説明

膨張機制御装置

【課題】膨張機に設定される設定圧力差を常に維持しながら過膨張を防止すると共に、安定した膨張仕事が得られる膨張機制御装置を提供する。
【解決手段】膨張機の制御装置において、高温高圧に加熱された作動流体の膨張により、駆動力を発生する膨張機112と、膨張機112の駆動力によって作動されて、発電する発電機120と、膨張機112の高圧側、および低圧側間の圧力差ΔPを検出する圧力差検出手段130と、圧力差検出手段130によって検出された圧力差ΔPが予め定めた所定圧力差ΔPthを下回った時に、所定圧力差ΔPthとなるように圧力差ΔPを増加させる圧力差増加手段140とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温高圧の作動流体の膨張によって作動される膨張機の制御装置に関するものであり、例えば、車両に搭載されるランキンサイクルに用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来の膨張機として、例えば特許文献1に示されるものが知られている。即ち、この膨張機は、固定スクロールと旋回スクロールとの間に膨張室が形成されるスクロール型の膨張機であり、冷媒の吐出側となる吐出空間および膨張室を連通する制御通路と、吐出空間および膨張室の圧力差に応じて上記制御通路を開閉するバルブ機構とを有している。そして、膨張機の高圧側と低圧側との圧力差(特許文献1中では圧力比)が、所定の圧力差よりも小さくなる場合は、その圧力差によって膨張可能となる容積まで膨張室が膨張した後に、膨張室の圧力≦吐出空間の圧力となって、バルブ機構が開かれる。そして、膨張室と吐出空間の圧力が一定となり膨張が停止されることになり、過膨張作動が防止されて、効率の良い運転を可能としている。
【特許文献1】特開平10−266980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、膨張機における圧力差が本来設定する設定圧力差に対して、何らかの要因で小さくなった場合に、その成り行きの中で過膨張を防止するものであって、設定圧力差を常に維持しながら、その設定圧力差に基づく膨張機での膨張仕事を積極的に取り出すという思想にはなっていない。
【0004】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、膨張機に設定される設定圧力差を常に維持しながら過膨張を防止すると共に、安定した膨張仕事が得られる膨張機制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0006】
請求項1に記載の発明では、膨張機制御装置において、高温高圧に加熱された作動流体の膨張により、駆動力を発生する膨張機(112)と、膨張機(112)の駆動力によって作動されて、発電する発電機(120)と、膨張機(112)の高圧側、および低圧側間の圧力差(ΔP)を検出する圧力差検出手段(130)と、圧力差検出手段(130)によって検出された圧力差(ΔP)が予め定めた所定圧力差(ΔPth)を下回った時に、所定圧力差(ΔPth)となるように圧力差(ΔP)を増加させる圧力差増加手段(140)とを設けることを特徴としている。
【0007】
これにより、膨張機(112)における圧力差(ΔP)が所定圧力差(ΔPth)を下回ることがないように維持しつつ、膨張機(112)を作動させることができるので、膨張機(112)の過膨張作動を防止できると共に、常に所定圧力差(ΔPth)に基づく安定した膨張仕事を得ることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、膨張機(112)は、作動流体の膨張によって固定スクロールに対して公転作動される旋回スクロールを有し、旋回スクロールには、公転作動に伴って駆動力を出力すると共に、作動流体の膨張時に両スクロールを互いに押付けるように作用する従動クランク機構が設けられたスクロール型膨張機(112)であることを特徴としている。
【0009】
従動クランク機構を有するスクロール型膨張機(112)においては、過膨張作動が発生した時に、両スクロールの干渉によるカタカタ音の発生や、旋回スクロールの傾転による偏磨耗の発生が顕著となる(詳細は、後述する実施形態中で説明)。よって、請求項2に記載の発明は、膨張機(112)が従動クランク機構を有するスクロール型のものである場合に、過膨張を防止することで、カタカタ音や偏磨耗を防止するために極めて有効なものとなる。
【0010】
圧力差検出手段(140)としては、請求項3に記載の発明のように、膨張機(112)の高圧側圧力(P1)と、低圧側圧力(P2)とをそれぞれ検出する圧力検出部(131、132)と、圧力検出部(131、132)によって検出された高圧側圧力(P1)と低圧側圧力(P2)との差を圧力差(ΔP)として演算する演算部(133)とから構成することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、圧力差増加手段(140)は、発電機(120)と、この発電機(120)の作動回転数を低下させる回転数低下手段(141)とから成ることを特徴としている。
【0012】
これにより、発電機(120)と共に膨張機(112)の作動回転数も低下され、作動流体にとっては膨張機(112)が流通抵抗となるので、膨張機(112)の高圧側圧力(P1)を上昇させることができ、所定圧力差(ΔPth)となるように圧力差(ΔP)を増加させることができる。
【0013】
上記回転数低下手段(141)としては、請求項5に記載の発明のように、発電機(120)の作動回転数を制御するインバータ(141)とすることができる。
【0014】
また、上記回転数低下手段は、請求項6に記載の発明のように、発電機(120)の回転子コイルの励磁を上昇させて、磁束密度を上昇させる磁束密度上昇手段としても良い。
【0015】
請求項7に記載の発明では、膨張機(112)は、ランキンサイクル(110)に使用されるものであって、圧力差増加手段(140)は、ランキンサイクル(110)の低圧側となる凝縮器(113)と、この凝縮器(113)の凝縮能力を増加させる凝縮能力増加手段(142)とから成ることを特徴としている。
【0016】
これにより、凝縮器(113)による作動流体の凝縮液化が促進されて、低圧側圧力(P2)を低下させることができるので、所定圧力差(ΔPth)となるように圧力差(ΔP)を増加させることができる。
【0017】
上記凝縮能力増加手段(142)としては、請求項8に記載の発明のように、凝縮器(113)に冷却用空気を供給すると共に、この冷却用空気の流量を増加させる送風機(142)とすることができる。凝縮器(113)に供給する冷却用空気の流量を増大することで、凝縮器(113)の凝縮能力を増加させることができる。
【0018】
請求項9に記載の発明では、膨張機(112)は、ランキンサイクル(110)に使用されるものであって、圧力差増加手段(140)は、ランキンサイクル(110)の低圧側となる液相作動流体を高圧側に圧送する液ポンプ(114)と、この液ポンプ(114)の回転速度を増加させる回転数増加手段(144)とから成ることを特徴としている。
【0019】
これにより、高圧側圧力(P1)を上昇させることができるので、所定圧力差(ΔPth)となるように圧力差(ΔP)を増加させることができる。
【0020】
上記回転速度増加手段(144)としては、請求項10に記載の発明のように、液ポンプ(114)駆動用の電動機(143)の回転数を制御するポンプ用インバータ(144)とすることができる。
【0021】
また、上記回転速度増加手段は、請求項11の記載の発明ように、液ポンプ(114)駆動用の電動機(143)の励磁を低下させて、磁束密度を低下させる磁束密度低下手段としても良い。
【0022】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を図1、図2に示し、まず、具体的な構成について図1を用いて説明する。第1実施形態は、本発明の膨張機制御装置を車両に搭載されるランキンサイクル110に使用される膨張機112に適用したものである。
【0024】
対象となる車両は、図示しない水冷式のエンジン(内燃機関)を走行用駆動源とする一般乗用車であり、この車両にはエンジンの駆動力によって駆動されて発電するオルタネータ11を備えている。オルタネータ11によって発電された電力は後述するインバータ141によってバッテリ12に充電されると共に、バッテリ12に充電された電力は、車両電気負荷(ヘッドランプ、ワイパー、オーディオ等)13に供給されるようになっている。
【0025】
ランキンサイクル110は、上記エンジンで発生した廃熱エネルギー(冷却水の熱エネルギー)を回収すると共に、この廃熱エネルギーを電気エネルギーに変換して利用するものである。ランキンサイクル110は、液ポンプ114、加熱器111、膨張機112、凝縮器113を有し、これらが順次接続されて閉回路を形成している。
【0026】
ポンプ114は、ランキンサイクル110内の冷媒(本発明における作動流体に対応)を循環させる流体機械であり、図示しない電動機の駆動力によって作動されるようになっている。電動機の作動は、ポンプ用インバータ(図示せず)によって制御されるようになっている。
【0027】
加熱器111は、内部に2つの流路が形成された熱交換器であり、それぞれの流路には、上記ポンプ114から送られる冷媒と、エンジン冷却用の高温の冷却水とが流通するようになっている。そして、加熱器111は、冷媒と冷却水との間で熱交換することにより、冷媒を加熱して高温高圧の過熱蒸気冷媒とする。
【0028】
膨張機112は、加熱器111で加熱された過熱蒸気冷媒の膨張によって回転駆動力を発生させる流体機械である。ここでは本膨張機112は、固定スクロールと旋回スクロールとを有するスクロール型膨張機112としている。
【0029】
固定スクロールと旋回スクロールとの間には膨張室が形成されて、この膨張室で過熱蒸気冷媒が膨張すると、固定スクロールに対して旋回スクロールが公転作動されるようになっている。旋回スクロールには、従動クランク機構が接続されておりおり、従動クランク機構は、旋回スクロールの公転作動に伴い回転して、回転駆動力として出力する。尚、従動クランク機構は、シャフトに対して偏心した駆動ピンに、軸心に対する偏心穴を有する円筒状のブッシュが回転可能に装着されたものであり、冷媒の膨張時に固定スクロールに対して旋回スクロールを押付けるように作用する。
【0030】
凝縮器113は、冷却用空気との熱交換によって冷媒を凝縮液化する熱交換器である。凝縮器113には、凝縮器113の熱交換部に冷却用空気を供給する送風機142が設けられている。そして、凝縮器113の冷媒流出側は、液ポンプ114に接続されている。
【0031】
膨張機112の冷媒流入側、更に具体的には加熱器111と膨張機112との間には、ランキンサイクル110の高圧側となる冷媒圧力(以下、高圧側圧力P1)を検出する圧力検出部としての高圧側圧力計131が設けられている。高圧側圧力計131で検出された圧力信号は、後述するコントローラ133に出力されるようになっている。
【0032】
また、膨張機112の冷媒吐出側、更に具体的には膨張機112と凝縮器113との間には、ランキンサイクル110の低圧側となる冷媒圧力(以下、低圧側圧力P2)を検出する圧力検出部としての低圧側圧力計132が設けられている。低圧側圧力計132で検出された圧力信号は、後述するコントローラ133に出力されるようになっている。
【0033】
コントローラ133は、上記両圧力計131、132で検出された高圧側圧力P1と低圧側圧力P2との差を膨張機112における圧力差ΔPとして演算する演算部であり、演算した圧力差ΔPを後述するインバータ141に出力する。上記高圧側圧力計131、低圧側圧力計132、コントローラ133は、本発明における膨張機112の高圧側、および低圧側間の圧力差ΔPを検出する圧力差検出手段に対応する。
【0034】
そして、膨張機112には、発電機120が接続されている。発電機120は、膨張機112の従動クランク機構(シャフト)に接続されるロータ部(例えば永久磁石から成る回転子)121と、このロータ部121の外周側に配設される三相のコイルから成るステータ部(固定子)122とを有する三相交流式の回転電機である。発電機120は、膨張機112の回転駆動力によるロータ部121の回転作動に伴ってステータ部122に電流を発生し、発電機能を果たす。
【0035】
上記発電機120は、ステータ部122に接続されるインバータ141によって基本の作動が制御されるようになっている。即ち、インバータ141は、発電機120の発電作動時にステータ部122の電流を調整することでロータ部121の回転数を制御し、発電量を制御する。そして、発電された電力をバッテリ12に充電する。また、インバータ141は、本発明における回転数低下手段に対応するものであって、コントローラ133から得られる圧力差ΔPに応じてロータ部121の回転数を制御する(詳細後述)。尚、上記発電機120、およびインバータ141は、本発明における圧力差増加手段に対応する。
【0036】
次に、上記構成に基づく膨張機制御装置(ランキンサイクル110)の作動について図2に示す制御フローチャートを加えて説明する。
【0037】
エンジンの冷却水温度が所定冷却水温度以上となって、エンジンの廃熱が充分得られるようになると、液ポンプ114、送風機142が作動されて、ランキンサイクル110が運転される。
【0038】
即ち、液ポンプ114によって凝縮器113からの液冷媒が昇圧されて加熱器111に送られ、加熱器111において液冷媒は高温の冷却水によって加熱されて過熱蒸気冷媒となる。過熱蒸気冷媒は、膨張機112に送られる。膨張機112において過熱蒸気冷媒は、膨張室で等エントロピー的に膨張減圧され、旋回スクロールを公転作動させると共に、この旋回スクロールに接続される従動クランク機構に回転駆動力を発生させる。そして、この回転駆動力によって発電機120が作動され、発電機120で得られた電力はインバータ141によってバッテリ12に充電される。充電された電力は、車両電気負荷13の作動に使用される。よってオルタネータ11の負荷が軽減されることになる。尚、膨張機112で減圧された冷媒は凝縮器113で凝縮液化されて、再び液ポンプ114へ吸引される。
【0039】
ここで、ランキンサイクル110の運転においては、加熱器111での加熱能力と、凝縮器113での凝縮能力とを踏まえて、液ポンプ114での昇圧能力を調整して、膨張機112における圧力差ΔPが、この膨張機112に必要とされる所定圧力差ΔPth(設定圧力差)として得られるようにして、膨張機112、および発電機120を狙いの回転数で作動させて効率的な発電を行うようにしている。
【0040】
しかしながら、上記の各能力のバランスが、ランキンサイクル110の運転時に何らかの理由によって崩れることで、圧力差ΔPが所定圧力差ΔPthを下回るようになると、膨張機112は過膨張作動を引き起こしてしまう。よって、本実施形態では、圧力差検出手段130によって得られる圧力差ΔPに応じて、発電機120の回転数を積極的に制御するようにしている。
【0041】
即ち、図2に示すように、インバータ141は、ステップS100のランキンサイクル110の運転において、発電機120を制御する中で、ステップS110で膨張機112における圧力差ΔPが、所定圧力差ΔPthを下回ったか否かを判定する。つまり、各圧力計131、132から得られた高圧側圧力P1と低圧側圧力P2とを基に、コントローラ133では、両者の差(P1−P2)を圧力差ΔPとして演算する。そして、インバータ141はこの圧力差ΔPを読み込んで、この読み込んだ圧力差ΔPと予め定めた所定圧力差ΔPthとを比較して、圧力差ΔPが所定圧力差ΔPthを下回る場合は、ステップS120で発電機120の回転数を所定量だけ低下させる方向に制御する。
【0042】
尚、ステップS110で否、即ち、圧力差ΔPが所定圧力差ΔPth以上である場合は、ステップS130のように、発電機120の回転数を当初の狙い値に維持する。そして、ステップS120、S130の後は、ステップS110へ戻って繰返す。
【0043】
以上のように、ステップS120で発電機120の回転数を低下させることにより、共に作動する膨張機112の作動回転数を低下させることができる。膨張機112の回転数低下により、ランキンサイクル110を循環する冷媒にとっては膨張機112が流通抵抗となるので、膨張機112における高圧側圧力P1を上昇させることができる。よって、圧力差ΔPを、所定圧力差ΔPthに向けて増加させることができ、所定圧力差ΔPthを確保することができるので、膨張機112の過膨張作動を防止できると共に、常に所定圧力差ΔPthに基づく安定した膨張仕事を得ることができる。
【0044】
尚、上記圧力差ΔPの検出にあたっては、各圧力計131、132とコントローラ133とによって圧力差検出手段140を構成することで、容易にその対応を可能としている。
【0045】
また、圧力差ΔPが所定圧力差ΔPthを下回った時の、圧力差ΔPを増加させる手段として、発電機120とインバータ141とで構成することで、確実な対応を可能としている。
【0046】
また、ここでは膨張機112は、従動クランク機構を有するスクロール型膨張機112としている。従動クランク機構を有するスクロール型膨張機112においては、過膨張作動が発生した時に、従動クランク機構の作用によって膨張室圧力と吐出空間圧力との大小関係が繰り返し逆転することで、両スクロールが互いに離れたり押付けられたりして、いわゆるカタカタ音を発生する。また、スクロール型膨張機112の過膨張作動時には、旋回スクロールの摺動面を相手側のスラストプレートに押付ける力が不足して、傾転して片当たりを起こし、偏磨耗が増加する。よって、本実施形態は、膨張機112が従動クランク機構を有するスクロール型のものである場合に、過膨張作動を防止することで、カタカタ音や偏磨耗増加を防止するために極めて有効なものとなる。
【0047】
尚、圧力差ΔPが所定圧力差ΔPthを下回った時の、圧力差ΔPを増加させる手段としては、上記発電機120のインバータ141(回転数低下手段)に代えて、発電機120の励磁を上昇させて、磁束密度を上昇させる手段として用いるようにしても良い。つまり、発電機121のロータ121を上記のような永久磁石に対してコイルから成るものにして、このコイルに通電する電流(励磁電流)を増加させることで磁束密度を上昇させるようにしても良い。これにより、発電機120における必要トルクが増大し、回転数を低下させることができ、圧力差ΔPを増加させることができる。
【0048】
(第2実施形態)
本発明における第2実施形態を図3、図4に示す。第2実施形態は、上記第1実施形態に対して、圧力増加手段140Aを凝縮器113と送風機(本発明における凝縮能力増加手段に対応)142とから構成されるものとしている。尚、図3中において図1と同一の符号のものは、第1実施形態で説明したものと同一であり、詳細説明は割愛する。
【0049】
ここでは、図3に示すように、凝縮器113に冷却用空気を供給する送風機142は、電動式の送風機として、その作動回転数がコントローラ133によって制御されるようにしている。具体的な作動は、図4に示す制御フローチャートに基づいて行われるようにしている。図4に示す制御フローチャートは、図2で説明したものに対して、ステップS120、S130をステップS120A、S130Aに変更したものとしている。
【0050】
即ち、ランキンサイクル110の運転制御において(ステップS100)、ステップS110の判定で、膨張機112における圧力差ΔPが所定圧力差ΔPthを下回ると、ステップS120Aで、コントローラ133は、送風機142の作動回転数を所定回転数だけ上昇させる方向に制御する。つまり送風機142が凝縮器113に供給する冷却用空気の流量を所定量増加させる。
【0051】
尚、ステップS110で否、即ち、圧力差ΔPが所定圧力差ΔPth以上である場合は、ステップS130Aのように、送風機142の作動回転数を当初の狙い値に維持する。そして、ステップS120A、S130Aの後は、ステップS110へ戻って繰返す。
【0052】
以上のように、ステップS120Aで送風機142の回転数を上昇させることにより、凝縮器113による冷媒の凝縮液化が促進されて、低圧側圧力P2を低下させることができるので、所定圧力差ΔPthとなるように圧力差ΔPを増加させることができる。よって、上記第1実施形態と同様に、膨張機112の過膨張作動を防止できると共に、常に所定圧力差ΔPthに基づく安定した膨張仕事を得ることができる。
【0053】
(第3実施形態)
本発明における第3実施形態を図5、図6に示す。第3実施形態は、上記第1実施形態に対して、圧力増加手段140Bを液ポンプ114と、液ポンプ143駆動用の電動機143と、電動機143を制御するポンプ用インバータ(本発明における回転数増加手段に対応)144とから構成されるものとしている。ポンプ用インバータ144は、コントローラ133から圧力差ΔPを読み込んで、電動機143を制御するようにしている。尚、図5中においてその他の構成で図1と同一の符号のものは、第1実施形態で説明したものと同一であり、詳細説明は割愛する。
【0054】
具体的な作動は、図6に示す制御フローチャートに基づいて行われるようにしている。図6に示す制御フローチャートは、図2で説明したものに対して、ステップS120、S130をステップS120B、S130Bに変更したものとしている。
【0055】
即ち、ランキンサイクル110の運転制御において(ステップS100)、ステップS110の判定で、膨張機112における圧力差ΔPが所定圧力差ΔPthを下回ると、ステップS120Bで、ポンプ用インバータ144は、電動機143の作動回転数を所定回転数だけ上昇させる方向に制御する。つまりポンプ143の昇圧能力を増加させる。
【0056】
尚、ステップS110で否、即ち、圧力差ΔPが所定圧力差ΔPth以上である場合は、ステップS130Bのように、電動機143の作動回転数を当初の狙い値に維持して、液ポンプ114の昇圧能力を維持する。そして、ステップS120B、S130Bの後は、ステップS110へ戻って繰返す。
【0057】
以上のように、ステップS120Bでポンプ143の昇圧能力を増加させることにより、高圧側圧力P1を上昇させることができるので、所定圧力差ΔPthとなるように圧力差ΔPを増加させることができる。よって、上記第1実施形態と同様に、膨張機112の過膨張作動を防止できると共に、常に所定圧力差ΔPthに基づく安定した膨張仕事を得ることができる。
【0058】
尚、圧力差ΔPが所定圧力差ΔPthを下回った時の、圧力差ΔPを増加させる手段としては、上記電動機143のポンプ用インバータ144(回転数増加手段)に代えて、電動機143の励磁を低下させて、磁束密度を低下させる手段として用いるようにしても良い。つまり、電動機143のロータをコイルから成るものにして、このコイルに通電する電流(励磁電流)を低下させることで磁束密度を低下させるようにしても良い。これにより、電動機143における必要トルクが低下し、回転数を増加させることができ、液ポンプ114の昇圧能力を上げて圧力差ΔPを増加させることができる。
【0059】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、圧力差検出手段を構成する圧力検出部としての高圧側圧力計131、および低圧側圧力計132を、加熱器111と膨張機112との間、および膨張機112と凝縮器113との間にそれぞれ配設したが、これに限らず、高圧側圧力計131を液ポンプ114と加熱器111との間に、低圧側圧力計132を凝縮器113と液ポンプ114との間にそれぞれ配設するようにしても良い。
【0060】
また、本発明の膨張機制御装置をランキンサイクル110に使用される膨張機112に適用したものとして説明したが、これに限らず、例えばブレイトンサイクルに使用される膨張機(タービン)に適用しても良い。
【0061】
また、ランキンサイクル110は車両に使用されるものとしたが、これに限らず他の工業用のものとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】第1実施形態におけるシステム全体を示す模式図である。
【図2】第1実施形態における圧力差増加を実行するための制御フローチャートである。
【図3】第2実施形態におけるシステム全体を示す模式図である。
【図4】第2実施形態における圧力差増加を実行するための制御フローチャートである。
【図5】第3実施形態におけるシステム全体を示す模式図である。
【図6】第3実施形態における圧力差増加を実行するための制御フローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
110 ランキンサイクル
112 膨張機
113 凝縮器
114 液ポンプ
120 発電機
130 圧力差検出手段
131 高圧側圧力計(圧力検出部)
132 低圧側圧力計(圧力検出部)
133 コントローラ(演算部)
140 圧力増加手段
141 インバータ(回転数低下手段)
142 送風機(凝縮能力増加手段)
143 電動機
144 ポンプ用インバータ(回転数増加手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温高圧に加熱された作動流体の膨張により、駆動力を発生する膨張機(112)と、
前記膨張機(112)の駆動力によって作動されて、発電する発電機(120)と、
前記膨張機(112)の高圧側、および低圧側間の圧力差(ΔP)を検出する圧力差検出手段(130)と、
前記圧力差検出手段(130)によって検出された前記圧力差(ΔP)が予め定めた所定圧力差(ΔPth)を下回った時に、前記所定圧力差(ΔPth)となるように前記圧力差(ΔP)を増加させる圧力差増加手段(140)とを備えることを特徴とする膨張機制御装置。
【請求項2】
前記膨張機(112)は、前記作動流体の膨張によって固定スクロールに対して公転作動される旋回スクロールを有し、
前記旋回スクロールには、前記公転作動に伴って前記駆動力を出力すると共に、前記作動流体の膨張時に前記両スクロールを互いに押付けるように作用する従動クランク機構が設けられたスクロール型膨張機(112)であることを特徴とする請求項1に記載の膨張機制御装置。
【請求項3】
前記圧力差検出手段(140)は、前記膨張機(112)の高圧側圧力(P1)と、低圧側圧力(P2)とをそれぞれ検出する圧力検出部(131、132)と、
前記圧力検出部(131、132)によって検出された前記高圧側圧力(P1)と前記低圧側圧力(P2)との差を前記圧力差(ΔP)として演算する演算部(133)とから成ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の膨張機制御装置。
【請求項4】
前記圧力差増加手段(140)は、前記発電機(120)と、この発電機(120)の作動回転数を低下させる回転数低下手段(141)とから成ることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の膨張機制御装置。
【請求項5】
前記回転数低下手段(141)は、前記発電機(120)の作動回転数を制御するインバータ(141)であることを特徴とする請求項4に記載の膨張機制御装置。
【請求項6】
前記回転数低下手段は、前記発電機(120)の回転子コイルの励磁を上昇させて、磁束密度を上昇させる磁束密度上昇手段であることを特徴とする請求項4に記載の膨張機制御装置。
【請求項7】
前記膨張機(112)は、ランキンサイクル(110)に使用されるものであって、
前記圧力差増加手段(140)は、前記ランキンサイクル(110)の低圧側となる凝縮器(113)と、この凝縮器(113)の凝縮能力を増加させる凝縮能力増加手段(142)とから成ることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の膨張機制御装置。
【請求項8】
前記凝縮能力増加手段(142)は、前記凝縮器(113)に冷却用空気を供給すると共に、この冷却用空気の流量を増加させる送風機(142)であることを特徴とする請求項6に記載の膨張機制御装置。
【請求項9】
前記膨張機(112)は、ランキンサイクル(110)に使用されるものであって、
前記圧力差増加手段(140)は、前記ランキンサイクル(110)の低圧側となる液相作動流体を高圧側に圧送する液ポンプ(114)と、この液ポンプ(114)の回転速度を増加させる回転数増加手段(144)とから成ることを特徴とする請求項1〜は請求項3のいずれか1つに記載の膨張機制御装置。
【請求項10】
前記回転数増加手段(144)は、前記液ポンプ(114)駆動用の電動機(143)の回転数を制御するポンプ用インバータ(144)であることを特徴とする請求項9に記載の膨張機制御装置。
【請求項11】
前記回転数増加手段は、前記液ポンプ(114)駆動用の電動機(143)の励磁を低下させて、磁束密度を低下させる磁束密度低下手段であることを特徴とする請求項9に記載の膨張機制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−255327(P2007−255327A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81426(P2006−81426)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)