〜90分程度が好ましい。焼成時間の長いほうが遊離石灰の結晶が大きくなり、安定した高い膨張性能が得られる。また、焼成設備は特に限定されず、ロータリーキルン焼成や電気炉溶融などによる熱処理工程を適宜利用して製造すれば良い。
【0028】
焼成して得られた塊状(クリンカ状)物を粉砕し、反応性を調整したうえで使用する。例えば、クリンカーを粉末度2100〜4000cm2/gに粉砕して用いる。
【0029】
本発明の膨張性組成物ないし膨張材は、本発明の効果を実質的に失わない範囲で、例えばモルタルやコンクリートに使用できる他の成分を含有するものであっても良い。このような成分として、具体的には、各種セメント、無水石膏、各種骨材、繊維、減水剤(分散剤、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤等を含む。)、収縮低減剤、シリカフューム、スラグ、凝結促進剤、凝結遅延剤、増粘剤、保水剤、防錆剤、空気連行剤、消泡剤、起泡剤等を例示することができる。
【0030】
本発明の膨張性組成物ないし膨張材は、モルタル・コンクリート用膨張材として用いることができ、また静的破砕材などとして用いることができる。
【0031】
本発明の膨張性組成物ないし膨張材は、市販の通常の膨張材と同様に使用することができる。本発明の膨張材を、セメント及び水と、必要により添加される粗骨材,細骨材,混和材料とに配合し、ミキサ等を用いて膨張コンクリートを製造すればよい。
【0032】
本膨張材を混和する膨張コンクリートに用いるセメントは、限定されるものではなく、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、白色セメント、アルミナセメント等が使用できる。また、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュ−ムセメント等の混合セメントも使用できる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例を示す。なお本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
〔実施例1〕
表1に示す成分を含有する下灰をおのおの粉末度2000cm2/g、3500cm2/g、5000cm2/gに粉砕して膨張性材料を調製した。この膨張性材料および表3に示す材料を表6に示す単位量(kg/m3)に従って配合し(水セメント比50.0%、細骨材率46.4%)、コンクリートを製造した。このコンクリートについて、規格〔JIS A 6202 コンクリート用膨張材付属書2にある拘束膨張および収縮試験方法(A法)〕に従い、拘束膨張率を測定した。また、測定材齢7日後の供試体を20℃水中から60℃水中へ移動して促進養生を行い、測定材齢1ヶ月後の遅れ膨張を測定した。この結果を表2に示した。
【0035】
表2に示すように、下灰の粉末度が2000cm2/gの試料A1は遅れ膨張率が321%と大きく、一方、下灰の粉末度が3500cm2/gの試料A2、および粉末度5000cm2/gの試料A3は遅れ膨張率が57%、35%であり、A1に比べて格段に小さい。この結果から下灰の粉末度は3000cm2/g以上が適当であることが分かる。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
〔実施例2:膨張材の調製〕
表1に示す化学成分を有する下灰について、塊状の下灰をボールミル粉砕機で粉末度5000cm2/gに粉砕した。次に、この下灰粉末に表3に示す材料を調合し、この調合原料の遊離生石灰含有量が40%以上になるように調整した。この調合原料をブレンディングサイロで均斉化混合した後、ロールプレス機にて成型したものをロータリー焼成キルンにて1400〜1450℃の焼成温度で40分間焼成した。得られた膨張クリンカをボールミルにて粉砕し、粉末度2400〜2800cm2/gに粉砕して膨張材を作成した。作成した膨張材を表4に示す。なお、粉末度2000cm2/gに粉砕した下灰分を用いて調製したものを参考品1、膨張材中の遊離生石灰含有量が40%未満のものを参考品2として表4に示した。
【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
〔実施例3:膨張材の性能試験〕
表4の膨張材および市販膨張材、表5の材料をおのおの表6の単位量に従って配合し、コンクリートを調製して膨張性能を評価した。コンクリート中の単位膨張材量は20kg/m3、水セメント比50.0%、細骨材率46.4%に設定した。膨張性能は規格〔JIS A 6202 コンクリート用膨張材付属書2の拘束膨張および収縮試験方法(A法)〕に従って測定した。また、測定材齢7日後の供試体を20℃水中から60℃水中へ移動し促進養生を行い、測定材齢1ヶ月後の遅れ膨張を測定した。この結果を表7に示した。
【0042】
本発明の膨張材(本発明品1〜4)を用いた実施例(No1〜4)は、材齢7日のコンクリート拘束膨張率において、何れも199〜242×10-6の良好な膨張性能を発揮し、上記試験方法による「膨張コンクリートの施工指針」に規定されている土木学会基準(材齢7日のコンクリート拘束膨張率:150〜250×10-6)を満足し、市販膨張材と同等の膨張性能が得られた。また、遅れ膨張も僅かであり、市販膨張材並みであった。このように、本発明の膨張材(本発明品1〜4)は、何れも十分な膨張性能を有し、コンクリート用膨張材として適用できることが確認された。
【0043】
一方、下灰原料の粉末度2000cm2/gに調整した参考品1を使用した比較例6は、材齢7日のコンクリート拘束膨張率が137×10-6と低く、かつ遅れ膨張率が204%と大きく、諸条件により強度低下が懸念される。また、膨張材中の遊離生石灰含有量が40%未満である参考品2を使用した比較例7は材齢7日のコンクリート拘束膨張率が79×10-6と低いことが認められた。
【0044】
【表5】

【0045】
【表6】

【0046】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の生石灰等の製造工程において発生する生石灰のキルンコーチング(下灰)を原料とした膨張材は、生石灰のキルンコーチング(下灰)を大量に消費することができ、かつ生じた下灰を産廃処分することなく、有効に再資源化することが可能である。また、本発明の膨張材は、市販膨張材と同様に用いることができ、コンクリート等のひび割れを抑制することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成キルンから取り出されたコーチングからなる粉末であって、遊離生石灰含有量40%以上、および粉末度3000cm2/g以上であることを特徴とする膨張性組成物。
【請求項2】
焼成キルンから取り出されたコーチング粉末および生石灰を含有し、粉末度3000cm2/g以上であって、遊離生石灰含有量40%以上であることを特徴とする膨張材。
【請求項3】
焼成キルンから取り出された粉末度3000cm2/g以上のコーチング粉末15%〜50%、および生石灰30%〜70%を含有し、コーチング粉末と生石灰の合計量が70%以上であって、遊離生石灰含有量40%以上である請求項2に記載する膨張材。
【請求項4】
請求項1の膨張性組成物、請求項2の膨張材、または請求項3の膨張材を含有するモルタル・コンクリート用膨張材。
【請求項5】
請求項1の膨張性組成物、請求項2の膨張材、または請求項3の膨張材を含有する静的破砕材。
【請求項6】
請求項1の膨張性組成物、請求項2の膨張材、または請求項3の膨張材を含有する膨張コンクリート。
【請求項7】
生石灰の焼成キルンから取り出された遊離生石灰含有量40%以上のコーチングを粉末度3000cm2/g以上に粉砕することを特徴とする膨張性組成物の製造方法。
【請求項8】
生石灰の焼成キルンから取り出されたコーチングを粉末度3000cm2/g以上に粉砕し、該コーチング粉末に生石灰、石膏、およびシリカ質原料を含む副原料を添加して、遊離生石灰含有量40%以上、およびコーチング粉末と生石灰の合計量70%以上に調整し、この調合原料を焼成し、得られたクリンカーを粉末度2100〜4000cm2/gに粉砕することを特徴とする膨張材の製造方法。

【公開番号】特開2010−126400(P2010−126400A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302873(P2008−302873)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】